(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、モータ駆動方法、およびモータ駆動プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250527BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20250527BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P27/06
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2021010717
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平形 政樹
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201467(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045531(WO,A1)
【文献】特開2016-152764(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136815(WO,A1)
【文献】特開2012-222853(JP,A)
【文献】特開2020-072588(JP,A)
【文献】特開2020-150756(JP,A)
【文献】特開2016-077075(JP,A)
【文献】特開2017-005955(JP,A)
【文献】特開2005-328668(JP,A)
【文献】特開2020-156272(JP,A)
【文献】特開2020-198765(JP,A)
【文献】特開2018-160972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0304189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するためのインバータが有する複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子を駆動するゲート駆動部と、
前記複数の上アーム側スイッチング素子の全オンまたは前記複数の下アーム側スイッチング素子の全オンのうちの少なくとも1つを含むフェイルセーフ制御を行うフェイルセーフ部と
、
第1電源と、
前記第1電源よりも高い電源電圧を出力する第2電源と
を備え、
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、全オンとする前記複数の上アーム側スイッチング素子または前記複数の下アーム側スイッチング素子のうち少なくとも1つのスイッチング素子のオン抵抗を、前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させ
、
前記ゲート駆動部は、
前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動電圧を、前記第2電源からの電源電圧を用いて供給し、
前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動電圧を、前記第1電源からの電源電圧を用いて供給し、
前記フェイルセーフ部は、前記第1電源が出力する電源電圧が閾値電圧以下となったことに応じて、前記フェイルセーフ制御を行う
モータ駆動装置。
【請求項2】
前記複数の上アーム側スイッチング素子および前記複数の下アーム側スイッチング素子のそれぞれは、閾値電圧を超えるゲート駆動電圧がゲートに供給されたことに応じてオンとなり、
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動電圧を、前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート駆動電圧よりも高くする
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記第2電源は、前記インバータの直流母線に接続される請求項
1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子のオン抵抗を、前記フェイルセーフ制御が行われない期間におけるオン抵抗よりも低下させる請求項1から
3のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子に流れる電流が閾値電流を超えることを条件として、前記少なくとも1つのスイッチング素子のオン抵抗を、前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させる請求項1から
4のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記フェイルセーフ部は、前記フェイルセーフ制御において、前記複数の上アーム側スイッチング素子および前記複数の下アーム側スイッチング素子を交互に全オンにする請求項1から
5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記複数の上アーム側スイッチング素子および前記複数の下アーム側スイッチング素子のうち全オンとする各スイッチング素子のオン抵抗を、前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させる請求項
6に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子のスイッチング速度を、前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるスイッチング速度よりも低下させる請求項1から
6のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記ゲート駆動部は、前記フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、前記少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに接続されるゲート抵抗を、前記フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート抵抗よりも大きくする請求項
8に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置、モータ駆動方法、およびモータ駆動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、およびモータを駆動するためのインバータを有する電機システムは、例えばハイブリッド自動車および電気自動車等の電動車両に用いられる。このような電機システムにおいて、異常発生時に、インバータ内の全ての上アーム側スイッチング素子または全ての下アーム側スイッチング素子をオンとしてモータを短絡させる技術が知られている(特許文献1~4)。例えば、特許文献3には、「界磁に永久磁石を用いて高回転まで動作するモータにおいては、高回転時にインバータの異常が発生した場合、モータの回転によって発生する誘起電圧が過大な電圧となる」(段落0004)ことから、「通常時はモータをPWM駆動するが、インバータに何らかの異常が発生した場合に、三相のスイッチング素子をPWM駆動から三相短絡駆動に切替えることで、直流電源電圧を所定の電圧範囲に抑制する」(段落0009)ことが記載されている。
また、特許文献5~7は、モータを短絡させる場合において、全ての上アーム側スイッチング素子と全ての下アーム側スイッチング素子とを交互にオンすることが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2000-14184号公報
[特許文献2] 特開2017-147806号公報
[特許文献3] 特開2015-198503号公報
[特許文献4] 特開2009-284747号公報
[特許文献5] 国際公開第2016/136815号
[特許文献6] 特開2012-65425号公報
[特許文献7] 特開2018-152986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータが高負荷である状態において、上アーム側スイッチング素子または下アーム側スイッチング素子の全相短絡によるモータ巻線短絡を行うと、スイッチング素子に、通常のモータ駆動時に流れる電流を超える電流が過渡的に流れることがある。このような状態で上アームの全相短絡および下アームの全相短絡を切り替えると、大きなサージ電圧が発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、モータ駆動装置を提供する。モータ駆動装置は、モータを駆動するためのインバータが有する複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子を駆動するゲート駆動部を備えてよい。モータ駆動装置は、複数の上アーム側スイッチング素子の全オンまたは複数の下アーム側スイッチング素子の全オンのうちの少なくとも1つを含むフェイルセーフ制御を行うフェイルセーフ部を備えてよい。ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子のうちオンとする少なくとも1つのスイッチング素子のオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させてよい。
【0005】
複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子のそれぞれは、閾値電圧を超えるゲート駆動電圧がゲートに供給されたことに応じてオンとなってよい。ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動電圧を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート駆動電圧よりも高くしてよい。
【0006】
