(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】管体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/38 20060101AFI20250527BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B29C49/38
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2021121806
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翔太
(72)【発明者】
【氏名】岸田 知之
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-194934(JP,A)
【文献】特開2000-176997(JP,A)
【文献】特開昭57-142326(JP,A)
【文献】特開2006-046407(JP,A)
【文献】特開平04-323021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/38
B29C 49/04
B29C 48/90
B29C 48/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ないし管状に成形された管体の製造装置であって、
モールドブロックと、
前記モールドブロック内に筒状の溶融樹脂を吐出しながら、前記モールドブロックとの軸方向における相対位置を変化可能となっている樹脂吐出部と、
前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の径を拡大する形状調整部と、
前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内圧を保圧可能となっている保圧部と、を備え、
前記形状調整部は、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内部で径方向外側に向けて傾斜した方向でガスを放出するガス放出経路を含んで構成され、
前記ガス放出経路は、
軸方向に延びる中央供給経路と、該中央供給経路の軸方向端部から分岐しつつ径方向外側に向けて外周面まで傾斜した方向に直線状に延びて前記外周面で傾斜した方向
で前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内部に開口する
複数本の傾斜供給経路
と、を含んで構成されていることを特徴とする製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管体の製造装置において、
前記外周面は、軸周りで軸方向に延びる円筒面で構成されていることを特徴とする製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の管体の製造装置において、
前記形状調整部は、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂を下流に向かうに従って径方向外側にガイドするガイド面を含んで構成されていることを特徴とする製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の管体の製造装置において、
前記形状調整部は、前記樹脂吐出部の吐出側端部に設けられていることを特徴とする製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の管体の製造装置において、
前記保圧部は、前記モールドブロック内で軸方向に沿って延びる保圧治具で構成されていることを特徴とする製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載の管体の製造装置において、
前記保圧部は、前記形状調整部に接続されて保持されていることを特徴とする製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載の管体の製造装置において、
前記保圧部は、前記モールドブロック内で軸方向に沿って且つ前記ガスの圧力によって前記モールドブロックに押し付けられた筒状の樹脂のうち最も小径とされた細径部の内側を通して延びる保圧治具で構成されていることを特徴とする製造装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の管体の製造装置において、
