(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/578 20210101AFI20250526BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20250526BHJP
H01M 50/559 20210101ALI20250526BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M50/193
H01M50/342 101
H01M50/531
H01M50/545
H01M50/559
(21)【出願番号】P 2021565504
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2020045746
(87)【国際公開番号】W WO2021124995
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019227988
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵輔
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157750(WO,A1)
【文献】特開平10-188934(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111318(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143287(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/10-50/198
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外装缶、前記外装缶の一端を塞ぐ封口体、前記外装缶の内部に配置された電極体、及び前記外装缶と前記封口体の間に配置された絶縁性を有する樹脂部品を備え、
前記封口体は、前記電極体から導出された電極リードに電気的に接続された金属部品を有し、
前記金属部品は、前記金属部品と前記電極リードとの接続部より半径方向内側に易破断部を有し、前記樹脂部品を介して前記外装缶によりカシメ固定されており、
前記易破断部より前記金属部品の半径方向内側において、前記樹脂部品が前記金属部品によってカシメ固定されて
おり、
前記金属部品は、内端板部、外端板部、及び前記内端板部と前記外端板部を連結する連結部を有し、前記内端板部の径方向外側のフランジ部が前記外装缶の一端に前記樹脂部品を介してカシメ固定され、前記フランジ部と前記外装缶の一端の間から延出された前記樹脂部品の先端部が前記内端板部と前記外端板部にカシメ固定されている、
円筒形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形電池において、
前記易破断部は環状の溝により形成されている、円筒形電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の円筒形電池において、
電池内圧が上昇した場合に前記易破断部が周方向全体にわたって破断し、前記金属部品の中心部と、前記電極リードとの間の電流経路が遮断され、電池内圧がさらに上昇した場合に、前記樹脂部品において、前記易破断部の外側部分が破断することにより、内部のガスが排出されるように構成される、
円筒形電池。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の円筒形電池において、
電池内圧が上昇した場合に前記易破断部が周方向全体にわたって破断し、前記金属部品の中心部と、前記電極リードとの間の電流経路が遮断され、電池内圧がさらに上昇した場合に、前記樹脂部品の先端部が前記金属部品から外れることにより、内部のガスが排出されるように構成される、
円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年二次電池は、電気自動車用の電源や、自然エネルギーを活用するための蓄電装置などへ用途が拡大しており、さらなる高容量化が望まれる。電気自動車や蓄電装置では、多数の二次電池を、外部リードを介して直列または並列に接続して形成した電池モジュールが使用される。二次電池の高容量化に伴い、二次電池及び電池モジュールにはより高い安全性が求められている。従来、二次電池の過充電等で電池内部圧力が異常に上昇した場合に、二次電池内部の電流経路を遮断することで、未然に二次電池の熱暴走及び破裂が防止されている。
【0003】
特許文献1には、安全性を確保するために外装缶の一端を封止する封口体に電流遮断機構を組み込んだ円筒形電池が記載されている。この電流遮断機構は、金属製の弁体、絶縁部材、及び通気孔を有する金属体を組み合わせることにより構成される。弁体と金属体とはそれらの中心部同士が接続されており、それらの外周部の間に絶縁部材が介在している。電池内圧が上昇すると、弁体が金属体との接続部を電池外方へ引っ張り、この接続部、または金属体に設けられた薄肉部が破断して弁体と金属体との間の電流経路が遮断される。さらに、電池内圧が上昇すると、弁体の薄肉部が起点となって弁体が破断して電池内部のガスが排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成の場合、外装缶の一端を塞ぐ封口体に電流遮断機能を持たせるために、封口体が、弁体、絶縁部材、及び金属体の3部品を含んでいる。これらの部品は、電池の異常時に確実に動作することを要求され、複雑かつ高精度な加工形状であることが不可欠である。これにより、特許文献1に記載された構成のように封口体の構成部品が多くなることは、加工において工数の増加等の大きな負担となるため、封口体の構成部品の点数を少なくすることが望まれる。
【0006】
