(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】椅子の張地の係止構造
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20250526BHJP
【FI】
A47C7/40
(21)【出願番号】P 2021176270
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖教
(72)【発明者】
【氏名】金子 正
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 健太
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10012034(DE,A1)
【文献】特開2018-068786(JP,A)
【文献】特開2009-112359(JP,A)
【文献】特開2003-135200(JP,A)
【文献】特開2020-124442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/38,7/40,31/02
B68G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の構造物に被せられる袋状の張地の開口側端部に、係止部材を収容可能な収容部が形成されており、
前記構造物に前記袋状の張地を被せたときに、前記構造物において前記収容部が位置する箇所に被係止部が設けられ、
前記袋状の張地が前記構造物に被せられた状態
で前記係止部材
が前記収容部に収容
され、前記被係止部と前記収容部に収容された係止部材とが係合して前記袋状の張地が前記構造物に係止されるように構成されて
おり、
前記係止部材は、断面L字状の部材であり、
前記被係止部は、
前記構造物の表面から突出して前記構造物の表面と略平行に前記構造物の表面との間で第1の隙間を開けて配置される第1辺と、前記第1辺の先端から前記構造物の表面に向けて突出して先端と前記構造物の表面との間に第2の隙間が形成される第2辺とを有し、
前記断面L字状の係止部材は、
前記第2の隙間から進入して前記被係止部と係合するように設けられており、
前記第2の隙間よりも、前記係止部材のうちの前記第2の隙間に進入して前記第2辺と係合する辺の長さの方が長いことを特徴とする椅子の張地の係止構造。
【請求項2】
前記収容部は、
前記袋状の張地の開口側端部において開口周縁に沿って所定長さに形成され、両端部が開口した筒状であり、
前記開口した両端のいずれかから、前記収容部の所定長さとほぼ同一長さに形成された樹脂製の前記係止部材が差し入れられて収容されることを特徴とする請求項1記載の椅子の張地の係止構造。
【請求項3】
前記被係止部は、
前記構造物の下面において上方に向けて凹むように形成された凹部内に設けられていることを特徴とする
請求項1又は請求項2記載の椅子の張地の係止構造。
【請求項4】
前記構造物は椅子の背凭れであって、前記背凭れは後方に向けて凸となる湾曲した形状であることを特徴とする請求項1~
請求項3のうちのいずれか1項記載の椅子の張地の係止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の張地を係止するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の背凭れ等に張地を取り付ける構造については、従来より様々な構造が知られている。
例えば特許文献1には、メッシュ式表皮材の外周にポリプロピレンのような樹脂製の縁部材(テープ)を縫着や接着によって固定し、縁部材を背板のアッパーメンバーやサイドメンバーに設けたボスに嵌め込んでメッシュ式表皮材を背板に取り付ける構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、シート表皮材の端部にシートクリップの取付片を縫い付け、取付片をシート表皮材でくるんだうえで、シートフレームに設けた係止溝に取付片を係止させてシート表皮材を取り付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-92544号公報
【文献】実開平6-82968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示された椅子の張地の係止構造では、いずれも張地の端部に樹脂性の縁部材や取付片を縫い付けて、縁部材や取付片を背板等に係止させるようにしている。
しかしながら、張地に樹脂製の部材を縫い付けた状態では張地の伸縮性が阻害されてしまうため、張地を均一に引っ張ることが困難になってしまうという課題がある。
