(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】信号出力装置
(51)【国際特許分類】
H03K 7/06 20060101AFI20250527BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
H03K7/06 B
H04L27/00 Z
(21)【出願番号】P 2021039647
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 正浩
【審査官】三木 景介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-195917(JP,A)
【文献】特開2009-44292(JP,A)
【文献】特開平7-240763(JP,A)
【文献】特開2008-48321(JP,A)
【文献】特開平9-18523(JP,A)
【文献】特開2000-216648(JP,A)
【文献】特開2000-124842(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167133(WO,A1)
【文献】特開2007-325267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 7/06
H04L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝搬線路に通信信号を出力する信号出力装置であって、
第1周波数を有する第1交流信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2交流信号とのうち一方の交流信号を前記通信信号として生成するモデムと、
前記通信信号として前記第1交流信号が入力される場合と前記第2交流信号が入力される場合とで異なる増幅率で前記通信信号を増幅して前記伝搬線路に出力する増幅回路と
、
制御部と
を備
え、
前記増幅回路は、前記通信信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、前記通信信号を第2増幅率で増幅する第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力及び前記第2増幅回路の出力のうち一方の出力を選択する選択回路とを有し、
前記制御部は、前記通信信号の周波数の検出結果に基づいて、前記選択回路が前記第1増幅回路の出力及び前記第2増幅回路の出力のうちどちらの出力を選択するか制御する、
信号出力装置。
【請求項2】
伝搬線路に通信信号を出力する信号出力装置であって、
第1周波数を有する第1交流信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2交流信号とのうち一方の交流信号を前記通信信号として生成するモデムと、
前記通信信号として前記第1交流信号が入力される場合と前記第2交流信号が入力される場合とで異なる増幅率で前記通信信号を増幅して前記伝搬線路に出力する増幅回路と
、
制御部と
を備え
、
前記増幅回路は、前記通信信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、前記通信信号を第2増幅率で増幅する第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力及び前記第2増幅回路の出力のうち一方の出力を選択する選択回路とを有し、
前記制御部は、前記モデムから取得した、前記通信信号が前記第1交流信号及び前記第2交流信号のうちどちらの交流信号であるかを特定する情報に基づいて、前記選択回路が前記第1増幅回路の出力及び前記第2増幅回路の出力のうちどちらの出力を選択するか制御する、
信号出力装置。
【請求項3】
伝搬線路に通信信号を出力する信号出力装置であって、
第1周波数を有する第1交流信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2交流信号とのうち一方の交流信号を前記通信信号として生成するモデムと、
前記通信信号として前記第1交流信号が入力される場合と前記第2交流信号が入力される場合とで異なる増幅率で前記通信信号を増幅して前記伝搬線路に出力する増幅回路と
、
制御部と
を備え
、
前記増幅回路は、前記通信信号の増幅率を変更可能に構成される増幅率変更部を有し、
前記制御部は、前記通信信号の周波数の検出結果に基づいて、前記増幅率変更部を制御して前記通信信号の増幅率を変更する、