本開示の目的は、外装缶の一端を塞ぐ封口体を構成する金属部品に電流遮断機能を持たせることにより、封口体の構成部品の点数を少なくできる円筒形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る円筒形電池は、有底筒状の外装缶、外装缶の一端を塞ぐ封口体、外装缶の内部に配置された電極体、及び外装缶と封口体の間に配置された絶縁性を有する樹脂部品を備え、封口体は、電極体から導出された電極リードに電気的に接続された金属部品を有し、金属部品は、金属部品と電極リードとの接続部より半径方向内側に易破断部を有し、樹脂部品を介して外装缶によりカシメ固定されており、易破断部より金属部品の半径方向内側において、樹脂部品が金属部品によってカシメ固定されている、円筒形電池である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る円筒形電池によれば、封口体を構成する金属部品に電流遮断機能を持たせることができるため、封口体の構成部品の点数を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の一例の円筒形電池の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の状態から電池内圧が上昇し電流遮断機構が作動した状態を示している
図1のA部に対応する図である。
【
図3】
図3は、
図2の状態から電池内圧がさらに上昇してガス排出機構が作動した状態を示している
図1のA部に対応する図である。
【
図4】
図4は、比較例の円筒形電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、円筒形電池の用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。以下では、円筒形電池が非水電解質二次電池である場合を説明するが、円筒形電池はこれに限定するものではない。
【0011】
図1は、実施形態の円筒形電池10の断面図である。例えば、円筒形電池10には、リチウムイオン電池などの非水電解質二次電池が用いられる。円筒形電池10は、略円筒形である有底筒状の外装缶100の内部に電極体20と、非水電解質(図示せず)とが収容されて構成される。外装缶100の一端(
図1の上端)の開口には、絶縁性を有する樹脂部品18を介して封口体11が固定される。これにより、外装缶100の一端の開口が、樹脂部品18を介して封口体11により塞がれる。樹脂部品18は絶縁部材であり、外装缶100と封口体11との間を密封するガスケットとしての機能を有するが、後述のように電池内圧が上昇したときにガスを排出する機能も有する。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0012】
電極体20は、巻回型であり、正極板21と、負極板22と、セパレータ23とを有し、正極板21と負極板22がセパレータ23を介して渦巻状に巻回されてなる。以下では、電極体20の巻き軸方向一方側を「上」、巻き軸方向他方側を「下」という場合がある。
【0013】
封口体11は、金属部品12のみから構成されている。金属部品12は、正極端子としての機能と、電池内圧が上昇したときに電流経路を遮断する電流遮断機構としての機能とを有する。金属部品12は、電池の外端に配置される円板状の外端板部13と、電池の内部側端に配置される円板状の内端板部15と、外端板部13及び内端板部15を連結する円板状の連結部17とを有する。外端板部13の外径は、内端板部15の外径より小さい。連結部17の外径は、外端板部13及び内端板部15の外径より小さい。外端板部13、内端板部15及び連結部17は、中心軸が一致する同軸状である。これにより、金属部品12において外端板部13及び内端板部15の間には、円形の溝部12aが形成され、内端板部15には、連結部17より径方向外側にフランジ部15aが形成される。金属部品12は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金により作製することができる。外端板部13で構成される外部端子の外面(
図1の上面)には、電池モジュール(図示せず)における他の円筒形電池と電気的に接続するための外部リード(図示せず)が溶接により接合される。
【0014】
内端板部15において、フランジ部15aの径方向一部の内側面には、電極体20から導出された正極リード21aの端部が接続されている。正極リード21aは、電極リードに相当する。さらに、フランジ部15aは、金属部品12と正極リード21aとの接続部Gより半径方向内側に易破断部16を有する。易破断部16は、フランジ部15aの径方向一部に形成された環状の薄肉部であり、フランジ部15aの内側面(
図1の下側面)の径方向一部に円環状の溝15bが形成されることにより、易破断部16が形成される。易破断部16はフランジ部15aの外側面(
図1の上側面)に形成することもできる。
【0015】
樹脂部品18は、外装缶100の一端(
図1の上端)に形成された開口の内周面と封口体11の外周面との間に配置される。樹脂部品18は、周方向一部の断面形状が、電池外側端部(
図1の上端部)が電池内側端部(
図1の下端部)より長い略J字形であり、全体が平面視で環状に形成される。内端板部15のフランジ部15aは、樹脂部品18を介して外装缶100によりカシメ固定される。樹脂部品18は、外装缶100の一端と封口体11の外周面の間に圧縮状態で保持されるとともに、易破断部16より金属部品12の半径方向内側において金属部品12によってカシメ固定される。例えば、
図1に示すように、フランジ部15aと外装缶100の一端の間から延出された樹脂部品18の先端部が外端板部13と内端板部15によってカシメ固定されている。樹脂部品18の先端部が全周にわたって金属部品12によってカシメ固定されることで、樹脂部品18の先端部と封口体11の間にも封止構造が形成される。これにより、電池内圧が上昇して易破断部16が破断しても、電池内部の密閉性が確保される。樹脂部品18には、絶縁性を確保することができ、電池特性に影響を与えない材料を用いることができる。樹脂部品18に用いられる材料としてはポリマー樹脂が好ましく、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が例示される。
