(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20250527BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B32B27/36
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2021043086
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白石 海由
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄二
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼▲瀬▼ 慎
(72)【発明者】
【氏名】宇都 孝行
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198635(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/121913(WO,A1)
【文献】特開2019-139228(JP,A)
【文献】特開2012-081748(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる
2種類の熱可塑性樹脂
層(層A、層B)が交互に50層以上積層されてなる積層フィルムであって、前記積層フィルムが芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含
み、前記芳香族ジオール単位がパラキシレングリコール単位またはBPEFを含み、
前記層Aを構成する熱可塑性樹脂が、芳香族ジカルボン酸単位を含むポリエチレンテレフタレートであり、
前記層Bを構成する熱可塑性樹脂が、芳香族ジカルボン酸単位及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含み、芳香族ジオール単位としてパラキシレングリコールまたはBPEFを含むポリエステル樹脂であることを特徴とする、積層フィルム
。
【請求項2】
100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量が10%以下である、請求項
1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
100℃で250時間処理したときの色味の変化量が6.0以下である、請求項1
または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが2.0%未満である、請求項1~
3のいずれかに記載の積層フィルム
。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂を構成する全ジオール単位中にパラキシレングリコール単位を25mol%以上含んでなる、請求項1~
4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
フィルム面に垂直に入射する光の透過率が50%以上であり、フィルム面の法線に対して20°、40°、60°の角度で入射したときのそれぞれのP波の反射率(%)をR20、R40、R60とした場合にR20≦R40<R60の関係を満足し、かつR60が30%以上である、請求項1~
5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の積層フィルムを備える、画像表示部材。
【請求項8】
請求項
7に記載の画像表示部材、及び前記画像表示部材の表示面の法線に対して20°以上の角度をもって光を照射する光源を備える、画像表示装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の画像表示装置を備える、ヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示部材に好適に用いることができる積層フィルム、画像表示部材、画像表示装置、及びヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の視野に直接情報を映し出す手段として、ヘッドアップディスプレイ(HUD)が知られている。これは、例えば自動車等の車両の運転中に、車両内で計器類の速度などの情報を直接フロントガラス等に虚像として映し出すものである。そのため、搭乗者が視野を変化させることなく車両を運転することができ、事故防止につながる特徴を持つ。ヘッドアップディスプレイにおいては通常、小型の液晶プロジェクターなどの投影機から放たれた光がハーフミラー材を含んだ透明基材からなる表示部に到達すると、光の一部が表示部を透過し、透過しなかった光が表示部で反射される。そして搭乗者は、表示部に表示された情報を取得するとともに、表示部を透かして外の風景などの外部情報を同時に取得することができる。
【0003】
同様な技術を用いた表示装置として、AR(Augmented Reality)に用いられるヘッドマウントディスプレイ(HMD)がある。AR用途に用いられるヘッドマウントディスプレイは、グラス型の表示装置を頭部に装着することで、グラスを通して外部からの情報を視認するとともに、側部に設けられた投影機からの情報を伝達し、グラス上に表示するものである。
【0004】
このような表示装置においては、投影情報と外部情報の視認性の観点から、例えば液晶プロジェクターから照射される偏光のみを反射する偏光反射特性を備えたフィルムを用いたヘッドアップディスプレイが示されている(特許文献1、2)。しかしながら、風景など外部からの光は無偏光であることが多いため、偏光反射特性を備えたフィルムを用いた場合には正面方向の視認性が低下する課題があった。また、上記課題を解決する方法として、例えば特許文献3、4では正面方向の透過性と斜め方向から投影される情報の表示性を両立したフィルムおよびそれを用いたHUD、HMDが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-512622号公報
【文献】特開2017-206012号公報
【文献】国際公開1997/36195号公報
【文献】国際公開2019/198635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~4において開示されたフィルムを車載用途にて使用する場合、高温環境に長期間フィルムがさらされることでフィルムの反射性能が悪化する懸念があり、車載用途への使用が不適という課題があった。本発明は、当該課題を解決し、高温環境下においても長期間にわたって反射性能を維持することが可能な積層フィルムを提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち、本発明の積層フィルムは、異なる複数の熱可塑性樹脂が交互に50層以上積層されてなる積層フィルムであって、前記積層フィルムが芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むことを特徴とする、積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車載用途のような長期間高温にさらされる環境下で使用される場合でも、高い反射性能を維持することが可能な積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然にあり得る。また、説明を簡略化する目的で一部の説明は、本発明の好ましい態様の一つである、異なる2種の熱可塑性樹脂層が交互に積層された構成を有する積層フィルムを例にとり説明するが、3種以上の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、同様に理解されるべきものである。
