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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/66 20250101AFI20250527BHJP
   H10D 84/80 20250101ALI20250527BHJP
   H10D 12/00 20250101ALI20250527BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20250527BHJP
   H10D 84/83 20250101ALI20250527BHJP
【FI】
H10D30/66 102S
H10D84/80 203D
H10D12/00 103S
H10D30/66 101T
H10D30/66 201A
H10D8/50 F
H10D30/66 101C
H10D30/66 101D
H10D30/66 101H
H10D8/50 D
H10D84/80 101A
H10D84/83 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021123960
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019322
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】上村 和貴
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016765(JP,A)
【文献】特開2021-073714(JP,A)
【文献】特開2016-039215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162563(US,A1)
【文献】特開2019-149497(JP,A)
【文献】特開2019-021787(JP,A)
【文献】特開2010-267863(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213254(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/66
H10D 84/80
H10D 12/00
H10D 8/50
H10D 84/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード部を有する半導体基板を備え、
前記ダイオード部は、
前記半導体基板のおもて面に設けられた第2導電型のアノード領域と、
前記半導体基板のおもて面において、予め定められた延伸方向に延伸して設けられたトレンチ部と、
前記半導体基板のおもて面に設けられたトレンチコンタクト部と、
前記トレンチコンタクト部の下端に設けられ、前記アノード領域よりドーピング濃度が高い第2導電型のプラグ領域と
を備え、
前記プラグ領域は、前記延伸方向に沿って離散的に設けられている半導体装置。
【請求項2】
複数の前記トレンチコンタクト部が離散的に設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記プラグ領域は、前記トレンチコンタクト部の下端を覆って設けられている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記延伸方向において、前記トレンチコンタクト部の長さは0.6μm~50μmであり、隣接するトレンチコンタクト部間の距離は1μm~50μmである
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記トレンチコンタクト部が前記延伸方向に延伸しており、前記トレンチコンタクト部の下端に、前記アノード領域および前記プラグ領域が設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トレンチコンタクト部の下端において、前記アノード領域および前記プラグ領域が前記延伸方向に沿って交互に設けられている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板のおもて面に設けられた第2導電型のベース領域を有するトランジスタ部をさらに備え、
前記アノード領域のドーピング濃度は前記ベース領域のドーピング濃度より低い
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記アノード領域のドーピング濃度は1E16cm-3以上、1E17cm-3以下であり、前記ベース領域のドーピング濃度は1E17cm-3以上、1E18cm-3以下である
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記トランジスタ部は、前記半導体基板のおもて面に設けられた第1導電型のエミッタ領域をさらに有し、
前記トレンチコンタクト部の下端は前記エミッタ領域の下端よりも深い
請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記トレンチコンタクト部の下端は、前記半導体基板のおもて面から0.35μm~0.6μmの深さに位置している
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記トレンチコンタクト部は、前記トランジスタ部にさらに設けられている
請求項7から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記プラグ領域は、前記トランジスタ部の前記トレンチコンタクト部の下端にさらに設けられ、
前記延伸方向において、前記トランジスタ部の前記プラグ領域の長さは、前記ダイオード部の前記プラグ領域の長さより長い