【0006】
また、表側張地と裏側張地とを袋状に縫合してなる総くるみの張地を固定する構造も存在する。
特に、この場合においては、総くるみの張地に樹脂製の部材を縫い付けた状態で椅子の構造物に被せようとすると、特に張地を均一に引っ張ることが困難となり、作業がしづらく、引っ張りすぎると張地が縫製部分から破れてしまうなどの破損が生じる可能性があるという課題がある。
【0007】
また、昨今のオフィス用の椅子においては、リビングテイスト調の椅子が好まれるが、リビングテイスト調の張地は、厚みが厚く、伸びにくい張地のため、総くるみの形状の場合、製造上くるみにくいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、椅子の構造体に総くるみの張地を被せる場合に、破損のおそれが無く、容易に被せることができ、且つ強固な係止が可能な係止構造を提供することにある。
【0009】
本発明にかかる椅子の張地の係止構造によれば、椅子の構造物に被せられる袋状の張地の開口側端部に、係止部材を収容可能な収容部が形成されており、前記構造物に前記袋状の張地を被せたときに、前記構造物において前記収容部が位置する箇所に被係止部が設けられ、前記袋状の張地が前記構造物に被せられた状態で前記係止部材が前記収容部に収容され、前記被係止部と前記収容部に収容された係止部材とが係合して前記袋状の張地が前記構造物に係止されるように構成されており、前記係止部材は、断面L字状の部材であり、前記被係止部は、前記構造物の表面から突出して前記構造物の表面と略平行に前記構造物の表面との間で第1の隙間を開けて配置される第1辺と、前記第1辺の先端から前記構造物の表面に向けて突出して先端と前記構造物の表面との間に第2の隙間が形成される第2辺とを有し、前記断面L字状の係止部材は、前記第2の隙間から進入して前記被係止部と係合するように設けられており、前記第2の隙間よりも、前記係止部材のうちの前記第2の隙間に進入して前記第2辺と係合する辺の長さの方が長いことを特徴としている。
この構成を採用することによって、張地の伸縮性が阻害されずに、張地を均一に引っ張ることができるため、作業しやすく、破損が生じないように袋状の張地を構造物に係止することができる。
また、この構成によれば、第2の隙間に進入した係止部材が外れにくく、強固な係合を図ることができる。
【0010】
また、前記収容部は、前記袋状の張地の開口側端部において開口周縁に沿って所定長さに形成され、両端部が開口した筒状であり、前記開口した両端のいずれかから、前記収容部の所定長さとほぼ同一長さに形成された樹脂製の前記係止部材が差し入れられて収容されることを特徴としてもよい。
この構成によれば、係止部材を縫い付けるのではなく、容易に張地の収容部に収容することが可能となる。
【0013】
また、前記被係止部は、前記構造物の下面において上方に向けて凹むように形成された凹部内に設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、張地を係止する箇所に着座者が触れたりできないので、係止が外れるようなことが無く安全に係止することができる。
【0014】
前記構造物は椅子の背凭れであって、前記背凭れは後方に向けて凸となる湾曲した形状であることを特徴としてもよい。
この構成によれば、特に湾曲している構造体に袋状の張地を被せるときには皺ができやすいが、皺が生じないように袋状の張地を被せてから、被係止部と係合部材とを係止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、椅子の構造体に総くるみの張地を被せる場合に、破損のおそれが無く、容易に被せることができ、且つ強固な係止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図13】係止部材と被係止部の係合状態を示す概略説明図である。
【
図14】収容部の他の実施形態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、椅子の座に座った着座者を基準とし、着座者から見て「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」を方向として定義する。
【0018】
図1~
図3に、本実施形態を適用した椅子の外観形状を示す。
図1は、椅子を斜め上方から見た斜視図であり、
図2は、椅子の左側面図であり、
図3は、椅子の底面図である。
本実施形態の椅子10は、脚体11と、脚体11の上部に取り付けられた座12と、左右両ひじ掛け部13a、13bと背凭れ14とを一体構造として緩やかな曲面で構成された一体型背凭れ16とを備えている。
【0019】
(脚体)
