(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20250526BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20250526BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250526BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20250526BHJP
C07C 1/04 20060101ALN20250526BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B15/08 302
C25B15/08 304
C07C1/04
(21)【出願番号】P 2021208893
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 武彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 斗
(72)【発明者】
【氏名】大田 裕之
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-536736(JP,A)
【文献】特表2021-512223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を電解して還元するカソード部と、水を電解して酸化するアノード部と、前記カソード部と前記アノードとの間に配置された隔膜とを備える電気化学反応部と、
前記カソード部に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、
前記カソード部から排出され、少なくとも一酸化炭素を含む第1の排出物を用いて、液体燃料を合成する液体燃料合成部と、
前記アノード部から排出され、二酸化炭素及び酸素を含む第2の排出物と、前記液体燃料合成部から排出され、炭化水素、一酸化炭素、及び水素から選ばれる少なくとも1つを含む第3の排出物とを反応させるオフガス反応部と、
前記オフガス反応部から排出され、二酸化炭素及び水を含む第4の排出物を冷却し、前記第4の排出物から水を除去すると共に、前記水が除去された第4の排出物を前記二酸化炭素供給部又はその上流に送る冷却部と
を具備
し、
前記第2の排出物は、40体積%以上80体積%以下の前記二酸化炭素を含む、二酸化炭素変換装置。
【請求項2】
前記オフガス反応部は燃焼器を備える、請求項1に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項3】
さらに、前記オフガス反応部に酸素を供給する酸素供給部を具備する、請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項4】
さらに、前記オフガス反応部に補助燃料を供給する補助燃料供給部を具備する、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項5】
前記第1の排出物は前記一酸化炭素及び水素を含む、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項6】
さらに、前記液体燃料合成部に水素を供給する水素供給部を具備する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項7】
前記
第3の排出物は、前記炭化水素、前記一酸化炭素、及び前記水素を含む、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の二酸化炭素変換装置。
【請求項8】
カソード部と、アノード部と、前記カソード部と前記アノードとの間に配置された隔膜とを備える電気化学反応部を用いて、前記カソード部に二酸化炭素を供給し、前記二酸化炭素を電解して還元すると共に、前記アノード部に水を含む電解液を供給し、前記電解液を電解して酸化する工程と、
液体燃料合成部を用いて、前記カソード部から排出され、少なくとも一酸化炭素を含む第1の排出物から液体燃料を合成する工程と、
オフガス反応部を用いて、前記アノード部から排出され、二酸化炭素及び酸素を含む第2の排出物と、前記液体燃料合成部から排出され、炭化水素、一酸化炭素、及び水素から選ばれる少なくとも1つを含む第3の排出物とを反応させる工程と、
