(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】クッションタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20250527BHJP
【FI】
B60C7/00 B
(21)【出願番号】P 2021094152
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 美咲
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108036(JP,A)
【文献】特開平05-139124(JP,A)
【文献】特開昭59-149802(JP,A)
【文献】特開平08-175124(JP,A)
【文献】特開平07-232508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面が第一側面、第二側面及び内周面を備えており、リムに装着されるクッションタイヤであって、
前記クッションタイヤが、前記表面に一又は二以上の排熱溝を有しており、
それぞれの排熱溝が、
(1)前記第一側面又は前記第二側面から凹陥しており、かつ半径方向においてその外側端が前記リムのフランジの外側端よりも外側に位置する側部
及び
(2)前記内周面から凹陥しており、かつ前記側部と連続する内周部
を有
し、
前記内周部が、前記第一側面及び前記第二側面のいずれか一方に到達していないクッションタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤが、
(1)前記第一側面から凹陥する第一側部を有し、前記内周部がこの第一側部と連続しており、かつ前記内周部が赤道面まで到達していない第一排熱溝
及び
(2)前記第二側面から凹陥する第二側部を有し、前記内周部がこの第二側部と連続しており、かつ前記内周部が赤道面まで到達していない第二排熱溝
を有する請求項1に記載のクッションタイヤ。
【請求項3】
軸方向において、赤道面から前記第一排熱溝の内側端までの距離L1の、前記内周面の半幅Wに対する比(L1/W)が25%以上であり、
赤道面から前記第二排熱溝の内側端までの距離L2の、前記半幅Wに対する比(L2/W)が25%以上である、請求項
2に記載のクッションタイヤ。
【請求項4】
前記リムと接触す
るベースと、前記ベースの半径方向外側に位置するトレッドとを備えており、
前記ベースが、
周方向に延び、軸方向においてその内側の側面の位置が前記第一排熱溝の内側端の位置と実質的に同じである第一外側部と、
周方向に延び、軸方向においてその内側の側面の位置が前記第二排熱溝の内側端の位置と実質的に同じである第二外側部と、
周方向に延び前記第一外側部と前記第二外側部との間に位置する中央部とを備え、
前記第一外側部の半径方向厚み及び前記第二外側部の半径方向厚みが、いずれも前記中央部の半径方向厚みより大きい、請求項
2又は
3に記載のクッションタイヤ。
【請求項5】
前記第一外側部の厚みが前記中央部の厚みの1.2倍以上1.4倍以下であり、前記第二外側部の厚みが前記中央部の厚みの1.2倍以上1.4倍以下である、請求項
4に記載のクッションタイヤ。
【請求項6】
前記第一排熱溝が周方向に間隔を開けて複数並べられており、第二排熱溝が周方向に間隔を開けて複数並べられている、請求項
2から
5のいずれかに記載のクッションタイヤ。
【請求項7】
その表面が第一側面、第二側面及び内周面を備えており、リムに装着されるクッションタイヤであって、
前記クッションタイヤが、前記表面に一又は二以上の排熱溝を有しており、
それぞれの排熱溝が、
(1)前記第一側面又は前記第二側面から凹陥しており、かつ半径方向においてその外側端が前記リムのフランジの外側端よりも外側に位置する側部
及び
(2)前記内周面から凹陥しており、かつ前記側部と連続する内周部
を有し、
前記内周面に周方向に延びる縦溝が設けられており、
前記縦溝が、少なくとも一つの排熱溝と繋がっており、
前記縦溝が赤道面上に位置しておらず、
軸方向において、前記赤道面から前記縦溝の内側端までの距離Lvの、前記内周面の半幅Wに対する比(Lv/W)が25%以上である
、クッションタイヤ。
【請求項8】
前記リムと接触す
るベースと、前記ベースの半径方向外側に位置するトレッドと、前記ベース内に埋設され周方向に延びるビードとを備えており、
前記ビードと前記縦溝とが半径方向において重なりを有する、請求項
7に記載のクッションタイヤ。
【請求項9】
前記排熱溝が前記第一側面から凹陥する第一側部及び前記第二側面から凹陥する第二側部を有しており、
前記内周部が第一側部と連続しかつ前記第二側部と連続する請求項
7又は8に記載のクッションタイヤ。
【請求項10】
前記排熱溝が周方向に間隔を開けて複数並べられている、請求項
7から9のいずれかに記載のクッションタイヤ。
【請求項11】
フランジを備えるリムと、前記リムに装着されその表面が第一側面、第二側面及び内周面を備えたクッションタイヤとを備え、
前記クッションタイヤが、前記表面に一又は二以上の排熱溝を有しており、
それぞれの排熱溝が、
(1)前記第一側面又は前記第二側面から凹陥しており、かつ半径方向においてその外側端が前記リムのフランジの外側端よりも外側に位置する側部
及び
(2)前記内周面から凹陥しており、かつ前記側部と連続する内周部
を有
し、
前記内周部が、前記第一側面及び前記第二側面のいずれか一方に到達していない、組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションタイヤに関する。詳細には、本発明は、フォークリフト等の産業車両用のクッションタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