前記細径部と当該細径部の内側を通る前記保圧治具との間のクリアランス面積は、前記ガス放出経路の最小流路断面積以下であることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タンク(圧力容器などとも呼ぶ)の樹脂製ライナー等の管体の製造装置に関し、特に、押出コルゲートチューブ成形にて管体を成形するための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の管体の製造方法として、例えば、特許文献1には、ベルト状に連結された複数のモールドブロックによってマンドレルの周りを囲繞し、このモールドブロックとマンドレルとの間に形成されるキャビティ空間に樹脂材料を押し出すとともに、モールドブロックを順次送り出して管体(合成樹脂管)を成形する方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、外周面に山部及び谷部を有するコルゲート状の保護層を押出成形部に供給すること、及び、押出成形部において、外被を構成する溶融樹脂に保護層を接触させた状態で管状の保護層を広げて、外被を押出成形すること、を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-318556号公報
【文献】特開2020-140064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような押出コルゲートチューブ成形にて、樹脂吐出口より押し出された筒状の溶融状態の樹脂(以下、溶融樹脂チューブと呼ぶ場合がある)は、重力の影響を受け垂れ下がる(ドローダウンとも呼ぶ)。特に、拡径比が数倍程度となる場合、樹脂吐出口より押し出された溶融樹脂チューブとモールドブロックの距離が遠くなり、溶融樹脂チューブの上部は金型に接触しにくく(張り付きにくく)、金型に沿った賦形が難しい。すなわち、成形品の径を拡大していくと、成形品が硬化する前に重力によって垂れてしまい、成形不良が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、樹脂吐出口より押し出された樹脂を素早くモールドブロックの内壁に貼り付かせることで、ドローダウンによる成形不良を防止して安定した成形を可能とする管体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明の管体の製造装置は、筒状ないし管状に成形された管体の製造装置であって、モールドブロックと、前記モールドブロック内に筒状の溶融樹脂を吐出しながら、前記モールドブロックとの軸方向における相対位置を変化可能となっている樹脂吐出部と、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の径を拡大する形状調整部と、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内圧を保圧可能となっている保圧部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
好ましい態様では、前記形状調整部は、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内部で径方向外側に向けて傾斜した方向でガスを放出するガス放出経路を含んで構成されている。
【0009】
他の好ましい態様では、前記ガス放出経路は、軸方向に延びる中央供給経路と、該中央供給経路から径方向外側に向けて傾斜した方向で分岐して前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内部に開口する複数本の傾斜供給経路と、を含んで構成されている。
【0010】
他の好ましい態様では、前記形状調整部は、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂を下流に向かうに従って径方向外側にガイドするガイド面を含んで構成されている。
【0011】
他の好ましい態様では、前記形状調整部は、前記樹脂吐出部の吐出側端部に設けられている。
【0012】
他の好ましい態様では、前記保圧部は、前記モールドブロック内で軸方向に沿って延びる保圧治具で構成されている。
【0013】
他の好ましい態様では、前記保圧部は、前記形状調整部に接続されて保持されている。
【0014】
他の好ましい態様では、前記形状調整部は、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内部で径方向外側に向けて傾斜した方向でガスを放出するガス放出経路を含んで構成され、前記保圧部は、前記モールドブロック内で軸方向に沿って且つ前記ガスの圧力によって前記モールドブロックに押し付けられた筒状の樹脂のうち最も小径とされた細径部の内側を通して延びる保圧治具で構成されている。
