(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】クラッチ操作反力発生装置
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20250527BHJP
B60K 23/02 20060101ALI20250527BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20250527BHJP
【FI】
G05G5/03 Z
B60K23/02 A
G05G1/30 E
(21)【出願番号】P 2021158808
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲 大輔
【審査官】岸本 和真
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102019216855(DE,A1)
【文献】国際公開第2016/162623(WO,A1)
【文献】特表2018-533093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 5/03
G05G 1/30
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を発生させるクラッチ操作反力発生装置であって、
カムボディ本体と、前記カムボディ本体の端部に設けられた筒状支持部とを有し、前記クラッチペダルと別体に設けられたカムボディと、
前記クラッチペダルと別体であるが連動して動くように設けられ、カム面を有して前記カムボディ本体と前記筒状支持部に移動自在に取付けられたカムプレートと、
前記カム面に接触する接触部を有して前記筒状支持部に収容され、前記カムプレートの移動に応じて移動することにより、前記クラッチペダルへの操作反力を変化させるカムフォロアと、
前記筒状支持部の第1のガイド壁部と前記カムフォロアとの間に設けられ、前記カムフォロアに摩擦接触する第1のガイド部材と、
前記第1のガイド壁部と異なる前記筒状支持部の第2のガイド壁部と前記カムプレートとの間に設けられ、前記カムプレートに摩擦接触する第2のガイド部材とを備
え、
一端が前記カムプレートに取付けられているとともに、他端が前記カムフォロアに取付けられ、前記カムプレートの移動に応じて伸縮することにより、前記クラッチペダルに操作反力を付与する付勢部材を有し、
前記カムフォロアは、前記付勢部材によって付勢されることにより、前記第1のガイド部材を介して前記第1のガイド壁部に押し付けられ、かつ、前記カムプレートおよび前記第2のガイド部材を介して前記第2のガイド壁部に押し付けられることにより、前記筒状支持部に位置決めされており、
前記カムフォロアは、前記カムプレートが前記付勢部材を圧縮する方向に移動するときに、前記第1のガイド壁部に押し付けられながら前記第1のガイド壁部に沿って移動し、
前記カムフォロアは、前記カムプレートが前記付勢部材の一端を押して前記付勢部材を圧縮する方向に移動するときに、前記クラッチペダル側への移動であって、前記付勢部材の他端を押して前記付勢部材を更に圧縮する方向に移動して、前記付勢部材の圧縮量を更に増大させることを特徴とするクラッチ操作反力発生装置。
【請求項2】
一端部に前記クラッチペダルに連結されるペダル連結部を有し、他端部に前記カムプレートの前記クラッチペダル側の端部に連結される円筒状のカムプレート連結部を有するロッド部材を備えており、
前記カムボディ本体の前記クラッチペダル側の端部に、前記カムプレート連結部に着脱自在に係合する係合溝を有し、前記カムプレートの前記クラッチペダル側への移動を規制するストッパ部が設けられており、
前記付勢部材は、前記カムフォロアと前記カムプレートとの間に圧縮された状態で設置されており、
前記付勢部材は、前記カムプレート連結部を介して前記カムプレートを前記係合溝に押し付けているとともに、前記カムフォロアを前記筒状支持部に押し付けていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【請求項3】
前記ストッパ部は、前記ロッド部材の両側面に対して外側に設けられており、
前記カムプレートの前記クラッチペダル側の端部は、前記ストッパ部の間に設置されており、
前記ロッド部材は、一対のリブを有し、
前記リブは、前記ロッド部材から前記ストッパ部に向かって突出していることを特徴とする請求項2に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【請求項4】
前記第1のガイド部材と前記カムフォロアの摺動面が曲面であることを特徴とする請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ操作反力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クラッチバイワイヤ方式を採用したMT(Manual Transmission)など、アクチュエータを用いてクラッチの断接を行う車両が知られている。
【0003】
アクチュエータを用いてクラッチを断接する場合には、運転者がクラッチペダルを操作したときに、クラッチペダルの操作量に応じた操作反力を体感できなくなるので、クラッチペダルの操作量に応じた操作反力を発生させる必要がある。
【0004】
従来、クラッチペダルの操作量に応じたペダル反力(操作反力)を疑似的に発生させる電子式車両クラッチペダルが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
この電子式車両クラッチペダルは、ハウジングと、ハウジングに結合され、ハウジングに対して回転可能である遠位ドラムを含み、勾配の異なる複数の表面部を含む接触面を画定するペダルアームとを有する。
【0006】