【0010】
本発明の積層フィルムは、異なる複数の熱可塑性樹脂が交互に50層以上積層されてなる必要がある。ここでいう「異なる複数の熱可塑性樹脂」とは、熱可塑性樹脂が複数存在し、かつその構成成分の少なくとも一部が互いに異なることを指す。構成成分が異なる熱可塑性樹脂を積層することによって、積層フィルムとしたときに屈折率等の光学的性質に差異を生じさせることができる。
【0011】
ここでいう交互に積層されているとは、異なる熱可塑性樹脂が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいう。例えば熱可塑性樹脂Aを主成分とする層(層A)、および熱可塑性樹脂Bを主成分とする層(層B)がある場合、A(BA)n(nは自然数)のように順に積層されたものである。層A、層Bに加えて熱可塑性樹脂Cを主成分とする層(層C)がある場合には、その配列は特に限定されるものではないが、その一例はC(BA)nCやC(ABC)n、C(ACBC)nのように一定の規則性をもって順に積層されたものである。なお、「熱可塑性樹脂Aを主成分とする層」とは、層を構成する全成分中、熱可塑性樹脂Aを70質量%以上100質量%以下含む層をいい、以下、「熱可塑性樹脂Bを主成分とする層」、「熱可塑性樹脂Cを主成分とする層」についても同様に解釈することができる。
【0012】
このように屈折率等の光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係より設計した波長の光を反射させる干渉反射を発現させることが可能となる。
【0013】
積層する層数が49層以下の場合には、所望する帯域において高い反射率を得られない。また、前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになるため、層数を増やすことで所望する帯域の光を反射する積層フィルムが得られるようになる。上記観点から、積層フィルムの層数は好ましくは200層以上であり、より好ましくは400層以上であり、特に好ましくは800層以上である。また、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じる。そのため、現実的には10000層程度が実用範囲となる。
【0014】
本発明の積層フィルムは、フィルム面に垂直に(フィルム面の法線に対して0°の角度を意味する。)入射する光の透過率が50%以上であることが好ましい。ここでの垂直に入射する光の透過率が50%以上であるとは、具体的には波長450~650nmにおけるフィルムの平均透過率が50%以上であることを示す。このように波長450~650nmという可視光線領域の光の透過率が高いことにより、HUDやHMD用の表示基材として組み込んだ際にも風景などの外部からの情報に対して優れた透過性を示すようにできる。上記観点から、当該透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。透過率が85%以上であれば、通常のガラス、メガネ、アクリル板といった透明部材同様の透明性であることから、使用者に何ら負担を掛けることなく使用可能なものとなる。当該透過率の上限に特に制限はないが、実現可能性の観点から99%となる。なお、当該透過率は、分光光度計で各波長における透過率を測定し、得られた値より平均値を求めることにより算出することができる。(詳細な測定条件は実施例に示す。)。
【0015】
このような積層フィルムを得るためには、最終製品として、交互に積層する2つの熱可塑性樹脂層において、層間のフィルム面に平行な方向の屈折率差を小さくすることで達成される。例えば、フィルム面に平行な方向の屈折率差が0.06以下であれば透過率を50%以上に、0.04以下であれば透過率を70%以上に、屈折率差が0.02以下であれば透過率を80%以上にすることが容易となる。なお、「フィルム面に平行な方向の屈折率差」とは、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層の面内屈折率の差(層A、層Bを交互に積層した場合は、層Aと層Bの面内屈折率の差)をいう。各屈折率は、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いて測定することができる。
【0016】
本発明の積層フィルムは、フィルム面の法線に対して20°、40°、60°の角度で入射したときのそれぞれのP波の反射率(%)をR20、R40、R60とした場合に、R20≦R40<R60の関係を満足することが好ましい。ここでいう反射率とは、波長450~650nmの平均反射率とする。ガラスや透明フィルムなどの一般的な透明基盤の場合、フィルム面の法線に対して20°から徐々に入射角度を大きくするに従って偏光の一つであるP波の反射率は低下し、ブリュースター角と呼ばれる角度で反射率は0%となる。したがって、ブリュースター角近傍の入射角度から透明基材に情報を投影した場合、反射率の低さ故に情報(画像)の表示性に乏しくなる。そこで、フィルム面の法線に対して20°、40°、60°の角度で入射したときのそれぞれのP波の反射率をR20、R40、R60とした場合にR20≦R40<R60の関係を満足する場合、ブリュースター角に相当する角度を備えないため、フィルム面に対して斜め方向から情報を投影した際にも、より鮮明に情報を表示することが可能となる。なお、R20、R40、R60は、入射角を調整した上で、分光光度計により各波長における反射率を測定し、得られた値より平均値を求めることにより算出することができる(詳細な測定条件は実施例に示す。)。
【0017】
また、本発明の積層フィルムは、R60が30%以上であることも好ましい。60°入射におけるP波の反射率が30%以上であれば、特にHUDのように側面から情報を投影する方式の表示装置において、より高鮮明に情報を表示することが可能となる。当該観点からより好ましくは、60°入射における反射率が40%以上であり、50%以上であるとさらに好ましい。このような積層フィルムを得る方法としては、例えば、2つの熱可塑性樹脂の間のフィルム面に垂直な方向の屈折率差を大きくする方法、層数を増やす方法を採用することができる(層A、層Bを交互に積層した場合は、層Aと層Bの面直屈折率の差をいう。)。例えば層数が800に到達している場合であれば、当該屈折率差が0.08以上であれば反射率を30%以上に、屈折率差が0.12以上であれば反射率を50%以上とすることが容易となる。
【0018】