【0015】
他の好ましい態様では、前記細径部と当該細径部の内側を通る前記保圧治具との間のクリアランス面積は、前記ガス放出経路の最小流路断面積以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、押出コルゲートチューブ成形にて管体を成形する際、保圧部によって筒状の溶融樹脂に内圧を付与しながら賦形するので、樹脂吐出部より押し出された樹脂を素早くモールドブロックの内壁に貼り付かせることで、ドローダウンによる成形不良を防止して安定した成形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るライナー(管体)の製造装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るライナー(管体)の製造装置を示す縦断面図である。
【
図3】本実施形態に係るライナー(管体)の製造装置の要部を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
先ず、本実施形態の製造対象となる高圧タンクの樹脂製ライナー(以下、単にライナーと呼ぶ)10について説明し、次にライナー10の製造装置30について説明する。その後、ライナー10の製造方法について説明する。なお、
図1~
図5に適宜示す矢印CLは、ライナー10の中心軸を示している。また、単に軸方向と記載した場合は、中心軸CLに沿った方向を示すものとし、径方向と記載した場合は、ライナー10の径方向に沿った方向を示すものとする。
【0020】
(ライナーの構成)
図1、
図2には、成形途中のライナー10の断面図が示されている。完成品のライナー10も原則として同じ構成であるので、これらの図を参照してライナー10の構成を説明する。
【0021】
ライナー10は、全体形状が円筒状ないし円環状を有する管体として構成されている。ライナー10は、略円筒状の胴部12と、胴部12の軸方向両端に各々形成されて胴部12とは反対側(軸方向外側)に向かうに従って徐々に窄まる(縮径する)ドーム部14と、ドーム部14の胴部12とは反対側の軸方向端部に形成されて胴部12よりも小径とされた略円筒状の首部16と、を含んで構成されている。本実施形態において、首部16は、ライナー10において最も小径とされた細径部となっている。
【0022】
ライナー10は、一例として、燃料電池車両に搭載される水素タンクとして用いられる高圧タンクの容器本体であり、高圧タンクの最も内側の層を構成する。ライナー10は、樹脂材料(ナイロン、ポリエチレン等)により形成され、その外周面には、図示しない補強層(例えば、繊維強化樹脂層)が形成されて高圧タンクを構成する。
【0023】
ライナー10の首部16は、ドーム部14とは反対側の軸方向端部が開放されており(図示省略)、この開放された端部から図示しない栓が嵌合されるように構成されている。そして、栓の一部を構成する図示しないシールリングが首部16の内面16Aと密着することで高圧タンクが密封される。
【0024】
(ライナーの製造装置の構成)
次に、
図1~
図5を参照して、本実施形態のライナー10の製造装置30について説明する。
【0025】
図1には、本実施形態に係るライナー10の製造装置30の全体構成が模式的に示されている。この図に示されるように、ライナー10の製造装置30は、第1外型部32と、第2外型部34と、を含んで構成されている。なお、この図において、第1外型部32及び第2外型部34は、水平方向に切断された下半分が示されているが、後述するノズル40(外側ダイス44)、溶融樹脂チューブ48の吐出直後の部分、及び保圧治具60は、切断されていない状態が示されている。第1外型部32は、複数のモールドブロック36が連結されて第1方向R1に一定速度で循環走行するキャタピラ状の金型である。同様に、第2外型部34は、複数のモールドブロック38が連結されて第1方向R1の反対方向である第2方向R2に第1外型部32と同じ速度で循環走行するキャタピラ状の金型である。
【0026】
第1外型部32と第2外型部34とは、それぞれの走行経路の一部が直線状とされた直線走行領域Pにおいて、複数のモールドブロック36と複数のモールドブロック38とが互いに当接した状態、すなわち金型が閉じた状態で同一方向に直線走行するように構成されている。すなわち、直線走行領域Pの走行方向上流側始端(以下、適宜「始端」と称する)で第1外型部32と第2外型部34とが合流し、直線走行領域Pの走行方向下流側終端(以下、適宜「終端」と称する)で第1外型部32と第2外型部34とが分岐する。なお、