前記オフガス反応部から排出され、二酸化炭素及び水を含む第4の排出物を冷却し、前記第4の排出物から水を除去すると共に、前記水が除去された第4の排出物を前記二酸化炭素供給部又はその上流に送る工程と
を具備し、
前記第2の排出物は、40体積%以上80体積%以下の前記二酸化炭素を含む、二酸化炭素変換方法。
【請求項9】
前記第2の排出物と前記第3の排出物とを反応させる工程は、前記第3の排出物に含まれる前記炭化水素、前記一酸化炭素、及び前記水素から選ばれる少なくとも1つを、前記第2の排出物に含まれる前記酸素を少なくとも用いて燃焼させる工程を備える、請求項8に記載の二酸化炭素変換方法。
【請求項10】
前記第2の排出物と前記第3の排出物とを反応させる工程において、前記第3の排出物に含まれる前記炭化水素、前記一酸化炭素、及び前記水素から選ばれる少なくとも1つの燃焼割合を高めるように、前記オフガス反応部に酸素を供給する、請求項8又は請求項9に記載の二酸化炭素変換方法。
【請求項11】
前記第2の排出物と前記第3の排出物とを反応させる工程において、前記第2の排出物に含まれる前記酸素の反応割合を高めるように、前記オフガス反応部に補助燃料を供給する、請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の二酸化炭素変換方法。
【請求項12】
前記オフガス反応部の内部温度が規定値以下になるように、前記カソード部に供給する二酸化炭素の一部を前記オフガス反応部に供給する、請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の二酸化炭素変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に化石燃料を燃焼させることで発生する二酸化炭素(CO2)は、温室効果による地球温暖化の主因と考えられている。このようなCO2の大規模発生源としては、火力発電所や製鉄所等が挙げられる。これらのCO2発生源から排出される排ガスからCO2を除去し、大気への放出を抑制すれば、効率的に温暖化の原因を取り除くことが可能となる。排ガスから除去したCO2は、大気から確実に隔離するために地中へ貯留することが提案されている。その一方、CO2を何等かの手段で還元すれば、化石資源に由来する燃料や化学品と同様の炭素化合物に再生することができる。
【0003】
水(H2O)を酸化して酸素(O2)を生成するアノード部と、CO2を還元して炭素化合物を生成するカソード部とを備えたCO2電解装置は、CO2の炭素化合物への変換に好適である。CO2電解装置を太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーで駆動すれば、化石資源の使用を抑制することができ、新たなCO2の発生を最小限に留めながら、CO2を炭素化合物に変換することが可能である。
【0004】
上記したCO2電解装置によれば、CO2から直接的に一酸化炭素(CO)、メタノール(CH3OH)、エチレングリコール(C2H6O2)等の炭素化合物を製造することができるが、これらを中間生成物として、より付加価値の高い炭素化合物を製造することも可能である。例えば、水素(H2)とCO2電解装置で製造したCOとを液体燃料合成反応装置で合成することにより、ガソリンや軽油といった一般的な液体燃料を製造することができる。このようなCO2電解装置と液体燃料合成反応装置を含む二酸化炭素変換装置においては、CO2の利用効率を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6870956号
【文献】特許第6896748号
【文献】特許第5767497号
【文献】特開2021-147679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、CO2の利用効率を高めることを可能にした二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の二酸化炭素変換装置は、二酸化炭素を電解して還元するカソード部と、水を電解して酸化するアノード部と、前記カソード部と前記アノードとの間に配置された隔膜とを備える電気化学反応部と、前記カソード部に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、前記カソード部から排出され、少なくとも一酸化炭素を含む第1の排出物を用いて、液体燃料を合成する液体燃料合成部と、前記アノード部から排出され、二酸化炭素及び酸素を含む第2の排出物と、前記液体燃料合成部から排出され、炭化水素、一酸化炭素、及び水素から選ばれる少なくとも1つを含む第3の排出物とを反応させるオフガス反応部と、前記オフガス反応部から排出され、二酸化炭素及び水を含む第4の排出物を冷却し、前記第4の排出物から水を除去すると共に、前記水が除去された第4の排出物を前記二酸化炭素供給部又はその上流に送る冷却部とを具備する。