また、電子式車両クラッチペダルは、ハウジングの周囲を枢動自在であり、ペダルアームの遠位ドラム上で接触面と当接する第1の端部を有するフォースレバーと、ペダルアームと当接する第1の端部およびフォースレバー第2の端部と当接する第2の端部を有する圧縮性部材とを備えており、ペダルアームの回転が、フォースレバーの枢動および圧縮性部材によるペダルアーム上の大小の力の作用をもたらすように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の電子式車両クラッチペダルにあっては、フォースレバー、クラッチペダルのノーズおよび圧縮性部材などから構成される可変力アセンブリ(クラッチ操作反力発生装置)が、ペダルアームと一体化されてペダルハウジングに組み込まれており、可変力アセンブリが電子式車両クラッチペダル全体から構成されている。
【0009】
このような構成では、電子式車両クラッチペダル全体を可変力アセンブリとクラッチペダルとが一体の専用設計にする必要がある。
【0010】
このため、可変力アセンブリの構成がクラッチペダルを含んだ複雑なものになる上に、可変力アセンブリの製造コストが増大する。
【0011】
これに加えて、可変力アセンブリの交換時には電子式車両クラッチペダル全体を交換する必要がある上に、可変力アセンブリの組み立て時にはクラッチペダルを含んだ組み立て工程が必要になる。この結果、可変力アセンブリの組み立て作業が面倒なものとなり、可変力アセンブリの生産性が低下するおそれがある。
【0012】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、クラッチ操作反力発生装置をクラッチペダルと別体に構成し、構成を簡素化して製造コストの低減を図りつつ、組み立て作業の作業性を向上させて生産性を向上できるクラッチ操作反力発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を発生させるクラッチ操作反力発生装置であって、カムボディ本体と、前記カムボディ本体の端部に設けられた筒状支持部とを有し、前記クラッチペダルと別体に設けられたカムボディと、前記クラッチペダルと別体であるが連動して動くように設けられ、カム面を有して前記カムボディ本体と前記筒状支持部に移動自在に取付けられたカムプレートと、前記カム面に接触する接触部を有して前記筒状支持部に収容され、前記カムプレートの移動に応じて移動することにより、前記クラッチペダルへの操作反力を変化させるカムフォロアと、前記筒状支持部の第1のガイド壁部と前記カムフォロアとの間に設けられ、前記カムフォロアに摩擦接触する第1のガイド部材と、前記第1のガイド壁部と異なる前記筒状支持部の第2のガイド壁部と前記カムプレートとの間に設けられ、前記カムプレートに摩擦接触する第2のガイド部材とを備え、一端が前記カムプレートに取付けられているとともに、他端が前記カムフォロアに取付けられ、前記カムプレートの移動に応じて伸縮することにより、前記クラッチペダルに操作反力を付与する付勢部材を有し、前記カムフォロアは、前記付勢部材によって付勢されることにより、前記第1のガイド部材を介して前記第1のガイド壁部に押し付けられ、かつ、前記カムプレートおよび前記第2のガイド部材を介して前記第2のガイド壁部に押し付けられることにより、前記筒状支持部に位置決めされており、前記カムフォロアは、前記カムプレートが前記付勢部材を圧縮する方向に移動するときに、前記第1のガイド壁部に押し付けられながら前記第1のガイド壁部に沿って移動し、前記カムフォロアは、前記カムプレートが前記付勢部材の一端を押して前記付勢部材を圧縮する方向に移動するときに、前記クラッチペダル側への移動であって、前記付勢部材の他端を押して前記付勢部材を更に圧縮する方向に移動して、前記付勢部材の圧縮量を更に増大させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように上記の本発明によれば、クラッチ操作反力発生装置をクラッチペダルと別体に構成し、クラッチ操作反力発生装置の構成を簡素化して製造コストの低減を図りつつ、クラッチ操作反力発生装置の組み立て作業の作業性を向上させて生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置とクラッチペダルの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の左側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の下面図である。
【
図7】
図7は、
図4のV-V方向に相当する矢視断面図であり、クラッチペダルの踏み込み量が
図5の状態よりも増大したときの状態を示す。
【
図8】
図8は、クラッチ操作反力発生装置の正面図である。
【
図9】
図9は、クラッチ操作反力発生装置を
図3のIX方向から見た図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の踏み込み時と戻り時におけるクラッチペダルストロークと操作反力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態に係るクラッチ操作反力発生装置は、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を発生させるクラッチ操作反力発生装置であって、カムボディ本体と、カムボディ本体の端部に設けられた筒状支持部とを有し、クラッチペダルと別体に設けられたカムボディと、クラッチペダルと別体であるが連動して動くように設けられ、カム面を有してカムボディ本体と筒状支持部に移動自在に取付けられたカムプレートと、カム面に接触する接触部を有して筒状支持部に収容され、カムプレートの移動に応じて移動することにより、クラッチペダルへの操作反力を変化させるカムフォロアと、筒状支持部の第1のガイド壁部とカムフォロアとの間に設けられ、カムフォロアに摩擦接触する第1のガイド部材と、第1のガイド壁部と異なる筒状支持部の第2のガイド壁部とカムプレートとの間に設けられ、カムプレートに摩擦接触する第2のガイド部材とを備える。