モータ駆動装置は、第1電源と、第1電源よりも高い電源電圧を出力する第2電源とを備えてよい。ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動電圧を、第2電源からの電源電圧を用いて供給してよい。ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動電圧を、第1電源からの電源電圧を用いて供給してよい。
【0007】
第2電源は、インバータの直流母線に接続されてよい。
【0008】
フェイルセーフ部は、第1電源が出力する電源電圧が閾値電圧以下となったことに応じて、フェイルセーフ制御を行ってよい。
【0009】
ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるオン抵抗よりも低下させてよい。
【0010】
ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子に流れる電流が閾値電流を超えることを条件として、少なくとも1つのスイッチング素子のオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させてよい。
【0011】
フェイルセーフ部は、フェイルセーフ制御において、複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子を交互に全オンにしてよい。
【0012】
ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子のうち全オンとする各スイッチング素子のオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させてよい。
【0013】
ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるスイッチング速度よりも低下させてよい。
【0014】
ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに接続されるゲート抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート抵抗よりも大きくしてよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、モータ駆動装置を提供する。モータ駆動装置は、モータを駆動するためのインバータが有する複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子を駆動するゲート駆動部を備えてよい。モータ駆動装置は、複数の上アーム側スイッチング素子の全オンまたは複数の下アーム側スイッチング素子の全オンのうちの少なくとも1つを含むフェイルセーフ制御を行うフェイルセーフ部を備えてよい。ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、複数の上アーム側スイッチング素子および複数の下アーム側スイッチング素子のうちオンとする少なくとも1つのスイッチング素子のスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるスイッチング速度よりも低下させてよい。
【0016】
ゲート駆動部は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、少なくとも1つのスイッチング素子のゲートに接続されるゲート抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート抵抗よりも大きくしてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る電機システム200の構成を示す。
【
図2】本実施形態に係る第2フェイルセーフ回路14の構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態に係る下アームゲート駆動回路21aの構成の一例を示す。
【
図4】本実施形態に係るゲート駆動信号波形の一例を示す。
【
図5】スイッチング素子のゲート電圧に応じたドレイン-ソース電圧特性の一例を示す。
【
図6】本実施形態の変形例に係る電機システム600の構成を示す。
【
図7】本実施形態の変形例に係る上アームゲート駆動回路12aの構成の一例を示す。
【
図8】本実施形態の変形例に係るゲート駆動信号の波形の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る電機システム200の構成を示す。電機システム200は、上アーム側スイッチング素子4a~cまたは下アーム側スイッチング素子5a~cの全相短絡時に、モータ駆動時に流れる電流を超える電流が過渡的に流れた場合においても、オンとするスイッチング素子の主端子間に発生するオン電圧を低減することにより、スイッチング素子による電力損失を低減する。これにより、電機システム200は、オンとするスイッチング素子により大きな電流が流れた場合においても、電力損失を許容値の範囲内に抑えることができる。
【0021】
電機システム200は、主バッテリ1と、スイッチ2と、直流母線コンデンサ3と、補機バッテリ6と、電源回路13と、モータPMと、1または複数の電流センサ100と、角度センサ101と、インバータ210と、モータ駆動装置220とを備える。主バッテリ1は、例えば400Vの電源であり、インバータ210の直流母線における正側および負側の間に接続されて、モータPMに供給する電力を発生する。
【0022】
スイッチ2は、主バッテリ1と、直流母線コンデンサ3およびインバータ210との間に設けられ、主バッテリ1を直流母線コンデンサ3およびインバータ210と接続するか否かを切り換える。一例として、スイッチ2は、電機システム200または電機システム200を搭載する車両が始動されたこと等に応じてオン状態に切り換えられ、電機システム200または電機システム200を搭載する車両の故障または異常が発生したこと、またはモータPM側からの回生に伴い直流母線間の電圧が上限電圧を超えたこと等に応じてオフ状態に切り換えられてよい。また、スイッチ2は、補機バッテリ6からの電力供給が遮断されたこと、すなわち例えば補機バッテリ6から供給される電圧が予め定められた下限電圧以下となったことに応じて、オフ状態に切り換えられてよい。
【0023】
直流母線コンデンサ3は、スイッチ2よりもインバータ210側において正側および負側の直流母線間に接続される。直流母線コンデンサ3は、直流母線電圧を安定化させると共に、インバータ210側へと供給する電流の変動を吸収する。
【0024】
補機バッテリ6は、例えば12Vの電源であり、モータ駆動装置220に供給する電力を発生する。補機バッテリ6は、電機システム200を搭載する車両等に設けられたその他の機器(セルモータおよび電装品等)に接続され、これらの機器に電力を供給してもよい。補機バッテリ6の負側であるグランドGND_N1は、車両のボディに接地されてよく、主バッテリ1および直流母線コンデンサ3とは絶縁される。
【0025】
電源回路13は、インバータ210の直流母線に接続され、直流母線コンデンサ3からの電力供給を受けて、正側の直流母線の電圧を降下させた電源電圧VHV_2を出力する。電源回路13は、第2電源の一例であり、モータ駆動装置220に含まれてもよい。ここで、電源電圧VHV_2は、負側の直流母線の電位(すなわち図中グランドGND_N2の電位)を基準電位とし、例えばグランドGND_N2の電位+16Vの電位を有してよい。電源回路13は、例えばDC/DCコンバータ等の直流電圧変換器であり、主バッテリ1および直流母線コンデンサ3とは非絶縁であってよい。
【0026】
モータPMは、一例として3相の永久磁石(PM:Permanent Magnet)モータである。これに代えて、モータPMは、異なる相数を有してもよく、電力の供給を受けて回転する他の種類のモータであってもよい。本実施形態において、モータPMは、電機システム200を搭載する車両の車輪を回転させる。
【0027】
1または複数の電流センサ100は、モータPMに対して接続される1または複数の配線の一部または全てに設けられ、対応する配線に流れる電流を検出する。電流センサ100は、CT(Current Transformer)方式等の、測定対象の配線とは非接触で電流を測定する電流センサであってよい。角度センサ101は、補機バッテリ6からの電力供給を受けて、モータPMの回転を検出する。角度センサ101は、モータPMの回転角度を検出するレゾルバ方式等の回転角センサであってよい。
【0028】
インバータ210は、直流母線間に接続され、直流母線電圧を、モータPMを駆動する交流電圧(本実施形態において3相交流電圧)に変換してモータPMに供給する。インバータ210は、モータPMの各相に対応して、複数の上アーム側スイッチング素子4a~c(以下、「上アーム側スイッチング素子4」とも示す。)のそれぞれと、複数の下アーム側スイッチング素子5a~c(以下、「下アーム側スイッチング素子5」とも示す。)のそれぞれとを有する。各上アーム側スイッチング素子4および各下アーム側スイッチング素子5は、パワー半導体素子であってよく、一例として、主端子としてコレクタおよびエミッタを有し、制御端子としてゲートを有するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。これに代えて、各上アーム側スイッチング素子4および各下アーム側スイッチング素子5は、主端子としてドレインおよびソースを有し、制御端子としてゲートを有するMOSFETであってよい。本実施形態において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのそれぞれは、閾値電圧を超えるゲート駆動電圧がゲートに供給されたことに応じてオンとなる。
【0029】
上アーム側スイッチング素子4aおよび下アーム側スイッチング素子5aは、正側の直流母線および負側の直流母線の間に直流母線コンデンサ3と並列にこの順に主端子間が接続され、上アーム側スイッチング素子4aおよび下アーム側スイッチング素子5aの間にモータPMの第1相端子(U相端子)が接続される。上アーム側スイッチング素子4bおよび下アーム側スイッチング素子5bと、上アーム側スイッチング素子4cおよび下アーム側スイッチング素子5cとは、上アーム側スイッチング素子4aおよび下アーム側スイッチング素子5aと同様に直流母線間に主端子間が接続され、上アーム側スイッチング素子4bおよび下アーム側スイッチング素子5bの間にモータPMの第2相端子(V相端子)、上アーム側スイッチング素子4cおよび下アーム側スイッチング素子5cの間にモータPMの第3相端子(W相端子)が接続される。