図1は製造装置30の全体構成を概略的に示しており、複数のモールドブロック36及び複数のモールドブロック38の個々の形状を詳細に示すものではないため、複数のモールドブロック36及び複数のモールドブロック38の構成については
図2を参照して以下に説明する。
【0027】
第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38は、
図2に示されるように、ライナー10を外側から成形するように構成されている。なお、
図2の縦断面図では、第1外型部32を構成する複数のモールドブロック36側が示されているが、第2外型部34を構成する複数のモールドブロック38も、第1外型部32を構成する複数のモールドブロック36と同様である。具体的には、複数のモールドブロック36(38)は、断面略半円型のキャビティを備えており、ライナー10の胴部12を成形する胴部成形部22と、ドーム部14を成形するドーム部成形部24と、首部16を成形する首部成形部26と、を含んで構成されている。胴部成形部22は、軸方向に長い比較的大径の半円筒面で構成されている。ドーム部成形部24は、胴部成形部22の軸方向端部に形成されて胴部成形部22とは反対側に向かうに従って徐々に縮径するテーパ面で構成されている。首部成形部26は、ドーム部成形部24の軸方向端部に形成されて比較的小径(胴部成形部22よりも小径)の半円筒面で構成されている。本実施形態において、首部成形部26は、内径が最も小さくされた細径部となっている。胴部成形部22、ドーム部成形部24、及び首部成形部26によって、複数のモールドブロック36、38の成形面(内面)が構成されている。
【0028】
直線走行領域Pは、成形が行われる領域であるので、この領域においては
図2に示されるように隣り合う複数のモールドブロック36は、互いに当接した状態で走行し、隣り合う複数のモールドブロック38は、互いに当接した状態で走行する。
【0029】
なお、複数のモールドブロック36、38の大きさ及び形状は
図2に示される例に限定されない。例えば、ドーム部14や首部16を1個のみのモールドブロック36、38で構成してもよい(換言すると、胴部12とドーム部14との境界やドーム部14と首部16との境界が複数のモールドブロック36、38の境界と一致するように構成してもよい)し、ドーム部14や首部16を2個以上の複数のモールドブロック36、38に亘って構成してもよい。
【0030】
また、第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38は、その内面(成形面)の複数箇所に、後述する溶融樹脂チューブ48を吸引して型転写するための図示しない吸引用開口が開口せしめられている。
【0031】
図1に戻ると、直線走行領域Pの上流側の領域には、押出成形機の一部を構成する樹脂吐出装置としてのノズル40が設けられている。ノズル40は、略円筒状の外側ダイス44と、外側ダイス44よりも小径とされて外側ダイス44の内部(中空部)に配置された略円筒状の内側ダイス42(
図2、
図3参照)と、を含んで構成されている。
【0032】
図2、
図3に示されるように、外側ダイス44と内側ダイス42とは、先端(下流端)が略一致した状態で、同心配置され、長手方向が直線走行領域Pにおける第1外型部32及び第2外型部34の走行方向に向けられている。外側ダイス44と内側ダイス42との間の(略円筒状の)間隙は、図示しない樹脂供給装置内で加熱されて溶融状態とされた溶融樹脂が通過する樹脂供給経路46を構成し、外側ダイス44の先端(樹脂供給方向の下流側端部)と内側ダイス42の先端(樹脂供給方向の下流側端部)とで形成される(略円環状の)開口が樹脂吐出口(樹脂吐出部)47となっている。図示しない樹脂供給装置内で加熱されて溶融状態とされた溶融樹脂は、外側ダイス44と内側ダイス42との間の間隙(つまり、樹脂供給経路46)を通って樹脂吐出口47から、略円筒状の溶融樹脂チューブ48として一定速度で連続的に押し出される。このとき、溶融樹脂チューブ48は、凝固していない状態の略円筒状の樹脂であり、その押出方向Sは、直線走行領域Pにおける第1外型部32及び第2外型部34の走行方向と略同一である。さらに、内側ダイス42の内部(中空部)は、図示しないガス圧力印加装置から供給されるガス(一例として、窒素ガス)(ブローエアーとも呼ぶ)が通過するガス供給経路49(詳しくは、その上流部分)を構成している。
【0033】
ノズル40の内側ダイス42の先端(下流側端部又は吐出側端部)には、形状調整部としての形状調整アタッチメント(以下、単にアタッチメントと呼ぶ)50が取り付けられている。
