(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20250526BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20250526BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20250526BHJP
F02M 26/29 20160101ALI20250526BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20250526BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20250526BHJP
【FI】
F28F9/00 331
F28D9/00
B23K1/00 330H
F02M26/29
F02B29/04 A
F01N5/02 B
(21)【出願番号】P 2021571141
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049311
(87)【国際公開番号】W WO2021145224
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020006002
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】関谷 将仁
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037688(WO,A1)
【文献】特開2017-164787(JP,A)
【文献】特開2007-225190(JP,A)
【文献】特開2006-214656(JP,A)
【文献】特開2011-038752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0336147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00
F28D 1/00-13/00
B23K 1/00
F02M 26/29
F02B 29/04
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面(1a)に対向して開口部(1b)が設けられた周壁(1c)を有する箱状の筐体(1)と、
前記筐体(1)の開口部(1b)を被嵌する蓋体(7)と、
前記筐体(1)の内部に収納される一対の開口端(9a)を有する複数の偏平チューブ(9)が積層されたコア(11)と、
を具備し、
それらの部品間がろう付固定されているとともに、前記筐体(1)にダクトが設けられている熱交換器において、
前記筐体(1)は、コア(11)を収納するコア収納部(2)と、ダクト部(3)とからなり、
前記コア収納部(2)及び前記ダクト部(3)が、それぞれの継目部を介して一体化されており、
前記コア収納部(2)又は前記ダクト部(3)のいずれか一方の継目部が、他方の継目部の板厚分、前記コア(11)側に向けて段付きに形成された段付き部(5)を有し、
前記段付き部(5)に他方の継目部が嵌合されている状態で、前記コア収納部(2)又は前記ダクト部(3)の継目部近傍の外面が面一に形成されており、
前記蓋体(7)は、前記コア収納部(2)及び前記ダクト部(3)が一体化した筐体(1)の開口部(1b)に整合し、その蓋体(7)の外周縁に前記筐体(1)側に立ち上げられた立上げ縁部(8)を有することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
前記蓋体(7)に
は、コア(11)の内部を流通する流体の出入口孔(12)が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の熱交換器において、
前記コア収納部(2)の継目部に、前記段付き部(5)が形成されており、
前記複数の偏平チューブ(9)は、両開口端(9a)が厚み方向に拡開された拡開部(10)を有し、各偏平チューブ(9)の拡開部(10)で積層されて、前記コア(11)を形成しており、
前記各偏平チューブ(9)の開口端(9a)と前記段付き部(5)とが当接して、前記コア(11)が位置決めされている熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するものであり、特に、ダクトが設けられた熱交換器のケーシングの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インタークーラ―やエンジン、排熱再循環装置などの機器と熱交換器とを接続する手段として、
図8に示すように、パイプダクトを介して、それらの機器と熱交換器との間を連通させていた。別の手段としては、ダクトと熱交換器のケーシングとを一体形成することも考えられる。
また、熱交換器のチューブ積層体からなるコアの位置決めは、下記特許文献1に記載のように、ケースにコアを位置決めするためのビードを設けて行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図8のように、パイプダクトを介して機器と熱交換器とを接続すると、パイプダクトの製造費用がかかり、また、パイプダクトを熱交換器に接続する分の作業工程が増える。
別手段で述べたような構造は、ダクトが複雑な形状の場合、熱交換器のケーシングとの一体形成は難しい。
また、コアの位置決めについては、ケーシングにコアの位置決め用のビードを設ける加工やスペースが必要となる。
