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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】半導体回路及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20250526BHJP
【FI】
G05F1/56 310H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021205446
(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公開番号】P2023090478
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】山本 崇也
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113672016(CN,A)
【文献】特許第5092009(JP,B2)
【文献】特開2005-316799(JP,A)
【文献】米国特許第11036247(US,B2)
【文献】特開2005-322105(JP,A)
【文献】特開2005-084869(JP,A)
【文献】特許第4838760(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧が入力される第1ノードと出力電圧が出力される第2ノードとの間に接続される第1トランジスタと、
前記第1ノードと第1電圧に設定される第3ノードとの間にカスコード接続される複数の第2トランジスタを有するカスコード接続回路と、
前記第2ノードと、前記複数の第2トランジスタのうちの1の第2トランジスタの第4ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1ノードと第4ノードとの間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記1の第2トランジスタの第5ノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、半導体回路。
【請求項2】
前記第1トランジスタのゲート電圧は、前記第2ノードの出力電圧に相関する電圧と前記入力電圧より低く前記第1電圧より高い第2電圧との電位差に応じて制御される、請求項1に記載の半導体回路。
【請求項3】
前記カスコード接続回路のうちの前記1の第2トランジスタよりも前記第1ノード側に接続される他の前記第2トランジスタのゲートには、前記第2ノードの出力電圧に相関する電圧と前記第2電圧との電位差に応じた電圧が供給される、請求項2に記載の半導体回路。
【請求項4】
前記カスコード接続回路を含む差動増幅回路と、
前記第2ノードと前記第3ノードとの間に接続され、前記出力電圧を分圧した分圧電圧を生成する分圧回路と、を備え、
前記差動増幅回路は、前記分圧電圧と前記第2電圧との電位差に応じた電圧を出力し、
前記第1トランジスタのゲート電圧は、前記差動増幅回路の出力電圧に応じて制御される、請求項2に記載の半導体回路。
【請求項5】
前記差動増幅回路は、前記分圧電圧と前記第2電圧との電位差に応じた電圧を、他の前記第2トランジスタのゲートに供給する、請求項4に記載の半導体回路。
【請求項6】
前記差動増幅回路は、
第3トランジスタを有する電流源と、
ゲート同士が互いに接続される2つの第4トランジスタを有するカレントミラー回路と、
一方の前記第4トランジスタと前記第3トランジスタとの間にカスコード接続される複数の第5トランジスタを有する第1カスコード接続部と、
他方の前記第4トランジスタと前記第3トランジスタとの間にカスコード接続される複数の第6トランジスタを有する第2カスコード接続部と、を有し、
前記カスコード接続回路は、前記第1カスコード接続部と前記カレントミラー回路の一部とを含む、請求項4に記載の半導体回路。
【請求項7】
前記カスコード接続回路の前記複数の第2トランジスタは、第1導電型のトランジスタと第2導電型のトランジスタとを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体回路。
【請求項8】
前記複数の第2トランジスタのうち、前記第1導電型のトランジスタのドレインと前記第2導電型のトランジスタのドレインとが接続されるノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、請求項7に記載の半導体回路。
【請求項9】
入力電圧が入力される第1ノードと、