クッションタイヤ(ソリッドタイヤ又は中実タイヤとも称される)は、フォークリフト等の産業車両に使用される。このタイヤは、高荷重下で使用されることが多い。車両の使用時にタイヤが大きく変形し、タイヤの発熱が大きくなることが起こりうる。この発熱によるタイヤ温度の上昇は、タイヤの耐久性に影響を及ぼす。さらに、このタイヤ温度の上昇は、ラジアルランアウト(RRO)の要因となりうる。タイヤ温度の上昇を抑制したクッションタイヤの検討が、特開2007-15493公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ温度の上昇がより抑えられたクッションタイヤが求められている。
【0005】
本発明の目的は、タイヤ温度の上昇が抑えられたクッションタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その表面が第一側面、第二側面及び内周面を備えており、リムに装着されるクッションタイヤに関する。前記クッションタイヤは、前記表面に一又は二以上の排熱溝を有している。それぞれの排熱溝は、
(1)前記第一側面又は前記第二側面から凹陥しており、かつ半径方向においてその外側端が前記リムのフランジの外側端よりも外側に位置する側部
及び
(2)前記内周面から凹陥しており、かつ前記側部と連続する内周部
を有する。
【0007】
好ましくは、前記排熱溝は前記第一側面から凹陥する第一側部及び前記第二側面から凹陥する第二側部を有しており、前記内周部が第一側部と連続しかつ前記第二側部と連続する。
【0008】
好ましくは、前記排熱溝は周方向に間隔を開けて複数並べられている。
【0009】
好ましい他の実施形態のクッションタイヤは、
(1)前記第一側面から凹陥する第一側部を有し、前記内周部がこの第一側部と連続しており、かつ前記内周部が赤道面まで到達していない第一排熱溝
及び
(2)前記第二側面から凹陥する第二側部を有し、前記内周部がこの第二側部と連続しており、かつ前記内周部が赤道面まで到達していない第二排熱溝
を有する。
【0010】
好ましくは、軸方向において、赤道面から前記第一排熱溝の内側端までの距離L1の、前記内周面の半幅Wに対する比(L1/W)は25%以上であり、赤道面から前記第二排熱溝の内側端までの距離L2の、前記半幅Wに対する比(L2/W)は25%以上である。
【0011】
このクッションタイヤは、前記リムと接触するするベースと、前記ベースの半径方向外側に位置するトレッドとを備えている。好ましくは、前記ベースは、周方向に延び軸方向においてその内側の側面の位置が前記第一排熱溝の内側端の位置と実質的に同じである第一外側部と、周方向に延び軸方向においてその内側の側面の位置が前記第二排熱溝の内側端の位置と実質的に同じである第二外側部と、周方向に延び第一外側部と前記第二外側部との間に位置する中央部とを備える。前記第一外側部の半径方向厚み及び前記第二外側部の半径方向厚みは、いずれも前記中央部の半径方向厚みより大きい。
【0012】
好ましくは、前記第一外側部の厚みが前記中央部の厚みの1.2倍以上1.4倍以下であり、前記第二外側部の厚みが前記中央部の厚みの1.2倍以上1.4倍以下である。
【0013】
好ましくは、前記第一排熱溝は周方向に間隔を開けて複数並べられており、前記第二排熱溝は周方向に間隔を開けて複数並べられている。
【0014】
好ましくは、前記内周面に周方向に延びる縦溝が設けられており、前記縦溝は、少なくとも一つの排熱溝と繋がっている。
【0015】
好ましくは、前記縦溝が赤道面上に位置しておらず、軸方向において、前記赤道面から前記縦溝の内側端までの距離Lvの、前記内周面の半幅Wに対する比(Lv/W)は25%以上である。
【0016】
好ましくは、このクッションタイヤは、前記リムと接触するするベースと、前記ベースの半径方向外側に位置するトレッドと、前記ベース内に埋設され周方向に延びるビードをさらに備える。前記ビードと前記縦溝とは、半径方向において重なりを有する。
【0017】
本発明に係る組立体は、フランジを備えるリムと、前記リムに装着されその表面が第一側面、第二側面及び内周面を備えるクッションタイヤとを備える。前記クッションタイヤは、前記表面に一又は二以上の排熱溝を有している。それぞれの排熱溝は、
(1)前記第一側面又は前記第二側面から凹陥しており、かつ半径方向においてその外側端が前記リムのフランジの外側端よりも外側に位置する側部
及び
(2)前記内周面から凹陥しており、かつ前記側部と連続する内周部
を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るクッションタイヤは、内周面から凹陥した内周部と、側面から凹陥した側部とを有する排熱溝を備える。半径方向において、側部の外側端は、リムのフランジの外側端よりも外側に位置している。この排熱溝の外側端は、リムによって塞がれていない。この排熱溝は、クッションタイヤとリムとの接触部分で発生した熱を、効果的に外部に排出する。このタイヤでは、発熱による温度の上昇が抑えられている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るクッションタイヤがリムと共に示された断面図である。
【
図2】
図2(a)は
図1のタイヤの一部が示された斜視図であり、
図2(b)は
図1のタイヤの内周面の展開図である。
【
図3】
図3(a)は
図1のタイヤが示された側面図であり、
図3(b)は
図1のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図3(b)のタイヤの一部が拡大された断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に係るクッションタイヤがリムと共に示された断面図である。
【
図7】
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係るクッションタイヤがリムと共に示された断面図である。
【