そこで、本発明は上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、底面1aに対向して開口部1bが設けられた周壁1cを有する箱状の筐体1と、
前記筐体1の開口部1bを被嵌する蓋体7と、
前記筐体1の内部に収納される一対の開口端9aを有する複数の偏平チューブ9が積層されたコア11と、
を具備し、
それらの部品間がろう付固定されているとともに、前記筐体1にダクトが設けられている熱交換器において、
前記筐体1は、コア11を収納するコア収納部2と、ダクト部3とからなり、
前記コア収納部2及び前記ダクト部3が、それぞれの継目部を介して一体化されており、
前記コア収納部2又は前記ダクト部3のいずれか一方の継目部が、他方の継目部の板厚分、前記コア11側に向けて段付きに形成された段付き部5を有し、
前記段付き部5に他方の継目部が嵌合されている状態で、前記コア収納部2又は前記ダクト部3の継目部近傍の外面が面一に形成されており、
前記蓋体7は、前記コア収納部2及び前記ダクト部3が一体化した筐体1の開口部1bに整合し、その蓋体7の外周縁に前記筐体1側に立ち上げられた立上げ縁部8を有することを特徴とする熱交換器である。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器において、
前記蓋体7には、コア11が接続される位置に対向して、コア11の内部を流通する流体の出入口孔12が設けられていることを特徴とする熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の熱交換器において、
前記コア収納部2の継目部に、前記段付き部5が形成されており、
前記複数の偏平チューブ9は、両開口端9aが厚み方向に拡開された拡開部10を有し、各偏平チューブ9の拡開部10で積層されて、前記コア11を形成しており、
前記各偏平チューブ9の開口端9aと前記段付き部5とが当接して、前記コア11が位置決めされている熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱交換器は、筐体1がコア収納部2とダクト部3とからなり、その分割部材どうしがそれぞれの継目部を介して一体化されており、コア収納部2又はダクト部3のいずれか一方の継目部が、他方の継目部の板厚分、コア11側に向けて段付きに形成された段付き部5を有し、その段付き部5に他方の継目部が嵌合されている状態で、コア収納部2及びダクト部3の継目部近傍の外面が面一に形成されている。
そして、その筐体1に嵌着する蓋体7は、コア収納部2及びダクト部3が一体化した筐体1の開口部1bに整合し、その蓋体7の外周縁に筐体1側に立ち上げられた立上げ縁部8を有するものである。
この構造により、ダクト部3が複雑な形状であっても、コア収納部2と一体化した筐体1を得ることができる。
また、一体化した筐体1の継目部近傍の外面が面一に形成され、その開口部1bに蓋体7が整合しているので、蓋体7の立上げ縁部8を直線的に立ち上げることができ、蓋体7の成形が容易になる。そして、コア収納部2とダクト部3が一体化された筐体1と蓋体7の嵌着部の隙間が少なくなりろう付け性が向上する。
請求項2に記載の熱交換器は、蓋体7のコア11が接続される位置に対向して、コア11の内部を流通する流体の出入口孔12が設けられているものである。
この構造により、熱交換器に接続される機器との位置決め精度が向上する。
請求項3に記載の熱交換器は、コア収納部2の継目部に段付き部5が形成されており、各偏平チューブ9の開口端9aと段付き部5とが当接して、コア11が位置決めされているものである。
この構造により、ビード等を設けずにコア11を位置決めすることができるので、その分、熱交換器の省スペース化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の熱交換器のケーシング構造の第1実施例の分解斜視図、及び組立て後の熱交換器の斜視図。
図2は
図1(B)のII部拡大図、及び
図2(A)のB-B矢視断面図。
図3は本発明の熱交換器のケーシング構造の第2実施例の分解斜視図、及び組立て後の熱交換器の斜視図。
図4は
図3(B)のIV部拡大図、及び
図4(A)のB-B矢視断面図。
図5は本発明の熱交換器のケーシング構造の第3実施例の分解斜視図、及び組立て後の熱交換器の斜視図。
図6は
図5(B)のVI部拡大図、及び
図6(A)のB-B矢視断面図。
図7はケーシングとダクトとの接続構造の他の例を示す分解斜視図。
図8は従来型熱交換器のケーシングとダクトとの接続構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施例につき、説明する。
各実施例の熱交換器は、ダクト部3とコア収納部2とを一体化した熱交換器である。
【実施例1】
【0009】
図1(A)は、本発明の熱交換器のケーシング構造の第1実施例の分解斜視図であり、同図(B)は、組立て後の熱交換器の斜視図である。
図2(A)は、
図1(B)のII部拡大図であり、同図(B)は、
図2(A)のB-B矢視断面図である。
この実施例の熱交換器は、底面1aに対向して開口部1bが設けられた周壁1cを有する箱状の筐体1と、筐体1の開口部1bを被嵌する蓋体7と、筐体1の内部に収納される一対の開口端9aを有する複数の偏平チューブ9が積層されたコア11を具備している。
図1(A)に示す如く、筐体1は、分割体からなり、コア11を収納するコア収納部2と、ダクト部3とを有する。コア収納部2とダクト部3には、コア収納部2の継目部6とダクト部3の継目部4が設けられ、それらの継目部を介して一体化されている。