【0017】
これにより、本発明の一実施の形態に係るクラッチ操作反力発生装置は、クラッチ操作反力発生装置をクラッチペダルと別体に構成し、クラッチ操作反力発生装置の構成を簡素化して製造コストの低減を図りつつ、クラッチ操作反力発生装置の組み立て作業の作業性を向上させて生産性を向上できる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図10は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置を示す図である。
【0019】
図1から
図9において、説明に用いる上下前後左右の方向は、一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置を車両に設置した状態を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向としているが、クラッチ操作反力発生装置の車両への搭載状態はこれに限らない。
【0020】
説明に用いた上下前後左右の各方向は、搭載状態に応じて読み替えることができる。なお、説明の一部で後述する付勢部材を基準に、この付勢部材がクラッチぺダルからの動きを受ける付勢部材の一端側を「クラッチペダル側」とし、この付勢部材が後述するカムフォロアを押圧する他端側を「カムフォロア側」として説明するが、本実施例では、それぞれ後側、前側と同じ方向を示すことになる。
【0021】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1にはダッシュパネル2が設けられている。ダッシュパネル2の前側には図示しないエンジンや変速機などが設置されるエンジンルーム2Aが設けられており、ダッシュパネル2の後側には運転者を含んだ乗員が搭乗する車室2Bが設けられている。
【0022】
ダッシュパネル2にはペダルブラケット3が取付けられており、ペダルブラケット3には揺動軸3aを介してクラッチペダル4が連結されている。クラッチペダル4は、運転者の操作により揺動軸3aを回動の中心として前後方向に揺動する。
【0023】
具体的には、クラッチペダル4は、その上部が揺動軸3aを介してペダルブラケット3に連結されて上下方向に延びるレバー部4Aと、レバー部4Aの下部に設けられ、運転者によって踏み込まれるペダル部4Bとを有する。
【0024】
本実施例の変速機は、MT(Manual Transmission)から構成されており、変速機は、アクチュエータを用いて図示しないクラッチ装置を断接する。
【0025】
アクチュエータは、運転者によって操作されるクラッチペダル4の踏み込み量に応じてクラッチ装置を断接する。このため、クラッチペダル4とクラッチ装置は機械的に接続されていない。クラッチ装置が機械的に切断されると、エンジンから変速機への動力が遮断され、クラッチ装置が機械的に接続されると、エンジンから変速機に動力が伝達される。
【0026】
車両1は、クラッチ操作反力発生装置5を備えており、クラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4と別体に設けられている。クラッチ操作反力発生装置5は、運転者がクラッチペダル4を操作したときに、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力(操作荷重)をあたかも機械的に接続されたクラッチを操作した時のように擬似的に発生させる。
【0027】
図2から
図4に示すように、クラッチ操作反力発生装置5は、カムボディ10を有する。カムボディ10は、ダッシュパネル2の近傍に配置されている。具体的には、ダッシュパネル2には図示しない貫通孔が形成されており、カムボディ10はこの貫通孔に挿通した状態に配置されている。つまり、カムボディ10は前部がダッシュパネル2の前側のエンジンルーム2Aに配置され、後部がダッシュパネル2の後側の車室2Bに配置されている。
【0028】
カムボディ10は、カムボディ本体11と筒状支持部12を有する。カムボディ本体11は、パネル固定板11Aと、前側底壁11Bと、前側左側壁11Cと、前側右側壁11Dと、後側左側壁11Eと、後側右側壁11Fとを有する。
【0029】
カムボディ10は、パネル固定板11Aがダッシュパネル2に固定されることで、ダッシュパネル2に取付けられている。
図2に示すように、パネル固定板11Aには貫通孔11aが形成されており、貫通孔11aには後述するカムプレート14とコイルスプリング17が挿通されている。
【0030】
図1に示すように、パネル固定板11Aの後面11rは、ダッシュパネル2の前面2fに当接している。
図8に示すように、パネル固定板11Aの左右にはボルト穴11b、11cが形成され、このボルト穴11b、11cには図示しない一対のボルトが挿通される。
【0031】
パネル固定板11Aは、ダッシュパネル2の前面2fに重ねられて、後面11rが前面2fに当接した状態で一対のボルトによってダッシュパネル2に締結されている。
【0032】
図4、
図5に示すように、前側底壁11Bの後端部はパネル固定板11Aに接続されており、前側底壁11Bは、パネル固定板11Aから前方に延びている。
【0033】
図3、
図6に示すように、前側左側壁11Cの後端部は、パネル固定板11Aに接続されており、前側左側壁11Cは、パネル固定板11Aから前方に延び、かつ、前側底壁11Bの左端部から上方に延びている。
【0034】
図6に示すように、前側右側壁11Dの後端部は、パネル固定板11Aに接続されている。前側右側壁11Dは、パネル固定板11Aから前方に延び、かつ、前側底壁11Bの右端部から上方に延びている。
【0035】
前側左側壁11Cと前側右側壁11Dは、車幅方向(左右方向)で対向しており、対称形状に形成されている。