出力電圧が出力される第2ノードと、
第1電圧に設定される第3ノードと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続される第1トランジスタと、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間にカスコード接続される複数の第2トランジスタを有するカスコード接続回路と、
前記第2ノードと、前記複数の第2トランジスタのうちの1の第2トランジスタの第4ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1ノードと前記第4ノードとの間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記1の第2トランジスタの第5ノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1の実施形態は、半導体回路及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧や負荷電流が変動しても、出力電圧の変動を抑制できるLDO(Low Drop Out)レギュレータが知られている。LDOレギュレータの特性として、電源除去(PSR:Power Supply Rejection)特性がある。PSR特性とは、入力電圧に対する出力電圧のACゲイン特性のことであるPSRはできるだけ小さい方が望ましい。
【0003】
LDOレギュレータの最終段に設けられるパストランジスタのゲートには寄生容量が付加されるため、PSR特性が劣化するおそれがある。PSR特性が劣化する周波数帯域で、入力電圧に対するパストランジスタのゲート信号のACゲインにピークを持たせることで、PSR特性を改善できる。しかし、パストランジスタの電源コンダクタンスが負側にシフトし、LDOレギュレータの出力信号が発振するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4838760号公報
【文献】特許5092009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の実施形態では、PSR特性を改善することができる半導体回路及び電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の実施形態によれば、入力電圧が入力される第1ノードと出力電圧が出力される第2ノードとの間に接続される第1トランジスタと、
前記第1ノードと第1電圧に設定される第3ノードとの間にカスコード接続される複数の第2トランジスタを有するカスコード接続回路と、
前記第2ノードと、前記複数の第2トランジスタのうちの1の第2トランジスタの第4ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1ノードと第4ノードとの間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記1の第2トランジスタの第5ノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、半導体回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る電源装置の回路図。
図2】ACパスを持たない一比較例に係る電源装置の回路図。
図3図2の電源装置のPSR特性を示す図。
図4図1の電源装置のPSR特性を示す図。
図5】第2の実施形態に係る電源装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、半導体回路及び電源装置の実施形態について説明する。以下では、半導体回路及び電源装置の主要な構成部分を中心に説明するが、半導体回路及び電源装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る電源装置1の回路図である。図1の電源装置1は、半導体基板上に形成される半導体回路10として実現可能である。この半導体回路10は、同一の半導体基板上に形成される他の半導体回路とともにパッケージングされて半導体装置とすることも可能である。
【0010】
電源装置1は、第1トランジスタQ1と、カスコード接続回路2と、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、第1ノードn1と、第2ノードn2と、第3ノードn3とを備えている。電源装置1は、LDOレギュレータとも呼ばれ、入力電圧VCCHに近い電圧レベルの出力電圧Voutを出力することができる。第2ノードn2には、負荷回路3が接続可能に構成される。