図8】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係るクッションタイヤがリムと共に示された断面図である。
【
図11】
図11は、本発明のさらに他の実施形態に係るクッションタイヤがリムと共に示された断面図である。
【
図13】
図13(a)、(b)及び(c)は、さらに他の実施形態に係るクッションタイヤの排熱溝の例が示された図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るクッションタイヤ2が示された断面図である。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面と垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
【0022】
図1において符号Rで示されているのはリムである。このリムRは、正規リムである。正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は正規リムである。符号Fで示されるのが、このリムRのフランジである。
【0023】
図1において、このタイヤ2はリムRに装着されている。リムRと、このリムRに装着されたクッションタイヤ2とのセットは、組立体4を構成する。
図1で両矢印RWは、リム幅を示している。一組の実線Sは、リム幅RWを規定する仮想直線である。リム幅RWは、これらの実線Sの間の軸方向距離により表される。
図1で両矢印Wは、クッションタイヤ2の内周面の半幅を表す。本明細書では、半幅Wは、リム幅RWの半分の幅として定義される。
【0024】
図1で示されるように、このタイヤ2は、トレッド6とベース8とを備えている。このタイヤ2の表面のうち、半径方向外側の面はトレッド面10と称される。半径方向内側の面は内周面16と称される。軸方向外側の面は、側面14と称される。側面14には、第一側面14a及び第二側面14bが存在する。換言すれば、このタイヤ2の表面は、トレッド面10、内周面16、第一側面14a及び第二側面14bを備えている。
【0025】
トレッド6は、半径方向外向きに凸な形状をしている。トレッド6は、路面と接地するトレッド面10を形成する。トレッド面10には、溝12が刻まれている。この溝12によりトレッドパターンが形成される。トレッド6の側面は、このタイヤ2の側面14の一部を形成している。トレッド6は、耐摩耗性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。本実施形態では、トレッド6は単一のゴムから形成されている。このトレッド6が、二以上のゴムから形成されてもよい。
【0026】
ベース8は、トレッド6の半径方向内側に位置している。ベース8は、架橋ゴムよりなる。ベース8の内周面は、リムRの底面20と接触している。ベース8の内周面は、このタイヤ2の内周面16を形成する。ベース8の側面の半径方向内側部分は、リムRのフランジFと接触している。ベース8の側面は、このタイヤ2の側面14の一部を形成している。
【0027】
ベース8が、短繊維を含んでいてもよい。短繊維は、有機繊維からなるコードを短く裁断したものである。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。複数種類の短繊維を混合したものが用いられてもよい。
【0028】
このタイヤ2が、トレッド6の側面及びベース8の側面を覆う、スキン層を備えていてもよい。このとき、スキン層がこのタイヤ2の側面14を形成する。スキン層は、架橋ゴムよりなる。スキン層は、トレッド6及びベース8を保護している。
【0029】
図2(a)は
図1のタイヤ2を内周面16側から見た斜視図であり、
図2(b)は
図1のタイヤ2の内周面16の展開図である。これらの図において、両矢印Aで示されるのがこのタイヤ2の周方向であり、両矢印Xで示されるのがタイヤ2の軸方向である。
図3(a)は
図1のタイヤ2の側面図であり、
図3(b)は
図1のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。これらの図において、両矢印Aで示されるのがこのタイヤ2の周方向であり、紙面と垂直方向がタイヤ2の軸方向である。
図3(b)では、リムRは省略されている。
【0030】
図1から3に示されるように、このタイヤ2は、表面に排熱溝22を備える。排熱溝22は、内周面16と側面14とにまたがって、連続して延びている。換言すれば、排熱溝22は、内周面16から凹陥した内周部24と、この内周部24に連続し側面14から凹陥した側部26とを備える。
図1に示されるように、半径方向において、側部26の外側端はリムRのフランジFの外側端より外側に位置している。
【0031】
図1から3に示された実施形態では、第一排熱溝22aと第二排熱溝22bとが存在している。第一排熱溝22aは、第一側面14aに位置する第一側部26aと、第一側部26aに連続し内周面16に位置する第一内周部24aとを備える。第二排熱溝22bは、第二側面14bに位置する第二側部26bと、第二側部26bに連続し内周面16に位置する第二内周部24bとを備える。
図1で示されるように、第一排熱溝22a及び第二排熱溝22bは、いずれも赤道面CLまで到達していない。この実施形態では、第一内周部24aの周方向位置と、第二側部26bの周方向位置とは同じである。第一内周部24aの周方向位置と、第二側部26bの周方向位置とが違っていてもよい。
【0032】
図2及び3に示されるように、複数の第一排熱溝22a及び複数の第二排熱溝22bが、いずれも周方向に間隔を開けて並べられている。この実施形態では、第一排熱溝22a及び第二排熱溝22bは、等間隔でタイヤ2の全周に渡って並べられている。この実施形態では、第一排熱溝22aと第二排熱溝22bとのペアが、周方向に並べられている。第一排熱溝22aと第二排熱溝22bとが、周方向に互い違いに並べられていてもよい。第一排熱溝22aの数と第二排熱溝22bの数とが異なっていてもよい。