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ダイオード部は、前記半導体基板に設けられた第1導電型の蓄積領域をさらに有する
請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記プラグ領域のドーピング濃度は1E20cm-3以上、1E21cm-3以下である
請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板のおもて面側にライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域が設けられていない
請求項1から14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ゲート用トレンチ4よりも浅く、かつ、n+型エミッタ領域5およびボデーp層6を貫通してボデーp層6の下方に位置しているp型ベース領域3に達する深さ」のコンタクト用トレンチが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2010-267863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなコンタクト用トレンチをダイオード部に設ける場合、耐圧が低下するおそれがあるため、耐圧を維持するための複雑なプロセスが必要となり、コストが増大する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、ダイオード部を有する半導体基板を備え、ダイオード部は、半導体基板のおもて面に設けられた第2導電型のアノード領域と、半導体基板のおもて面において、予め定められた延伸方向に延伸して設けられたトレンチ部と、半導体基板のおもて面に設けられたトレンチコンタクト部と、トレンチコンタクト部の下端に設けられ、アノード領域よりドーピング濃度が高い第2導電型のプラグ領域とを備え、プラグ領域は、延伸方向に沿って離散的に設けられている。
【0005】
複数のトレンチコンタクト部が離散的に設けられていてよい。
【0006】
プラグ領域は、トレンチコンタクト部の下端を覆って設けられていてよい。
【0007】
延伸方向において、トレンチコンタクト部の長さは0.6μm~50μmであり、隣接するトレンチコンタクト部間の距離は1μm~50μmであってよい。
【0008】
トレンチコンタクト部が延伸方向に延伸しており、トレンチコンタクト部の下端に、アノード領域およびプラグ領域が設けられていてよい。
【0009】
トレンチコンタクト部の下端において、アノード領域およびプラグ領域が延伸方向に沿って交互に設けられていてよい。
【0010】
半導体装置は、半導体基板のおもて面に設けられた第2導電型のベース領域を有するトランジスタ部をさらに備え、アノード領域のドーピング濃度はベース領域のドーピング濃度より低くてよい。
【0011】
アノード領域のドーピング濃度は1E16cm-3以上、1E17cm-3以下であり、ベース領域のドーピング濃度は1E17cm-3以上、1E18cm-3以下でよい。
【0012】
トランジスタ部は、半導体基板のおもて面に設けられた第1導電型のエミッタ領域をさらに有し、トレンチコンタクト部の下端はエミッタ領域の下端よりも深くてよい。
【0013】
トレンチコンタクト部の下端は、半導体基板のおもて面から0.35μm~0.6μmの深さに位置していてよい。
【0014】
トレンチコンタクト部は、トランジスタ部にさらに設けられていてよい。
【0015】
プラグ領域は、トランジスタ部のトレンチコンタクト部の下端にさらに設けられ、延伸方向において、トランジスタ部のプラグ領域の長さは、ダイオード部のプラグ領域の長さより長くてよい。
【0016】
ダイオード部は、半導体基板に設けられた第1導電型の蓄積領域をさらに有してよい。
【0017】
プラグ領域のドーピング濃度は1E20cm-3以上、1E21cm-3以下であってよい。
【0018】
半導体基板のおもて面側にライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域が設けられていなくてよい。
【0019】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】実施例1に係る半導体装置100の上面図の一例を示す。
図1B図1Aにおけるa-a'断面の一例を示す図である。
図1C図1Aにおけるb-b'断面の一例を示す図である。
図1D図1Aにおけるc-c'断面の一例を示す図である。
図2図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す図である。
図3A】実施例2に係る半導体装置100の上面図の一例を示す。
図3B図3Aにおけるc-c'断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」、「おもて」、「裏」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0023】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板のおもて面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。なお、本明細書において、Z軸方向に半導体基板を視た場合について平面視と称する。
【0024】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
【0025】
本明細書では、NまたはPを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NやPに付す+および-は、それぞれ、それが付されていない層や領域よりも高ドーピング濃度および低ドーピング濃度であることを意味し、++は+よりも高ドーピング濃度、--は-よりも低ドーピング濃度であることを意味する。
