(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20250527BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20250527BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2021101122
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2024-03-27
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・マンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・ランベス
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン・ブレッケ
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0262673(US,A1)
【文献】特開平01-113082(JP,A)
【文献】特開2003-135632(JP,A)
【文献】特開2018-187345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0304691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04 - 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、基準位置に向けられたときに、
トウ、前記トウの反対側であるヒール、ソール及び前記ソールと反対側のトップ部を含むゴルフクラブヘッド本体と、
ロフト角LA(度)と、
mh= 2.1(g/度)*LA+a、かつ、109g<a<210gであるゴルフクラブヘッド質量mh(g)と、
80mm未満のブレード長さと、
フェース中心を有する打撃フェースであって、フェース平面を規定する前記打撃フェースと、
前記フェース平面に垂直、かつ、前記フェース中心を通って上下に延びる仮想中心平面と、
前記仮想中心平面から2.0mm以内に位置する前記ゴルフクラブヘッドの重心と、
Izz>mh*9.3cm
2を満足する、前記重心を通る垂直軸の周りの慣性モーメントIzzとを含
み、
前記打撃フェースは、第1の反発係数COR1に対応するスイートスポットと、第2の反発係数COR2に対応する前記スイートスポットから少なくとも7.5mm離れた前記打撃フェースの補助位置とを含み、
前記第1の反発係数COR1と前記第2の反発係数COR2とは、下式を満足するゴルフクラブヘッド。
COR2≧0.98*COR1
【請求項2】
前記打撃フェースは、前記フェース中心を含む中央領域と、前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域と、前記中央領域の上の上部領域と、前記中央領域の下の下部領域と、前記中央領域のトウ側のトウ領域とを含み、
前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれは、最大幅及び平均厚さを含み、
前記中間領域は、前記中央領域と、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれとの間に配置され、
前記中間領域の平均厚さは、前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれの平均厚さよりも大きい、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記トウ領域、前記上部領域及び前記下部領域のうちの少なくとも1つは、その背面に、約2.0mm以上の幅を有する細長い溝を含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域は、それぞれ、それらの背面に、概してトウ・ヒール方向に延びる上部溝、概してトウ・ヒール方向に延びる下部溝、及び、概して上下方向に延びるトウ溝を含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記中央領域は、トウ側領域よりも厚さが大きいヒール側領域を含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記中央領域は、前記ヒール側領域から前記トウ側領域に向かってテーパー状になっている、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記補助位置は、前記スイートスポットのトウ側に少なくとも7.5mm隔てられている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記打撃フェースは、0.79以上の重み付けCORを有する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
6.5mm以下のトップライン厚さをさらに含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
ゴルフクラブヘッドであって、基準位置に向けられたときに、
トウ、前記トウの反対側であるヒール、ソール及び前記ソールと反対側のトップ部を含むゴルフクラブヘッド本体と、
前記ゴルフクラブヘッド本体に固定的に取り付けられた質量mfを有し、かつ、フェース平面を規定する打撃フェースを含むフェースインサートと、
ロフト角LA(度)と、
mh=2.1(g/度)*LA+a、かつ、109g<a<210gであるゴルフクラブヘッド質量mhと、
80mm未満のブレード長さと、
重心と、
Izz>mh*9.3cm
2
を満足する、前記重心を通る垂直軸の周りの慣性モーメントIzzとを含み、
比mf/mhは、0.22以下である、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記フェースインサートは、フェース中心を含む中央領域と、前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域と、前記中央領域の上の上部領域と、前記中央領域の下の下部領域と、前記中央領域のトウ側のトウ領域とを含み、
前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれは、最大幅及び平均厚さを含み、
前記中間領域は、前記中央領域と、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれとの間に配置され、
前記中間領域の平均厚さは、前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれの平均厚さよりも大きい、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域は、それぞれ、それらの背面に、概してトウ・ヒール方向に延びる上部溝、概してトウ・ヒール方向に延びる下部溝、及び、概して上下方向に延びるトウ溝を含む、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記トウ領域、前記上部領域及び前記下部領域のうちの少なくとも1つは、その背面に、約2.0mm以上の幅を有する細長い溝を含む、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記中央領域は、トウ側領域よりも厚さが大きいヒール側領域を含む、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記中央領域は、前記ヒール側領域から前記トウ側領域に向かってテーパー状になっている、請求項14に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記打撃フェースは、第1の反発係数COR1に対応するスイートスポットと、第2の反発係数COR2に対応する前記スイートスポットから少なくとも7.5mm離れた前記打撃フェースの補助位置とを含み、
前記第1の反発係数COR1と前記第2の反発係数COR2とは、下式を満足する請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
COR2≧0.98*COR1
【請求項17】
COR2≧0.99*COR1を満たす、請求項16に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
前記打撃フェースは、0.79以上の重み付けCORを有する、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
6.5mm以下のトップライン厚さをさらに含む、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのヘッドには、ゴルフボールを打つときのショットの品質と一貫性に影響を与える質量及び性能特性がある。そのような質量及び性能特性は、ゴルフクラブヘッド内の質量又は質量分布に関連していることが多い。このような質量及び性能特性の例には、クラブヘッドの重心(CG)の位置、クラブヘッドの打撃フェースのさまざまな場所での反発係数(COR)又は特性時間(CT)、及び、CGを通るさまざまな仮想軸に関する慣性モーメント(MOI)を含む。
【0003】
性能に影響を与える質量特性の例として、CGの位置は、例えば、ゴルフボールがどの程度高く打たれるか、ゴルフボールのスピンの量、又は、インパクトが打撃フェースの「スイートスポット」から離れたオフセンターで発生するショットのボール速度及び真直度に関するクラブヘッドの許容度に影響を与える可能性がある。従来、明らかにされているように、スイートスポットは、クラブヘッドのCGからの垂直投影が通過する打撃フェース上の点である。例えば、アイアンタイプのクラブヘッドのCGをソール側に低くし、かつ、打撃フェースから後方へ移動させることは、飛距離が伸びるようにショットの高さを増やし、より制御されたショットとしてゴルフボールのバックスピンがより多くなり得る。スイートスポットを打撃フェースの中心に近づけると、スイートスポットを、プレーヤーが予期するスイートスポットの位置に合わせることができる。従来のアイアンタイプのゴルフクラブヘッドの非対称形状及び質量分布により、横方向で中心に配置されたCGの位置は、通常、例えば、高密度のウェイトを含むことを必要とし、これは、費用がかかり、スイングウエイトに悪影響を与える可能性がある。
