(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】作業機の支援システム、及び作業機の支援方法
(51)【国際特許分類】
G01S 19/07 20100101AFI20250526BHJP
G01S 19/43 20100101ALI20250526BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20250526BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20250526BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/43
G01S19/14
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2023078718
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】葉山 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】茶畑 亮
(72)【発明者】
【氏名】小山 悠
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-085800(JP,A)
【文献】特開2017-083212(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159148(WO,A1)
【文献】特開2018-163514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113075707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ所定の基準点に設けられた複数の基地局が受信した測位衛星からの衛星信号を取得する取得部と、
前記基地局が受信した前記衛星信号、及び当該基地局の前記基準点に基づく第1補正情報を生成し、複数の前記基地局のうち、所定の3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び当該3つ以上の基地局の前記基準点に基づいて、仮想基準点を含む第2補正情報を生成する生成部と、
前記生成部が生成する前記第1補正情報及び前記第2補正情報のうち、いずれかの補正情報を選択する選択部と、
前記生成部が生成した前記補正情報に基づいて作業機の位置を検出する位置検出装置と、
を備え、
前記選択部は、前記作業機が作業を行う作業エリアごとに前記補正情報を選択する作業機の支援システム。
【請求項2】
前記選択部は、前記作業エリアを所定の範囲に区切った所定領域のそれぞれの位置で、所定の条件に基づいて前記補正情報を選択し、当該作業エリア内のうち、選択された面積が多い前記補正情報を前記作業エリアごとに選択する請求項1に記載の作業機の支援システム。
【請求項3】
前記作業エリアは、前記作業機が作業を行う圃場に基づいて予め定義されている請求項2に記載の作業機の支援システム。
【請求項4】
前記作業エリアは、前記圃場の輪郭に基づいて予め定義されている請求項3に記載の作業機の支援システム。
【請求項5】
前記作業エリアは、前記作業機が一連の作業を行う作業領域として予め定義されている請求項2に記載の支援システム。
【請求項6】
前記作業エリアは、前記作業機が自動走行を行う走行領域として、当該自動走行を行う前に予め定義されている請求項2に記載の支援システム。
【請求項7】
前記選択部は、前記作業機が前記作業エリアを出入りした場合に、当該作業機が位置している前記作業エリアに対応する前記補正情報を選択する請求項2に記載の作業機の支援システム。
【請求項8】
前記選択部は、3つ以上の基地局の前記基準点を結んだ多角形のエリアと、前記作業機との位置関係に応じて、前記補正情報を選択する請求項1に記載の作業機の支援システム。
【請求項9】
前記エリアの内側に前記作業機が位置している場合、前記選択部は、前記3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく前記第2補正情報を優先的に選択する請求項8に記載の作業機の支援システム。
【請求項10】
前記3つ以上の基地局の前記基準点のそれぞれの距離が第1距離未満である場合、前記選択部は、当該3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく前記第2補正情報を優先的に選択する請求項8に記載の作業機の支援システム。
【請求項11】
前記選択部は、前記作業機に最も近い前記基地局が受信した前記衛星信号に基づく前記第1補正情報を優先的に選択する請求項8に記載の作業機の支援システム。
【請求項12】
前記3つ以上の基地局の前記基準点のうち、前記作業機に最も近い前記基地局の前記基準点と前記作業機との相対距離が所定の第2距離未満である場合、前記選択部は、前記作業機に最も近い前記基地局が受信した前記衛星信号に基づく前記第1補正情報を優先的に選択する請求項8に記載の作業機の支援システム。
【請求項13】
前記エリアの内側に前記作業機が位置し、前記3つ以上の基地局の前記基準点のそれぞれの距離が第1距離以上であり、前記3つ以上の基地局の前記基準点のうち、前記作業機に最も近い前記基地局の前記基準点と前記作業機との相対距離が所定の第2距離以上である場合に、前記選択部は、当該3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく前記第2補正情報を優先的に選択する請求項8に記載の作業機の支援システム。
【請求項14】
前記作業機の作業の内容に応じて、前記第1距離を定義する定義部を備えている請求項10又は13に記載の作業機の支援システム。
【請求項15】
前記作業機の作業の内容に応じて、前記第2距離を定義する定義部を備えている請求項12又は13に記載の作業機の支援システム。
【請求項16】
前記選択部は、選択した前記補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度が所定の高さ未満である場合に、前記補正情報に代えて、前記位置検出精度が前記高さ以上であり、且つ前記作業機の周辺の別の作業機で用いられる前記補正情報を選択する請求項1に記載の作業機の支援システム。
【請求項17】
前記選択部は、前記作業エリアにおいて異なる複数の補正情報を選択した実績がある場合、それぞれの前記補正情報の前記位置検出精度に基づいて、当該位置検出精度が高い前記補正情報を選択する請求項16に記載の作業機の支援システム。
【請求項18】
前記作業機に設けられ、前記位置検出装置が検出した前記作業機の位置と、前記作業エリアを示すマップに作成された所定の走行予定ルートに基づいて前記作業機の自動走行を制御する制御装置を備えている請求項1に記載の作業機の支援システム。
【請求項19】
選択部が、基地局で受信された測位衛星からの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した前記基地局の基準点に基づく第1補正情報と、所定の3つ以上の基地局で受信された前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく仮想基準点を含む第2補正情報と、のいずれかを選択する第1ステップと、
前記第1ステップで選択された補正情報を生成部が生成する第2ステップと、
前記第2ステップで前記生成部が生成した前記補正情報に基づいて、位置検出装置が作業機の位置を検出する第3ステップと、
含み、
前記選択部は、前記第1ステップにおいて、前記作業機が作業を行う作業エリアごとに前記補正情報を選択する作業機の支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の支援システム、及び作業機の支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、高精度な測位を比較的簡単に実現する技術としてRTK(Real Time Kinematic)法が知られている。このRTK法には、基準点として基地局(電子基準点)の実基準点(絶対位置)を用いるRRS(Real Reference Station)-GNSS方式や、基準点として移動局の近傍に仮想的に作成した仮想基準点を用いるVRS(Virtual Reference Station)-GNSS方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RRS-GNSS方式及びVRS-GNSS方式等では、基準点及び測位衛星から送信された衛星信号に基づく補正情報を移動局に送信し、移動局側で衛星信号と補正情報に基づいて移動局の位置を演算することで、移動局の測位精度を向上させることができる。
【0005】
また、移動局と基地局との位置関係等の条件によっては、RRS-GNSS方式とVRS-GNSS方式による位置検出精度に差が生じる場合があり、状況に応じてRRS-GNSS方式とVRS-GNSS方式とで切り替える場合がある。
【0006】
しかしながら、作業者が上記方式を手動で切り替える場合、切替操作が煩雑になる。更に、作業者が適正な方式を選択できなかった場合、測位精度が低下する虞がある。また、方式が頻繁に切り替えられてしまうと、方式が切り替わる度に、検出した位置が変動してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、補正情報を適切に選択することができる作業機の支援システム、及び作業機の支援方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る作業機の支援システムは、それぞれ所定の基準点に設けられた複数の基地局が受信した測位衛星からの衛星信号を取得する取得部と、前記基地局が受信した前記衛星信号、及び当該基地局の前記基準点に基づく第1補正情報を生成し、複数の前記基地局のうち、所定の3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び当該3つ以上の基地局の前記基準点に基づいて、仮想基準点を含む第2補正情報を生成する生成部と、前記生成部が生成する前記第1補正情報及び前記第2補正情報のうち、いずれかの補正情報を選択する選択部と、前記生成部が生成した前記補正情報に基づいて作業機の位置を検出する位置検出装置と、を備え、前記選択部は、前記作業機が作業を行う作業エリアごとに前記補正情報を選択する。
【0009】
前記選択部は、前記作業エリアを所定の範囲に区切った所定領域のそれぞれの位置で、所定の条件に基づいて前記補正情報を選択し、当該作業エリア内のうち、選択された面積が多い前記補正情報を前記作業エリアごとに選択してもよい。
【0010】
前記作業エリアは、前記作業機が作業を行う圃場に基づいて予め定義されていてもよい。
【0011】
前記作業エリアは、前記圃場の輪郭に基づいて予め定義されていてもよい。
【0012】
前記作業エリアは、前記作業機が一連の作業を行う作業領域として予め定義されていてもよい。
【0013】
前記作業エリアは、前記作業機が自動走行を行う走行領域として、当該自動走行を行う前に予め定義されていてもよい。
【0014】
前記選択部は、前記作業機が前記作業エリアを出入りした場合に、当該作業機が位置している前記作業エリアに対応する前記補正情報を選択してもよい。
【0015】
前記選択部は、3つ以上の基地局の前記基準点を結んだ多角形のエリアと、前記作業機との位置関係に応じて、前記補正情報を選択してもよい。
【0016】
前記エリアの内側に前記作業機が位置している場合、前記選択部は、前記3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく前記第2補正情報を優先的に選択してもよい。
【0017】
前記3つ以上の基地局の前記基準点のそれぞれの距離が第1距離未満である場合、前記選択部は、当該3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく前記第2補正情報を優先的に選択してもよい。
【0018】
前記選択部は、前記作業機に最も近い前記基地局が受信した前記衛星信号に基づく前記第1補正情報を優先的に選択してもよい。
【0019】
前記3つ以上の基地局の前記基準点のうち、前記作業機に最も近い前記基地局の前記基準点と前記作業機との相対距離が所定の第2距離未満である場合、前記選択部は、前記作業機に最も近い前記基地局が受信した前記衛星信号に基づく前記第1補正情報を優先的に選択してもよい。
【0020】
前記エリアの内側に前記作業機が位置し、前記3つ以上の基地局の前記基準点のそれぞれの距離が第1距離以上であり、前記3つ以上の基地局の前記基準点のうち、前記作業機に最も近い前記基地局の前記基準点と前記作業機との相対距離が所定の第2距離以上である場合に、前記選択部は、当該3つ以上の基地局が受信した前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく前記第2補正情報を優先的に選択してもよい。
【0021】
前記作業機の支援システムは、前記作業機の作業の内容に応じて、前記第1距離を定義する定義部を備えていてもよい。
【0022】
前記作業機の支援システムは、前記作業機の作業の内容に応じて、前記第2距離を定義する定義部を備えていてもよい。
【0023】
前記選択部は、選択した前記補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度が所定の高さ未満である場合に、前記補正情報に代えて、前記位置検出精度が前記高さ以上であり、且つ前記作業機の周辺の別の作業機で用いられてもよい。
【0024】
前記選択部は、前記作業エリアにおいて異なる複数の補正情報を選択した実績がある場合、それぞれの前記補正情報の前記位置検出精度に基づいて、当該位置検出精度が高い前記補正情報を選択してもよい。
【0025】
作業機の支援システムは、前記作業機に設けられ、前記位置検出装置が検出した前記作業機の位置と、前記作業エリアを示すマップに作成された所定の走行予定ルートに基づいて前記作業機の自動走行を制御する制御装置を備えていてもよい。
【0026】
本発明の一態様に係る作業機の支援方法は、選択部が、基地局で受信された測位衛星からの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した前記基地局の基準点に基づく第1補正情報と、所定の3つ以上の基地局で受信された前記衛星信号、及び前記3つ以上の基地局の前記基準点に基づく仮想基準点を含む第2補正情報と、のいずれかを選択する第1ステップと、前記第1ステップで選択された補正情報を生成部が生成する第2ステップと、前記第2ステップで前記生成部が生成した前記補正情報に基づいて、位置検出装置が作業機の位置を検出する第3ステップと、含み、前記選択部は、前記第1ステップにおいて、前記作業機が作業を行う作業エリアごとに前記補正情報を選択する。
【発明の効果】
【0027】
上記作業機の支援システム、及び作業機の支援方法によれば、補正情報を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図6A】作業機の支援システムにおいて、支援装置が補正情報を生成し、作業機が当該補正情報に基づいて車体位置を検出する処理の一連の流れを説明する図である。
【
図6B】作業機の支援システムにおいて、支援装置が補正情報を生成し、作業機が当該補正情報に基づいて車体位置を検出する処理の一連の流れを説明する図である。
【
図6C】作業機の支援システムにおいて、支援装置が補正情報を生成し、作業機が当該補正情報に基づいて車体位置を検出する処理の一連の流れを説明する図である。
【
図7】第1の変形例の作業機の支援システムにおいて、支援装置が補正情報を生成し、作業機が当該補正情報に基づいて車体位置を検出する処理の一連の流れを説明する図である。
【
図8】第2の変形例の作業機の支援システムにおいて、支援装置が補正情報を生成し、作業機が当該補正情報に基づいて車体位置を検出する処理の一連の流れを説明する図である。
【
図9】第3の変形例の作業機の支援システムにおいて、支援装置が補正情報を生成し、作業機が当該補正情報に基づいて車体位置を検出する処理の一連の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、作業機1の支援システムs1の概略図であり、作業機1の支援システムs1は、作業機1の支援装置(サーバ)50と、作業機1と、を備えている。作業機1は、複数の衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gから送信された衛星信号、及び支援装置50から送信された補正情報に基づいて自己の位置(車体位置VP)を測位することができる。また、本実施形態において、作業機1の支援システムs1は、作業機1と支援装置50との通信を中継する携帯端末30を備えている。
