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  • 特許-タクシー車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】タクシー車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20250527BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G08G1/16 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021016748
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119540
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-12-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】覚知 誠
(72)【発明者】
【氏名】泉田 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊二
(72)【発明者】
【氏名】濱島 拓美
(72)【発明者】
【氏名】金高 充志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏広
(72)【発明者】
【氏名】高平 正光
【審査官】小林 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147354(JP,A)
【文献】特開2020-046727(JP,A)
【文献】特開2004-246707(JP,A)
【文献】特開2019-029918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06Q 40/00-40/12
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60K 25/00-28/16
A61B 5/06- 5/22
G08B 19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が搭乗した状態で、目的地まで自動運転することで前記利用者を輸送するタクシー車両であって、
前記タクシー車両に搭乗した前記利用者の健康状態を監視するモニタリング装置と、
車外の人に対してメッセージを出力する出力装置と、
前記モニタリング装置による監視の結果、前記利用者の救護が必要と判断した場合、前記出力装置を介して、前記車外の人に対して救護を求める救護コントローラと、
を備え、
前記出力装置は、前記タクシー車両の周囲の人にメッセージを出力する装置を含み、
前記タクシー車両の周囲の人にメッセージを出力する装置は、前記タクシー車両の外に音を出力するスピーカ、前記タクシー車両の周囲の人が視認可能な光源、前記タクシー車両の周囲の人が視認可能な画像表示装置、および、前記タクシー車両の周囲の外部に映像を投影する投影装置の少なくとも一つを含み、
前記メッセージは、前記利用者の意識、呼吸、および、心拍の有無を順に前記周囲の人に問い合わせるメッセージと、その問い合わせに対する前記周囲の人の返答に応じた前記利用者の救護に必要な救護動作の手順と、を含む、
ことを特徴とするタクシー車両。
【請求項2】
請求項1に記載のタクシー車両であって、
前記モニタリング装置は、利用者のバイタルサインを検知するセンサを含む、ことを特徴とするタクシー車両。
【請求項3】
請求項1に記載のタクシー車両であって、
前記救護コントローラは、前記利用者の救護が必要と判断した場合、前記タクシー車両を人が多い場所に移動させたうえで、前記出力装置を介して、前記車外の人に対して救護を求める、ことを特徴とするタクシー車両。
【請求項4】
請求項1に記載のタクシー車両であって、
前記出力装置は、通信装置を含み、
前記救護コントローラは、前記利用者の救護が必要と判断した場合、前記通信装置を介して、前記タクシー車両から一定範囲内に位置する人が所有する情報端末に、前記メッセージを通知させる、
ことを特徴とするタクシー車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、利用者が搭乗した状態で、目的地まで自動運転することで利用者を輸送するタクシー車両を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動運転車両を、タクシー車両として利用することが提案されている。例えば、特許文献1には、自動運転車両を用いてタクシーサービスを行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-174208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、運転手が運転するタクシー車両の場合、タクシーの利用者に、健康上の問題が発生した場合、運転手が気づくことができる。この場合、運転手は、利用者の状態に応じて、救護したり、周囲に救護を求めたりする。