【0034】
アタッチメント50は、段付き円柱状に形成されており、その外周面52は、樹脂吐出口47から押し出される(吐出される)溶融樹脂チューブ48を径方向外側(換言するとモールドブロック36、38の内面)に向けてガイドし、その溶融樹脂チューブ48の径を拡大するガイド面を構成している。
【0035】
図2、
図3とともに
図4、
図5を参照すればよくわかるように、アタッチメント50の外周面(ガイド面)52は、内側ダイス42の外径と略同じ略円筒面で構成され、内側ダイス42の外周面に連続して軸方向に延びる始端面部52Aと、始端面部52Aの軸方向端部に形成されて内側ダイス42とは反対側(樹脂供給方向の下流側)に向かうに従って徐々に拡がる(拡径する)テーパ面ないし円錐台面で構成される中間拡幅部52Bと、中間拡幅部52Bの内側ダイス42とは反対側の軸方向端部に形成されて内側ダイス42よりも大径の略円筒面で構成される終端面部52Cと、を含んで構成されている。
【0036】
したがって、樹脂吐出口47から押出方向Sへ押し出される(吐出される)溶融樹脂チューブ48は、樹脂吐出口47(樹脂供給経路46)に連続する始端面部52A上を押出方向Sへ通過し、中間拡幅部52Bによって下流に向かうに従って径方向外側に向けて(換言すると、押出方向Sに対して外側に傾斜した方向に向けて)ガイドされ、その径が拡大するようになっている(
図3のモールドブロック36、38内の実線矢印参照)。
【0037】
また、
図2~
図5に示されるように、アタッチメント50の内部に、内側ダイス42の内部を通して供給されたガスを溶融樹脂チューブ48の内部に放出(導入)し、その溶融樹脂チューブ48の径を(モールドブロック36、38の内面まで)拡大するガス放出経路54が形成されている。ガス放出経路54は、前述の内側ダイス42の内部(中空部)とともに、図示しないガス圧力印加装置から供給されるガスが通過するガス供給経路49を構成している。換言すると、ガス放出経路54は、ガス供給経路49の下流部分を構成している。
【0038】
前述のガス放出経路54は、内側ダイス42側の端部(ガス供給方向の上流側端部)から軸方向に(直線状に)延びる相対的に大径の中央供給経路54Aと、中央供給経路54Aの内側ダイス42とは反対側の軸方向端部(ガス供給方向の下流側端部)から分岐しつつ径方向外側に向けて傾斜した方向に延びる相対的に小径の複数本の傾斜供給経路54Bと、を含んで構成されている。本実施形態では、傾斜供給経路54Bは、中央供給経路54A周り(周方向)に90度間隔で4本配置されている。傾斜供給経路54Bの先端(内側ダイス42とは反対側の端部(ガス供給方向の下流側端部))は、前述したアタッチメント50の外周面(ガイド面)52の終端面部52C(図示例では、その下流側端部近傍)に開口しており、その先端の開口(本実施形態では周方向に合計で4個の開口)が、ガス供給口55となっている。
【0039】
したがって、内側ダイス42の内部を通して供給されたガスは、ガス放出経路54(中央供給経路54A、傾斜供給経路54B)を通ってガス供給口55から、径方向外側に向けて傾斜した方向で(換言すると、押出方向Sに対して外側に傾斜した方向で)、アタッチメント50の外周面(ガイド面)52でガイドされた溶融樹脂チューブ48の内部に放出され、溶融樹脂チューブ48の径が拡大するようになっている(
図3のモールドブロック36、38内の破線矢印参照)。
【0040】
なお、傾斜供給経路54Bは、径方向外側に向けて傾斜した方向に延びていればよく、例えば、アタッチメント50の外周面(ガイド面)52における中間拡幅部52Bと略平行となるように形成してもよい(換言すると、傾斜供給経路54Bの傾斜角と中間拡幅部52Bの傾斜角とが略同じになるように形成してもよい)し、異なる角度で形成してもよい。
【0041】
また、アタッチメント50の外周面52やガス放出経路54の位置や形状、大きさなどは、図示例に限られないことは勿論である。
【0042】
アタッチメント50の内側ダイス42側の軸方向端部の中央には、外周に雄ネジ51Aが形成された小径の締結部51が形成(軸方向に向けて突設)されている。締結部51の雄ネジ51Aが、内側ダイス42の内周に設けられた受け部41の雌ネジ41Aに螺合することで、アタッチメント50は、ノズル40の内側ダイス42の先端に取付固定されている。なお、アタッチメント50のノズル40に対する取付構成は、図示の例に限られないことは当然である。
【0043】
アタッチメント50の内側ダイス42とは反対側の軸方向端部の中央には、外周に雄ネジ59Aが形成された段付き小径の締結部59が形成(軸方向に向けて突設)されている。この締結部59の雄ネジ59Aに、後で詳細に説明する保圧治具60の内周に設けられた受け部69の雌ネジ69Aが螺合することで、アタッチメント50の先端(下流側端部)に、保圧部としての保圧治具60が取付固定されている。