【0030】
衛星測位システムs2(GNSS:Global Navigation Satellite System)は、複数の測位衛星Gを有している。また、複数の衛星測位システムs2は、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、EGNOS(European Geostationary Navigation Overlay Service)、BeiDou(Beidou Navigation Satellite System)等である。
【0031】
図2は、測位した車体位置VPに基づいて、作業機1が走行予定ルートLに沿って自動走行している状況を示しており、本実施形態において、作業機1は、測位した自己の位置(車体位置)VP及び走行予定ルートLに基づいて自動走行を行う。
【0032】
まず、作業機1について説明する。作業機1は、例えばトラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械である。
図3は、作業機1の一例としてトラクタを示す図である。
図3に示すように、作業機1は、機体(車体)3と、原動機4と、変速装置5と、を備えている。車体3には、走行装置7が設けられており、走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。車体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
【0033】
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7に伝達する動力の変速及び回転方向の切り換え(車体3の前進及び後進)が可能である。
【0034】
また、
図3に示すように、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、作業装置(インプルメント)2が着脱可能である。作業機1は、作業装置2を昇降装置8に連結することによって、作業装置2を牽引することができる。
【0035】
作業装置2は、芋や人参の掘り取りを行う掘り取り装置(収穫装置)、肥料を散布する肥料散布装置(施肥装置)及び農薬を散布する農薬散布装置等の散布装置、圃場に種まきを行う播種装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う掘り取り装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、並びに圃場に対する対地作業を行う対地作業装置等である。対地作業装置は、粗耕起を行う粗耕起装置(スタブルカルチ)、代掻き作業を行う代掻き装置(ドライブハロー)、及び耕耘作業を行う耕耘装置(ロータリ耕耘機)等を含んでいる。
【0036】
図4は、作業機1の支援システムs1のブロック図である。
図3、
図4に示すように、作業機1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、油圧ポンプ12と、油圧ポンプ12から吐出した作動油が供給される制御弁13と、制御弁13により作動するステアリングシリンダ14とを含んでいる。制御弁13は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁13は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁13は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ14は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)15に接続されている。
【0037】
したがって、ハンドル11aを操作すれば、当該ハンドル11aに応じて制御弁13の切換位置及び開度が切り換わる。これにより、当該制御弁13の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ14が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0038】
図4に示すように、作業機1は、車体通信装置21と、位置検出装置(車体測位装置)22と、制御装置(車体制御装置)23と、車体記憶装置24と、を備えている。車体通信装置21は、様々なデータを作業機1の外部(例えば支援装置50)から受信したり、外部に様々なデータを送信したりすることができる装置である。車体通信装置21は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、携帯電話通信網、又はデータ通信網等によって外部と無線通信を行う。車体通信装置21は、電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された通信制御装置21aを有している。通信制御装置21aは、車体通信装置21に関する様々な制御を行う。本実施形態において、車体通信装置21は、作業者が所持している携帯端末30を介して、支援装置50と通信を行う。つまり、本実施形態においては、車体通信装置21は、携帯端末30をアクセスポイントとして支援装置50と通信を行う。
【0039】
具体的には、車体通信装置21は、Wi-Fi(登録商標)によって携帯端末30と通信を行い、携帯端末30は、携帯電話通信網によって支援装置50と通信を行う。車体通信装置21は、例えば携帯端末30を介して支援装置50に対して、RTK法による測位を行うための補正情報を要求し、当該携帯端末30を介して支援装置50から当該補正情報を受信する。車体通信装置21は、受信した補正情報を位置検出装置22に出力する。車体通信装置21は、所定の時間間隔で補正情報の要求を行う。
【0040】
作業機1がRRS-GNSS方式による測位を行う場合、補正情報は、例えば、基地局40の基準点(絶対位置)RPの位置情報(例えば、緯度、経度を含む情報)と、当該基準点RPと測位衛星Gとの距離情報である。また、作業機1がVRS-GNSS方式による測位を行う場合、補正情報は、例えば、作業機1の近傍に仮想的に定義された仮想基準点VRPの位置情報と、当該仮想基準点VRPと測位衛星Gとの距離情報である。なお、以下の説明において、RRS-GNSS方式で用いる補正情報のことを「第1補正情報」といい、VRS-GNSS方式で用いる補正情報のことを「第2補正情報」ということがある。
【0041】
位置検出装置22は、複数の測位衛星Gから送信された衛星信号(測位衛星Gの位置、測位衛星Gが衛星信号を送信した送信時刻等)を受信し、車体3(作業機1)の位置(車体位置VP)を測位する装置である。位置検出装置22は、衛星信号を受信するアンテナ22aを有している。位置検出装置22は、アンテナ22aが受信した衛星信号、及び車体通信装置21が受信した補正情報に基づき、RTK法によって車体位置VPを測位する。位置検出装置22は、車体通信装置21が補正情報を受信した場合、当該補正情報を取得し、衛星信号及び補正情報に基づいて、RRS-GNSS方式やVRS-GNSS方式による測位を行う。
図3に示すように、位置検出装置22は、車体3であって、詳しくはキャビン9に取付けられている。
【0042】
なお、位置検出装置22は、アンテナ22aが測位衛星Gから受信した衛星信号の整数値バイアスを決定し、全測位解に対する当該整数値バイアスを決定できたFix解の割合をFix率として演算する。
【0043】
また、位置検出装置22は、アンテナ22aが受信した衛星信号に基づいて単独測位が可能であってもよい。位置検出装置22は、複数のアンテナ22aを有している場合、測位した車体位置VPに基づいて車体3の方位(車体方位)を演算してもよい。
【0044】
また、位置検出装置22は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)22bを有していてもよい。慣性計測装置22bは、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。斯かる場合、位置検出装置22は、当該慣性計測装置22bが検出した情報を用いて、アンテナ22aが受信した衛星信号によって測位する位置情報を補完する。
【0045】
制御装置23は、車体3又はキャビン9の内部に設けられていて、電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された装置である。制御装置23は、作業機1が有する車載ネットワークNに接続された様々な機器を制御する。また、制御装置23は、入力された信号に基づいて種々の演算処理を行う装置である。
【0046】
車体記憶装置24は、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶媒体であり、作業機1に関する様々な情報を記憶している。
【0047】
図4に示すように、制御装置23は、自動走行制御部23aと、設定部23bと、を有している。自動走行制御部23a、及び設定部23bは、制御装置23に設けられた電気・電子回路、CPU、及びメモリに格納されたプログラム等から構成されている。
【0048】
自動走行制御部23aは、車体3が走行予定ルートLに沿って走行するように、当該車体3の操舵角(操舵軸11bの回転角)及び走行速度(車速)を制御する。
図2に示すように、走行予定ルートLは、例えば直進走行を行う直進部L1と、旋回走行を行う旋回部L2と、を含んでいる。走行予定ルートLは、車体記憶装置24に記憶され且つ作業機1が作業を行う作業エリアHを含むエリアマップ上に作成される。作業エリアHは、予め定義された領域であって、例えば作業機1が自動走行を行う走行領域として、当該自動走行を行う前に予め定義されている。
【0049】
本実施形態において、作業エリアHは、作業機1が作業を行う圃場に基づいて予め定義されている。具体的には、作業エリアHは、圃場の輪郭に基づいて予め定義されている。なお、作業エリアHは、圃場に基づいて定義されず、作業機1が一連の作業を行う作業領域として予め定義されていてもよい。
【0050】
作業エリアHは、車体記憶装置24に予め記憶されていてもよいし、作業機1が圃場の外周を実際に走行した際に位置検出装置22が検出した車体位置VPに基づいて作成(定義)されてもよい。また、走行予定ルートLは、入力インタフェースによって入力された情報に基づいて作成されてもよい。
【0051】
入力インタフェースは、例えば作業機1に設けられ且つ入力操作が可能な表示装置16である。表示装置16は、画面を表示する表示画面16aに加え、例えばタッチパッド又はハードウェア型のスイッチ等を有している。なお、入力インタフェースは、少なくとも情報の入力操作が可能であり、且つ入力された情報を制御装置23が取得できればよく、スマートフォン等の携帯端末30であってもよい。
【0052】
また、走行予定ルートLは、車体記憶装置24に予め記憶されていてもよいし、作業機1が実際に走行した際に位置検出装置22が検出した車体位置VPに基づいて作成(定義)されてもよい。また、走行予定ルートLは、入力インタフェースによって入力された情報に基づいて作成されてもよい。
【0053】
また、入力インタフェースが作業エリアHや走行予定ルートLを作成してもよいし、入力インタフェースが入力を受け付けた情報に基づいて、他の演算処理装置が作業エリアHや走行予定ルートLを作成してもよい。
【0054】
自動走行制御部23aは、位置検出装置22が測位した車体位置VP及び/又は車体方位(車体位置VP及び車体方位の少なくとも一方)と、走行予定ルートLと、に基づいて、操舵装置11の制御弁13、変速装置5の変速段、原動機4の回転数等を自動的に変更する。
【0055】
例えば、自動走行制御部23aは、車体位置VPと走行予定ルートLとの位置偏差が閾値未満になるように、操舵角を制御する(自動走行制御)。つまり、車体位置VPと走行予定ルートLとの位置偏差が閾値未満である場合、自動走行制御部23aは、操舵装置11の制御弁13を制御して操舵角を維持する。一方、車体位置VPと走行予定ルートLとの位置偏差が閾値以上である場合、自動走行制御部23aは、操舵装置11の制御弁13を制御して、位置偏差が小さくなる方向に操舵角を変更する。また、自動走行制御部23aは、例えば車体位置VPが走行予定ルートLのうち、直進部L1か旋回部L2に位置しているかに応じて、走行速度を変更する。自動走行制御部23aは、車体位置VPが直進部L1に位置している場合に比べ、車体位置VPが旋回部L2に位置している場合の走行速度を低く制御する。
【0056】
なお、上述した自動走行制御は、一例であり、この制御に限定されない。
【0057】
また、上述した実施形態においては、制御装置23が自動走行制御部23aを有している場合を例に説明したが、作業機1は、位置検出装置22が測位した車体位置VPに基づいて作業を行うことができればよい。例えば、制御装置23は、自動走行制御部23aに加えて、或いは代えて車体3が走行予定ルートLに沿って走行するように、当該車体3の操舵角を制御する自動操舵制御部を有していてもよい。また、表示装置16は、位置検出装置22が測位した車体位置VPと、記憶装置53に記憶され且つ作業エリアHを含むエリアマップと、に基づいて、エリアマップ上に作業機1の現在位置を表示してもよい。
【0058】
設定部23bは、車体通信装置21が支援装置50に補正情報を要求する際に、当該支援装置50に送信する情報(要求情報)を設定する。要求情報は、位置検出装置22が測位した車体位置VPの位置情報を含んでいる。要求情報に含まれる車体位置VPの位置情報は、位置検出装置22がRTK法によって測位した位置情報である。ただし、位置検出装置22がRTK法によって測位を行うことができない場合(例えば、作業機1の起動直後等のように、車体通信装置21がまだ補正情報を受信していない場合)、単独測位によって測位された位置情報であってもよい。
【0059】
本実施形態において、要求情報は、車体位置VPの位置情報に加え、作業機1を示す識別情報、及び作業装置2の作業内容を示す用途情報を含んでいる。作業機1を示す識別情報は、個々の作業機1を特定するための固有の文字列である。この識別情報は、例えば車体記憶装置24に予め記憶されている。
【0060】
また、用途情報は、作業機1に連結された作業装置2の作業内容を示す情報である。設定部23bは、入力インタフェースによって入力された情報に基づいて、作業内容を取得し、用途情報を設定する。例えば、表示装置16は、表示画面16aに所定の作業選択画面を表示し、作業選択画面上に表示された選択肢の選択操作を受け付ける。設定部23bは、表示装置16が選択操作によって入力された情報を取得する。
【0061】
なお、設定部23bは、入力インタフェース以外から作業内容を取得してもよく、作業装置2と制御装置23とが通信可能に接続されており、制御装置23が作業装置2の識別情報等に基づいて、作業内容を特定できる場合、設定部23bは、当該特定された作業内容を取得してもよい。
【0062】
また、上述した要求情報に含まれる情報は、一例であって、例えば作業機1と支援装置50との通信の認証を行うための認証情報が含まれていてもよい。
【0063】
携帯端末30は、作業者が所持するスマートフォン(多機能携帯電話)、タブレット、PDA等の端末である。携帯端末30は、端末表示画面31と、端末演算装置32と、端末記憶装置33と、端末通信装置34と、を有している。
【0064】
端末表示画面31は、矩形形状であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のパネルから構成されており、端末演算装置32の制御によって、様々な画面に遷移することができる。
【0065】
端末演算装置32は、携帯端末30の様々な制御を行う装置であり、CPU、電気電子回路等から構成されている。
【0066】
端末記憶装置33は、不揮発性のメモリ等であり、種々のプログラム等や携帯端末30に関する様々な情報を記憶することができる。端末記憶装置33は、各種の制御プログラム及び各種データを予め記憶している。
【0067】
