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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】釣竿用ハンドル部材及び釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20250526BHJP
【FI】
A01K87/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021181143
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069352
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
(72)【発明者】
【氏名】河合 一輝
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3102305(JP,U)
【文献】国際公開第2021/192431(WO,A1)
【文献】特開2018-061448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 - 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体と、該リールシート本体に接続されるグリップとが一体成形される釣竿用ハンドル部材であって、
該グリップは、一方の端部が該リールシート本体に接続され、他方の端部が閉構造となっており、
前記リールシート本体と前記グリップは、該グリップの他方の端部以外の部分が中空に形成され、該リールシート本体と該グリップは、炭素繊維強化プラスチックにより形成されている釣竿用ハンドル部材。
【請求項2】
前記閉構造は、前記グリップの前記他方の端部を覆う壁部材である、請求項1に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項3】
前記壁部材は、前記グリップの延伸方向に対して垂直又は傾斜して形成される、請求項2に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項4】
釣竿用竿体の端部が、前記リールシート本体の一方の端部であって、前記グリップとは反対側の端部に取付けられる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項5】
前記炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維が、前記釣竿用ハンドル部材の長手方向と前記閉構造に沿って連続に形成されている、請求項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材と、竿体とを備えた釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リールシート本体とグリップとを備える釣竿用ハンドル部材、及びこれらを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、釣竿用リールシート及び釣竿用グリップを備えた様々な釣竿が知られている。
【0003】
このような釣竿では、通常、竿体の上に釣竿用リールシートと釣竿用グリップが載置され、該釣竿用リールシートには、本体の上側又は下側にリール脚を載置するためのリール脚載置部が形成される。
【0004】
このような釣竿として、例えば、特許文献1には、竿体と、該竿体の周面に設けられ外周に凹凸面が形成された筒状の補強樹脂層と、該補強樹脂層の外周面上に射出成形されたリールシートとを備えた釣竿が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、リールの脚部が載置されるリール脚載置部を有する筒状のリールシート本体を備えたリールシートの後側に、リアグリップ部を備えた釣竿であって、竿本体と、プリプレグから中空竿体を形成する際にその後部を竿本体の径の変化率よりも大きい径の変化率で大径化することによりリアグリップ部が一体的に形成されたリアグリップ竿体とを備え、竿本体の後部とリアグリップ竿体の前部とが所定長さの重ね合わせ部を形成するようにして内外に重ね合わせられて接合一体化され、該重ね合わせ部の少なくとも一部がリールシート本体の内側に位置している釣竿が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-137132号公報
【文献】特開2013-21923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の釣竿では、竿体に筒状の補強樹脂層の外周面上に射出成形された中実のリールシートを設けるため、重量が増大してしまい、またリールシートに肉厚があることからこれが緩衝材として機能してしまうために釣竿の感度が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示の釣竿でも、竿本体にリアグリップ竿体とリールシート本体を接合するため、接着のための重量増加が不可避であり、また接着部分や複数の層が介在するためにこれらが緩衝材として機能してしまい、釣竿の感度が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量かつ竿体からの振動が減衰しにくく、またグリップの端部を別部材で補強することなく強度を保持することができる釣竿用リールシートと釣竿用グリップとを備える釣竿用ハンドル部材、及びこれらを備えた釣竿を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体と、該リールシート本体に接続されるグリップとが一体成形され、該グリップは、一方の端部が該リールシート本体に接続され、他方の端部が閉構造となっている。