第2の排出物は、40体積%以上80体積%以下の前記二酸化炭素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の二酸化炭素変換装置を示す図である。
【
図2】
図1に示す二酸化炭素変換装置の第1の変形例を示す図である。
【
図3】
図1に示す二酸化炭素変換装置の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の二酸化炭素変換装置及び二酸化炭素変換方法について、図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。なお、以下の説明における“~”の記号は、それぞれの上限値と下限値の間の範囲を示すものである。その場合、各範囲は上限値及び下限値を含むものである。
【0010】
図1は実施形態の二酸化炭素変換装置1を示す図である。
図1に示す二酸化炭素変換装置1は、カソード部2とアノード部3と隔膜4を備える電気化学反応部5と、カソード部2に二酸化炭素(CO
2)を供給するCO
2供給部6と、カソード部2から排出される第1の排出物を用いて炭素含有の液体燃料を合成する液体燃料合成部7と、
アノード部3から排出される第2の排出物と
液体燃料合成部7から排出される第3の排出物とを反応させるオフガス反応部8と、オフガス反応部8から排出される第4の排出物を冷却し、第4の排出物から水(H
2O)を除去すると共に、H
2Oが除去された第4の排出物をCO
2供給部6又はその上流に供給する冷却部9とを具備する。
【0011】
CO2供給部6はカソード部2と接続されており、CO2供給部6からカソード部2にCO2含有ガスG1が供給される。CO2供給部6からカソード部2に供給されるCO2含有ガスG1において、CO2濃度は80体積%以上100体積%の範囲であることが好ましい。火力発電所、廃棄物焼却場、製鉄所等から排出されるCO2を含む排出ガスG2を利用する場合には、排出ガスG2からCO2を分離回収するCO2分離回収部10を設け、CO2濃度を高めたCO2ガスG3をCO2供給部6に供給するようにしてもよい。CO2供給部6は、CO2分離回収部10で回収したCO2ガスG3、及び後述する冷却部9でH2Oが除去されたCO2ガスG4を合わせて、カソード部2に適切な流量のCO2を供給するように構成されている。そのため、CO2供給部6はCO2量調整手段を有しており、その他に一時的にCO2を貯蔵する容器等を有していてもよい。
【0012】
電気化学反応部5は電解セルを有するCO2電解装置であり、カソード部2とアノード部3と隔膜4を備える。カソード部2は還元電極(カソード)を、アノード部3は酸化電極(アノード)を備えており、少なくともアノード部3には電解液が満たされている。アノード部3は電解液L1を供給する電解液供給部11に接続されている。カソード部2は、CO2ガスを流通させるようにしてもよいし、CO2を含む電解液を流通又は満たすようにしてもよい。還元電極及び酸化電極には図示しない電源が接続されている。カソード部2とアノード部3とは、水素イオン(H+)や水酸化物イオン(OH-)等のイオンを移動させることが可能な隔膜4、例えばイオン交換膜により分離されている。電気化学反応部5は単一の電解セルで構成されていてもよいし、複数の電解セルが積層されて一体化された構成を有していてもよい。
【0013】
電気化学反応部5において、カソード部2では供給されたCO2が電解されて還元される。CO2の還元により一酸化炭素(CO)が生成される。また、アノード部3では電解液中のH2Oが電解されて酸化される。H2Oの酸化により酸素(O2)が生成される。下記の(1)式に示すように、電解液中のH2Oの酸化反応が生じ、電子が失われ、酸素(O2)と水素イオン(H+)とが生成される。生成された水素イオン(H+)の一部は、隔膜4を介してカソード部2に移動する。
2H2O → 4H++O2+4e- …(1)
アノード部3で生成された水素イオン(H+)がカソード部2に到達すると、下記の(2)式に示すように、CO2の還元反応が生じて一酸化炭素(CO)が生成される。
