(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】建造物間カバー装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20250527BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
(21)【出願番号】P 2023051049
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】599124884
【氏名又は名称】新建材開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】竹石 勝之
(72)【発明者】
【氏名】竹石 勝利
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-013641(JP,A)
【文献】特開2019-157485(JP,A)
【文献】特開2019-138111(JP,A)
【文献】特開2017-179978(JP,A)
【文献】特開2016-204824(JP,A)
【文献】特開2012-219515(JP,A)
【文献】特開2010-106588(JP,A)
【文献】特開2006-138194(JP,A)
【文献】特開2004-244987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部および当該前面部の端部から垂直に延びた側面部を有し、前記前面部同士を前後方向に垂直な同一面内に位置させるとともに前記側面部同士が左右方向に対向するように設けられた隣接する第1建造物および第2建造物の前記側面部同士の間に形成される空間部を、前記前面部側から覆うカバープレートを有する建造物間カバー装置であって、
前記カバープレートの前記第1建造物側の辺縁部を、上下方向に延びる上下揺動軸まわりに揺動可能に前記第1建造物に連結するヒンジ部材と、
上下方向に延びるように形成されて前記第2建造物に取り付けられたケース部材と、
伸縮可能な弾性伸縮部を有して線状に形成されており、基端部が上下方向に延びた状態で前記ケース部材内に収納されるとともに、前記基端部に続く部分が前記ケース部材の上下方向端部から延出されて先端部が前記カバープレートに取り付けられ、前記弾性伸縮部が縮もうとする弾性力により、前記カバープレートを前記第2建造物に向けて引張る弾性引張部材と、
前記ケース部材の上下方向端部に設けられ、前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出方向を変換可能に構成された方向変換部と、を備え、
前記第1建造物に対し前記第2建造物の相対位置が変動した場合には、前記相対位置の変動量および変動方向に応じて、前記弾性伸縮部が伸縮されて前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出量が調整されるとともに、前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出方向が前記方向変換部を介して変換され、および/または前記カバープレートの前記辺縁部が前記ヒンジ部材を介して前記上下揺動軸まわりに揺動することによって、前記カバープレートが前記相対位置の変動に対し追従可能に構成されていることを特徴とする建造物間カバー装置。
【請求項2】
前記方向変換部は、左右方向に延びる左右回転軸まわりに回転可能に前記ケース部材に取り付けられたローラ部材を有しており、
前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出量が調整される際に、前記弾性引張部材が前記ローラ部材の周面に接触しながら延出されて前記ローラ部材が回転されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建造物間カバー装置。
【請求項3】
前記ローラ部材の端面部に、前記ローラ部材の周面に接触しながら延出される前記弾性引張部材が前記ローラ部材から外れることを防止する逸脱防止片が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建造物間カバー装置。
【請求項4】
前記カバープレートが、前記第1建造物側に配置される第1プレートと、前記第1プレートと左右方向に並んで前記第1プレートの前記第2建造物側に配置される第2プレートとを有して構成され、
前記第1プレートの前記第1建造
物側の辺縁部が、前記ヒンジ部材を介して前記上下揺動軸まわりに揺動可能に前記第1建造物に連結され、
前記第1プレートの前記第2プレート側の辺縁部と前記第2プレートの前記第1プレート側の辺縁部とが、上下方向に延びる上下枢結軸まわりに揺動可能に枢結され、
前記弾性引張部材の前記先端部が前記第2プレートに取り付けられており、
前記第1建造物に対する第2建造物の相対位置が変動した場合に、前記第2プレートが前記弾性伸縮部の弾性力により前記第2建造物に向けて引張られることにより、前記第2プレートが前記第1プレートに対し、前記空間部側から見て谷折り状態となるように、前記上下枢結軸まわりに揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建造物間カバー装置。
【請求項5】
前記ヒンジ部材に替えて、前記カバープレートの前記第1建造物側の辺縁部と前記第1建造物との間に設けられ、前記辺縁部を、前記第1建造
物に対して上下方向に移動可能に、かつ前記第1建造物に対して前後方向に揺動可能に、前記第1建造物に支持させる支持ユニットを、備え、
前記第1建造物に対し前記第2建造物の相対位置が変動した場合には、前記相対位置の変動量および変動方向に応じて、前記弾性伸縮部が伸縮されて前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出量が調整されるとともに、前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出方向が前記方向変換部を介して変換され、および/または前記カバープレートの前記辺縁部が前記支持ユニットを介して前記第1建造物に対し上下方向に移動し、および/または前記カバープレートの前記辺縁部が前記支持ユニットを介して前記第1建造物に対し前後方向に揺動することによって、前記カバープレートが前記相対位置の変動に追従可能に構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の建造物間カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する2つの建造物の間の空間部をカバープレートで覆って2つの建造物を繋ぐ建造物間カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建造物間カバー装置は、エキスパンションジョイントカバーとも称され、例えば、構造的に切り離されている2つの建造物を一体的に利用できるようにするために用いられる。建造物間カバー装置では、強風や地震等により2つの建造物が相対的に変動した場合でもその変動に追従するようにカバープレートを変動させて支持することができる支持機構(「カバープレート支持機構」とも称する)が必要となる。
【0003】