端末通信装置34は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、携帯電話通信網、又はデータ通信網等によって作業機1(車体通信装置21)及び支援装置50との無線通信を行う。端末通信装置34は、様々なデータを携帯端末30の外部(例えば作業機1や支援装置50)から受信したり、外部に様々なデータを送信したりすることができる装置である。このため、携帯端末30は、端末通信装置34によって、車体通信装置21と支援装置50との通信を中継することができる。また、携帯端末30は、端末通信装置34を介して支援装置50から受信した情報に基づく表示画像を端末表示画面31に表示することができる。
【0068】
支援装置50は、作業機1の外部に設けられた固定型のコンピュータ等の固定端末(サーバ)である。支援装置50は、それぞれ所定の基準点RPに設けられた複数の基地局40が複数の測位衛星Gから受信した衛星信号を取得し、当該衛星信号に基づいて補正情報を生成する装置である。以下、支援装置50に衛星信号を送信する基地局40について詳しく説明する。
【0069】
図1に示すように、基地局40は、所定の基準点RPに設けられ且つ測位衛星Gからの衛星信号を受信する。基地局40は、例えば国土地理院、農業機械メーカ、農業協同組合、又は管理会社等が所定の基準点(絶対位置)RPに設置した固定型の基地局40である。基地局40は、作業エリアH、及び当該作業エリアHに位置する作業機1の周囲に複数配置される。また、複数の基地局40は、それぞれ基地通信装置41、基地測位装置42、基地演算装置43、及び基地記憶装置44を備えている。
【0070】
基地通信装置41は、様々なデータを基地局40の外部(例えば支援装置50)に送信したり、外部から送信されたデータを受信したりする装置である。基地通信装置41は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、携帯電話通信網、又はデータ通信網等によって外部と無線通信を行う。本実施形態において、基地通信装置41は、管理センターを介して支援装置50に、データとして観測情報(衛星信号に基づく情報)を送信する。管理センターは、作業機1の外部に設けられた固定型のコンピュータ等の固定端末(サーバ)であり、例えば、農業機械メーカ、農業協同組合、又は管理会社等に設置されている。
【0071】
なお、基地通信装置41は、支援装置50に観測情報を送信することができればよく、管理センターを介さず、支援装置50へ直接的に観測情報を送信してもよい。
【0072】
基地測位装置42は、測位衛星Gから送信された衛星信号を受信する装置である。基地測位装置42は、衛星信号を受信するアンテナ42aを有している。
【0073】
基地演算装置43は、電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された装置である。基地演算装置43は、基地局40に関する様々な演算処理を行う。基地演算装置43は、基地通信装置41が送信する観測情報を定義(演算)する。例えば、基地演算装置43は、衛星信号に自己の識別情報(例えば所定の文字列)や、基地測位装置42が当該衛星信号を受信した受信時刻を付与することで、観測情報を定義する。
【0074】
なお、基地演算装置43は、衛星信号に自己の基準点RP(具体的には基準点RPの位置情報)を付与して観測情報を定義してもよい。
【0075】
基地記憶装置44は、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶媒体であり、基地局40に関する様々な情報を記憶している。基地記憶装置44は、例えば基地局40の識別情報や基準点RPの位置情報等を記憶している。
【0076】
以下、支援装置50について詳しく説明する。
図4に示すように、支援装置50は、通信装置51、演算装置52、及び記憶装置53を備えている。通信装置51は、様々なデータを支援装置50の外部(例えば作業機1や基地局40)に送信したり、外部(例えば作業機1や基地局40)から送信されたデータを受信したりする装置である。通信装置51は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、携帯電話通信網、又はデータ通信網等によって外部と無線通信を行う。本実施形態において、通信装置51は、管理センターを介して基地通信装置41から間接的に観測情報を受信したり、携帯端末30を介して車体通信装置21から要求情報を間接的に受信したりする。また、通信装置51は、携帯端末30を介して車体通信装置21に補正情報を間接的に送信する。
【0077】
演算装置52は、電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された装置である。演算装置52は、支援装置50に関する様々な演算処理を行う。
【0078】
記憶装置53は、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶媒体であり、支援装置50に関する様々な情報を記憶している。記憶装置53は、例えばそれぞれの基地局40の識別情報と、当該基地局40の基準点RPの位置情報と、を関連付けて記憶している。
【0079】
支援装置50は、基地局40が受信した衛星信号、及び当該基地局40の基準点RPに基づいて、RRS-GNSS方式で用いる補正情報(第1補正情報)を生成する。また、支援装置50は、衛星信号と基準点RPに基づいて、VRS-GNSS方式で用いる補正情報(複数の基地局40のうち、所定の3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び当該3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく仮想基準点VRPを含む第2補正情報)を生成する。
図4に示すように、支援装置50(演算装置52)は、受信制御部52aと、信号取得部52bと、選定部52cと、選択部52dと、定義部52eと、管理部52fと、生成部52gと、送信制御部52hと、状態管理部52iと、を有している。受信制御部52a、信号取得部52b、選定部52c、選択部52d、定義部52e、管理部52f、生成部52g、送信制御部52h、及び状態管理部52iは、ソフトウェアであって、演算装置52に設けられた電気・電子回路、CPU、及びメモリに格納されたプログラム等から構成されている。
【0080】
以下、演算装置52が有するソフトウェアについて詳しく説明する。
【0081】
受信制御部52aは、通信装置51を制御して、外部からの情報を当該通信装置51に受信させるソフトウェアである。受信制御部52aは、携帯端末30を介して車体通信装置21から送信された情報(例えば要求情報)を当該通信装置51に受信させる。また、受信制御部52aは、管理センターを介して、基地通信装置41から送信された情報(例えば観測情報)を当該通信装置51に受信させる。
【0082】
信号取得部52bは、複数の基地局40が、複数の測位衛星Gから受信した衛星信号を取得するソフトウェアである。信号取得部52bは、受信制御部52aが通信装置51に受信させた観測情報から衛星信号を取得する。
【0083】
選定部52cは、複数の測位衛星Gのうち、一又は複数の測位衛星Gを選定するソフトウェアである。選定部52cは、位置検出装置22が用いる補正情報に対応する測位衛星Gを選定する。本実施形態では、選定部52cは、生成部52gが補正情報を作成するために用いる衛星信号を送信する測位衛星Gを選定する。具体的には、選定部52cは、GLONASS、Galileo、QZSS、EGNOS、BeiDou等の衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、所定の条件(正常条件)を満たさず、異常であると判断した測位衛星Gの数が所定の閾値(基準数)以上である場合、当該衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gを選定しない。一方、選定部52cは、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、異常であると判断した測位衛星Gの数が基準数未満である場合、当該衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、正常であると判断した測位衛星Gのみを選定する。選定部52cは、例えば所定の周期(10秒)ごとに、測位衛星Gが正常条件を満たすか否かを判断し、測位衛星Gの選定を行う。なお、選定部52cは、所定の周期ではなく、システムの起動時の所定のタイミングで、測位衛星Gが正常条件を満たすか否かを判断してもよい。
【0084】
基準数は、例えばそれぞれの衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gの総数に応じて定義されている。本実施形態において、基準数は、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、異常であると判断された測位衛星Gの割合(基準割合)によって定義されている。具体的には、基準数は、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gの総数に、基準割合を乗算することで定義される。基準割合は、記憶装置53に記憶された値であって、例えば50%で定義されている。なお、基準割合は、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、40%や60%等の任意の数値に変更できてもよい。
【0085】
例えば、複数の衛星測位システムs2のうち、GLONASSが有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たさず、異常であると判断された測位衛星Gが基準数以上である場合、選定部52cは、当該GLONASSが有する複数の測位衛星Gを選定しない。一方、このときにGalileoが有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たさず、異常であると判断された測位衛星Gが基準数未満である場合、選定部52cは、当該Galileoが有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たす測位衛星Gを選定する。
【0086】
選定部52cは、記憶装置53に記憶された管理テーブル(第1管理テーブル)を用いて、測位衛星Gを管理する。選定部52cは、第1管理テーブルにおいて、正常条件を満たす測位衛星Gの識別情報に第1選定フラグを付与する。
【0087】
また、選定部52cは、記憶装置53に記憶された管理テーブル(第2管理テーブル)を用いて、衛星測位システムs2を管理する。選定部52cは、第2管理テーブルにおいて、正常条件を満たす測位衛星Gの数が基準数未満である衛星測位システムs2の識別情報に第2選定フラグを付与する。
【0088】
選定部52cは、第1管理テーブル及び第2管理テーブルに基づいて、選定した測位衛星Gを管理するための選定テーブルを作成し、当該選定テーブルを記憶装置53に記憶させる。なお、記憶装置53がすでに選定テーブルを記憶している場合、選定部52cは、記憶装置53に記憶された選定テーブルを更新する。
【0089】
また、選定部52cは、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たさない測位衛星Gの数が閾値(基準数)以上から、正常条件を満たさない測位衛星Gの数が基準数未満になると、正常条件を満たす正常な測位衛星Gから順に選定してもよい。言い換えると、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、異常であると判断された測位衛星Gが基準数以上であって、選定部52cが当該衛星測位システムs2の有する複数の測位衛星Gを選定していない場合から、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、異常であると判断された測位衛星Gが基準数未満になった場合、選定部52cは、正常条件を満たす正常な測位衛星Gから順に、すでに選定した測位衛星Gに追加して選定する。選定部52cは、所定の時間間隔(例えば10秒)ごとに、選定していなかった測位衛星Gを新たに選定する。
【0090】
当該衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たす測位衛星Gの数が基準数以上になると、10秒ごとに、当該衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たす測位衛星Gを選定して、選定テーブルを更新する。これによって、選定部52cは、選定していなかった測位衛星Gを10秒ごとに新たに選定することができる。
【0091】
このため、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、異常であると判断された測位衛星Gが基準数以上である場合から、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、異常であると判断された測位衛星Gが基準数未満になった場合、選定部52cによって選定される測位衛星Gは、10秒ごとに1つずつ追加される。
【0092】
なお、選定部52cは、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、正常条件を満たさない測位衛星Gの数が閾値(基準数)以上から、正常条件を満たさない測位衛星Gの数が基準数未満になると、正常条件を満たす正常な測位衛星Gから順に選定すればよく、その選定の処理方法は上述した方法に限定されない。
【0093】
また、上述した説明において基準数は、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gの数に、基準割合を乗算することで定義される場合を例に説明したが、選定部52cは、測位衛星Gの数が基準数以上であるか否か判断できればよい。基準数は、例えば、基準割合によらず、各衛星測位システムs2に応じて予め定義されていてもよい。斯かる場合において、基準数は、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、任意の数値に変更できてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態において、基準数が、衛星測位システムs2の有する複数の測位衛星Gの数に応じて、それぞれ定義されている場合を例に説明したが、衛星測位システムs2ごとに基準数を定義せず、判定部52i1は、いずれの衛星測位システムs2においても同じ数の基準数を用いてもよい。
【0095】
以下、選定部52cが測位衛星Gを正常であると判断する条件(正常条件)について説明する。選定部52cは、正常条件として、衛星信号に含まれ、且つ当該衛星信号を送信した測位衛星Gの健康情報(健康衛生状態:SVhealth)が正常であるか否かを判断する(第1正常条件)。測位衛星Gの健康情報は、当該衛星信号を送信した測位衛星Gが正常であるか否かを示すコードである。このため、選定部52cは、測位衛星Gの健康情報を確認して、当該測位衛星Gが正常であるか否かを判断できる。従って、選定部52cは、信号取得部52bが取得した衛星信号の健康情報に基づいて、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、いずれの測位衛星Gが正常であるか否かを判断できる。なお、測位衛星Gの健康情報が「0」の場合、衛星信号が正常であって、当該測位衛星Gが正常であることを示す。一方、測位衛星Gの健康情報が「1」の場合、一部または全ての衛星信号が異常であって、当該測位衛星Gが異常であることを示す。
【0096】
また、選定部52cは、正常条件として、衛星信号を送信した測位衛星Gの位置と基地局40の基準点RPの位置とに基づいて演算された当該測位衛星Gと当該基地局40の第1演算距離に対して、衛星信号に基づいて演算された当該測位衛星Gと当該基地局40との第2演算距離が適正であるか否かを判断してもよい(第2正常条件)。ここで、第1演算距離は、測位衛星Gと基地局40との実際の距離である。一方、第2演算距離は、衛星信号に基づいて演算された計算上の距離である。
【0097】
具体的には、選定部52cは、後述する管理部52fから取得した観測情報から、衛星信号を送信した測位衛星G、及び当該衛星信号を受信した基地局40を特定する。選定部52cは、当該特定した測位衛星Gの位置情報を外部(例えば管理センター)から受信するよう受信制御部52aに対して要求する。受信制御部52aは、当該要求に応じて、管理センターから測位衛星Gの位置情報を通信装置51に受信させ、選定部52cが測位衛星Gの位置情報を取得する。また、記憶装置53に記憶された当該基地局40の基準点RPの位置情報を取得する。これにより、選定部52cは、測位衛星Gの位置情報と、基地局40の基準点RPの位置情報と、基づいて第1演算距離を演算する。