【0004】
性能に影響を与える質量特性の別の例として、クラブヘッドのMOIが大きいということは、ゴルフボールがスイートスポットから離れた打撃フェースの中心から外れた位置で打たれたときにクラブヘッドがねじれにくいことを意味する。クラブヘッドのMOIを大きくすると、一般に、クラブヘッドがより安定するか、オフセンターショットを許容し、より大きなMOIにより、このようなオフセンターショットをより真っ直ぐにしてボール速度を速くすることができる。
【0005】
性能特性の例として、CORは、打撃フェースとゴルフボールの間のエネルギー損失又はエネルギー伝達の測定である。打撃フェースで測定されたCORが高いほど、打撃フェースがゴルフボールに衝突したときのエネルギー損失が少なくなるか、エネルギー伝達が向上する。より高いエネルギーがより高いCORでゴルフボールに伝達され、これは、より速いボール速度に変換され、通常、飛距離が伸びる。CORは、例えば、全米ゴルフ協会(USGA)が規定したCORの決定方法にしたがって、従来のキャノンテストを使用して測定され得る。この点について、USGAは、CORの使用から、打撃フェースの弾性を定量化するための特性時間(CT)測定と呼ばれる別の性能特性の使用に移行した。ここでのすべての目的において、CTは、USGAの"Procedure for Measuring the Flexibility of a Golf Clubhead"「ゴルフクラブヘッドの柔軟性を測定するための手順」(Rev. 1.0.0、2008年5月1日)に記載されている特性時間を指す。
【0006】
クラブヘッドの質量及び性能特性の改善は、応力特性など、クラブヘッドの使用目的の構造要件と比較考量される。質量及び性能特性は、CT、寸法、クラブヘッドの質量に関して、USGAなどの規制機関によって規定された制限などの他の制限に対しても比較考量される。さらに、プレーヤーは、一般に、サイズに関する全体的な外観、又は、ゴルフクラブのタイプ又はゴルフクラブのロフト角に対するクラブヘッドの全体的な予想重量など、クラブヘッドに対する暗黙の期待を持っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、同様の応力制限、外観、及びクラブ全体のヘッド重量を維持しながら、クラブヘッドの質量及び性能特性を改善するゴルフクラブヘッド、特にアイアンタイプのクラブヘッドのための様々なフェース厚さパターンの必要性を認識した。以下でより詳細に説明されるように、改善された質量及び性能特性には、例えば、反発係数(COR)、特性時間(CT)、慣性モーメント(MOI)、及び/又は、クラブヘッドの重心(CG)の位置を含むことができる。いくつかの例示的な実施形態では、キャビティバック又は中空ボディのアイアンタイプのクラブヘッドは、改良された可変(variable、バリアブル)フェース厚さパターンを備えており、クラブヘッドの質量及び/又は性能特性を改善するために、クラブヘッドの打撃フェースからクラブヘッドの他の領域に任意の重量を移動できる。有利なことに、そのようなクラブヘッドは、同様の応力制限を維持しながら、打撃フェースでの高いCOR、より高いMOI、及び、同等のクラブヘッドよりも横方向で中央に配置されたより深くより低いCGの位置など、質量及び性能特性を改善しうる可能性がある。さらに、そのようなクラブヘッドは、一部のプレーヤーが好む可能性のある従来の外観、寸法(例えば、ブレード長さ、トップライン厚さ)、及び、全体的なクラブヘッドの重量(例えば、スイング重量)を犠牲にしない。
【0008】
クラブヘッド全体の重量を維持しながらフェースの重量を減らすことは、ゴルフクラブヘッドの特定のロフトを特定の質量に関連付けるプレーヤーにとって重要な場合があり、また、好ましいゴルフクラブのスイング重量を持つ。一般的に、セットで提供されると、アイアンタイプのクラブヘッドはロフトとともに質量が増加する。例えば、アイアンタイプのゴルフクラブヘッドの質量は、次の方程式に従う場合があり得る。
mh=2.1(g/度)*LA+a (式1)
ここで、mhはゴルフクラブヘッド質量(g:グラム)であり、LAは、基準位置に向けられたときのクラブヘッドのロフト角(degree:度)であり、aは、109gから210gの間である。1つ又は複数の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、改善されたフェース厚さパターンを有する一方、そのようなゴルフクラブヘッド質量mhを維持する。そのようなクラブヘッドは、CGを通って延びる垂直MOIであるIzzを備えた改善されたフェース厚さパターンを有することができ、それは以下を満たす。
Izz>mh*9.0cm2 (式2)
【0009】
本開示の1つ又は複数の態様では、ゴルフクラブヘッドは、基準位置に向けられた場合、トウ、前記トウの反対側であるヒール、ソール及び前記ソールと反対側のトップ部を含むゴルフクラブヘッド本体を含む。前記ゴルフクラブヘッド質量mhは、式1を満たす。また、クラブヘッドのブレード長さは80mm未満である。前記クラブヘッドの前記打撃フェースは、フェース平面を定義し、かつ、フェース中心と、前記フェース平面に垂直でフェース中心を通って上下に延びる仮想中心平面とを備える。本明細書において、打撃フェースのフェース中心は、USGAの「ゴルフクラブヘッドの柔軟性を測定するための手順」(Rev. 2.0、2005年3月25日)に記載されている手順にしたがって、決定される。クラブヘッドのCGは、前記仮想中心平面から2.0mm以内に位置し、CGを通って延びる垂直軸の周りのMOIであるIzzは、Izz>mh*9.3cm2を満たす。
【0010】
いくつかの態様では、前記打撃フェースは、フェース中心を含む中央領域と、前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域と、前記中央領域の上の上部領域と、前記中央領域の下の下部領域と、前記中央領域のトウ側のトウ領域とを含む。前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域、及び、前記トウ領域のそれぞれは、最大幅及び平均厚さを含み、前記中間領域は、前記中央領域と、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれとの間に配置されている。前記中間領域の平均厚さは、前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれの平均厚さよりも大きい。1つ又は複数の実施形態では、前記中間領域は、前記中央領域を完全に取り囲む。
【0011】
いくつかの態様によれば、前記トウ領域、前記上部領域及び前記下部領域の少なくとも1つは、その背面に、約2.0mm以上の幅を有する細長い溝又は凹部を含む。代替的又は追加的に、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域は、それぞれ、その背面に、概してトウ・ヒール方向に延びる上部溝又は凹部、概してトウ・ヒール方向に延びる下部溝又は凹部、及び、概して上下方向に延びるトウ溝又は凹部を含む。
【0012】
本開示の1つ又は複数の態様では、ゴルフクラブヘッドは、基準位置に向けられた場合、トウ、前記トウの反対側のヒール、ソール、及び、前記ソールの反対側のトップ部を有するゴルフクラブヘッド本体を含む。前記クラブヘッドのフェースインサートは、前記ゴルフクラブヘッド本体に固定された質量mfを有し、フェース平面を規定する打撃フェースを含む。ゴルフクラブヘッド質量mhは、式1を満たす。前記クラブヘッドのブレード長さは80mm未満であり、前記クラブヘッドのCGを通る垂直軸を中心としたMOIであるIzzは、Izz>mh*9.3cm2を満たす。また、比mf/mhは0.22以下である。1つ又は複数の実施形態では、アイアンタイプのゴルフクラブヘッドの比mf/mhは、0.20以下である。
【0013】
いくつかの態様では、前記打撃フェースは、第1の反発係数であるCOR1に対応するスイートスポットと、第2の反発係数であるCOR2に対応する前記スイートスポットから少なくとも7.5mmを隔てた補助位置とを含み、そこでは、COR2≧0.98*COR1である。いくつかの実施形態では、前記打撃フェースの可変の厚さは、前記スイートスポットの近くでより高いCORを提供し、前記スイートスポットを含む領域でCORを増加させ、及び/又は、前記スイートスポットの近くでより高いCORのより大きな領域を提供することができる。別の態様では、前記打撃フェースからの質量の再配置は、CGを移動させて、前記スイートスポットが、より高いCORを有する領域及び/又はプレーヤーによる打撃フェースのより頻繁に打撃される領域に対応するように構成できる。例えば、前記打撃フェースの前記中央領域は、より一般的にプレーヤーによって打撃される打撃フェースの領域のCORを改善するために、トウ側領域よりも厚いヒール側領域を含んでも良い。
【0014】
本開示の打撃フェースの背面の溝又は凹部は、MOIを増やし、又は、クラブヘッドのCGをより適切に配置して性能を向上させるために、打撃フェースのCORを増加させるだけでなく、打撃フェースからクラブヘッドの他の領域に質量を再配置することによってクラブヘッドの重量分布を改善することもできる。前記打撃フェースの質量が減少しているにもかかわらず、前記打撃フェースが耐久性について試験されたときに、従来技術のクラブヘッドに匹敵するように、前記打撃フェースの応力制限を制約として、凹部又は溝を決定することもできる。
【0015】
本開示の1つ又は複数の側面において、ゴルフクラブヘッドを製造する方法は、打撃フェース、ヒール部、前記ヒール部の反対側のトウ部、ソール、前記ソールの反対側のトップ部、及び、80mm以下のブレード長さを含むゴルフクラブヘッド本体を形成することを含む。前記打撃フェースの厚さパターンは、前記打撃フェース上に、フェース中心を含む中央領域と、前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域と、前記中央領域の上の上部領域と、前記中央領域の下の下部領域と、前記中央領域のトウ側のトウ領域とを定義することによって形成される。前記中間領域は、前記中央領域と、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれ、又は少なくとも1つとの間に配置することができる。前記中央領域は、前記中央領域が前記中間領域よりも薄い厚さを有するように凹んでいる。前記トウ領域、前記上部領域及び前記下部領域のうちの少なくとも1つは、凹んだ領域が前記中央領域の厚さよりも薄い厚さを有するように凹んでいる。可変フェース厚さパターンは、前記打撃フェースが、第1の反発係数であるCOR1に対応するスイートスポットと、第2の反発係数であるCOR2に対応する前記スイートスポットから少なくとも7.5mmを隔てた補助位置を含むように形成され、そこでは、COR2≧0.98*COR1である。