本発明の積層フィルムは、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量が10%以下であることが好ましい。ここで、「100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量」とは、積層フィルムの少なくとも一方の面に対して入射角60°でP偏光を照射した場合の、波長域450nm~650nmにおける各波長の透過率の平均値と、同一の積層フィルムを100℃雰囲気下で250時間放置し、該積層フィルムの同一箇所、同一面に対して入射角60°でP偏光を入射した場合の、波長域450nm~650nmにおける各波長の透過率の平均値の差である。
【0019】
この平均透過率の変化量が10%以下であるということは、高温環境下でも積層フィルムの反射性能が保たれることを意味する。すなわち、積層フィルムを車載用のHUDやHMDの透明基材のように高温環境下での長期使用が想定される用途に適用したときに、表示性能の変化を軽減できる。上記観点から、この平均透過率の変化量は小さいほど好ましく、より好ましい平均透過率の変化量は5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、特に好ましくは2.0%以下である。平均透過率の変化量が2.0%以下であることにより、全ての車載用途へ好適に適用することが可能となる。なお、この平均透過率の変化量は小さければ小さいほど好ましいため下限に制限はないが、実現可能性の面から0.01%である。
【0020】
積層フィルムを、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量を10%以下または上記の好ましい範囲とする方法としては、積層フィルムを芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含む態様とする方法が挙げられる。好ましくは、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂の少なくとも一つが、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むポリエステル樹脂である態様とすることであり、芳香族ジカルボン酸単位あるいは芳香族ジオール単位の構成成分の選択によって、さらに好ましい範囲とすることができる。これにより、HUDシステムの高い表示性能を持ちつつ、高温環境下での積層フィルムの安定性が高まるため、長期使用に際しても表示性能の低下を軽減することができる。
【0021】
本発明の積層フィルムは、100℃で250時間処理したとき色味の変化量が6.0以下であることが好ましい。ここで、「100℃で250時間処理したときの色味の変化量」とは、積層フィルムの色味の平均値と、積層フィルムを100℃の雰囲気下で250時間放置した後の色味の平均値の差をいう。なお、このとき積層フィルムの色味の測定は、処理前後で同一箇所、同一面で行うものとし、色味の測定には公知の測色計(例えば、KONICA MINOLTA製の測色計(SPECTROPHOTOMETER CM-3600d)等)を使用することができる。
【0022】
この色味の変化量を6.0以下とすることにより、積層フィルムを高温環境下で使用した際の色づきが抑えられる。そのため、積層フィルムをHUDやHMDの透明基材として用いることで、風景などの外部からの情報や投影部材から表示される情報の色認識性を長期間にわたって維持することができる表示部材を得ることが可能となる。上記観点から、この色味の変化量は小さいほど好ましく、より好ましい色味の変化量は5.0以下であり、4.0以下であるとさらに好ましく、3.0以下であると特に好ましく、2.0以下であることが最も好ましい。例えば、この色味の変化量が5.0以下であれば、フロントガラスの一部に計器類の情報を映し出すような、外部情報の色認知性がわずかに低下しても搭乗者への影響が少ない態様で好適に使用できる。また、この色味の変化量が2.0以下であることにより、フロントガラス全面への表示を含む多くの車載用途へ好適に使用できる。なお、この色味の変化量は小さければ小さいほど好ましいため下限に制限はないが、実現可能性の面から0.01である。
【0023】
積層フィルムを、100℃で250時間処理したときの色味の変化量を6.0以下または上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば、積層フィルムを芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含む態様とする方法が挙げられる。好ましくは、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂の少なくとも一つが、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むポリエステル樹脂である態様とすることであり、さらに好ましくは当該ポリエステル樹脂を構成するジオール単位中にパラキシレングリコール単位を含む態様とすることである。これにより、HUDシステムの高い表示性能を持ちつつ、高温環境下での積層フィルムの安定性が高まるため、長期使用に際してもHUDの表示性能の低下を軽減することができる。
【0024】
本発明の積層フィルムは、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが2.0%未満であることが好ましい。積層フィルムを150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが2.0%未満であるということは、積層フィルムを長期高温環境下にて使用した際の積層フィルムの透明性の低下が抑えられることを意味し、このような態様の積層フィルムは、例えば車載用のHUDやHMD用の透明基材のような高温環境下にさらされる用途に好適に使用できる。上記の観点から、この内部ヘイズが低いほど高温環境下での積層フィルムの透明性が優れることから好ましく、より好ましい内部ヘイズは1.8%以下であり、1.5%以下であるとさらに好ましく、1.0%以下であると特に好ましく、最も好ましくは0.5%以下である。この内部ヘイズの下限に特に制限はないが、実現可能性の観点から0.01%である。なお、内部ヘイズは流動パラフィン重点下で公知のヘイズメーターにより測定することができる。
【0025】
150℃で2時間処理した後の内部ヘイズを2.0%未満あるいは上記の好ましい範囲とする方法としては、樹脂フィルムを、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量を10%以下または上記の好ましい範囲とする方法と同様の方法が挙げられる。
【0026】
本発明の積層フィルムは、非晶化、高屈折率化、低ガラス転移温度化、及び耐熱性の観点から、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むことが必要である。ここで芳香族ジカルボン酸単位とは、熱可塑性樹脂の分子鎖を構成する構造単位であって、2つのエステル結合のカルボニル基のカルボニル炭素に直結するモノマー構成単位の内に芳香族を含むものである。芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位についても同様に解釈することができ、それぞれ2つのエステル結合の酸素に直結するモノマー構成単位の中に、芳香族または数平均分子量200以上のアルキレングリコールを含むものである。積層フィルムに含まれる熱可塑性樹脂の構造単位を特定する際には、アルカリなどで熱可塑性樹脂の分子鎖を形成するエステル結合を加水分解させ、HPLC、GPCなどで分離後にNMRなどで分析することで確認できる。なお、数平均分子量は、積層フィルムを溶解させて測定した1H-NMRのスペクトルより算出することができ、その詳細な方法は実施例に示す。