【0016】
上述のように、円筒形電池10においては、電池内圧の上昇による易破断部16の破断後も電池内部の密閉性が確保される。電池内圧がさらに上昇すると、
図2に示すように、樹脂部品18が電池外側へ変形して外端板部13を含む部分が金属部品12から易破断部16に沿って切り離される。これにより、外部リードが接続される金属部品12の中心部と、正極リード21aとの間の電流経路が遮断されるように電流遮断機構が構成される。電池内圧がさらに上昇した場合、
図3に示すように、樹脂部品18の一部が破断する。これにより、電池内部のガスが排出されるようにガス排出機構が構成される。樹脂部品18の強度は材質や厚みにより調整することができるが、樹脂部品18に環状の溝のような易破断部を設けてもよい。
【0017】
上記の電流遮断機構及びガス排出機構についてさらに詳細に説明する。易破断部16が破断するときの電池内圧をP1とし、樹脂部品18が破断するときの電池内圧をP2とし、さらに、樹脂部品18が金属部品12から外れるときの電池内圧をP3とした場合に、P1<P2<P3の関係が成立するように易破断部16及び樹脂部品18の破断強度、並びに金属部品12による樹脂部品18の固定強度が規制される。電池内圧がP1に達したとき、易破断部16の一部のみが破断した場合でも、樹脂部品18は電池外方へ変形しようとするため、外部リードが接続される部分を金属部品12から易破断部16に沿って切り離すことができる。易破断部16の破断後に電池内圧が上昇してP2に達すると樹脂部品18が破断して電池内部のガスが排出される。また、P1<P3<P2の関係が成立するように易破断部16及び樹脂部品18の破断強度、並びに金属部品12による樹脂部品18の固定強度が規制されてもよい。この場合も上記と同様に外部リードが接続される部分を金属部品12から易破断部16に沿って切り離すことができる。易破断部16の破断後に電池内圧が上昇してP3に達すると樹脂部品18の先端部が金属部品12から外れて電池内部のガスが排出される。上記の関係式において、P2とP3がP2=P3の関係を満たしてもよい。
【0018】
易破断部16は環状に形成することが好ましい。内端板部15の径方向に厚みを変化させた段差部によって環状の易破断部を形成してもよい。電流遮断機構が実現できる範囲で易破断部16はC字状のように一部が非連続となっていてもよい。樹脂部品18の破断強度はその材質や厚みにより調整することができ、樹脂部品18にも易破断部を形成してもよい。樹脂部品18の易破断部は、例えば環状又はC字状の溝により形成することができる。樹脂部品18の径方向に厚みを変化させた段差部によって易破断部を形成してもよい。金属部品12による樹脂部品18の固定強度は、樹脂部品18を圧縮する際のプレス加工の圧力により調整することができる。
【0019】
次に、電極体20について説明する。電極体20は、外装缶100の内部に配置される。電極体20を構成する正極板21は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とを有する。例えば、正極集電体の両面に正極活物質層が形成される。正極集電体には、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極集電体の厚みは、例えば10μm~30μmである。
【0020】
正極活物質層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極板21は、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の分散媒を含む正極合剤スラリーを正極集電体の両面に塗布した後、乾燥及び圧延することにより作製される。
【0021】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属複合酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属複合酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO2(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0022】
上記導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
正極板21には、正極集電体を構成する金属の表面が露出した正極集電体露出部(図示
せず)が設けられる。正極集電体露出部は正極リード21aが接続される部分であって、
正極集電体の表面が正極活物質層に覆われていない部分である。正極リード21aの一端側部分は、例えば、超音波溶接によって正極集電体露出部に接合される。正極リード21aの他端側部分は、電極体20の上側に配置された円板状の第1絶縁板30に形成された開口(図示せず)を通って上方に導出し、金属部品12のフランジ部15aの下面(内面)に接続される。正極リード21aの材料には、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、ステンレス鋼などが用いられる。
【0024】
負極板22は、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質層とを有する。例えば、負極集電体の両面に負極活物質層が形成されている。さらに、負極板22は、巻き終わり端部に、負極集電体露出部(図示せず)が設けられる。負極集電体露出部は負極リード22aが接続される部分であって、負極集電体の表面が負極活物質層に覆われていない部分である。負極リード22aの一端側部分は、例えば、超音波溶接によって負極集電体露出部に接合される。負極リード22aの他端側部分は、電極体20の下側に配置された円板状の第2絶縁板31の外周側を通って外装缶100の底部に接続される。