【0033】
以下本発明による作用効果が説明される。
【0034】
本発明に係るクッションタイヤ2は、内周面16から凹陥した内周部24と、側面14から凹陥した側部26とを有する排熱溝22を備える。半径方向において、側部26の外側端は、リムRのフランジFの外側端よりも外側に位置している。この排熱溝22の外側端は、リムRによって塞がれていない。クッションタイヤ2とリムRとの接触部分は、発熱し易い。この排熱溝22は、これらの接触部分で発生した熱を、効果的に外部に排出する。このタイヤ2では、発熱による温度の上昇が抑えられている。
【0035】
第一側面14aに位置する第一側部26aを有する第一排熱溝22aと、第二側面14bに位置する第二側部26bを有する第二排熱溝22bとが存在するのが好ましい。このようにすることで、タイヤ2の両側面14から熱を排出することができる。このタイヤ2では、発熱による温度の上昇が抑えられている。
【0036】
クッションタイヤでは、大きな荷重が負荷された状態で使用されるため、車両の発進、停止、加速、減速等の際に、タイヤ2がリムRに対して滑る「リムスリップ」が起こることがある。
【0037】
第一排熱溝22a及び第二排熱溝22bは、赤道面CLまで達していないのが好ましい。赤道面CLの位置でのタイヤ2からリムRへの圧力は、良好な耐リムスリップ性能の実現に重要となる。赤道面CLまで第一排熱溝22a及び第二排熱溝22bが延びていないことで、このタイヤ2は良好な耐リムスリップ性能が維持されている。
【0038】
図1において、両矢印L1は、軸方向における赤道面CLから第一排熱溝22aの内側端までの距離を表す。距離L1のタイヤ2の内周面16の半幅Wに対する比(L1/W)は、25%以上が好ましい。比(L1/W)を25%以上とすることで、良好な耐リムスリップ性能が維持されている。この観点から、比(L1/W)は30%以上がより好ましい。比(L1/W)は70%以下が好ましい。比(L1/W)を70%以下とすることで、この第一排熱溝22aは熱の排出に効果的に寄与する。この観点から、比(L1/W)は66%以下がより好ましい。
【0039】
図1において、両矢印L2は、軸方向における赤道面CLから第二排熱溝22bの内側端までの距離を表す。距離L2のタイヤ2の内周面16の半幅Wに対する比(L2/W)は、25%以上が好ましい。比(L2/W)を25%以上とすることで、良好な耐リムスリップ性能が維持されている。この観点から、比(L2/W)は30%以上がより好ましい。比(L2/W)は70%以下が好ましい。比(L2/W)を70%以下とすることで、この第二排熱溝22bは熱の排出に効果的に寄与する。この観点から、比(L2/W)は66%以下がより好ましい。
【0040】
図1において、両矢印K1は、半径方向におけるフランジFの外側端から第一排熱溝22aの外側端までの距離を表す。第一排熱溝22aが熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、距離K1は5mm以上が好ましい。第一排熱溝22aの外観への影響を抑えるとの観点から、距離K1は20mm以下が好ましい。
【0041】
図1において、両矢印K2は、半径方向におけるフランジFの外側端から第二排熱溝22bの外側端までの距離を表す。第二排熱溝22bが熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、距離K2は5mm以上が好ましい。第二排熱溝22bの外観への影響を抑えるとの観点から、距離K2は20mm以下が好ましい。
【0042】
図4は、
図3(b)の第一排熱溝22aが拡大された断面図である。
図4において両矢印d1は、第一排熱溝22aの深さを表す。第一排熱溝22aが熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、深さd1は2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。タイヤ2の良好な耐久性を維持するとの観点から、深さd1は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0043】
第二排熱溝22bが熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、第二排熱溝22bの深さd2は2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。タイヤ2の良好な耐久性を維持するとの観点から、深さd2は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0044】
図4において両矢印wg1は、第一排熱溝22aの幅を表す。幅wg1は内周面16上において、溝12が延びる方向と垂直な方向に計測される。第一排熱溝22aが熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、幅wg1は2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。タイヤ2の良好な耐スリップ性能を維持するとの観点から、幅wg1は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0045】
第二排熱溝22bが熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、第二排熱溝22bの幅wg2は2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。タイヤ2の良好な耐スリップ性能を維持するとの観点から、幅wg2は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0046】