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記閉構造は、前記グリップの前記他方の端部を覆う壁部材である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記壁部材は、前記グリップの延伸方向に対して垂直又は傾斜して形成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記リールシート本体と前記グリップは、炭素繊維強化プラスチックにより形成される。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維が、前記釣竿用ハンドル部の長手方向と前記閉構造に沿って連続に形成されている。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、釣竿用竿体の端部が、前記リールシート本体の一方の端部であって、前記グリップとは反対側の端部に取付けられる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記リールシート本体の一方の端部は、前記釣竿用竿体の端部を取付けるため中空に形成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記リールシート本体と前記グリップは、該リールシート本体の一方の端部と該グリップの他方の端部以外の部分が中空又は中実に形成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記リールシート本体と前記グリップが、該グリップの他方の端部以外の部分が中実に形成される場合、発泡部材又は低比重な樹脂により中実に形成される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかの釣竿用ハンドル部材と、竿体とを備えるように構成される。
【発明の効果】
【0018】
上記実施形態によれば、軽量かつ竿体からの振動が減衰しにくく、またグリップの端部を別部材で補強することなく強度を保持することができる釣竿用リールシートと釣竿用グリップとを備える釣竿用ハンドル部材、及びこれらを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材を示す図である。
図4a】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材を示す図である。
図4b】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図である。
図4c】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る釣竿用グリップを示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係るへら竿用グリップを示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の成形方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、竿体2と、竿体2にリールシート9を介して取り付けられたリールRと、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、リールシート9及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
【0022】
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
【0023】
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
【0024】
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、リールシート9に装着されるリール6から繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A~10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられているが、詳細は省略する。
【0025】
次に、図2を参照して、リールシート本体12及びリールシート9について説明する。リールシートは、魚釣用リール6のリール脚6bが載置されるリール脚載置面12aをその軸方向に沿って有するリールシート本体12を備えている。リールシート本体12は、全体として筒状に形成されている。リールシート本体12は、例えば、60-160mmの長さを有するよう構成できるが、これに限られない。
【0026】
また、このリールシート本体12は、リール脚載置面12aの反対側を僅かに膨出させ、握持する手で握り込んだときに、母指球またはその近部を支えることで握持し易い湾曲形状の外面を有する握り部12bを形成してある。
【0027】
リールシート本体12のリール脚載置面12aは、平坦または、リールシート本体12のリール脚載置面12aに隣接する他の周方向の部位(例えば握り部12b)よりも大きな曲率をもって略平坦に形成することができ、かつ、図2に示すリールシート本体12の軸方向に延びた状態に形成されている。リールシート本体12には、一端(竿元側)に固定フード14が一体的に配設されている。リールシート本体12のリール脚載置面12aの一端は、固定フード14の内部に配設されている。