【0098】
なお、測位衛星Gの位置情報及び基地局40の基準点RPの位置情報の取得元は、管理センターや記憶装置53に限定されず、選定部52cは、管理センターとは別のサーバ等から取得できてもよい。
【0099】
また、選定部52cは、観測情報に含まれる衛星信号から、測位衛星Gが衛星信号を送信した送信時刻と、基地測位装置42が当該衛星信号を受信した受信時刻と、を抽出し、送信時刻と受信時刻との差に電波の速度を乗算することで、第2演算距離を演算する。
【0100】
これにより、選定部52cは、所定の測位衛星Gと所定の基地局40との距離(衛星受信機間距離)を第1演算距離と第2演算距離とで演算することができる。また、選定部52cは、所定の測位衛星Gと所定の基地局40との実際の距離である第1演算距離に対して、当該測位衛星Gと当該基地局40の計算上の距離である第2演算距離が適正であるか判断する。
【0101】
例えば、選定部52cは、第1演算距離に対する第2演算距離の誤差の割合(誤差率)が所定の基準誤差率未満である場合に、第1演算距離に対して第2演算距離が適正であると判断する。一方、選定部52cは、第1演算距離に対する第2演算距離の誤差率が当該基準誤差率以上である場合に、第1演算距離に対して第2演算距離が適正ではないと判断する。本実施形態において、誤差率は、0.000005%である。
【0102】
なお、基準誤差率は、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、任意の数値に変更できてもよい。
【0103】
また、本実施形態において、選定部52cは、第2正常条件の判断において、誤差率に基づいて第1演算距離に対する第2演算距離が適正であるか否かを判断しているが、その判断の方法は、誤差率に限定されない。例えば、選定部52cは、第1演算距離と第2演算距離の差(誤差)の絶対値が所定の判定値未満であるか否かに基づいて、第1演算距離に対する第2演算距離が適正であるか否かを判断してもよい。
【0104】
選択部52dは、生成部52gが生成する第1補正情報及び第2補正情報のうちいずれかの補正情報を選択するソフトウェアである。選択部52dは、一又は複数の条件(選択条件)に基づいて、いずれかの第1補正情報又は第2補正情報を選択する。言い換えると、選択部52dは、一又は複数の選択条件に基づいて、位置検出装置22にRRS-GNSS方式で測位させるか又はVRS-GNSS方式で測位させるかを選択するとともに、補正情報を生成するための衛星信号を受信する基地局40も選択する。
【0105】
また、選択部52dは、作業機1が作業を行う作業エリアHごとに補正情報を選択する。本実施形態において、選択部52dは、作業エリアHを所定の範囲に区切った所定領域内のそれぞれの位置で、一又は複数の選択条件に基づいて補正情報を選択し、当該作業エリアH内のうち、選択された面積が多い補正情報を作業エリアHごとに選択する。言い換えると、選択部52dは、作業機1が作業エリアHを出入りした場合に、当該作業機1が位置している作業エリアHに対応する補正情報を選択する。
【0106】
例えば、選択部52dは、通信装置51が受信した要求情報から車体位置VPの位置情報を含むデータを取得し、作業機1が位置している作業エリアHを含むエリアマップを取得する。作業エリアHは、作業機1が一連の作業を行う作業領域や、作業機1が自動走行を行う走行領域として予め定義されている。作業エリアHは、位置検出装置22が検出した車体位置VPに基づいて定義されたり、入力インタフェースによって入力された任意の位置情報に基づいて定義されたりして記憶装置53に記憶されている。記憶装置53には、作業エリアHを含む地図情報(エリアマップ)が記憶されている。
【0107】
また、エリアマップは、当該1つの作業エリアHを所定領域として複数の同じ大きさの個別領域Qn(n=1,2,3・・・n)に区切った(区分した)メッシュ型のマップである。選択部52dは、各個別領域Qnの中央の位置において、所定の条件に基づいて補正情報を選択し、選択された個別領域Qnが多い、即ち選択された面積が多い補正情報を作業エリアHに対応する補正情報として選択する。
【0108】
なお、選択部52dは、作業エリアH内のうち、選択された面積が多い補正情報を作業エリアHごとに選択すればよく、その選択方法は上述した方法に限定されない。例えば、選択部52dは、第1補正情報が選択された領域と、第2補正情報が選択された領域と、を定義して、選択された面積が多い補正情報を作業エリアHに対応する補正情報として選択してもよい。斯かる場合、選択部52dは、作為的、又は無作為的に選出した位置において、所定の条件に基づいて補正情報を選択し、第1補正情報が選択された位置と第2補正情報が選択された位置との間(例えば中央)に境界線を定義して、第1補正情報が選択された領域と、第2補正情報が選択された領域と、を定義する。
【0109】
以下、選択条件について詳しく説明する。本実施形態において、選択部52dは、第1補正情報及び第2補正情報のうち、3つ以上の基地局40の基準点RPを結んだ多角形のエリアEと、作業機1との位置関係に応じて、第1補正情報又は第2補正情報を選択する。
【0110】
例えば、エリアEの内側に作業機1が位置している場合、選択部52dは、3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する(第1選択条件)。このとき、選択部52dは、エリアEの外側に作業機1が位置している場合には、作業機1に最も近い基地局40から取得する第1補正情報を他の補正情報よりも優先的に選択してもよい。
【0111】
選択部52dは、通信装置51が受信した要求情報から車体位置VPの位置情報を含むデータを取得し、記憶装置53に記憶された複数の基地局40の基準点RP及びその位置情報を参照する。選択部52dは、車体位置VPの位置情報及び基準点RPの位置情報に基づいて、VRS-GNSS方式による測位を行うための基地局40として、作業機1からの距離が近い基地局40を3つ以上選出する。具体的には、選択部52dは、車体位置VPの位置情報と基準点RPの位置情報に基づいて、作業機1の周囲に位置する複数の基地局40のうち、作業機1と基地局40との水平方向の距離が最も近い基地局40から、遠い基地局40まで3つ以上選出する。
【0112】
本実施形態においては、選択部52dは、3つの基地局40を選出する。選択部52dは、
図1に示すように、選出した3つの基地局40の基準点RPを結ぶ多角形のエリアEを生成し、当該エリアEの外側に車体位置VPが位置しているか否かを判断する。より詳しくは、選択部52dは、車体位置VPがエリアEの外形線上に位置している場合には、エリアEの内側に作業機1が位置していると判断する。なお、選択部52dは、車体位置VPがエリアEの外形線上に位置している場合に、エリアEの外側に作業機1が位置していると判断してもよい。
【0113】
また、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満である場合、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択してもよい(第2選択条件)。このとき、選択部52dは、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上である場合には、作業機1に最も近い基地局40から取得する第1補正情報を他の補正情報よりも優先的に選択してもよい。
【0114】
本実施形態において、選択部52dは、VRS-GNSS方式による測位を行うための基地局40として選出した3つ以上の基地局40の基準点RPの位置情報に基づいて、基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1、即ち多角形のエリアEの辺の長さをそれぞれ演算する。選択部52dは、各辺の長さを演算すると、当該各辺の長さが第1距離d1未満であるか否かを判断する。
【0115】
第1距離d1は、記憶装置53に予め記憶された値であって、例えば50kmである。なお、第1距離d1の値は、50kmに限定されず、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、任意の数値に変更できてもよい。
【0116】
また、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離(基線長)D2が所定の第2距離d2未満である場合、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択してもよい(第3選択条件)。このとき、選択部52dは、基線長D2が所定の第2距離d2以上である場合には、3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択してもよい。
【0117】
選択部52dは、通信装置51が受信した要求情報から取得した車体位置VPの位置情報と、VRS-GNSS方式による測位を行うための基地局40として選出した3つ以上の基地局40の基準点RPの位置情報と、に基づいて、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2を演算する。選択部52dは、基線長D2を演算すると、当該基線長D2の長さが第2距離d2未満であるか否かを判断する。
【0118】
第2距離d2は、記憶装置53に予め記憶された値であって、例えば10kmである。なお、第2距離d2の値は、10kmに限定されず、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、任意の数値に変更できてもよい。
【0119】
第1~第3選択条件に基づく補正情報の選択について詳しく説明すると、エリアEの内側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満である場合、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0120】
また、エリアEの内側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、基線長D2が所定の第2距離d2以上である場合に、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0121】
また、エリアEの内側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、基線長D2が所定の第2距離d2未満である場合に、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0122】
また、エリアEの外側に作業機1が位置し、基線長D2が所定の第2距離d2未満である場合に、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0123】
また、エリアEの外側に作業機1が位置し、基線長D2が所定の第2距離d2未満であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満である場合に、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0124】
そして、エリアEの外側に作業機1が位置し、基線長D2が所定の第2距離d2未満であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上である場合に、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0125】
なお、上述した説明において、選択部52dが第1~第3選択条件に基づいて補正情報を選択する場合を例に説明したが、選択部52dは、一又は複数の選択条件に基づいて、補正情報を選択すればよく、その条件は上述した例に限定されない。
【0126】
選択部52dは、作業機1が位置する作業エリアHに応じて第1補正情報又は第2補正情報を選択すると、生成部52gに指示信号を出力して、生成部52gから管理部52fに対して、当該補正情報を生成するために必要な情報(例えば観測情報)を要求させる。指示信号は、観測情報を特定するため、基地局40の識別情報を含んでおり、生成部52gは、当該指示信号に基づく信号(本実施形態においては指示信号)を管理部52fに出力し、当該管理部52fに観測情報を要求する。
【0127】
なお、選択部52dは、作業エリアHの位置情報が定義されれば、上述した選択条件に基づいて補正情報を選択できるため、例えばエリアマップが定義された際に、選択条件に基づいて、作業エリアHごとに補正情報を選択する。また、選択部52dは、選択した基地局40のうち、いずれかに異常が発生した場合には、選択条件に基づいて、再度作業エリアHごとに補正情報を選択してもよい。
【0128】
定義部52eは、作業機1の作業の内容に応じて、第1距離d1及び/又は第2距離d2を定義するソフトウェアである。定義部52eは、通信装置51が受信した要求情報に含まれる作業装置2の作業内容に応じて、第1距離d1及び第2距離d2を定義する。定義部52eは、作業内容が比較的高い位置検出精度を要する作業、即ち車体位置VPの検出精度を高くする必要がある場合、第1距離d1及び第2距離d2を短くする。一方、定義部52eは、作業内容が比較的高い位置検出精度を要さない作業、即ち車体位置VPの検出精度を高くせず、作業の効率を優先してもよい場合、第1距離d1及び第2距離d2を長くする。
【0129】
定義部52eは、記憶装置53に予め記憶され、且つ第1距離d1を算出するための基準距離(第1基準距離)及び第2距離d2を算出するための基準距離(第2基準距離)に、それぞれ所定の補正値を乗算することで、第1距離d1及び第2距離d2を定義する。作業内容と、第1、第2基準距離のそれぞれに乗算する補正値との関係を示す補正テーブルは、記憶装置53に記憶されている。例えば、播種装置が行う播種作業、収穫装置が行う収穫作業、耕耘装置が行う耕耘作業、代掻き装置が行う代掻き作業、散布装置が行う散布作業の順に、比較的高い位置検出精度を要する。
【0130】
例えば、本実施形態においては、播種作業の補正値が0.8、収穫作業の補正値が0.9、耕耘作業の補正値が1.0、代掻き作業の補正値が1.1、散布作業の補正値が1.2と定義されている。
【0131】
なお、上述した作業内容に対応する補正値は、一例であって、これらに限定されず、第1基準距離及び第2基準距離に対して、それぞれ任意の数値に変更できてもよい。例えば、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、任意の数値に変更できてもよい。
【0132】
また、定義部52eは、作業内容が比較的高い位置検出精度を要する作業である場合、第1距離d1及び第2距離d2を短くし、作業内容が比較的高い位置検出精度を要さない作業である場合、第1距離d1及び第2距離d2を長くすればよく、その定義する方法は上述した方法に限定されない。例えば、定義部52eは、第1基準距離、及び第2基準距離に所定の補正値を加算又は減算して、第1距離d1及び第2距離d2を定義してもよい。
【0133】
管理部52fは、信号取得部52bが取得した衛星信号を管理するソフトウェアである。管理部52fは、当該衛星信号を選定部52c及び生成部52gに出力する。管理部52fは、記憶装置53に記憶されている選定テーブルと、生成部52gから出力された指示信号と、に基づいて、選択部52dが選択した第1補正情報又は第2補正情報に対応する基地局40が、選定部52cによって選定された測位衛星G(第2選定フラグを付与された衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、第1選定フラグが付与された測位衛星G)から受信した観測情報を生成部52gに出力する。管理部52fは、選定された測位衛星Gの識別情報と、指示信号に含まれる基地局40の識別情報と、に基づいて、信号取得部52bが取得した衛星信号から、選定部52cが選定した測位衛星Gから受信した衛星信号を抽出する。管理部52fは、抽出した衛星信号を生成部52gに出力し、選定部52cが選定していない衛星信号を生成部52gに出力しない。
【0134】
生成部52gは、信号取得部52bが取得した衛星信号に基づいて補正情報(第1補正情報及び第2補正情報)を生成するソフトウェアである。本実施形態において、生成部52gは、信号取得部52bが取得した衛星信号のうち、選定部52cが選定した測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づいて補正情報を生成する。