信号出力装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記伝搬線路の長さを特定する通信距離情報に更に基づいて、前記増幅率変更部を制御して前記通信信号の増幅率を変更する、請求項
3に記載の信号出力装置。
【請求項5】
前記増幅回路は、前記伝搬線路における前記第1交流信号の減衰率が前記第2交流信号の減衰率よりも小さい場合、前記通信信号が前記第1交流信号である場合の増幅率を、前記通信信号が前記第2交流信号である場合の増幅率よりも小さくする、請求項1
から4までのいずれか一項に記載の信号出力装置。
【請求項6】
前記増幅回路は、前記第2周波数が前記第1周波数より大きい場合、前記通信信号が前記第2交流信号である場合の増幅率を、前記通信信号が前記第1交流信号である場合の増幅率よりも大きくする、請求項1
から5までのいずれか一項に記載の信号出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4~20mAの直流信号に、デジタル信号を1200Hzと2200Hzとの周波数信号に変換して表した交流信号を重畳して生成されるHART通信信号で通信する信号出力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信信号は、伝搬線路を伝搬する間に減衰する。異なる周波数を有する通信信号は、それぞれ異なる減衰率で減衰する。伝搬線路が長くなるほど、異なる周波数を有する通信信号の減衰率の差が大きくなる。減衰率の差の拡大によって振幅制御が難しくなる。その結果、通信の利便性が低下し得る。通信の利便性の向上が求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、通信の利便性を向上できる信号出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る信号出力装置は、伝搬線路に通信信号を出力する。前記信号出力装置は、第1周波数を有する第1交流信号と第2周波数を有する第2交流信号とのうち一方の交流信号を前記通信信号として生成するモデムと、前記伝搬線路における前記通信信号の減衰率に基づいて前記通信信号を増幅する増幅回路とを備える。このようにすることで、通信信号が第1交流信号及び第2交流信号のどちらの交流信号であっても、伝搬線路を介して負荷に受信されるときの振幅が所定値に近づけられ得る。また、伝搬線路の長さの自由度が向上する。また、通信信号のノイズ耐性が向上する。その結果、通信の利便性が向上する。
【0007】
一実施形態に係る信号出力装置において、前記増幅回路は、前記伝搬線路における前記第1交流信号の減衰率が前記第2交流信号の減衰率よりも小さい場合、前記通信信号が前記第1交流信号である場合の増幅率を、前記通信信号が前記第2交流信号である場合の増幅率よりも小さくしてよい。このようにすることで、通信信号が第1交流信号及び第2交流信号のどちらの交流信号であっても、伝搬線路を介して負荷に受信されるときの振幅が所定値に近づけられ得る。また、伝搬線路の長さの自由度が向上する。また、通信信号のノイズ耐性が向上する。その結果、通信の利便性が向上する。
【0008】
一実施形態に係る信号出力装置において、前記増幅回路は、前記第2周波数が前記第1周波数より大きい場合、前記通信信号が前記第2交流信号である場合の増幅率を、前記通信信号が前記第1交流信号である場合の増幅率よりも大きくしてよい。このようにすることで、通信信号が第1交流信号及び第2交流信号のどちらの交流信号であっても、伝搬線路を介して負荷に受信されるときの振幅が所定値に近づけられ得る。また、伝搬線路の長さの自由度が向上する。また、通信信号のノイズ耐性が向上する。その結果、通信の利便性が向上する。
【0009】
一実施形態に係る信号出力装置は、制御部を更に備えてよい。前記増幅回路は、前記通信信号を第1増幅率で増幅する第1増幅回路と、前記通信信号を第2増幅率で増幅する第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力及び前記第2増幅回路の出力のうち一方の出力を選択する選択回路とを有してよい。前記制御部は、前記伝搬線路における前記通信信号の減衰率に基づいて、前記選択回路が前記第1増幅回路の出力及び前記第2増幅回路の出力のうちどちらの出力を選択するか制御してよい。このようにすることで、第1交流信号及び第2交流信号それぞれの増幅率を個別に制御することが容易になる。その結果、通信の利便性が向上する。
【0010】