【0028】
リールシート本体12には、他端(竿先側)に移動フード22が軸方向に移動自在に装着される。該リールシート本体12と該移動フード22を含めてリールシート9と呼ぶことがあるが、詳細は省略する。
【0029】
次に、図3(及び図2)を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について説明する。ここで、釣竿用ハンドル部材20とは、既述のリールシート本体12と、該リールシート本体12に隣接して形成されたグリップ4を含むものとする。なお、既述のリールシート9と、該グリップ4を含めて釣竿用ハンドル部材20と呼んでも構わないが、本実施形態では上記の通り定義する。
【0030】
図示のように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形されるよう構成される。
【0031】
次に、図4a、4b、4cを参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について説明する。図4bは、図4aにおけるA-A断面における断面図を示し、図4cは、図4aにおけるB-B断面における断面図を示す。本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形され、該グリップ4は、一方の端部が該リールシート本体12に接続され、他方の端部が閉構造21(後述する図4a、4c参照)となっている。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該閉構造21は、該グリップ4の当該他方の端部を覆う壁部材23である。なお、壁部材23が前記グリップの延伸方向に対して垂直又は略垂直に形成することができるが、これに限られない(本明細書を通じて同様である)。
【0032】
当該壁部材23は、グリップ4の一部を構成し、該壁部材23により該グリップ4の該他方の端部(グリップ4の、リールシート本体12が接続される側とは反対側の端部)は閉構造(該他方の端部が外部から閉じられた構造)となっている。これにより、当該他方の端部に別途金属や樹脂の部品を接着等により接合する必要がなくなる。これに対して、当該他方の端部が閉構造の場合には、別途部品を設ける必要がなく、また接着剤等も必要ないことから、閉構造を含めてグリップを一体的に成形できるため、グリップに作用する外力に対してより均等に抗することができるため、強度を維持しながら薄肉化・軽量化が可能となる。なた、別途部品を設ける必要がなくなることから、組立作業の工数を削減することが可能となる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20によれば、軽量かつ竿体からの振動が減衰しにくく、またグリップの端部を別部材で補強することなく強度を保持することができる、釣竿用リールシートと釣竿用グリップとを備える釣竿用ハンドル部材を提供することが可能となる。
【0034】
次に、図4a、4b、4cを参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について更に説明する。図4aに示すように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、該釣竿用ハンドル部材の内部を中空に形成することができるが、詳細は後述する。中空に形成すると、釣竿に与える感度に影響させることなく大幅に重量を低減することが可能となる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)と該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)を除いて、中空に形成してもよい。このようにして、必ずしも中実としなくてもよい部分を中空に形成すると、釣竿に与える感度に影響させることなく大幅に重量を低減することが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)を除いて、中空に形成してもよい。このようにして、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)を開構造とし、竿体を挿入可能とし、該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)を閉構造21としてもよい。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)を除いて、中実に形成してもよい。このようにして、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)を開構造とし、竿体を挿入可能としつつ、釣竿に与える感度に影響させることなく把持し易いグリップを形成することが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)も含め、中実に形成してもよい。このようにして、中実に形成した場合でも、低比重な樹脂することで重量増大を抑えながら、釣竿に与える感度に影響させることがないようにすることができる。なお、中実とする場合は、発泡部材又は低比重な樹脂を形成することができる。ここで、低比重な樹脂とは、比重が1.2以下の樹脂をいい、例えば、エポキシ材料やPP(ポリプロピレン)材料が考えられるが、これらに限定されるものではない(本明細書を通じて同様)。また、後述するリールシート本体とグリップを形成する材料と同じものを用いてもよい。