(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20250527BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20250527BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/097 365
G03G9/08 384
(21)【出願番号】P 2020214555
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 和也
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-234263(JP,A)
【文献】特開2020-197616(JP,A)
【文献】特開2020-187270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
G03G 9/097
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び離型剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有し、
前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体が、下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な第2の重合性単量体との共重合体であり、
前記離型剤が、脂肪酸エステルを含有
し、
前記脂肪酸エステルが、ベヘン酸ベヘニル及びペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステルの少なくとも一方である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、メチル基、n-プロピル基、iso-ブチル基、2-エチルヘキシル基のいずれかを表す。]
【化2】
[一般式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、メチル基、n-プロピル基、iso-ブチル基、2-エチルヘキシル基のいずれかを表す。]
【請求項2】
前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~40質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記第2の重合性単量体が、少なくともスチレン類及び、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記第2の重合性単量体が、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、及びメタクリル酸メチルから1種以上選ばれることを特徴とする請求項3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記離型剤の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~20質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、
前記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を合成し、結着樹脂粒子分散液を調製する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法に関し、特に、耐オフセット性を満足しつつ、機内汚染を抑制し、画像品質に優れる静電荷像現像用トナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成を行う印刷分野においては、近年、消費電力の低減化、プリントの高速化、画像形成媒体の多様化、高画質化、環境負荷の低減などに対応可能な静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)が求められている。
このようなトナーに求められる特性としては、従来よりも低い温度でトナー画像の定着を行うことができるといういわゆる低温定着性や、定着強度の向上がある。さらには従来のオフィス市場に限らず、軽印刷市場への展開に伴って、商品である印刷物の画像品質の安定性向上が求められている。
【0003】
トナーは通常、バインダー機能を有する結着樹脂(以下、「トナーバインダー」ともいう。)を含有し、この結着樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、グラフト化されたアクリル重合セグメントを有するポリエステル樹脂などのハイブリッド樹脂を用いることが知られている。上記のような要求に対して、これらのトナーバインダーなどを改良することで、低温定着性などを改良する技術が知られている(例えば、特許文献1~3参照。)。
しかしながら、特に、トナー定着時のような高温下では、トナーの内部凝集力低下が顕著となるために、定着時にトナーが定着ローラー等の加熱部材と接触した際に、定着部材を汚染してしまうホットオフセット現象が発生する問題があった。
【0004】
この問題に対して、定着部材とトナーとの接着性を抑える目的にて、定着時に定着部材-定着画像界面に染み出し、接着性を抑え得る低溶融粘度の脂肪酸エステルワックス等の離型剤の添加が行われてきた(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、低溶融粘度の離型剤を添加したことで、離型性確保は可能となったが、新たに溶融した離型剤が印刷機内の画像搬送ローラー等と接触した際に、離型剤が搬送部材を汚染する問題を招くことがあった。汚染物は蓄積し、画像に再付着することで画像不良を誘発し、商品である印刷物の価値を下げるのみならず、印刷物を廃棄処分せざるを得なこともしばしばであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-279714号公報
【文献】特開2008-287229号公報
【文献】特開2010-15159号公報
【文献】特開平8-50368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐オフセット性を満足しつつ、機内汚染を抑制し、画像品質に優れる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、結着樹脂として特定の構造単位を有する重合体を含有し、かつ、離型剤として脂肪酸エステルを含有することにより、耐オフセット性を満足しつつ、機内汚染を抑制し、画像品質に優れる静電荷像現像用トナー等を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.結着樹脂及び離型剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有し、
前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体が、下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な第2の重合性単量体との共重合体であり、
前記離型剤が、脂肪酸エステルを含有
し、
前記脂肪酸エステルが、ベヘン酸ベヘニル及びペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステルの少なくとも一方である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、メチル基、n-プロピル基、iso-ブチル基、2-エチルヘキシル基のいずれかを表す。]
【化2】
[一般式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、メチル基、n-プロピル基、iso-ブチル基、2-エチルヘキシル基のいずれかを表す。]