【0016】
本開示の1つ又は複数の態様では、ゴルフクラブヘッドを製造する方法は、打撃フェース、ヒール、前記ヒールの反対側のトウ、ソール、及び前記ソールの反対側のトップ部を有するゴルフクラブヘッド本体を形成することを含む。可変厚さパターンは、打撃フェース上に、フェース中心を有する中央ゾーンを含む複数のパラメータ化ゾーンを定義することによって、コンピューティングデバイスを用いて決定される。各パラメータ化ゾーンは、可変の第1のパラメータ及び可変の第2のパラメータのうちの少なくとも1つを含む。目標値は、それぞれの第1の制約、第2の制約及び第3の制約のうちの少なくとも1つに設定される。少なくとも1つの可変の第1のパラメータ及び第2のパラメータのそれぞれは、パラメータ化ゾーンごとに変化する。ゴルフボールによる打撃フェースの衝撃をシミュレートし、結果の値を、第1の制約、第2の制約及び第3の制約のうちの少なくとも1つの目標値に対して評価する。決定された可変厚さパターンは、評価に基づいて打撃フェースに形成される。一部の実施では、第1の制約は打撃フェースの質量であり、第2の制約は前記打撃フェースの機械的応力であり、第3の制約は、前記打撃フェースのさまざまな部分のCORに基づく打撃フェースの全体的な有効又は予想CORを表す重み付けCORであり、これは、予想されるゴルフボールの衝撃確率によって重み付けされている。さらに、いくつかの実施形態では、可変の第1のパラメータ及び可変の第2のパラメータは、パラメータ化ゾーン又は領域の可変の最大幅及び可変の厚さを含み得る。
【0017】
本開示の1つ又は複数の態様では、ゴルフクラブヘッドを製造する方法は、打撃フェース、ヒール、前記ヒールの反対側のトウ、ソール、及び、前記ソールの反対側のトップ部を有するゴルフクラブヘッド本体を形成することを含む。可変厚さパターンは、前記打撃フェース上に、前記打撃フェースのフェース中心を含む中央領域と、前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域と、前記中央領域の上の上部領域と、前記中央領域の下の下部領域と、前記中央領域のトウ側のトウ領域とを、コンピューティングデバイスを用いて定義することによって決定される。前記中央領域、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれは、可変幅パラメータ及び可変厚さパラメータを含む。前記中間領域は、前記中央領域と、前記上部領域、前記下部領域及び前記トウ領域のそれぞれとの間に配置される。目標値は、それぞれの第1の制約、第2の制約及び第3の制約のうちの少なくとも1つに設定される。可変の第1のパラメータ及び可変の第2のパラメータのそれぞれは、打撃フェースの領域ごとに変化する。ゴルフボールによる打撃フェースの衝撃がシミュレートされ、結果の値が、少なくとも1つの第1の制約、第2の制約、及び第3の制約の目標値に対して評価される。決定された可変厚さパターンは、前記評価に基づいて前記打撃フェースに形成される。
【0018】
上記の様々な例示的な態様は、個別に又は様々な組み合わせで実施することができる。本開示のゴルフクラブヘッドの前述の特徴及び利点、ならびに他の特徴及び利点は、以下の説明、添付の図面、及び添付の特許請求の範囲を検討した後、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の実施形態の特徴及び利点は、図面と併せて解釈される場合、以下に記載される詳細な説明からより明らかになるであろう。図面及び関連する説明は、本開示の実施形態を説明するために提供されており、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0020】
【
図1】
図1 は、1つ又は複数の実施形態による例示的なゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図2】
図2は、1つ又は複数の実施形態による例示的なキャビティバッククラブヘッドの背面図である。
【
図3】
図3は、1つ又は複数の実施形態による、
図2のキャビティバッククラブヘッドのヒール側の側面図である。
【
図4】
図4は、1つ又は複数の実施形態による、
図2のキャビティバッククラブヘッドの断面図である。
【
図5】
図5は、1つ又は複数の実施形態による例示的な中空クラブヘッドの背面図である。
【
図6】
図6は、1つ又は複数の実施形態による、
図5の中空クラブヘッドの断面図である。
【
図7】
図7は、1つ又は複数の実施形態による、キャビティバッククラブヘッドの打撃フェースの例示的な背面を示す。
【
図8】
図8は、1つ又は複数の実施形態による、中空クラブヘッドの打撃フェースの例示的な背面を示す。
【
図9】
図9は、1つ又は複数の実施形態による厚さパターンを含む、クラブヘッドの打撃フェースの例示的な背面を示す。
【
図10】
図10は、1つ又は複数の実施形態による、異なる厚さパターンを含むクラブヘッドの打撃フェースの例示的な背面を示す。
【
図11】
図11は、1つ又は複数の実施形態による打撃フェースの例示的な厚さパターン形成方法のフローチャートである。
【
図12】
図12は、1つ又は複数の実施形態による、打撃フェースの別の例示的な厚さパターン形成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ゴルフクラブヘッドの1つ又は複数の新規かつ非自明な態様及び特徴の代表的な例、ならびに以下に開示されるそのようなクラブヘッドを製造する方法は、いかなる方法でも限定することを意図するものではない。さらに、本開示の様々な態様及び特徴は、単独で、又は様々な新規で非自明な組み合わせ及び互いにサブコンビネーションで使用することができる。
【0022】
図1は、1つ又は複数の実施形態による例示的なゴルフクラブヘッド100の正面図である。
図1に示されるように、クラブヘッド100は、トウ部102、ヒール部104、トップライン部106、及びソール部111を含む。クラブヘッド100はまた、ヒール部104から延びるホーゼル110を含む。ホーゼル110は、ゴルフクラブのゴルフクラブシャフト(図示せず)を受け入れるための開放端を含み得る。ホーゼル軸20は、ホーゼル110の中心を通って軸方向に延び、仮想垂直ホーゼル平面(例えば、
図3に示される仮想垂直ホーゼル平面21)内にある。打撃フェース109を含むクラブヘッド100は、例えば、鋼材料で形成することができる。
【0023】
図1において、クラブヘッド100は、ソール部111が仮想の地面13と接触し、中心ホーゼル軸20が仮想垂直ホーゼル平面にあるように基準位置に向けられている。本明細書で使用される場合、クラブヘッドのソール(例えば、ソール部111)が仮想の地面(例えば、仮想の地面13)と接触し、その中心ホーゼル軸(例えば、中心ホーゼル軸20)が垂直面内に配され、そのスコアライン(例えば、スコアライン112)が地面に平行である場合に、クラブヘッドは「基準位置」に向けられる。この基準位置では、クラブヘッド100は、所定のロフト角(LA)(すなわち、
図3のLA)及び所定のライ角(すなわち、
図2のα)に配置されている。特に明記しない限り、本開示における様々な実施形態のすべてのパラメータは、基準位置に向けられたクラブヘッドで指定される。
【0024】
1つ又は複数の実施形態では、ロフト角LAは、約18度から約40度の範囲である。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッドはウェッジタイプのゴルフクラブヘッドであり、ロフト角LAは約40度から約64度の範囲である。
【0025】
図1に示されるように、クラブヘッド100は、従来のゴルフボールを打つように構成された打撃フェース109を含む。いくつかの実装形態では、打撃フェース109は、クラブヘッド100の本体に固定的に取り付けられたフェースインサートの一部を形成し得る。他の実施形態では、打撃フェース109は、クラブヘッド100の本体の一部として一体的に形成されても良い。打撃フェース109には、1つ又は複数の溝又はスコアライン112が設けられており、それは打撃時にゴルフボールに追加のスピンを与える。
図1において、打撃フェース109は、フェース中心14を含み、それは、打撃フェース109によって定義されるフェース平面(例えば、
図3のフェース平面22)に垂直で、かつ、フェース中心14を通って上下に延びる仮想中心平面10上に位置する。本明細書で使用される場合、打撃フェースの「フェース中心」は、全米ゴルフ協会(USGA)の“Procedure for Measuring the Flexibility of a Golf Clubhead” (Revision 2.0、2005年3月25日)に記載された手順にしたがって、決定される。
図1の例では、 フェース中心14は、スコアライン112のヒールからつトウまでの範囲の中間であり、打撃フェース109のソールからトップラインまでの範囲の中間である打撃フェース109上の点を示す。他の実施形態では、スコアラインは、打撃フェースのトウ側の縁まで延びても良い。そのような実施形態では、フェース中心の横方向の位置は、スコアラインの最もヒールの位置と、
図1のクラブフェース頂点107などのクラブフェース頂点との間の中間として決定される。
【0026】
図1の例では、スイートスポット16は、仮想中心平面10からヒール部104に向かって水平距離CGHである打撃フェース109上に位置している。スイートスポット16は、仮想垂直CG平面12上に位置し、スイートスポット16は、クラブヘッド100のCG(例えば、
図2のCG18)を通過する仮想線が、打撃フェース109のフェース平面(例えば、
図3のフェース平面22)に垂直に投影された打撃フェース109上に位置する。本明細書で使用される場合、クラブヘッドの「スイートスポット」は、打撃フェースのフェース平面に垂直に投影された仮想線がクラブヘッドのCG位置を通過する、クラブヘッドの打撃フェース上の位置として定義される。