【0026】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化したドーパントの濃度を指す。したがって、その単位は、/cmである。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差(すなわちネットドーピング濃度)をドーピング濃度とする場合がある。この場合、ドーピング濃度はSR法で測定できる。また、ドナーおよびアクセプタの化学濃度をドーピング濃度としてもよい。この場合、ドーピング濃度はSIMS法で測定できる。特に限定していなければ、ドーピング濃度として、上記のいずれを用いてもよい。特に限定していなければ、ドーピング領域におけるドーピング濃度分布のピーク値を、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度としてよい。
【0027】
また、本明細書においてドーズ量とは、イオン注入を行う際に、ウェーハに注入される単位面積あたりのイオンの個数をいう。したがって、その単位は、/cmである。なお、半導体領域のドーズ量は、その半導体領域の深さ方向にわたってドーピング濃度を積分した積分濃度とすることができる。その積分濃度の単位は、/cmである。したがって、ドーズ量と積分濃度とを同じものとして扱ってよい。積分濃度は、半値幅までの積分値としてもよく、他の半導体領域のスペクトルと重なる場合には、他の半導体領域の影響を除いて導出してよい。
【0028】
よって、本明細書では、ドーピング濃度の高低をドーズ量の高低として読み替えることができる。即ち、一の領域のドーピング濃度が他の領域のドーピング濃度よりも高い場合、当該一の領域のドーズ量が他の領域のドーズ量よりも高いものと理解することができる。
【0029】
図1Aは、実施例1に係る半導体装置100の上面図の一例を示す。半導体装置100は、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80とを有する半導体基板を備える。例えば、半導体装置100は、逆導通IGBT(RC-IGBT:Reverse Conducting IGBT)である。
【0030】
なお、本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板のおもて面側から見ることを意味している。本例では、上面視でトランジスタ部70およびダイオード部80の配列方向をX軸、半導体基板のおもて面においてX軸と垂直な方向をY軸、半導体基板のおもて面と垂直な方向をZ軸と称する。
【0031】
トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0032】
トランジスタ部70は、半導体基板の裏面側に設けられたコレクタ領域22を半導体基板10のおもて面に投影した領域である。本例のコレクタ領域22は、一例としてP+型である。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。
【0033】
トランジスタ部70は、半導体基板のおもて面側に、N型のエミッタ領域12、P型のベース領域14、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲートトレンチ部40が周期的に配置されている。
【0034】
ダイオード部80は、半導体基板10の裏面側に設けられたカソード領域82を半導体基板10のおもて面に投影した領域である。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。ダイオード部80は、半導体基板10のおもて面においてトランジスタ部70と隣接して設けられた還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。半導体基板10の裏面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。
【0035】
半導体基板は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板は、シリコン基板である。
【0036】
本例の半導体装置100は、半導体基板のおもて面側に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15、ウェル領域17およびアノード領域84を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。
【0037】
また、本例の半導体装置100は、半導体基板のおもて面の上方に設けられたゲート金属層50およびエミッタ電極52を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板のおもて面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図1Aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54、55および56が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図1Aにおいては、それぞれのコンタクトホールに斜線のハッチングを付している。
【0038】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15、ウェル領域17およびアノード領域84の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板のおもて面におけるエミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15およびアノード領域84と電気的に接続する。