脚体11は、脚羽根タイプの脚ベース28と、脚柱22とを有している。脚ベース28は、座を支持する脚柱22がはめ込まれる基部24と、キャスター26を先端に有する複数本の脚羽根21とを有している。
本実施形態の脚ベース28は、例えば樹脂製であって、ガラス繊維入り強化ナイロン、ガラス繊維入り強化ポリアミド等によって構成されているが、特にこれらの材質に限定するものではない。
【0020】
基部24には、鉛直方向に延びる円形の貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔に脚柱22が嵌合して固定される。
脚柱22には、上端部に取り付け部材27が設けられており、取り付け部材27が座12に対してネジ37によって取り付けられるため脚柱22と座12が固定される。
【0021】
脚柱22は、ロック式ガススプリング(図示せず)を内蔵しており、ロック式ガススプリングによって座12を脚ベース28に対して上下動可能としている。ロック式ガススプリングは動作レバー29を押している間はガスの圧力によって伸長するように設けられており、動作レバー29を離すと任意の位置における長さが固定される。
【0022】
(座)
図4に座を構成する座シェルを示し、
図5に座シェルの上面に設けられる座クッション32を示す。
座12は、座シェル30と、座シェル30の上面に配置される座クッション32とを有している。
本実施形態の座シェル30は、全体として同一厚さを有する平板状であって、平面視すると概略長円形状であり、左右両ひじ掛け部13a、13bが配置される箇所のみ直線状に形成されている。
座シェル30は、本実施形態では合板の板材によって構成されているが、材質として合板の板材に限定するものではなく、例えば樹脂製であってもよい。樹脂製の場合、ガラス繊維入り強化ナイロン、ガラス繊維入り強化ポリアミド等を採用することができる。
【0023】
座シェル30の中心の周囲には、脚柱22の取り付け部材27を固定するためのネジ37が挿入されるネジ穴31が複数個所に形成されている。
また、座シェル30の後面側には複数のネジ穴33が形成されており、後述する背インナーシェルの背部分をネジ38によって固定するように構成されている。さらに、座シェル30の左右両側の左右両ひじ掛け部13a、13bが配置される箇所には複数のネジ穴34が形成されており、後述する背インナーシェルのひじ掛け部分をネジ38によって固定するように構成されている。
【0024】
座クッション32は、内部にウレタンフォーム等のクッション材(図示せず)が設けられ、クッション材の外表面を張地36が覆うことによって構成されている。
クッション材の形状は、厚さ方向から見ると側面上部が面取りされた形状となっており、面取りされた箇所以外の側面は鉛直方向に直線状であり、上面及び下面はほぼ平面状となっている。クッション材を平面視すると座シェル30とほぼ同一形状であって概略長円形状である。
クッション材を覆う張地36は、例えば織物製のものを採用することができるが、特に織物製に限定するものではなく、一体型背凭れ16に用いられる張地と同一材質であることが好ましい。
【0025】
(背凭れ)
図6に一体型背凭れの斜め下から見た斜視図を示す。
一体型背凭れ16は、左右両ひじ掛け部13a、13bと背凭れ14とが一体となって構成されている。左右両ひじ掛け部13a、13bは、前後方向に沿ってほぼ直線状に形成されており、背凭れ14は後方側に凸となるように緩やかに湾曲して形成されており、左右両ひじ掛け部13a、13bと背凭れ14は曲線によって連結された構成となっている。なお、一体型背凭れ16は、特に左右両ひじ掛け部13a、13bと背凭れ14とが区別して構成されていることは無く、連続して一体となって構成されている。
【0026】
本実施形態の一体型背凭れ16は、上述したように左右両ひじ掛け部13a、13bと背凭れ14とが一体となっており、平面視すると前方側が開口した概略C字状に形成されている。
【0027】
また
図7に、一体型背凭れの総くるみを斜め下から見た斜視図を示す。
一体型背凭れ16には、袋状の総くるみ40が装着される。総くるみ40は、前面側の張地と後面側の張地とを上面及び側面で逢着して構成される。なお、本実施形態の総くるみ40は、例えば織物製の張地41の内側(特に前面側に位置する張地41の内側)にウレタンフォーム等のクッション材が配置されている。ただし、総くるみ40の張地41の材質としては、特に織物製に限定するものではなく、座12に用いられる張地36と同一材質であることが好ましい。
【0028】
図7に示す総くるみ40の開口側である下端部には、筒状の収容部42が形成されている。収容部42は、総くるみ40の張地41の下端部に別体の布部材を丸めて縫製部43において縫製することによって形成されている。別体の布部材としてはバイアステープ材などを採用することができる。