リールシート本体とグリップを形成する材料と同じ場合はリールシート本体とグリップと中実部分を一体として形成してもよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)を除いて、一部を中実としその他を中空に形成してもよい。このようにして、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)を開構造とし、竿体を挿入可能としつつ、釣竿に与える感度に影響させることなく把持し易いグリップを形成することが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)を除いて、一部を中実としその他を中空に形成してもよい。このようにして、釣竿に与える感度に影響させることなく把持し易いグリップを形成することができる。なお、中実とする部分には、発泡部材又は低比重な樹脂を形成することができる。また、後述するリールシート本体とグリップを形成する材料と同じものを用いてもよい。中実とする部分の材料がリールシート本体とグリップを形成する材料と同じ場合には、リールシート本体とグリップと中実部分を一体として形成してもよい。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)は、当該釣竿用竿体の端部を取付けるため中空に形成してもよい。また、図4a、4bに示すように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、釣竿用竿体2の端部13が、該リールシート本体12の一方の端部15であって、該グリップ4とは反対側の端部15に取付けられるよう構成される。このようにすることで、従来の多くの方法とは異なり、竿体を釣竿用ハンドル部材20全体若しくは略全体に通す必要がなくなるため、重量の大幅な低減を図ることができる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該リールシート本体12と当該グリップ4は、壁部材23が形成される閉構造21も含めて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成されるよう構成される。また、該釣竿用ハンドル部材20の当該リールシート本体12と当該グリップ4は、壁部材23が形成される閉構造21も含めて、CFRTP(連続繊維)、CFRTP(不連続繊維)又はハイブリッドで形成するようにしてもよい。このような材料で形成することで、釣竿に用いる閉構造を備えるハンドル部材20として、十分な剛性や強度を確保しつつ重量の増大を抑制することができる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維が、釣竿用ハンドル部の長手方向から、グリップの長手方向、閉構造へと連続に形成されている。このようにすることで、曲げ剛性の確保による軽量化や魚の当たりによる釣竿の振動を手元に敏感に伝えることが可能となる。より詳細には、操作者(使用者)が触れる部分が全て連続した一体構造であり、釣竿本体に入力された振動をグリップの端部まで効率よく伝達することができる。また、グリップの端部が開構造の場合、例えば、アルミ部品や樹脂部品で潰れ方向に対する補強を施す必要があるところ、閉構造としかつカーボン材料を用いることで、軽量化を図ることができるだけでなく、高剛性を実現することできる。
【0040】
次に、図5を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形され、該グリップ4は、一方の端部が該リールシート本体12に接続され、他方の端部が閉構造21(該グリップ4の当該他方の端部を覆う壁部材23)となっており、当該壁部材23は、前記グリップの延伸方向に対して傾斜して形成してもよい。このようにして、釣竿の後端部を脇に挟みやすくすることができる。なお、壁部材23が前記グリップの延伸方向に対して傾斜して形成することができることは本明細書を通じて同様である。
【0041】
次に、図6を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形され、該グリップ4は、一方の端部が該リールシート本体12に接続され、他方の端部が閉構造21(該グリップ4の当該他方の端部を覆う壁部材23)となっており、当該壁部材23は、前記グリップの延伸方向に対して傾斜して形成され、当該壁部材23の端部に厚肉化された厚肉部24を備える。このようにして、釣竿を地面等に置く際に壁部材(繊維強化樹脂材)の割れを防ぐことが可能となる。なお、当該厚肉部24は、本実施形態だけでなく、本明細書におけるその他の実施形態にも適用可能である。
【0042】
次に、図7を参照して、本発明の一実施形態に係るグリップについて説明する。本発明の一実施形態に係るグリップは、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20のグリップ4のみ(すなわちリールシート本体12がない態様)で構成したものであり、それ以外は上述したグリップ4と同様である。図示のように、本発明の一実施形態に係るグリップ4は、一方の端部に釣竿用竿体の端部13が接続され、他方の端部は閉構造21(該グリップ4の当該他方の端部を覆う壁部材23)となっており、当該壁部材23は、前記グリップの延伸方向に対して傾斜して形成される。このようにして、釣竿の後端部を脇に挟みやすくすることができる。
【0043】