【0025】
負極活物質層は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極板22は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極集電体の両面に塗布した後、乾燥及び圧延することにより作製される。
【0026】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、またはこれらを含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質層に含まれる結着剤には、例えば正極板21の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMCまたはその塩、ポリアクリル酸またはその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
負極板22は、正極板21にセパレータ23を介して積層した状態で、巻回して用いる。なお、負極リード22aを用いるとともに、または負極リード22aを省略して、負極板22の巻き終わり端部の最外周面の全周にわたって負極集電体露出部を配置し、その負極集電体露出部を外装缶100の円筒部の内周面に接触させて、負極板22を外装缶100に電気的に接続してもよい。これにより、より良好な集電性を確保できる。このとき、負極リード22aの一端側部分が、負極板22の巻き始め側端部に形成された負極集電体露出部に接合されてもよい。
【0028】
セパレータ23には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ23の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。セパレータ23の厚みは、例えば10μm~50μmである。セパレータ23は、電池の高容量化・高出力化に伴い薄膜化の傾向にある。セパレータ23は、例えば130℃~180℃程度の融点を有する。
【0029】
円筒形電池10は、例えば次のように組み立てる。例えば、鋼板を絞り加工することにより作製した有底円筒状の外装缶100の内側に、電極体20を下側の円板状の第2絶縁板31とともに挿入し、負極板22に接続された負極リード22aを、外装缶100の底部に溶接により接続する。次に、外装缶100の内側で電極体20の上側に円板状の第1絶縁板30を挿入し、外装缶100において第1絶縁板30より上部の開口側に、断面U字状の溝部101(
図1)を円周方向全周にわたり塑性加工によって形成する。その後、調製した非水電解質を電極体20が入れられた外装缶100の内部に所定量注入する。そして、正極板21に接続された正極リード21aを封口体11を構成する金属部品12のフランジ部15aに溶接により接続する。このとき、金属部品12の外周側には、予め樹脂部品18をカシメ固定しておく。例えば、金属部品12の内端板部15と外端板部13により樹脂部品18が圧縮されるようにプレス加工し、樹脂部品18を金属部品12にカシメ固定する。そして、正極リード21aを折り畳みながら、金属部品12を外装缶100の内側で溝部101の上に樹脂部品18を介して収納し、外装缶100の開口端部をかしめることで密閉型の円筒形電池10を作製する。このとき、封口体11の上端には、外端板部13が円筒形電池10の最上層部に露出する。
【0030】
なお、外装缶100の一端部の内側に、樹脂部品18と金属部品12とをカシメ固定しない状態で配置した後、金属部品12の外周部が、樹脂部品18を介して外装缶100の一端部でカシメ固定されてもよい。そして、その後、内端板部15と外端板部13により樹脂部品18が圧縮されるようにプレス加工してもよい。
【0031】
上記の円筒形電池10によれば、封口体11を構成する金属部品12に電流遮断機能を持たせることができるため、封口体11の構成部品の部品点数を少なくできる。これにより、加工精度が要求される部品の加工工数を少なくできるので、製造コストが低減される。
【0032】
図4は、比較例の円筒形電池10aの断面図である。比較例の円筒形電池10aは、
図1~
図3に示した円筒形電池10と異なり、外装缶100aの一端における封止構造が樹脂部品としてのガスケット34と、封口体11aとからなる。封口体11aは、金属製の弁体36、絶縁部材38、及び通気孔を有する金属体40の3部品からなる。弁体36と金属体40とはそれらの中心部同士が接続されており、それらの外周部の間に絶縁部材38が介在している。正極リード21aの電極体20から導出された端部は、弁体36及び金属体40の接続部より径方向外側で金属体40に接続される。金属体40は、弁体36との接続部で薄肉部となっている。電池内圧が上昇すると、弁体36が内圧を受けて上側に変形することで、弁体36が金属体40との接続部を電池外方へ引っ張り、この接続部、または金属体40に設けられた薄肉部が破断して、弁体36と、正極リード21aとの間の電流経路が遮断される。さらに、電池内圧が上昇すると、弁体36の薄肉部36aが起点となって弁体36が破断して電池内部のガスが排出される。このような比較例の円筒形電池10aでは、封口体11aに電流遮断機能を設けるための部品が3部品と多くなっているので、加工において工数の増加等の大きな負担となる。
図1~
図3の実施形態によれば、このような不都合を防止できる。
【符号の説明】
【0033】
10,10a 円筒形電池、11,11a 封口体、12 金属部品、12a 溝部、13 外端板部、15 内端板部、15a フランジ部、15b 溝、17 連結部、18 樹脂部品、20 電極体、21 正極板、21a 正極リード、22 負極板、22a 負極リード、23 セパレータ、30 第1絶縁板、31 第2絶縁板、34 ガスケット、36 弁体、36a 薄肉部、38 絶縁部材、40 金属体。