【0030】
各上アーム側スイッチング素子4および各下アーム側スイッチング素子5は、スイッチング素子本体に逆接続されたフリーホイールダイオードを有してよい。ここで、各上アーム側スイッチング素子4および各下アーム側スイッチング素子5がMOSFETの場合、フリーホイールダイオードは、寄生ダイオードであってもよい。
【0031】
モータ駆動装置220は、インバータ210に接続され、電源回路13および補機バッテリ6からの電力供給を受けてインバータ210を制御する。モータ駆動装置220は、制御回路7と、第1フェイルセーフ回路8と、故障検出回路15と、複数の上アーム電源回路9a~cと、複数の上アームゲート駆動回路12a~cと、下アーム電源回路10と、絶縁回路17と、第2フェイルセーフ回路14と、複数の下アームゲート駆動回路21a~cとを有する。なお、複数の上アーム電源回路9a~c、複数の上アームゲート駆動回路12a~c、および複数の下アームゲート駆動回路21a~cを含む回路構成を、「ゲート駆動部」とも示す。また、第1フェイルセーフ回路8および第2フェイルセーフ回路14を含む回路構成を、「フェイルセーフ部」とも示す。
【0032】
制御回路7は、補機バッテリ6の負側のグランドGND_N1の電位を基準電位とし、補機バッテリ6からの電力供給を受ける。制御回路7は、モータ制御用のマイクロコントローラ若しくはプロセッサ等のCPU、またはCPUを含むコンピュータ等によりモータ駆動プログラムを実行させることによって実現されてよい。これに代えて、制御回路7は、ハードウェア回路によって実現されてもよい。制御回路7は、モータPMを駆動するトルクを指定するトルク指令τ*を車両のECU(Electric Control Unit)等のコンピュータ(不図示)から受け取り、トルク指令τ*に応じたトルクを発生させるようにモータPMを駆動させるためのゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1を生成して出力する。Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1は、順に上アーム側スイッチング素子4a、上アーム側スイッチング素子4b、上アーム側スイッチング素子4c、下アーム側スイッチング素子5a、下アーム側スイッチング素子5b、および下アーム側スイッチング素子5cに対応するゲート駆動指令である。本実施形態において、制御回路7は、トルク指令τ*によって指定されたトルクでモータPMを回転させるための3相交流電流を発生させることをインバータ210に指示するゲート駆動指令を出力する。
【0033】
第1フェイルセーフ回路8は、グランドGND_N1の電位を基準電位とし、補機バッテリ6から電力供給を受ける。第1フェイルセーフ回路8は、制御回路7と同様に、コンピュータ等により実現されてもよく、ハードウェア回路によって実現されてもよい。第1フェイルセーフ回路8は、角度センサ101からの検出信号および故障検出回路15からの信号の少なくとも1つを用いて、上アームゲート駆動回路12a~cまたは下アームゲート駆動回路21a~cの少なくとも一方に対するフェイルセーフ制御を行う。第1フェイルセーフ回路8は、角度センサ101からの検出信号を時間微分することでモータPMの回転速度を得る。第1フェイルセーフ回路8は、このモータPMの回転速度が予め定められた上限速度を超えていることに応じてフェイルセーフ制御を行ってよい。また、第1フェイルセーフ回路8は、制御回路7の異常または故障を検出したことを示す信号を故障検出回路15から受け取ったことに応じてフェイルセーフ制御を行ってよい。本実施形態において、第1フェイルセーフ回路8は、上アームゲート駆動回路12a~cのフェイルセーフ制御および下アームゲート駆動回路21a~cのフェイルセーフ制御の両方を行う。
【0034】
具体的には、第1フェイルセーフ回路8は、制御回路7からのゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1を入力し、通常運転においてはゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1の値を変えずにゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、Gw_LV2、Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2として出力する。これにより、インバータ210は、制御回路7の制御に応じてモータPMを駆動する。
【0035】
フェイルセーフ動作において、第1フェイルセーフ回路8は、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2を論理L(ロー)とすることにより、上アームゲート駆動回路12a~cによって上アーム側スイッチング素子4a~cを全てオフ状態とすること、および、ゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2、並びに下アーム短絡指令Short_ONを論理H(ハイ)とすることにより、下アームゲート駆動回路21a~cによって下アーム側スイッチング素子5a~cの全てをオン状態にすることを含むフェイルセーフ制御をインバータ210に対して行ってよい。
【0036】
故障検出回路15は、制御回路7に接続され、補機バッテリ6からの電力供給を受ける。故障検出回路15は、制御回路7を監視して制御回路7の故障または異常を検出し、故障または異常の種類に応じて制御回路7のリセットおよび再起動する。また、故障または異常の種類によっては、故障検出回路15は、第1フェイルセーフ回路8に対してフェイルセーフ制御を行うことを指示する。
【0037】
上アーム電源回路9a~cのそれぞれは、補機バッテリ6からの電力供給を受けて、補機バッテリ6からの電源電圧を、上アーム側スイッチング素子4a~cのそれぞれを制御するための電源電圧に変換する。ここで、上アーム電源回路9aは、上アーム側スイッチング素子4aにおける下アーム側スイッチング素子5a側の主端子(本実施形態における上アーム側スイッチング素子4aのエミッタ端子)を基準電位(グランドGND_U)とする電圧を、上アーム側スイッチング素子4aを制御するための電源電圧(例えばGND_Uの電位+12V)として出力する。同様に、上アーム電源回路9bは、グランドGND_Vを基準電位とする電圧を、上アーム側スイッチング素子4bを制御するための電源電圧として出力する。上アーム電源回路9cは、グランドGND_Wを基準電位とする電圧を、上アーム側スイッチング素子4cを制御するための電源電圧として出力する。上アーム電源回路9a~cのそれぞれは、一例として絶縁トランスを含む絶縁型のDC/DCコンバータであってよい。
【0038】
上アームゲート駆動回路12a~cは、第1フェイルセーフ回路8に接続され、補機バッテリ6と、上アーム電源回路9a~cから電力供給を受ける。そして、上アームゲート駆動回路12a~cは、第1フェイルセーフ回路8からのゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2に基づいて上アーム側スイッチング素子4a~cのゲートを駆動する。より具体的には、上アームゲート駆動回路12aは、電気的に絶縁しつつ信号を伝送するフォトカプラ等の絶縁素子を含み、補機バッテリ6の基準電位(グランドGND_N1)を基準電位とするゲート駆動指令Gu_LV2を、グランドGND_Uを基準電位とするゲート駆動指令GuO_HVに変換して上アーム側スイッチング素子4aのゲートへと出力する。上アームゲート駆動回路12bおよび上アームゲート駆動回路12cも同様である。
【0039】
下アーム電源回路10は、補機バッテリ6からの電力供給を受けて、グランドGND_N1を基準電位とする補機バッテリ6の電源電圧を、グランドGND_N2を基準電位とする電源電圧VHV_1(例えばグランドGND_N2の電位+12V)に変換する。下アーム電源回路10は、第1電源の一例である。ここで、第2電源としての電源回路13が出力する電源電圧VHV_2は、第1電源としての下アーム電源回路10が出力する電源電圧VHV_1よりも高い。下アーム電源回路10は、絶縁トランスを含む絶縁型のDC/DCコンバータであってよい。なお、直流母線コンデンサ3からの電力をモータ駆動装置220に供給しない態様においては、下アーム電源回路10は、補機バッテリ6からの電力供給を受けて、電源電圧VHV_1および電源電圧VHV_2の両方を生成してもよい。
【0040】
下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1および電源回路13からの電源電圧VHV_2は、例えば整流ダイオード等の整流素子をそれぞれ介して合流されて、電源電圧VHVとなる。ここで、電源回路13からの電源電圧VHV_2は、例えばMOSFET等の半導体スイッチFET1を介して整流素子へと入力される。半導体スイッチFET1は、第2フェイルセーフ回路14からの昇圧信号VHV_2_ONが電源電圧VHV_2のオンを指示する場合(例えば論理L)にオンとなり、第2フェイルセーフ回路14からの昇圧信号VHV_2_ONが電源電圧VHV_2のオフを指示する場合(例えば論理H)にオフとなる。
【0041】
絶縁回路17は、第1フェイルセーフ回路8に接続され、第1フェイルセーフ回路8が出力する下アーム短絡指令Short_ONを受け取る。絶縁回路17は、フォトカプラ等の絶縁素子を含み、補機バッテリ6の基準電位(グランドGND_N1)を基準電位とする下アーム短絡指令Short_ONを、グランドGND_N2を基準とする下アーム短絡指令Short_HVに変換する。
【0042】
第2フェイルセーフ回路14は、絶縁回路17に接続され、第1電源および第2電源から電源電圧の合流点から電力供給を受けるように冗長化されている。第2フェイルセーフ回路14は、第1フェイルセーフ回路8と協調して、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cの全オンまたは複数の下アーム側スイッチング素子5a~cの全オンのうちの少なくとも1つを含むフェイルセーフ制御を行う。本実施形態においては、第1フェイルセーフ回路8および第2フェイルセーフ回路14は、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cの全オフとし、複数の下アーム側スイッチング素子5a~cを全オンとするフェイルセーフ制御を行う。