【0005】
一方、自動運転で利用者を輸送するタクシー車両の場合、タクシー車両に、運転手は乗車していない。このように、運転手が乗車していないタクシー車両の場合であっても、利用者に健康上の問題が生じた場合には、早期に適切な対応をとることが求められる。
【0006】
そこで、本明細書では、自動運転で利用者を輸送し、利用者に健康上の問題が生じた場合でも、早期に対応をとることができる、タクシー車両を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示するタクシー車両は、利用者が搭乗した状態で、目的地まで自動運転することで利用者を輸送するタクシー車両であって、前記タクシー車両に搭乗した前記利用者の健康状態を監視するモニタリング装置と、車外の人に対してメッセージを出力する出力装置と、前記モニタリング装置による監視の結果、前記利用者の救護が必要と判断した場合、前記出力装置を介して、前記車外の人に対して救護を求める救護コントローラと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
かかる構成とすることで、運転手が乗車していない、自動運転のタクシー車両であっても、利用者の健康上の問題を早期に発見でき、迅速に救護を求めることができる。結果として、利用者が、より安心してタクシー車両を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】タクシー車両の構成を示す図である。
図2】他の形態のタクシー車両の構成を示す図である。
図3】他の形態のタクシー車両の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してタクシー車両(以下「車両」と略す)10の構成について説明する。図1は、車両10の構成を示す図である。車両10は、利用者からの利用依頼を受けて、個別契約で利用者を目的地まで輸送する。車両10は、動的運転タスクの全てを車両側が実行し、自律走行が可能な自動運転車両である。そのため、車両10には、運転手は、乗車しておらず、車両10は、無人で、または、利用者のみが乗車した状態で走行する。また、本例の車両10は、定員1名の一人乗り車両10である。なお、当然ながら、乳幼児等は乗員としてカウントせず、大人と同乗可能としてもよい。
【0011】
車両10は、図1に示すように、走行ユニット14を有する。走行ユニット14は、車両10を走行させるためのユニットであり、例えば、走行用機構14aと、センサ群14bと、走行用コントローラ14cと、を有している。走行用機構14aは、車両10を走行させるための機械的作用を発生させる機器であり、例えば、原動機や動力伝達装置、ブレーキ装置、懸架装置、舵取り装置等を含む。また、センサ群14bは、車両10の走行に必要な各種情報をセンシングするための1以上のセンサを含む。かかるセンサ群14bは、例えば、車両10の周辺環境を検知するためのセンサ(例えばカメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等)や、車両10の現在位置を検知するためのセンサ(例えばGPS等)、車両10の走行状態を検知するためのセンサ(例えば加速度センサ、ジャイロセンサ等)を含む。
【0012】
走行用コントローラ14cは、センサ群14bでの検知結果に基づいて走行用機構14aの駆動を制御するもので、物理的には、プロセッサとメモリと通信装置とを有するコンピュータである。この走行用コントローラ14cは、必要に応じて、車外に設けられた管理センタや他の車両との通信も行う。
【0013】
ここで、上述した通り、本例の車両10は、一人乗り用の自動運転車両であり、車両10には、単一の利用者のみが乗車する。そのため、利用者に、何らかの健康上の問題があったとしても、この問題に気付ける人は、車内に存在しないことになる。そこで、本例では、利用者に健康上の問題が生じた場合に、早期にその対応をとれるようにするために、車両10に、さらに、モニタリング装置18と、出力装置20と、救護コントローラ16と、を設けている。
【0014】