【0036】
図3、
図6に示すように、後側左側壁11Eの前端部は、パネル固定板11Aに接続されており、後側左側壁11Eは、パネル固定板11Aから後方に延びている。また、後側左側壁11Eの前端部は前側左側壁11Cの後端部に接続され、後側左側壁11Eと前側左側壁11Cは連続している。
【0037】
図4、
図6に示すように、後側右側壁11Fの前端部は、パネル固定板11Aに接続されており、後側右側壁11Fは、パネル固定板11Aから後方に延びている。また、後側右側壁11Fの前端部は前側右側壁11Dの後端部に接続され、後側右側壁11Fと前側右側壁11Dは連続している。
【0038】
後側左側壁11Eと後側右側壁11Fは、車幅方向で対向しており、対称形状に形成されている。
【0039】
図2、
図3に示すように、筒状支持部12は、カムボディ本体11の前端部11fから前方に延びるように設けられており、カムボディ本体11に連続している。本実施例のカムボディ本体11の前端部11fは、クラッチペダル側と反対側(前側、カムフォロア側)のカムボディ本体の端部を構成する。
【0040】
図3、
図5、
図8に示すように、筒状支持部12は、底壁12Aと、左側壁12Bと、右側壁12Cと、傾斜壁12Dとを有する。
【0041】
底壁12Aは、前側底壁11Bの前端部に接続されており、前側底壁11Bから前方に延びている。
【0042】
図2、
図3、
図8に示すように、左側壁12Bは、底壁12Aの左端部から上方に延びており、左側壁12Bの下側の部分は、前側左側壁11Cに接続されている。
【0043】
図5、
図8に示すように、右側壁12Cは、底壁12Aの右端部から上方に延びており、右側壁12Cの下側の部分は、前側右側壁11Dに接続されている。
【0044】
図8に示すように、傾斜壁12Dは、左側壁12Bの上端部と右側壁12Cの上端部とを接続している。
図2、
図3に示すように、傾斜壁12Dは、前端部12aに対して後端部12bが後斜め上方に位置するように前端部12aから後端部12bに向かって上方に直線状に傾斜している。つまり、底壁12Aとの位置関係で、前端部12aと底壁12Aとの間隔よりも後端部12bと底壁12Aとの間隔の方が大きくなるように、傾斜壁12Dは傾斜している。
【0045】
図5、
図6に示すように、カムボディ10内にはカムプレート14が配置されており、カムプレート14は、カムボディ10に対して前後方向に移動自在となっている。
【0046】
図5に示すように、カムプレート14は、カムプレート部14Aとスプリング受部14Bとを有する。
【0047】
カムプレート部14Aは、前後方向に延びており、スプリング受部14Bは、カムプレート部14Aの後端部から上方に立ち上がっている。
【0048】
カムプレート14の後端部14c、すなわち、スプリング受部14Bの後端部14cには係合溝14aが形成されており、係合溝14aにはロッド部材15の前端部が嵌合されている。
【0049】
ロッド部材15の前端部には、ロッド部材15の延びる方向に垂直となる方向(車幅方向)に中心軸を有する円筒状のカムプレート連結部15Aが設けられており(
図4参照)、カムプレート連結部15Aは係合溝14aに嵌合されている。
【0050】
詳細には、ロッド部材15の軸心とカムプレート連結部15Aの中心軸の交点部分が、係合溝14aの内部に位置するように連結されている。これにより、ロッド部材15がカムプレート14の後端部14cに連結されている。
【0051】
係合溝14aは、カムプレート連結部15Aの外周面に沿った曲面からなる内周面を有し、円筒状のカムプレート連結部15Aの周囲をその中心軸に関して180度以上の範囲で取り囲むように形成されており、中心軸の方向以外ではカムプレート連結部15Aが離脱できない形状となっている。
【0052】
なお、係合溝14aは、カムプレート連結部15Aの中心軸回りに関するロッド部材15の揺動は許容し、ロッド部材15は、係合溝14aに沿って上下方向に摺動自在となっている。本実施例のカムプレート14の後端部14cは、カムプレートのクラッチペダル側の端部を構成する。
【0053】
図2、
図3に示すように、ロッド部材15の後端部にはボール形状のペダル連結部15Bが設けられている。
【0054】
図1、
図6に示すように、ペダル連結部15Bにはロッド支持部材7が取付けられており、ペダル連結部15Bはロッド支持部材7に揺動自在に接続されている。ロッド支持部材7は、クラッチペダル4に取付けられている。つまり、ロッド部材15の後端部は、ロッド支持部材7を介してクラッチペダル4に連結されている。
【0055】
これにより、クラッチペダル4が揺動軸3aを回動中心にペダルブラケット3に対して前後方向に揺動されると、その動きがロッド部材15を介してカムプレート14に伝えられてカムプレート14が前後方向に移動する。
【0056】
具体的には、カムプレート14は、クラッチペダル4が踏み込まれたとき、クラッチペダル4は、揺動軸3aを回動中心に回動(
図1の時計回転方向)し、ロッド支持部材7が前方に移動する。このとき、カムプレート14はロッド部材15に押されてカムボディ10に対して前側に移動する。
【0057】
一方、クラッチペダル4が踏み込まれた状態から踏み込みが解除された状態に戻る戻り時に、カムプレート14は後述するコイルスプリング17(付勢部材)の付勢力によってカムボディ10に対して後側に移動する。
【0058】
このとき、クラッチペダル4は、ロッド部材15に押されて揺動軸3aを回動中心にして回動(
図1の反時計回転方向)する。
【0059】
ロッド支持部材7は、レバー部4Aの上部に取付けられており、ペダル部4Bから揺動軸3aまでの距離に対してロッド支持部材7から揺動軸3aまでの距離が近い。このため、クラッチペダル4の揺動に関し、ロッド支持部材7の上下方向の移動距離を小さく抑えることができて、容易にクラッチペダル4の揺動運動をロッド部材15を介してカムプレート14の直線運動に変換することができる。