【0043】
本実施形態において、第1フェイルセーフ回路8および第2フェイルセーフ回路14は、補機バッテリ6からの電力供給が失われた場合、モータPMの回転速度が上限速度を超えた場合、および故障検出回路15によって制御回路7の故障または異常が検出された場合に、フェイルセーフ制御を行う。第2フェイルセーフ回路14は、下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1および絶縁回路17からの下アーム短絡指令Short_HVを用いて、下アームゲート駆動回路21a~cに対するフェイルセーフ制御を行う。
【0044】
本実施形態において、第2フェイルセーフ回路14は、下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1が下限電圧以下となったことに応じて補機バッテリ6からの電力供給が失われたことを検出する。そして、第2フェイルセーフ回路14は、補機バッテリ6からの電力供給が失われた場合に、電源回路13を介して直流母線コンデンサ3からの電力供給を受ける下アームゲート駆動回路21a~cに対するフェイルセーフ制御を行う。本実施形態において、第2フェイルセーフ回路14は、通常動作中はゲート駆動指令Gxyz_HVを論理Lとする。第2フェイルセーフ回路14は、補機バッテリ6からの電力供給が失われた場合のフェイルセーフ制御においては、ゲート駆動指令Gxyz_HVを論理Hとして下アーム側スイッチング素子5a~cの全てをオンとする。
【0045】
また、第2フェイルセーフ回路14は、補機バッテリ6からの電力供給が失われ、または論理Hの下アーム短絡指令Short_HVを受け取ったことに応じてフェイルセーフ制御を行う場合に、電源電圧VHV_2のオンを指示する昇圧信号VHV_2_ON(例えば論理L)を出力する。これにより、第2フェイルセーフ回路14は、フェイルセーフ制御を行う場合には、下アームゲート駆動回路21a~cに供給する電源電圧VHVを、電源電圧VHV_1から電源電圧VHV_2に変更する。
【0046】
下アームゲート駆動回路21a~cは、第1フェイルセーフ回路8および第2フェイルセーフ回路14に接続され、補機バッテリ6および電源電圧VHVからの電力供給を受ける。そして、下アームゲート駆動回路21a~cは、第1フェイルセーフ回路8および第2フェイルセーフ回路14からのゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2に基づいて下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートを駆動する。下アームゲート駆動回路21aは、第2フェイルセーフ回路14からのゲート駆動指令Gxyz_HVが論理Lの場合に第1フェイルセーフ回路8からのゲート駆動指令Gx_LV2に基づいて下アーム側スイッチング素子5aをオンまたはオフにスイッチングさせ、ゲート駆動指令Gxyz_HVが論理Hの場合に下アーム側スイッチング素子5aをオンとするゲート駆動指令GxO_HVを下アーム側スイッチング素子5aへと出力する。ここで、ゲート駆動指令GxO_HVは、主バッテリ1および直流母線コンデンサ3の基準電位(グランドGND_N2)を基準電位とする信号である。なお、下アームゲート駆動回路21aは、下アーム側スイッチング素子5aをオンとする場合にゲートに供給するゲート駆動指令GxO_HVのゲート駆動電圧を、電源電圧VHVを用いて発生する。下アームゲート駆動回路21bおよび下アームゲート駆動回路21cも同様の機能を有する。
【0047】
図2は、本実施形態に係る第2フェイルセーフ回路14の構成の一例を示す。第2フェイルセーフ回路14は、基準電圧源250と、コンパレータ260と、論理素子270とを含む。基準電圧源250は、基準電圧を発生する。本実施形態において、基準電圧源250は、補機バッテリ6が正常であるか否かの基準となる閾値電圧Vrefを発生する。コンパレータ260は、負入力端子(反転入力端子)が下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1を入力し、正入力端子(非反転入力端子)が基準電圧源250の閾値電圧Vrefを入力する。これにより、コンパレータ260は、電源電圧VHV_1が閾値電圧Vrefよりも高いことに応じて論理L、電源電圧VHV_1が閾値電圧Vref以下となったことに応じて(すなわち補機バッテリ6が喪失したと判断したことに応じて)論理Hをゲート駆動指令Gxyz_HVとして出力する。これにより、第2フェイルセーフ回路14は、下アーム電源回路10が出力する電源電圧VHV_1が閾値電圧Vref以下となったことに応じて、フェイルセーフ制御を行うことができる。なお、コンパレータ260は、ヒステリシスを有してもよい。
【0048】
論理素子270は、一例として否定論理和素子である。論理素子270は、コンパレータ260が出力するゲート駆動指令Gxyz_HVが論理Lであり、かつ絶縁回路17からの下アーム短絡指令Short_HVが論理Lである場合に論理Hを出力する。論理素子270は、コンパレータ260が出力するゲート駆動指令Gxyz_HVが論理Hとなり、または絶縁回路17からの下アーム短絡指令Short_HVが論理Hとなった場合は、論理Lを出力する。これにより、論理素子270は、補機バッテリ6からの電力供給が失われた場合、または故障検出回路15により制御回路7の故障または異常が検出された場合にFET1をオンとして、電源電圧VHVを下アーム電源回路10が出力する電源電圧VHV_1から電源回路13が出力する電源電圧VHV_2へと上昇させる。
【0049】
これにより、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧を、電源回路13からの電源電圧VHV_2を用いて供給することができる。また、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われない期間において、下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧を、下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1を用いて供給することができる。
【0050】
図3は、本実施形態に係る下アームゲート駆動回路21aの構成の一例を示す。下アームゲート駆動回路21aは、絶縁回路300と、論理和素子310と、抵抗R31~R32と、トランジスタ320a~bと、抵抗R33とを含む。絶縁回路300は、グランドGND_N1を基準とするゲート駆動指令Gx_LV2を、グランドGND_N2を基準とするゲート駆動指令Gx_HVに変換する。論理和素子310は、絶縁回路300からのゲート駆動指令Gx_HVおよび第2フェイルセーフ回路14からのゲート駆動指令Gxyz_HVの論理和を出力する。抵抗R31~R32は、論理和素子310の出力端子とトランジスタ320a~bのゲートとの間に接続され、トランジスタ320a~bのゲート抵抗として機能する。
【0051】
トランジスタ320a~bは、電源回路13からの電源電圧VHV_2および下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1を合流するノードと、グランドGND_N2との間に主端子間がこの順に直列に接続される。トランジスタ320aの制御端子は、抵抗R31における論理和素子310とは反対側の端子に接続され、トランジスタ320bの制御端子は、抵抗R32における論理和素子310とは反対側の端子に接続される。
【0052】
トランジスタ320a~bは、論理和素子310の出力が論理Hである場合にトランジスタ320a~bの間の中間ノードを電源電圧VHVに駆動し、論理和素子310の出力が論理Lである場合に中間ノードをグランドGND_N2の電圧に駆動する。抵抗R33は、トランジスタ320a~bの間の中間ノードと下アーム側スイッチング素子5aのゲートとの間に設けられ、トランジスタ320a~bによって駆動される中間ノードの電圧を、下アーム側スイッチング素子5aのゲート駆動電圧として出力する。
【0053】
これにより、下アームゲート駆動回路21aは、第1フェイルセーフ回路8からのゲート駆動指令Gx_LV2および第2フェイルセーフ回路14からのゲート駆動指令Gxyz_HVが論理Lである場合に下アーム側スイッチング素子5aのゲート駆動電圧をグランドGND_N2の電圧とし、ゲート駆動指令Gx_LV2またはゲート駆動指令Gxyz_HVの少なくとも一方が論理Hとなったことに応じて下アーム側スイッチング素子5aのゲート駆動電圧を電源電圧VHVまで立ち上げることができる。なお、下アームゲート駆動回路21b~cは、下アームゲート駆動回路21aと同様の構成を有してよい。
【0054】
図4は、本実施形態に係るゲート駆動信号(ゲート駆動指令)波形の一例を示す。より具体的には、本図は、複数の上アームゲート駆動回路12a~cが出力する上アームゲート駆動指令GuO_HV、GvO_HV、およびGwO_HVと、複数の下アームゲート駆動回路21a~cが出力する下アームゲート駆動指令GxO_HV、GyO_HV、およびGzO_HVとの、時間の経過に応じた変化を示す。
【0055】
制御回路7は、正常に動作している間、PWM制御によってモータPMを回転駆動させるためのゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1を出力する。第1フェイルセーフ回路8は、制御回路7が正常に動作していることを故障検出回路15が検出している間、ゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1の値を変えずにゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、Gw_LV2、Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2として出力し、下アーム短絡指令Short_ONを論理Lとする。