【0027】
また、アルキレングリコールの数平均分子量が200未満の場合には、熱可塑性樹脂を合成する際に、揮発性の高さからアルキレングリコールが十分にポリマー中に取り込まれず、その結果、ガラス転移温度を低下させる効果が十分に得られない場合がある。そのため、アルキレングリコールの数平均分子量の下限は、好ましくは250であり、より好ましくは300であり、特に好ましくは350である。アルキレングリコールの数平均分子量の上限は特に制限されないが、2000よりも大きい場合には、熱可塑性樹脂を製造する際に反応性が低下してフィルムを製造に適さない場合がある。そのため生産性の観点からは、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、600以下であると特に好ましい。なお、アルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができる。
【0028】
また、積層フィルムが「芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含む」とは、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂にこれらの構造単位が全て含まれることをいう。すなわち、一つの熱可塑性樹脂がこれらの構造単位を全て含む態様、個々の熱可塑性樹脂がこれらの構造単位の全てを含まずとも積層フィルム全体としてこれらの構造単位が全て含まれている態様のいずれであってもよい。なお、後者の態様の具体例としては、例えば、2種類の熱可塑性樹脂から積層フィルムが構成されており、一方の熱可塑性樹脂が芳香族ジカルボン酸単位と芳香族ジオール単位を含み、かつ他方の熱可塑性樹脂が数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含む態様が挙げられる。
【0029】
本発明の積層フィルムは、上記観点から、熱可塑性樹脂の少なくとも一つが、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、および数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を全て含むポリエステル樹脂を含むとより好ましい。芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むことにより、非晶化、高屈折率化、低ガラス転移温度化を達成できるほか、長期高温化使用における耐熱性向上効果が得られ車載用途等に適した積層フィルムとなる。また、この態様においてもアルキレングリコールの数平均分子量の好ましい範囲は上記のとおりである。なお、アルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができる。
【0030】
また、本発明の積層フィルムにおいては、芳香族ジオール単位がパラキシレングリコール単位を含むことが好ましい。このような態様とすることで、パラキシレングリコール由来の嵩高さとユニットの小ささにより非晶化促進効果が得られ、高い透明性と表示性能を持ちつつ、高温環境下での積層フィルムの安定性が高まる。そのため、車載用途のHUDやHMD用透明基材としての長期使用に際しても表示性能の低下を軽減することができる。また、パラキシレングリコール単位の含有量は、上記観点から、積層フィルムに含まれる全ジオール単位を100mol%とした場合に、25mol%以上であることが好ましく、30mol%以上がより好ましい。なお、低ガラス転移温度化の観点から、パラキシレングリコール単位の上限重合量は、積層フィルムに含まれる全ジオール単位全体を100mol%とした場合に40mol%である。パラキシレングリコール単位が25mol%以上であることにより、150℃2時間処理後の内部ヘイズを1.0%未満に抑えることが容易となり、加熱による積層フィルムの白化が抑えられるため、車載用途へ好適に使用することができる。
【0031】
前記構成単位を全て含む範囲において、本発明の積層フィルムは特に制限なく多様な熱可塑性樹脂を含むことができる。本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリアセタールなどの鎖状ポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体,付加重合体,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。この中でも、強度、耐熱性、透明性および汎用性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。これらは、共重合体であっても、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。
【0032】
このポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0033】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコール、パラキシレングリコールなどを挙げることができる。中でも入手容易性、コスト、製膜性の観点から、エチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂には、上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
【0035】
特に本発明の積層フィルムにおいては、交互に積層された層のうち、一方の層(層A)を構成する樹脂が結晶性の熱可塑性樹脂を含み、他方の層(層B)を構成する樹脂が非晶性の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。ここでいう非晶性樹脂とは、JIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂5gを25℃から300℃の温度まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)し、その状態で5分間保持した後、温度が25℃以下となるように急冷して再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃の温度まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークのピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmが5J/g以下の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは結晶融解に相当するピークを示さない熱可塑性樹脂である。なお、急冷は炉内に入れたまま液体窒素を吹き付けて行うことができる。一方結晶性樹脂とは、上述の示差走査熱量測定チャートにおいて、上記要件を満たさない熱可塑性樹脂をいう。例えば、熱可塑性樹脂の一方の層Aに一種類の結晶性の熱可塑性樹脂、もう一方の層Bに非晶性の熱可塑性樹脂を用いた場合には、積層フィルムとした場合においても、融点を一つしか示さないものとなる。