【0011】
2.前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~40質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0012】
3.前記第2の重合性単量体が、少なくともスチレン類及び、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0013】
4.前記第2の重合性単量体が、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、及びメタクリル酸メチルから1種以上選ばれることを特徴とする第3項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
5.前記離型剤の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~20質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、
前記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を合成し、結着樹脂粒子分散液を調製する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記手段により、耐オフセット性を満足しつつ、離型剤による機内汚染を抑制することができ、画像品質に優れる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下の説明では、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を、単に「本発明に係る重合体」とも称する。
【0021】
従来のスチレン・アクリル樹脂を含有するトナーは、主成分として、スチレン、メタクリル酸メチル、n-ブチルアクリレート由来の構造単位から成っており、印刷時の消費電力を抑えるために、低Tg化(ガラス転移温度の低温化)、低分子量化といったいわゆる低温定着化が進められている。
一方、トナーの低温定着化に伴い、用いる離型剤には、より低温で溶融(低融点化)し、かつ溶融粘度の低い(低溶融粘度化)ことが求められている。具体的には、ベヘン酸ベヘニル等の脂肪酸エステルが多く用いられている。このような離型剤の低融点化、低溶融粘度化によって、定着時に溶融しやすくなり、画像-定着ローラー界面に染み出しやすくなることで、トナーを低温定着化した際にもオフセット発生を抑制することができる。
しかしながら、離型剤の低融点化に伴い、固化する結晶化温度も低くなってしまうため、固化するまでに多くの時間を必要とする。ここで、固化する前に画像搬送ローラーと接触した場合には、画像搬送ローラーに離型剤が移行し汚染を生じてしまい、結果として画像を汚染し、画像品質を大きく損なってしまうことがある。離型剤には、早期に固化(結晶化)することも求められている。
【0022】
本発明のトナーが、耐ホットオフセット性と画像搬送ローラー汚染の抑制による良好な画像品質確保の両立ができた理由としては、トナーバインダーと、離型剤である脂肪酸エステルの相互作用によるものと推察することができる。
本発明に係る前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体をトナーバインダーに導入することによって、同じ構造を有する離型剤である脂肪酸エステルとの間の双極子相互作用を高めることができる。
双極子相互作用が高まることで、脂肪酸エステルが固化(結晶化)する際に、本発明に係る前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体が、その結晶化の足場として機能するため、結晶核形成を速やかに行うことが可能となる。その結果として、固化に要する時間を短縮することができると考えられる。このため、画像搬送ローラーと接触した場合でも、固化が進んでいることで、汚染を抑制することができると推察することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び離型剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有し、前記離型剤が、脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0024】
本発明の実施態様としては、前記一般式(1)中のR1及びR2が、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表すことが、機内汚染をより抑制できる点で好ましい。
【0025】
また、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体が、前記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な第2の重合性単量体との共重合体であることが、本発明の効果をより一層効率よく発揮できる点で好ましい。
【0026】
前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~40質量%の範囲内であることが、良好なオフセット性能を実現しつつ、ローラー汚染が抑制可能な点で好ましい。
【0027】
また、前記第2の重合性単量体が、少なくともスチレン類及び、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群より選択されること、特に、前記第2の重合性単量体が、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、及びメタクリル酸メチルから1種以上選ばれることが、本発明に係る重合体のガラス転移温度の調整が容易になる点で好ましい。
【0028】
前記脂肪酸エステルが、炭素数18~24の範囲内の脂肪酸エステルを含むことが、本発明に係る重合体との相互作用の点で好ましく、特に、前記炭素数18~24の範囲内の脂肪酸エステルが、ベヘン酸ベヘニル及びペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステルの少なくとも一方であることが好ましい。
【0029】
前記離型剤の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~20質量%の範囲内であることが、定着性及び耐オフセット性のバランス点で好ましい。
【0030】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、前記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を合成し、結着樹脂粒子分散液を調製する工程を有することを特徴とする。これにより、耐オフセット性が良好で、離型剤による機内汚染を抑制することができ、画像品質に優れるトナーを製造することができる。
【0031】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0032】
[本発明の静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、結着樹脂及び離型剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有し、前記離型剤が、脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
【0033】
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含むものであり、その他必要に応じて、着色剤、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0034】
<結着樹脂>