従来、2つの建造物の相対的な変動に追従して伸縮回動等するリンク部材を有するカバープレート支持機構を2つの建造物の間の空間部内に設けて、カバープレートを支持する技術が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク部材を有するカバープレート支持機構は、2つの建造物の相対変動に対応して様々な方向に大きな可動量を得ることができるという利点がある。しかし、2つの建造物の間の空間部内にリンク部材が配置されるように構成されているため、空間部内にリンク部材を収めるための広いスペースを確保しなければならない。空間部内におけるカバープレート支持機構の設置スペースが広くなるに従い、2つの建造物の間の離隔距離(クリアランス)を広げる必要がある。離隔距離を広げるとそれに従ってカバープレートを大きく構成する必要が生じてコスト増の要因となる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、2つの建造物間の空間部内にカバープレート支持機構を設置する場合に空間部内に必要となるスペースを低減することが可能な建造物間カバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、前面部(例えば、第1実施形態における外壁面部4a,5a)および当該前面部の端部から垂直に延びた側面部(例えば、第1実施形態における端面部4g,5g)を有し、前記前面部同士を前後方向に垂直な同一面内に位置させるとともに前記側面部同士が左右方向に対向するように設けられた隣接する第1建造物および第2建造物の前記側面部同士の間に形成される空間部を、前記前面部側から覆うカバープレートを有する建造物間カバー装置であって、前記カバープレートの前記第1建造物側の辺縁部を、上下方向に延びる上下揺動軸まわりに揺動可能に前記第1建造物に連結するヒンジ部材と、上下方向に延びるように形成されて前記第2建造物に取り付けられたケース部材と、伸縮可能な弾性伸縮部を有して線状に形成されており、基端部が上下方向に延びた状態で前記ケース部材内に収納されるとともに、前記基端部に続く部分が前記ケース部材の上下方向端部から延出されて先端部が前記カバープレートに取り付けられ、前記弾性伸縮部が縮もうとする弾性力により、前記カバープレートを前記第2建造物に向けて引張る弾性引張部材と、前記ケース部材の上下方向端部に設けられ、前記弾性引張部材
の前記上下方向端部からの延出方向を変換可能に構成された方向変換部と、を備え、前記第1建造物に対し前記第2建造物の相対位置が変動した場合には、前記相対位置の変動量および変動方向に応じて、前記弾性伸縮部が伸縮されて前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出量が調整されるとともに、前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出方向が前記方向変換部を介して変換され、および/または前記カバープレートの前記辺縁部が前記ヒンジ部材を介して前記上下揺動軸まわりに揺動することによって、前記カバープレートが前記相対位置の変動に対し追従可能に構成されている。なお、ここで、前後方向、左右方向および上下方向とは、互いに垂直な3つの方向を規定するために用いているものであり、実際の空間上の前後、左右、上下の各方向とは必ずしも一致しない。前面部に垂直な方向を前後方向、側面部に垂直な方向を左右方向、前面部および側面部に平行な方向を上下方向と称している。
【0008】
上記構成の建造物間カバー装置において、前記方向変換部は、左右方向に延びる左右回転軸まわりに回転可能に前記ケース部材に取り付けられたローラ部材を有しており、前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出量が調整される際に、前記弾性引張部材が前記ローラ部材の周面に接触しながら延出されて前記ローラ部材が回転されるように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記構成の建造物間カバー装置において、前記ローラ部材の端面部に、前記ローラ部材の周面に接触しながら延出される前記弾性引張部材が前記ローラ部材から外れることを防止する逸脱防止片が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の建造物間カバー装置において、前記カバープレートが、前記第1建造物側に配置される第1プレートと、前記第1プレートと左右方向に並んで前記第1プレートの前記第2建造物側に配置される第2プレートとを有して構成され、前記第1プレートの前記第1建造物側の辺縁部が、前記ヒンジ部材を介して前記上下揺動軸まわりに揺動可能に前記第1建造物に連結され、前記第1プレートの前記第2プレート側の辺縁部と前記第2プレートの前記第1プレート側の辺縁部とが、上下方向に延びる上下枢結軸まわりに揺動可能に枢結され、前記弾性引張部材の前記先端部が前記第2プレートに取り付けられており、前記第1建造物に対する第2建造物の相対位置が変動した場合に、前記第2プレートが前記弾性伸縮部の弾性力により前記第2建造物に向けて引張られることにより、前記第2プレートが前記第1プレートに対し、前記空間部側から見て谷折り状態となるように、前記上下枢結軸まわりに揺動可能に構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の建造物間カバー装置において、前記ヒンジ部材に替えて、前記カバープレートの前記第1建造物側の辺縁部と前記第1建造物との間に設けられ、前記辺縁部を、前記第1建造物に対して上下方向に移動可能に、かつ前記第1建造物に対して前後方向に揺動可能に、前記第1建造物に支持させる支持ユニット(例えば、第3実施形態におけるスライドガイドユニット100)を、備え、前記第1建造物に対し前記第2建造物の相対位置が変動した場合には、前記相対位置の変動量および変動方向に応じて、前記弾性伸縮部が伸縮されて前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出量が調整されるとともに、前記弾性引張部材の前記上下方向端部からの延出方向が前記方向変換部を介して変換され、および/または前記カバープレートの前記辺縁部が前記支持ユニットを介して前記第1建造物に対し上下方向に移動し、および/または前記カバープレートの前記辺縁部が前記支持ユニットを介して前記第1建造物に対し前後方向に揺動することによって、前記カバープレートが前記相対位置の変動に追従可能に構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る建造物間カバー装置では、ヒンジ部材、ケース部材、弾性引張部材および方向変換部により、カバープレート支持機構が構成される。ヒンジ部材は、カバープレー
トの第1建造物側の辺縁部を、上下方向に延びる上下揺動軸まわりに揺動可能に第1建造物に連結する構成であるので、ヒンジ部材を第1建造物と第2建造物との間の空間部内に設置する場合でも、設置のために空間部内に必要となるスペースは小さくて済む。また、ケース部材は、前面部および側面部に平行な上下方向に延びるように形成されて第2建造物に取り付けられる構成であり、方向変換部は、ケース部材の上下方向端部に設けられるので、方向変換部が設けられたケース部材を空間部内に設置する場合でも、設置のために空間部内に必要となるスペースは小さくて済む。さらに、弾性引張部材は、伸縮可能な弾性伸縮部を有して線状に形成されており、基端部が上下方向に延びた状態でケース部材内に収納されるとともに、基端部に続く部分がケース部材の上下方向端部から方向変換部を介して延出されて先端部がカバープレートに取り付けられる構成である。そして、弾性引張部材は、第1建造物と第2建造物との相対位置の変動量および変動方向に応じて、弾性伸縮部が伸縮されてケース部材の上下方向端部から延出量が調整されるとともに、ケース部材の上下方向端部からの延出方向が方向変換部を介して変換されるようになっている。そのため、弾性引張部材を収容したケース部材を空間部内に設置する場合でも、空間部内において弾性引張部材が作動するために必要となるスペースは小さくて済む。このように、本発明に係る建造物間カバー装置によれば、第1建造物と第2建造物との間の空間部内にカバープレート支持機構(ヒンジ部材、ケース部材、弾性引張部材および方向変換部)を設置する場合でも、そのために空間部内に必要となるスペースを低減することが可能となる。
【0013】
また、上記構成の建造物間カバー装置において、方向変換部が、左右方向に延びる左右回転軸まわりに回転可能にケース部材に取り付けられたローラ部材を有し、弾性引張部材のケース部材の上下方向端部からの延出量が調整される際に、弾性引張部材がローラ部材の周面に接触しながら延出されてローラ部材が回転されるように構成することで、弾性引張部材がケース部材の上下方向端部から方向変換部を介して延出するときに、弾性引張部材が方向変換部と摺動して摩耗することを抑制できるとともに、弾性引張部材をスムーズに延出させることが可能となる。
【0014】
また、上記のようなローラ部材を方向変換部が有するように構成された建造物間カバー装置において、ローラ部材の端面部に、ローラ部材の周面に接触しながら延出される弾性引張部材がローラ部材から外れることを防止する逸脱防止片が設けられることで、弾性引張部材がケース部材の上下方向端部から方向変換部を介して延出するときに、弾性引張部材がローラ部材から外れてしまうことによって正常に機能しなくなることを防止することが可能となる。