【0056】
上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、Gw_LV2、Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2に応じて、モータPMに3相交流電流を供給してモータPMを回転駆動させる。ここで、正常動作中は補機バッテリ6の電源電圧VHV_1は基準電圧源250の閾値電圧Vrefを超え、下アーム短絡指令Short_HVは論理Lとなるので、第2フェイルセーフ回路14は、昇圧信号VHV_2_ONを論理Hとし、FET1をオフとする。これにより、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御が行われない期間の間、電源電圧VHVを下アーム電源回路10からの電源電圧VHV_1とする。したがって、下アームゲート駆動回路21a~cは、下アーム側スイッチング素子5a~cをオンとする場合に、フェイルセーフ制御が行われない期間における下アームゲート駆動指令GxO_HV、GyO_HV、およびGzO_HVのゲート駆動電圧VHVを、電源電圧VHV_1とする。
【0057】
モータPMの回転速度が上限速度を超えた場合、または、故障検出回路15が制御回路7の異常または故障を検出した場合、第1フェイルセーフ回路8は、モータPMの巻き線を短絡するフェイルセーフ制御を行う。第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御において、上アームゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2を論理L(ロー)とする。これに応じて、上アームゲート駆動回路12a~cは、上アーム側スイッチング素子4a~cを全てオフ状態とする。
【0058】
また、第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御において、下アームゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2を論理Hとする。これに応じて、下アームゲート駆動回路21a~cは、下アーム側スイッチング素子5a~cを全てオン状態とする。ここで、第1フェイルセーフ回路8は、このようなフェイルセーフ制御において、下アーム短絡指令Short_ONを論理Hとする。第2フェイルセーフ回路14は、これに応じて論理Hの下アーム短絡指令Short_HVを受け、昇圧信号VHV_2_ONを論理LとしてFET1をオンとする。したがって、電源電圧VHVは、電源電圧VHV_1から電源電圧VHV_2へと昇圧される。この結果、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧VHVを、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるゲート駆動電圧VHV_1よりも高いゲート駆動電圧VHV_2とする。
【0059】
ここで、補機バッテリ6からの電力供給が失われた場合、制御回路7および第1フェイルセーフ回路8に供給される電源電圧VLVが失われて制御回路7および第1フェイルセーフ回路8は動作しなくなる。この場合、第2フェイルセーフ回路14は、電源電圧VHV_1が閾値電圧Vref以下となったことを検出して、ゲート駆動指令Gxyz_HVを論理Hとすると共に、昇圧信号VHV_2_ONを論理LとしてFET1をオンとする。これに伴い、電源電圧VHVは、電源電圧VHV_1から電源電圧VHV_2へと昇圧される。この結果、下アームゲート駆動回路21a~cは、補機バッテリ6からの電力供給が失われた場合においても、下アーム側スイッチング素子5a~cを全てオン状態とする。そして、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧VHVを、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるゲート駆動電圧VHV_1よりも高いゲート駆動電圧VHV_2とする。
【0060】
図5は、スイッチング素子のゲート電圧に応じたドレイン-ソース電圧特性の一例を示す。本図は、あるMOSFETにおいて、ゲート電圧(ゲート-ソース電圧)を10V、12V、…、20Vと変化させた場合における、MOSFETに流れる電流(ドレイン電流)とMOSFFETの主端子間に生じる電圧(ドレイン-ソース電圧)との関係を示す。
【0061】
ゲート電圧が閾値を超えたことに応じてオンとなるn型のIGBTおよびMOSFET等のスイッチング素子は、ゲート電圧が大きいほど、同じ電流を流したときに主端子間に生じる電圧が小さくなる。スイッチング素子が消費する電力は、スイッチング素子に流れる電流と主端子間の電圧の積であるから、n型のスイッチング素子の場合には、ゲート電圧を大きくするほど消費電力が小さくなり(すなわち損失が小さくなり)、発熱量が小さくなる。
【0062】
n型のスイッチング素子は、特性の1つとして、印加してよいゲート-ソース電圧(またはゲート-エミッタ電圧)の最大値が仕様で定められている(例えばゲート-ソース電圧の最大定格)。一般に、スイッチング素子の駆動回路は、スイッチング素子の故障低減および長寿命化を図るために、スイッチング素子を最大定格のゲート-ソース電圧で駆動するのではなく、ある程度十分なマージンを持たせる。
【0063】
例えば、本図の特性を有するスイッチング素子は、ゲート-ソース電圧の最大定格が20Vであるとする。駆動回路がこのスイッチング素子をオンとするためにゲート-ソース電圧を12Vで駆動すると、スイッチング素子に50Aの電流が流れたときに主端子間に約4.7~4.8V程度の電位差が発生する。この場合、スイッチング素子のオン抵抗は4.7~4.8V/50A=0.094~0.096Ω、スイッチング素子の消費電力は50A×4.7~4.8V=235~240Wとなる。
【0064】
これに対し、駆動回路がこのスイッチング素子をオンとするためにゲート-ソース電圧を16Vで駆動すると、スイッチング素子に50Aの電流が流れたときに主端子間に約1.4~1.5V程度の電位差が発生する。この場合、スイッチング素子のオン抵抗は1.4~1.5V/50A=0.028~0.03Ω、スイッチング素子の消費電力は50A×1.4~1.5V=70~75Wとなる。
【0065】
図4に関連して説明したように、本実施形態に係る下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、オンとする下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるゲート駆動電圧よりも高くする。これにより、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、オンとする複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるオン抵抗よりも低下させ、消費電力(オン損失)を低減させて下アーム側スイッチング素子5a~cを発熱による故障等から保護することができる。
【0066】
なお、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を行う一部の期間のみにおいて、オンとする下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるゲート駆動電圧よりも高くするようにしてオン抵抗をより低下させてもよい。例えば、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御の開始から予め定められた期間の間は電源電圧VHVを電源電圧VHV_2に昇圧し、予め定められた期間の経過後はフェイルセーフ制御中であっても電源電圧VHV_1に戻してもよい。この方式によれば、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を開始した直後でモータPMの回転数が高い間に下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を低下させることができ、下アーム側スイッチング素子5a~cを発熱による故障等から保護することができる。
【0067】
逆に、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御の開始から予め定められた期間の間は電源電圧VHVを電源電圧VHV_1のまま維持し、予め定められた期間の経過後にまだフェイルセーフ制御中であれば電源電圧VHV_2に昇圧してもよい。この方式によれば、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を開始した後に予め定められた期間を超えてフェイルセーフ制御が継続する場合には、その時点で下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を低下させることができ、下アーム側スイッチング素子5a~cの更なる発熱をある程度抑えることができる。
【0068】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御を行う少なくとも一部の期間において、少なくとも1つの下アーム側スイッチング素子5に流れる電流が閾値電流を超えること、またはモータPMの回転数が閾値を超えること等を条件として、電源電圧VHVを電源電圧VHV_2に上昇させてもよい。これにより、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、このような条件が満たされたことに応じて、下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるオン抵抗よりも低下させる。このような方式によれば、モータ駆動装置220は、モータPMの回転数が高い等により下アーム側スイッチング素子5に流れる電流が過大であることを必要条件として、ゲート駆動電圧を上昇させ、下アーム側スイッチング素子5の発熱を抑えることができる。
【0069】