【0135】
生成部52gは、選択部52dから出力された指示信号に基づいて、管理部52fに観測情報(衛星信号)を要求する。生成部52gは、管理部52fから指示信号及び選定テーブルに基づく観測情報を取得すると、当該観測情報に含まれる衛星信号等に基づいて、補正情報を生成する。
【0136】
具体的には、生成部52gは、信号取得部52bが取得した衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報を生成する。また、生成部52gは、複数の基地局40のうち、所定の3つ以上の基地局40が受信した衛星信号と、3つ以上の基地局40の基準点RPとに基づいて、仮想基準点VRPを含む第2補正情報を生成する。生成部52gは、生成した補正情報を送信制御部52hに出力する。
【0137】
送信制御部52hは、通信装置51を制御して、当該通信装置51から外部に情報を送信させるソフトウェアである。例えば、送信制御部52hは、生成部52gが生成した補正情報を通信装置51から送信させる制御を行う。具体的には、送信制御部52hは、補正情報を送信するための時間間隔を制御する。例えば、送信制御部52hは、生成部52gから取得した補正情報を所定の時間間隔で通信装置51に出力する。通信装置51は、送信制御部52hが出力した補正情報を取得し、当該補正情報を送信する。
【0138】
これにより、通信装置51(サーバ50)は、選定部52cが選定した測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく補正情報を車体通信装置21に送信する。また、車体通信装置21は、受信した補正情報を位置検出装置22に出力する。
【0139】
具体的には、車体通信装置21が通信装置51から第1補正情報を受信した場合、位置検出装置22は、アンテナ22aが受信した衛星信号、及び車体通信装置21から出力された第1補正情報に基づいて、RRS-GNSS方式による測位を行う。一方、車体通信装置21が通信装置51から第2補正情報を受信した場合、位置検出装置22は、アンテナ22aが受信した衛星信号、及び車体通信装置21から出力された第2補正情報に基づいて、VRS-GNSS方式による測位を行う。
【0140】
状態管理部52iは、補正情報に基づく位置検出に関する情報(状態情報)を管理するソフトウェアである。状態管理部52iは、状態情報として、例えば選択部52dが選択した補正情報に基づく位置検出の精度(位置検出精度)、位置検出装置22が衛星信号を受信している測位衛星Gの数、支援装置50の稼働状況、水平精度低下率(HDOP:Horizontal Dilution Of Precision)、マルチパスの有無、妨害波の有無、基線長D2、データのエイジ、支援装置50の状態、及び測位衛星Gの状態を示す測位に関する情報(状態情報)を管理する。
【0141】
具体的には、状態管理部52iは、車体通信装置21及び端末通信装置34を介して、位置検出装置22、制御装置23、及び車体記憶装置24等から、制御装置23等で演算された状態情報そのものを取得したり、状態情報を演算するために必要な情報を取得して状態情報を演算したりする。また、状態管理部52iは、支援装置50が有するハードウェア及びソフトウェアから動作状況等を取得したり、演算装置52が有する他のソフトウェアや記憶装置53から状態情報を演算するために必要な情報を取得して状態情報を演算したりする。
【0142】
なお、状態管理部52iは、それぞれの補正情報に基づく位置検出の位置検出精度として、異なる算出方法によって演算された複数の種類の位置検出精度を管理できてもよい。本実施形態において、状態管理部52iは、第1~第3検出精度を管理する。状態検出装置は、位置検出精度(第1~第3検出精度)に対応する補正情報、及び当該補正情報が選択された作業エリアHに、位置検出精度を対応付けて記憶装置53に記憶させ、これらの位置検出精度を管理する。
【0143】
第1検出精度は、基準点RPの精密単独測位(PPP:Precise Point Positioning)を行い、精密単独測位で演算した基準点RPの位置情報と、当該基準点RPの実際の位置情報との位置偏差である。このとき、第1検出精度(位置偏差PD1,PD2)が小さいほど、当該補正情報を用いた測位での位置検出精度が高くなり、位置偏差PD1,PD2が大きいほど、当該補正情報を用いた測位での位置検出精度が低くなる。
【0144】
具体的には、生成部52gが管理部52fに観測情報(衛星信号)を要求すると、管理部52fは、補正情報に対応する基地局40が、選定部52cによって選択された測位衛星Gから受信した衛星信号を生成部52g及び状態管理部52iに出力する。状態管理部52iは、管理部52fから当該衛星信号を取得すると、基準点RPの精密単独測位を行う。即ち、第1検出精度は、作業機1の位置検出装置22が実際に車体位置VPを検出した際の外乱を含む実際の精度情報ではない位置検出精度である。また、状態管理部52iは、選択部52dが補正情報を選択した選択結果(例えば指示信号)を当該選択部52dから取得し、選択された補正情報が第1補正情報であるか、第2補正情報であるかを判断する。
【0145】
状態管理部52iは、補正情報が第1補正情報であって、当該第1補正情報に基づく位置検出(RRS-GNSS方式での測位)を行う場合の位置検出精度を判定する場合、管理部52fから取得した衛星信号に基づいて、当該基地局40(基準点RP)における精密単独測位を行う。
【0146】
また、状態管理部52iは、精密単独測位を行う基準点RPの位置情報として、当該基地局40の基準点RPの位置情報を記憶装置53から取得する。これにより、状態管理部52iは、精密単独測位で演算した基準点RPの位置情報(
図1における位置CP1の位置情報)と、記憶装置53から取得した当該基準点RPの位置情報(絶対位置の位置情報)と、の位置偏差PD1を演算する。
【0147】
一方、状態管理部52iは、補正情報が第2補正情報であって、当該第2補正情報に基づく位置検出(VRS-GNSS方式での測位)を行う場合の位置検出精度を判定する場合、通信装置51が受信した要求情報から車体位置VPの位置情報を取得し、当該車体位置VPの周辺に仮想基準点VRPを定義する。また、状態管理部52iは、生成部52gから当該生成部52gが生成した第2補正情報を取得し、当該第2補正情報と、管理部52fから取得した衛星信号と、に基づいて、仮想基準点VRPにおける精密単独測位を行う。これにより、状態管理部52iは、定義した車体位置VPの周辺の仮想基準点VRPの位置情報と、精密単独測位で演算した仮想基準点VRPの位置情報(
図1における位置CP2の位置情報)と、の位置偏差PD2を演算する。
【0148】
第2検出精度は、選択部52dによる補正情報の選択結果に基づく精度である。即ち、第2検出精度は、作業機1の位置検出装置22が実際に車体位置VPを検出した際の外乱を含む実際の精度情報ではない位置検出精度である。具体的には、例えば、エリアEの内側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、基線長D2が所定の第2距離d2以上であって、選択部52dが第2補正情報を選択すると、状態管理部52iは、当該選択結果に基づいて、選択部52dが選択した第2補正情報に対応する位置検出精度を比較的低いと判断する。
【0149】
また、エリアEの外側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、基線長D2が所定の第2距離d2以上であって、選択部52dが第1補正情報又は第2補正情報を選択すると、状態管理部52iは、当該選択結果に基づいて、選択部52dが選択した補正情報に対応する位置検出精度が比較的低いと判断する。
【0150】
詳しくは、選択部52dは、上述した2つの場合において、指示信号に精度劣化フラグを付与する。状態管理部52iは、選択部52dが補正情報を選択した選択結果(例えば指示信号)を当該選択部52dから取得し、当該指示信号に基づいて、選択部52dが選択した補正情報に対応する位置検出精度が比較的低いか否かを判断する。
【0151】
第3検出精度は、位置検出装置22が測位衛星Gから受信した衛星信号のFix率である。即ち、第3検出精度は、作業機1の位置検出装置22が実際に車体位置VPを検出した際の外乱等を含む実際の精度情報である。状態管理部52iは、車体通信装置21及び端末通信装置34を介して、位置検出装置22から当該Fix率を取得して、Fix率を第3検出精度として管理する。
【0152】
なお、状態管理部52iが管理する位置検出精度は、第1~第3検出精度に限定されず、これらのうちのいずれか1つ以上であってもよいし、他の算出方法によって演算された位置検出精度であってもよい。例えば、状態管理部52iは、位置検出装置22が衛星信号を受信している測位衛星Gの数、位置検出装置22が測位衛星Gから受信した衛星信号の信号強度(例えばSNR)、水平精度低下率(HDOP)、及びデータ等のエイジを位置検出精度として管理してもよい。
【0153】
また、状態管理部52iは、管理している位置検出精度の高さが比較的高いか、比較的低いか等を判定し、判定結果を測位情報として管理してもよい。以下の説明において、状態管理部52iのうち、位置検出精度を判定するソフトウェアのことを判定部52i1という。判定部52i1は、第1~第3検出精度に基づいて、位置検出精度を判定する。例えば、判定部52i1は、第1~第3検出精度の少なくとも1つ以上の精度が低いと判定した場合、位置検出精度が比較的低いと判定する。
【0154】
判定部52i1は、例えば、第1検出精度の位置偏差PD1,PD2が所定の第1基準値以上である場合に、位置検出精度が比較的低いと判定する。一方、判定部52i1は、第1検出精度の位置偏差PD,PD2が所定の第1基準値未満である場合に、位置検出精度が比較的高いと判定する。
【0155】
また、判定部52i1は、例えば、第3検出精度のFix率が所定の第2基準値未満である場合に、位置検出精度が比較的低いと判定する。一方、判定部52i1は、第3検出精度のFix率が所定の第2基準値以上である場合に、位置検出精度が比較的高いと判定する。
【0156】
なお、上述した状態管理部52iが演算する状態情報は一例に過ぎず、他の状態情報を演算し、報知装置30が当該他の状態情報を報知してもよい。例えば、状態管理部52iは、マルチパスや妨害波等が生じている場合には、状態情報として、当該マルチパス及び妨害波等の発生を抑制する指示を示す指示情報を生成してもよい。
【0157】
また、状態管理部52iは、選出部が選出しなかった測位衛星G、及び/又は当該測位衛星Gを有する衛星測位システムs2を示す情報を状態情報として演算してもよい。
【0158】
図4に示すように、作業機1の支援システムs1は、作業者に情報を報知する報知装置を備え、状態管理部52iが管理している状態情報を作業者に報知してもよい。報知装置は、例えば作業者が所持しているスマートフォン等の携帯端末30である。本実施形態において、報知装置(携帯端末)30は、支援装置50から送信された表示情報に基づいて、状態情報を示す所定の状態表示画面を端末表示画面31に表示して、当該情報の報知を行う。
【0159】
なお、報知装置30は、状態情報を作業者に報知することができればよく、携帯端末30に限定されない。例えば、報知装置30は、状態情報を光によって作業者に報知するランプであってもよいし、状態情報を音声によって作業者に報知するスピーカーであってもよいし、既存の技術を適用することができる。
【0160】
具体的には、状態管理部52iは、状態情報を取得又は演算すると、当該状態情報に基づく報知情報を送信制御部52hに出力する。報知情報は、状態情報に基づく情報であって、携帯端末30が処理しやすいデータに整形(変換)したものである。送信制御部52hは、状態管理部52iから報知情報を出力されると、通信装置51を制御して、当該報知情報を通信装置51から端末通信装置34へ送信させる。
【0161】
本実施形態において、送信制御部52hは、補正情報と共に、報知情報を通信装置51から端末通信装置34へ送信させる。報知情報には、例えば報知装置30が状態情報を表示するための画像情報が含まれている。端末通信装置34が報知情報を受信すると、端末演算装置32が、当該報知情報に基づいて、端末表示画面31に状態表示画面を表示させる。
【0162】
なお、端末演算装置32が、端末記憶装置33に記憶されたプログラムや画像情報等によって、端末表示画面31に状態表示画面を表示させることができる場合、状態情報には、画像情報が含まれていなくてもよい。
【0163】
状態表示画面は、状態情報が含むそれぞれの状態情報を一覧で表示する。本実施形態において、状態表示画面は、位置検出装置22が衛星信号を受信している測位衛星Gの数、支援装置50の稼働状況、水平精度低下率(HDOP)、マルチパスの有無、妨害波の有無、基線長D2、データのエイジ、支援装置50の状態、測位衛星Gの状態、及び位置検出精度を一覧で表示する。また、状態表示画面は、状態管理部52iが生成した指示情報を表示してもよい。例えば、状態表示画面には、指示情報として「周囲環境が異常です。開けた場所に移動し、GNSS受信機をリセットしてください。」というコメントが表示される。
【0164】
なお、状態表示画面が表示できる情報は上述した情報に限定されない。また、作業者が状態表示画面に表示された遷移ボタンを操作すると、端末演算装置32が端末表示画面31に衛星表示画面M1を表示させてもよい。
図5に示すように、衛星表示画面M1は、測位衛星Gの配置を示す配置表示部105と、選定部52cが選定しなかった測位衛星G、及び/又は当該測位衛星Gを有する衛星測位システムs2を示す一覧表示部106と、を有している。
図5に示す例において、一覧表示部106は、選定していない衛星測位システムs2として、BeiDouが表示されている場合を示している。
【0165】
また、上述した実施形態においては、選択部52dは、多角形のエリアEと作業機1との位置関係に応じて、作業エリアHごとに補正情報を選択していたが、所定の条件を満たす場合、当該選択した補正情報とは別の補正情報を選択してもよい。例えば、選択部52dは、選択した補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度が所定の高さ未満である場合に、選択した補正情報に代えて、位置検出精度が所定の高さ以上であり、且つ作業機1の周辺の別の作業機1Aで用いられる補正情報を選択する。本実施形態においては、選択部52dは、予め選択していた補正情報に対応する位置検出精度が所定の高さ未満である場合において、別の補正情報を一時的に選択してもよい。
【0166】
具体的には、選択部52dは、状態管理部52iから状態情報である位置検出精度を取得する。選択部52dは、位置検出精度として、第3検出精度のように、作業機1の位置検出装置22が実際に車体位置VPを検出した際の外乱等を含む実際の精度情報を取得する。本実施形態においては、選択部52dは、位置検出精度として、状態管理部52iから第3検出精度を取得する。
【0167】
選択部52dは、状態管理部52iから取得した第3検出精度が第2基準値未満である場合、作業エリアHごとに選択した補正情報に代えて、当該作業機1との距離が所定距離(例えば1km)の範囲に位置する他の作業機1に送信する補正情報、及び他の作業機1の車体通信装置21から送信され、且つ当該補正情報に対応する第3検出精度を取得する。選択部52dは、作業機1に送信している補正情報と、他の作業機1に送信している補正情報と、が異なる方式の補正情報であり、当該補正情報に対応する第3検出精度が第2基準値以上である場合、他の作業機1に送信している補正情報を選択する。
【0168】
即ち、所定の作業機1に第1補正情報を送信している場合において、当該第1補正情報に対応する第3検出精度が第2基準値未満であるとき、選択部52dは、当該作業機1との距離が1kmの範囲の他の作業機1に送信する補正情報、及び当該補正情報に対応する第3検出精度を取得する。選択部52dは、他の作業機1に送信している補正情報が第2補正情報であり、当該第2補正情報に対応する第3検出精度が第2基準値以上である場合には、第1補正情報を選択する。
【0169】
なお、上述した一例においては、所定距離が1kmとして定義していたが、支援装置50と通信可能に接続された入力インタフェースを介して、任意の数値に変更できてもよい。
【0170】