【0039】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金(例えば、アルミニウム-シリコン合金、アルミニウム-シリコン-銅合金等)で形成されてよい。ゲート金属層50の少なくとも一部の領域は、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金(例えば、アルミニウム‐シリコン合金、アルミニウム‐シリコン-銅合金等)で形成されてよい。
【0040】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
【0041】
コンタクトホール55は、トランジスタ部70のゲートトレンチ部40内のゲート導電部とゲート金属層50とを接続する。コンタクトホール55の内部には、バリアメタルを介して、タングステン等で形成されたプラグが設けられてもよい。
【0042】
コンタクトホール56は、トランジスタ部70およびダイオード部80に設けられるダミートレンチ部30内のダミー導電部とエミッタ電極52とを接続する。コンタクトホール56の内部には、バリアメタルを介して、タングステン等で形成されたプラグが設けられてもよい。
【0043】
接続部25は、エミッタ電極52またはゲート金属層50等のおもて面側電極と、半導体基板とを電気的に接続する。一例において、接続部25は、ゲート金属層50とゲート導電部との間の、コンタクトホール55内を含む領域に設けられる。接続部25は、エミッタ電極52とダミー導電部との間の、コンタクトホール56内を含む領域にも設けられている。
【0044】
接続部25は、タングステンなどの金属や不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料である。また接続部25は、窒化チタンなどのバリアメタルを有していてもよい。ここでは、接続部25は、N型の不純物がドープされたポリシリコン(N+)である。接続部25は、酸化膜等の絶縁膜等を介して、半導体基板のおもて面の上方に設けられる。
【0045】
ゲートトレンチ部40は、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板のおもて面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39と、2つの延伸部分39を接続する接続部分41を有してよい。
【0046】
接続部分41は、少なくとも一部が曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39の端部を接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和できる。ゲートトレンチ部40の接続部分41において、ゲート金属層50がゲート導電部と接続されてよい。
【0047】
ダミートレンチ部30は、その内部に設けられるダミー導電部がエミッタ電極52と電気的に接続されたトレンチ部である。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板のおもて面においてU字形状を有してよい。即ち、ダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する接続部分31を有してよい。
【0048】
本例のトランジスタ部70は、1つのゲートトレンチ部40と1つのダミートレンチ部30を繰り返し配列させた構造を有する。即ち、本例のトランジスタ部70は、1:1の比率でゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30を有している。例えば、トランジスタ部70では、延伸部分39および延伸部分29が、配列方向において交互に設けられる。
【0049】
但し、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の比率は本例に限定されない。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の比率は、2:3であってもよく、2:4であってもよい。また、トランジスタ部70においてダミートレンチ部30を設けず、全てゲートトレンチ部40としたいわゆるフルゲート構造としてもよい。
【0050】
ウェル領域17は、後述するドリフト領域18よりも半導体基板のおもて面側に設けられる。ウェル領域17は、半導体装置100のエッジ側に設けられるウェル領域の一例である。ウェル領域17は、一例としてP+型である。ウェル領域17は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲に設けられる。
【0051】
ウェル領域17の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域17に設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域17に覆われてよい。
【0052】
コンタクトホール54は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ダイオード部80において、アノード領域84の上方にも設けられる。いずれのコンタクトホール54も、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。このように、層間絶縁膜には、1または複数のコンタクトホール54が設けられている。本例のコンタクトホール54は、延伸方向に延伸して設けられてよい。
【0053】
メサ部71およびメサ部81は、半導体基板のおもて面と平行な面内において、トレンチ部に隣接して設けられたメサ部である。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分であって、半導体基板のおもて面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分を1つのトレンチ部としてよい。即ち、2つの延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