2CO2+4H++4e- → 2CO+2H2O …(2)
【0014】
カソード部2ではCO2の還元反応に加えて、下記の(3)式に示すように、水(H2O)の還元反応により水素(H2)が副生する場合がある。
2H2O → 4H++O2+4e- …(3)
さらに、アノード部3ではH2Oの酸化によるO2の生成に加えて、CO2が副生する場合がある。例えば、下記の(4)式に示すように、カソード部2に供給されたCO2が電解されてCOと炭酸イオン(CO3
2-)が生成される。下記の(5)式に示すように、生成された炭酸イオンからアノード部3でCO2とO2とが生成される。
2CO2+2e- → CO+CO3
2- …(4)
CO3
2- → CO2+0.5O2+2e- …(5)
【0015】
カソード部2で生成されたCOとH2は、それらの混合ガス(第1の排出物)G5として液体燃料合成部7に供給される。また、アノード部3で生成されたO2とCO2を含むガスは、それら混合ガス(第2の排出物)G6として、アノード部3のオフガスとなる。O2とCO2を含むオフガスG6は、オフガス反応部8に供給される。
【0016】
液体燃料合成部7では、触媒を用いてCOとH2を反応させ、分子内の炭素原子数が1又はそれ以上の炭化水素化合物が生成される。液体燃料の合成反応としては、金属触媒の存在下において、1~4MPa、200~300℃の条件下で、COとH2と反応させるフィッシャー・トロプシュ合成反応が挙げられるが、これ以外の合成反応を適用してもよい。合成反応に必要なH2は、混合ガス(第2の排出物)G3に含まれるH2に加えて、H2供給部12からH2を供給するようにしてもよい。この際、液体燃料合成部7におけるCOとH2との比が適切となるように、混合ガスG5の組成をあらかじめ把握し、H2供給部12から適切な量のH2を供給することが好ましい。
【0017】
液体燃料合成部7において、上記したフィッシャー・トロプシュ合成反応に応じた反応条件を適用した場合、炭素含有の液体燃料として炭素数が10~20程度の炭化水素化合物が生成される。これらは灯油や軽油と同等の成分の混合物であり、蒸留による分離、異性化処理等を行ってもよい。一方、液体燃料合成部7では、液体燃料の成分と成り得ない軽質の成分、例えばメタン(CH4)やエタン(C2H6)等も生成される。このような低級炭化水素はこの形態で反応が終了し、液体燃料の合成反応には寄与しないため、第2の排出物G7として排出される。この際、気体の状態である未反応のCOやH2が、少量ではあるが、低級炭化水素に伴って排出される。
【0018】
液体燃料合成部7から排出される排出物G7は、例えばCH4、C2H6、CO、H2を含む可燃性のオフガスとなる。オフガスG5の例としては、CH4が53.49体積%、COが15.56体積%、H2が27.29体積%、といった組成を有する混合ガスが挙げられる。液体燃料合成部7から排出されるオフガスG7は、CH4やC2H6等の炭素数が1~3程度の低級炭化水素、CO、及びH2から選ばれる少なくとも1つを含む可燃性のガスであればよい。ただし、オフガスG7は各成分の含有量の増減はあったとしても、低級炭化水素、CO、及びH2を含むことが一般的である。
【0019】
前述したように、アノード部3ではH2Oが酸化されてO2が生成するほか、CO2が副生するため、O2とCO2を含むアノード部3のオフガスG6となって排出される。アノード部3のオフガスG6中のCO2濃度は、電気化学反応部(CO2電解装置)5の運転条件等にもよるが、おおよそ40~80体積%となる。このようなアノード部3のオフガスG6を大気中に放出した場合、地球温暖化等の環境への影響が懸念されるほか、回収したCO2の利用効率を低下させることになる。
【0020】
CO2とO2の混合物からCO2を分離する方法としては、天然ガスからのCO2の分離や火力発電所の排ガスからのCO2の分離に用いられる化学吸収法が挙げられる。しかし、混合ガスG6のO2濃度は20~60体積%と高いため、化学吸収法で用いるCO2吸収液の劣化が急速に進み、経済性を大幅に低下させる。同様に、有機物のCO2分離膜を使用する場合においても、膜の劣化が懸念される。一方、ゼオライト等の無機物を吸着材として用いる圧力スイング法では、吸着材の劣化のおそれは低いものの、O2を除去してCO2の純度を上げるためには、数段の工程が必要となるため、設備が過大となる。
【0021】