一実施形態に係る信号出力装置において、前記制御部は、前記モデムから取得した、前記通信信号が前記第1交流信号及び前記第2交流信号のうちどちらの交流信号であるかを特定する情報に基づいて、前記選択回路の選択を制御してよい。このようにすることで、第1交流信号及び第2交流信号それぞれの増幅率を個別に制御することが容易になる。その結果、通信の利便性が向上する。
【0011】
一実施形態に係る信号出力装置において、前記制御部は、前記通信信号の周波数の検出結果に基づいて、前記選択回路の選択を制御してよい。このようにすることで、第1交流信号及び第2交流信号それぞれの増幅率を個別に制御することが容易になる。その結果、通信の利便性が向上する。
【0012】
一実施形態に係る信号出力装置において、前記増幅回路は、前記通信信号の増幅率を変更可能に構成される増幅率変更部を有してよい。前記制御部は、前記伝搬線路の長さを特定する通信距離情報に更に基づいて、前記増幅率変更部を制御してよい。このようにすることで、伝搬線路の長さが変更された場合でも、伝搬線路を介して負荷に受信されるときの振幅が所定値に近づけられ得る。その結果、伝搬線路の長さの自由度が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る信号出力装置によれば、通信の利便性が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較例に係る通信システムを示す回路図である。
【
図2】一実施形態に係る通信システムの構成例を示す回路図である。
【
図3】信号出力装置が周波数検出部を更に備える構成例を示す回路図である。
【
図4】一実施形態に係る信号出力方法の手順例を示すフローチャートである。
【
図5】他の実施形態に係る通信システムの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示に係る実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0016】
(比較例)
図1に示されるように、比較例に係る通信システム9は、信号出力装置90と、伝搬線路95とを備える。信号出力装置90は、モデム91と、増幅回路92と、コンデンサ93とを備える。伝搬線路95は、直列に接続されている抵抗951と、接地点97との間に接続されているコンデンサ952とを含む等価回路で表されている。伝搬線路95は、信号出力装置90に接続されている入力端子953と、負荷96に接続されている出力端子954とを備える。
【0017】
信号出力装置90は、モデム91で交流の通信信号を生成し、増幅回路92で増幅して出力する。また、増幅された交流の通信信号は、コンデンサ93を介して伝搬線路95の入力端子953に入力され、伝搬線路95を伝搬する。交流の通信信号は、伝搬線路95の出力端子954から出力され、伝搬線路95と接地点97との間に接続されている負荷96に送信される。
【0018】
モデム91は、第1周波数を有する第1交流信号又は第2周波数を有する第2交流信号の一方を交流の通信信号として生成する。伝搬線路95を伝搬する交流信号は、交流信号の周波数に基づいて定まる減衰率で減衰する。言い換えれば、第1交流信号と第2交流信号とは、伝搬線路95を伝搬する間に、互いに異なる減衰率で減衰する。本比較例において、第1交流信号の減衰率は、第2交流信号の減衰率より小さいとする。
【0019】
ここで、増幅回路92が増幅して出力する交流信号の振幅の上限が定められるとする。具体的に、モデム91が交流の通信信号としてHART(Highway Addressable Remote Tranducer)通信の信号を出力する場合、HART通信規格に基づいて、増幅回路92が増幅して出力するHART信号の振幅の上限が定められる。
【0020】
増幅回路92が増幅して出力する交流の通信信号の振幅の上限が定められる場合、伝搬線路95を伝搬する通信信号が大きい減衰率で減衰するほど、負荷96で受信される通信信号の振幅が小さくなる。通信信号の振幅の減少は、通信信号のS/N比を低下させる。つまり、通信信号の振幅の減少は、通信信号のノイズ耐性を低下させる。また、伝搬線路95が長いほど減衰率の差が大きくなる。このことからすると、大きい減衰率で減衰する第2交流信号の振幅がより一層小さくなり得る。その結果、通信信号による通信可能距離が限定される。
【0021】
<小括>
以上述べてきたことからすると、比較例に係る通信システム9において、異なる周波数を有する交流信号を1つの伝搬線路95で伝搬させる場合に、交流信号を負荷96に受信させるときの振幅を制御することが難しい。また、伝搬線路95が振幅に影響を大きく及ぼし得る。その結果、通信の利便性が低下し得る。