【0054】
メサ部71は、トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30またはゲートトレンチ部40の少なくとも1つに隣接して設けられる。メサ部71は、半導体基板のおもて面において、ウェル領域17と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15とを有する。メサ部71では、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が延伸方向において交互に設けられている。
【0055】
メサ部81は、ダイオード部80において、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に設けられる。本例のメサ部81は、半導体基板のおもて面において、アノード領域84を有し、Y軸方向の負側においてウェル領域17を有する。メサ部81には、アノード領域84のおもて面にコンタクト領域15が設けられていてもよい。
【0056】
ベース領域14は、トランジスタ部70において、半導体基板のおもて面側に設けられた領域である。アノード領域84は、ダイオード部80において、半導体基板のおもて面側に設けられた領域である。ベース領域14およびアノード領域84は、一例としてP-型である。
【0057】
アノード領域84のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度より低い。アノード領域84のドーピング濃度は1E16cm-3以上、1E17cm-3以下であり、ベース領域14のドーピング濃度は1E17cm-3以上、1E18cm-3以下である。なお、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E16cm-3は1×1016cm-3を意味する。本例では、アノード領域84のドーピング濃度を低くすることにより、逆回復時の正孔注入を抑制することができる。
【0058】
エミッタ領域12は、ドリフト領域18と同じ導電型で、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い領域である。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。エミッタ領域12のドーパントの一例はヒ素(As)である。エミッタ領域12は、メサ部71のおもて面において、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。
【0059】
また、エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接している。エミッタ領域12は、メサ部81には設けられていない。
【0060】
コンタクト領域15は、ベース領域14と同じ導電型で、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。本例のコンタクト領域15は、メサ部71のおもて面に設けられている。コンタクト領域15は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40と接してもよいし、接しなくてもよい。また、コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例においては、コンタクト領域15が、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接する。
【0061】
図1Bは、図1Aにおけるa-a'断面の一例を示す図である。a-a'断面は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上方に設けられる。
【0062】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
【0063】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下方に設けられた領域である。本例のバッファ領域20は、ドリフト領域18と同じ導電型であり、一例としてN型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層がコレクタ領域22およびカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0064】
コレクタ領域22は、トランジスタ部70においてバッファ領域20の下方に設けられる、ドリフト領域18と異なる導電型の領域である。カソード領域82は、ダイオード部80においてバッファ領域20の下方に設けられる、ドリフト領域18と同じ導電型の領域である。コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界である。
【0065】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に設けられる。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。
【0066】
ベース領域14は、メサ部71においてドリフト領域18の上方に設けられる、ドリフト領域18と異なる導電型の領域である。本例のベース領域14は、一例としてP-型である。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0067】
アノード領域84は、メサ部81においてドリフト領域18の上方に設けられる、ドリフト領域18と異なる導電型の領域である。本例のアノード領域84は、一例としてP-型である。アノード領域84は、ダミートレンチ部30に接して設けられている。