本発明に係る結着樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有する。
【0035】
【化4】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【0036】
(一般式(1)で表される構造単位を有する重合体)
前記一般式(1)中のR1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基である。その具体例としては、例えば、メチル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。画像搬送ローラーの汚染をより抑制するという観点から、R1及びR2は、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0037】
前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体は、下記一般式(2)で表される構造を有する単量体(以下、「第1の重合性単量体」ともいう。)の重合を行うことにより合成することができる。
【0038】
【化5】
[一般式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【0039】
R1及びR2は、前記一般式(1)におけるR1及びR2と同義である。
前記第1の重合性単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
前記第1の重合性単量体の具体例としては、下記の例示化合物M1~M7が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0040】
【0041】
第1の重合性単量体は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
合成方法の例としては、出発原料としてイタコン酸及び、所定のアルコール類との縮合反応にて第1の重合性単量体を得ることもできる。
【0042】
また、前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有量が、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体100質量%に対して、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0043】
第1の重合性単量体の重合方法は、特に制限されないが、簡便に合成できるという観点から、公知の油溶性又は水溶性のラジカル重合開始剤を使用して単量体をラジカル重合する方法が好ましい。
【0044】
すなわち、本発明の好ましい一実施形態によるトナーの製造方法は、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有する結着樹脂、及び脂肪酸エステルを含有する離型剤を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記一般式(2)で表される構造を有する重合性単量体の(ラジカル)重合を行い、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を合成し、結着樹脂粒子分散液を調製する工程を有する。また、離型剤を含有する離型剤粒子分散液を調製する工程をさらに有し、前記結着樹脂粒子分散液及び前記離型剤粒子分散液を混合する工程を有することが好ましい。
【0045】
ラジカル重合に使用される油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が挙げられる。必要に応じて例えば、n-オクチルメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0046】
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0047】
過酸化物系重合開始剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
【0048】
また、乳化重合法で本発明に係る前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を形成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などが挙げられる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃の範囲内であることが好ましく、55~90℃の範囲内であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、例えば、1~12時間であることが好ましい。
【0049】
(他の構造単位を有する重合体)
本発明に係る前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体は、前記一般式(2)で表される構造を有する重合性単量体(第1の重合性単量体)のみから得られる重合体でもよいが、本発明の効果をより一層効率よく発揮させるという観点から、下記のような第1の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体(「第2の重合性単量体」ともいう。)との共重合体であることが好ましい。
【0050】
前記第2の重合性単量体の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、o-アセトキシスチレン、m-アセトキシスチレン、p-アセトキシスチレン等のスチレン系単量体(スチレン類);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸イソブチル(アクリル酸iso-ブチル)、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;等が挙げられる。
これらの中でも、重合体のガラス転移温度の調整が容易になるという観点から、スチレン類及びアクリル酸エステルより選択される少なくとも1種が好ましく、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル、からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、スチレン及びアクリル酸n-ブチルの少なくとも一方がさらに好ましい。
【0051】
さらに、第2の重合性単量体として、イオン性解離基を有する重合性単量体を用いてもよい。
イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などの基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらのうち、好ましいのはアクリル酸又はメタクリル酸である。
これら第2の重合性単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0052】
本発明に係る重合体において、第2の重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、特に制限されず、構造単位の種類によって適宜調整することができる。
例えば、第2の重合性単量体が上記のスチレン系単量体である場合、重合体中のスチレン系単量体由来の構造単位の含有量は、重合体の全構造単位を100質量%として、20~80質量%の範囲内であることが好ましく、30~70質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0053】
第2の重合性単量体が、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである場合、重合体中のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル由来の構造単位の含有量は、重合体の全構造単位を100質量%として、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0054】