この例では、ダクト部3の継目部4が、コア収納部2の継目部6の板厚分、コア11側に向けて段付きに形成された段付き部5を有する。この段付き部5に、コア収納部2の継目部6が、
図1(B)、
図2(A)、同図(B)の如く、嵌合されている。それらが嵌合された状態において、コア収納部2の継目部6近傍の外面が面一に形成されている。
図1のように、ダクト部3が複雑な形状であっても、形成が容易なコア収納部2と複雑な形状のダクト部3とを分割体とすることにより、ダクト部3とコア収納部2との一体化を容易に行うことができる。
この例では、ダクト部3が、コア収納部2のコア11内を流通する流体の流通方向に対して曲折しており、継目部4からなだらかに下向き傾斜している。このダクト部3の曲折の度合い、傾斜の度合い等の形状は、適宜変更できる。
この例の蓋体7は、一枚の金属板からなり、コア収納部2及びダクト部3が一体化した筐体1の開口部1bに整合している。そして、その蓋体7の外周縁には、筐体1側に立ち上げられた立上げ縁部8を有する。
一体化した筐体1の継目部近傍の外面が面一に形成され、その開口部1bに蓋体7が整合しているので、蓋体7の立上げ縁部8を直線的に立ち上げることができ、蓋体7の成形が容易になる。そして、コア収納部2とダクト部3が一体化された筐体1と蓋体7の嵌着部の隙間が少なくなりろう付け性が向上する。
図1の蓋体7に示すように、コア11の内部を流通する流体(第1流体)の出入口孔12をコア11が接続される位置に対向して蓋体7に一体に設けることができる。具体的には、筐体1のダクト部3の継目部4の反対側の位置に穿設されている。
このようにすることにより、熱交換器に接続される機器との位置決め精度が向上する。
この例のコア11は、一対の開口端9aが厚み方向に拡開された拡開部10を有する複数の偏平チューブ9の拡開部10で積層されている。また、そのコア11の両端は、
図2(B)に示す如く、コア収納部2の周壁1cに設けたビード24により位置決めされている。このビード24は、コア収納部2の内面側に突設されている。
コア収納部2の周壁1cには、外部から流入する第2流体をコア11の外周に導く、一対のパイプ21が接続され、第1流体の出入口孔12及びコア収納部2の端部には、それぞれフランジ22が設けられる。
各部品は、その接触部で一体的にろう付固定させる。
このような熱交換器は、フランジ22が図示しない周辺機器に接続される。一例として、第1流体が出入口孔12を介し、一方のフランジ22から流入し、ダクト部3を通過し、コア11の内部を流通し、他方のフランジから流出する。そして、一方のパイプ21から流入する第2流体がコア11の外面を流通し、他方のパイプ21から流出する。そして、これら第1流体と第2流体との間で熱交換が行われる。
なお、ダクト部3は、この例ではコア収納部2に対して上流側に配置されているが、これに変えてコア収納部2に対して下流側に配置しても良い。
【実施例2】
【0010】
図3(A)は、本発明の熱交換器のケーシング構造の第2実施例の分解斜視図であり、同図(B)は、組立て後の熱交換器の斜視図である。
図4(A)は、
図3(B)のIV部拡大図であり、同図(B)は、
図4(A)のB-B矢視断面図である。
第1実施例では、段付き部5をダクト部3の継目部4に設けていたが、この例ではそれに変えて、段付き部5をコア収納部2の継目部6に設けている点で異なる。それ以外は、第1実施例と同様である。
【実施例3】
【0011】
図5(A)は、本発明の熱交換器のケーシング構造の第3実施例の分解斜視図であり、同図(B)は、組立て後の熱交換器の斜視図である。
図6(A)は、
図5(B)のVI部拡大図であり、同図(B)は、
図6(A)のB-B矢視断面図である。
第1実施例及び第2実施例では、コア11の位置決めとして、ビード24を設けていたが、この例では、ビード24を廃止している点で異なる。
この例では、第2実施例のように、コア収納部2の継目部6に、段付き部5が形成されている。この段付き部5がコア11の位置決めの構造となる。
図6(B)に示す如く、段付き部5の内側の段付きに各偏平チューブ9の開口端9aが当接し、コア11の位置決めをする。
この構造により、コア収納部2の継目部6側に位置決め用のビード24を設ける加工やそのスペースの省略ができ、ケーシングの構造を単純化することができる。
コア収納部2のフランジ22が設けられる側の位置決め構造は、
図5(A)に示すように、ビード24であっても良いし、第3実施例のように段付き部を設けても良い。また、コア収納部2のフランジ22側の継目部6の開口端は、
図5(A)、
図6(A)、
図6(B)に記載のように、絞りを入れて形成することもできる。
【実施例4】
【0012】
図7は、本発明の熱交換器のケーシング構造の他の例を示す分解斜視図である。
この例は、第1実施例~第3実施例に比べて、部品点数が多くなり、作業工程が増える欠点がある。
具体的には、筐体1だけでなく、蓋体7も分割体になっている。
この例の蓋体7は、筐体1のコア収納部2の開口部1bに整合するコア収納部側蓋体7aと、筐体1のダクト部3の開口部1bに整合するダクト部側蓋体7bにより形成されている。
そして、コア収納部2及びコア収納部側蓋体7aと、ダクト部3及びダクト部側蓋体7bとの間は、中間部材であるダクト接続部材23を介して接続されている。
【符号の説明】
【0013】
1 筐体
1a 底面
1b 開口部
1c 周壁
2 コア収納部
3 ダクト部
4 継目部
5 段付き部
6 継目部
7 蓋体
7a コア収納部側蓋体
7b ダクト部側蓋体
8 立上げ縁部
9 偏平チューブ
9a 開口端
10 拡開部
11 コア
12 出入口孔
21 パイプ
22 フランジ
23 ダクト接続部材
24 ビード
25 パイプダクト