【0027】
以下でより詳細に説明するように、打撃フェース109は、クラブヘッド100の改善された質量及び/又は性能特性を提供するために、打撃フェース109の異なる領域又はパラメータ化ゾーンにおいて可変の厚さで形成されている。このような特性には、例えば、より広い領域及び/又はより一般的な打撃フェース109の打撃領域でのより大きな反発係数(COR)及び/又はより大きな特性時間(CT)、仮想垂直CG軸(例えば、
図4の仮想垂直CG軸24)の周り及び/又は仮想水平CG軸(例えば、
図2の仮想水平CG軸15)の周りのより大きな慣性モーメント(MOI)、及び/又はクラブヘッド100の改善されたCG位置を含む。これらの質量及び性能特性の改善は、異なる領域又はパラメータ化ゾーンの選択的な薄肉化又は厚肉化、及び/又は、打撃フェースからクラブヘッドの他の部分への任意の質量の再配置によって達成することができる。本明細書で使用される場合、打撃フェースの厚さは、打撃フェースによって定義されるフェース平面(例えば、
図3のフェース平面22及び
図6のフェース平面42)に垂直に測定される。
【0028】
クラブヘッドの総質量は、構造的質量と任意的質量とからなる目標総質量として機能する場合がある。本明細書で使用される構造的質量は、一般に、クラブヘッドがその意図された使用のために動作可能であるための最小の構造的完全性を確立するために必要な質量を指す。一方、任意的質量は、目標質量が与えられた場合、クラブヘッドの最小の構造的完全性を確立するために必要とされない残りの質量を指すことができ、したがって、主にクラブヘッドの質量及び/又は性能特性を調整するために配置することができる。
【0029】
打撃フェースの特定の場所でCOR値を増加させながら、クラブヘッド100のより高いMOI及びクラブヘッド100のCGのための改善された位置(例えば、
図2のCG18)を提供するために、例えば、打撃フェース109の異なる領域又はパラメータ化ゾーンの厚さは、質量がそのような領域又はパラメータ化ゾーンからクラブヘッド100内の他の場所に移動する結果となる可能性がある。例えば、打撃フェースの特定の領域から除去された質量は、打撃フェースのCORを改善することができ、除去された質量はクラブヘッドに再配置することができる。その結果、クラブヘッド100のCGは、仮想中心平面10により近く、仮想の地面13により近く、打撃フェース109のさらに後ろに有利に配置することができる。結果として、スイートスポット16は、有利には、フェース中心14の近くに配置されて、プレーヤーの予想されるスイートスポット位置及び/又はより頻繁に打撃されるフェースの打撃領域によりよく対応することができ、また、ショットの高さ、真直度、距離の観点でより良いオフセンターショットを実現するより寛容なクラブヘッドを提供する。これに関して、いくつかの実施形態におけるスイートスポット16は、本開示による、打撃フェース109からの質量の再配置の結果として、フェース中心14から水平方向に2.0mm以下で配置することができる。換言すると、そのような実装におけるクラブヘッド100のCG(例えば、
図2のCG18)は、仮想中心平面10から2.0mm以下に配置することができる。1つ又は複数の実施形態では、この横方向のCG位置を有するゴルフクラブヘッドは、高密度材料(例えば、タングステン合金)を含まない。
【0030】
上記のように、以下でより詳細に論じられる打撃フェースの可変の厚さパターンは、より一般的に打撃される場所、又は、打撃フェースのより広い領域でCORを増加させ、中心から外れたショット又は統計的に多くのショットに対してより良いエネルギー伝達を提供する。追加的又は代替的に、打撃フェースについて開示された可変の厚さパターンは、比較的高いCORを有する打撃フェースの面積を増加させることができる。例えば、いくつかの実装形態では、
図1の打撃フェース109は、第1の位置で0.80以上の最大CORと、第1の位置から7.5mm以上離れている打撃フェースの補助位置で最大CORの98%以上のCORとを含むことができる。そのような実装では、最大CORに対応する第1の位置は、スイートスポット16の5mm以内など、スイートスポット16又はその近くであっても良い。打撃フェースのCORを改善するために以下で論じられる可変厚さパターンのいくつかの実装は、例えば、ヒール側の厚さがトウ側領域よりも大きい打撃フェースの中央領域を含む。
【0031】
図2は、1つ又は複数の実施形態による例示的なキャビティバッククラブヘッドの背面図である。これに関して、
図2のクラブヘッド100は、打撃フェース109の少なくとも一部の後ろの後方キャビティ114と、ソール部111の近くの後部マッスル116とを含む。説明を容易にするために、
図2は、
図1からのクラブヘッド100の背面図を提供する。しかしながら、当業者は、本開示を参照し、クラブヘッド100が他の実装において異なる構造、例えば、
図6に示す中空体構造などを含み得ることを理解するであろう。
【0032】
図2に示されるように、CG18は、仮想水平CG軸15上にある。ゴルフクラブヘッド100の水平MOIであるIxxは、仮想水平CG軸15の周りに示され、これは、CG18を通って延び、打撃フェース109に平行である。上記のように、打撃フェース109の厚さを異ならせることによって達成される質量の減少は、Ixxの増加を可能にすることができ、それにより、打撃フェース109に沿った上下方向で(例えば、トップライン部106の側に、又はソール部111の側に)、中心から外れたショットについてのゴルフクラブヘッド100の性能を改善する。
【0033】
図2のクラブヘッド100は、仮想垂直トウ平面25におけるクラブヘッド100のトウ部と、ホーゼル軸20と地面13との交点(これはまたライ角αを定義する)との間で測定されたブレード長さ(BL)を有する。いくつかの実装形態では、クラブヘッド100は、80mm未満のブレード長さBLを有することができる。このブレード長さは、例えば、アイアンタイプのクラブヘッドの予想されるブレード長さBLに一致する場合があり得る。これに関して、クラブヘッド100の従来の外形寸法、例えば、ブレード長さBL又はトップライン部106のトップライン厚さ(例えば、
図3のTLT)を犠牲にすることなく、打撃フェース109の厚さを変更することができる。さらに、いくつかの実装におけるクラブヘッド100の全体的又は目標のクラブヘッド質量(例えば、スイング重量)は、アイアンタイプのクラブヘッドの予想される質量に一致し得る。
【0034】
上記のように、アイアンタイプのクラブヘッドの質量は通常、ロフト角(LA)に基づいて変化する。セットで提供される場合、アイアンタイプのクラブヘッドは、ロフトにしたがって質量を増やすことができる。例えば、アイアンタイプのクラブヘッドの質量は、次の方程式にしたがっても良い。
mh=2.1(g/度)*LA+a (式1)
ここで、mhはゴルフクラブヘッド質量(g)、LAは基準位置に向けられたときのクラブヘッドのロフト角(度)、aは109g~210gである。いくつかの実装形態では、クラブヘッド100は、改善されたフェース厚さパターンを有しながら、そのようなヘッド質量mhを維持する。
【0035】
図3は、1つ又は複数の実施形態によるクラブヘッド100のヒール側の側面図である。
図3に示されるように、クラブヘッド100のLAは、フェース平面22と仮想垂直ホーゼル平面21との間に定義される。上記のように、ホーゼル軸20は、ホーゼル110の中心を通って軸方向に延び、仮想垂直ホーゼル平面21内にある。フェース平面22は、打撃フェース109がフェース平面22内にあるように定義される。上記の式1を参照すると、クラブヘッド100のクラブヘッド質量は、LAの角度が大きいクラブの番号が大きいほど、クラブのヘッド質量が大きくなるように、クラブヘッド100のロフト角LAに応じて変化し得る。
【0036】
図3に示されるように、フェース平面22と後側面26との間の距離は、トップライン厚さ(TLT)を定義し、これは、
図1に示されるトップライン部106の厚さに対応している。クラブヘッド100のトップライン厚さTLTは6.5mm以下である。このトップライン厚さTLTは、アイアンタイプのクラブヘッドに期待されるトップライン厚さTLTに対応することができる。これに関して、クラブヘッド100のトップライン厚さTLTなど、一部のゴルファーによって好まれる可能性があるクラブヘッド100の従来の外形寸法を犠牲にすることなく、打撃フェース109の厚さパターンに変更を加えることができる。
【0037】
図4は、1つ又は複数の実施形態による、
図1の断面線4に沿ったクラブヘッド100の断面図である。
図4に示されるように、後方キャビティ114及び後部マッスル116に面する打撃フェース109の後面は、上部領域溝(上部溝)118、中央領域凹部120及び下部領域溝(下部溝)122を含む。打撃フェース109がフェースインサートを含む実施形態では、フェースインサートの後面は、上部領域溝118、中央領域凹部120、及び下部領域溝122を含むことができる。
【0038】
打撃フェース109の背面はまた、中央領域凹部120を含む中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域108を含む。これに関して、中間領域108は、中央領域凹部120の上及び下にそれぞれ、上部中間領域108
U及び下部中間領域108
Lを含む。中央領域凹部120、上部領域溝118、及び下部領域溝122をそれぞれ含む中央領域、上部領域、及び下部領域のそれぞれは、中間領域108の平均厚さよりも薄い平均厚さを有し、ほぼ均一な厚さを持つ場合がある。上部領域溝118及び下部領域溝122は、それぞれ、
図7及び
図8の上部領域溝318及び418ならびに下部領域溝322及び422の例のように、概してトウ・ヒール方向に延びることができる。
【0039】
いくつかの実装形態では、上部領域溝118及び下部領域溝122のうちの少なくとも1つは、約2.0mm以上の幅を有する細長い溝であっても良い。さらに、いくつかの実施形態では、中央領域凹部120の厚さは、
図7の中央領域凹部320の例のように、中央の凹部のヒール側の領域が中央凹部のトウ側の領域よりも厚くなり得るようにテーパー状とされても良い。他の実施例として、中央領域凹部は、
図8のヒール側領域435及びトウ側領域433の例のように、トウ側領域よりも厚いヒール側領域を含むことができる。いくつかの実装形態では、中央領域の厚さは、中央領域のヒール側から中央領域のトウ側に向かって段階的に減少し得る。