内周面16に沿って計測した、周方向長さ100mmあたりに存在する第一排熱溝22aの数N1は、2.0以上が好ましい。数N1を2.0以上とすることで、これらの第一排熱溝22aは、熱の排出に効果的に寄与する。この観点から、数N1は2.5以上がより好ましい。数N1は5.0以下が好ましい。数N1を5.0以下とすることで、良好な耐リムスリップ性能が維持されている。この観点から、数N1は4.5以下がより好ましい。
【0047】
内周面16に沿って計測した、周方向長さ100mmあたりに存在する第二排熱溝22bの数N2は、2.0以上が好ましい。数N2を2.0以上とすることで、これらの第二排熱溝22bは、熱の排出に効果的に寄与する。この観点から、数N2は2.5以上がより好ましい。数N2は5.0以下が好ましい。数N2を5.0以下とすることで、良好な耐リムスリップ性能が維持されている。この観点から、数N2は4.5以下がより好ましい。
【0048】
[第二の実施形態]
図5は、本発明の他の実施形態に係るクッションタイヤ30が、リムRと共に示された断面図である。リムRと、このリムRに装着されたクッションタイヤ30とのセットは、組立体31を構成する。このタイヤ30は、トレッド32とベース34とを備えている。このタイヤ30の構造は、排熱溝36の形状を除き、
図1のタイヤ2と同じ構造である。
【0049】
図5に示されるように、このタイヤ30の排熱溝36は、第一側面44aから凹陥する第一側部40aと、内周面42から凹陥する内周部38と、第二側面44bから凹陥する第二側部40bとを備える。内周部38は、第一側部40a及び第二側部40bと連続している。半径方向において、それぞれの側部40は、リムRのフランジFの外側端より外側に位置している。
【0050】
図6は、
図5のタイヤ30の内周面42の展開図である。
図5及び
図6に示されるように、内周部38は、軸方向において、内周面42の一方の端から他方の端まで延びている。
図6に示されるように、複数の排熱溝36が、周方向に間隔を開けて複数並べられている。
【0051】
このクッションタイヤ30では、前記のとおり、内周部38は、内周面42の一方の端から他方の端まで延びている。この内周部38は、第一側面44aから凹陥する第一側部40aと、第二側面44bから凹陥する第二側部40bとに繋がる。両側部40が内周部38と繋がっているため、この排熱溝36は、効果的に熱を排出することができる。このタイヤ30では、発熱による温度の上昇が抑えられている。
【0052】
[第三の実施形態]
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係るクッションタイヤ50が、リムRと共に示された断面図である。リムRと、このリムRに装着されたクッションタイヤ50とのセットは、組立体51を構成する。このタイヤ50は、トレッド52とベース54とを備えている。このタイヤ50の構造は、ベース54の形状を除き、
図1のタイヤ2と同じ構造である。
【0053】
図7に示されるように、ベース54は、軸方向の両外側部分において、厚みが大きくなっている。この厚みが大きな部分は、周方向に延びている。換言すれば、ベース54は、周方向に延びる第一外側部54a、周方向に延びる第二外側部54b、及び第一外側部54aと第二外側部54bとの間に位置し周方向に延びる中央部54cを備える。半径方向において、第一外側部54aの厚みは中央部54cの厚みより大きく、第二外側部54bの厚みは中央部54cの厚みより大きい。
【0054】
軸方向において、第一外側部54aの内側の側面56の位置は、第一排熱溝60aの内側端の位置と実質的に同じである。詳細には、軸方向における、第一外側部54aの内側の側面56の位置と第一排熱溝60aの内側端の位置との距離M1は、内周面62の半幅Wの5%以下である。第一排熱溝60aは、実質的に第一外側部54aの内周面62に設けられている。
図7の実施例では、距離M1はゼロである。
【0055】
軸方向において、第二外側部54bの内側の側面58の位置は、第二排熱溝60bの内側端の位置と実質的に同じである。詳細には、軸方向における、第二外側部54bの内側の側面58の位置と第二排熱溝60bの内側端の位置との距離M2は、内周面62の半幅Wの5%以下である。第二排熱溝60bは、実質的に第二外側部54bの内周面62に設けられている。
図7の実施例では、距離M2はゼロである。
【0056】
この実施形態のクッションタイヤ50では、前記のとおり、第一排熱溝60aは実質的に第一外側部54aの内周面62に設けられている。第一外側部54aの半径方向厚みは、中央部54cの半径方向厚みよりも大きい。ベース54は、トレッド52より変形し難い。ベース54が厚くなった部分である第一外側部54aは、タイヤ50のリムRへの高い接触圧に寄与する。第一排熱溝60aによるタイヤ50の内周面62とリムRの底面64との接触面積の減少にもかかわらず、第一外側部54aの厚みを大きくすることで、良好な耐リムスリップ性能が実現される。このタイヤ50では、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。
【0057】
このクッションタイヤ50では、前記のとおり、第二排熱溝60bは実質的に第二外側部54bの内周面62に設けられている。第二外側部54bの半径方向厚みは、中央部54cの半径方向厚みよりも大きい。厚い第二外側部54bは、タイヤ50のリムRへの高い接触圧に寄与する。第二排熱溝60bによるタイヤ50の内周面62とリムRの底面64との接触面積の減少にもかかわらず、第二外側部54bの厚みを大きくすることで、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。このタイヤ50では、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。
【0058】