【0011】
第1ノードn1には、入力電圧VCCHが入力される。入力電圧VCCHは、例えば電源装置1の電源電圧である。以下では、第1ノードn1を入力電圧ノードn1と呼ぶことがある。第2ノードn2は、電源装置1の出力電圧Voutを出力する。以下では、第2ノードn2を出力電圧ノードn2と呼ぶことがある。
【0012】
第3ノードn3には、基準電圧が入力される。基準電圧は、電源装置1が動作する際の基準電位に対応し、例えば接地電圧(0V)である。以下では、第3ノードn3を接地電圧ノードn3と呼ぶことがある。
【0013】
入力電圧VCCH、出力電圧Vout、及び基準電圧の電圧レベルは任意である。本実施形態に係る電源装置1は、入力電圧VCCHが変動しても、あるいは負荷回路3に流れる負荷電流が変動しても、出力電圧Voutの変動を抑制でき、かつ出力電圧Voutの発振を防止できる。
【0014】
第1トランジスタQ1は、入力電圧ノードn1と出力電圧ノードn2との間に接続されている。以下では、第1トランジスタQ1をパストランジスタQ1と呼ぶことがある。パストランジスタQ1はPMOSトランジスタである。パストランジスタQ1のソースは入力電圧ノードn1に接続され、ドレインは出力電圧ノードn2に接続されている。パストランジスタQ1のゲート電圧は、例えば、電源装置1の出力電圧Voutに相関する電圧と制御電圧Vctlとの電位差に応じて制御される。出力電圧Voutに相関する電圧とは、例えば、出力電圧Voutの分圧電圧である。
【0015】
カスコード接続回路2は、入力電圧ノードn1と接地電圧ノードn3との間にカスコード接続される複数の第2トランジスタQ2を有する。複数の第2トランジスタQ2は、第1導電型のトランジスタと第2導電型のトランジスタを含んでいてもよい。図1の例では、カスコード接続回路2は、入力電圧ノードn1と接地電圧ノードn3の間に順にカスコード接続されたPMOSトランジスタQ2a、NMOSトランジスタQ2b、及びNMOSトランジスタQ2cを有する。本明細書では、カスコード接続回路2内のトランジスタQ2a、Q2b、Q2cを総称して第2トランジスタQ2と呼ぶことがある。
【0016】
なお、カスコード接続回路2内の第2トランジスタQ2の接続段数は任意である。図1のカスコード接続回路2は、1個のPMOSトランジスタQ2aと2個のNMOSトランジスタQ2b、Q2cを有するが、2個以上のPMOSトランジスタQ2と、3個以上のNMOSトランジスタQ2を有していてもよい。
【0017】
カスコード接続回路2内のPMOSトランジスタQ2aのソースは入力電圧ノードn1に接続され、ドレインはNMOSトランジスタQ2bのドレインに接続されるとともに、パストランジスタQ1のゲートに接続されている。NMOSトランジスタQ2bのソースはNMOSトランジスタQ2cのドレインに接続されている。NMOSトランジスタQ2cのソースは接地ノードに接続されている。
【0018】
このように、カスコード接続回路2内の互いに異なる導電型のトランジスタQ2a、Q2bのドレイン同士がパストランジスタQ1のゲートに接続されている。
【0019】
第1キャパシタC1は、出力電圧ノードn2と、複数の第2トランジスタQ2のうちの1つの第2トランジスタQ2(Q2b)の第4ノードn4との間に接続されている。より具体的には、図1の例では、第1キャパシタC1は、出力電圧ノードn2とNMOSトランジスタQ2bのソースとの間に接続されており、第4ノードn4はトランジスタQ2bのソースである。第1キャパシタC1の一端は出力電圧ノードn2に接続され、他端はトランジスタQ2bのソースとトランジスタQ2cのドレインとの接続ノードに接続されている。すなわち、第4ノードn4は、第1キャパシタC1の他端が接続されるノードでもある。
【0020】
第1キャパシタC1は、ミラー補償容量と呼ばれる。第1キャパシタC1を設けることで、パストランジスタQ1のゲートに、第1キャパシタC1の容量をゲイン倍した容量を付加する効果が得られる。これにより、実質的に電源装置1の周波数特性を悪化させて、発振を防止する効果が得られる。ただし、後述するように、第1キャパシタC1だけでは、発振を防止できないこともあり、本実施形態に係る電源装置1では、第1キャパシタC1以外の発振防止の対策を施している。
【0021】
なお、ゲイン倍とは、ソース接地アンプQ1のゲイン倍のことである。以下では、第1キャパシタC1をミラー補償容量C1と呼ぶことがある。
【0022】