【0036】
本発明の積層フィルムは、非晶性の熱可塑性樹脂として多環芳香族化合物を共重合成分として含んでいることが好ましい。ナフタレンやアントラセンのような多環芳香族化合物を含むことで、屈折率を高めることが容易となる。さらに好ましくは、ジカルボン酸単位およびジオール単位を合わせて3種類以上含む共重合体であることである。1種類のジカルボン酸単位と1種類のジオール単位からなる熱可塑性樹脂の場合、その高い対称性のために延伸時に配向・結晶化が促進され、非晶状態を維持できないことがあるが、3種類以上のジカルボン酸単位およびジオール単位を含む共重合体を含むことで、延伸された際に配向・結晶化が抑えられ、非晶状態を維持することが容易になる。
【0037】
また、本発明の積層フィルムは、積層フィルムを構成するいずれかの層に、数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含んでなることが好ましい。上述のとおり屈折率を高めるためには芳香族由来の環式構造を多く含む必要があるが、さらにアルキレングリコールに由来する構造を含むことにより屈折率を維持しつつもガラス転移温度を効率的に低下させることが容易となる。結果として、積層フィルムを構成する各層の面内屈折率が1.61以上であり、かつガラス転移温度が90℃以下である積層フィルムが容易に得られるものである。特に好ましくは層Bを構成する熱可塑性樹脂が非晶性であり、かつ数平均分子量200以上のアルキレングリコールに由来する構造を含んでなることであり、さらに好ましくは非晶性の熱可塑性樹脂からなる層Bが、数平均分子量200以上のアルキレングリコールに由来する構造を含む非晶性の熱可塑性樹脂のみからなることである。数平均分子量200以上のアルキレングリコールに由来する構造を含んでなる熱可塑性樹脂を、他の非晶性樹脂と少量混合して用いることで、非晶性樹脂の屈折率を維持しつつさらにガラス転移温度を効率的に低下させることが可能となる。さらに、熱可塑性樹脂そのものを数平均分子量200以上のアルキレングリコールに由来する構造を含む共重合体とすることで、高温条件下での加工などを実施した際にも積層フィルム表面にアルキレングリコールに由来する構造を含む熱可塑性樹脂が析出することを抑制できる。
【0038】
本発明の積層フィルムは、非晶性ポリエステル樹脂の芳香族ジオール単位中にパラキシレングリコールを含むことが好ましい。パラキシレングリコール由来の嵩高さとユニットの小ささにより非晶性促進効果が得られ、これにより車載用途のHUDやHMD用透明基材の高い透明性と表示性能を持ちつつ、高温環境下での積層フィルムの安定性が高まるため、長期使用に際しても表示性能の低下を軽減することができる。
【0039】
本発明の積層フィルムは、非晶性ポリエステル樹脂の全ジオール単位中にパラキシレングリコール単位を10mol%以上含むことが好ましい。これにより、積層フィルムの高温環境下での安定性が向上する。さらに、パラキシレングリコール単位を25mol%以上含む場合、車載用のHUDやHMDに使用した際に、透明基材の高い透明性と表示性能を保ちつつ、高温環境下での樹脂フィルムの安定性も高まるため、長期使用に際しても表示性能の低下を軽減することができる。パラキシレングリコール単位の含有量増加に伴い、より高い透明性と表示性を満足するため、より好ましいパラキシレングリコール単位の含有量は30mol%以上である。一方、低ガラス転移温度化の観点からパラキシレングリコール単位の上限重合量は40mol%である。パラキシレングリコール単位が25mol%以上であることにより、150℃2時間処理後の内部ヘイズが1.0%未満に抑えることが容易となり、加熱による積層フィルムの白化が抑えられるため、車載用途へ好適に使用することができる。また、パラキシレングリコール単位が30mol%以上になると150℃の厳しい高温条件下でも積層フィルムが白化することなく、フロントガラスなどより規格の厳しい用途に適用可能となる。
【0040】
また、熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、および核剤などを、その特性を悪化させない程度に単独で又は複数成分を組み合わせて添加させることができる。
【0041】
次に、本発明の画像表示部材について説明する。本発明の画像表示部材は、本発明の積層フィルムを備える。具体例としては、透明部材の少なくとも一方の面に本発明の積層フィルムを積層した画像表示部材や、2つの透明部材間に本発明の積層フィルムを積層した画像表示部材が挙げられる。ここで透明部材としてはガラスや樹脂が挙げられ、樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びその共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などが挙げられる。
【0042】
透明部材と本発明の積層フィルムを積層する際にはその間に接着層を設けることも好ましい。接着層を構成する接着剤としては酢酸ビニル樹脂系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ニトリルゴム系、スチレン・ブダジエンゴム系、天然ゴム系、クロロプレンゴム系、ポリアミド系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、セルロース系、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリイソブチレン等が挙げられる。また、これらの接着剤には、粘着性調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、架橋剤等を添加してもよい。これらの接着層の加工前の形態としては液状、ゲル状、塊状、粉末状、フィルム状などが挙げられる。接着層の固化方法としては、溶剤揮散、湿気硬化、加熱硬化、硬化剤混合、嫌気硬化、紫外線硬化、熱溶融冷却、感圧などが挙げられる。積層方法としてはラミネート成形やインジェクション成形などの公知の手法を用いることができ、加熱、加圧、および、上述した接着層の固化方法を用いることで画像表示部材が作製される。
【0043】
さらに、画像表示部材の表面にはハードコート層、耐磨耗性層、傷防止層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、光安定化層(HALS)、熱線吸収層、印刷層、ガスバリア層、粘着層、透明電極層など、各種機能性層を有していても良い。2つの透明部材間に本発明の積層フィルムを積層した画像表示部材としては自動車等の車両のフロントガラス等が挙げられる。その構成としては、例えば、ガラス/ポリビニルブチラール/本発明の積層フィルム/ポリビニルブチラール/ガラスの構成、ガラス/ポリビニルブチラール/本発明の積層フィルム/ガラスの構成等を採用することができ、ガラス厚みは2mm~3mmの範囲が好ましく、ポリビニルブチラール厚みは100μm~1000μmとすることが好ましい。
【0044】