【0015】
また、上記構成の建造物間カバー装置において、カバープレートが、第1建造物側に配置される第1プレートと、第1プレートと左右方向に並んで第1プレートの第2建造物側に配置される第2プレートとを有して構成され、第1プレートの第1建造物側の辺縁部が、ヒンジ部材を介して上記上下揺動軸まわりに揺動可能に第1建造物に連結され、第1プレートの第2プレート側の辺縁部と第2プレートの第1プレート側の辺縁部とが、上下方向に延びる上記上下枢結軸まわりに揺動可能に枢結され、弾性引張部材の先端部が第2プレートに取り付けられ、第1建造物に対する第2建造物の相対位置が変動した場合に、第2プレートが上記弾性伸縮部の弾性力により第2建造物に向けて引張られることにより、第2プレートが第1プレートに対し、上記空間部側から見て谷折り状態となるように、上記上下枢結軸まわりに揺動可能に構成されることが好ましい。これにより、第1建造物に対する第2建造物の相対位置が変動した場合に、第2プレートの第2建造物側の辺縁部が第2建造物の前面部から大きく離間することを防止することが可能となる。
【0016】
本発明に係る別態様の建造物間カバー装置では、ヒンジ部材に替わる支持ユニット、ケース部材、弾性引張部材および方向変換部により、カバープレート支持機構が構成される。支持ユニットは、カバープレートの第1建造物側の辺縁部と第1建造物との間に設けられ、上記辺縁部を、第1建造物に対して上下方向に移動可能に、かつ第1建造物に対して前後方向に揺動可能に、第1建造物に支持させる構成であるので、支持ユニットを第1建造物と第2建造物との間の空間部内に設置する場合でも、設置のために空間部内に必要となるスペースは小さくて済む。また、ケース部材、弾性引張部材および方向変換部は、上述した他の建造物間カバー装置と同様に構成される。したがって、この別態様の建造物間カバー装置によれば、第1建造物と第2建造物との間の空間部内にカバープレート支持機構(支持ユニット、ケース部材、弾性引張部材および方向変換部)を設置する場合でも、そのために空間部内に必要となるスペースを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る建造物間カバー装置の適用対象を例示する概略図で、(A)は隣接する2つの建物(第1建物および第2建物)の概略立面図、(B)は2つの建物の間に設けられた渡り廊下の第1建物側躯体と第2建物側躯体との離間部の概略外観図、(C)はその離間部の概略断面図である。
【
図2】上記離間部に設置されるカバー部材を例示する図で、(A)は屋根用のカバー部材、外壁用のカバー部材及び軒天井用のカバー部材を示し、(B)は屋根用のカバー部材、軒天井用のカバー部材、内壁用のカバー部材、内部天井用のカバー部材および内部床用のカバー部材を示している。
【
図3】第1実施形態に係る建造物間カバー装置の全体構成を示す図である。
【
図4】上記第1実施形態に係る建造物間カバー装置の部分構成を示す図で、(A)は
図3におけるA-A線に沿った断面図、(B)は
図3におけるB-B線に沿った断面図である。
【
図5】上記第1実施形態に係る建造物間カバー装置の部分構成を示す図で、(A)は
図3に示す丸K部の拡大図、(B)はワイヤガイド用ローラの概略斜視図である。
【
図6】上記第1実施形態に係る建造物間カバー装置のヒンジ部材の概略構成図である。
【
図7】上記第1実施形態に係る建造物間カバー装置における引張支持ユニットの作動状態を例示する図で、(A)はケース部材とカバープレートとの相対位置の変動が無い状態を示し、(B)はケース部材に対しカバープレートが前方に相対移動した状態を示し、(C)はケース部材に対しカバープレートが上方に相対移動した状態を示し、(D)はケース部材に対しカバープレートが下方に相対移動した状態を示している。
【
図8】上記第1実施形態に係る建造物間カバー装置の作動状態を例示する図で、(A)は第1建物側躯体と第2建物側躯体との相対位置の変動が無い状態を示し、(B)は第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が左方に相対移動した状態を示し、(C)は第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が右方に相対移動した状態を示し、(D)はカバープレートの幅を小さく構成した場合における第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が右方に相対移動した状態を示している。
【
図9】上記第1実施形態に係る建造物間カバー装置の作動状態を示す別の図で、(A)は第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が前方に相対移動した状態を示し、(B)は第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が後方に相対移動した状態を示している。
【
図10】第2実施形態に係る建造物間カバー装置の全体構成を示す図である。
【
図11】上記第2実施形態に係る建造物間カバー装置の部分構成を示す図で、
図10におけるC-C線に沿った断面図である。
【
図12】上記第2実施形態に係る建造物間カバー装置の作動状態を例示する図で、第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が前方に相対移動した状態を示している。
【
図13】第3実施形態に係る建造物間カバー装置の全体構成を示す図で、
図14におけるE-E線に沿った断面図である。
【
図14】上記第3実施形態に係る建造物間カバー装置の部分構成を示す図で、
図13におけるD-D線に沿った断面図である。
【
図15】上記第3実施形態に係る建造物間カバー装置の部分構成を示す図で、
図14におけるF-F線に沿った部分拡大断面図である。
【
図16】上記第3実施形態に係る建造物間カバー装置の部分構成を示す図で、
図14に示す丸L部の拡大図である。
【
図17】上記第3実施形態に係る建造物間カバー装置の作動状態を例示する図で、(A)は第1建物側躯体と第2建物側躯体との相対位置の変動が無い状態を示し、(B)は第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が下方に相対移動した状態を示している。
【
図18】上記第3実施形態に係る建造物間カバー装置の作動状態を例示する別の図で、第1建物側躯体に対し第2建物側躯体が後方に相対移動した状態を示している。
【
図19】第4実施形態に係る建造物間カバー装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1(A)に、本発明に係る建造物間カバー装置の適用対象として、第1建物1と第2建物2を例示している。まず、
図1および
図2を参照して、この適用対象例について概要説明する。なお、
図1および
図2に関連する説明において上下左右の方向に言及する場合は、
図1(A)に示す各矢線の向きに従うものとする。また、
図1(A)の紙面に垂直な方向を前後方向とする。上下方向は第1建物1と第2建物2が建つ場所での鉛直方向と一致する。
【0019】
図1(A)に示すように、左右に並ぶ第1建物1と第2建物2との間には、両建物1,2を繋ぐ渡り廊下3が設けられる。この渡り廊下3は、第1建物1に設けられる第1建物側躯体4と、建物2に設けられる第2建物側躯体5とを有して構成される。
図1(B),(C)に示すように第1建物側躯体4と第2建物側躯体5は、それぞれの端部同士が左右方向に所定距離dを置いて対向するように配置されている。第1建物側躯体4と第2建物側躯体5は構造的に切り離されており、両躯体4,5の間には空間部(クリアランス)が形成されている。以下、この空間部のことを「廊下離間部」と称する。この廊下離間部は、想定される規模の地震等により両躯体4,5の相対位置が変動しても両躯体4,5が接触することがないように設定される。
【0020】
互いに分離している第1建物側躯体4と第2建物側躯体5を渡り廊下3として一体的に利用できるようにするため、両躯体4,5の間の廊下離間部を覆うカバー部材(ここでは、後述する各実施形態におけるカバープレートと区別するため当該名称を用いる)が、両躯体4,5の端部同士を繋ぐように設置される。このようなカバー部材としては、