【0040】
図4において、Izzは、仮想垂直CG軸24を中心としている。打撃フェース109から除去又は維持されて上部領域溝118、中央領域凹部120、及び下部領域溝122を形成する任意的質量は、Izzを増加させるためにヒール部104及びトウ部102に再配置することができる。いくつかの実装では、Izzは次の条件を満たす場合があり得る。
Izz>mh*9.3cm
2 (式2)
ここで、 mh は、ゴルフクラブヘッド100の質量である。上記のように、CG18を通って延びる仮想垂直CG軸24の周りのMOIを増加させることは、打撃フェース109に沿った水平方向での中心から外れたショット(例えば、スイートスポット16のよりトウ側又はヒール側のショット)中に、仮想垂直CG軸24の周りのクラブヘッド100の曲がりを少なくするように、クラブヘッド100の寛容性を改善する。
【0041】
さらに、打撃フェース109の可変の厚さパターンは、より一般的に打撃される場所又は打撃フェースのより広い領域に対応する打撃フェース109上の位置でCORを増加させることができ、中心から外れたショット又は統計的に多くのショットに対してより良いエネルギー伝達を提供する。上部領域溝118、中央領域凹部120、及び下部領域溝122を有する打撃フェース109の可変厚さパターンは、比較的高いCORを有する打撃フェースの面積を増加させることができる。
【0042】
例えば、打撃フェース109の特定の領域から除去された質量は、打撃フェース109のCORを改善することができ、除去された質量は、クラブヘッド100に再配置することができ、それにより、CG18は、打撃フェース109の横方向中心により近く、仮想の地面13により近く、打撃フェース109のより後方に有利に配置することができる。そのような例では、機械加工(例えば、研削、フライス加工)又は既知の鋳造又は鍛造プロセスなどによって、上部領域溝118、下部領域溝122及び中央領域凹部120を形成するために打撃フェース109から除去又は保存された質量はCG18の位置を下げ、CG18を打撃フェース109のさらに後ろに移動させるために、後部マッスル116に再配置することができる。他の例として、打撃フェース109から除去された質量は、打撃フェース109のヒール側から打撃フェース109のトウ側に再配置され、CG18をヒール部104からトウ部102の側に移動させることができる。
【0043】
当業者は、本開示を参照して、別の実装が
図4に示される配置とは異なる可能性があることを理解するであろう。例えば、キャビティバッククラブヘッドの他の実装は、異なる形状の後方キャビティ114又は後部マッスル116を含んでも良い。別の例示的な変形例として、上部領域溝118、中央領域凹部120及び下部領域溝122のうちの1つ又は複数の断面形状は、別の実施形態で
図4に示されているものとは異なる場合があり得る。さらに別の例示的な変形例として、いくつかの実装形態は、中央領域凹部120を含まなくてもよく、上部領域溝118及び/又は下部領域溝122など、打撃フェース109の後面の周辺に隣接する1つ又は複数の溝のみを含んでも良い。
【0044】
図5は、1つ又は複数の実施形態による例示的な中空のクラブヘッド200の背面図である。打撃フェース209を含むクラブヘッド200は、例えば、鋼材料で形成することができる。
図1から
図4のクラブヘッド100と同様に、クラブヘッド200は、ホーゼル210、トウ部202及びヒール部204を含む。しかしながら、
図2及び
図4のクラブヘッド100用の後方キャビティ114のような後部キャビティを有する代わりに、
図5及び
図6のクラブヘッド200は、
図6に示されるように、打撃フェース209の少なくとも一部の後ろに内部キャビティ224を含む。いくつかの実装形態では、打撃フェース209は、クラブヘッド200の本体に固定的に取り付けられたフェースインサートの一部を形成しても良い。他の実施形態では、打撃フェース209は、クラブヘッド200の本体の一部として一体的に形成されても良い。説明を容易にするために、
図5は、
図1のクラブヘッド100と同様の外観を有することができるクラブヘッド200の背面図を提供する。しかしながら、当業者は、本開示を参照して、クラブヘッド200が、
図5及び6に示されるものとは異なる他の実装形態に異なる構造を含んでも良いことを理解するであろう。
【0045】
図5に示されるように、CG48は、仮想水平CG軸45上に配置されている。クラブヘッド200の水平MOIであるIxxは、仮想水平CG軸45の周りに示され、これは、CG48を通って延び、
図6に示される打撃フェース209に平行である。打撃フェース209の厚さを変えることによって達成される質量の減少は、質量をクラブヘッド200の他の部分に再配置することによってIxxの増加を可能にすることができ、それにより、打撃フェース209に沿った垂直方向において、中心から外れたショット(例えば、トップライン部206の側に、又はソール部211の側に外れたショット)のためのゴルフクラブヘッド200の性能を改善する。
【0046】
いくつかの実装形態では、クラブヘッド200は、80mm未満のブレード長さBLを有しても良い。 このブレード長さは、例えば、アイアンタイプのクラブヘッドの予想されるブレード長さBLに一致する場合があり得る。これに関しては、ブレード長さBL又はトップライン部206のトップライン厚さなど、クラブヘッド200の従来の外形寸法を犠牲にすることなく、打撃フェース209の厚さを変更することができる。さらに、いくつかの実装形態では、クラブヘッド200の全体的又は目標のクラブヘッド質量(例えば、スイング重量)は、アイアンタイプのクラブヘッドの期待される質量に一致し得る。
【0047】
上記のように、アイアンタイプのクラブヘッドの質量は通常、ロフト角(LA)に基づいて変化する。
図6に示すように、クラブヘッド200のロフト角LAは、フェース平面42と仮想垂直ホーゼル平面41との間で規定される。仮想垂直ホーゼル平面41は、ホーゼル210の中心を通って軸方向に延びるホーゼル軸40を含む。フェース平面42は、打撃フェース209がフェース平面42内にあるように定義される。クラブヘッド200の質量は、改善されたフェース厚さパターンを有しながら、ロフト角LAに関して上記で提供された式1を満たすことができる。さらに、クラブヘッド200は、典型的なハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッドよりも浅い深さを有することができる。例えば、クラブヘッド200は、クラブヘッド200のソール部211のリーディングエッジからトレーリングエッジまで測定して、30mm未満の深さを有しても良い。上記のように、打撃フェース209からの質量の再配置は、通常、従来のアイアンタイプのゴルフクラブヘッドの予想される寸法、フットプリント、又は外観を変更することなく、MOIの増加、より良いCGの位置、COR又はCTの増加などの性能及び質量特性の改善を可能にする。
【0048】
図6は、1つ又は複数の実施形態による、
図5の断面線6に沿ったクラブヘッド200の断面図である。
図6に示されるように、内部キャビティ224及び後部マッスル216に面する打撃フェース209の後面は、上部領域溝218、及び中央領域凹部220を含む。打撃フェース209がフェースインサートを含む実施形態では、フェースインサートの後面は、上部領域溝218及び中央領域凹部220を含むことができる。
【0049】
打撃フェース209の背面はまた、中央領域凹部220を含む中央領域を少なくとも部分的に取り囲む中間領域208を含む。これに関して、中間領域208は、中央領域凹部220の上及び下にそれぞれ、上部中間領域208
U及び下部中間領域208
Lを含む。中央領域凹部220を含む中央領域及び上部領域溝(又は凹部)218を含む上部領域のそれぞれは、中間領域208の平均厚さよりも薄い平均厚さを有する。いくつかの実装形態では、中間領域208は、ほぼ均一な厚さを有しても良い。上部領域溝218は、それぞれ
図7及び
図8の上部領域の溝318及び418の例のように、概してトウ・ヒール方向に延びることができる。
【0050】
いくつかの実装形態では、上部領域溝218は、約2.0mm以上の幅を有する細長い溝を有しても良い。さらに、中央領域凹部220の厚さは、
図7の中央領域凹部320の例のように、いくつかの実装形態では、中央領域凹部のヒール側の領域が中央領域凹部のトウ側の領域よりも厚くなるように、テーパー状とされても良い。別の例として、中央領域凹部は、
図8のヒール側領域435及びトウ側領域433の例のように、トウ側領域よりも厚いヒール側領域を含むことができる。
【0051】
図7から
図10を参照して以下でより詳細に論じられるように、中央領域の厚さ又は中央領域凹部のそのようなテーパー状又は変化はまた、通常、中央領域のCORを改善し、及び/又は、より大きなCORを有する打撃フェース209の面積を増加させることができる。さらに、打撃フェース209の異なる領域又はパラメータ化ゾーンの厚さは、そのような領域又はパラメータ化ゾーンからクラブヘッド200内の他の場所に移動する質量をもたらし、打撃フェースの特定の場所でCOR値を増加させながら、クラブヘッド200のより高いMOIとCG48の改善された場所を提供する。
【0052】
例えば、打撃フェース209の特定の領域から除去された質量は、打撃フェース209のCORを改善することができ、また、除去された質量は、CG48が、打撃フェース209の横方向の中心により近く、仮想の地面13により近く、打撃フェース209のより後方に有利に配置されるように、クラブヘッド200に再配置することができる。そのような例では、機械加工、既知の鋳造又は鍛造プロセスなどによって、打撃フェース209から除去されて上部領域溝218及び中央領域凹部220を形成する質量を、後部マッスル216に再配置して、CG48の位置を下げ、CG48を打撃フェース209のさらに後ろに移動させ得る。いくつかの実装形態では、打撃フェース209は、別個に形成され、溶接又は他の既知の方法によってクラブヘッド200の本体に取り付けられても良い。別の例として、打撃フェース209から除去された質量は、打撃フェース209のヒール側から打撃フェース209のトウ側に再配置され、CG48をヒール部204からトウ部202の側に移動させることができる。
【0053】
結果として、打撃フェース209上のスイートスポット(例えば、
図1のスイートスポット16)は、プレーヤーに予想されるスイートスポット位置又は打撃フェース209のより頻繁にヒットする位置によりよく対応するように、フェース中心(例えば、