本発明の画像表示部材は入射角60°で入射したときのS波の反射率(Rs60)が30%以下であることが好ましい。本発明の画像表示部材をHUDとして用いた場合は、情報の表示性が高いことと、表示部を透かして見た外の風景などの外部情報の視認性も高いことが要求されるため、Rs60が30%以下であることで外の風景などの外部情報の視認性を高めることができる。Rs60を30%以下とする方法としては、画像表示部材の表面にAR(アンチリフレクション)、AG(アンチグレア)、可視光の波長よりも小さい円錐状の複数の凸部を有するモスアイ構造などを形成する方法が挙げられる。また、自動車のフロントガラスの傾斜角度は60°前後であることが多いため、本発明の画像表示部材を自動車のフロントガラスに用いる場合、Rs60が30%以下であることは特に好ましい。
【0045】
次に、本発明の画像表示装置について説明する。本発明の画像表示装置は、本発明の画像表示部材、及び本発明の画像表示部材の表示面の法線に対して20°以上の角度をもって光を照射する光源を備える。法線に対する光の入射角度は、好ましくは40°以上75°以下である。このような画像表示装置は、正面方向の透過性を維持しつつ、情報を鮮明かつ再現性高く画像表示部材に表示することが可能である。光源は本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、液晶プロジェクター、RGBレーザー、DLP(Digital Light Processing)、LCOS(Liquid crystal on silicon)などが挙げられる。光源から出射する光(情報)は、画像表示部材に直接投影してもよく、またミラーでの反射、レンズを通した集光、拡散や偏光反射部材を通すことなどを経て画像表示部材に投影してもよい。このミラーとしては可視光のみを反射するコールドミラーが好ましい。通常の可視光から赤外線までを反射するミラーでは画像表示装置内部に侵入した太陽光などをミラーで反射して光源に照射した際に赤外線による温度上昇を招くが、コールドミラーは赤外線を反射しないため光源の温度上昇を抑制することができる。偏光反射部材はその面に対して一方の方位方向の光を反射(反射軸方位)してその方向に直交する方向の光を透過する(透過軸方位)ため、太陽光などの外部から侵入し投影画像表示装置内部の温度上昇を招く光を約半減することができる。一方で、偏光反射部材の透過軸方位と合うように光源からの光の偏光を調整することで、光源から投影される光の明るさの減衰を抑制することもできる。
【0046】
本発明の画像表示装置は自動車、航空機、電子看板、ゲーム機器などに用いられるヘッドアップディスプレイ(HUD)やヘッドマウントディスプレイ(HMD)として用いることができる。自動車に用いる場合は自動車のフロントガラスやフロントガラス近傍に設けられた透明基材からなるプロンプターに向けて小型投影機材から情報を投影して用いられる。ここで、フロントガラスやプロンプターに本願の積層フィルムを用いることで、正面方向の透明性を維持しつつ情報を鮮明かつ再現性高く表示することが可能となる。この場合、積層フィルムはフロントガラスに接着剤を介して貼りあわせてもよく、フロントガラスに用いられる合わせガラス内の内部に挿入してもよい。また、プロンプターも透明基材と貼りあわせて用いてもよい。
【0047】
本発明の画像表示装置は、積層フィルムの主配向軸の方位角が床面に対して±30°以内であることが好ましい。ここで床面に対して水平方向の方位角を0°とする。一般的に自然界の光は建物や地面などの反射によって偏光しておりS偏光が主である。外の風景などの外部情報が本発明の画像表示装置を透過した場合、そのS偏光の方位角は床面に対して水平方向である。本発明の積層フィルムは少なくとも2方向に延伸して作成するため二軸性や主配向軸といった光学特性を備える。この積層フィルムの主配向軸に対する方位角が0よりも大きい角度で偏光が積層フィルムを透過すると透過光の偏光状態が変化する。つまり、透過した偏光が外の風景などの情報であった場合、偏光状態の変化によって本来の風景にはない虹模様のムラが視認されることがある。この虹模様のムラは積層フィルムの主配向軸と通過した偏光の方位角が45°で最大強度となる。よってこの方位角を小さくすることで虹模様のムラを小さくすることができる。好ましくは積層フィルムの主配向軸の方位角が床面に対して±15°以内であり、より好ましくは±10°以内である。このように本発明の投影画像表示装置は、積層フィルムの主配向軸の方位角を床面に対して±30°以内にすることで、外の風景などの外部情報の視認性を高めることができる。特にこの虹模様のムラの抑制は本発明の画像表示装置を自動車のフロントガラスに適用した際に重要である。
【0048】
次いで、本発明のヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイについて説明する。本発明のヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイは、本発明の画像表示装置を備えるものである。本発明の画像表示装置は、本発明の積層フィルムにより風景など外部から情報の視認性、投影部材からの情報の表示性と色目の再現性、及び歪みの低減性に優れたものとなる。
【0049】
以下、本発明の積層フィルムを製造する具体的な態様の例を以下に記すが、本発明の積層フィルムはかかる例によって限定して解釈されるものではない。本発明の積層フィルムが前述の積層フィルム構成をとる場合、50層以上の積層構造は、次のような方法で作製することができる。層Aに対応する押出機Aと層Bに対応する押出機Bの2台から熱可塑性樹脂が供給され、それぞれの流路からのポリマーが、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサーを用いる方法、もしくは、コームタイプのフィードブロックのみを用いることにより50層以上に積層し、次いでその溶融積層体をT型口金等でシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸積層フィルムを得る方法が挙げられる。層Aと層Bの積層精度を高める方法としては、特開2007-307893号公報、特許第4691910号公報、特許第4816419号公報に記載されている方法が好ましい。また必要であれば、層Aに用いる熱可塑性樹脂と層Bに用いる熱可塑性樹脂を乾燥することも好ましい。
【0050】
続いて、この未延伸積層フィルムに延伸及び熱処理を施す。延伸方法としては、公知の逐次二軸延伸法、もしくは同時二軸延伸法が好ましい。延伸温度は未延伸積層フィルムのガラス転移点温度以上~ガラス転移点温度+80℃以下の範囲にて行うことが好ましい。延伸倍率は、長手方向、幅方向それぞれ2倍~8倍の範囲が好ましく、より好ましくは3~6倍の範囲であり、長手方向と幅方向の延伸倍率差を小さくすることが好ましい。長手方向の延伸は、縦延伸機ロール間の速度変化を利用して延伸を行うことが好ましい。また、幅方向の延伸は、公知のテンター法を利用する。すなわち、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、フィルム両端のクリップ間隔を広げることで幅方向に延伸する。
【0051】