図2(A),(B)に示すように、外壁用カバー部材6A、内壁用カバー部材6B、屋内天井用床用カバー部材6C、屋根用カバー部材6D、屋内床用カバー部材6Eおよび軒天井用カバー部材6Fが挙げられる。
【0021】
外壁用カバー部材6Aは、第1建物側躯体4の外壁面部4aと第2建物側躯体5の外壁面部5aとに亘って設置されるカバー部材であり、内壁用カバー部材6Bは、第1建物側躯体4の内壁面部4bと第2建物側躯体5の内壁面部5bとに亘って設置されるカバー部材であり、屋内天井用カバー部材6Cは、第1建物側躯体4の天井面部4cと第2建物側躯体5の天井面部5cとに亘って設置されるカバー部材である。また、屋根用カバー部材6Dは、第1建物側躯体4の屋外上面部4dと第2建物側躯体5の屋外上面部5dとに亘って設置されるカバー部材であり、屋内床用カバー部材6Eは、第1建物側躯体4の屋内床面部4eと第2建物側躯体5の屋内床面部5eとに亘って設置されるカバー部材であり、軒天井用カバー部材6Fは、第1建物側躯体4の軒天井面部4fと第2建物側躯体5の軒天井面部5fとに亘って設置されるカバー部材である。
【0022】
次に、
図3~
図6を追加参照して、本発明の第1実施形態に係る建造物間カバー装置(「第1形態のカバー装置」とも称する)の構成について説明する。この第1形態のカバー
装置に関する説明において、前後左右上下の方向に言及する場合は
図3および
図4(B)に示す各矢線の向きに従うものとする。なお、第1実施形態における前後方向、上下方向および左右方向はそれぞれ、本発明に係る前後方向、上下方向および左右方向に相当する。第1形態のカバー装置は、上述の外壁用カバー部材6A(
図2(A)を参照)のように第1建物側躯体4(本発明における第1建造物に相当する)の外壁面部4aと第2建物側躯体5(本発明における第2建造物に相当する)の外壁面部5aとに亘って設置されるカバープレート10を有している(
図3および
図4を参照)。
【0023】
図4(A)に示すように第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、外壁面部4a,5a(本発明に係る前面部に相当する)と当該外壁面部4a,5aの端部から垂直に延びた端面部4g,5g(本発明に係る側面部に相当する)とをそれぞれ有している。第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、端面部4g,5g同士が左右方向に対向するように設けられるとともに、外壁面部4a,5a同士が同一面内に位置するように構成されている。端面部4g,5gの間には、廊下離間部が形成されており、カバープレート10は、この廊下離間部を外壁面部4a,5aの側から覆うように設置される。
【0024】
第1形態のカバー装置は、
図3に示すように、カバープレート10と、ヒンジ部材20と、引張支持ユニット30とを有して構成されている。ヒンジ部材20および引張支持ユニット30によりカバープレート支持機構が構成される。カバープレート10は、矩形状に形成された仕上板部材11と、仕上板部材11の後面側に取り付けられた断面矩形状の縦枠部材12および横枠部材13を有している。縦枠部材12は、仕上板部材11の左端部(第1建物側躯体4側の辺縁部)および右端部(第2建物側躯体5側の辺縁部)においてそれぞれ上下方向に延びるように計2本設けられている。横枠部材13は、2本の縦枠部材12の間において左右方向に延びるように複数本(本例では4本)設けられている。このうち2本の横枠部材13は、仕上板部材11の上端部および下端部にそれぞれ設けられている。
【0025】
ヒンジ部材20は、
図6に示すように、矩形状に形成された第1羽片21および第2羽片と、第1羽片21の右端部に設けられた2個の軸筒23と、第2羽片22の左端部に設けられた3個の軸筒24と、軸筒23,24内に挿入される軸ピン25と、第1羽片21および第2羽片22に形成されたネジ部材挿通用のネジ穴26とを有し、第1羽片21および第2羽片22が軸ピン25の中心軸まわりにそれぞれ揺動可能に構成されている。
図3に示すようにヒンジ部材20は、カバープレート10の左端部(第1建物側躯体4側の辺縁部)において、上下方向に所定の間隔を置いて複数個(本例では4個)配置される。各ヒンジ部材20は、軸ピン25の中心軸が上下方向に延びる上下揺動軸として機能するようにして、カバープレート10の左端部と第1建物側躯体4の端面部4gとの間に設置される。具体的には、第1羽片21がカバープレート10の左端部に不図示のネジ部材を介して取り付けられ、第2羽片22が第1建物側躯体4の端面部4gに不図示のネジ部材を介して取り付けられる(
図4(A)を参照)。これにより、カバープレート10は、その左端部がヒンジ部材20を介して上下揺動軸まわりに揺動可能に、第1建物側躯体4の端面部4gに連結される。
【0026】
引張支持ユニット30は、
図3および
図4に示すように、上下方向に延びて第2建物側躯体5の端面部5gに取り付けられたケース部材40と、上下方向に延びてケース部材40内に収容された弾性引張部材50と、ケース部材40の長手方向(上下方向)の両端部に設けられた方向変換部60とを有して構成されている。ケース部材40は、
図5(A)に示すように、上下方向に長い矩形状にそれぞれ形成された第1側面部41、第2側面部42および第3側面部43を一体に有して断面コ字状に形成されている。ケース部材40は、第1側面部41と対向する部分が開放されており、この開放された部分がカバープレート10の方を向くようにして第2建物側躯体5の端面部5gに取り付けられる。このと
き、第2側面部42の端部42aと第3側面部43の端部43aが第2建物側躯体5の外壁面部5aと略面一となるようにケース部材40の取付位置が調整される。
【0027】
ケース部材40の上下方向の両端部に設けられた方向変換部60は、
図5に示すように、円柱状に形成されたワイヤガイド用ローラ61と、ワイヤガイド用ローラ61の一方の端面部に設けられた円板状のワイヤ逸脱防止片62と、ワイヤガイド用ローラ61およびワイヤ逸脱防止片62を軸支する取付ビス63とにより構成されている。ワイヤガイド用ローラ61およびワイヤ逸脱防止片62は、
図5(A)に示すように、左右方向に延びる左右回転軸(取付ビス63の中心軸がその機能を担う)まわりに回転可能に取付ビス63を介してケース部材40の第3側面部43に取り付けられる。ワイヤガイド用ローラ61は、ケース部材40の第2側面部42と第3側面部43との間の中央位置よりも第3側面部43寄りに偏倚した位置において、ワイヤ逸脱防止片62が第2側面部42側を向くようにして配置される。このとき、ワイヤガイド用ローラ61とケース部材40の第1側面部41との間には、後述するワイヤ52を通すことができる隙間が形成されるようになっている。一方、ワイヤガイド用ローラ61とケース部材40の第3側面部43との間には、ワイヤ52が挟まってしまうような隙間(ワイヤ52の径寸法を超えるような距離の隙間)は形成されないようになっている。
【0028】
弾性引張部材50は、
図3および
図4(B)に示すように、ケース部材40内の上下方向中央部において上下方向に延びるように配置されたコイル状の引張バネ51と、引張バネ51の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられたワイヤ52とを有して構成されている。ワイヤ52は、その長手方向の一端部が引張バネ51の端部に結合されて、ケース部材40内を上下方向に延び、方向変換部60を介してケース部材40の上下方向端部から延出される。そして、ワイヤ52の先端部がカバープレート10に固定される。詳細には、ワイヤ52は、