そこで、実施形態の二酸化炭素変換装置1では、液体燃料合成部7から排出されたオフガスG7とアノード部3から排出されたオフガスG6とを混合させ、オフガス反応部8で例えば燃焼させる。オフガス反応部8には、例えばボイラーやガスタービンのような燃焼器が用いられる。オフガスG7に含まれる可燃性成分とオフガスG4に含まれるO2とが化学量論的に釣り合う場合、オフガス反応部8から排出される排ガスの大部分がCO2とH2Oの混合ガスG8となる。混合ガスG8を冷却すると、水蒸気状態のH2Oが凝縮水となり、気体のCO2から容易に分離することができる。混合ガスG8から分離したH2OL2はアノード部3に戻して再利用してもよい。
【0022】
冷却部9で混合ガスG8中のH2Oを冷却して除去し、高純度のCO2となった冷却後のガス(CO2ガス)G4を、CO2供給部6に戻すことによって、CO2として再利用することができる。これによって、CO2の利用効率を大幅に向上させることが可能となる。冷却後のガスG4中のCO2濃度が低い場合、CO2供給部6の上流側に位置するCO2分離回収部10に戻してもよく、これによってもCO2の利用効率を高めることができる。冷却後のガスG4におけるO2濃度は、混合ガスG6におけるO2濃度と比較して大幅に小さくなっているため、CO2分離回収部10として化学吸収法を用いた場合でも、吸収液の劣化は抑制され、経済性の問題が生じるおそれが少ない。
【0023】
オフガス反応部8においては、燃料合成部7のオフガスG7に含まれるCH4、C2H6、CO、H2の燃焼反応が下記の反応式(6)~(9)に基づいて進行する。なお、CH4のC2H6の燃焼はいずれか一方であってもよい。
CH4+2O2 → CO2+2H2O …(6)
2C2H6+7O2 → 4CO2+6H2O …(7)
2CO+O2 → 2CO2 …(8)
2H2+O2 → 2H2O …(9)
【0024】
上記した燃焼の反応式(6)~(9)において、液体燃料合成部7のオフガスG7に由来する可燃性成分とアノード部3のオフガスG6に由来するO
2とが化学量論的に釣り合わない場合、
図2に示すように、O
2供給部13や補助燃料供給部14からそれぞれO
2や補助燃料を供給してもよい。この調整のために、オフガス反応部8に供給される液体燃料合成部7のオフガスG7とアノード部3のオフガスG6の組成を予め測定装置により把握しておくことが好ましい。補助燃料供給部14から供給される補助燃料は、含炭素化合物又はH
2であることが好ましく、さらにCH
4が好適である。
【0025】
オフガス反応部8の1つの形態はボイラーのような燃焼装置であり、液体燃料合成部7のオフガスG7とアノード部3のオフガスG6との反応、すなわち燃焼により熱を得るようにしてもよい。さらに、オフガス反応部8の燃焼温度が構成材質の限界を超えないよう、液体燃料合成部7のオフガスG7及びアノード部3のオフガスG6の供給量を制御することが好ましく、さらに
図3に示すようにCO
2供給部6から燃焼温度を調整するために、CO
2供給部6からCO
2ガスG9の一部を供給してもよい。オフガス反応部8としてのボイラーのような燃焼器から得られた熱を、実施形態の二酸化炭素変換装置1内で用いれば、より効率を高めることが可能となる。
【0026】
上述したように、実施形態の二酸化炭素変換装置1によれば、電気化学反応部(CO2電解装置)5のアノード部3から排出されるCO2とO2の混合ガスを含むオフガスG6を、液体燃料合成部7からのオフガスG7である可燃性副生物を利用して、オフガス反応部8でCO2とH2Oに変換することによって、CO2の利用効率を高めることが可能となる。さらに、オフガス反応部8から排出されるCO2とH2Oの混合物G8を冷却することによって、H2Oを分離することができる。これによって、純度を高めたCO2ガスG4をCO2供給部6又はその上流に戻すことができる。従って、CO2の利用効率を高めることが可能な二酸化炭素変換装置1を提供することができる。
【0027】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1…二酸化炭素変換装置、2…カソード部、3…アノード部、4…隔膜、5…電気化学反応部、6…CO2供給部、7…液体燃料合成部、8…オフガス反応部、9…冷却部、10…CO2分離回収部、11…H2供給部、12…O2供給部、13…補助燃料供給部、G1…CO2含有ガス、G2…排出ガス、G3…CO2ガス、G4…CO2ガス、G5…第1の排出物、G6…第2の排出物(オフガス)、G7…第3の排出物(オフガス)、G8…第4の排出物。