また、テンターでの延伸は同時二軸延伸を行うことも好ましい。同時二軸延伸を行う場合について説明する。冷却ロール上にキャストされた未延伸積層フィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。長手方向の延伸は、テンターのクリップ間の距離を広げることで、また、幅方向の延伸はクリップが走行するレールの間隔を広げることで達成される。本発明における延伸・熱処理を施すテンタークリップは、リニアモータ方式で駆動することが好ましい。その他、パンタグラフ方式、スクリュー方式などがあるが、中でもリニアモータ方式は、個々のクリップの自由度が高いため延伸倍率を自由に変更できる点で優れている。
【0052】
さらに、延伸後に熱処理を行うことも好ましい。熱処理温度は、延伸温度以上~層Aの熱可塑性樹脂の融点-10℃以下の範囲にて行うことが好ましく、熱処理後に熱処理温度-30℃以下の範囲にて冷却工程を経ることも好ましい。また、フィルムの熱収縮率を小さくするために、熱処理工程中又は冷却工程中にフィルムを幅方向および/または、長手方向に縮める(リラックス)ことも好ましい。リラックスの割合としては1%~10%の範囲が好ましく、より好ましくは1~5%の範囲である。最後に巻取り機にてフィルムを巻き取ることによって本発明の積層フィルムが製造される。
【0053】
こうして得られる本発明の積層フィルムは、高温環境下においても長期間にわたって反射性能を維持することが可能なであり、画像表示部材に好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の積層フィルムについて実施例を用いて説明する。
【0055】
(物性の測定方法並びに効果の評価方法)
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次のとおりである。
【0056】
(1)積層数
積層フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて凍結超薄切片法により断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、多層積層フィルムの積層数を確認した。より具体的には、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kV、観察倍率20000倍の条件でフィルムの断面写真を撮影し、積層数を確認した。
【0057】
(2)平均透過率
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、測定検体である積層フィルム面に対して入射角度0°となるようにP偏光またはS偏光を入射した場合の波長400~1600nmの範囲の透過率を1nm刻みで測定し、波長450nm~650nmの平均透過率をそれぞれ求めた。測定条件としては、スリットは2nm(可視)、自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とした。
【0058】
(3)平均反射率
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、測定検体である積層フィルム面に対して入射角度0°、20°、40°、60°となるようにP偏光またはS偏光を入射した場合の波長400~1600nmの範囲の透過率を1nm刻みで測定し、波長450nm~650nmの平均反射率をそれぞれ求めた。測定条件としては、スリットは2nm(可視)、自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とした。
【0059】
(4)波長450~650nmの平均透過率の変化量
積層フィルムを25℃雰囲気下で250時間放置し、入射角度70°にてP偏光を入射したこと以外は、評価方法(2)と同様にして波長450~650nmの平均透過率を求めた。続いて、前記積層フィルムを100℃の雰囲気下で250時間放置し、25℃雰囲気下で250時間放置した後の測定時と同一のフィルム面、同一測定箇所に対して入射角70°でP偏光を入射させ、評価方法(2)と同様にして波長450~650nmの平均透過率を求めた。これらの値から両者の差を求め、これを波長450~650nmの平均透過率の変化量とした。
【0060】
(5)色味の変化量
KONICA MINOLTA製の測色計(SPECTROPHOTOMETER CM-3600d)にて、25℃雰囲気下で250時間放置した積層フィルムの色味を測定した。続いて、前記積層フィルムを100℃の雰囲気下で250時間放置し、25℃雰囲気下250時間放置した後の測定時と同一のフィルム面、同一測定箇所にて同様に色味の測定を行った。これらの値から両者の差を求め色味の変化量とした。
【0061】
(6)150℃で2時間処理した後の内部ヘイズ
積層フィルムを150℃の雰囲気下で2時間放置した後、液体測定用石英セルに入れて流動パラフィンを充填し、スガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM-2DP)を用いて測定を行うことで、フィルム表面ヘイズを除いた内部ヘイズを測定した。無作為に測定位置を変えて同様の測定を3回繰り返し、得られた値の平均値を該積層フィルムの内部ヘイズ値とした。
【0062】
(7)アルキレングリコールの数平均分子量
フィルムをHFIP-d2(ヘキサフロロー2-プロパノール・2重水素化物)に溶解させ、1H-NMRを測定した。得られたスペクトルについて、ケミカルシフト3.8ppmのピークを有するシグナルの面積をS1、ケミカルシフト3.9ppmにピークを有するシグナルの面積をS2とした際に、S1/S2×44(44:エチレングリコールの繰り返し単位の式量)を求め、得られた値をアルキレングリコールの数平均分子量とした。
【0063】
(8)屈折率
ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いてフィルム長手方向、幅方向および厚み方向の屈折率を求めた。ここで、フィルム長手方向と幅方向の屈折率の平均値をフィルム面に平行な方向の屈折率(面内屈折率)、フィルム厚み方向の屈折率をフィルム面に垂直な方向の屈折率(面直屈折率)とした。
【0064】
(フィルムに用いた樹脂)
各実施例及び各比較例のフィルムの製造には、以下の樹脂を使用した。なお、樹脂1は結晶性樹脂、樹脂2~8は非晶性樹脂である。
【0065】
樹脂1:IV=0.65のポチエチレンテレフタレート。比較例2に記載のフィルムにおける面内屈折率=1.65、面直屈折率=1.49である。
【0066】
樹脂2:IV=0.65、面内屈折率=1.62、面直屈折率=1.62のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して80mol%、イソフタル酸成分を酸成分全体に対して20mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して96mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して4mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0067】
樹脂3:IV=0.65、面内屈折率=1.64、面直屈折率=1.64のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して100mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して66mol%、パラキシレングリコールをジオール成分全体に対して30mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して4mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0068】