本発明の一実施形態に係るグリップ4において、当該グリップ4は、該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)を除いて、中空に形成してもよい。このようにして、該グリップ4の一方の端部(竿先側の端部)を開構造とし、竿体を挿入可能とし、該グリップ4の他方の端部(竿尻側端部)を閉構造21とすることができ、必ずしも中実としなくてもよい部分を中空に形成すると、釣竿に与える感度に影響させることなく大幅に重量を低減することが可能となる。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係るグリップ4において、当該グリップ4は、該グリップ4の一方の端部(竿先側の端部)を除いて、中実に形成してもよい。このようにして、該グリップ4の一方の端部(竿先側の端部)を開構造とし、竿体を挿入可能としつつ、釣竿に与える感度に影響させることなく把持し易いグリップを形成することが可能となる。なお、中実とする場合は、発泡部材又は低比重な樹脂を形成することができる。また、上述したグリップを形成する材料と同じものを用いてもよい。グリップを形成する材料と同じ場合は当該グリップと中実部分とを一体として形成してもよい。
【0045】
また、本発明の一実施形態に係るグリップ4において、当該グリップ4は、該グリップ4の一方の端部(竿先側の端部)と他方の端部(竿尻側端部)以外の部分について、その一部を中実としその他を中空に形成してもよい。このようにして、該リールシート本体12の一方の端部(竿先側の端部)を開構造とし、竿体を挿入可能としつつ、釣竿に与える感度に影響させることなく把持し易いグリップを形成することが可能となる。なお、中実とする部分には、発泡部材又は低比重な樹脂を形成することができる。また、上述したグリップを形成する材料と同じものを用いてもよい。中実とする部分の材料が上述のグリップを形成する材料と同じ場合には、グリップと中実部分とを一体として形成してもよい。
【0046】
次に、図8を参照して、本発明の一実施形態に係るその他のグリップ(へら竿のグリップの場合)について説明する。本発明の一実施形態に係るへら竿用グリップ40は、図示のように、一方の端部に釣竿用竿体の端部13が接続され、他方の端部は閉構造21(該グリップ4の当該他方の端部を覆う壁部材23)となっており、当該壁部材23は、曲面状に形成される。このようにして、部品を別途取り付けることなく、グリップ端部の潰れ剛性、強度を確保することが可能となる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る釣竿1は、上記いずれかの釣竿用ハンドル部材20又はグリップ4若しくはグリップ40と、竿体2とを備えるように構成される。本発明の一実施形態に係る釣竿1によれば、軽量かつ竿体からの振動が減衰しにくく、またグリップの端部を別部材で補強することなく強度を保持することができる釣竿用ハンドル部材又はグリップを備えた釣竿を提供することが可能となる。ここで、釣竿用竿体の端部13の釣竿用ハンドル部材20又はグリップ4若しくは40への取付方法は、例えば、勘合(圧入)、接着又は締結が考えられる、これらに限られない。ここで挙げた取付方法により、竿体とハンドル部材又はグリップの着脱がより容易となるといった利点がある。
【0048】
次に、図9を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20の成形方法について説明する。まず、図9aに示すように、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせてコア部材の寸法や形状(例えば、釣竿用ハンドル部材20より0.5-1mm程度内側にオフセットさせる)を決定し、溶解性のあるコア部材を造形する(コア部材の造形)。当該コア部材の造形方法は、射出成形、注型、3Dプリンターによる形成等が考えられるが、これらに限られない。なお、コア部材の表面層は非溶解性の樹脂で覆うようにする。
【0049】
次に、図9bに示すように、当該コア部材の周りにプリプレグを積層し、プリフォームを形成する。ここで、積層する材料として、樹脂が含侵されていないドライの炭素繊維基材を用いてもよい。
【0050】
そして、図9cに示すように、当該プリフォームを金型に入れ、加熱・加圧してプレス成形を行う。なお、オートクレーブやRTM成形等でもよいが特定の態様に限定されない。
【0051】
次に、図9dに示すように、成形品に二次加工を行う(寸法出し・バリ取り)。より具体的には、成形品の前後等余分な箇所や成形時に発生したバリを除去する。その後、二次加工を施した成形品を水や温水等に投入し、成形品の内側にあるコア部材を溶解させる。このようにして、釣竿用ハンドル部材20が形成される。
【0052】
次に、図9eに示すように、当該釣竿用ハンドル部材20の外表面に適宜塗装や印刷を行う。そして、図9fに示すように、リールを取付けるための部品等を装着する。最後に、図9gに示すように、当該釣竿用ハンドル部材20にリールを載置し固定することができる。このようにして、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20、すなわち、把持部を備え、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形された釣竿用ハンドル部材20が形成される。
【0053】
このようにして、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20によれば、把持性を大幅に高めることができ、またハンドル部材が一体成形されることで大幅な軽量化が実現でき、また一体成形のために竿体からの振動の減衰を低減することができるため、釣竿の感度を向上させることが可能となる、またグリップの端部を別部材で補強することなく強度を保持することができる、ールシート本体12と釣竿用グリップ4とを備える釣竿用ハンドル部材20を形成することが可能となる。
【0054】