【0068】
エミッタ領域12は、ベース領域14とおもて面21との間に設けられる。本例のエミッタ領域12は、メサ部71に設けられており、メサ部81には設けられていない。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。
【0069】
ダイオード部80が導通すると、カソード領域82からアノード領域84に電子電流が流れる。電子電流がアノード領域84に到達すると電導度変調が起き、アノード領域84から正孔電流が流れる。また、カソード領域82から拡散した電子電流により、トランジスタ部70のコンタクト領域15からも正孔注入が促進され、半導体基板10の正孔密度が上昇する。これにより、ダイオード部80のターンオフ時に正孔が消滅するまでの時間が長くなるので、逆回復ピーク電流が大きくなり、逆回復損失が大きくなる。
【0070】
このような正孔電流を抑制する技術として、半導体基板のおもて面側に、ライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域を設ける技術が知られている。ライフタイムキラーは、一例として、半導体基板全体に注入する電子線や所定の深さに注入されたヘリウム、電子線又はプロトン等であり、ライフタイム制御領域は、ライフタイムキラー注入によって半導体基板の内部に形成された結晶欠陥である。ライフタイム制御領域は、ダイオード部の導通時に発生する電子と正孔との再結合消滅を促進し、逆回復損失を低減する。
【0071】
本例では、半導体基板10のおもて面21側にライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域が設けられていない。本例では、アノード領域84のドーピング濃度を低くすることにより、ライフタイム制御領域が設けられていなくても、逆回復時の正孔注入を抑制することができる。
【0072】
トレンチコンタクト部60は、エミッタ電極52と半導体基板とを電気的に接続する。トレンチコンタクト部60は、コンタクトホール54と連続的に設けられている。本例のトレンチコンタクト部60は、メサ部71およびメサ部81のそれぞれに設けられている。
【0073】
トレンチコンタクト部60は、コンタクトホール54に充填された導電性の材料を有する。トレンチコンタクト部60は、複数のトレンチ部のうち隣接する2つのトレンチ部の間に設けられる。本例のトレンチコンタクト部60は、おもて面21からエミッタ領域12を貫通して設けられ、下端においてプラグ領域19と接している。トレンチコンタクト部60は、エミッタ電極52と同一の材料を有してよい。
【0074】
なお、トレンチコンタクト部60およびコンタクトホール54の内部には、チタンまたはチタン化合物等で形成されたバリアメタルが設けられてよい。さらにトレンチコンタクト部60およびコンタクトホール54の内部には、バリアメタルを介してタングステン等で形成されたプラグが設けられてもよい。
【0075】
トレンチコンタクト部60の下端は、エミッタ領域12の下端よりも深い。トレンチコンタクト部60を設けることにより、ベース領域14の抵抗が低減し、少数キャリア(例えば、正孔)を引き抜きやすくなる。これにより、少数キャリアに起因するラッチアップ耐量などの破壊耐量を向上することができる。例えば、エミッタ領域12の下端とおもて面21との間の距離は0.3μm~0.4μmであり、トレンチコンタクト部60の下端とおもて面21との間の距離Dは0.35μm~0.6μmである。
【0076】
例えば、トレンチコンタクト部60は、層間絶縁膜38をエッチングすることにより形成される。トレンチコンタクト部60は、略平面形状の底面を有する。本例のトレンチコンタクト部60は、側壁が傾斜したテーパ形状を有する。但し、トレンチコンタクト部60の側壁は、おもて面21に対して、略垂直に設けられてもよい。
【0077】
プラグ領域19は、メサ部71およびメサ部81のそれぞれにおいて、トレンチコンタクト部60の下端に設けられる。プラグ領域19はベース領域14およびアノード領域84と同じ導電型で、ベース領域14およびアノード領域84よりもドーピング濃度の高い領域である。本例のプラグ領域19は、一例としてP+型である。
【0078】
例えば、プラグ領域19は、トレンチコンタクト部60の下端からボロン(B)またはフッ化ボロン(BF)をイオン注入することにより形成される。プラグ領域19は、コンタクト領域15と同一のドーピング濃度であってよい。本例のプラグ領域19のドーピング濃度は、1E20cm-3以上、1E21cm-3以下である。プラグ領域19は、少数キャリアを引き抜くことにより、ラッチアップを抑制する。
【0079】
プラグ領域19は、トレンチコンタクト部60の下端から拡散して、トレンチコンタクト部60の側壁の少なくとも一部を覆う。トランジスタ部70では、トレンチコンタクト部60の側壁において、エミッタ領域12とプラグ領域19とが接してしない。トランジスタ部70に設けられたトレンチコンタクト部60の側壁は、エミッタ領域12、ベース領域14およびプラグ領域19で覆われている。すなわち、トランジスタ部70において、トレンチコンタクト部60の側壁は、ベース領域14と接している。
【0080】
本例では、トランジスタ部70において、エミッタ領域12とプラグ領域19とがトレンチコンタクト部60に接していることにより、エミッタ領域12からのキャリアの注入を抑制して、破壊耐量を向上することができる。また、半導体装置100に大電流を流した場合であっても、プラグ領域19によって少数キャリアの引き抜き効率を向上させ、ベース領域14の電位を安定させることができる。
【0081】
また、本例では、ダイオード部80にもプラグ領域19を設けることにより、アノード領域84のドーピング濃度が低いことを補い、オーミック接合を確保することができる。
【0082】