【0044】
アタッチメント50の先端に取り付けられた保圧治具60は、軸方向に(直線状に)延びる略円筒状を有し、樹脂吐出口47から押し出される(吐出される)溶融樹脂チューブ48の内側に配在し、複数のモールドブロック36、38内、詳細には、複数のモールドブロック36、38内に樹脂吐出口47から押し出される(吐出される)溶融樹脂チューブ48の内圧を保圧(保持)する。
【0045】
保圧治具60の軸方向の長さは、成形途中のライナー10の軸方向両端に形成された首部16(換言すると、複数のモールドブロック36、38の2つの首部成形部26)に挿通可能な長さを有する。言い換えると、保圧治具60の軸方向の長さは、成形途中のライナー10の軸方向両端に形成された首部(細径部)16同士の軸方向の長さ(間隔)以上に設定されている。また、保圧治具60の外径は、成形途中のライナー10の軸方向両端に形成された首部16(換言すると、複数のモールドブロック36、38の2つの首部成形部26に押し付けられた溶融樹脂チューブ48)の内径と同等もしくはそれより多少小径に形成されている。
【0046】
したがって、保圧治具60は、成形途中のライナー10の軸方向両端に形成された首部16に挿通され、その首部16の開口(面積)が、保圧治具60の断面積分だけ狭くなる(減少する)。そのため、細径部である首部16における流動抵抗が増加し、ガス放出経路54(中央供給経路54A、傾斜供給経路54B)を通ってガス供給口55から溶融樹脂チューブ48の内部に放出されたガスが、成形途中のライナー10の首部16から抜けにくくなり、成形途中の溶融樹脂チューブ48内に滞留し、溶融樹脂チューブ48の内圧を保圧(保持)しやすくなる。
【0047】
本実施形態では、保圧治具60と成形途中のライナー10の首部16(換言すると、複数のモールドブロック36、38の2つの首部成形部26に押し付けられた溶融樹脂チューブ48)との(円環状の)クリアランス面積は、上述したアタッチメント50に形成されたガス放出経路54の最小流路断面積(流路断面積の最小値)と同様もしくはそれよりも小さく設定されている。これにより、保圧治具60と成形途中のライナー10の首部16(換言すると、複数のモールドブロック36、38の2つの首部成形部26に押し付けられた溶融樹脂チューブ48)との(円環状の)クリアランスから抜ける(排出される)ガス量が、ガス放出経路54(中央供給経路54A、傾斜供給経路54B)を通ってガス供給口55から放出される(供給される)ガス量よりも確実に少なくなる。言い換えると、溶融樹脂チューブ48の内側からのガスの排出量が、溶融樹脂チューブ48の内側へのガスの供給量よりも確実に少なくなる。したがって、溶融樹脂チューブ48の内圧を確実に保圧(保持)しやすくなる。
【0048】
保圧治具60のアタッチメント50側の軸方向端部付近の内周には、内周に雌ネジ69Aが形成された受け部69が取り付けられている。受け部69の雌ネジ69Aが前述のアタッチメント50の締結部59の雄ネジ59Aに螺合することで、保圧治具60がアタッチメント50の先端に取付固定されている。本実施形態では、保圧治具60は、アタッチメント50の先端に接続されて片持ち支持されている。
【0049】
なお、本実施形態では、保圧治具60の外径は、アタッチメント50(の終端面部52Cを有する大径部分)の外径と略同じに形成されている。保圧治具60は、アタッチメント50側の軸方向端部がアタッチメント50(の終端面部52Cを有する大径部分)と当接した状態で、アタッチメント50の先端に取り付けられている。なお、保圧治具60のアタッチメント50に対する取付構成は、図示の例に限られないことは当然である。
【0050】
(ライナーの製造方法)
次に、
図1~
図3を参照して、本実施形態のライナー10の製造方法について説明する。ライナー10は、以下の各工程が順次繰り返されることで連続的に製造される。
【0051】
まず、
図2、
図3に示されるように、直線走行領域Pの上流側に配置された図示しない樹脂供給装置内で加熱されて溶融状態とされた溶融樹脂が、ノズル40の外側ダイス44と内側ダイス42との間の間隙(樹脂供給経路46)を通って樹脂吐出口47から略円筒状の溶融樹脂チューブ48として一定速度で連続的に押し出される。このとき、溶融樹脂チューブ48は、凝固していない状態の略円筒状の樹脂であり、その押出方向Sは、直線走行領域Pにおける第1外型部32及び第2外型部34の走行方向と略同一である。
【0052】