【0022】
そこで、本開示は、通信の利便性を向上できる信号出力装置10(
図2等参照)を説明する。
【0023】
(本開示の一実施形態)
図2に示されるように、一実施形態に係る通信システム1は、信号出力装置10と、伝搬線路30とを備える。信号出力装置10は、モデム11と、増幅回路20と、コンデンサ16とを備える。伝搬線路30は、直列に接続されている抵抗31と、接地点80との間に接続されているコンデンサ32とを含む等価回路で表されている。伝搬線路30は、信号出力装置10に接続されている入力端子33と、負荷40に接続されている出力端子34とを備える。
【0024】
信号出力装置10は、モデム11で交流の通信信号を生成する。
【0025】
本実施形態において、モデム11は、交流の通信信号としてHART通信信号を生成する。モデム11は、この例に限られず、種々の交流信号を生成してよい。
【0026】
また、モデム11は、第1周波数を有する第1交流信号と第2周波数を有する第2交流信号とのうち一方の交流信号を生成して出力する。第1周波数は、第2周波数より低いとする。本実施形態において、モデム11は、交流信号としてHART通信信号を生成する。したがって、第1周波数及び第2周波数は、HART通信規格に基づいて定まる。具体的に、第1周波数及び第2周波数は、それぞれ1.2kHz及び2.2kHzである。
【0027】
信号出力装置10は、モデム11で生成した交流の通信信号を増幅回路20で増幅する。
【0028】
増幅された交流の通信信号は、コンデンサ16を介して伝搬線路30の入力端子33に入力され、伝搬線路30を伝搬して出力端子34から出力され、負荷40に送信される。つまり、負荷40は、伝搬線路30を伝搬してきた交流信号を通信信号として受信する。交流の通信信号がHART通信信号である場合、負荷40は、受信したHART通信信号で特定される情報を取得する。
【0029】
<伝搬線路30における減衰率に基づく増幅>
交流信号は、伝搬線路30を伝搬する間に減衰する。伝搬線路30の単位長さ当たりの交流信号の減衰率は、伝搬線路30の回路特性と交流信号の周波数とに基づいて定まる。伝搬線路30が長いほど交流信号の減衰率は高くなる。つまり、伝搬線路30が長いほど負荷40が受信する交流信号の振幅が小さくなる。
【0030】
信号出力装置10の増幅回路20は、伝搬線路30における交流信号の減衰率に基づいて通信信号を増幅する。具体的に、増幅回路20は、負荷40が受信する交流信号の振幅を所定値に制御するように、交流信号の増幅率を伝搬線路30における減衰率に基づいて決定する。振幅の制御の目標となる所定値は、通信信号を用いた通信の規格に基づく、負荷40が受信する交流信号の振幅の上限、又は、上限より小さい値であるとする。
【0031】
上述したように、伝搬線路30における交流信号の減衰率は、交流信号の周波数に基づいて定まる。本実施形態において、モデム11は、異なる周波数を有する第1交流信号及び第2交流信号のうち一方の交流信号を生成して出力する。同じ伝搬線路30を伝搬する第1交流信号及び第2交流信号それぞれの減衰率の差は、第1交流信号及び第2交流信号それぞれの周波数の違いに基づいて生じる。
【0032】
増幅回路20は、通信信号として第1交流信号が生成される場合、伝搬線路30における第1交流信号の減衰率に基づいて第1交流信号を増幅する。増幅回路20は、通信信号として第2交流信号が生成される場合、伝搬線路30における第2交流信号の減衰率に基づいて第2交流信号を増幅する。つまり、増幅回路20は、伝搬線路30における交流信号の減衰率に基づいて通信信号を増幅する。
【0033】
本実施形態において、伝搬線路30における第1交流信号の減衰率は、第2交流信号の減衰率より小さいとする。つまり、同じ振幅を有する第1交流信号及び第2交流信号が伝搬線路30に入力された場合、負荷40が受信するときの第1交流信号の振幅は、第2交流信号の振幅よりも大きくなる。したがって、増幅回路20は、第1交流信号の増幅率を第2交流信号の増幅率よりも小さくすることによって、負荷40が受信するときの第1交流信号の振幅と、第2交流信号の振幅との差を小さくできる。
【0034】
本実施形態において、第1交流信号の第1周波数は、第2交流信号の第2周波数よりも低いとする。また、伝搬線路30を伝搬する交流信号の周波数が高いほど、伝搬線路30における交流信号の減衰率が大きいとする。この場合、増幅回路20は、低い周波数を有する交流信号の増幅率を、高い周波数を有する交流信号の増幅率よりも小さくする。具体的に、増幅回路20は、第1交流信号の増幅率を第2交流信号の増幅率よりも小さくする。このようにすることで、負荷40が受信するときの第1交流信号の振幅と、第2交流信号の振幅との差を小さくできる。