図1のフェース中心14)の近くに有利に配置することができる。これに関して、いくつかの実装形態におけるクラブヘッド200のスイートスポットは、打撃フェース209からの質量の再配置の結果として、フェース中心から水平に2.0mm以下で配置することができる。
【0054】
上記のように、打撃フェースの可変厚さパターンは、より一般的に打撃される場所に対応する打撃フェース209上の位置でCORを増加させることができ、統計的に多くのショットに対してより良いエネルギー伝達を提供し、打撃フェースの重み付けCORを改善する。追加的又は代替的に、打撃フェースについて開示された可変の厚さパターンは、比較的高いCORを有する打撃フェースの面積を増加させることができる。例えば、いくつかの実装形態では、打撃フェース209は、第1の位置で0.80以上の最大CORと、第1の位置から7.5mm以上である打撃フェース209の補助位置で最大CORの98%以上のCORを含むことができる。そのような実装では、最大CORに対応する第1の位置は、スイートスポットから5mm以内など、スイートスポット又はその近くであっても良い。打撃フェースのCORを改善するために以下で論じられる可変厚さパターンのいくつかの実装は、例えば、ヒール側の厚さがトウ側の領域よりも大きい打撃フェースの中央領域を含む。
【0055】
図6において、Izzは、仮想垂直CG軸44を中心にしている。打撃フェース209から除去又は保存されて上部領域溝218及び中央領域の凹部220を形成する任意的質量を、ヒール部204及びトウ部202に再配置して、Izzを増加させることができる。いくつかの実装では、Izzは上記の式2を満たす場合があり得る。CG48を通って延びる仮想垂直CG軸44の周りのMOIを増加させると、打撃フェース209に沿った水平方向の、中心から外れたショット(例えば、スイートスポットのトウ側又はヒール側でのショット)中に仮想垂直CG軸44の周りのクラブヘッド200の曲がりが少なくなるようにクラブヘッド200の寛容性が改善される。
【0056】
当業者は、本開示を参照して、他の実装が
図5及び6に示される構成とは異なる可能性があることを理解するであろう。例えば、中空クラブヘッドの他の実装は、異なる形状の内部キャビティ214又は後部マッスル216を含むことができる。別の例示的な変形例として、上部領域溝218又は中央領域凹部220の断面形状は、他の実施形態で
図4に示されているものとは異なる場合があり得る。これに関して、他の実装はまた、上で論じられた
図4の例のように、より低い領域の溝を含んでも良い。さらに他の実施形態では、中央領域凹部220は省略されてもよく、その結果、打撃フェース209の後面の凹部は、上部領域溝218など、後面の周辺に隣接する1つ又は複数の溝又はチャネルのみを含んでも良い。
【0057】
図7は、1つ又は複数の実施形態による、
図2から4のキャビティバッククラブヘッド100などのキャビティバッククラブヘッドの打撃フェース309の例示的な背面328を示す。
図7に示されるように、背面328は、上部領域、中央領域、トウ領域及び下部領域に凹部を含む。より詳細には、背面328は、背面328の周辺に隣接する上部領域溝又はチャネル318、トウ領域溝(トウ溝)又はチャネル326、及び下部領域溝又はチャネル322を含む。中央領域凹部320は、上部領域溝318、トウ領域溝326及び下部領域溝322の間の中央領域に形成される。中間領域308は、中央領域凹部320を取り囲み、中央領域凹部320と、上部領域溝318、トウ領域溝326、及び下部領域溝322のそれぞれとの間に配置される。さらに、中間領域308は、中央領域凹部320、上部領域の溝318、トウ領域の溝326及び下部領域の溝322のそれぞれの平均厚さよりも厚い平均厚さを有する。
【0058】
中央領域凹部320の好ましい寸法は、2.5mm以下のフェース厚さを有し、これは、好ましくは、中央領域凹部320のヒール側の2.3mmから中央領域凹部320のトウ側の1.9mmまでテーパー状になる。上部領域溝318の好ましい寸法は、1.5mm以下のフェース厚さ及び5.0mm以上の最大幅を有する。トウ領域溝326の好ましい寸法は、上部領域溝318よりも薄いフェース厚さ、及び、2.0mm以上の最大幅を有する。下部領域の溝322の好ましい寸法は、1.5mm以下のフェース厚さ、すなわち、好ましくは、トウ領域溝326よりも大きく、幅が2.5mmである。本明細書において、溝又はチャネルの幅は、溝又はチャネルのより長い対向面間の最大垂直距離によって定義される。中央領域凹部320、上部領域溝318、トウ領域溝326及び下部領域溝322の凹部を取り囲む中間領域308の好ましい厚さは、3mm未満及び2.5mmより大きく、好ましくは約2.7mmの厚さを有する。
【0059】
図7の背面328の凹部のいくつかの好ましい寸法は、以下の表1の寸法を含むことができる。以下で使用するように、厚さは打撃フェース309の厚さを指し、幅は凹部のより長い対向面に垂直に測定された距離を指し、半径は、凹部に示されるフェース厚さを有する凹部の底部と凹部の隣接する壁との間の曲率半径を指す。
【表1】
【0060】
中央領域凹部320、上部領域溝318、トウ領域溝326及び下部領域溝322の前述の好ましい寸法は、キャビティバッククラブヘッドの性能及び質量に関連する特性を改善する。このような性能と質量に関連する特性には、例えば、クラブヘッドのCG位置、打撃フェースのさまざまな位置でのCOR又はCT、及び、CGを通過するさまざまな仮想軸に関するMOIが含まれる。背面328の凹部は、特定の場所での打撃フェース309の質量の減少に伴って打撃フェース309のCORを増加させるだけでなく、前述のように、クラブヘッドの重量配分を改善して、MOIを向上させることや、性能のためにCGをより適切に配置することもできる。背面328の凹部はまた、最大フェース応力を制約として、打撃フェース309は、打撃フェース309の質量が減少しているにもかかわらず、耐久性について試験されたときに従来技術のクラブヘッドに匹敵するように、決定することができる。
【0061】
当業者は、本開示を参照して、キャビティバッククラブヘッドの打撃フェースの背面の他の実施形態が、
図7の例に示される配置とは異なる可能性があることを理解するであろう。例えば、他の構成は、
図7に示される1つ又は複数の凹部を含まない場合があっても良い。
【0062】
図8は、1つ又は複数の実施形態による、
図5及び6の中空本体クラブヘッド200などの中空本体クラブヘッドの打撃フェース409の例示的な背面428を示す。
図8に示すように、背面428は、上部領域、中央領域、トウ領域、及び下部領域に凹部を含む。しかしながら、
図7の背面328の例とは異なり、
図8の背面428は、中央領域凹部420に異なる厚さパターンを含む。より詳細には、中央領域凹部420の中央部分437は、ヒール側部分435及びトウ側部分433よりも厚い。そのような配置は、通常、中央領域の打撃フェース409のより広い領域のCOR又はCTをさらに改善する。
【0063】
さらに、背面428は、背面428の周辺に隣接する上部領域溝又はチャネル418、トウ領域溝又はチャネル426及び下部領域溝又はチャネル422を含む。中央領域凹部420は、上部領域溝418、トウ領域溝426、及び下部領域溝422の間の中央領域に形成される。中間領域408は、中央領域凹部420を取り囲み、中央領域凹部420と、上部領域溝418、トウ領域溝426及び下部領域溝422のそれぞれとの間に配置される。さらに、中間領域408は、中央領域凹部420、上部領域溝418、トウ領域溝426、及び下部領域溝422のそれぞれの平均厚さよりも厚い平均厚さを有する。
【0064】
図8の背面428の凹部の打撃フェース409におけるいくつかの好ましい厚さは、以下の表2のクラブヘッド1B、2B、3B、及び4Bの次の厚さを含む。表2の比較例クラブヘッドBに提供されている中央領域の厚さは、
図8の中央領域凹部(すなわち、ヒール側中央領域凹部435、中間中央領域凹部437及びトウ側中央領域凹部433)が配置されたであろう位置での打撃フェースの厚さの測定値である。比較例クラブヘッドBは、その打撃フェースの背面の周囲の大部分に沿って均一な幅及び深さの連続した周囲溝又はチャネルを含む。表2はまた、溝の2つのより長い対向面間で垂直に測定される、上部領域の溝418、トウ領域の溝426及び下部領域の溝422の好ましい幅を含む。
【表2】
【0065】
中央領域凹部420(すなわち、中間中央領域凹部437、ヒール側中央領域凹部435、及びトウ側中央領域凹部433)、上部領域溝418、トウ領域溝426及び下部領域の溝422の前述の好ましい寸法は、中空クラブヘッドの性能と質量に関連する特性を改善する。このようなパフォーマンスと質量に関連する特性には、例えば、クラブヘッドのCG位置、打撃フェースのさまざまな位置でのCOR又はCT、及びCGを通過するさまざまな仮想軸に関するMOIが含まれる。この点について、以下の表4は、打撃フェース409から除去された質量、フェース中心54のCOR、スイートスポット56の中心からトウ方向に7.5mm外れた位置58でのCOR、及び、ゴルフボールがその場所で打たれる確率を使用して打撃フェース409上の異なる場所でのCORを重み付けすることによって計算される、打撃フェース409の予想される又は全体的なCORを表す重み付けCORの測定値又はコンピューターシミュレーション値を示している。
【0066】
いくつかの実装形態では、打撃フェース409は、スイートスポット46又はスイートスポット46から5mm以内などの第1の位置で、0.80以上の最大CORと、第1の場所から7.5mm以上離れた第2の場所48での最大CORの98%以上のCORとを含むことができる。打撃フェース409の凹部の厚さはまた、重み付けCORを増加させるように決定され得る。重み付けCORは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、「ゴルフクラブヘッド」と題され、2018年12月28日に出願された米国特許第10,456,643号でより詳細に議論されているように、ビンごと(bin-by-bin)又は場所ごと(location-by-location)の影響確率に基づいて決定できる。重み付けCOR、「期待されるCOR」又は「全体的なCOR」は、打撃フェース409について経験的に打撃がどのように分散されるかを考えると、典型的なゴルファーが実際に期待するクラブヘッド性能の確率調整された尺度を表すと見なすことができる。そのような情報を使用して、ゴルファーは、この重み付けCORに基づいてゴルフクラブを選択する際により多くの情報に基づいた決定を下すことができる。代替的又は追加的に、ゴルファーは、どのゴルフクラブがゴルファーの特定のハンディキャップ又はスキルレベルにより適しているかを決定することができる。