【0060】
図1に示すように、ペダルブラケット3にはばね部材6が設けられている。レバー部4Aの上部にはばね部材6に係合する係合部4Cが設けられており、クラッチペダル4は、ばね部材6によって戻り方向に付勢されている。
【0061】
なお、ペダルブラケット3には、クラッチペダル4の揺動範囲を規制するストッパが設けられている。詳細には、クラッチペダル4の戻り位置でそれ以上の戻り方向のクラッチペダル4の動きを規制し、踏み込まれていない状態でのペダル部4Bの位置を調整する戻り側ストッパ(図示せず)と、踏込方向のクラッチペダル4の動きを規制する踏込側ストッパ(図示せず)を有する。
【0062】
図5に示すように、カムプレート部14Aには前後方向に延びる長穴14dが形成されており、長穴14dにはピン16A、16Bが挿通されている。ピン16A、16Bの左端部と右端部はそれぞれ後側左側壁11Eと後側右側壁11Fに連結されており、カムプレート14はカムボディ本体11に前後方向への移動可能に取付けられている。なお、長穴14dとピン16A、16Bの関係で、前後方向以外への移動が規制されている。
【0063】
長穴14dの上下方向の幅は、ピン16A、16Bの直径よりも僅かに大きく形成されている。これにより、カムプレート14の前後方向の移動時において、カムプレート14は上下方向の動きが規制されて振れることがなく長穴14dの方向に移動することができる。つまり、カムボディ10に対して前後方向に円滑、かつ、安定して直線状に移動する。
【0064】
カムプレート14が前方に移動したときにピン16Bが長穴14dの後端部に当接することにより、カムプレート14が前側に過度に移動することが規制され、カムプレート14が後方に移動したときにピン16Aが長穴14dの前端部に当接することにより、カムプレート14が後側に過度の移動することが規制される。
【0065】
図5に示すように、筒状支持部12にはカムフォロア21と、カムプレート部14Aの前端部14f側、すなわち、カムプレート14の前端部14f側(カムフォロア側)が収容されている。
【0066】
カムフォロア21は、カムフォロア本体21Aと、カムフォロア本体21Aに固定されたローラ軸21aと、ローラ21Bと、ローラ21Bとローラ軸21aとの間に設置され、ローラ21Bをローラ軸21aに回転自在に支持するボールベアリング21Cとを有する。本実施例のローラ21Bは接触部を構成し、ローラ軸21aは支持軸を構成する。ボールベアリング21Cは、軸受を構成する。
【0067】
詳細には、
図8や
図9に示すように、カムフォロア本体21Aは下面から上方に向けて溝が形成されており、この溝によって、前後方向から見た断面が下に開放した上下逆向きのU字型に形成されている。このカムフォロア本体21Aの溝内にローラ21Bとボールベアリング21Cがその回動軸を左右方向に向けて配置されており、ローラ軸21aはローラ21Bとボールベアリング21Cを貫通し、その両端が溝の左右の壁に固定されている。
【0068】
カムフォロア21に対向するカムプレート14の上面には、カム面14Cが形成されている。カム面14Cにはローラ21Bが当接しており、ローラ21Bは付勢部材の付勢力でカム面14Cに押し付けられている。
【0069】
カム面14Cは、カムプレート14の移動方向Aに沿って前端部14fからカム面14Cの後端部14rまでの範囲で凹凸形状に形成されている。ここで、カムプレート14の移動方向Aは前後方向であり、カム面14Cは、カムプレート14の前端部14fから長穴14dの直前位置まで形成されている。
【0070】
カム面14Cは、移動方向Aにて前端部14fから後端部14rに向かい、カムプレート14の移動方向Aに対して直交する方向に漸次突出する凸状カム面14eを有する。つまり、カム面14Cは、前端部14fから後端部14rに向かい、カムフォロア21に向って突出する高さが高くなっていく凸状カム面14eが形成されている。
【0071】
カム面14Cは、凸状カム面14eの頂点14tからカムプレート14の後端部14rに向かい、カムプレート14の移動方向Aに対して直交する方向に漸次窪む凹状カム面14gを有する。つまり、カム面14Cは、頂点14tから後端部14rに向かい、カムフォロア21に向って突出する高さが低くなっていく凹状カム面14gが形成されている。カム面14Cは、凹状カム面14gの最深部14pからカムプレート14の後端部14rに向かい、カムプレート14の移動方向Aに対して直交する方向に漸次突出する凸状カム面14hを有する。
【0072】
つまり、カム面14Cは、最深部14pから後端部14rに向かい、カムフォロア21に向って突出する高さが高くなっていく凸状カム面14hが形成されている。つまり、凸状カム面14e、14hは、前後方向に離れて形成されている。
【0073】
クラッチペダル4が踏み込まれていない初期位置(クラッチ装置の完全接続位置)にあるときに、カム面14Cに当接するローラ21Bは、凸状カム面14eの頂点14tよりも低い位置で、かつ、凹状カム面14gの最深部14pとほぼ同等の高さ位置に位置している。
【0074】
頂点14tは、凸状カム面14eの中で最も高い部位であり、最深部14pは、凹状カム面14gの中で最も深い部位である。つまり、頂点14tと最深部14pは、カム面14Cの中で最も高い部位と低い部位である。
【0075】
クラッチペダル4の操作によってカムプレート14が前後方向に移動すると、ローラ21Bとカム面14Cの当接位置が変わり、カムフォロア21の位置が変更される。
【0076】
カムフォロア21とカムプレート14との間には、コイルスプリング17がその軸線17aをカムプレート14が延びる方向に沿うように設けられている。コイルスプリング17の前端部は、カムフォロア本体21Aのスプリング受面21bにその弾性力(付勢力)を作用させるように当接しており、コイルスプリング17の後端部は、カムプレート14のスプリング受部14Bにその弾性力(付勢力)を作用させるように当接している。