【0035】
<増幅回路20の構成例>
増幅回路20は、
図2に示されるように、第1増幅回路21と、第2増幅回路22と、選択回路23とを備えてよい。第1増幅回路21は、モデム11で通信信号として第1交流信号が生成された場合、モデム11から出力された第1交流信号を、伝搬線路30における第1交流信号の減衰率に基づいて増幅して選択回路23に出力する。第2増幅回路22は、モデム11で通信信号として第2交流信号が生成された場合、モデム11から出力された第2交流信号を、伝搬線路30における第2交流信号の減衰率に基づいて増幅して選択回路23に出力する。
【0036】
信号出力装置10は、制御部15を更に備えてよい。制御部15は、増幅回路20の増幅率を制御可能に構成される。制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。制御部15は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。制御部15は、記憶部を備えてもよい。記憶部は、制御部15の動作に用いられる各種情報、又は、制御部15の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、制御部15のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、制御部15に含まれてもよいし、制御部15と別体として構成されてもよい。
【0037】
図2に示される構成例において、制御部15は、モデム11が通信信号として第1交流信号又は第2交流信号のどちらの交流信号を生成したかを特定する情報をモデム11から取得する。モデム11が通信信号として生成した交流信号を特定する情報は、交流信号の周波数に関する情報を含んでよく、周波数情報とも称される。制御部15は、モデム11から取得した周波数情報に基づいて選択回路23の制御情報を生成して選択回路23に出力する。具体的に、制御部15は、通信信号として第1交流信号が生成されている情報をモデム11から取得した場合、選択回路23に第1増幅回路21の出力を選択させるように制御情報を生成する。制御部15は、通信信号として第2交流信号が生成されている情報をモデム11から取得した場合、選択回路23に第2増幅回路22の出力を選択させるように制御情報を生成する。
【0038】
信号出力装置10は、
図3に例示されるように周波数検出部17を更に備えてもよい。周波数検出部17は、モデム11から通信信号として出力された交流信号の周波数を検出するように構成される。周波数検出部17は、周波数の検出結果を制御部15に出力する。制御部15は、周波数の検出結果を取得する。制御部15は、周波数の検出結果を周波数情報として取得してもよい。制御部15は、周波数検出部17の検出結果(周波数情報)に基づいて、モデム11が通信信号として第1交流信号又は第2交流信号のどちらの交流信号を生成したかを特定する。制御部15は、通信信号として第1交流信号が生成されていると特定した場合、選択回路23に第1増幅回路21の出力を選択させるように制御情報を生成する。制御部15は、通信信号として第2交流信号が生成されていると特定した場合、選択回路23に第2増幅回路22の出力を選択させるように制御情報を生成する。つまり、制御部15は、周波数検出部17の検出結果に基づいて選択回路23の制御情報を生成してよい。
【0039】
図2及び
図3に例示される信号出力装置10は、第1増幅回路21の出力及び第2増幅回路22の出力のうち一方の出力を、制御部15からの制御情報に基づいて選択回路23で選択して出力する。このようにすることで、増幅回路20は、第1交流信号と第2交流信号とを個別に増幅し、第1交流信号の増幅率と第2交流信号の増幅率とを異ならせることができる。その結果、増幅回路20は、第1交流信号及び第2交流信号それぞれを、伝搬線路30における減衰率に基づいて増幅できる。つまり、増幅回路20は、異なる周波数を有する交流信号の伝搬線路30における減衰率に基づいて、各交流信号の増幅率を容易に制御できる。
【0040】
<信号出力方法の手順例>
信号出力装置10は、
図4に例示されるフローチャートの手順を含む信号出力方法を実行してもよい。信号出力方法は、制御部15を構成するプロセッサに実行させる信号出力プログラムとして実現されてもよい。信号出力プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0041】