第2キャパシタC2は、上述した1つの第2トランジスタQ2(Q2b)の第4ノードn4と入力電圧ノードn1との間に接続されている。より具体的には、図1の例では、第2キャパシタC2は、NMOSトランジスタQ2bのソースと入力電圧ノードn1との間に接続されている。第2トランジスタQ2(Q2b)の第5ノードn5は、第1トランジスタQ1のゲートに接続されている。第5ノードn5はトランジスタQ2bのドレインである。
【0023】
第2キャパシタC2の両端を繋ぐ経路はACパスと呼ばれる。このようなACパスを設けることで、後述するように、パストランジスタQ1の電源コンダクタンスが負側にシフトせずにPSR特性を改善することができ、電源装置1の出力電圧Voutの発振を防止できる。以下では、第2キャパシタC2をACパス容量C2と呼ぶことがある。
【0024】
本実施形態に係る電源装置1では、パストランジスタQ1の電源コンダクタンスが負側にシフトしないように、ACパス容量C2を設定する。これにより、後述するように、電源装置1の出力電圧Voutの発振が防止される。
【0025】
上述した1つの第2トランジスタQ2(Q2b)の第2出力ノードは、パストランジスタQ1のゲートに接続されている。より具体的には、図1の例では、NMOSトランジスタQ2bのドレインはパストランジスタQ1のゲートに接続されており、第2出力ノードはトランジスタQ2bのドレインである。
【0026】
このように、カスコード接続回路2内の複数の第2トランジスタQ2のうち、パストランジスタQ1のゲートに接続されるドレインを有する第2トランジスタQ2(Q2b)のソースに、ミラー補償容量C1の他端が接続されている。
【0027】
この他に、図1の電源装置1は、分圧回路4と差動増幅回路5を備えている。分圧回路4は、出力電圧ノードn2と接地電圧ノードn3の間に接続され、電源装置1の出力電圧Voutを分圧した分圧電圧を生成する。分圧回路4は、2つの抵抗R1、R2の抵抗比に応じた分圧電圧を生成する。なお、分圧回路4は、抵抗以外のインピーダンス素子、例えば複数の縦続ダイオードの段数比に応じた分圧電圧を生成してもよい。このように、分圧回路4の具体的な構成は任意である。
【0028】
差動増幅回路5と第2トランジスタQ2(Q2b)は、分圧電圧と制御電圧Vctlとの電位差に応じた電圧をパストランジスタQ1のゲートに供給する。制御電圧Vctlは、例えば電源装置1の外部から供給される。制御電圧Vctlの電圧レベルを制御することで、電源装置1の出力電圧Voutの電圧レベルを制御できる。差動増幅回路5と第2トランジスタQ2(Q2b)は、分圧電圧が制御電圧Vctlに一致するように負帰還制御を行うことから、差動増幅回路5は、エラーアンプとも呼ばれる。
【0029】
電源装置1では、例えば、負荷回路3を流れる負荷電流が減ると、パストランジスタQ1のドレイン電圧が高くなり、分圧回路4から出力される分圧電圧も高くなる。この結果、差動増幅回路5の出力電圧は低くなり、カスコード接続回路2内のPMOSトランジスタQ2aのソース-ドレイン間電流が増える。よって、PMOSトランジスタQ2aのソースに接続されたパストランジスタQ1のゲート電圧が高くなり、パストランジスタQ1のソース-ドレイン間電流が小さくなって、出力電圧Voutの上昇が抑制される。
【0030】
また、電源装置1では、例えば、入力電圧VCCHが低下すると、パストランジスタQ1はオフする方向に動作し、パストランジスタQ1のソース-ドレイン間電流は減少する。これにより、出力電圧ノードn2から出力される出力電圧Voutが低下する。よって、分圧回路4から出力される分圧電圧も低下し、差動増幅回路5の出力電圧は高くなる。したがって、カスコード接続回路2内のPMOSトランジスタQ2aはオフする方向に動作し、PMOSトランジスタQ2aのドレイン電圧及びパストランジスタQ1のゲート電圧は低くなる。よって、パストランジスタQ1はオンする方向に動作し、パストランジスタQ1のソース-ドレイン間電流が増大し、出力電圧ノードn2から出力される出力電圧Voutが高くなる。
【0031】
以上のような動作により、負荷電流が変動しても、あるいは入力電圧VCCHが変動しても、出力電圧ノードn2から出力される出力電圧Voutは一定になるように制御される。
【0032】
電源装置1においてパストランジスタQ1のゲートには、上述したように寄生容量Cpが付加されている。この寄生容量Cpにより、AC的な電流のパスができて、電源装置1のPSR特性が劣化する。より具体的には、寄生容量Cpの大きさに応じて、電源装置1のPSR特性の劣化度合が変化する。ここで、PSR特性の劣化とは、例えばPSRの値が高くなることを意味し、PSR特性の改善とは、例えばPCRの値を低下させることを意味する。