押し出された溶融樹脂チューブ48は、ノズル40の下流側に配置されたアタッチメント50の外周面(ガイド面)52上を始端面部52Aから中間拡幅部52Bに亘って流過する。このとき、中間拡幅部52Bによって下流に向かうに従って径方向外側に向けて(換言すると、押出方向Sに対して外側に傾斜した方向に向けて)ガイドされ、直線走行領域Pの下流側(言い換えると、樹脂供給方向の下流側)に向かうに従って徐々にその径が拡大する。
【0053】
アタッチメント50の外周面(ガイド面)52でガイドされた溶融樹脂チューブ48は、第1外型部32と第2外型部34とがそれぞれ第1方向R1と第2方向R2とに循環走行している状態で、直線走行領域Pの上流側から押出方向Sに対して径方向外側に傾斜した方向に向かって第1外型部32の複数のモールドブロック36と第2外型部34の複数のモールドブロック38との間に凝固していない状態のまま連続的に一定速度で供給される。
【0054】
また、溶融樹脂チューブ48の供給と同時に、図示しないガス圧力印加装置から供給されるガスが、内側ダイス42の内部及びアタッチメント50の内部のガス供給経路49(ガス放出経路54を含む)を通ってガス供給口55から溶融樹脂チューブ48の内側に供給(圧送)される。このとき、ガス放出経路54の複数本の傾斜供給経路54Bによって、ガスが、径方向外側に向けて傾斜した方向で(換言すると、押出方向Sに対して外側に傾斜した方向で)、溶融樹脂チューブ48の内側に供給(圧送)される。ガスが供給されることにより、溶融樹脂チューブ48の中空部のガス圧力が上昇し、溶融樹脂チューブ48に内側からガス圧力が印加され、溶融樹脂チューブ48が第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38(型転写用の吸引用開口が開口せしめられた成形面)に押し付けられる。また、ガスが、径方向外側に向けて、溶融樹脂チューブ48の内側に供給されることにより、溶融樹脂チューブ48に内側から径方向外側に向けてガス圧力が印加され(言い換えると、溶融樹脂チューブ48がガス圧力によって径方向外側に押圧され)、これによっても、直線走行領域Pの下流側(言い換えると、樹脂供給方向の下流側)に向かうに従って徐々に溶融樹脂チューブ48の径が拡大し、溶融樹脂チューブ48が第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38(型転写用の吸引用開口が開口せしめられた成形面)に押し付けられる。
【0055】
ここで、本実施形態の保圧治具60がない場合、溶融樹脂チューブ48の内側に供給されたガスは、成形途中のライナー10の首部16などを通って順次外部に排出され、溶融樹脂チューブ48の中空部のガス圧力を保持することが難しくなる。
【0056】
本実施形態においては、
図1、
図2に示されるように、アタッチメント50に保持された保圧治具60が、成形途中のライナー10の軸方向両端に形成された首部16に挿通され、その首部16の開口(面積)が、保圧治具60の断面積分だけ狭くなる(減少する)。そのため、細径部である首部16における流動抵抗が増加し、溶融樹脂チューブ48の内側に供給されたガスは、成形途中のライナー10の首部16から排出されにくくなり、成形途中の溶融樹脂チューブ48内に滞留し、溶融樹脂チューブ48の中空部のガス圧力を保持しやすくなる(つまり、保圧効果を高めることができる)。
【0057】
ここで、保圧効果を効率的に高めるために、保圧治具60と成形途中のライナー10の首部16(換言すると、複数のモールドブロック36、38の2つの首部成形部26に押し付けられた溶融樹脂チューブ48)との(円環状の)クリアランス面積は、上述したアタッチメント50に形成されたガス放出経路54の最小流路断面積以下に設定されている。
【0058】
この保圧効果によって、溶融樹脂チューブ48が、第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38(型転写用の吸引用開口が開口せしめられた成形面)に素早く押し付けられる。
【0059】
なお、複数のモールドブロック36、38の内面の複数箇所には、溶融樹脂チューブ48を吸引して型転写するための図示しない吸引用開口が開口せしめられている。そのため、第1外型部32の複数のモールドブロック36と第2外型部34の複数のモールドブロック38との間において、溶融樹脂チューブ48の下流側は正圧、上流側は負圧となっている。
【0060】
これにより略円筒状のライナー10が成形される。この成形工程の間、第1外型部32及び第2外型部34は循環走行を続け(すなわち、第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38とノズル40などとの相対位置が変化し続け)、直線走行領域Pにおいて溶融樹脂チューブ48を成形しつつ上流から下流に向かって順次輸送する。