モニタリング装置18は、車両10に乗車している利用者の健康状態を監視する。かかるモニタリング装置18は、利用者の健康状態を監視できるのであれば、その構成は、特に限定されない。したがって、モニタリング装置18は、例えば、利用者の顔または体を撮像するカメラを含んでもよい。救護コントローラ16は、カメラで撮像された画像に基づいて、利用者の表情や、吐血、嘔吐、痙攣、震えの有無等を判断してもよい。また、モニタリング装置18は、利用者のバイタルサインを検知するセンサを含んでもよい。かかるセンサとしては、例えば、シートまたはシートベルトに内蔵の心拍数モニタや、体表面に電磁波を送信し、その反射波から脈拍を計測する非接触脈拍計、利用者の胸部の動きから呼吸を計測する呼吸モニタ等が挙げられる。また、モニタリング装置18は、利用者の体表(特に顔表面)の温度を非接触で測定する非接触温度センサ(例えば赤外線サーマルカメラ等)を含んでもよい。さらに、モニタリング装置18は、定期的に、または、不定期に、利用者に刺激を与え、その刺激に対する利用者の反応を取得するものでもよい。刺激としては、例えば、マイクを介して出力される音声や、利用者に対して照射される光、シートを動かすことで生じる振動等が含まれる。いずれにしても、モニタリング装置18は、利用者の健康状態の監視結果を、救護コントローラ16に出力する。
【0015】
出力装置20は、車外に対してメッセージを出力する装置である。かかる出力装置20は、例えば、車外に音を出力するスピーカー、必要に応じて点灯することで周囲の人の注意を引き付ける光源、車外の人が視認可能な位置(例えば車両10の外側面や背面等)に設けられた表示エリアに画像を表示させる画像表示装置、車両10の外部(例えば路面等)に映像を投影する投影装置、の少なくとも一つを含んでもよい。また、出力装置20は、通信装置を有し、通信技術を利用して、車両10から離れた外部機器にメッセージを通知してもよい。この場合、通信対象である外部機器としては、例えば、複数の車両10の配車を管理する管理センタや、利用者が所有する情報端末、他の車両10等が含まれる。また、こうした通信は、携帯電話会社が提供するモバイルデータ通信を利用して行われてもよいし、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を利用して行われてもよいし、専用の通信回線を利用して行われてもよい。
【0016】
救護コントローラ16は、物理的には、メモリとプロセッサとを有したコンピュータである。この救護コントローラ16は、モニタリング装置18での監視結果に基づいて、利用者の救護の要否を判断し、利用者の救護が必要と判断した場合、車外の人に対して救護を求めるメッセージを出力装置20に出力させる。
【0017】
救護の要否は、例えば、モニタリング装置18で検知されたバイタルサイン(心拍数、体温、脈拍数、呼吸数等)、または、カメラで撮像された利用者の撮像画像、または、刺激に対する利用者の反応、または、これらの組み合わせに基づいて、判断してもよい。
【0018】
例えば、バイタルサインの中でも、利用者が意識してコントロールできないバイタルサイン、例えば、心拍数や体温は、利用者の健康状態を比較的、正確に反映する。そこで、救護コントローラ16は、利用者が意識してコントロールできないバイタルサインに基づいて、救護の要否を判断してもよい。例えば、心拍が停止した場合には早急な心臓マッサージが求められるし、体温が過度に低い場合には、低体温症を避けるために、体を温めることが求められる。そこで、救護コントローラ16は、心拍が停止した場合や、体温が過度に低い場合には、即座に、救護が必要と判断してもよい。
【0019】
また、救護コントローラ16は、バイタルサインに基づいて、健康上の問題の発生が疑われる場合には、さらに、別の指標を組み合わせて、救護の要否を判断してもよい。例えば、バイタルサインの中には、利用者が意識してコントロールできるバイタルサイン、例えば、呼吸数などもある。このように意識して出されたバイタルサインの場合、その値に、若干の異常性があったとしても、即座に、救護が必要と判断することは難しい。そこで、例えば、呼吸の停止が検知された場合には、さらに、音声で利用者に問いかけを行い、その問いかけに対する利用者の判断に基づいて、救護の要否を判断してもよい。
【0020】
また、救護コントローラ16は、利用者を撮像した画像から、健康上の問題が疑われる動作(以下「注意動作」)の有無を判断し、利用者の健康状態を判断してもよい。注意動作としては、例えば、嘔吐や吐血、痙攣、震え等が含まれる。救護コントローラ16は、こうした注意動作の有無だけで、救護の要否を判断してもよいし、注意動作の有無と他の指標とを組み合わせて、救護の要否を判断してもよい。例えば、痙攣は、健康上の重大な問題が発生している可能性が高いため、痙攣の発生が認められた場合、救護コントローラ16は、即座に、救護が必要と判断してもよい。ただし、利用者が意識して行う動作と、痙攣動作と、を画像だけで正確に区別することは難しい場合も多い。そのため、撮像画像から痙攣の発生が疑われる場合には、さらに、音声で利用者に対して問いかけを行い、その問いかけに対する反応に基づいて、救護の要否を判断してもよい。また、嘔吐は、それ単独では、救護の緊急性は低い。しかし、アルコール摂取等に起因して、意識喪失している期間中に嘔吐した場合、異物が喉に詰まるおそれがあるため、救護の緊急性が高まる。そこで、救護コントローラ16は、嘔吐の発生が検知された場合には、さらに、利用者の意識の有無を確認し、利用者の意識がない場合にのみ、救護が必要と判断してもよい。