さらに、上述した実施形態において、選択部52dは、選択した補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度が所定の高さ未満である場合に、多角形のエリアEと作業機1との位置関係に応じて選択した補正情報に代えて、別の作業機1Aで用いられる補正情報を選択していたが、他の条件に基づいて、選択した補正情報とは別の補正情報を選択してもよい。例えば、選択部52dは、選択した補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度が所定の高さ未満である場合に、選択した補正情報に代えて、別の補正情報を一時的に選択してもよい。また、選択部52dは、選択した基地局40が稼働状態でない場合に、当該稼働状態ではない基地局40が受信する衛星信号に基づかない補正情報を一時的に選択してもよい。斯かる場合、選択部52dは、基地局40が所定時間(例えば5分)経過しても応答しない場合に、当該基地局40が稼働状態ではないと判断する。また、選択部52dは、入力インタフェースを操作することで任意の補正情報を選択できるような構成であってもよい。
【0171】
また、選択部52dは、多角形のエリアEと作業機1との位置関係に応じて選択した補正情報とは別の補正情報を選択したこと、当該別の補正情報、及びこの補正情報に基づいて位置検出をした際の位置検出精度を含む実績情報を、作業エリアHに対応付けて記憶装置53に記憶させてもよい。斯かる場合、選択部52dは、作業エリアHにおいて異なる複数の補正情報を選択した実績があるとき、それぞれの補正情報の位置検出精度に基づいて、当該位置検出精度が高い補正情報を選択する。
【0172】
具体的には、選択部52dは、状態管理部52iから状態情報である位置検出精度と、記憶装置53から作業機1が位置する作業エリアHに対応する実績情報に含まれる位置検出精度と、を取得する。選択部52dは、位置検出精度として、1又は複数の位置検出精度を取得する。
【0173】
本実施形態においては、選択部52dは、位置検出精度として、状態管理部52iから第3検出精度を取得し、記憶装置53から作業機1が位置する作業エリアHに対応する実績情報が含む第3検出精度を取得する。選択部52dは、状態管理部52iから取得した第3検出精度と、実績情報が含む第3検出精度と、を比較して、状態管理部52iから取得した第3検出精度のほうが、実績情報が含む第3検出精度よりも高い場合、作業エリアHごとに選択した補正情報を選択して、別の補正情報を選択しない。
【0174】
一方、選択部52dは、状態管理部52iから取得した第3検出精度と、実績情報が含む第3検出精度と、を比較して、状態管理部52iから取得した第3検出精度のほうが、実績情報が含む第3検出精度よりも高い場合、作業エリアHごとに選択した補正情報に代えて、当該実績情報に対応する補正情報を選択する。
【0175】
図6A~
図6Cは、作業機1の支援システムs1において、支援装置50が補正情報を生成し、作業機1が当該補正情報に基づいて車体位置VPを検出する処理の一連の流れを説明する図である。以下、
図6A~
図6Cを用いて、作業機1の支援システムs1における上記処理の一連の流れを説明する。
【0176】
まず、選定部52cは、それぞれの衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gが第1正常条件及び第2正常条件を満たすか否かを判断する(S1)。選定部52cは、第1管理テーブルにおいて、第1正常条件及び第2正常条件を満たすと判断した測位衛星Gの識別情報に第1選定フラグを付与する(S2)。
【0177】
選定部52cは、全ての測位衛星G(例えば電波を受信できる測位衛星、可視衛星)の正常条件を判断すると(S3,Yes)、衛星測位システムs2ごとに、それぞれの衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、第1選定フラグが付与されていない測位衛星Gの数が基準数以上であるか否か判断する(S4)。選定部52cは、第1選定フラグが付与されていない測位衛星Gの数が基準数以上ではないと判断した場合(S4,No)、第2管理テーブルにおいて、第1選定フラグが付与されていない測位衛星Gの数が基準数以上である衛星測位システムs2の識別情報に第2選定フラグを付与する(S5)。
【0178】
選定部52cは、全ての衛星測位システムs2を参照したと判断すると(S6,Yes)、第1管理テーブル及び第2管理テーブルに基づいて、選定テーブルを作成(又は更新)する(S7)。
【0179】
次に、選択部52dは、多角形のエリアEと、車体位置VPと、に基づいて、エリアEの内側に作業機1が位置しているか否かを判断する(S8)。選択部52dは、エリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S8,Yes)、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であるか否かを判断する(S9)。
【0180】
選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であると判断すると(S9,Yes)、当該3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S10)。
【0181】
一方、選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であると判断すると(S9,No)、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であるか否かを判断する(S11)。
【0182】
選択部52dは、基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S11,Yes)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S12)。また、選択部52dは、基線長D2が所定の第2距離d2以上であると判断した場合には(S11,No)、3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S13)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0183】
また、選択部52dは、エリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合(S8,No)、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であるか否かを判断する(S14)。選択部52dは、基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S14,Yes)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S15)。
【0184】
一方、選択部52dは、基線長D2が所定の第2距離d2以上であると判断した場合には(S14,No)、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であるか否かを判断する(S16)。選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であると判断すると(S16,Yes)、当該3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S17)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0185】
また、選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であると判断すると(S16,No)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S18)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0186】
選択部52dは、補正情報を選択すると(S10,S12,S13,S15,S17,S18)、生成部52gに指示信号を出力する(S19)。生成部52gは、選択部52dから出力された指示信号に基づいて、管理部52fに観測情報(衛星信号)を要求する(S20)。
【0187】
管理部52fは、記憶装置53に記憶されている選定テーブルと、生成部52gから出力された指示信号と、に基づいて、選択部52dが選択した第1補正情報又は第2補正情報に対応する基地局40が、選定部52cによって選定された測位衛星Gから受信した観測情報を生成部52gに出力する(S21)。
【0188】
観測情報を生成部52gに出力すると(S21)、生成部52gは、当該観測情報を取得し(S22)、当該観測情報に含まれる衛星信号等に基づいて、補正情報を生成する(S23)。生成部52gは、生成した補正情報を送信制御部52hに出力する(S24)。
【0189】
送信制御部52hは、生成部52gから補正情報を取得すると(S25)、通信装置51を制御して、当該通信装置51から車体通信装置21へ補正情報を送信させる(S26)。
【0190】
車体通信装置21が補正情報を受信すると、位置検出装置22は、当該補正情報を取得して(S27)、アンテナ22aが受信した衛星信号、及び車体通信装置21が受信した補正情報に基づき、RTK法によって車体位置VPを測位する(S28)。
【0191】
以上より、選択部52dは、S8においてエリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S8,Yes)、エリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合(S8,No)に比べて、3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する選択肢が多い(S10,S13)。また、選択部52dは、S8においてエリアEの内側に作業機1が位置していると判断し(S8,Yes)、S9において3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であると判断した場合には(S9,Yes)、他の条件の判断を行うことなく、第2補正情報を選択している(S10)。従って、エリアEの内側に作業機1が位置している場合(S8,Yes)、及び3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であると判断した場合(S9,Yes)、選択部52dは、第2補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0192】
一方、選択部52dは、S8においてエリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合(S8,No)、エリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S8,Yes)に比べて、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する選択肢が多い(S15,S18)。また、選択部52dは、S8においてエリアEの外側に作業機1が位置していると判断し(S8,No)、S14において作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であると判断した場合に(S14,Yes)、他の条件判断を行うことなく、第1補正情報を選択している(S15)。従って、エリアEの外側に作業機1が位置している場合(S8,No)、及び基線長D2の長さが第2距離d2未満であると判断した場合(S14,Yes)、選択部52dは、第1補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0193】
なお、以下の説明において、上述した選定部52cが一又は複数の測位衛星Gを選定する処理(S1~S8)を第1ステップといい、生成部52gが補正情報を作成する処理(S23)を第2ステップといい、位置検出装置22が補正情報に基づいて作業機1の位置を検出する処理(S28)を第3ステップということがある。また、選択部52dが補正情報を選択する処理(S9~S18)を第1ステップということがある。
【0194】
また、
図6A~
図6Cに示す選択部52dの処理の一連の流れは、一例であって、他の流れで処理を行ってもよい。
図7は、作業機1の支援システムs1において、支援装置50が補正情報を生成し、作業機1が当該補正情報に基づいて車体位置VPを検出する処理の一連の流れを説明する図である。
図7に示す例では、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0195】
図6A~
図6C、
図7からみて明らかなように、
図7は、
図6BのS8~S18の処理がS31~S39である点において異なる。以下、
図7を用いて、第1の変形例における作業機1の支援システムs1におけるS31~S39の処理の流れを説明する。
【0196】
S17の処理が終わると、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であるか否かを判断する(S31)。選択部52dは、基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S31,Yes)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S32)。また、選択部52dは、基線長D2が所定の第2距離d2以上であると判断した場合には(S31,No)、多角形のエリアEと、車体位置VPと、に基づいて、エリアEの内側に作業機1が位置しているか否かを判断する(S33)。
【0197】
選択部52dは、エリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,Yes)、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であるか否かを判断する(S34)。選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であると判断すると(S34,Yes)、当該3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S35)。
【0198】
また、選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であると判断しても(S34,No)、当該3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S36)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0199】
一方、選択部52dは、エリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,No)、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であるか否かを判断する(S37)。選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であると判断すると(S37,Yes)、当該3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S38)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0200】
また、選択部52dは、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であると判断すると(S37,No)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S39)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0201】
選択部52dは、補正情報を選択すると(S32,S35,S36,S38,S39)、S19の処理に進む。
【0202】
以上より、選択部52dは、S31において基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S31,Yes)、他の条件を判断することなく、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択している(S32)。つまり、選択部52dは、第2補正情報を優先的に選択する条件を判断することなく、第1補正情報を優先的に選択している。このため、選択部52dは、第1補正情報及び第2補正情報の両方を選択し得る場合において、第1補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0203】