【0033】
また、寄生容量Cpの大きさに応じて、入力電圧VCCHに対するパストランジスタQ1のゲート電圧VGP0の比率であるACゲインVGP0/VCCHが変化する。このACゲインVGP0/VCCHにピークを持たせて帯域を広げると、PSR特性は改善するが、電源装置1の電源コンダクタンスが低下して負性電源コンダクタンスを持つおそれがある。負性電源コンダクタンスは、入力電圧ノードn1の入力電圧VCCHおよび出力電圧ノードn2の出力電圧Voutが発振する原因になるため、負性電源コンダクタンスを持たないようにする必要がある。
【0034】
そこで、第1の実施形態の電源装置1では、入力電圧ノードn1とNMOSトランジスタQ2bのソースとの間にACパス容量C2によるACパスを設けて、PSR特性を改善しつつ、負性電源コンダクタンスを持たないようにする。
【0035】
図2はACパス容量C2によるACパスを持たない一比較例に係る電源装置100の回路図である。一比較例の電源装置100は、第1の実施形態の電源装置1からACパス容量C2を省略した回路構成を備えている。
【0036】
図3は一比較例の電源装置100のPSR特性を示す図であり、具体的にはPSRの周波数特性を模式的に示したものである。図3の横軸は周波数[Hz]、縦軸はPSR[dB]である。図3には、パストランジスタQ1のゲートの寄生容量Cpを3通りに変化させた場合のPSR特性を表す3つの曲線W1~W3が図示されている。図3は、PSR特性のゲート寄生容量Cpによる依存性を示している。寄生容量Cpの値は、曲線W1<曲線W2<曲線W3である。寄生容量Cpが大きくなるに従って、図3に示すように、PSR特性の曲線は、値が大きい方に変化する。図3の曲線W1~W3は、寄生容量Cpが大きくなるに従って、PSR特性の劣化が大きくなることを示している。上述したようにPSRは、小さいほど望ましい。
【0037】
ACゲインVGP0/VCCHにピークを持たせるとPSR特性が改善されるが電源コンダクタンスが負側にシフトし、発振の原因となるおそれがある。
【0038】
これに対して、第1の実施形態の電源装置1は、ACパス容量C2によるACパスを設ける。ACパス容量C2の容量値は最適化される。これにより、電源コンダクタンスが負側にシフトすることなくPSR特性を改善することができる。
【0039】
図4は第1の実施形態の電源装置1のPSR特性を示す図であり、具体的にはPSRの周波数特性を模式的に示したものである。図4の横軸は周波数[Hz]、縦軸はPSR[dB]である。図4には、ACパス容量C2の容量を3通りに変化させた場合のPSR特性を表す3つの曲線W11~W13が図示されている。図4は、PSR特性のACパス容量C2による依存性を示している。ACパス容量C2の容量値は、曲線W11<曲線W12<曲線W13である。図4に示すように、ACパス容量C2の容量値が大きくなるに従って、PSR特性の曲線は、値が小さいほうに変化する。図4の曲線W11~W13によれば、ACパス容量C2の容量値が大きくなるに従って、PSR特性の劣化が小さくなることがわかる。
【0040】
なお、図4では、ACパス容量C2の容量値が大きくなるほど、PSR特性の劣化が小さくなる例を示しているが、必ずしもACパス容量C2の容量値を大きくするとPSR特性の劣化を抑制できるとは限らない。PSR特性の値が最小になるACパス容量C2の容量値が存在し、その容量値よりもACパス容量C2の容量値を大きくすると、PSR特性は劣化する。
【0041】
第1の実施形態の電源装置1では、ACパス容量C2の適切な容量値を選択すると、ACゲインVGP0/VCCHにピークを持たせずにPSR特性を改善できる。
【0042】
このように、第1の実施形態の電源装置1では、ミラー補償容量C1とカスコード接続回路2との接続ノードと、入力電圧ノードn1との間にACパス容量C2を接続し、ACパス容量C2の容量値を最適化する。このため、パストランジスタQ1の電源コンダクタンスが負側にシフトしないようにしてPSR特性を改善することができる。よって、第1の実施形態の電源装置1から出力される出力電圧Voutが発振するおそれがなくPSR特性の改善が見込める。
【0043】
(第2の実施形態)
図1の電源装置1は、カスコード接続回路2とは別個に差動増幅回路5を有するが、カスコード接続回路2と差動増幅回路5が一体化されたカスコード型差動増幅回路6を設けてもよい。
【0044】
図5は第2の実施形態に係る電源装置1aの回路図である。図5の電源装置1aは、半導体基板上に形成される半導体回路10aとして実現可能である。電源装置1aは、パストランジスタQ1(第1トランジスタQ1)と、分圧回路4と、カスコード型差動増幅回路6と、第1キャパシタC1(ミラー補償容量C1)と、第2キャパシタC2(ACパス容量C2)とを備えている。