図5(A)に示すように、方向変換部60のワイヤガイド用ローラ61とケース部材40の第1側面部41との間の隙間を通り、ワイヤガイド用ローラ61の周面61aに接触しながらケース部材40の上下方向端部から延出される。そして、ワイヤ52の引張バネ51の上側に配されるワイヤ52の先端部はカバープレート10の上端部に設置された横枠部材13の下面部に、引張バネ51の下側に配されるワイヤ52の先端部はカバープレート10の下端部に設置された横枠部材13の上面部にそれぞれ固定される)。ワイヤ52の先端部をカバープレート10に固定するときは、ワイヤ52をピンと張ってワイヤ52の張力により引張バネ51を上下方向に伸びるように引張り、引張バネ51が弾性的に所定の長さ(「初期伸長量」とも称する)だけ伸長されている状態となるように設定する。これにより弾性引張部材50は、引張バネ51が縮もうとする弾性力により、カバープレート10が第1建物側躯体4の外壁面部4aおよび第2建物側躯体5の外壁面5aに押圧されるようにカバープレート10を引張るようになっている。なお、ワイヤ52の先端部のカバープレート10への固定位置は、第2建物側躯体5の外壁面部5aとワイヤ52とが干渉しない位置で、かつ方向変換部60を介してケース部材40から延出されるワイヤ52の延出量がなるべく少なくなる位置に設定される。
【0029】
以上のように構成されている第1形態のカバー装置は、引張支持ユニット30が第1建物側躯体4の端面部4gと第2建物側躯体5の端面部5gとの間の廊下離間部内に設置される。しかし、引張支持ユニット30を構成するケース部材40、弾性引張部材50および方向変換部60は、上述のように構成されているので、引張支持ユニット30を廊下離間部内に設置するために必要となるスペースは非常に小さくて済むようになっている。
【0030】
次に、
図7~
図9を追加参照して、第1形態のカバー装置の作用について説明する。
図7には、引張支持ユニット30のケース部材40とカバープレート10とが、相対的に前後方向または上下方向に変動した場合の引張支持ユニット30の作動状態を例示している。なお、引張支持ユニット30は、
図3に示す上下方向の中心線CLを挟んで上下対称に
構成されている。
図7では、引張支持ユニット30およびカバープレート10について中心線CLより上側の部分のみを示している。
【0031】
図7(A)は、引張支持ユニット30のケース部材40とカバープレート10との相対位置の変動が無い状態、換言すれば、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5(
図3および
図4を参照)との相対位置の変動が無い状態(
図3および
図4に示す状態と同じ状態であり以下「通常状態」とも称する)を示している。この通常状態から、
図7(B)に示す状態(ケース部材40に対してカバープレート10が前方に相対移動した状態)になると、ワイヤ52が方向変換部60を介して前方へと繰り出され、ワイヤ52のケース部材40からの延出量が増大する。また、ワイヤ52の繰出し(延出量の増大)に応じて、引張バネ51の伸長量が初期伸長量よりも増大し、これにより弾性引張部材50がカバープレート10を引張る力も増大する。なお、ワイヤ52が方向変換部60を介して繰り出されるときは、ワイヤ52が方向変換部60のワイヤガイド用ローラ61の周面61a(
図4を参照)に接触しながら移動し、この接触移動に応じてワイヤガイド用ローラ61が回転するようになっている。
【0032】
図7(A)に示す通常状態から、
図7(C)に示す状態(ケース部材40に対してカバープレート10が上方に相対移動した状態)になると、ワイヤ52が方向変換部60を介して上方へと繰り出され、ワイヤ52のケース部材40からの延出量が増大する。このとき、ワイヤ52の繰出しに応じて引張バネ51の伸長量が増大し、弾性引張部材50がカバープレート10を引張る力が増大する点、およびワイヤ52が方向変換部60を介して繰り出されるときにワイヤ52がワイヤガイド用ローラ61の周面61aに接触しながら移動することでワイヤガイド用ローラ61が回転する点は、
図7(B)に示す状態のときと同様である。
図7(A)に示す通常状態から、
図7(D)に示す状態(ケース部材40に対してカバープレート10が下方に相対移動した状態)になると、ワイヤ52が方向変換部60を介して下方へと繰り出され、ワイヤ52のケース部材40からの延出量が増大する。ワイヤ52の延出量が増大するときの引張支持ユニット30の弾性引張部材50およびワイヤガイド用ローラ61の作用は前述したのと同様である。
【0033】
図8には、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが、相対的に左右方向に変動した場合の引張支持ユニット30の作動状態を例示している。
図8(A)は、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との相対位置の変動が無い通常状態を示している。この通常状態から、
図8(B)に示すように第1建物側躯体4に対して第2建物側躯体5が左方(第1建物側躯体4に近づく向き)に相対移動した状態(ケース部材40に対してカバープレート10が右方に相対移動した状態)になると、ワイヤ52が方向変換部60を介して右方へと繰り出され、ワイヤ52のケース部材40からの延出量が増大する。ワイヤ52の延出量が増大するときの引張支持ユニット30の弾性引張部材50(引張バネ51)およびワイヤガイド用ローラ61の作用は前述したのと同様である。また、方向変換部60を介して右方へと繰り出されたワイヤ52の張力(ワイヤ52の弾性力)によりカバープレート10が、ヒンジ部材20の上下揺動軸まわりに第2建物側躯体5の外壁面部5aから離れる向きに揺動され、これによりカバープレート10右端部(第2建物側躯体5側の辺縁部)が第2建物側躯体5の外壁面部5aから少し離れることがある。
【0034】
図8(A)に示す通常状態から、
図8(C)に示すように第1建物側躯体4に対して第2建物側躯体5が右方(第1建物側躯体4から離れる向き)に相対移動した状態(ケース部材40に対してカバープレート10が左方に相対移動した状態)になると、ワイヤ52が方向変換部60を介して左方へと繰り出され、ワイヤ52のケース部材40からの延出量が増大する。ワイヤ52の延出量が増大するときの引張支持ユニット30の弾性引張部材50(引張バネ51)およびワイヤガイド用ローラ61の作用は前述したのと同様である。なお、ワイヤ52が方向変換部60を介して左方に繰り出されるときには、ワイヤ5
2がワイヤガイド用ローラ61の周面61a(
図4を参照)から外れることが逸脱防止片62により防止される。
【0035】
カバープレート10の左右方向の幅寸法は、
図8(C)に示すように第1建物側躯体4と第2建物側躯体5が左右方向に大きく離れる(例えば設計上最大限に離間する)ように相対移動した場合でも、カバープレート10が第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との間の廊下離間部を覆うことができる大きさに設定されている。
図8(D)は、カバープレート10をカバープレート10よりも左右方向の幅寸法が小さく設定されたカバープレート10Pに置き換えた場合における、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5が左右方向に大きく離れた状態を示している。この状態のとき、カバープレート10Pは、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との間の廊下離間部の一部しか覆うことができない。しかし、方向変換部60を介して左方へと繰り出されたワイヤ52が、カバープレート10Pの右端部(第2建物側躯体5側の辺縁部)に配された縦枠部材12に後方から当接するようになっており、これにより、カバープレート10Pの右端部が第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との間の廊下離間部内に進入することが阻止されるようになっている。そのため、
図8(D)に示す状態から第1建物側躯体4と第2建物側躯体5が左右方向に近づくように相対移動した場合でも、カバープレート10Pの右端部が第2建物側躯体5の端面部5gやケース部材40と接触して破損することを防止することができる。また、カバープレート10Pによれば、カバープレート10よりも幅が狭く小型に構成されるので、製造コストを抑制することが可能となる。
【0036】
図9には、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが、相対的に前後方向に変動した場合の引張支持ユニット30の作動状態を例示している。