図7において、両矢印H1は、第一外側部54aの半径方向厚みを表す。厚みH1は、第一外側部54aの軸方向の中央で計測される。両矢印Hcは、中央部54cの半径方向厚みを表す。厚みHcは、赤道面CLにおいて計測される。厚みH1の厚みHcに対する比(H1/Hc)は、1.2以上が好ましい。比(H1/Hc)を1.2以上とすることで、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。比(H1/Hc)は1.4以下が好ましい。比(H1/Hc)を1.4以下とすることで、トレッド52が十分な厚みを有する。このトレッド52は、良好な乗り心地及び耐摩耗性に寄与する。
【0059】
図7において、両矢印H2は、第二外側部54bの半径方向厚みを表す。厚みH2は、第二外側部54bの軸方向の中央で計測される。厚みH2の厚みHcに対する比(H2/Hc)は、1.2以上が好ましい。比(H2/Hc)を1.2以上とすることで、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。比(H2/Hc)は1.4以下が好ましい。比(H2/Hc)を1.4以下とすることで、トレッド52が十分な厚みを有する。このトレッド52は、良好な乗り心地及び耐摩耗性に寄与する。
【0060】
[第四の実施形態]
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係るクッションタイヤ70が、リムRと共に示された断面図である。リムRと、このリムRに装着されたクッションタイヤ70とのセットは、組立体71を構成する。
図9は、
図8のタイヤ70の内周面78の展開図である。
図10(a)は
図8のタイヤ70の側面図であり、
図10(b)は
図8のXb-Xb線に沿った断面図である。
図10(b)では、リムRは省略されている。このタイヤ70は、トレッド72とベース74とを備えている。このタイヤ70の構造は、以下で説明される縦溝が内周面78に設けられていることの他は、
図1のタイヤ2の構造と同じである。
【0061】
図8-11に示されるように、このタイヤ70の内周面78には、第一排熱溝80a及び第二排熱溝80bに加えて、周方向に延びる縦溝82が設けられている。この実施形態では、2本の縦溝82が設けられている。これらの縦溝82は、赤道面CLに対して対称な位置に設けられている。それぞれの縦溝82は、少なくとも一つの排熱溝80と繋がる。この実施形態では、一方の縦溝82が第一排熱溝80aと繋がり、他方の縦溝82が第二排熱溝80bと繋がっている。それぞれの縦溝82は、対応する排熱溝80の軸方向内側端において、この排熱溝80と繋がっている。縦溝82が、排熱溝80の軸方向内側端より外側で排熱溝80と繋がっていてもよい。
【0062】
図9に示されるように、この実施形態では、一方の縦溝82は、周方向に並ぶ複数の第一排熱溝80aと繋がっている。他方の縦溝82は、周方向に並ぶ複数の第二排熱溝80bと繋がっている。この実施形態では、それぞれの縦溝82はリング状である。
【0063】
縦溝82の数は1でもよい。3本以上の縦溝82が、設けられていてもよい。
【0064】
この実施形態のクッションタイヤ70は、内周面78において周方向に延びる縦溝82を備える。縦溝82は、少なくとも一つの排熱溝80と接続している。この縦溝82及び排熱溝80を通して、タイヤ70とリムRとの接触部分で発生した熱が、効果的に排出される。このタイヤ70では、発熱による温度の上昇が抑えられている。
【0065】
第一排熱溝80aと繋がる縦溝82と、第二排熱溝80bと繋がる縦溝82とが設けられるのが好ましい。それぞれの縦溝82は、複数の排熱溝80と繋がるのが好ましい。このようにすることで、タイヤ70とリムRとの接触部分で発生した熱が、効果的に排出される。このタイヤ70では、発熱による温度の上昇が抑えられている。
【0066】
縦溝82は、赤道面CL上に位置していないのが好ましい。赤道面CLの位置でのベース74のリムRへの圧力は、良好な耐リムスリップ性能の維持に重要となる。赤道面CL上に縦溝82が位置していないことで、このタイヤ70は良好な耐リムスリップ性能が維持されている。
【0067】
図8において、両矢印Lvは、軸方向における赤道面CLから縦溝82の内側端までの距離を表す。距離Lvのタイヤ70の内周面78の半幅Wに対する比(Lv/W)は、25%以上が好ましい。比(Lv/W)を25%以上とすることで、良好な耐リムスリップ性能が維持されている。この観点から、比(Lv/W)は30%以上がより好ましい。比(Lv/W)は70%以下が好ましい。比(Lv/W)を70%以下とすることで、この縦溝82は熱の排出に効果的に寄与する。この観点から、比(Lv/W)は66%以下がより好ましい。
【0068】
縦溝82は、リング状を呈しているのが好ましい。このとき、縦溝82が熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、縦溝82の数は2本以上が好ましい。タイヤ70の良好な耐スリップ性能を維持するとの観点から、縦溝82の数は4本以下が好ましい。
【0069】
縦溝82が熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、縦溝82の深さは2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。タイヤ70の良好な耐久性を維持するとの観点から、縦溝82の深さは10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0070】
縦溝82が熱の排出に効果的に寄与するとの観点から、縦溝82の幅は2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。タイヤ70の良好な耐スリップ性能を維持するとの観点から、縦溝82の幅は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0071】