【0077】
具体的には、スプリング受部14Bの前面にはスプリング受面14sが設けられており、コイルスプリング17の後端部はスプリング受面14sに当接している。
【0078】
スプリング受面14sには突部14uが設けられている。突部14uは、スプリング受面14sからカムフォロア21側に突出しており、突部14uは、コイルスプリング17の内径内部に挿入されている。
【0079】
カムフォロア本体21Aの後面にはスプリング受面21bが設けられており、コイルスプリング17の前端部はスプリング受面21bに当接している。
【0080】
スプリング受面21bには円筒状の嵌合突起21cが設けられている。嵌合突起21cはスプリング受面21bからスプリング受部14B側に突出しており、嵌合突起21cの外周にはコイルスプリング17の内周が嵌合されている。
【0081】
つまり、コイルスプリング17の前端部はスプリング受面21bに当接した状態で嵌合突起21cに嵌合しており、コイルスプリング17の後端部はスプリング受面14sに当接した状態で内径内部に突部14uが挿入されている。
【0082】
これにより、カムプレート14の移動時において、コイルスプリング17はカムフォロア21とスプリング受部14Bから外れることがなく、カムフォロア21とスプリング受部14Bの動きに追従して伸縮する。コイルスプリング17の伸縮方向は前後方向であり、カムプレート14の移動方向Aと同方向である。
【0083】
コイルスプリング17は、カムプレート14の移動方向Aでカムフォロア21とカムプレート14が離れる方向の付勢力をカムフォロア21とカムプレート14に作用させる。本実施例のコイルスプリング17は、付勢部材を構成する。
【0084】
クラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4の踏み込み操作や、クラッチペダル4の戻り操作によって、カムプレート14が前後方向に移動してコイルスプリング17を伸縮させ、コイルスプリング17からの弾性力を操作反力としてクラッチペダル4に付与する。
【0085】
さらに、クラッチ操作反力発生装置5は、カムプレート14の前後移動に伴うカムフォロア21の移動位置によってコイルスプリング17の圧縮量を変化させることにより、クラッチペダル4に作用させる操作反力を調整し、あたかも機械的に接続されたクラッチを操作した時のような反力を発生させ、擬似的な操作反力をクラッチペダル4に付与する。
【0086】
コイルスプリング17は、カムプレート14の前後方向への移動に応じて伸縮することにより、クラッチペダル4に操作反力を発生させ、かつ、カムフォロア21を傾斜壁12Dとカム面14Cとに押し付ける押し付け荷重を発生させる。
【0087】
カムフォロア21は、カムプレート14の移動に伴いカム面14Cの形状に応じて位置が変更される。カムフォロア21は、傾斜壁12D(詳細には、第1の摺動面18b)に沿って移動することにより、クラッチペダル4への操作反力を変化させるとともに、カムプレート14の前後方向への移動を許容する。
【0088】
図5に示すように、筒状支持部12の傾斜壁12Dは、カムフォロア21がコイルスプリング17から受ける荷重F1とカムフォロア21がカム面14Cから受ける荷重F2との合力方向F3に対向しており、合力方向F3と直交する方向Dに傾斜している。
【0089】
本実施例の傾斜壁12Dは、カムプレート14の移動方向Aに対して約45°の角度で傾斜している。但し、カムプレート14の移動方向Aに対する傾斜壁12Dの傾斜角度は、この角度に限定されるものではない。
【0090】
本実施例のクラッチ操作反力発生装置5において、カムフォロア21がコイルスプリング17から受ける荷重F1の方向を第1の方向A1とし、カムフォロア21をカム面14Cに押し付ける荷重F4の方向(荷重F2と反対の方向)を第2の方向A2とした場合に、傾斜壁12Dは、カムフォロア21に加わる第1の方向A1の荷重F1を第2の方向A2の荷重F4に変換する。
【0091】
具体的には、カムプレート14が前方に移動することにより、カムフォロア21とカムプレート14のスプリング受部14Bの間でコイルスプリング17が圧縮し、コイルスプリング17によってカムフォロア21が第1の方向A1に荷重F1を受ける。
【0092】
カムプレート14が前方に移動するときには、ローラ21Bとカム面14Cとの接触位置が変更され、当接するカム面14Cの高さが変わることでカムフォロア21が傾斜壁12Dに押し付けられながら傾斜壁12Dに沿って移動する。
【0093】
このとき、カムフォロア21には傾斜壁12Dから反力を受けることにより、カム面14Cには第2の方向A2の荷重F4が加わる。このように傾斜壁12Dは、カムフォロア21に加わる第1の方向A1の荷重を第2の方向A2の荷重に変換する。本実施例の傾斜壁12Dは、荷重方向変換部を構成する。
【0094】
傾斜壁12Dは、カム面14Cとローラ21Bの接触個所の法線方向Hに設置されている。具体的には、カム面14Cの前端部14fからカム面14Cの頂点14tの範囲において、カム面14Cとローラ21Bの接触個所の法線方向Hに傾斜壁12Dが設置されている。
図7において、法線方向Hの1つを示す。
【0095】
図5、
図7に示すように、カム面14Cは、カムプレート14の前端部14fを起点として前端部14fから長穴14dの前端部よりもやや前側の後端部14rまで、カムプレート14の板厚方向(左右方向)に沿って形成されている。
【0096】
カム面14Cの高さは、前端部14fから後方に向かって高くなり、頂点14tが最も高く形成されている。そして、前端部14fから頂点14tまでの間においてカム面14Cとローラ21Bの接触個所の法線方向Hに傾斜壁12Dが設置されている。
【0097】
本実施例のカム面14Cの前端部14fは、カムフォロア側のカム面の端部を構成し、カム面14Cの頂点14tは、クラッチペダル側の所定のカム面の部位を構成する。