【0061】
上述のように連続的に成形されたライナー10は、第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38に押し付けられると当該モールドブロック36、38に設けられた図示しない冷却手段によって硬化せしめられ、
図1に示されるように直線走行領域Pよりも下流側に輸送され、個々のライナー10の軸方向端部(首部16同士の間)において図示しないカッターにより切断され、ライナー10が得られる。
【0062】
(作用効果)
以上説明したように、押出コルゲートチューブ成形にて、樹脂吐出口47より押し出された溶融樹脂チューブ48は、重力の影響を受けドローダウンする。そのため、溶融樹脂チューブ48の上部は金型に接触しにくく(張り付きにくく)、金型に沿った賦形が難しい。
【0063】
本実施形態のライナー10の製造装置30は、モールドブロック36、38と、前記モールドブロック36、38内に筒状の溶融樹脂を吐出しながら、前記モールドブロック36、38との軸方向における相対位置を変化可能となっている樹脂吐出部(樹脂吐出口47)と、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の径を拡大する形状調整部(形状調整アタッチメント50)と、前記樹脂吐出部から吐出された筒状の溶融樹脂の内圧を保圧可能となっている保圧部(保圧治具60)と、を備える。
【0064】
また、前記形状調整部(形状調整アタッチメント50)は、前記樹脂吐出部(樹脂吐出口47)から吐出された筒状の溶融樹脂の内部で径方向外側に向けて傾斜した方向でガスを放出するガス放出経路54を含んで構成され、前記保圧部(保圧治具60)は、前記モールドブロック36、38内で軸方向に沿って且つ前記ガスの圧力によって前記モールドブロック36、38に押し付けられた筒状の樹脂のうち最も小径とされた細径部の内側を通して延びる保圧治具60で構成されている。
【0065】
また、前記細径部と当該細径部の内側を通る前記保圧治具60との間のクリアランス面積は、前記ガス放出経路54の最小流路断面積以下である。
【0066】
すなわち、本実施形態のライナー10の製造装置30は、押出コルゲートチューブ成形にてライナー10を成形する際、保圧治具60を使用し、ライナー10に内圧を付与しながら賦形する。ガス圧力印加装置からガス(ブローエアー)を供給し、成形されたライナー10の細径部と保圧治具60のクリアランスを小さくすることで、ガス(ブローエアー)が成形途中のライナー10内(溶融樹脂チューブ48内)に滞留し、ライナー10内(溶融樹脂チューブ48内)に静圧が付与される。樹脂吐出口47より押し出された溶融樹脂チューブ48は、内圧により金型へ張り付けられるため、安定した成形が可能となる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、押出コルゲートチューブ成形にて管体を成形する際、保圧部によって(保圧治具60を使用して)筒状の溶融樹脂に内圧を付与しながら賦形するので、樹脂吐出部(樹脂吐出口47)より押し出された樹脂を素早くモールドブロック36、38の内壁に貼り付かせることで、ドローダウンによる成形不良を防止して安定した成形が可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では、第1外型部32の複数のモールドブロック36及び第2外型部34の複数のモールドブロック38を移動させることで、モールドブロック36、38とノズル40(の樹脂吐出口47)などとの軸方向における相対位置を変化させる例を示したが、ノズル40(の樹脂吐出口47)などを移動させることで、モールドブロック36、38とノズル40などとの軸方向における相対位置を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 ライナー(管体)
12 胴部
14 ドーム部
16 首部
30 製造装置
32 第1外型部
34 第2外型部
36 複数のモールドブロック
38 複数のモールドブロック
40 ノズル
42 内側ダイス
44 外側ダイス
46 樹脂供給経路
47 樹脂吐出口(樹脂吐出部)
48 溶融樹脂チューブ
49 ガス供給経路
50 形状調整アタッチメント(形状調整部)
52 外周面(ガイド面)
54 ガス放出経路
55 ガス供給口
60 保圧治具(保圧部)
P 直線走行領域
R1 第1方向(第1外型部の循環方向)
R2 第2方向(第2外型部の循環方向)