また、選択部52dは、S33においてエリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,Yes)、エリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,No)に比べて、3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する選択肢が多い(S35,S36)。また、選択部52dは、S33においてエリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,Yes)、その後のS34の判断によらず第2補正情報を選択している(S35、S36)。従って、エリアEの内側に作業機1が位置している場合(S33,Yes)、選択部52dは、第2補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0204】
一方、選択部52dは、S31において作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であると判断した場合に(S31,Yes)、他の条件判断を行うことなく、第1補正情報を選択している(S32)。従って、基線長D2の長さが第2距離d2未満であると判断した場合(S31,Yes)、選択部52dは、第1補正情報を優先的に選択しているといえる。また、選択部52dは、S33においてエリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,No)、エリアEの内側に作業機1が位置していると判断した場合(S33,Yes)に比べて、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する選択肢が多い(S39)。従って、選択部52dは、エリアEの外側に作業機1が位置していると判断した場合、第1補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0205】
また、
図6A~
図6C、
図7に示す選択部52dの処理の一連の流れを省略してもよい。具体的には、
図8に示す第2の変形例においては、
図6BのS8~S18の処理、
図7のS31~S39の処理に代えて、S41~S45の処理を採用している。
図8も
図7と同様に、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。以下、
図8を用いて、第2の変形例における作業機1の支援システムs1におけるS41~S45の処理の流れを説明する。
【0206】
図8に示す第2の変形例において、S17の処理が終わると、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であるか否かを判断する(S41)。選択部52dは、基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S41,Yes)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S42)。
【0207】
また、選択部52dは、基線長D2が所定の第2距離d2以上であると判断した場合には(S41,No)、作業機1がVRS-GNSS方式の対象エリア内に位置しているか判断する(S43)。対象エリアの位置情報は、記憶装置53に予め記憶されており、選択部52dは、通信装置51が受信した要求情報から取得した車体位置VPの位置情報と、対象エリアの位置情報に基づいて、作業機1がVRS-GNSS方式の対象エリア内に位置しているか判断する。
【0208】
対象エリアとは、VRS-GNSS方式による測位が可能であるか否かを予め定義した領域であり、対象エリアは、設置された基地局40が比較的多い領域や、農業機械メーカ、農業協同組合、又は管理会社等が作業機1の支援システムs1のサービスを提供している領域等である。即ち、対象エリア外は、例えば、設置された基地局40が比較的少ない領域や、農業機械メーカ、農業協同組合、又は管理会社等が作業機1の支援システムs1のサービスが提供されていない領域等であって、例えば離島、国外、国土の外縁部等が挙げられる。
【0209】
選択部52dは、作業機1が対象エリア内に位置していると判断すると(S43,Yes)、3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S44)。一方、選択部52dは、作業機1が対象エリア内に位置していると判断すると(S43,No)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S45)。このとき、選択部52dは、指示信号に精度劣化フラグを付与する。
【0210】
以上より、選択部52dは、S41において基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S41,Yes)、他の条件を判断することなく、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択している(S42)。つまり、選択部52dは、第2補正情報を優先的に選択する条件を判断することなく、第1補正情報を優先的に選択している。このため、選択部52dは、第1補正情報及び第2補正情報の両方を選択し得る場合において、第1補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0211】
また、
図8に示す第2の変形例で説明した選択部52dの処理の一連の流れをさらに省略してもよい。具体的には、
図9に示す第3の変形例においては、
図8のS41~S45の処理に代えて、S51~S53の処理を採用している。
図9に示す例も
図7及び
図8に示す例と同様に、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。以下、
図9を用いて、第3の変形例における作業機1の支援システムs1におけるS51~S53の処理の流れを説明する。
【0212】
図9に示す第3の変形例において、S17の処理が終わると、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との基線長D2の長さが第2距離d2未満であるか否かを判断する(S51)。選択部52dは、基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S51,Yes)、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択する(S52)。一方、選択部52dは、基線長D2が第2距離d2以上であると判断した場合(S51,No)、3つの基地局40が受信した衛星信号、及び3つの基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を選択する(S53)。
【0213】
以上より、選択部52dは、S51において基線長D2が第2距離d2未満であると判断した場合(S51,Yes)、他の条件を判断することなく、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を選択している(S52)。つまり、選択部52dは、第2補正情報を優先的に選択する条件を判断することなく、第1補正情報を優先的に選択している。このため、選択部52dは、第1補正情報及び第2補正情報の両方を選択し得る場合において、第1補正情報を優先的に選択しているといえる。
【0214】
なお、上述した実施形態においては、支援装置50の演算装置52が選定部52c、選択部52d、及び生成部52gを有している場合を例に説明したが、選定部は、複数の測位衛星Gのうち、一又は複数の測位衛星Gを選定し、選択部は、補正情報を選択し、生成部は、補正情報を生成すればよく、他の演算処理装置に設けられていてもよい。また、選定部、選択部、及び生成部は、それぞれ異なる演算処理装置に設けられていてもよい。
【0215】
例えば、選定部は、車体通信装置21が有し、且つ電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された演算処理装置(通信制御装置21a)に設けられていてもよい。斯かる場合、生成部52gは、信号取得部52bが取得した衛星信号に基づいて補正情報を生成し、車体通信装置21が通信装置51を介して当該補正情報を受信する。選定部は、生成部52gが生成した補正情報のうち、選定した測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく補正情報を位置検出装置22に出力する。
【0216】
また、選定部及び生成部が通信制御装置21aに設けられていてもよい。斯かる場合、車体通信装置21は、携帯端末30を介して支援装置50に対して、選定部が選定した測位衛星Gから基地局40が受信した衛星信号の要求等を行い、通信装置51を介して衛星信号を受信する。生成部は、車体通信装置21が受信した衛星信号に基づいて補正情報を生成する。
【0217】
また、選定部及び生成部は、携帯端末30が有し、且つ電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された演算処理装置(端末演算装置32)に設けられていてもよい。斯かる場合、携帯端末30は、支援装置50に対して、選定部が選定した測位衛星Gから基地局40が受信した衛星信号の要求等を行い、支援装置50から衛星信号を受信する。生成部は、車体通信装置21が受信した衛星信号に基づいて補正情報を生成し、車体通信装置21を介して位置検出装置22に補正情報を出力する。
【0218】
本発明の一態様に係る作業機1の支援システムs1は、それぞれ所定の基準点RPに設けられた複数の基地局40が、複数の衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gから受信した衛星信号を取得する信号取得部52bと、信号取得部52bが取得した衛星信号に基づいて補正情報を生成する生成部52gと、複数の測位衛星Gのうち、一又は複数の測位衛星Gを選定する選定部52cと、選定部52cが選定した測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく補正情報を用いて作業機1の位置を検出する位置検出装置22と、を備え、選定部52cは、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、所定の条件を満たさず、異常であると判断した測位衛星Gの数が所定の閾値以上である場合、当該衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gを選定しない。
【0219】
この構成によれば、測位衛星Gごとに正常であるか否かを判断した場合であっても、実際には当該測位衛星Gに異常が発生している場合があるが、選定部52cは、衛星測位システムs2単位で、補正情報の生成に用いる衛星信号を送信する測位衛星Gを選定しないため、異常が発生した測位衛星Gからの衛星信号に基づく不正確な補正情報によって、位置検出装置22が位置検出を行うことを抑制できる。
【0220】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1に設けられ、且つ生成部52gが生成した補正情報を受信する車体通信装置21を備え、信号取得部52b、生成部52g、及び選定部52cは、車体通信装置21と通信を行う外部のサーバ(支援装置)50に設けられ、生成部52gは、選定部52cが選定した測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく補正情報を生成し、サーバ50は、生成部52gが生成した補正情報を車体通信装置21に送信し、車体通信装置21は、受信した補正情報を位置検出装置22に出力する。
【0221】
この構成によれば、比較的処理能力が高いサーバ50が測位衛星Gの選定を行うため、迅速かつ確実に測位衛星Gの選定を行うことができる。
【0222】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1に設けられ、且つ生成部52gが生成した補正情報を受信する車体通信装置21を備え、信号取得部52b及び生成部52gは、車体通信装置21と通信を行う外部のサーバ50に設けられ、選定部は、車体通信装置21に設けられ、生成部52gが生成した補正情報のうち、選定した測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく補正情報を位置検出装置22に出力する。
【0223】
この構成によれば、車体通信装置21は、すでに受信している補正情報のうち、選定部で選定した測位衛星Gに対応する補正情報を位置検出装置22に出力する。このため、位置検出装置22は、比較的新しい補正情報を用いて作業機1の位置検出を行うことができる。
【0224】
また、作業機1の支援システムs1は、サーバ50及び車体通信装置21と通信可能な携帯端末30を備え、車体通信装置21は、携帯端末30を介してサーバ50から補正情報を受信する。
【0225】
この構成によれば、車体通信装置21がサーバ50と直接通信できなくとも、携帯端末30を経由することで、サーバ50と間接的に通信を行うことができる。
【0226】
また、選定部52cは、所定の条件として、衛星信号に含まれる当該衛星信号を送信した測位衛星Gの健康情報が正常であるか否かを判断する。
【0227】
この構成によれば、衛星信号に基づいて、当該衛星信号を送信した測位衛星Gが異常であるか否かを簡単に判断することができる。
【0228】
また、選定部52cは、所定の条件として、衛星信号を送信した測位衛星Gの位置と基地局40の基準点RPの位置とに基づいて演算された当該測位衛星Gと当該基地局40の第1演算距離に対して、衛星信号に基づいて演算された当該測位衛星Gと当該基地局40との第2演算距離が適正であるか否かを判断する。
【0229】
この構成によれば、選択部52dは、測位衛星Gからの衛星信号に何等かの不具合が生じていると判断でき、補正情報の生成に用いる衛星信号を送信する測位衛星Gから当該測位衛星Gを排除することができる。このため、補正情報に基づく位置検出の位置検出精度を向上させることができる。
【0230】
選定部52cは、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、所定の条件を満たさない測位衛星Gの数が閾値以上から、所定の条件を満たさない測位衛星Gの数が閾値未満になると、所定の条件を満たす測位衛星Gから順に選定する。
【0231】
この構成によれば、補正情報を生成するために用いる衛星信号を送信する測位衛星Gの数が短時間で大きく変動することを抑制できる。これにより、選択していなかった衛星測位システムs2が有する測位衛星Gを選択することによって、検出位置が変動する等の測位状態が変化することを抑制できる。
【0232】
また、作業機1の支援システムs1は、生成部52gが生成した補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度を判定する判定部52i1と、判定部52i1が位置検出精度は比較的低いと判定した場合、当該位置検出精度が比較的低いことを報知する報知装置30と、を備えている。
【0233】
この構成によれば、作業者は、補正情報に基づく位置検出の精度が比較的低いことを簡単に把握することができる。
【0234】
また、生成部52gは、補正情報として、基地局40が受信した衛星信号、及び当該基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報と、複数の基地局40のうち、所定の3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び当該3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく仮想基準点VRPを含む第2補正情報と、を生成する。
【0235】
この構成によれば、作業機1は、基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報による位置検出(RRS-GNSS方式)と、仮想基準点VRPに基づく第2補正情報による位置検出(VRS-GNSS方式)と、によって比較的精度が高い位置検出を行うことができる。
【0236】