【0045】
図5のカスコード型差動増幅回路6は、電流源として機能するトランジスタQ3と、カレントミラー回路の一部を構成するトランジスタQ4a、Q4bと、カスコード接続されるトランジスタQ5a、Q5b、Q5cと、カスコード接続されるトランジスタQ6a、Q6b、Q6cとを有する。トランジスタQ4a、Q4b、Q5a、Q6aは例えばPMOSトランジスタであり、トランジスタQ3、Q5b、Q5c、Q6b、Q6cは例えばNMOSトランジスタである。
【0046】
トランジスタQ4a、Q4bのソースは入力電圧ノードn1に接続されている。トランジスタQ5a、Q5b、Q5cは、トランジスタQ4aのドレインとトランジスタQ3のドレインとの間にカスコード接続されている。トランジスタQ6a、Q6b、Q6cは、トランジスタQ4bのドレインとトランジスタQ3のドレインとの間にカスコード接続されている。
【0047】
以下では、トランジスタQ5a、Q5b、Q5cを第1カスコード接続部7、トランジスタQ6a、Q6b、Q6cを第2カスコード接続部8と呼ぶことがある。
【0048】
トランジスタQ4a、Q4bのゲート同士は接続されており、トランジスタQ4a、Q4bの各ゲートはトランジスタQ6a、Q6bのドレインに接続されている。よって、トランジスタQ4a、Q4b、Q5a、Q5b、Q5c、Q6a、Q6b、Q6cはカレントミラー回路を構成している。カレントミラー回路の一部と第1カスコード接続部7は、図1のカスコード接続回路2に対応している。
【0049】
トランジスタQ6cのゲートには、分圧回路4から出力された分圧電圧が供給される。トランジスタQ5cのゲートには制御電圧Vctlが供給される。制御電圧Vctlの電圧レベルを制御することで、電源装置1aの出力電圧Voutの電圧レベルを制御できる。
【0050】
ミラー補償容量C1の一端は電源装置1aの出力ノード(出力電圧ノードn2)に接続され、他端はトランジスタQ5bのソースとトランジスタQ5cのドレインとの接続ノードに接続されている。ミラー補償容量C1を設けることで、良好なPSR特性が得られることが知られており、LDOレギュレータでは汎用的に利用されている。本実施形態では、ミラー補償容量C1に加えて、ACパス容量C2を追加したことに特徴がある。
【0051】
ACパス容量C2は、図1と同様に、入力電圧ノードn1とミラー補償容量C1の他端との間に接続されている。
【0052】
カスコード型差動増幅回路6は、入力電圧ノードn1とトランジスタQ3のドレインとの間に、カスコード接続された4つのトランジスタQ4a、Q5a、Q5b、Q5cと、カスコード接続された4つのトランジスタQ4b、Q6a、Q6b、Q6cとを有するが、カスコード接続されたトランジスタの段数は任意である。
【0053】
第1カスコード接続部7内のパストランジスタQ1のゲートが接続されるドレインを有するトランジスタQ5bのソースに、ミラー補償容量C1の他端とACパス容量C2の他端とが接続されている。トランジスタQ5aのドレインとトランジスタQ5bのドレイン(第5ノードn5)との接続ノードは、トランジスタQ1のゲートに接続されている。
【0054】
第2の実施形態の電源装置1aにおいても、ミラー補償容量C1の他端と入力電圧ノードn1との間にACパス容量C2を接続することで、PSR特性を改善しつつ、パストランジスタQ1の電源コンダクタンスが負側にシフトすることを防止でき、電源装置1aの出力電圧Voutが発振するおそれがなくなる。第2の実施形態の電源装置1aによれば、カスコード型差動増幅回路6にミラー補償容量C1を設けてPSR特性を改善することに加えて、ACパス容量C2を設けることで、PSR特性をさらに改善でき、アクティブな素子を追加する必要がなくなる。
【0055】
第1及び第2の実施形態に係る半導体回路10、10a及び電源装置1、1aは、例えば、種々の半導体チップの電源回路として使用することができる。半導体チップ内の種々の回路を、第1又は第2の実施形態に係る半導体回路10、10aから出力された出力電圧Voutで駆動することができる。半導体チップの動作状態により、負荷回路3を流れる負荷電流が変動する。また、環境条件等により、半導体回路10、10aの入力電圧VCCH(例えば、電源電圧)の電圧レベルが変動する。このような負荷電流や入力電圧VCCHの変動が生じても、半導体回路10、10a内にACパス容量C2を設けて、その容量値を最適化することで、PSR特性を改善しつつ、出力電圧Voutの発振を防止できる。