イオン性解離基を有する重合性単量体を使用する場合、その構造単位の含有量は、本発明に係る重合体の全構造単位を100質量%として、3~8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0055】
第1の重合性単量体と第2の重合性単量体とを用いて本発明に係る重合体を合成する方法は、上記で説明した第1の重合性単量体の重合方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
本発明に係る重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算による分子量分布から得られるピーク分子量が、3500~35000の範囲内であることが好ましく、10000~30000の範囲内であることがより好ましい。このような範囲のピーク分子量であれば、定着時に重合体が適正な溶融粘度となり、良好な定着性と耐オフセット性とを両立させることができるため好ましい。
【0057】
なお、ピーク分子量とは、分子量分布におけるピークトップの溶出時間に相当する分子量である。分子量分布中にピークが複数存在した場合、ピーク面積比率の一番大きなピークトップの溶出時間に相当する分子量を指す。
【0058】
重合体のピーク分子量は、以下のような方法で測定できる。具体的には、装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布から、測定される。
【0059】
本発明に係る重合体の含有割合は、定着性及び、耐オフセット性のバランスの観点から、結着樹脂の合計質量を100質量%として、65~99質量%の範囲であることが好ましく、70~97質量%の範囲であることがより好ましく、75~95質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0060】
本発明に係る結着樹脂は、本発明に係る重合体以外の他の樹脂を含んでいてもよく、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。
具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、又はエポキシ樹脂などが挙げられる。これら他の樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0061】
以下では、結着樹脂として用いられうるポリエステル樹脂について説明する。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
【0062】
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
【0063】
ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、及び上記のカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
【0064】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0065】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより製造することができる。
【0066】
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。
【0067】
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。
さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0069】
上記ポリエステル樹脂は、ポリエステル重合セグメントとスチレン・アクリル重合セグメントグラフトとのグラフト共重合体構造を有するハイブリッドポリエステル樹脂であってもよい。
【0070】
<離型剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、離型剤を含有し、当該離型剤は脂肪酸エステルを含有する。
離型剤に含まれる脂肪酸エステルの例としては、例えば、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、ステアリルステアレート(ステアリン酸ステアリル)、ベヘニルステアレート、ステアリルベヘネート、ブチルステアレート、プロピルオレエート、ヘキサデシルパルミテート(パルミチン酸ヘキサデシル)、メチルリグノセレート(リグノセリン酸メチル)、グリセリンモノステアレート(ステアリン酸グリセリル)、ジグリセリルジステアレート(ジステアリン酸ジグリセリル)、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル)、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ソルビタンモノステアレート、コレステリルステアレート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、トリステアリルトリメリテート(トリメリット酸トリステアリル)、ジステアリルマレエート、メチルトリアコンタネート(トリアコンタン酸メチル)等が挙げられる。これら脂肪酸エステルは、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。
また、これら脂肪酸エステルは、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0071】
本発明に係る重合体との相互作用の観点から、脂肪酸エステルは、炭素数18~24の範囲内の脂肪酸エステルを含むことが好ましい。このような脂肪酸としては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
より好ましい離型剤は、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)及びペンタエリスリトールテトラベヘネート(ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル)の少なくとも一方である。
【0072】
前記離型剤は、脂肪酸エステルを含んでいれば、脂肪酸エステル以外の他のワックスを含んでいてもよい。
このような他のワックスの例としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等の脂肪酸アミドワックス等が挙げられる。
【0073】
離型剤の含有割合は、定着性及び耐オフセット性のバランスの観点から、本発明に係る重合体の合計質量を100質量%として、1~25質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0074】
本発明で用いられるトナー母体粒子は、必要に応じて着色剤、荷電制御剤を含んでいてもよい。
【0075】
<着色剤>
本発明に係るトナー母体粒子は着色剤を含んでもよい。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
【0076】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0077】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等の顔料が挙げられる。
【0078】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等の染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等の顔料が挙げられる。