制御部15は、周波数情報を取得する(ステップS1)。制御部15は、モデム11が通信信号として生成した交流信号を特定する情報を、周波数情報としてモデム11から取得してよい。制御部15は、周波数検出部17の検出結果を、周波数情報として周波数検出部17から取得してよい。
【0042】
制御部15は、周波数情報に基づいてモデム11で通信信号として第1交流信号が生成されるか判定する(ステップS2)。制御部15は、通信信号として第1交流信号が生成される場合(ステップS2:YES)、増幅回路20の出力として、第1増幅回路21の出力を選択する(ステップS3)。具体的に、制御部15は、選択回路23が第1増幅回路21の出力を選択するように制御情報を生成して選択回路23に出力する。制御部15は、通信信号として第1交流信号が生成されない場合(ステップS2:NO)、通信信号として第2交流信号が生成されると判定し、増幅回路20の出力として、第2増幅回路22の出力を選択する(ステップS4)。具体的に、制御部15は、選択回路23が第2増幅回路22の出力を選択するように制御情報を生成して選択回路23に出力する。制御部15は、ステップS3又はS4の手順の実行後、
図4のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0043】
<小括>
以上述べてきたように、本実施形態に係る信号出力装置10及び信号出力方法によれば、伝搬線路30において小さい減衰率で減衰する第1交流信号、及び、伝搬線路30において大きい減衰率で減衰する第2交流信号それぞれが異なる増幅率で増幅される。具体的には、増幅回路20は、伝搬線路30において小さい減衰率で減衰する第1交流信号の増幅率を、伝搬線路30において大きい減衰率で減衰する第2交流信号の増幅率よりも小さくできる。このようにすることで、第1交流信号及び第2交流信号が負荷40に受信されるときのそれぞれの振幅の差が小さくされ得る。その結果、通信信号として第1交流信号又は第2交流信号のどちらが生成される場合でも、負荷40が受信する交流信号の振幅が所定値に近づけられ得る。
【0044】
ここで、増幅回路20が出力する交流の通信信号の振幅の上限が定められるとする。具体的に、モデム11が通信信号としてHART通信の信号を出力する場合、HART通信規格に基づいて、増幅回路20が出力するHART信号の振幅の上限が定められるとする。
【0045】
本実施形態に係る信号出力装置10は、第1交流信号及び第2交流信号が増幅回路20から出力されるときの振幅の上限が定められても、負荷40に受信されるときのそれぞれの振幅の差を小さくできる。具体的に、信号出力装置10は、伝搬線路30において大きい減衰率で減衰する第2交流信号が増幅回路20から出力されるときの振幅を上限又は上限に近い値に設定する。一方で、信号出力装置10は、伝搬線路30において小さい減衰率で減衰する第1交流信号が増幅回路20から出力されるときの振幅を上限よりも小さい値にする。このようにすることによって、第1交流信号及び第2交流信号が負荷40に受信されるときのそれぞれ振幅の差が小さくなる。第1交流信号及び第2交流信号が負荷40に受信されるときのそれぞれ振幅の差が小さくなることによって、負荷40における信号処理が容易になる。例えば、負荷40において第1交流信号及び第2交流信号が同じ増幅率で増幅されてよい。
【0046】
また、本実施形態に係る信号出力装置10は、伝搬線路30が長くなることによって伝搬線路30における減衰率が大きくなった場合でも、増幅回路20の増幅率を変更することによって、第1交流信号及び第2交流信号が負荷40に受信されるときのそれぞれの振幅の差を小さくできる。したがって、伝搬線路30が長くなった場合でも第1交流信号及び第2交流信号が負荷40に受信されるときのそれぞれの振幅の差が小さくされ得る。その結果、通信信号による通信可能距離が長くされ得る。つまり、伝搬線路30の延長が可能になる。
【0047】
また、伝搬線路30が振幅に及ぼす影響が低減されるともいえる。また、伝搬線路30の設計の自由度が向上するともいえる。その結果、通信システム1における通信の利便性が向上する。
【0048】
(他の実施形態)
<増幅率変更部28を有する増幅回路20>
他の実施形態に係る信号出力装置10は、
図5に示されるように、モデム11と、増幅率変更部28を有する増幅回路20と、制御部15と、コンデンサ16とを備える。モデム11は、交流の通信信号を生成する。増幅率変更部28は、増幅率を変更可能に構成される。増幅回路20は、モデム11が生成した交流の通信信号を増幅率変更部28によって設定される増幅率で増幅する。また、増幅回路20で増幅された交流の通信信号は、コンデンサ16を介して伝搬線路30に入力され、伝搬線路30を伝搬して負荷40で受信される。