蓄積領域16は、ドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる領域である。本例の蓄積領域16はドリフト領域18と同じ導電型であり、一例としてN+型である。蓄積領域16は、トランジスタ部70およびダイオード部80に設けられる。但し、蓄積領域16が設けられなくてもよい。
【0083】
また、蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に接してもよいし、接しなくてもよい。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16のイオン注入のドーズ量は、1E12cm-2以上、1E13cm-2以下であってよい。また、蓄積領域16のイオン注入ドーズ量は、3E12cm-2以上、6E12cm-2以下であってもよい。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、トランジスタ部70のオン電圧を低減できる。
【0084】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、おもて面21に設けられる。各トレンチ部は、おもて面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられる領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0085】
ゲートトレンチ部40は、おもて面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0086】
ゲート導電部44は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んでメサ部71側で隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0087】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、おもて面21側に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0088】
層間絶縁膜38は、おもて面21に設けられている。層間絶縁膜38の上方には、エミッタ電極52が設けられている。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続するための1または複数のコンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール55およびコンタクトホール56も同様に、層間絶縁膜38を貫通して設けられてよい。
【0089】
図1Cは、図1Aにおけるb-b'断面の一例を示す図である。b-b'断面は、トランジスタ部70において、コンタクトホール54をその長手方向に沿って通過するXY面である。
【0090】
トランジスタ部70において、コンタクトホール54およびトレンチコンタクト部60は、延伸方向に延伸して設けられている。つまり、トランジスタ部70において、本例のトレンチコンタクト部60は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に沿ってストライプ状に配置されている。
【0091】
トランジスタ部70において、プラグ領域19は、Y軸方向に延伸して設けられてよい。すなわち、トランジスタ部70において、プラグ領域19は、トレンチコンタクト部60の下端に沿って延伸して設けられている。
【0092】
図1Dは、図1Aにおけるc-c'断面の一例を示す図である。c-c'断面は、ダイオード部80において、コンタクトホール54をその長手方向に沿って通過するXY面である。
【0093】
ダイオード部80において、コンタクトホール54およびトレンチコンタクト部60は、トランジスタ部70と同様に、Y軸方向に延伸して設けられている。つまり、ダイオード部80において、本例のトレンチコンタクト部60は、ダミートレンチ部30に沿ってストライプ状に配置されている。
【0094】
一方で、ダイオード部80において、プラグ領域19は、Y軸方向に沿って離散的に設けられている。つまり、ダイオード部80では、複数のプラグ領域19が、Y軸方向において互いから離間してドット状に設けられている。つまり、トランジスタ部70に設けられたプラグ領域19のY軸方向の長さは、ダイオード部80に設けられたプラグ領域19のY軸方向の長さより長い。
【0095】
また、ダイオード部80において、プラグ領域19は、Y軸方向に延伸するトレンチコンタクト部60の下端の一部のみを覆う。トレンチコンタクト部60の下端においてプラグ領域19が設けられていない部分は、アノード領域84と接している。つまり、トレンチコンタクト部60の下端には、アノード領域84およびプラグ領域19がY軸方向に沿って交互に設けられている。
【0096】
このように、本例では、トレンチコンタクト部60は、トランジスタ部70およびダイオード部80の両方に設けられている。これにより、トランジスタ部70のみにトレンチコンタクト部60を設け、ダイオード部80にはコンタクトホール54のみ設ける場合と比べて、プロセスの数が低減する。
【0097】
また、ダイオード部80では、プラグ領域19をY軸方向に延伸させず、離散的に設けることにより、アノード領域84が設けられた領域のドーピング濃度の増加を抑制し、逆回復時の正孔注入を抑制することができる。
【0098】
図2は、図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す図である。プラグ領域19は、トレンチコンタクト部60の下端から拡散して、トレンチコンタクト部60の側壁の少なくとも一部を覆う。本例のプラグ領域19は、トランジスタ部70に設けられたトレンチコンタクト部60の側壁において、エミッタ領域12と接している点で、図1Bの例と異なる。本例では、トランジスタ部70に設けられたトレンチコンタクト部60の側壁は、エミッタ領域12およびプラグ領域19で覆われている。すなわち、トランジスタ部70において、トレンチコンタクト部60は、ベース領域14と接していない。