【0021】
また、救護コントローラ16は、利用者に特定の刺激、例えば、音声による呼びかけや、シートを揺らすことで生じる振動、利用者への光の照射等を与えた際の利用者の反応に基づいて救護の要否を判断してもよい。例えば、利用者に呼びかけを行っても反応がない場合、利用者が昏睡している可能性が高いため、救護コントローラ16は、救護が必要と判断してもよい。
【0022】
また、刺激の付与は、利用者の意識レベルを判断するために有用である一方で、車内での利用者の快適性を保つためには、刺激の付与は、極力避けることが求められる。特に、利用者は、車内で睡眠をとる場合もあるが、刺激を付与されると、こうした睡眠が妨げられ、利用者の快適性が損なわれる。そこで、バイタルサインや利用者の動作に基づいて、利用者の意識レベルの著しい低下が疑われる場合にのみ、刺激の付与を行ってもよい。例えば、意識レベルが低下すると、呼吸数や体温が低下しやすい。そこで、呼吸数や体温が、過度に低下した場合にのみ、刺激を付与して、利用者の意識レベルを判別してもよい。また、上述したように、痙攣と利用者の意識的な動きとを画像だけで区別することは難しいため、利用者の撮像画像から痙攣が疑われる場合に、利用者に刺激を付与して、利用者の意識レベルを判別してもよい。
【0023】
モニタリング装置18による監視の結果、利用者の救護が必要と判断した場合、救護コントローラ16は、出力装置20を介して、車外の人に救護を求めるメッセージを出力する。このメッセージは、聴覚的なメッセージでもよいし、視覚的なメッセージでもよい。したがって、メッセージは、音、光、画像、テキスト、および、これらの組み合わせのいずれでもよい。
【0024】
また、メッセージの内容は、単に、救護が必要であることを求めるものでもよいし、必要な救護内容を通知するものでもよい。したがって、例えば、「急病人がいます。助けてください。」というメッセージを、音声で通知したり、映像で表示したりしてもよい。また、別の形態として、救護の手順をインタラクティブに通知してもよい。例えば、最初に、「助けてください」とのメッセージを通知して、救護動作を行う救護者を募り、救護者が確保できれば、その救護者に、利用者の状態確認と、救護の手順動作を順次、指示してもよい。すなわち、「対象者の意識は確認できましたか?」、「対象者の呼吸はありますか?」、「対象者の心拍がありますか?」といった、利用者(救護対象者)の状態を確認する問いかけを順番に救護者に行い、その返答に応じて、必要な救護動作を指示してもよい。例えば、救護者との会話の結果、早急な心臓マッサージが必要と判断した場合、救護コントローラ16は、心臓マッサージの手順を、順番に、通知してもよい。
【0025】
ところで、救護が必要と判断した場合、救護コントローラ16は、車両10を停車したうえで、救護を求めるメッセージを出力する。この車両10の停車は、救護が必要と判断された場合、即座に行ってもよい。また、人が少ない場所では、救護を求めるメッセージを出力しても、救護者が適切に確保できないおそれがある。そこで、救護コントローラ16は、救護が必要と判断した場合には、人が多い場所に移動したうえで、停車し、救護を求めるメッセージを出力してもよい。人が多い場所としては、幹線道路や、駅等の大型施設、コンビニエンスストアの周辺が該当する。救護コントローラ16は、予め、メッセージ出力に適した場所を救護ポイントとして複数、記憶しておき、救護が必要な場合は、最も近い救護ポイントに移動してから、救護を求めるメッセージを出力してもよい。
【0026】
また、別の形態として、情報通信技術を利用して、より多数の人に救護を求めてもよい。例えば、車両10から一定範囲内に位置する人が所有する情報端末(例えばスマートホン)等に、救護を求めるメッセージを通知してもよい。また、別の形態として、車両10から一定範囲内に位置する他の車両に対して、救護を求めるメッセージを通知してもよい。
【0027】
以上の説明から明らかなとおり、本例では、利用者の健康状態をモニタリングし、救護が必要な場合には、救護を求めるメッセージを出力するため、運転手が乗車していない自動運転車両であっても、利用者の健康上の異常に対して迅速に対応できる。
【0028】
次に他の形態について図2を参照して説明する。図2は、他の車形態の車両10の構成を示す図である。この車両10は、さらに、緊急通報装置22を有する点で、図1の車両10と相違する。
【0029】