また、収容部42は、別体の布部材を用いて形成することに限定せず、総くるみ40の張地41の下端部が折り返されて縫製部43において縫製されることによって形成する構成でもよい。
この縫製部43の位置は、座クッション32の高さ位置よりも下側である。このため座クッション32を座シェル30に配置することにより、この縫製部43は座クッション32に隠れて見えなくなる。
【0029】
また、総くるみ40における縫製部43から下の収容部42に該当する位置には上記のクッション材は設けられていない。収容部42に該当する位置は座クッション32よりも下方に位置するためクッション材が不要であるということと、収容部42に収容される係止部材60とシェル46に形成された被係止部50、52との係合に邪魔になるためである。
【0030】
図6及び
図7では、収容部42に収容される係止部材60は線状の部材として図示されているが、後述するように断面L字状の部材であってもよい。
また、
図6及び
図7では、収容部42の所定箇所において収容部42の一部が切り欠かれた開口部47が形成されている実施形態を図示している。この開口部47が形成されている箇所は、収容部42に収容される係止部材60とシェル46に形成された被係止部50、52と係合する箇所であるが、実際には開口部47は形成しなくてもよい。
【0031】
次に、
図8に一体型背凭れのシェルを斜め前方から見た斜視図を示す。
一体型背凭れ16のシェル46は、例えば樹脂製であって、ガラス繊維入り強化ナイロン、ガラス繊維入り強化ポリアミド等によって一体的に成形されているが、特にこれらの材質に限定するものではない。
シェル46の総くるみ40が装着される部位は、鉛直方向に起立している本体部48であり、本体部48の下端部から水平方向に向けて座受部49が突出して形成されている。
【0032】
座受部49は、座シェル30を載置できるように水平方向に突出しており、載置した座シェル30を固定できるような構成となっている。
座受部49には、座シェル30に形成されたネジ穴33に対応するネジ穴51が形成され、座シェル30に形成されたネジ穴34に対応するネジ穴53が形成されている。
【0033】
座受部49に座シェル30を載置した後、座受部49の下方からネジ穴51を貫通して座シェル30のネジ穴33にネジ38を挿入して固定し、また座受部49の下方からネジ穴53を貫通して座シェル30のネジ穴34にネジ38を挿入して固定する。
【0034】
シェル46の本体部48の前面下部には、総くるみ40の前方側を係止するための被係止部50が複数個所に形成されている。
図9に示すように、被係止部50は横方向から見ると前方に向けて延びる水平部50aと、水平部50aの先端から下方に向けて延びる鉛直部50bとから構成されるL字状であるが、鉛直部50aの先端からさらにシェル46の前面46a方向に向けて突出し、後述の隙間56よりもさらに狭い隙間を、前面46a方向に向けて突出した箇所と前面46aとの間に形成してもよい。
被係止部50の鉛直部50aと、シェル46の前面46aとの間には、隙間56が形成されている。この隙間56に総くるみ40の係止部材60が入り込み、被係止部50と係合する。
【0035】
図10にシェルの下部の拡大図を示す。
シェル46の本体部48の下部には、総くるみ40の後方側を係止するための被係止部52が複数個所に形成されている。
複数の被係止部52は、シェル46の下部前方側壁面46bと、シェル46の下部から前方に突出する座受部49との間に形成された、上方に向けて凹んでいる凹部54内に形成されている。
各被係止部52は、凹部54内で下方に向けて突出し、シェル46の下部前方側壁面46b方向に曲折されたL字状であって、後述する総くるみ40の係止部材60と係合する形状である。
【0036】
(総くるみとシェルとの係合)
上述したように、総くるみ40の開口側である下端部には、筒状の収容部42が形成されている。収容部42には、シェル46の前方側の被係止部50または後方側の被係止部52と係合するための係止部材60が収容される。
【0037】
図11に係止部材の一実施形態における概略斜視図を示す。
係止部材60は、収容部42の長さとほぼ同一長さに形成された樹脂製の部材である。
また
図11に示す係止部材60は、断面L字状である。断面L字状の係止部材60は、確実な係合をするために好ましいが、例えば
図6及び
図7に示した係止部材60のように断面L字状ではなく線状(断面が概略円形)であってもよく、あるいは板状であってもよい。
なお、本実施形態では、シェル46の前方側の被係止部50と係合する係止部材60は、