図9(A)は、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との相対位置の変動が無い通常状態から、第1建物側躯体4に対して第2建物側躯体5が前方に相対移動した状態を示している。この状態では、第2建物側躯体5によりカバープレート10が前方に押圧される。これによりカバープレート10はヒンジ部材20の上下揺動軸まわりに、カバープレート10の右端部(第2建物側躯体5側の辺縁部9)が第2建物側躯体5の外壁面部5aから離れる向きに揺動される。また、このカバープレート10の揺動に応じてワイヤ52が方向変換部60を介して左方へと繰り出され、ワイヤ52のケース部材40からの延出量が増大する。ワイヤ52の延出量が増大するときの引張支持ユニット30の弾性引張部材50(引張バネ51)およびワイヤガイド用ローラ61の作用は前述したのと同様である。また、方向変換部60を介して左方に繰り出されるワイヤ52がワイヤガイド用ローラ61の周面61aから外れることが逸脱防止片62により防止される点も前述したのと同様である。
【0037】
図9(B)は、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との相対位置の変動が無い通常状態から、第1建物側躯体4に対して第2建物側躯体5が後方に相対移動した状態を示している。この状態では、第2建物側躯体5の後方への移動に応じてカバープレート10とケース部材40とが離れることにより、方向変換部60を介してケース部材40から前方へと繰り出されているワイヤ52の延出量が増大する。ワイヤ52の延出量が増大するときの引張支持ユニット30の弾性引張部材50(引張バネ51)およびワイヤガイド用ローラ61の作用は前述したのと同様である。また、このとき、カバープレート10はワイヤ52を介して後方に引張られている。これによりカバープレート10はヒンジ部材20の上下揺動軸まわりに、カバープレート10の右端部(第2建物側躯体5側の辺縁部9)が第2建物側躯体5の外壁面部5aに近づく向きに揺動される。
【0038】
以上のように第1形態のカバー装置では、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との相対位置の変動量および変動方向に応じて、カバープレート10がヒンジ部材20の上下揺動軸まわりに揺動し、また弾性引張部材50の引張バネ51が伸縮されてケース部材40からワイヤ52の延出量が調整されるとともに、ケース部材40からのワイヤ52の延出
方向が方向変換部60を介して変換されるようになっている。そのため、第1形態のカバー装置によれば、強風や地震等により第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが相対的に変動した場合でもその変動に追従するようにカバープレート10を変動させながら、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5との間の廊下離間部をカバープレート10により覆うことができる。
【0039】
次に、
図10~
図12を追加参照して、本発明の第2実施形態に係る建造物間カバー装置(「第2形態のカバー装置」とも称する)について説明する。この第2形態のカバー装置に関する説明において、前後左右上下の方向に言及する場合は
図10および
図11に示す各矢線の向きに従うものとする。なお、第2実施形態における前後方向、上下方向および左右方向はそれぞれ、本発明に係る前後方向、上下方向および左右方向に相当する。第2形態のカバー装置は、上述した内壁用カバー部材6B(
図2(B)を参照)のように第1建物側躯体4の内壁面部4bと第2建物側躯体5の内壁面部5bとに亘って設置されるカバープレート10Aを有している。
【0040】
図11に示すように第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、内壁面部4b,5b(本発明に係る前面部に相当する)と当該内壁面部4b,5bの端部から垂直に延びた端面部4g,5g(本発明に係る側面部に相当する)とをそれぞれ有している。第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、端面部4g,5g同士が左右方向に対向するように設けられるとともに、内壁面部4b,5b同士が同一面内に位置するように構成されている。端面部4g,5gの間には廊下離間部が形成されており、カバープレート10Aはこの廊下離間部を内壁面部4b,5bの側から覆うように設置される。
【0041】
第1建物側躯体4の内壁面部4bの右端部には、上下方向に延びる断面矩形状の内壁下地部材71が設けられており、この内壁下地部材71を介して第1建物側内壁板72(詳細には内壁下地板と内壁化粧板とから構成されるが付番は省略する)が取り付けられている。第2建物側躯体5の内壁面部5bの左端部には、左右方向に延びる横枠部材73と上下方向に延びる縦枠部材74とを有して構成されるカバープレート支持枠75が設けられており、カバープレート支持枠75の右端部には、上下方向に延びるテーパー部材76が設けられている。このテーパー部材76は、地震等により第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが左右方向に互いに接近するように相対移動したときに、カバープレート10Aの右端部と当接して、カバープレート10Aの右端部を前方に押し出すようになっている。テーパー部材76の右方には、図示せぬ内壁下地部材を介して第2建物側内壁板77(詳細には内壁下地板と内壁化粧板とから構成されるが付番は省略する)が設けられている。第1建物側内壁板72と第2建物側内壁板77とは、それぞれの前面部が互いに面一となるように配置されている。
【0042】
第2形態のカバー装置は、
図10に示すように、カバープレート10Aと、ヒンジ部材20Aと、引張支持ユニット30Aとを有して構成されている。ヒンジ部材20Aおよび引張支持ユニット30Aによりカバープレート支持機構が構成される。カバープレート10Aは、第1プレート部材10Aaと第2プレート部材10Abを有している。第1プレート部材10Aaおよび第2プレート部材10Abはそれぞれ、矩形状に形成された仕上板部材11と、仕上板部材11の後面側に取り付けられた断面矩形状の2本の縦枠部材12Aおよび複数本(本例では4本)の横枠部材13Aを有して構成されている。第1プレート部材10Aaの右端部と第2プレート部材10Abの左端部とは、上下方向に延びる上下枢結軸まわりに揺動可能に枢結されている(
図12を参照)。これにより、カバープレート10Aは、第1プレート部材10Aaに対して第2プレート部材10Abが後方から見て谷折り状態となるように上下枢結軸まわりに折れ曲がることが可能な折戸式の構造となっている。
【0043】
ヒンジ部材20Aは、上述したヒンジ部材20(
図6を参照)と同様に構成されている。カバープレート10A(第1プレート部材10Aa)の左端部は、複数個(本例では4個)のヒンジ部材20Aを介して上下揺動軸まわりに揺動可能に、第1建物側躯体4の内壁下地部材71に取り付けられる(
図11および
図12を参照)。
【0044】
引張支持ユニット30Aは、上述した引張支持ユニット30(
図4および
図5を参照)と同様に構成されており、作用も引張支持ユニット30と同様である。引張支持ユニット30Aは、
図11および
図12に示すように、ケース部材40の長手方向を上下方向に一致させた状態で第2建物側躯体5の内壁面部5bに設けられたカバープレート支持枠75に取り付けられる。このとき、ケース部材40の開放されている側が前方に向けられる。ケース部材40内に収容された弾性引張部材50(
図4(B)を参照)のワイヤ52は、方向変換部60を介してケース部材40の上下方向端部から延出される。そして、ワイヤ52の先端部は、
図12に示すように、カバープレート10Aの横枠部材13に固定される。
【0045】
このように構成された第2形態のカバー装置の作用について、
図12に示すように第1建物側躯体4に対して第2建物側躯体5が相対的に前方に変動した場合を例にとって説明する。この場合、第2建物側躯体5によりカバープレート10A(第2プレート部材10Ab)が前方に押圧される。これによりカバープレート10A(第1プレート部材10Aa)はヒンジ部材20Aの上下揺動軸まわりに前方へと揺動される。このとき、第2プレート部材10Abに取り付けられているワイヤ52により第2プレート部材10Abが引張られることで、第2プレート部材10Abが第1プレート部材10Aaとの間の上下枢結軸まわりに後方へと揺動される。これにより、カバープレート10Aは、後方から見て谷折り状態に折れ曲がった状態となる。このようにカバープレート10Aが折れ曲がることで、第2プレート部材10Abの先端部(右端部)の前方への移動量が抑制され、当該先端部が前方に大きく出っ張ることがないようになっている。