【0099】
本例では、トランジスタ部70において、エミッタ領域12とプラグ領域19とが接していることにより、図1Bの例と同様に、エミッタ領域12からのキャリアの注入を抑制して、破壊耐量を向上することができる。また、半導体装置100に大電流を流した場合であっても、プラグ領域19によって少数キャリアの引き抜き効率を向上させ、ベース領域14の電位を安定させることができる。
【0100】
本例では、ダイオード部80において、トレンチコンタクト部60は、プラグ領域19が設けられた領域にのみ設けられる。つまり、トレンチコンタクト部60の下端はプラグ領域19に覆われ、アノード領域84とは接していない。
【0101】
本例の半導体装置100は、アノード領域84のドーピング濃度が低いため、逆回復時に、空乏層がアノード領域84内にも拡大しやすい。アノード-カソード間の電圧が増大し、空乏層がトレンチコンタクト部60の下端に到達すると、トレンチコンタクト部60の下端にはエッチングによる結晶欠陥が存在するため、破壊が起こりやすい。
【0102】
本例では、トレンチコンタクト部60の下端はプラグ領域19に覆われているので、空乏層はプラグ領域19で止まり、トレンチコンタクト部60の下端には到達しない。これにより、トレンチコンタクト部60の下端における破壊を防止することができる。
【0103】
図3Aは、実施例2に係る半導体装置100の上面図の一例を示す。図3Bは、図3Aにおけるc-c'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70の構造は実施例1に係る半導体装置100と共通するので、ここでは主にダイオード部80の構成を説明する。また、図3Aのa-a'断面およびb-b'断面は、図1Bおよび図1Cに示したa-a'断面およびb-b'断面とそれぞれ共通するので、図示を省略する。
【0104】
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、Y軸方向において離散的に設けられている。つまり、ダイオード部80では、複数のコンタクトホール54が、Y軸方向において互いから離間してドット状に設けられている。
【0105】
同様に、ダイオード部80では、複数のトレンチコンタクト部60が離散的に設けられている。つまり、ダイオード部80では、複数のトレンチコンタクト部60が、Y軸方向において互いから離間してドット状に設けられている。
【0106】
ダイオード部80において、トレンチコンタクト部60の下端はプラグ領域19に覆われる。プラグ領域19は、トレンチコンタクト部60の下端から拡散して、トレンチコンタクト部60の側壁の少なくとも一部を覆う。ダイオード部80に設けられたトレンチコンタクト部60の側壁は、アノード領域84およびプラグ領域19で覆われている。Y軸方向において、本例のトレンチコンタクト部60の長さL1は0.6μm~50μmであり、隣接するトレンチコンタクト部60間の長さL2は1μm~50μmである。ここでいう長さは、トレンチコンタクト部60の上端、すなわちおもて面21における距離であってよい。
【0107】
本例の半導体装置100は、アノード領域84のドーピング濃度が低いため、逆回復時に、空乏層がアノード領域84内にも拡大しやすい。アノード-カソード間の電圧が増大し、空乏層がトレンチコンタクト部60の下端に到達すると、トレンチコンタクト部60の下端にはエッチングによる結晶欠陥が存在するため、破壊が起こりやすい。
【0108】
本例では、トレンチコンタクト部60の下端はプラグ領域19に覆われているので、空乏層はプラグ領域19で止まり、トレンチコンタクト部60の下端には到達しない。これにより、トレンチコンタクト部60の下端における破壊を防止することができる。
【0109】
このように、ダイオード部80において、トレンチコンタクト部60およびプラグ領域19を離散的に設けることにより、おもて面21側にライフタイム制御領域を設けなくても、逆回復時の正孔注入を抑制しつつ、トレンチコンタクト部60の下端における破壊を防止することができる。
【0110】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0111】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0112】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・ウェル領域、18・・・ドリフト領域、19・・・プラグ領域、20・・・バッファ領域、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、29・・・延伸部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・接続部分、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・接続部分、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、50・・・ゲート金属層、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、55・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・トレンチコンタクト部、70・・・トランジスタ部、71・・・メサ部、80・・・ダイオード部、81・・・メサ部、82・・・カソード領域、84・・・アノード領域、100・・・半導体装置
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B