樹脂4:IV=0.65、面内屈折率=1.63、面直屈折率=1.63のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して100mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して71mol%、パラキシレングリコールをジオール成分全体に対して25mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して4mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0069】
樹脂5:IV=0.65、面内屈折率=1.63、面直屈折率=1.63のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して100mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して76mol%、パラキシレングリコールをジオール成分全体に対して20mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して4mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0070】
樹脂6:IV=0.65、面内屈折率=1.63、面直屈折率=1.63のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して100mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して86mol%、パラキシレングリコールをジオール成分全体に対して10mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して4mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0071】
樹脂7:IV=0.65、面内屈折率=1.63、面直屈折率=1.63のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して100mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して83mol%、BPEFをジオール成分全体に対して10mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して7mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0072】
樹脂8:IV=0.65、面内屈折率=1.63、面直屈折率=1.63のポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して100mol%、エチレングリコールをジオール成分全体に対して89mol%、BPEFをジオール成分全体に対して5mol%、数平均分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して6mol%共重合したポリエチレンナフタレート)。
【0073】
(実施例1)
層Aを構成する熱可塑性樹脂として樹脂1を、層Bを構成する熱可塑性樹脂として樹脂3を用いた。樹脂1および樹脂3を、それぞれ、押出機にて280℃で溶融させFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂1/樹脂3=1.5になるように計量しながら、入射角70°でのP波の反射波長が400nm~1000nmの範囲になるように設計した801層フィードブロック(層Aが401層、層Bが400層)にて交互に合流させた。次いで、シート状に成形した溶融熱可塑性樹脂の積層体をTダイより吐出させた後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを、温度93℃、延伸倍率3.2倍で縦延伸して一軸配向積層フィルムとし、その両面に空気中でコロナ放電処理を施した後、その両面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、一軸配向積層フィルムの幅方向両端部をクリップで把持してテンターに導き、90℃で3.9倍に横延伸した後、216℃で熱処理及び1.1%の幅方向リラックスを実施した。最後に100℃で冷却し、厚み80μm(両表層の厚み5μm)の積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2~6、比較例1)
各層を構成する熱可塑性樹脂として表1に示すものを用いた以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0075】
(実施例7)
層Aを構成する熱可塑性樹脂として樹脂1を、層Bを構成する熱可塑性樹脂として樹脂3を用い、入射角70°でのP波の反射波長が400nm~800nmの範囲になるように設計した401層フィードブロック(層Aが201層、層Bが200層)用いた以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例8)
層Aを構成する熱可塑性樹脂として樹脂1を、層Bを構成する熱可塑性樹脂として樹脂3を用い、入射角70°でのP波の反射波長が400nm~800nmの範囲になるように設計した201層フィードブロック(層Aが101層、層Bが100層)用いた以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
積層装置を用いず樹脂1からなる単層フィルムとした以外は実施例1と同様にフィルムを得た。評価結果を表1に示すが、正面方向の透明性が高く視認性に優れている一方で、単層であることから斜め方向の反射性を示さず、投影された情報を確認することはできないものであった。
【0078】
(比較例3)
樹脂3を用いた以外は比較例2と同様に、Tダイに供給しシート状に成形して無配向フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0079】
(比較例4)
3層フィードブロック(熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B/熱可塑性樹脂A)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0080】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、正面方向の透明性に優れることで風景など外部から情報の視認性が高く、斜め方向反射性に優れることで投影部材からの情報の表示性と色目の再現性が高く、かつ歪みを抑えた投影画像表示部材用積層フィルムである。本発明の積層フィルムを用いた投影画像表示装置は自動車等の車両、航空機、電子看板、ゲーム機器などに用いられるヘッドアップディスプレイ(HUD)やヘッドマウントディスプレイ(HMD)などに好適に用いることができる。