【0046】
以上のように第2形態のカバー装置によれば、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが相対的に前後方向(内壁面部4b,5bに垂直な方向)に変動した場合において、内壁用カバー部材として機能するカバープレート10Aを、両躯体4,5の前後方向への相対変動に追従させて適切に変動させることができる。なお、両躯体4,5が左右方向に相対変動した場合の第3形態のカバー装置の作用は、第1実施形態において両躯体4,5が左右方向に相対変動した場合の第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなる。
【0047】
次に、
図13~
図18を追加参照して、本発明の第3実施形態に係る建造物間カバー装置(「第3形態のカバー装置」とも称する)について説明する。この第3形態のカバー装置に関する説明において、前後左右上下の方向に言及する場合は
図13および
図14に示す各矢線の向きに従うものとする。なお、第3実施形態における前後方向、上下方向および左右方向はそれぞれ、本発明に係る上下方向、前後方向および左右方向に相当する。第3形態のカバー装置は、上述した屋内天井用カバー部材6C(
図2(B)を参照)のように第1建物側躯体4の天井面部4cと第2建物側躯体5の天井面部5cとに亘って設置されるカバープレート10Bを有している。
【0048】
図14に示すように第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、天井面部4c,5c(本発明に係る前面部に相当する)と当該天井面部4c,5cの端部から垂直に延びた端面部4g,5g(本発明に係る側面部に相当する)とをそれぞれ有している。第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、端面部4g,5g同士が左右方向に対向するように設けられるとともに、天井面部4c,5c同士が同一面内に位置するように構成されている。端面部4g,5gの間には廊下離間部が形成されており、カバープレート10Bはこの廊下離間部を天井面部4c,5cの側から覆うように設置される。
【0049】
第1建物側躯体4の天井面部4cの右端部には、前後方向に延びる断面矩形状の天井下地部材81が設けられており、この天井下地部材81を介して第1建物側天井板82(詳細には天井下地板と天井化粧板とから構成されるが付番は省略する)が取り付けられている。第2建物側躯体5の天井面部5cの左端部には、前後方向に延びる断面矩形状の天井下地部材83が設けられており、この天井下地部材83を介して第2建物側天井板84(詳細には天井下地板と天井化粧板とから構成されるが付番は省略する)が取り付けられている。第1建物側天井板82と第2建物側天井板84とは、それぞれの下面部が互いに面一となるように配置されている。
【0050】
第3形態のカバー装置は、
図13に示すように、カバープレート10Bと、引張支持ユニット30Bと、スライドガイドユニット100とを有して構成されている。引張支持ユニット30Bおよびスライドガイドユニット100によりカバープレート支持機構が構成される。カバープレート10Bは、矩形状に形成された仕上板部材11Bと、仕上板部材11Bの上面側(裏面側)の右端部において前後方向に延びて取り付けられた断面矩形状の先端枠部材15と、仕上板部材11Bの上面側の前端部および後端部においてそれぞれ左右方向に延びて取り付けられた断面矩形状の側端枠部材16(複数本の場合有り。図で
は2本)を有して構成されている。
【0051】
引張支持ユニット30Bは、上述した引張支持ユニット30(
図4および
図5を参照)と同様に構成されており、作用も引張支持ユニット30と同様である。引張支持ユニット30Bは、
図13および
図14に示すように、ケース部材40の長手方向を前後方向に一致させた状態で第2建物側躯体5の天井面部5cに設けられた天井下地部材83に取り付けられる。このとき、ケース部材40の開放されている側が下方に向けられる。ケース部材40内に収容された弾性引張部材50(
図4(B)を参照)のワイヤ52は、方向変換部60を介してケース部材40の長手方向(前後方向)端部から延出される。そして、ワイヤ52の先端部は、
図14に示すように、カバープレート10Bの側端枠部材16に固定される。
【0052】
スライドガイドユニット100は、
図16に示すように、第1建物側天井板82の下面側(表面側)の右端部において前後方向に延びて設けられた断面コの字形状のカバープレート支持部材110と、天井下地部材81の右側面部およびカバープレート支持部材110の右側面部に沿って前後方向に延びて設けられた補強プレート120と、補強プレート120を介してカバープレート支持部材110の右側面部に取り付けられたスライドガイドローラ部130と、カバープレート10Bの左端部において前後方向に延びて設けられた断面Cの字形状のスライドガイドレール140とを有して構成される。
【0053】
スライドガイドローラ部130は、
図13に示すように、前後方向に所定の間隔を置いて複数個(本例では5個)配置されている。各スライドガイドローラ部130は、
図16に示すように、円柱状に形成されたスライドガイド用ローラ131と、スライドガイド用ローラ131の端面部に設けられた円板状のレール逸脱防止片132と、スライドガイド用ローラ131およびレール逸脱防止片132を軸支する取付ビス133とにより構成されている。スライドガイド用ローラ131およびレール逸脱防止片132は、左右方向に延びる左右回転軸(取付ビス133の中心軸がその機能を担う)まわりに回転可能に取付ビス133を介してカバープレート支持部材110の右側面部に取り付けられる。
【0054】
スライドガイドレール140は、
図16に示すように、スライドガイドレール140の左端上部141がスライドガイド用ローラ131の周面に載置された状態で、スライドガイドローラ部130と係合されるようになっている。これにより、スライドガイドレール140は、スライドガイドローラ部130に対し前後方向に相対移動できるようになって
いる。また、スライドガイドレール140は、スライドガイドローラ部130に対し左右方向および上下方向に若干移動できるだけの所定長の余裕(隙間)をもって係合されるようになっている。これにより、スライドガイドレール140は、スライドガイドレール140とスライドガイドローラ部130との係合部(具体的には、スライドガイドレール140の左端上部141とスライドガイド用ローラ131の周面との接触部)を中心として、上下方向に揺動できるようになっている。レール逸脱防止片132は、カバープレート10Bが揺動するときに、スライドガイドレール140がスライドガイドローラ部130から外れることを防止する。
【0055】
このように構成されたスライドガイドユニット100を介してカバープレート10Bの左端部が第1建物側躯体4側に支持される。これにより、カバープレート10Bは、
図17(B)に示すように、スライドガイドレール140とスライドガイドローラ部130との係合部を中心として、第1建物側天井板82および第1建物側躯体4に対して上下方向に揺動できるようになっている。また、カバープレート10Bは、スライドガイドユニット100を介して、第1建物側天井板82および第1建物側躯体4に対して前後方向にスライド移動できるようになっている。
【0056】
以上のように構成された第3形態のカバー装置の作用について、
図18に示すように第1建物側躯体4に対して第2建物側躯体5が相対的に後方に変動した場合を例にとって説明する。この場合、第2建物側躯体5によりカバープレート10Bが後方に押圧される。より詳細には、
図13および