【0098】
図5に示すように、コイルスプリング17と傾斜壁12Dの一部は、コイルスプリング17の軸線17aの方向に並んで設置されている。
【0099】
換言すれば、クラッチ操作反力発生装置5をコイルスプリング17の軸線17aの方向から見た場合に、コイルスプリング17は傾斜壁12Dと重なるように設置されている。なお、コイルスプリング17の軸線17aの方向をコイルスプリング17の軸線方向ともいう。
【0100】
コイルスプリング17とローラ軸21aは、コイルスプリング17の軸線方向に並んで設置されている。換言すれば、クラッチ操作反力発生装置5をコイルスプリング17の軸線方向から見た場合に、コイルスプリング17はローラ軸21aと重なるように設置されている。
【0101】
ローラ軸21aは、カムプレート14の移動方向Aにおける位置で傾斜壁12Dの前端部12aと後端部12bとの間の位置に配置されている。
【0102】
本実施例の傾斜壁12Dは、ガイド壁部および第1のガイド壁部を構成し、底壁12Aは、第2のガイド壁部を構成する。傾斜壁12Dの前端部12aは、ガイド壁部の傾斜方向の他端部を構成し、傾斜壁12Dの後端部12bは、ガイド壁部の傾斜方向の一端部を構成する。
【0103】
傾斜壁12Dの前端部12aは、コイルスプリング17の上端部17bよりも下方(内方)に位置しており、傾斜壁12Dの後端部12bは、コイルスプリング17の上端部17bよりも上方(外方)に位置している。
【0104】
すなわち、傾斜壁12Dの下側の部分は、コイルスプリング17の軸線方向でコイルスプリング17に対向し、傾斜壁12Dの上側の部分は、コイルスプリング17の軸線方向でコイルスプリング17よりも上方に位置している。本実施例のコイルスプリング17の上端部17bは、コイルスプリングの外周端部を構成する。
【0105】
カムボディ10には樹脂製の第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19が設けられている。
図5、
図7に示すように、第1の摩擦部材18は、筒状支持部12の傾斜壁12Dとカムフォロア21との間に設置されていて、カムフォロア21が移動する時の摺動抵抗を低減している。
【0106】
第1の摩擦部材18は、傾斜壁12Dに沿って延びており、カムプレート14の移動方向Aに対して傾斜壁12Dと同方向に傾斜している。
【0107】
傾斜壁12Dに対向する第1の摩擦部材18の面には嵌合突起18aが形成されている。
図5、
図8に示すように、傾斜壁12Dには嵌合孔12dが形成されており、嵌合突起18aは嵌合孔12dに嵌合されている。
【0108】
これにより、第1の摩擦部材18は、傾斜壁12Dの傾斜方向に移動不能に傾斜壁12Dに取付けられている。
図5、
図7に示すように、第1の摩擦部材18は、カムフォロア21に接触する第1の摺動面18bを有し、カムフォロア21が第1の摺動面18bに沿って移動する。
【0109】
なお、嵌合突起18aおよび嵌合孔12dは、傾斜壁12Dの傾斜方向に並んで複数形成されており、第1の摩擦部材18はこれらの嵌合によって、傾斜壁12Dに位置決めされて取り付けられている。
【0110】
図5、
図7に示すように、第2の摩擦部材19は、カムボディ本体11の前側底壁11Bとカムプレート部14Aとの間に設けられていて、カムプレート14が移動する時の摺動抵抗を低減している。さらに、第2の摩擦部材19は、カムボディ本体11にまで延設されて、前側底壁11Bとカムプレート部14Aとの間に入り込んでいる。
【0111】
図8、
図9に示すように、第2の摩擦部材19は、底壁19A、左側壁19Bおよび右側壁19Cを有する。底壁19Aはカムプレート部14Aに沿って前後方向に延びており、底壁19Aは、カムプレート部14Aの下面に摩擦接触する。
【0112】
左側壁19Bおよび右側壁19Cは、底壁19Aの左端部と右端部から上方に延びており、左側壁19Bおよび右側壁19Cは、カムプレート部14Aの下部の左右両面に摩擦接触する。すなわち、第2の摩擦部材19は、その上面にカムプレート14が入り込むカムプレート14の移動方向Aに沿った溝(第2の摺動面19b)が形成されており、カムプレート部14Aの下部を挟み込むようにしてカムプレート部14Aとカムボディ本体11の前側底壁11Bおよび筒状支持部12の底壁12Aとの間に設置されている。
【0113】
また、
図8に示すように、第2の摩擦部材19の左側壁19Bは、カムプレート部14Aとカムボディ本体11の前側左側壁11Cおよび筒状支持部12の左側壁12Bとの間に配置されている。第2の摩擦部材19の右側壁19Cは、カムプレート部14Aとカムボディ本体11の前側右側壁11Dおよび筒状支持部12の右側壁12Cとの間に配置されている。
【0114】
図5、
図9に示すように、底壁12Aと前側底壁11Bに対向する第2の摩擦部材19の底壁19Aには嵌合突起19aが形成されている。前側底壁11Bと底壁12Aには嵌合溝11d、12eが形成されており、嵌合突起19aは、嵌合溝11d、12eに嵌合されている。嵌合溝11d、12eは左右方向に長い孔であって、嵌合突起19aと嵌合溝11d、12eの隙間(ガタ)に関し、カムプレート14の移動方向Aの隙間は小さく、左右方向の隙間は比較的大きく設定されている。
【0115】
これにより、第2の摩擦部材19は、嵌合突起19aと嵌合溝11d、12eの関係でカムプレート14の移動方向Aに移動不能となっている。さらに、第2の摩擦部材19は、左右方向には左側壁12Bあるいは右側壁12Cに当接して位置決めされている。
【0116】
図5、
図8に示すように、第2の摩擦部材19の底壁19A、左側壁19Bおよび右側壁19Cの各内周面は、カムプレート14に接触する溝状の第2の摺動面19bを構成し、カムプレート14が前後方向に移動したときに第2の摺動面19bがカムプレート14に摩擦接触し、カムプレート14の動きをガイドするとともに、カムフォロア21からカム面14Cに作用する荷重を受け止める。