【0067】
重み付けCORは、打撃フェース409上に、長さが35mmの水平辺の第1のペアと、長さ25mmの垂直辺の第2のペアと、フェース中心と一致する幾何学的中心とを含む長方形の仮想評価領域を重ね合わせることによって決定することができる。長方形の仮想評価領域は、長方形の仮想評価領域を、同じ高さ5mmの5つの行(すなわち、m=5)と、等しい幅5mmの7つの列(すなわち、n=7)に分割することによってビンに分割され、これにより、座標iとjとを持つビンの行列が形成される。座標i、jで表される各ビンの平均CORが決定され(例えば、測定又はコンピューターシミュレーション)、重み付けCORは以下の式3で決定され得る。他の実装形態では、CORは、各ビンの中心位置に対して決定されても良い。
【数1】
ここで、p
ijは、以下の表3のような影響確率行列に従った、座標i、jでのビンの影響確率を示す。
【表3】
【0068】
他の影響確率行列を使用して、さまざまな実装で重み付けCORを決定することができる。例えば、重み付けCOR又は期待CORを決定するための他の影響確率行列は、上記の参照により組み込まれた米国特許第10,456,643号に開示されたものを含むことができる。別のバリエーションの例として、CORの測定位置は、ポイント又は上記の表3で説明した長方形のビンとは異なる形状の境界に対応することができる。さらに他の変形例では、COR測定位置は、隣接していない、互いに間隔を置いて配置された領域に対応することができる。別の例示的な変形例として、ビン又はCOR測定位置の方向は、長方形のマトリックスを形成しない場合があり、むしろ、環状又はサンバースト構成などの異なる構成の不規則な配置を形成する場合があっても良い。
【0069】
背面428の凹部は、特定の場所での打撃フェース409の質量の減少に伴い打撃フェース409のCORを増加させるだけでなく、前述のように、クラブヘッドの重量配分を改善して、MOIを向上させ、又は、性能のためにCGをより適切に配置することもできる。背面428の凹部はまた、打撃フェース409の質量が減少しているにもかかわらず、打撃フェース409は、耐久性について試験された場合、従来技術のクラブヘッドに匹敵するように、最大フェース応力を制約として決定することができる。
【0070】
図8の背面428の凹部についての上記の表2の寸法を参照すると、以下の表4は、対応する比較例クラブヘッドB、クラブヘッド1B、クラブヘッド2B、クラブヘッド3B及びクラブヘッド4Bのコンピューターシミュレーション又は測定された質量及び性能特性を示す。以下の表4に示されるように、フェース中心COR、オフセンターCOR及び重み付けCORがクラブヘッド1Bからクラブヘッド4Bに減少するにつれて、打撃フェースから除去又は節約される質量の量は、クラブヘッド1Bからクラブヘッド4Bに減少する。ただし、クラブヘッド1Bからクラブヘッド4Bのそれぞれは、比較例クラブヘッドBよりも、除去された質量、フェース中心COR、オフセンターCOR及び重み付けCORの値が大きくなる。
【表4】
【0071】
当業者は、本開示を参照して、
図8に示されているもの以外の凹部の配置が可能であることを理解するであろう。これに関して、上記の
図7の背面328に形成された凹部を有する打撃フェース309からの質量の除去はまた、打撃フェース309からの質量の減少、フェース中心での増加したCOR、スイートスポットのトウ側7.5mmの中心から外れた場所で増加したCOR、及び、増加した重み付けCORをもたらすことができる。別のバリエーションの例として、いくつかの実装形態は、上部領域溝418、トウ領域溝426、下部領域溝422又は中央領域凹部420の1つ又は複数、さらには、ヒール側中央領域凹部435、中間中央領域凹部437又はトウ側中央領域の凹部433などの中央領域凹部420の部分のうちの1つ又は複数を含まない場合があり得る。
【0072】
これに関して、以下の表5は、下部領域溝422を含まないが、ヒール側中央領域凹部435、中間中央領域の凹部437、トウ側中央領域433、上部領域溝418及びトウ側領域溝426を依然として含む打撃フェース409のさまざまなバリエーションの凹部に適した打撃フェースの厚さと幅とを示す。以下の表5のすべての凹部は、示された厚さを有する凹部の底部と、隣接する壁との間に半径0.4mmを有することができる。
【表5】
【0073】
図9は、1つ又は複数の実施形態による例示的な厚さパターンを含む、打撃フェース509の例示的な背面528を示す。
図9の厚さパターンは、より大きな平均厚さの中間領域によって囲まれる上記の溝とは対照的に、様々な厚さを有する領域又はパラメータ化ゾーンを含む。打撃フェース509は、例えば、鋼材料で形成することができる。
【0074】
図9に示すように、背面528は、上部領域536、周囲領域538、下部領域534、及び中央領域520を含み、これは、トウ側中央領域部分533、中間中央領域部分537及びヒール側中央領域部分535を含む。これらの領域の厚さの決定は、例えば、以下で説明する
図11の厚さパターン形成方法などの反復プロセスを使用して決定することができる。厚さは、打撃フェース509の質量が減少しているにもかかわらず、打撃フェース509は、耐久性について試験された場合、従来技術のクラブヘッドに匹敵するように、拘束として最大打撃フェース応力限界又は範囲を維持しながら、改善されたCOR(例えば、より大きな最大COR及び/又は重み付けCOR)を提供することができる。
【0075】
これに関して、クラブヘッド1Dについて
図9に示されるパラメータ化ゾーン又は領域について、好ましい厚さが以下の表6に提供され、降伏応力限(すなわち、打撃フェースのフォンミーゼス応力)、重み付けCOR、最大COR及び打撃フェースの質量の結果が以下の表7に示される。これらの領域の厚さは、表6の比較例クラブヘッドDについても以下に示され、応力限、重み付けCOR、最大COR及び打撃フェースの質量の結果は、比較のために以下の表7に示されている。比較例クラブヘッドD及びクラブヘッド1Dの両方の周囲領域538の厚さ及び幅は、例えば、厚さ2.4mm及び幅2.5mmの場合など、同じであっても良い。以下に示す厚さは、テーパーや段階的な遷移などによって、領域間で異なる場合があり得る。いくつかの実装形態では、以下に提供される厚さは、領域の平均厚さを表す場合がある。他の実装形態では、以下に提供される厚さは、領域の中心での厚さを表す場合がある。
【表6】
【0076】
上に示したように、比較例クラブヘッドDの打撃フェース全体の厚さはほぼ均一であり、異なる領域間で厚さがわずかに異なる。対照的に、クラブヘッド1Dの中間中央領域537は、他の領域よりもはるかに厚く、特に、トウ側中央領域535、上部領域536、及び下部領域534よりも厚い。以下の表7に示されるように、打撃フェース509の厚さのそのような変化は、比較例クラブヘッドDのものと比較して、増加した重み付けCOR及び増加した最大CORを提供する。さらに、クラブヘッド1Dの可変厚さパターンはまた、打撃フェース509の質量を6g減少させ、同時に、同等又は改善された応力限を維持し、それにより、同等のクラブヘッドDと同等又はそれ以上の耐久性を提供する。上で議論したように、打撃フェース509から除去又は節約された6gの質量は、MOIを増加させるため、及び/又は、クラブヘッドのCG及びスイートスポットをより適切に配置するために、後部マッスル又はトウ部などのクラブヘッドの他の部分に再分配され得る。
【表7】
【0077】
本開示を参照する当業者は、他の実装が、
図9の例に示されるものとは異なる形状又は配置の領域又はパラメータ化ゾーンを含むことができることを理解するであろう。これに関して、
図10は、領域又はパラメータ化ゾーンの異なる配置を備えた異なる厚さパターンを提供する。
【0078】
図10は、1つ又は複数の実施形態による、異なる厚さパターンを含む、クラブヘッドの打撃フェース609の例示的な背面628を示す。
図9の例示的な厚さパターンと同様に、
図10の厚さパターンは、より大きな平均厚さの中間領域によって囲まれる上記の溝とは対照的に、様々な厚さを有する領域又はパラメータ化ゾーンを含む。打撃フェース609は、例えば、鋼材料で形成することができる。
【0079】
図10に示すように、背面628は、周囲領域638、外側領域630、及び中央領域620を含み、これは、外側中央領域644、トウ側内側中央領域642、及びヒール側内側中央領域640を含む。これらの領域の厚さの決定は、例えば、以下で説明する
図11の厚さパターン形成方法などの反復プロセスを使用して決定することができる。厚さは、打撃フェース609の質量が減少しているにもかかわらず、耐久性を試験した場合、打撃フェース609は従来技術のクラブヘッドに匹敵するように、制約として打撃フェース応力の制限又は範囲を維持しながら、改善されたCOR(例えば、より大きな最大COR及び/又は重み付けCOR)を提供することができる。
【0080】
これに関して、クラブヘッド1E及びクラブヘッド2Eについて
図10に示されるパラメータ化ゾーン又は領域について、好ましい厚さが以下の表8に提供され、降伏の応力限(つまり、打撃フェースのフォンミーゼス応力)、重み付けCOR、最大COR、及び打撃フェースの質量の結果の値を以下の表9に示す。両方のクラブヘッドの周囲領域638の厚さ及び幅は、例えば、厚さ2.4mm及び幅3.5mmなどで同じであり得る。以下に示す厚さは、テーパーや段階的な遷移などによって、領域間で異なる場合がある。いくつかの実装形態では、以下に提供される厚さは、領域の平均厚さを表す場合がある。他の実装形態では、以下の厚さは、領域の中心位置での厚さを表す場合がある。
【表8】
【0081】