また、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる上記のような少なくとも一部の期間において、オンとする下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるオン抵抗よりも低下させてよい。例えば、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を行わない期間の一部においても下アーム側スイッチング素子5a~cのうちオンとするスイッチング素子のオン抵抗を低下させる機能を更に有してもよい。このような構成においては、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を行わない期間の一部においてオンとする下アーム側スイッチング素子5のオン抵抗の抵抗値は、フェイルセーフ制御を行う期間における下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗の抵抗値以下となってもよい。
【0070】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御が行われる期間において、下アーム側スイッチング素子5a~cの全てのオン抵抗を低下させなくてもよく、少なくとも1つの下アーム側スイッチング素子5のオン抵抗を低下させてもよい。例えば、モータ駆動装置220は、各下アーム側スイッチング素子5の温度を測定し、温度が閾値を超えた下アーム側スイッチング素子5のみのオン抵抗を低下させてもよい。
【0071】
なお、電機システム200は、下アーム側スイッチング素子5a~cとして、閾値電圧未満のゲート駆動電圧がゲートに供給されたことに応じてオンとなるp型のMOSFET等を用いてもよい。この場合には、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、オンとする下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートに供給するゲート駆動電圧を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート駆動電圧よりも低くすることによって、下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を低下させてよい。
【0072】
図6は、本実施形態の変形例に係る電機システム600の構成を示す。電機システム600は、主バッテリ1と、スイッチ2と、直流母線コンデンサ3と、補機バッテリ6と、モータPMと、1または複数の電流センサ100と、角度センサ101と、インバータ210と、モータ駆動装置220とを備える。ここで、モータ駆動装置220以外の各構成要素については、
図1に示した電機システム200における同一の符号を付した構成要素と同様の機能および構成をとるので、相違点を除いて説明を省略する。
【0073】
モータ駆動装置220は、制御回路7と、第1フェイルセーフ回路8と、故障検出回路15と、複数の上アーム電源回路9a~cと、複数の上アームゲート駆動回路12a~cと、ゲート駆動電源回路617と、複数の下アームゲート駆動回路21a~cとを有する。これらの各構成要素は、
図1に示した電機システム200における同一の符号を付した構成要素と同一または類似の機能および構成をとるので、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0074】
第1フェイルセーフ回路8は、角度センサ101からの検出信号および故障検出回路15からの信号の少なくとも1つを用いて、上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cに対するフェイルセーフ制御を行う。第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御において、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2を論理Hとしゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2を論理Lとして複数の上アーム側スイッチング素子4a~cを全オンとする動作と、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2を論理Lとしゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2を論理Hとして複数の下アーム側スイッチング素子5a~cを全オンとする動作とを交互に行う。また、第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御を行わない場合には上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Lとし、フェイルセーフ制御においては上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Hとする。
【0075】
上アーム電源回路9a~cのそれぞれは、補機バッテリ6からの電力供給を受けて、補機バッテリ6からの電源電圧を、上アーム側スイッチング素子4a~cのそれぞれを制御するための電源電圧(VHV_u、VHV_v、およびVHV_w)に変換する。本変形例において、上アーム電源回路9a~cのそれぞれは、上アーム短絡指令Short_Uが論理Lである場合には、上アーム側スイッチング素子4a~cのそれぞれを制御するための電源電圧として電源電圧VHV_1を出力し、上アーム短絡指令Short_Uが論理Hである場合には、電源電圧VHV_2を出力する。
【0076】
上アームゲート駆動回路12a~cは、第1フェイルセーフ回路8に接続され、補機バッテリ6と、上アーム電源回路9a~cから電力供給を受ける。そして、上アームゲート駆動回路12a~cは、第1フェイルセーフ回路8からのゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2と、上アーム短絡指令Short_Uとに基づいて上アーム側スイッチング素子4a~cのゲートを駆動する。本変形例において、上アームゲート駆動回路12a~cは、上アーム短絡指令Short_Uに基づいて、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、上アーム側スイッチング素子4a~cのスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるスイッチング速度よりも低下させる。
【0077】
ゲート駆動電源回路617は、補機バッテリ6からの電力供給を受けて、グランドGND_N1を基準電位とする補機バッテリ6の電源電圧を、グランドGND_N2を基準電位とする電源電圧VHV_xyzに変換する。ここで、ゲート駆動電源回路617は、第1フェイルセーフ回路8からの上アーム短絡指令Short_Uが論理Lである場合に電源電圧VHV_xyzを電源電圧VHV_1とし、第1フェイルセーフ回路8からの上アーム短絡指令Short_Uが論理Hである場合に電源電圧VHV_xyzを電源電圧VHV_2とする。
【0078】
下アームゲート駆動回路21a~cは、第1フェイルセーフ回路8に接続され、補機バッテリ6およびゲート駆動電源回路617からの電力供給を受ける。そして、下アームゲート駆動回路21a~cは、第1フェイルセーフ回路8からのゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2に基づいて下アーム側スイッチング素子5a~cのゲートを駆動する。本変形例において、下アームゲート駆動回路21a~cは、下アーム短絡指令Short_Lに基づいて、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、下アーム側スイッチング素子5a~cのスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるスイッチング速度よりも低下させる。
【0079】
図7は、本実施形態の変形例に係る上アームゲート駆動回路12aの構成の一例を示す。上アームゲート駆動回路12aは、ゲートドライバ700と、絶縁素子710と、論理否定素子720と、複数のスイッチ730a~bと、複数の抵抗740a~bとを含む。
【0080】
ゲートドライバ700は、補機バッテリ6から電源電圧VLVおよび上アーム電源回路9aからの電源電圧VHV_uの供給を受ける。ゲートドライバ700は、第1フェイルセーフ回路8に接続され、第1フェイルセーフ回路8が出力するゲート駆動指令Gu_LV2を受け取る。ゲートドライバ700は、一例として
図3に示した絶縁回路300のような絶縁回路を含み、補機バッテリ6の基準電位(グランドGND_N1)を基準電位とするゲート駆動指令Gu_LV2を、グランドGND_Uを基準とするゲート駆動指令に変換する。また、ゲートドライバ700は、一例として
図3に示したトランジスタ320a~bのような駆動回路を含み、グランドGND_U基準に変換したゲート駆動指令に基づいて上アーム側スイッチング素子4aのゲートを駆動するためのゲート駆動指令GuO_HVを出力する。
【0081】
絶縁素子710は、第1フェイルセーフ回路8に接続され、第1フェイルセーフ回路8が出力する上アーム短絡指令Short_Uを受け取る。絶縁素子710は、フォトカプラ等の絶縁素子を含み、補機バッテリ6の基準電位(グランドGND_N1)を基準電位とする上アーム短絡指令Short_Uを、グランドGND_Uを基準とする上アーム短絡指令に変換する。論理否定素子720は、絶縁素子710により変換された上アーム短絡指令Short_Uの論理値を反転する。
【0082】
スイッチ730aは、ゲートドライバ700および抵抗740aの間に接続され、ゲートドライバ700が出力するゲート駆動指令GuO_HVを抵抗740aを介して上アーム側スイッチング素子4aへと出力するか否かを切り換える。ここで、スイッチ730aは、論理否定素子720の出力が論理Hである場合、すなわち上アーム短絡指令Short_Uが論理Lである場合にオンとなり、上アーム短絡指令Short_Uが論理Hである場合にオフとなる。
【0083】
スイッチ730bは、ゲートドライバ700および抵抗740bの間に接続され、ゲートドライバ700が出力するゲート駆動指令GuO_HVを抵抗740bを介して上アーム側スイッチング素子4aへと出力するか否かを切り換える。ここで、スイッチ730bは、絶縁素子710の出力が論理Hである場合、すなわち上アーム短絡指令Short_Uが論理Hである場合にオンとなり、上アーム短絡指令Short_Uが論理Lである場合にオフとなる。