緊急通報装置22は、消防署または病院に緊急通報を行う装置である。この緊急通報は、電話回線を介して行うのでもよいし、メール等のデータ通信を介して行うのでもよい。消防署に通報する場合には、救急車の呼び出しを求める。また、病院に通報する場合には、救護が必要な救護者の搬送の可否を問い合わせる。
【0030】
かかる車両10では、利用者の救護が必要と判断した場合、周囲へ救護を求めるメッセージの出力前に、または、当該メッセージの出力と並行して、緊急通報を行う。すなわち、救護コントローラ16は、モニタリング装置18による監視の結果、利用者の救護が必要と判断した場合、周囲にメッセージを出力する前に、緊急通報装置22による緊急通報を実行してもよい。そして、緊急通報の結果、救急車が早期に到着する、あるいは、付近の病院に早期に搬送できる場合には、周囲にメッセージを出力することなく、その場での待機または病院への輸送を行う。一方、救急車の到着に時間がかかる、あるいは、受け入れ可能な病院が近くにない場合、救護コントローラ16は、出力装置20を介して、周囲の人へ救護を求めるメッセージを出力してもよい。また、救急車が早期に到着する場合であっても、その到着まで待機期間中、適切な救護を行うために、周囲の人に救護を求めるメッセージを出力してもよい。
【0031】
次に他の形態について図3を参照して説明する。図3は、他の形態の車両10の構成を示す図である。この車両10は、さらに、ユーザDB24を有する点で、図1の車両10と相違する。
【0032】
ユーザDB24は、事前登録された複数の利用者の情報を記録したデータベースである。このユーザDB24には、例えば、事前登録された利用者の識別番号や、属性、決済情報等が記録されている。さらに、ユーザDB24には、利用者の緊急連絡先も記録されている。緊急連絡先は、車両10の乗車中に、利用者に健康上の問題が生じた場合に、その旨を連絡する連絡先である。したがって、例えば、利用者の家族や、利用者が通院している病院等の連絡先が緊急連絡先として登録できる。また、緊急連絡先として、電話番号、メールアドレス、SNSのアドレス等を登録できる。こうした緊急連絡先は、予め、利用者が自身の所有する情報端末を操作して、登録する。
【0033】
また、ユーザDB24には、さらに、利用者の健康上の問題が生じた場合に、車外に通知すべきメッセージの内容が記録されてもよい。例えば、利用者が持病を持っており、当該持病に起因して発作が生じた場合に、救護者がとることが望まれる行動がある場合には、当該行動の内容をメッセージとして記録してもよい。
【0034】
かかる車両10では、利用者の救護が必要と判断した場合、救護コントローラ16は、ユーザDB24を参照し、利用者の事前登録内容に応じた処理を実行する。具体的には、利用者が予め、緊急連絡先を登録していた場合、救護コントローラ16は、当該緊急連絡先に、利用者の状態を連絡してもよい。なお、当然ながら、この緊急連絡先への連絡と並行して、周囲の人に救護を求めるメッセージを出力してもよい。
【0035】
また、緊急連絡先が登録されている場合、車両10が、緊急連絡先に連絡するのではなく、周囲の人に、緊急連絡先への連絡を要請してもよい。例えば、利用者の救護が必要と判断した場合、救護コントローラ16は、周囲の人に対して、救護を求めるメッセージとともに、緊急連絡先への連絡を求めるメッセージ(例えば「090-****-****」に電話してください」等)を出力してもよい。また、緊急時に通知すべきメッセージ内容が登録されている場合、救護コントローラ16は、救護を求めるメッセージに加えて、または、替えて、登録されているメッセージを周囲に出力してもよい。
【0036】
このように、緊急連絡先や緊急時のメッセージ内容を、事前に登録可能とすることで、利用者、特に、健康上の不安を抱えている利用者であっても、より安心して自動運転の車両10を利用できる。
【0037】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも、利用者の健康状態を監視するモニタリング装置18と、車外にメッセージを出力する出力装置20と、監視結果に応じてメッセージを出力させる救護コントローラ16と、を有するのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、一つの車両10が、緊急通報装置22とユーザDB24の双方を備えてもよい。また、上述した説明では、一人乗り車両10としているが、複数人が同時に乗車可能な車両10でもよい。すなわち、複数人が乗車可能な車両10であっても、一人だけしか乗車しない場合がある。かかる場合には、上述した技術に用いて、救護の要否判断や、救護の要請を行えばよい。
【符号の説明】
【0038】
10 車両、14 走行ユニット、14a 走行用機構、14b センサ群、14c 走行用コントローラ、16 救護コントローラ、18 モニタリング装置、20 出力装置、22 緊急通報装置、24 ユーザDB。
図1
図2
図3