[第五の実施形態]
図11は、本発明のさらに他の実施形態に係るクッションタイヤ90が、リムRと共に示された断面図である。リムRと、このリムRに装着されたクッションタイヤ90とのセットは、組立体91を構成する。
図12(a)は
図11のタイヤ90の側面図であり、
図12(b)は
図11のXIIb-XIIb線に沿った断面図である。
図12(b)では、リムRは省略されている。このタイヤ90は、トレッド92とベース94とビード96とを備えている。このタイヤ90の内周面98には、第一排熱溝100a、第二排熱溝100b及び縦溝102が設けられている。このタイヤ90の構造は、ビード96及び縦溝102を備えることの他は、
図7のタイヤ50の構造と同じである。
【0072】
図11で示されるように、ビード96はベース94の内部に埋設されている。この実施形態では、二本のビード96が設けられている。これらのビード96は、赤道面CLに対して対称な位置に設けられている。
図12(b)に示されるように、それぞれのビード96は周方向に延びている。ビード96はリング状である。ビード96は、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。ビード96は、タイヤ90がリムRを締め付ける力を向上させる。ビード96は、リムスリップの防止に寄与する。
【0073】
図11で示されるように、この実施形態では、それぞれのビード96は、対応する縦溝102と、半径方向に重なりを有している。すなわち、軸方向において、縦溝102の外側端と内側端との間の領域であって半径方向に延びる領域内に、対応するビード96の一部又は全部が含まれている。
【0074】
ビード96の数は1でもよい。3本以上のビード96が、設けられていてもよい。
【0075】
この実施形態のクッションタイヤ90は、ベース94の内部に埋設され周方向に延びるビード96を備える。ビード96は、このタイヤ90のリムRへの締め付け力に寄与する。このタイヤ90では、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。
【0076】
ビード96と縦溝102とは、半径方向に重なりを有しているのが好ましい。ビード96は、このタイヤ90のリムRへの締め付け力に寄与する。ビード96を縦溝102と半径方向に重なるように位置させることで、縦溝102によるタイヤ90の内周面98とリムRの底面104との接触面積の減少にもかかわらず、良好な耐リムスリップ性能が実現される。このタイヤ90では、良好な耐リムスリップ性能が実現されている。
【0077】
図11において、両矢印Lbは、軸方向における赤道面CLからビード96の内側端までの距離を表す。リムRの締め付け力に効果的に寄与するとの観点から、距離Lbのタイヤ90の内周面98の半幅Wに対する比(Lb/W)は、80%以下が好ましい。
【0078】
タイヤ90の良好な耐スリップ性能を実現するとの観点から、ビード96の数は2以上が好ましい。ビード96のタイヤ90の質量への影響を抑えるとの観点から、ビード96の数は4以下が好ましい。
【0079】
[その他の実施形態]
図13には、さらに他の実施形態に係るクッションタイヤの排熱溝の内周部が示されている。これらは、クッションタイヤの内周面の展開図である。
【0080】
図13(a)のタイヤ120では、内周部122は、内周面124の端から軸方向の内側に向けて、車両が前進するときの、タイヤ120の回転方向の前方に傾斜しつつ延びている。内周部122の軸方向内側端は、内周部122の軸方向外側端よりも、回転方向前方に位置している。車両が前進したとき、この内周部122では、軸方向の内側端側から先に接地する。これにより、内周部122内の空気は効果的に排出される。この排熱溝は、熱を効果的に外部に排出する。内周部122が、内周面124の端から軸方向の内側に向けて、車両が後進するときのタイヤ120の回転方向の前方に傾斜しつつ延びていてもよい。車両が後進したとき、この内周部122では、軸方向の内側端側から先に接地する。これにより、内周部122内の空気は効果的に排出される。
【0081】
図13(b)のタイヤ128では、内周部130は、内周面132の端から軸方向の内側に向けて、車両が前進するときのタイヤ128の回転方向の前方に向けて曲がりつつ延びている。車両が前進したとき、この内周部130では、軸方向の内側端側から先に接地する。これにより、内周部130内の空気は効果的に排出される。内周部130は、内周面132の端から軸方向の内側に向けて、車両が後進するときのタイヤ128の回転方向の前方に向けて曲がりつつ延びていてもよい。車両が後進したとき、この内周部130では、軸方向の内側端側から先に接地する。これにより、内周部130内の空気は効果的に排出される。
図13(b)では内周部130は円弧状に曲がっているが、内周部130は折れ線状に曲がっていてもよい。
【0082】
図13(c)のタイヤ133では、内周部134は、内周面136の端に両端点を有するU字状を呈している。この内周部では、車両が前進する場合及び車両が後進する場合のいずれにおいても、内周部134内の空気は効果的に排出される。この排熱溝は、熱を効果的に外部に排出する。
【0083】
前述の実施形態では、排熱溝の側部は直線状に半径方向外向きに延びている。側部は直線状に半径方向外向きに延びていなくてもよい。図示されないが、側部は、半径方向の外側に向けて、タイヤの回転方向の前方又は後方に傾斜しつつ延びていてもよい。側部は、途中で曲がっていてもよい。側部は、その他の形状でもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0085】
[実施例1]
下記の表1に示された仕様を備えた実施例1のクッションタイヤを得た。このタイヤは、