図6及び
図7に示したように線状の部材であって、例えば金属製のワイヤを採用している。
また、シェル46の後方側の被係止部52と係合する係止部材60は、
図11に示すような断面L字状の樹脂製の部材を採用している。断面L字状の係止部材60の材質としては、ポリプロピレン等の樹脂材料を採用することができるが、特にポリプロピレンに限定するものではない。ただし、係止部材60はシェル46の曲線に沿って湾曲できるように適度な柔軟性を持っていることが必要である。
【0038】
図12に総くるみの張地の収容部の概略構成を示す。
総くるみ40の張地41の下端部は、別体の布部材を丸めて縫製部43において縫製することによって形成されているか、又は折り返されて縫製部43において縫製されてなる筒状の収容部42として構成されている。筒状の収容部42の左右両端は、開口した開口部44となっている。
係止部材60の収容部42への収容は、総くるみ40をシェル46に被せてから行うようにし、筒状の収容部42の両端部に形成された開口部44から係止部材60を進入させて行われる。
【0039】
図13に係止部材と被係止部における係合状態の一実施形態を示す。
図13では例として総くるみ40の後方側をシェル46に係合する場合について示している。
被係止部52は、下方に向けて延びる鉛直部52aと、鉛直部52aの下端部からシェル46の下部前方側壁面46bに向けて水平方向に延びる水平部52bとから構成される。
【0040】
被係止部52の水平部52bの先端部と、下部前方側壁面46bとの間は隙間63があいている。この隙間63の間から係止部材60のL字の一端部60aが入り込み、被係止部52の水平部52bと係止部材60の一端部60aとが係合する。
【0041】
このとき、隙間63の間隔をG1とし、係止部材60の一端部60aの長さをL1とすると、L1>G1である。
このように、隙間63から入り込む係止部材60の一端部60aの長さを、被係止部52と下部前方側壁面46bとの間の隙間63の間隔よりも長くすることによって、被係止部52から係止部材60が外れにくく強固な係合を図ることができる。
なお、被係止部52と下部前方側壁面46bとの間の隙間63に係止部材60を挿入する際には、係止部材60の一端部60aと他端部60bとを広げることによって係止部材60の一端部60aを隙間63に挿入させることができる。
【0042】
図14に、張地の収容部の他の実施形態を示す。
図14に示す収容部42は、長さ方向の所定箇所に張地41の一部を切り欠いて形成した開口部47が設けられている。開口部47が形成されることによって、開口部47からは収容部42に収容されている係止部材60の一部が露わになっている。
なお、
図6及び
図7に示したように係止部材60が線状である場合には、収容部42に開口部47を、被係止部50又は被係止部52に該当する位置に形成することで、係止部材60と被係止部50、52との係合を、張地41を介さずに直接接触させて確実な係合ができるが、
図11に示したような係止部材60がL字状の場合には、確実な係合ができるため特に開口部47を設ける必要はない。
【0043】
上述してきたように、総くるみ40を一体型背凭れ16のシェル46に被せる場合、総くるみ40の張地41の下端部に係止部材60を収容する筒状の収容部42を設けたため、伸縮性が阻害されずに、張地41を均一に引っ張ることができる。このため、総くるみ40を被せる作業がしやすく、また総くるみ40の破損が生じないように総くるみ40を被せることができる。
【0044】
なお、本発明の張地の係止構造において、総くるみを被せる構造体としては、本実施形態のように左右両ひじ掛けと背凭れが一体となった一体型背凭れに限定するものではなく、ひじ掛けとは別体となっている背凭れに対して総くるみを被せる構成としてもよい。
さらに、座を総くるみで構成する場合であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 椅子
11 脚体
12 座
13a、13b ひじ掛け部
14 背凭れ
16 一体型背凭れ
21 脚羽根
22 脚柱
24 基部
26 キャスター
27 取り付け部材
28 脚ベース
29 動作レバー
30 座シェル
31 ネジ穴
32 座クッション
33 ネジ穴
34 ネジ穴
36 張地
37 ネジ
38 ネジ
41 張地
42 収容部
43 縫製部
44 開口部
46 シェル
46a 前面
46b 下部前方側壁面
47 開口部
48 本体部
49 座受部
50 被係止部
50a 水平部
50a 鉛直部
51 ネジ穴
52 被係止部
52a 鉛直部
52b 水平部
53 ネジ穴
54 凹部
56 隙間
60 係止部材
60a 一端部
60b 他端部
63 隙間