上に示したように、中央領域620は、一般に、外側領域630よりもはるかに厚く、トウ側内側中央領域642及びヒール側内側中央領域640は、外側中央領域644よりもさらに厚い。以下の表7に示されるように、打撃フェース609の厚さのそのような変化は、表7を参照して上で論じられた比較例クラブヘッドDのものと比較して、増加した重み付けCOR及び増加した最大CORを提供する。さらに、クラブヘッド1E及び2Eの可変厚さパターンはまた、同様の応力界を維持しながら、比較例クラブヘッドDと比較して、打撃フェース609の質量をそれぞれ6g及び7g減少させ、これにより、同等のヘッドDと同様の耐久性を提供する。打撃フェース609から除去又は節約された6g又は7gの質量は、上で議論されたように、MOIを増やしたり、クラブヘッドのCGとスイートスポットをより適切に配置したりするために、後部マッスル又はトウ部などのクラブヘッドの他の部分に再分配され得る。
【表9】
【0082】
図11は、1つ又は複数の実施形態による打撃フェースの例示的な厚さパターン形成方法のフローチャートである。
図11の方法は、例えば、上記で説明した
図9及び10に示されるパラメータ化ゾーン又は領域とともに使用することができる。コンピューティングデバイス又は他の電子処理デバイスは、いくつかの実装形態において可変厚さパターンを決定するために使用され得る。
【0083】
ブロック1102では、クラブヘッドの打撃フェースに対して複数のパラメータ化ゾーン又は領域が定義される。クラブヘッドは、打撃フェース、ヒール部、ヒール部の反対側のトウ部、ソール、及びソールの反対側のトップ部を有するゴルフクラブヘッド本体を形成することができる。クラブヘッドは、例えば、鋼材で形成することができ、中空本体タイプのクラブヘッド又はキャビティバックタイプのクラブヘッドを含むことができる。各パラメータ化ゾーン又は領域は、可変の第1のパラメータ及び可変の第2のパラメータを有することができる。いくつかの実装形態では、第1及び第2のパラメータは、パラメータ化ゾーン又は領域の厚さ及び幅、あるいは他の寸法を含むことができる。
【0084】
ブロック1104では、打撃フェースの制約値ごとに目標値が設定される。いくつかの実装形態では、第1の拘束値は打撃フェースの質量であっても良く、第2の拘束値は打撃フェースの機械的応力限であっても良く、第3の制約は、上記のように、打撃フェースの重み付けCOR値であっても良い。各パラメータ化ゾーン又は領域の目標値は、例えば、クラブヘッドに望まれる改良、例えば、打撃フェースから再分配される任意的質量の増加量、増加された又は最小の打撃フェースの耐久性、又は規制機関によって設定された最大COR又はCTの規則とバランスの取れた重み付けCORの増加などに基づいて設定することができる。
【0085】
ブロック1106では、各パラメータ化ゾーン又は領域のパラメータを変化させる。例えば、最大幅及び最大厚さは、打撃フェースの中央領域、上部領域、下部領域、及びトウ領域のそれぞれのパラメータとして変えることができる。いくつかの実装形態では、パラメータへの変更に基づいて1つ又は複数の制約の値のセットを生成するために、パラメータが繰り返し変更され得る。
【0086】
ブロック1108では、ゴルフボールとの衝突が、任意選択で、複数の衝突位置についてシミュレーションされる。いくつかの実装形態では、ブロック1106及び1108を組み合わせることができる。例えば、上記の表3のような衝撃確率行列を上記の式3とともに使用して、ブロック1106内のパラメータ化ゾーン又は領域の第1及び第2のパラメータの変動に基づいて重み付けCORを生成することができる。
【0087】
ブロック1110では、ブロック1106内のパラメータの変動から生じる制約値は、1つ又は複数の制約値の目標値に関して評価される。例えば、0.80に最も近い結果として得られる重み付けCOR値は、少なくとも部分的に、パラメータ化ゾーン又は領域の幅及び厚さを決定し得る。別の例として、打撃フェースからの最大の質量除去又は質量節約は、パラメータ化ゾーン又は領域のサイズ及び/又は厚さを決定する際に考慮される別の要因であり得る。
【0088】
ブロック1112では、ブロック1110での評価に基づいて、打撃フェースに可変厚さパターンが形成される。場合によっては、打撃フェースの背面で、切削工具又は他の機械加工を使用して材料を除去し、可変厚さパターンを形成することができる。他の場合には、打撃フェースの可変厚さパターンは、鋳造又は鍛造プロセスを使用することによって形成されても良い。
【0089】
当業者は、本開示を参照して、
図11の厚さパターン形成プロセスが他の実装において異なる可能性があることを理解するであろう。例えば、ブロック1104における1つ又は複数の対応する制約値に対する1つ又は複数の目標値の設定は、ブロック1102におけるパラメータ化ゾーン又は領域の定義の前に行われ得る。別の例示的なバリエーションとして、ブロック1106内の各パラメータ化ゾーンのパラメータの変化は、ブロック1110内の結果として生じる制約値の評価と組み合わせることができる。いくつかの実装形態では、ブロック1108は省略されても良い。
【0090】
図12は、1つ又は複数の実施形態による、打撃フェースの別の例示的な厚さパターン形成方法のフローチャートである。
図12の方法は、例えば、上で議論された
図7及び
図8に示されるパラメータ化ゾーン又は領域とともに使用することができる。コンピューティングデバイス又は他の電子処理デバイスは、いくつかの実装形態において可変厚さパターンを決定するために使用され得る。
【0091】
ブロック1202では、クラブヘッドの打撃フェースの領域は、中央領域及び中間領域と、上部領域、下部領域及びトウ領域のうちの少なくとも1つとを含むように定義される。クラブヘッドは、打撃フェース、ヒール部、ヒール部の反対側のトウ部、ソール、及びソールの反対側のトップ部を有するゴルフクラブヘッド本体で形成することができる。クラブヘッドは、例えば、鋼材で形成することができ、中空本体タイプのクラブヘッド又はキャビティバックタイプのクラブヘッドを含むことができる。中央領域は、打撃フェースのフェース中心を含み、中間領域は、少なくとも部分的に中央領域を取り囲む。上部領域は中央領域の上に配置でき、下部領域は中央領域の下に配置され得る。トウ領域は、中央領域のトウ側に配され得る。中間領域は、中央領域と、上部領域、下部領域及びトウ領域のそれぞれ、又は少なくとも1つとの間に配置され得る。
【0092】
ブロック1204では、中央領域は、中央領域が中間領域よりも薄い厚さを有するように凹まされる。これに関して、中間領域は、均一又はほぼ均一な厚さ、例えば、少なくとも2.5mm及び3.3mm以下の厚さを有しても良い。中央領域の凹部は、例えば、中央領域のトウ側から中央領域のヒール側に向かって中央領域をテーパー状にすることによって作製することができる。他の実装形態では、中央領域の厚さは、厚さが段階的に変化して凹部を形成することによって変化しても良い。中央領域の凹部は、例えば、質量を除去するために機械加工することによって、又は中央領域から質量を節約するためにクラブヘッドの少なくとも一部を鍛造又は鋳造することによって形成されても良い。
【0093】
ブロック1206では、トウ領域、上部領域及び下部領域のうちの少なくとも1つは、凹んだ領域が中央領域の厚さよりも薄いように、溝又はチャネルなどで凹まされる。そのような溝は、例えば、トウ領域、上部領域及び下部領域のうちの少なくとも1つにおいて約2.0mm以上の幅を有する細長い溝を含んでも良い。溝は、例えば、質量を除去するために機械加工することによって、又は少なくとも1つの領域から質量を節約するためにクラブヘッドの少なくとも一部を鍛造又は鋳造することによって形成することができる。いくつかの実装形態では、上部領域は、6.0mm以上の幅を有する細長い溝又はチャネルを含んでも良い。
【0094】
ブロック1204で形成された中央領域の凹部と、ブロック1206のトウ領域、上部領域及び下部領域のうちの少なくとも1つの凹部は、第1の反発係数であるCOR1に対応するスイートスポットと、スイートスポットから少なくとも7.5mmを隔てて配置され、第2の反発係数であるCORAUX(COR2)に対応する補助位置とを含む打撃フェースをもたらし、そこでは、COR2≧0.98*COR1とされる。これに関して、前述の凹部の追加及び対応する打撃フェースからの質量又は質量節約の除去は、比較的高いCORを有する打撃フェースの領域を増加させる。いくつかの実装形態では、打撃フェースの最大CORはまた、上で論じたように、重み付けCORで定量化され得るように、打撃フェースのスイートスポット及び/又はより頻繁に打撃される部分に対応するように増加又はより適切に配置され得る。
【0095】
さらに、打撃フェースからの質量の除去又は保存により、MOIを増加させるため、及び/又はクラブヘッドのCGと打撃フェースのスイートスポットをより適切に配置するために、クラブヘッドの後部マッスル又はトウ部などへのクラブヘッド内の質量の再分配も可能になる。例えば、スイートスポットは、フェース平面に垂直であり、かつ、フェース中心を通って延びる垂直中心面から2.0mm以下に位置させることができる。別の例として、クラブヘッドのCGは、予想される位置又はより頻繁に打たれる位置でフェース上のスイートスポットをより適切に配置するために、前記垂直中心面から1.0mm以下に配置されても良い。
【0096】
開示された例示的な実施形態の前述の説明は、当業者が本開示における実施形態を作成又は使用することを可能にするために提供される。これらの例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に開示される原理は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の例に適用することができる。例えば、いくつかの代替の実施形態は、打撃フェースの領域又はパラメータ化ゾーンの異なるサイズ又は形状を含んでも良い。したがって、記載された実施形態は、すべての点で例示としてのみ見なされるべきであり、限定的ではなく、したがって、本開示の範囲は、前述の説明ではなく、以下の特許請求の範囲によって示される。クレームの意味及び均等性の範囲内にあるすべての変更は、それらの範囲内に含まれるものとする。説明された実施形態は、すべての点で例示としてのみ考慮されるべきであり、限定的ではないと見なされるべきである。さらに、以下の特許請求の範囲における「A及びBの少なくとも1つ」の形での言語の使用は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方」を意味すると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0097】
10 仮想中心平面
14 フェース中心
16 スイートスポット
22 フェース平面
100 ゴルフクラブヘッド
102 トウ
108 中間領域
109 打撃フェース
111 ソール