図1で示された構成を有する。このことが、表1の「構成図」の欄に、「
図1」として示されている。タイヤのサイズは、「21X8-9」とされた。このタイヤでは、ベースは、短繊維を含んでいない。第一排熱溝及び第二排熱溝の深さはいずれも5mmであり、第一排熱溝及び第二排熱溝の幅はいずれも5mmであった。第一排熱溝の数N1と第二排熱溝の数N2とは同じとされた。表1ではこれらの値は併せて「数N」として記載されている。第一排熱溝及び第二排熱溝のそれぞれの比(L1/W)と比(L2/W)とは同じ値とされた。表1では、これらの値は併せて比(L/W)として記載されている。比(H1/Hc)と比(H2/Hc)とは同じ値とされた。表1では、これらの値は併せて比(H/Hc)として記載されている。
【0086】
[比較例1]
排熱溝を設けないとことの他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0087】
[実施例2]
実施例2のタイヤでは、第一排熱溝及び第二排熱溝はいずれも赤道面まで延びて、これらは赤道面で繋がっている。このことが表1では、比(L/W)が0として表されている。これは、
図5で示されたタイヤである。実施例2のタイヤは、このことの他は実施例1と同様である。
【0088】
[実施例3]
比(L/W)を表1のとおりとした他は実施例1と同様にして、実施例3のタイヤを得た。
【0089】
[実施例4-5]
比(H/Hc)を表1のとおりとした他は実施例3と同様にして、実施例4-5のタイヤを得た。これらは、
図7で示されたタイヤである。
【0090】
[実施例6]
実施例6のタイヤでは、縦溝が2本設けられた。縦溝の深さは5mmであり、幅は5mmであった。このうちの一方が第一排熱溝と繋がり、他方が第二排熱溝と繋がっている。これらの縦溝は、赤道面に対して対称な位置に設けられた。これらの縦溝の比(Lv/W)の値が、縦溝位置として表2に示されている。実施例6のタイヤは、このことの他は実施例1と同様である。これは、
図8で示されたタイヤである。
【0091】
[実施例7]
実施例7のタイヤでは、ビードが2本設けられた。これらのビードは、赤道面に対して対称な位置に設けられている。比(Lb/W)の値が、ビードの位置として表2に示されている。実施例7のタイヤは、このことの他は実施例6と同様である。
【0092】
[実施例8]
ビード位置を表2のとおりとした他は実施例7と同様にして、実施例8のタイヤを得た。このタイヤでは、それぞれのビードは、対応する縦溝と半径方向において重なりを有している。
【0093】
[実施例9]
実施例9のタイヤでは、縦溝が4本設けられた。これらの縦溝のうち2本は、赤道面に対して一方の側面側に位置して第一排熱溝と繋がり、他の2本は他方の側面側に位置して第二排熱溝と繋がっている。これらは、赤道面に対して対称な位置に設けられた。赤道面からの距離が近い方の縦溝の位置と遠い方の縦溝の位置とが、比(Lv/W)の値で表2に示されている。
【0094】
実施例9のタイヤでは、さらにビードが4本設けられた。これらの縦溝のうち2本は、赤道面に対して一方の側面側に位置し、他の2本は他方の側面側に位置している。これらは、赤道面に対して対称な位置に設けられた。赤道面からの距離が近い方のビードと遠い方のビードの位置とが、比(Lb/W)の値で表2に示されている。実施例9のタイヤは、このことの他は実施例8と同様である。
【0095】
[実施例10]
比(H/Hc)を表2のとおりとした他は実施例8と同様にして、実施例10のタイヤを得た。これは、
図11で示されたタイヤである。
【0096】
[実施例11]
比(L/W)及び比(Lv/W)を表2の通りとした他は実施例10と同様にして、実施例11のタイヤを得た。
【0097】
[リムスリップの評価]
タイヤをリム(サイズ:9×6.00E TB)に組み込み、このタイヤを車両(2.5t積みのカウンターウエイト式のフォークリフト)の駆動輪に装着した。車両には、荷物は積載されていない。この車両で、平坦なアスファルト路面上において、スラローム走行を繰り返した。このときの車両の速度は8km/h、走行時間は2時間であった。その後、タイヤがリムに対してスリップした長さが測定された。その結果が表1-2に示されている。数値が小さいほど好ましい。言い換えれば、この数値が小さいほど、リムスリップ防止の性能に優れる。
【0098】
[タイヤ温度]
前記リムスリップの評価での走行直後のタイヤに対し、タイヤ内部の温度を測定した。トレッド面の中央から半径方向内側に向けて穴を開けて、ベースとトレッドの境界位置から半径方向内側に10mmの位置において、温度を計測した。この結果が、表1-2に示されている。数値が小さいほど好ましい。
【0099】
【0100】
【0101】
表1-2に示されるように、実施例のタイヤでは、発熱による温度上昇が抑えられている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係るタイヤは、産業車両に装着されうる。
【符号の説明】
【0103】
2、30、50、70、90・・・クッションタイヤ
4、31、51、91・・・組立体
6、32、52、72、92・・・トレッド
8、34、54、74、94・・・ベース
12・・・溝
14、44・・・側面
14a、44a・・・第一側面
14b、44b・・・第二側面
16、42、62、78、98・・・内周面
20、64、104・・・底面
22、36、60、80・・・排熱溝
22a、60a、80a、100a・・・第一排熱溝
22b、60b、80b、100b・・・第二排熱溝
24、38・・・内周部
24a・・・第一内周部
24b・・・第二内周部
26、40・・・側部
26a、40a・・・第一側部
26b、40b・・・第二側部
28・・・トレッド面
54a・・・第一外側部
54b・・・第二外側部
54c・・・中央部
56・・・第一外側部の側面
58・・・第二外側部の側面
96・・・ビード
82、102・・・縦溝