【0079】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76等の顔料が挙げられる。
【0080】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有割合は、トナー母体粒子の全質量を100質量%として、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましく、2~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0081】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。
使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0082】
具体的には、正帯電性の荷電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業株式会社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P-51」(オリエント化学工業株式会社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、及び「PLZ1001」(四国化成工業株式会社製)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。
【0083】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、「ボントロン(登録商標)S-22」、「ボントロン(登録商標)S-34」、「ボントロン(登録商標)E-81」、「ボントロン(登録商標)E-84」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業株式会杜製)などの金属錯体、チオインジゴ系顔料、「コピーチャージNX VP434」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、「ボントロン(登録商標)E-89」(オリエント化学工業株式会社製)などのカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット株式会社製)などのホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボンなどのフッ素化合物などが挙げられる。
【0084】
負帯電性の荷電制御剤として用いられる金属錯体としては、上記に示したもの以外にも、オキシカルボン酸金属錯体、ジカルボン酸金属錯体、アミノ酸金属錯体、ジケトン金属錯体、ジアミン金属錯体、アゾ基含有ベンゼン-ベンゼン誘導体骨格金属錯体、アゾ基含有ベンゼン-ナフタレン誘導体骨格金属錯体などの各種の構造を有したものなどを使用することができる。
【0085】
このようにトナー母体粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの帯電性が向上される。
荷電制御剤の含有割合は、トナー母体粒子中、0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0086】
本発明に係るトナー母体粒子の形態は特に制限されず、例えば、いわゆる単層構造(コア・シェル型ではない均質な構造)、コア・シェル構造、3層以上の多層構造、ドメイン-マトリックス構造等の形態をとることができる。
【0087】
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、前記トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
【0088】
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
【0089】
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05~5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0090】
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmの範囲内であることが好ましく、5~9μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0091】
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0092】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は、前記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を合成し、結着樹脂粒子分散液を調製する工程を有することを特徴とする。また、本発明のトナーの製造方法は、前記結着樹脂粒子分散液を調製する工程を有すればよく、その他は特に制限されない。例えば本発明に係る重合体、離型剤及び必要に応じて着色剤等を溶融混練し、その後粉砕、分級等を行ってトナーを得ることができる。
また、重合性単量体を水系媒体中で乳化重合、ミニエマルション重合等により重合体粒子を調製し、当該重合体粒子、離型剤粒子、必要に応じて着色剤粒子等の分散粒子を凝集、融着する乳化凝集法により、トナーを得ることができる。
乳化凝集法としては、特開平5-265252号公報、特開平6-329947号公報、特開平9-15904号公報等に記載の方法を採用することができることができる。
さらに、特開2010-191043号公報に記載の懸濁重合法を用いた製造方法であってもよい。
【0093】
中でも、粒子径及び形状の制御が容易であり、生産時のエネルギーコストが削減できるという観点から、乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
このような乳化凝集法を利用した製造方法は、
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(1C)離型剤粒子の分散液を調製する離型剤粒子分散液調製工程
(2)結着樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
【0094】
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体(前記第1の重合性単量体や第2の重合性単量体)を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、本発明に係る一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を合成し、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
【0095】
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水性媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、例えば、溶媒を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法、又は重合体を酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内が好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0096】
(1B)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。
分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、上記と同様に「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0097】