図15に示すように、第2建物側躯体5のカバープレート支持枠75に、カバープレート10Bと当接可能な当接部材79が取り付けられており、カバープレート10Bは、この当接部材79およびカバープレート支持枠75を介して第2建物側躯体5により押圧されるようになっている。カバープレート10Bが後方に押圧されると、スライドガイドユニット100においてスライドガイドレール140がスライドガイドローラ部130に対し後方にスライド移動し、これによりカバープレート10Bが、第1建物側躯体4に対して後方にスライド移動する。なお、スライドガイドレール140がガイドローラ部130に対しスライド移動するときは、スライドガイドレール140がガイドローラ部130のスライドガイド用ローラ131の周面に接触しながら移動し、この接触移動に応じてスライドガイド用ローラ131が回転するようになっている。これにより、カバープレート10Bをスムーズにスライド移動させることができる。
【0057】
以上のように第3形態のカバー装置によれば、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが相対的に前後方向(内壁面部4b,5bに垂直な方向)に変動した場合において、屋内天井用カバー部材として機能するカバープレート10Bを、両躯体4,5の前後方向への相対変動に追従させて適切に変動させることができる。なお、両躯体4,5が左右方向に相対変動した場合の第3形態のカバー装置の作用は、第1実施形態において両躯体4,5が左右方向に相対変動した場合の第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなる。また、両躯体4,5が上下方向に相対変動した場合の第3形態のカバー装置の作用は、第1実施形態において両躯体4,5が前後方向に相対変動した場合の第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなる。
【0058】
次に、
図19を追加参照して、本発明の第4実施形態に係る建造物間カバー装置(「第4形態のカバー装置」とも称する)について説明する。この第4形態のカバー装置に関する説明において、左右上下の方向に言及する場合は
図19に示す各矢線の向きに従うものとする。また、
図19の紙面に垂直な方向を前後方向(紙面手前側を前、奥側を後)と称する。なお、第4実施形態における前後方向、上下方向および左右方向はそれぞれ、本発明に係る上下方向、前後方向および左右方向に相当する。第4形態のカバー装置は、上述した屋根用カバー部材6D(
図2(B)を参照)のように第1建物側躯体4の屋外上面部4dと第2建物側躯体5の屋外上面部5dとに亘って設置されるカバープレート10Cを
有している。
【0059】
図19に示すように第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、屋外上面部4d,5d(本発明に係る前面部に相当する)と当該屋外上面部4d,5dの端部から垂直に延びた端面部4g,5g(本発明に係る側面部に相当する)とをそれぞれ有している。第1建物側躯体4および第2建物側躯体5は、端面部4g,5g同士が左右方向に対向するように設けられるとともに、屋外上面部4d,5d同士が同一面内に位置するように構成されている。端面部4g,5gの間には廊下離間部が形成されており、カバープレート10Cはこの廊下離間部を屋外上面部4d,5dの側から覆うように設置される。
【0060】
第4形態のカバー装置は、カバープレート10Cと、ヒンジ部材20Cと、引張支持ユニット30Cとを有して構成されている。ヒンジ部材20Cおよび引張支持ユニット30Cによりカバープレート支持機構が構成される。カバープレート10Cは、矩形状に形成された仕上板部材11Cと、仕上板部材11Cの下面側(裏面側)の左右端部において前後方向に延びて取り付けられた断面矩形状の左右端枠部材17と、仕上板部材11の上面側の前端部および後端部においてそれぞれ左右方向に延びて取り付けられた断面矩形状の前後端枠部材18とを有して構成されている。
【0061】
ヒンジ部材20Cは、上述したヒンジ部材20(
図6を参照)と同様に構成されている。第1建物側躯体4の屋外上面部4dにはヒンジ支持部材91が設けられており、ヒンジ部材20Cは、ヒンジ支持部材91とカバープレート10Cの左端部との間に設けられる。また、ヒンジ部材20Cは、前後方向に所定の間隔を置いて複数個配置される。各ヒンジ部材20Cは、その揺動中心軸が前後方向に延びる前後揺動軸として機能するようにして、カバープレート10Cの左端下部と第1建物側躯体4の屋外上面部4dとの間にヒンジ支持部材91を介して設置される。これにより、カバープレート10Cは、その左端部がヒンジ部材20Cを介して前後揺動軸まわりに揺動可能に、第1建物側躯体4の屋外上面部4dに連結される。
【0062】
引張支持ユニット30Cは、上述した引張支持ユニット30(
図4および
図5を参照)と同様に構成されており、作用も引張支持ユニット30と同様である。引張支持ユニット30Cは、
図19に示すように、ケース部材40の長手方向を前後方向に一致させた状態で第2建物側躯体5の屋外上面部5dに取り付けられる。このとき、ケース部材40の開放されている側が上方に向けられる。ケース部材40内に収容された弾性引張部材50(
図4(B)を参照)のワイヤ52は、方向変換部60を介してケース部材40の前後方向端部から延出される。そして、ワイヤ52の先端部は、カバープレート10Cの前後端枠部材18に固定される。
【0063】
以上のように構成された第4形態のカバー装置の作用は、第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなる。例えば、第1建物側躯体4と第2建物側躯体5とが相対的に前後方向に変動した場合の第4形態のカバー装置の作用は、第1実施形態において両躯体4,5が上下方向に相対変動した場合の第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなる。また、両躯体4,5が上下方向に相対変動した場合の第4形態のカバー装置の作用は、第1実施形態において両躯体4,5が前後方向に相対変動した場合の第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなり、両躯体4,5が左右方向に相対変動した場合の第4形態のカバー装置の作用は、第1実施形態において両躯体4,5が左右方向に相対変動した場合の第1形態のカバー装置の作用に準じたものとなる。
【0064】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々に態様を変更することができる。例えば、上記実施形態では、引張支持ユニット30の方向変換部60においてワイヤガイド用ローラ61を配しているが、こ
のようなワイヤガイド用ローラ61に替えて回転しない構成の円柱状のガイド部材を備えた構成とすることも可能である。また、上記実施形態では、引張支持ユニット30の弾性引張部材50が引張バネ51とワイヤ52とにより構成されているが、弾性引張部材50の全体をゴム紐のような弾性伸縮可能な線状部材で構成してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ケース部材40内に収容される引張バネ51の両端部にそれぞれワイヤ52を取り付け、ケース部材40の長手方向両端部からそれぞれワイヤ52を延出させてカバープレートに取り付けているが、これに限定されるものではない。引張バネ51の一端部をケース部材40に係止するとともに引張バネ51の他端部のみにワイヤ52を取り付け、このワイヤ52をケース部材40の長手方向一端部から延出させてカバープレートに取り付けるようにしてもよい。また、上記実施形態では、隣接する建物間を繋ぐ渡り廊下の離間部を覆うカバー部材(カバープレート)に本発明を適用した場合を例示しているが、本発明の適用対象はこのような渡り廊下に設けられるカバー部材に限定されるものではない。本発明は、渡り廊下以外の種々の建造物間に配置されるカバー部材に対して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 第1建物
2 第2建物
3 渡り廊下
4 第1建物側躯体
5 第2建物側躯体
10,10A,10B,10C カバープレート
20,20A,20C ヒンジ部材
30,30A,30B,30C 引張支持ユニット
40 ケース部材
50 弾性引張部材
51 引張バネ
52 ワイヤ
60 方向変換部
61 ワイヤガイド用ローラ
100 スライドガイドユニット
131 スライドガイドローラ
140 スライドガイドレール