【0049】
増幅率変更部28は、例えば、増幅率を定める電気抵抗として可変抵抗を備えてよい。増幅率変更部28は、可変抵抗の抵抗値を変更することによって増幅回路20の増幅率を変更してよい。
【0050】
制御部15は、周波数情報に基づいてモデム11が通信信号として生成した交流信号を特定する。制御部15は、モデム11が通信信号として第1交流信号を生成している場合の増幅回路20の増幅率と、モデム11が通信信号として第2交流信号を生成している場合の増幅回路20の増幅率とを異ならせるように、増幅率変更部28を制御する。例えば、制御部15は、通信信号として第1交流信号が生成されている場合に、増幅回路20の増幅率が第1増幅率になるように増幅率変更部28を制御してよい。制御部15は、通信信号として第2交流信号が生成されている場合に、増幅回路20の増幅率が第2増幅率になるように増幅率変更部28を制御してよい。
【0051】
本実施形態において、伝搬線路30の長さが変更されることによって伝搬線路30における第1交流信号及び第2交流信号の減衰率が変化した場合でも、伝搬線路30の長さを特定する情報に更に基づいて増幅率を変更することができる。伝搬線路30の長さを特定する情報は、通信距離情報とも称される。具体的に、制御部15は、周波数情報と通信距離情報とに基づいて、増幅回路20の増幅率を制御してよい。このようにすることで、通信システム1において、伝搬線路30の長さが変更された場合でも、負荷40が受信するときの第1交流信号及び第2交流信号それぞれの振幅の差が小さくされ得る。したがって、伝搬線路30の設計の自由度が高まる。その結果、通信システム1の通信の利便性が向上する。
【0052】
<通信の双方向性>
本実施形態において、通信信号が負荷40に対して送信される構成が説明された。他の実施形態として、モデム11及び増幅回路20が伝搬線路30の負荷40の側に位置することによって、伝搬線路30の出力端子34から入力端子33に向けて通信信号が送信されてもよい。この場合においても、伝搬線路30における通信信号の減衰率に基づいて、増幅回路20における通信信号の増幅率が決定されてよい。増幅回路20が負荷40の側に設けられる場合、増幅回路20は、通信信号が伝搬線路30を出力端子34から入力端子33に向けて伝搬する場合の減衰率に基づいて、通信信号の増幅率を決定してよい。双方向の通信が可能である場合、入力端子33は、信号を入力するだけでなく出力してもよい。出力端子34は、信号を出力するだけでなく入力してもよい。つまり、入力端子33及び出力端子34の名称は、端子を区別するための便宜的なものである。
【0053】
<直流信号の重畳>
上述してきた実施形態において、信号出力装置10は、モデム11で交流の通信信号を生成する。信号出力装置10は、交流の通信信号を増幅回路20で増幅し、コンデンサ16を通過させた後で、通信信号に直流信号を重畳する回路を更に備えてもよい。直流信号は、例えば外部の測定装置で測定した結果を負荷40に通知するために用いる計装用標準信号であってよい。計装用標準信号は、例えば、4mA以上20mA以下の大きさの電流を含む。つまり、計装用標準信号は、所定範囲内で電流の大きさが制御された直流の電流信号である。外部の測定装置は、例えばpH測定装置等を含んでよいし、他の種々の測定装置を含んでもよい。測定装置の測定結果を計装用標準信号に変換する構成は、変換器又は伝送器等とも称される。つまり、信号出力装置10は、変換器又は伝送器等で用いられ得る。信号出力装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)又はDCS(Distributed Control System)等で用いられてもよい。信号出力装置10が交流の通信信号に直流信号を重畳して負荷40に出力することによって、複数の情報が送信され得る。その結果、通信システム1の通信の利便性が向上する。
【0054】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 通信システム
10 信号出力装置(11:モデム、15:制御部、16:コンデンサ、17:周波数検出部)
20 増幅回路(21:第1増幅回路、22:第2増幅回路、23:選択回路、28:増幅率変更部)
30 伝搬線路(31:抵抗、32:コンデンサ、33:入力端子、34:出力端子)
40 負荷
80 接地点