(1C)離型剤粒子分散液調製工程
この離型剤粒子分散液調製工程は、脂肪酸エステルを含有する本発明に係る離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、100~1000nmの範囲内であることが好ましく、200~700nmの範囲内であることがより好ましい。
分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定器LA-750(株式会社堀場製作所製)によって測定することができる。
【0098】
(水系媒体)
(1A)~(1C)の工程で用いられる水系媒体は、水、又は水を主成分(50質量%以上)として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体等が挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
【0099】
上記の水溶性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、重合体を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類が好ましい。
【0100】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
このような界面活性剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムが使用される。
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部の範囲内、より好ましくは0.04~2質量部の範囲内である。
【0101】
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。
【0102】
金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。
具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、ポリ塩化アルミニウムなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価又は三価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0103】
[現像剤]
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
前記磁性体としては、例えば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライトなどを使用することができる。
【0104】
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
【0105】
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。
被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、又はフッ素樹脂などが用いられる。
また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0106】
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~60μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0107】
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0108】
[画像形成方法]
本発明のトナーは、圧力を付与すると共に加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。特に、定着工程における定着温度が、定着ニップ部における加熱部材の表面温度において80~110℃、好ましくは80~95℃の範囲内となる温度とされる比較的低温の定着温度において定着する画像形成方法に好適に使用することができる。
さらに、定着線速が200~600mm/secの範囲内である高速定着の画像形成方法にも好適に使用することができる。
【0109】
この画像形成方法においては、具体的には、上記のような本発明のトナーを使用して、例えば感光体上に形成された静電荷像を現像してトナー像を得て、このトナー像を画像支持体に転写する。その後、画像支持体上に転写されたトナー像を熱圧力定着方式の定着処理によって画像支持体に定着させることにより、可視画像が形成された印画物が得られる。
【0110】
また、本発明のトナーは、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。
フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及びび感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0112】
結着樹脂に含まれる重合体のピーク分子量は、以下のようにして測定した。測定結果を下記表Iに示す。
装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得て、この試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布から求めた。
【0113】
[トナー1の製造]
<結着樹脂粒子分散液1の調製>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた5Lのステンレス釜(SUS釜)に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、液温80℃に昇温した。
この界面活性剤溶液に、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を80℃とした後、下記単量体混合液を100分間かけて滴下し、この系を80℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合を行い、結着樹脂粒子分散液1を調製した:
-単量体混合液-
例示化合物 M1(上記例示化合物参照、前記一般式(2)においてR1及びR2がメチル基(下記表Iでは「Me」と表記))
161g
スチレン(St) 411g
アクリル酸n-ブチル(nBA) 177g
メタクリル酸(MAA) 40g
アクリル酸(AA) 16g
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 5.5g
得られた結着樹脂粒子分散液1中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径を、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、125nmであった。
【0114】
<着色剤粒子分散液1の調製>
着色剤:カーボンブラック(Mogul(登録商標)L キャボット社製)
10質量部
アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20%水溶液)
1.5質量部
イオン交換水 90質量部
上記成分を混合しSCミルにて分散させ、着色剤粒子分散液1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径を「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、155nmであった。
【0115】
<離型剤粒子分散液1の調製>
ベヘン酸ベヘニル 100質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 5質量部