【0084】
複数の抵抗740a~bのそれぞれは、複数のスイッチ730a~bのうちの対応するスイッチ730と上アーム側スイッチング素子4aとの間に接続される。複数の抵抗740a~bのそれぞれは、対応するスイッチ730がオンとなったことに応じてゲートドライバ700および上アーム側スイッチング素子4aの間に接続され、上アーム側スイッチング素子4aのゲート抵抗として機能する。
【0085】
抵抗740aは、フェイルセーフ制御が行われない期間(上アーム短絡指令Short_Uが論理Lの期間)にスイッチ730aがオンとなることに伴って、上アーム側スイッチング素子4aのゲート抵抗として機能する。抵抗740bは、フェイルセーフ制御が行われる期間(上アーム短絡指令Short_Uが論理Hの期間)にスイッチ730bがオンとなることに伴って、上アーム側スイッチング素子4aのゲート抵抗として機能する。
【0086】
フェイルセーフ制御が行われる期間に使用される抵抗740bは、フェイルセーフ制御が行われない期間に使用される抵抗740aよりも大きい抵抗値を有する。したがって、上アームゲート駆動回路12aは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、上アーム側スイッチング素子4aのゲートに接続されるゲート抵抗(すなわち抵抗740b)を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるゲート抵抗(すなわち抵抗740a)よりも大きくすることができる。
【0087】
ここで、ゲート抵抗が大きくなるほどゲート電流が小さくなり上アーム側スイッチング素子4aのゲート電圧の立ち上がりおよび立ち下がり速度が低くなる。したがって、上アームゲート駆動回路12aは、フェイルセーフ制御が行われる期間における上アーム側スイッチング素子4aのスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるスイッチング速度よりも低下させることができる。
【0088】
本変形例において、上アームゲート駆動回路12b~cは、上アームゲート駆動回路12aと同様の機能および構成を有してよい。また、下アームゲート駆動回路21a~cもまた、上アームゲート駆動回路12aと同様にして、フェイルセーフ制御が行われる期間における下アーム側スイッチング素子5a~cのスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるスイッチング速度よりも低下させるようにしてよい。
【0089】
以上に示したように、本変形例に係るモータ駆動装置220によれば、フェイルセーフ制御において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を、フェイルセーフ制御を行わない場合のオン抵抗と比較して低下させる。これにより、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御中における複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cの発熱を抑えることができる。
【0090】
また、本変形例に係るモータ駆動装置220によれば、フェイルセーフ制御において複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cを交互に全オンにする場合に、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのそれぞれに接続されるゲート抵抗を、フェイルセーフ制御を行わない場合のゲート抵抗と比較して大きくする。これにより、モータ駆動装置220は、モータPMに通常のモータ駆動時に流れる電流を超える電流が流れている場合においても、上下アームの全相短絡の切り換えるときの複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのスイッチング速度を低下させ、大きなサージ電圧が発生するのを防ぐことができる。
【0091】
図8は、本実施形態の変形例に係るゲート駆動信号の波形の一例を示す。より具体的には、本図は、電機システム600における、複数の上アームゲート駆動回路12a~cが出力する上アームゲート駆動指令GuO_HV、GvO_HV、およびGwO_HVと、複数の下アームゲート駆動回路21a~cが出力する下アームゲート駆動指令GxO_HV、GyO_HV、およびGzO_HVとの、時間の経過に応じた変化を示す。
【0092】
制御回路7は、正常に動作している間、PWM制御によってモータPMを回転駆動させるためのゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1を出力する。第1フェイルセーフ回路8は、制御回路7が正常に動作していることを故障検出回路15が検出している間、ゲート駆動指令Gu_LV1、Gv_LV1、Gw_LV1、Gx_LV1、Gy_LV1、およびGz_LV1の値を変えずにゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、Gw_LV2、Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2として出力し、上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Lとする。
【0093】
上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、Gw_LV2、Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2に応じて、モータPMに3相交流電流を供給してモータPMを回転駆動させる。ここで、正常動作中は、上アーム電源回路9a~cは、上アーム短絡指令Short_Uが論理Lであることに応じて、相毎の基準電位GND_U、GND_V、およびGND_Wを基準とする電源電圧VHV_1を上アームゲート駆動回路12a~cに供給する。また、正常動作中は、ゲート駆動電源回路617は、下アーム短絡指令Short_Lが論理Lであることに応じて、基準電位GND_N2を基準とする電源電圧VHV_1を下アームゲート駆動回路21a~cに供給する。したがって、複数の上アームゲート駆動回路12a~cおよび複数の下アームゲート駆動回路21a~cは、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cをオンとする場合に、フェイルセーフ制御が行われない期間における上アームゲート駆動指令GuO_HV、GvO_HV、およびGwO_HVのゲート駆動電圧と、下アームゲート駆動指令GxO_HV、GyO_HV、およびGzO_HVのゲート駆動電圧とを、電源電圧VHV_1とする。
【0094】
ここで、上アームゲート駆動回路12aは、上アーム短絡指令Short_Uが論理Lであることに応じて、複数の抵抗740a~bのうちより抵抗値が小さい抵抗740aを上アーム側スイッチング素子4aのゲート抵抗として選択する。同様に、上アームゲート駆動回路12b~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cも、複数の抵抗のうちより抵抗値が小さいものを上アーム側スイッチング素子4b~cおよび下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗として選択する。
【0095】
モータPMの回転速度が上限速度を超えた場合、または、故障検出回路15が制御回路7の異常または故障を検出した場合、第1フェイルセーフ回路8は、モータPMの巻き線を短絡するフェイルセーフ制御を行う。第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御において、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2を論理Hとしゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2を論理Lとして複数の上アーム側スイッチング素子4a~cを全オンとする動作と、ゲート駆動指令Gu_LV2、Gv_LV2、およびGw_LV2を論理Lとしゲート駆動指令Gx_LV2、Gy_LV2、およびGz_LV2を論理Hとして複数の下アーム側スイッチング素子5a~cを全オンとする動作とを交互に行う。
【0096】
第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御において、上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Hとする。上アーム電源回路9a~cは、上アーム短絡指令Short_Uが論理Hであることに応じて、相毎の基準電位GND_U、GND_V、およびGND_Wを基準とする電源電圧VHV_2を上アームゲート駆動回路12a~cに供給する。また、ゲート駆動電源回路617は、下アーム短絡指令Short_Lが論理Hであることに応じて、基準電位GND_N2を基準とする電源電圧VHV_2を下アームゲート駆動回路21a~cに供給する。したがって、複数の上アームゲート駆動回路12a~cおよび複数の下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる期間において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cを全オンとする場合、および複数の下アーム側スイッチング素子5a~cを全オンとする場合に、上アームゲート駆動指令GuO_HV、GvO_HV、およびGwO_HVのゲート駆動電圧と、下アームゲート駆動指令GxO_HV、GyO_HV、およびGzO_HVのゲート駆動電圧とを、電源電圧VHV_2に昇圧する。
【0097】