次に、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20のその他の成形方法について説明する。まず、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせてコア部材の寸法や形状(例えば、釣竿用ハンドル部材20より0.5-1mm程度内側にオフセットさせる)を決定する(コア部材の設計)。PVAを使用して、当該コア部材の寸法や形状に合わせて3Dプリンターによりコア部材(半割状態のコア部材を2つ)を形成する。半割状態の2つのコア部材を接着し、コア部材を組立てる。
【0055】
次に、当該コア部材の周りに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のプリフォームを形成する(RTM成形、AC成形、VaRTM成形、F/M成形、S/W成形、I/P成形等)。当該プリフォームにテーピングやバギングを行いキュアする(80℃以上の熱加工を行う)。その後、コア部材を水(温水、流水)で溶解させる。最後に、成形品にトリミングや塗装等を施し、釣竿用ハンドル部材20が形成される。
【0056】
このようにして形成された本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20によれば、グリップの端部を別部材で補強することなく強度を保持することができる構造を形成し、ハンドル部材が一体成形されることで大幅な軽量化が実現でき、また一体成形のために竿体からの振動の減衰を低減することができるため、釣竿の感度を向上させることが可能となる。
【0057】
次に、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20のその他の成形方法について説明する。まず、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせてコア部材の寸法や形状(例えば、釣竿用ハンドル部材20より0.5-1mm程度内側にオフセットさせる)を決定する(コア部材の設計)。水溶性の砂を使用して、当該コア部材の寸法や形状に合わせて砂型コア部材を形成する。
【0058】
次に、当該コア部材の周りに樹脂が含侵されていないカーボンを使用して、プリフォームを形成する。具体的には、クロス材(織物)、NCF(ノンクリンプファブリック)、ブレイド(組紐)、UDテープを用いることができるが、これらに限られない。また、コア部材には、炭素繊維を賦形させる必要があるが、その際バインダーを使用しタック性を付与する。当該バインダーの種類としては、エポキシ系、ロジン系、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、フェノキシなどが考えられるが、これらに限られない。ここで、上記例では、樹脂が含侵されていないカーボンを使用する場合を説明したが、樹脂をカーボンクロス等に予め含侵したプリプレグを直接コアの周りにハンドレイアップ法等で積層配置し、成形(硬化)する方法であってもよい。当該プリフォームを金型にセットし、樹脂を注入する(RTM成形法)。その後、砂型のコア部材を水中で除去する。最後に、成形品にバリ取り、研磨、塗装等を施し、釣竿用ハンドル部材20が形成される。
【0059】
このようなRTM成形法では、低粘度の樹脂を流し込む製法により、ハンドルのような複雑形状であっても、樹脂枯れ、ボイド等の樹脂の未含侵部分が極力避けられるという利点が得られる。また、プリプレグよりも賦形性の良い材料を使用得きることにより、複雑形状の成形においても繊維に必要以上に負荷をかけることなく賦形できる。さらには、外部は金型により形成され、内部はコア材で形成されるために、外部、内部とも所望の寸法で成形することが可能となり、いずれも表面状態のよい成形物ができるという利点がある。以上のように、RTM成形法では品質の安定化や強度不足を回避することが可能となる。
【0060】
次に、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20のその他の成形方法について簡単に説明する。まず、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせて成型された金型を用意する。当該金型に、プリフォームとしてプリプレグを入れ、空気圧の力で金型内の外型に押し付ける(内圧成形)ようにして成形品を形成する。その後、成形品にバリ取り、研磨、塗装等を施し、釣竿用ハンドル部材20が形成される。このような内圧成形法では、プリプレグが内圧によって金型(外型)に押し付けられて成形されることにより、成形品の外表面がより良好に成形することができる。また、プリプレグを使用することで、樹脂量が比較的少ない成形品を製作できるため、製品の軽量化が可能となる。
【0061】
なお、上述した本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20の成形方法は、いずれも上述した本発明の一実施形態に係るグリップ4又は本発明の一実施形態に係るグリップ40にも適用可能であり、上述した技術的効果を奏するものである。
【0062】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 釣竿
2 竿体
3 元竿
4 グリップ
5 中竿
6 リール
6b リール脚
7 穂先竿
9 リールシート
10 釣糸ガイド
12 リールシート本体
12a リール脚載置面
13 端部
14 固定フード
15 端部
20 釣竿用ハンドル部材
21 閉構造
22 移動フード
23 壁部材
24 厚肉部
40 へら竿用グリップ
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9