【0056】
本発明の実施形態は、下記のようにまとめることができる。
[付記1]
入力電圧が入力される第1ノードと出力電圧が出力される第2ノードとの間に接続される第1トランジスタと、
前記第1ノードと第1電圧に設定される第3ノードとの間にカスコード接続される複数の第2トランジスタを有するカスコード接続回路と、
前記第2ノードと、前記複数の第2トランジスタのうちの1の第2トランジスタの第4ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第1ノードと第4ノードとの間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記1の第2トランジスタの第5ノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、半導体回路。
[付記2]
前記第1トランジスタの電源コンダクタンスが負側にシフトしないように、前記第2キャパシタの容量値が設定される、付記1に記載の半導体回路。
[付記3]
前記第1トランジスタのゲート電圧は、前記第2ノードの出力電圧に相関する電圧と前記入力電圧より低く前記第1電圧より高い第2電圧との電位差に応じて制御される、付記1又は2に記載の半導体回路。
[付記4]
前記カスコード接続回路のうちの前記1の第2トランジスタよりも前記第1ノード側に接続される他の第2トランジスタのゲートには、前記第2ノードの出力電圧に相関する電圧と前記第2電圧との電位差に応じた電圧が供給される、付記3に記載の半導体回路。
[付記5]
前記カスコード接続回路を含む差動増幅回路と、
前記第2ノードと前記第3ノードとの間に接続され、前記出力電圧を分圧した分圧電圧を生成する分圧回路と、を備え、
前記差動増幅回路は、前記分圧電圧と前記第2電圧との電位差に応じた電圧を出力し、
前記第1トランジスタのゲート電圧は、前記差動増幅回路の出力電圧に応じて制御される、付記3に記載の半導体回路。
[付記6]
前記差動増幅回路は、前記分圧電圧と前記第2電圧との電位差に応じた電圧を、前記他の第2トランジスタのゲートに供給する、付記5に記載の半導体回路。
[付記7]
前記差動増幅回路は、
第3トランジスタを有する電流源と、
ゲート同士が互いに接続される2つの第4トランジスタを有するカレントミラー回路と、
一方の前記第4トランジスタと前記第3トランジスタとの間にカスコード接続される複数の第5トランジスタを有する第1カスコード接続部と、
他方の前記第4トランジスタと前記第3トランジスタとの間にカスコード接続される複数の第6トランジスタを有する第2カスコード接続部と、を有し、
前記カスコード接続回路は、前記第1カスコード接続部と前記カレントミラー回路の一部とを含む、付記5に記載の半導体回路。
[付記8]
前記カスコード接続回路の前記複数の第2トランジスタは、第1導電型のトランジスタと第2導電型のトランジスタとを含む、付記1乃至7のいずれか一項に記載の半導体回路。
[付記9]
前記複数の第2トランジスタのうち、前記第1導電型のトランジスタのドレインと前記第2導電型のトランジスタのドレインとが接続されるノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、付記8に記載の半導体回路。
[付記10]
入力電圧が入力される第1ノードと、
出力電圧が出力される第2ノードと、
第1電圧に設定される第3ノードと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続される第1トランジスタと、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間にカスコード接続される複数の第2トランジスタを有するカスコード接続回路と、
前記第2ノードと、前記複数の第2トランジスタのうちの1の第2トランジスタの第4ノードとの間に接続される第1キャパシタと、
前記第4ノードと前記第1ノードとの間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記1の第2トランジスタの第5ノードは、前記第1トランジスタのゲートに接続される、電源装置。
【0057】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、1a 電源装置、2 カスコード接続回路、3 負荷回路、4 分圧回路、5 差動増幅回路、6 カスコード型差動増幅回路、7 第1カスコード接続部、8 第2カスコード接続部、10、10a 半導体回路、100 電源装置
図1
図2
図3
図4
図5