また、作業機1の支援システムs1は、生成部52gが生成する第1補正情報及び第2補正情報のうち、いずれかの補正情報を選択する選択部52dを備え、選択部52dは、3つ以上の基地局40の基準点RPを結んだ多角形のエリアEと、作業機1との位置関係に応じて、補正情報を選択する。
【0237】
この構成によれば、基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報による位置検出(RRS-GNSS方式)と、仮想基準点VRPに基づく第2補正情報による位置検出とを適切に選択することができる。
【0238】
また、エリアEの内側に作業機1が位置している場合、選択部52dは、3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0239】
この構成によれば、エリアEの内側に作業機1が位置している場合に、VRS-GNSS方式による位置検出を行うと内挿法によって第2補正情報を生成でき、高い位置検出精度を維持できる。
【0240】
また、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満である場合、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0241】
この構成によれば、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であって、エリアEが比較的小さい場合、第2補正情報による位置検出が可能となり、高い位置検出精度を維持できる。
【0242】
また、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が所定の第2距離d2未満である場合、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0243】
この構成によれば、仮にエリアEが比較的大きい場合であっても、基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が第2距離d2未満であって、作業機1が基地局40の比較的近傍に位置している場合には、VRS-GNSS方式に代えてRRS-GNSS方式を補完的に用いることで、作業機1は比較的高い精度での位置検出を行うことができる。
【0244】
また、エリアEの内側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が所定の第2距離d2以上である場合に、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択し、斯かる場合において、報知装置30は、当該第2補正情報に対応する位置検出精度が比較的低いことを報知する。
【0245】
この構成によれば、エリアEが比較的大きい場合であっても、作業機1が基地局40の比較的遠方に位置しているため、VRS-GNSS方式での位置検出を採用することで、RRS-GNSS方式に比べて比較的良好に位置検出を行うことができる。また、作業者は、当該位置検出精度が比較的低いことを容易に認識できる。
【0246】
また、エリアEの外側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が所定の第2距離d2以上である場合、報知装置30は、当該第1補正情報に対応する位置検出精度が比較的低いことを報知する。
【0247】
この構成によれば、VRS-GNSS方式による位置検出を行うと内挿法ではなく外挿法による推定によって第2補正情報を生成することになり、作業機1と基地局40との相対距離が比較的大きいため、第1補正情報による位置検出精度が低下する虞があるため、作業者は、斯かる場合に当該位置検出精度が比較的低いことを容易に認識できる。
【0248】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1の作業の内容に応じて、第1距離d1を定義する定義部52eを備えている。
【0249】
この構成によれば、作業機1が行う作業の内容に応じて、即ち要求される位置検出精度に応じて、最適な補正情報を選択することができる。
【0250】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1の作業の内容に応じて、第2距離d2を定義する定義部52eを備えている。
【0251】
この構成によれば、作業機1が行う作業の内容に応じて、即ち要求される位置検出精度に応じて、最適な補正情報を選択することができる。
【0252】
また、本発明の一態様に係る作業機1の支援方法は、選定部52cが、複数の衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、一又は複数の測位衛星Gを選定する第1ステップと、測位衛星Gからそれぞれ所定の基準点RPに設けられた複数の基地局40が受信した衛星信号、及び当該基地局40の基準点RPに基づいて、生成部52gが補正情報を生成する第2ステップと、第1ステップで選定された測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づき、第2ステップで生成された補正情報を用いて、位置検出装置22が作業機1の位置を検出する第3ステップと、を含み、第1ステップにおいて、選定部52cは、衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gのうち、所定の条件を満たさず、異常であると判断した測位衛星Gの数が所定の閾値以上である場合、当該衛星測位システムs2が有する複数の測位衛星Gを選定しない。
【0253】
この構成によれば、測位衛星Gごとに正常であるか否かを判断した場合であっても、実際には当該測位衛星Gに異常が発生している場合があるが、選定部52cは、衛星測位システムs2単位で、補正情報の生成に用いる衛星信号を送信する測位衛星Gを選定しないため、異常が発生した測位衛星Gからの衛星信号に基づく不正確な補正情報によって、位置検出装置22が位置検出を行うことを抑制できる。
【0254】
また、本発明の一態様に係る作業機1の支援システムs1は、それぞれ所定の基準点RPに設けられた複数の基地局40が受信した測位衛星Gからの衛星信号を取得する取得部と、基地局40が受信した衛星信号、及び当該基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報を生成し、複数の基地局40のうち、所定の3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び当該3つ以上の基地局40の基準点RPに基づいて、仮想基準点VRPを含む第2補正情報を生成する生成部52gと、生成部52gが生成する第1補正情報及び第2補正情報のうち、いずれかの補正情報を選択する選択部52dと、生成部52gが生成した補正情報に基づいて作業機1の位置を検出する位置検出装置22と、を備え、選択部52dは、作業機1が作業を行う作業エリアHごとに補正情報を選択する。
【0255】
この構成によれば、選択部52dによって、作業エリアHごとに適正な補正情報が選択される。即ち、作業機1が作業エリアHを移動する際に、頻繁に補正情報が第1補正情報と第2補正情報とで切り替わることがない。これにより、作業機1は、精度が高い位置検出を行うことができ、補正情報が切り替わることによって、検出した位置が変動する等の測位状態が変化することを抑制できる。
【0256】
また、選択部52dは、作業エリアHを所定の範囲に区切った所定領域のそれぞれの位置で、所定の条件に基づいて補正情報を選択し、当該作業エリアH内のうち、選択された面積が多い補正情報を作業エリアHごとに選択する。
【0257】
この構成によれば、選択部52dは、条件に基づいて選択した補正情報を、作業エリアHごとに適正に反映することができる。このため、送信部は、選択部52dの条件に応じた補正情報を適正に作業機1へ送信することができる。
【0258】
また、作業エリアHは、作業機1が作業を行う圃場に基づいて予め定義されている。
【0259】
この構成によれば、作業機1が圃場内で作業を行う際に、頻繁に補正情報が第1補正情報と第2補正情報とで切り替わることがなく、検出した位置が変動する等の測位状態が変化することを抑制できる。
【0260】
また、作業エリアHは、圃場の輪郭に基づいて予め定義されている。
【0261】
この構成によれば、作業機1が圃場内で作業を行う際に、頻繁に補正情報が第1補正情報と第2補正情報とで切り替わることをより確実に抑制できる。
【0262】
また、作業エリアHは、作業機1が一連の作業を行う作業領域として予め定義されている。
【0263】
この構成によれば、作業機1が一連の作業を行っている最中に、頻繁に補正情報が第1補正情報と第2補正情報とで切り替わることがなく、検出した位置が変動する等の測位状態が変化することを抑制できる。
【0264】
また、作業エリアHは、作業機1が自動走行を行う走行領域として、当該自動走行を行う前に予め定義されている。
【0265】
この構成によれば、作業機1が自動走行を行っている最中に、頻繁に補正情報が第1補正情報と第2補正情報とで切り替わることがなく、検出した位置が変動する等の測位状態が変化することを抑制できる。
【0266】
また、選択部52dは、作業機1が作業エリアHを出入りした場合に、当該作業機1が位置している作業エリアHに対応する補正情報を選択する。
【0267】
この構成によれば、作業機1が作業エリアH内を移動している際に、補正情報が切り替わることを確実に抑制できる。
【0268】
また、選択部52dは、3つ以上の基地局40の基準点RPを結んだ多角形のエリアEと、作業機1との位置関係に応じて、補正情報を選択する。
【0269】
この構成によれば、基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報による位置検出(RRS-GNSS方式)と、仮想基準点VRPに基づく第2補正情報による位置検出とを適切に選択することができる。
【0270】
また、エリアEの内側に作業機1が位置している場合、選択部52dは、3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0271】
この構成によれば、エリアEの内側に作業機1が位置している場合に、VRS-GNSS方式による位置検出を行うと内挿法によって第2補正情報を生成でき、高い位置検出精度を維持できる。
【0272】
また、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満である場合、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0273】
この構成によれば、3つの基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1未満であって、エリアEが比較的小さい場合、第2補正情報による位置検出が可能となり、高い位置検出精度を維持できる。
【0274】
また、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0275】
この構成によれば、仮に、第1補正情報と第2補正情報の両方を満たす場合に、第1補正情報を選択することで、第2補正情報を生成することによる生成部52gの処理負担を軽減することができる。
【0276】
また、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が所定の第2距離d2未満である場合、選択部52dは、作業機1に最も近い基地局40が受信した衛星信号に基づく第1補正情報を優先的に選択する。
【0277】
この構成によれば、仮にエリアEが比較的大きい場合であっても、基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が第2距離d2未満であって、作業機1が基地局40の比較的近傍に位置している場合には、VRS-GNSS方式に代えてRRS-GNSS方式を補完的に用いることで、作業機1は比較的高い精度での位置検出を行うことができる。
【0278】
また、エリアEの内側に作業機1が位置し、3つ以上の基地局40の基準点RPのそれぞれの距離D1が第1距離d1以上であり、3つ以上の基地局40の基準点RPのうち、作業機1に最も近い基地局40の基準点RPと作業機1との相対距離が所定の第2距離d2以上である場合に、選択部52dは、当該3つ以上の基地局40が受信した衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく第2補正情報を優先的に選択する。
【0279】
この構成によれば、エリアEが比較的大きい場合であっても、作業機1が基地局40の比較的遠方に位置しているため、VRS-GNSS方式での位置検出を採用することで、RRS-GNSS方式に比べて比較的良好に位置検出を行うことができる。
【0280】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1の作業の内容に応じて、第1距離d1を定義する定義部52eを備えている。
【0281】
この構成によれば、作業機1が行う作業の内容に応じて、即ち要求される位置検出精度に応じて、最適な補正情報を選択することができる。
【0282】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1の作業の内容に応じて、第2距離d2を定義する定義部52eを備えている。
【0283】
この構成によれば、作業機1が行う作業の内容に応じて、即ち要求される位置検出精度に応じて、最適な補正情報を選択することができる。
【0284】
また、選択部52dは、選択した補正情報に基づく位置検出の精度である位置検出精度が所定の高さ未満である場合に、補正情報に代えて、位置検出精度が高さ以上であり、且つ作業機1の周辺の別の作業機1Aで用いられる補正情報を選択する。
【0285】
この構成によれば、予め定められた条件以外の要因によって、位置検出精度が低下した場合であっても、位置検出装置22は、近傍の作業機1で適性に位置検出されている補正情報で作業機1の位置を検出することができる。
【0286】
また、選択部52dは、作業エリアHにおいて異なる複数の補正情報を選択した実績がある場合、それぞれの補正情報の位置検出精度に基づいて、当該位置検出精度が高い補正情報を選択する。
【0287】
この構成によれば、選択部52dは、一時的な誤検出が生じた場合であっても、当該作業エリアHにおいて最適な補正情報を選択することができる。
【0288】
また、作業機1の支援システムs1は、作業機1に設けられ、位置検出装置22が検出した作業機1の位置と、作業エリアHを示すマップに作成された所定の走行予定ルートLに基づいて作業機1の自動走行を制御する制御装置23を備えている。
【0289】
この構成によれば、比較的高い位置検出精度を維持できるため、制御装置23は、作業機1の位置及び走行予定ルートLに基づいて、正確な自動走行の制御を行うことができる。
【0290】
また、本発明の一態様に係る作業機1の支援方法は、選択部52dが、基地局40で受信された測位衛星Gからの衛星信号、及び当該衛星信号を受信した基地局40の基準点RPに基づく第1補正情報と、所定の3つ以上の基地局40で受信された衛星信号、及び3つ以上の基地局40の基準点RPに基づく仮想基準点VRPを含む第2補正情報と、のいずれかを選択する第1ステップと、第1ステップで選択された補正情報を生成部52gが生成する第2ステップと、第2ステップで生成部52gが生成した補正情報に基づいて、位置検出装置22が作業機1の位置を検出する第3ステップと、含み、選択部52dは、第1ステップにおいて、作業機1が作業を行う作業エリアHごとに補正情報を選択する。
【0291】
この構成によれば、選択部52dによって、作業エリアHごとに適正な補正情報が選択される。即ち、作業機1が作業エリアHを移動する際に、頻繁に補正情報が第1補正情報と第2補正情報とで切り替わることがない。これにより、作業機1は、精度が高い位置検出を行うことができ、補正情報が切り替わることによって、検出した位置が変動する等の測位状態が変化することを抑制できる。
【0292】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0293】
1 :作業機
1A :別の作業機
22 :位置検出装置
23 :制御装置
40 :基地局
52d :選択部
52e :定義部
52g :生成部
D1 :距離
E :エリア
G :測位衛星
H :作業エリア
L :走行予定ルート
RP :基準点
VRP :仮想基準点
d1 :第1距離
d2 :第2距離
s1 :支援システム