また、上アームゲート駆動回路12aは、上アーム短絡指令Short_Uが論理Hであることに応じて、複数の抵抗740a~bのうちより抵抗値が大きい抵抗740bを上アーム側スイッチング素子4aのゲート抵抗として選択する。同様に、上アームゲート駆動回路12b~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cも、複数の抵抗のうちより抵抗値が大きいものを上アーム側スイッチング素子4b~cおよび下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗として選択する。
【0098】
このようにして、本変形例に係るモータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのオン抵抗を、フェイルセーフ制御を行わない場合のオン抵抗と比較して低下させることができる。また、モータ駆動装置220は、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのそれぞれに接続されるゲート抵抗を、フェイルセーフ制御を行わない場合のゲート抵抗と比較して大きくすることができる。
【0099】
なお、本変形例においては、第1フェイルセーフ回路8は、フェイルセーフ制御中は上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Hとする。これに代えて、第1フェイルセーフ回路8は、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cのターンオン開始からターンオフ終了までの間は上アーム短絡指令Short_Uを論理Hとし、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cのターンオフ終了から次のターンオン開始までの間は上アーム短絡指令Short_Uを論理Lとしてもよい。同様に、第1フェイルセーフ回路8は、複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのターンオン開始からターンオフ終了までの間は下アーム短絡指令Short_Lを論理Hとし、複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのターンオフ終了から次のターンオン開始までの間は上アーム短絡指令Short_Lを論理Lとしてもよい。
【0100】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御においてスイッチング素子のオン抵抗をより低下させる機能と、フェイルセーフ制御においてスイッチング素子のゲート抵抗をより大きくする機能とのいずれか一方のみを有してもよい。例えば、モータ駆動装置220は、これらの機能のうち、フェイルセーフ制御においてスイッチング素子のゲート抵抗をより大きくする機能のみを有してもよい。
【0101】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御においてスイッチング素子のオン抵抗をより低下させる機能に関して、
図4に関連して説明した様々な代替案を採用してもよい。また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御においてスイッチング素子のゲート抵抗をより大きくする機能に関しても、
図4に関連して説明した様々な代替案と同様の、または類似する代替案を採用してもよい。
【0102】
例えば、上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのうちオンとするスイッチング素子のスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるスイッチング速度よりも低下させてもよい。例えば、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御の開始から予め定められた期間の間は上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Hとして複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗を、例えばスイッチ730bを用いる等により大きくし、予め定められた期間の経過後はフェイルセーフ制御中であっても上アーム短絡指令Short_Uおよび下アーム短絡指令Short_Lを論理Lとして、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗を例えばスイッチ730a等に戻してもよい。この方式によれば、下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を開始した直後でモータPMの回転数が高く大きなサージ電圧が発生する可能性がある間に複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのスイッチング速度を低下させることができ、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cに過電圧がかかるのを抑止することができる。
【0103】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御が行われる期間のうち、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのオンオフを切り換えるターンオン期間またはターンオフ期間の間は複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗をより大きくし、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのオンオフを切り換えない定常期間はフェイルセーフ制御中であっても複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗を元に戻してもよい。
【0104】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御を行う少なくとも一部の期間において、少なくとも1つの下アーム側スイッチング素子5に流れる電流が閾値電流を超えること、またはモータPMの回転数が閾値を超えること等を条件として、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗をより大きくしてもよい。これにより、上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる少なくとも一部の期間において、このような条件が満たされたことに応じて、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのスイッチング速度を、フェイルセーフ制御が行われない期間におけるスイッチング速度よりも低下させる。このような方式によれば、モータ駆動装置220は、モータPMの回転数が高い等により下アーム側スイッチング素子5に流れる電流が過大であることを必要条件として、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのスイッチング速度を低下させ、サージ電圧を抑えることができる。
【0105】
また、上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御が行われる上記のような少なくとも一部の期間において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cのゲート抵抗を、フェイルセーフ制御が行われない少なくとも一部の期間におけるゲート抵抗よりも大きくしてよい。例えば、上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を行わない期間の他の一部においてもスイッチング素子のゲート抵抗を大きくする機能を更に有してもよい。このような構成においては、上アームゲート駆動回路12a~cおよび下アームゲート駆動回路21a~cは、フェイルセーフ制御を行わない期間の他の一部におけるスイッチング素子のゲート抵抗の抵抗値は、フェイルセーフ制御を行う期間において大きくした、スイッチング素子のゲート抵抗の抵抗値以上となってもよい。
【0106】
また、モータ駆動装置220は、フェイルセーフ制御が行われる期間において、複数の上アーム側スイッチング素子4a~cおよび複数の下アーム側スイッチング素子5a~cの全てのゲート抵抗を大きくしなくてもよく、少なくとも1つのスイッチング素子のゲート抵抗のみを大きくしてもよい。例えば、モータ駆動装置220は、各スイッチング素子に流れる電流を測定し、閾値を超えた電流が流れているスイッチング素子のみゲート抵抗を大きくしてからターンオフさせてもよい。
【0107】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0108】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0109】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0110】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0111】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0112】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0113】
1 主バッテリ
2 スイッチ
3 直流母線コンデンサ
4a~c 上アーム側スイッチング素子
5a~c 下アーム側スイッチング素子
6 補機バッテリ
7 制御回路
8 第1フェイルセーフ回路
9a~c 上アーム電源回路
10 下アーム電源回路
12a~c 上アームゲート駆動回路
13 電源回路
14 第2フェイルセーフ回路
15 故障検出回路
17 絶縁回路
21a~c 下アームゲート駆動回路
100 電流センサ
101 角度センサ
200 電機システム
210 インバータ
220 モータ駆動装置
250 基準電圧源
260 コンパレータ
270 論理素子
300 絶縁回路
310 論理和素子
320a~b トランジスタ
600 電機システム
617 ゲート駆動電源回路
700 ゲートドライバ
710 絶縁素子
720 論理否定素子
730a~b スイッチ
740a~b 抵抗