イオン交換水 240質量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA株式会社製)を用いて10分間分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液1を得た。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径を、レーザー回折式粒度分布測定器LA-750(株式会社堀場製作所製)によって測定したところ、530nmであった。
【0116】
<トナー母体粒子分散液1の調製>
結着樹脂粒子分散液1 237質量部
着色剤粒子分散液1 42質量部
離型剤粒子分散液1 18質量部
ポリ塩化アルミニウム 1.8質量部
イオン交換水 600質量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら55℃まで加熱した。55℃で30分間保持した後、溶液中に体積基準におけるメジアン径(D50)が4.8μmの凝集粒子が生成していることを確認した。
さらに加熱用オイルバスの温度を上げて56℃で2時間保持すると、体積基準におけるメジアン径(D50)は5.9μmとなった。
その後、系内に1mol/Lの水酸化ナトリウムを追加して系のpHを5.0に調整した後、ステンレス製フラスコを、磁気シールを用いて密閉し、撹拌を継続しながら98℃まで加熱した。6時間撹拌を継続することにより結着樹脂粒子間の融着(融合)を完了させ、トナー母体粒子分散液1を調製した。分散液中のトナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径(D50)は、6.0μmであった。
【0117】
<洗浄・乾燥工程>
トナー母体粒子分散液1をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械販売株式会社製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。
該ウェットケーキを、上記のバスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥し、トナー母体粒子を得た。
【0118】
<トナー母体粒子の外添剤処理>
上記で得られたトナー母体粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)を1質量部、及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)を0.3質量部添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)により混合して外添剤処理を行い、トナー1を製造した。
【0119】
[トナー2~22の製造]
下記表Iの単量体の組み合わせ及び添加量で、各結着樹脂粒子分散液を作製したこと、下記表Iに記載の離型剤を用いて各離型剤粒子分散液を作製したこと、及び下記表Iに記載の含有量となるように結着樹脂粒子分散液及び離型剤粒子分散液を使用してトナー母体粒子を作製したこと以外は、トナー1の製造と同様にして、トナー2~22を製造した。
【0120】
なお、下記表Iの単量体の組合せ及び添加量で作製した各結着樹脂粒子分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、いずれも125nmであった。
さらに、下記表Iに記載の離型剤を用いて作製した各離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、以下のとおりであった:
・ペンタエリスリトールテトラベヘネート:490nm
・ステアリン酸ステアリル:460nm
・リグノセリン酸メチル:430nm
・パルミチン酸ヘキサデシル:450nm
・トリアコンタン酸メチル:450nm
・パラフィン(パラフィンワックス、HNP-51、日本精蝋株式会社製):600nm
【0121】
各トナーの構成を下記表Iに示す。なお、下記表I中のStはスチレンを、MMAはメタクリル酸メチルを、nBAはアクリル酸n-ブチルを、iBAはアクリル酸iso-ブチルを、2EHAは、アクリル酸2-エチルヘキシルを、MAAはメタクリル酸を、AAは、アクリル酸を表す。
なお、表Iにおけるイタコン酸誘導体(第1の重合性単量体)の添加量、第2の重合性単量体の添加量は、イタコン酸誘導体及び第2の単量体の合計添加量を100質量%としたときの各添加量を表す。また、離型剤の添加量は、前記イタコン酸誘導体及び第2の単量体からなる重合体の添加量を100質量%としたときの離型剤の添加量を表す。
【0122】
[二成分現像剤の調製]
フェライト粒子(体積基準のメジアン径:50μm(パウダーテック株式会社製))100質量部と、メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂(一次粒子の体積基準のメジアン径:85nm)4質量部とを、水平撹拌羽根式高速撹拌装置に入れ、撹拌羽根の周速:8m/s、温度:30℃の条件で15分間混合した後、120℃まで昇温して撹拌を4時間継続した。その後、冷却し、200メッシュの篩を用いてメチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂の破片を除去することにより、樹脂被覆キャリアを作製した。
この樹脂被覆キャリアを、上記のトナー1~22の各々に、トナーとキャリアとの合計質量に対してトナーの濃度が7質量%になるよう混合し、二成分現像剤1~22を調製した。
【0123】
【0124】
[評価]
二成分現像剤1~22を用いて下記(1)及び(2)の評価項目について評価し、評価結果を下記表IIに示した。
【0125】
(1)耐ホットオフセット性
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を用い、この装置に現像剤として、上記二成分現像剤を搭載した。熱ロール定着方式の定着手段における定着加熱部材の表面温度を175℃とし、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下において、画像支持体として秤量350g/m2の厚紙を用いて画像形成を行い、5g/m3のトナーが定着したベタ画像を可視画像として得た。ベタ画像形成後、画像を形成していない無地の秤量350g/m2の厚紙を再度定着器に通すことで、ローラーにオフセットしたトナー量を目視で判別した。ランク3以上であれば合格である。
(評価基準)
ランク5:全くオフセット無し
ランク4:軽微なオフセットが部分的に発生
ランク3:軽微なオフセットが発生
ランク2:明確なオフセットが部分的に発生
ランク1:全面に明確なオフセットが発生
【0126】
(2)耐ローラー汚染性
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、この装置に現像剤として、上記二成分現像剤を搭載し、可視画像として、画像濃度が0.8のベタ画像を1000プリント実施した。その後、画像面が接触した複合機内の搬送ローラーの汚染の程度を目視にて観察し、4段階評価を行った。
(評価基準)
ランク4:搬送ローラーに汚染無し
ランク3:うっすらと部分的に搬送ローラーに汚染が見られる
ランク2:うっすらと全面的に搬送ローラーに汚染が見られる
ランク1:明確に搬送ローラーに汚染が見られる
【0127】
【0128】
上記表IIに示す結果から明らかなように、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有するとともに、離型剤として脂肪酸エステルワックスを用いた本発明のトナー1~20は、耐ホットオフセット性及び耐ローラー汚染性のいずれも優れた性能を示すことが分かった。
一方、脂肪酸エステルワックスの代わりにパラフィンワックスを用いたトナー21や、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有しない樹脂を用いたトナー22は、耐ホットオフセット性及び耐ローラー汚染性の両者を満足できないことが分かった。