【0117】
カムフォロア21は、コイルスプリング17によって付勢されることにより、第1の摩擦部材18に押し付けられており、この押し付け力は第1の摩擦部材18を介して筒状支持部12の傾斜壁12Dによって受け止められる。
【0118】
また、カムフォロア21は、コイルスプリング17によって付勢されることにより、カムプレート14に押し付けられており、この押し付け力は、カムプレート14および第2の摩擦部材19を介して筒状支持部12の底壁12Aによって受け止められている。
【0119】
第1の摺動面18b(傾斜壁12Dあるいは第1の摩擦部材18)と第2の摺動面19b(底壁12Aあるいは第2の摩擦部材19)との位置関係は、前方となるに従って間隔が狭くなるように形成されている。
【0120】
これにより、第1の摺動面18b(傾斜壁12Dあるいは第1の摩擦部材18)と第2の摺動面19b(底壁12Aあるいは第2の摩擦部材19)との間には、前方に向って付勢されたカムフォロア21が配置され、前方になるに従って漸次狭くなる楔状の空間が形成されている。
【0121】
コイルスプリング17は、傾斜壁12Dと底壁12Aの間隔、あるいは、第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19の間隔が狭くなる方向にカムフォロア21を押圧し、カムフォロア21を筒状支持部12に押し込む。
【0122】
これにより、カムフォロア21が安定して第1の摩擦部材18に押し付けられ、同時に、カムフォロア21が安定してカムプレート14に押し付けられる。
【0123】
本実施例の傾斜壁12Dと第1の摩擦部材18は、第1の壁部を構成し、底壁12Aと第2の摩擦部材19は、第2の壁部を構成する。つまり、第1の壁部は、第1のガイド壁部と第1の摩擦部材18から構成されており、第2の壁部は、第2のガイド壁部と第2の摩擦部材19から構成されている。
【0124】
本実施例の第1の摩擦部材18は、第1のガイド部材を構成し、第2の摩擦部材19は、第2のガイド部材を構成する。嵌合孔12dは、第1の被嵌合部を構成し、嵌合溝12e、11dは、第2の被嵌合部を構成する。嵌合突起18aは、第1の嵌合部を構成し、嵌合突起19aは、第2の嵌合部を構成する。
【0125】
図2に示すように、カムボディ本体11のクラッチペダル4側の端部、すなわち、カムボディ本体11の後側左側壁11Eと後側右側壁11Fの後端部にはフック部11g、11hが設けられている。
【0126】
フック部11g、11hは、後側左側壁11Eと後側右側壁11Fの後端部から上方に延びた後、カムフォロア21側に屈曲している。
【0127】
フック部11g、11hには係合溝11i、11jが設けられており、係合溝11i、11jにはロッド部材15のカムプレート連結部15Aの左右の端部が係脱自在に係合される。
【0128】
図4、
図6に示すように、フック部11g、11hは、ロッド部材15の左右に配置されている。上下方向から見て、ロッド部材15とカムプレート14は直線状に並んでおり、カムプレート14は、車幅方向でフック部11gを含んだ後側左側壁11Eおよび前側左側壁11Cと、フック部11hを含んだ後側右側壁11Fおよび前側右側壁11Dとの間に設置されている。
【0129】
そして、カムプレート14の後側の端部に設けられたスプリング受部14Bは、車幅方向でフック部11g、11hの間に設けられている。
【0130】
カムプレート連結部15Aが係合溝11i、11jに係合した状態において、コイルスプリング17は、カムフォロア21とカムプレート14のスプリング受部14Bとの間に圧縮された状態で設置されており、カムフォロア21を筒状支持部12の内部空間に押し込むとともに、カムプレート連結部15Aを係合溝11i、11jに押し付けている。このとき、コイルスプリング17は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置5に組み込まれた中で最大に伸長した状態となっている。
【0131】
カムプレート連結部15Aが係合溝11i、11jに係合されたときにクラッチ装置は完全に接続された状態にあり、クラッチペダル4は踏み込まれておらずに解放されている。
このクラッチ装置の完全接続状態でもコイルスプリング17は圧縮されており、コイルスプリング17はカムフォロア21を筒状支持部12に押し込むだけの充分な付勢力を有する。
【0132】
カムプレート連結部15Aがコイルスプリング17によって係合溝11i、11jに押し付けられた状態において、
図3に示すように左右方向から見て、スプリング受部14Bは、フック部11g、11hと前後方向の位置で重なっている。
【0133】
スプリング受部14Bに取付けられたカムプレート連結部15Aが係合溝11i、11jに係止することにより、スプリング受部14Bは、フック部11g、11hよりも後方に移動することが規制され、カムプレート14がクラッチペダル4側に移動することが規制される。本実施例のフック部11g、11hは、ストッパ部を構成する。
【0134】
また、カムプレート連結部15Aがコイルスプリング17によって係合溝11i、11jに押し付けられて係合溝11i、11jに係合された状態では、カムプレート14がカムボディ本体11から外れることを防止できる。また、コイルスプリング17の脱落を防止することができる。
【0135】
これに加えて、カムプレート14がクラッチペダル4側に移動することが規制されるので、クラッチペダル4が踏み込まれていない状態において、コイルスプリング17の付勢力によって押圧されて、クラッチペダル4が揺動軸3aを中心にして車室2B側(乗員側)に過度に揺動されることを防止できる。このため、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0136】
一方、クラッチペダル4が踏み込まれてカムプレート14が前方に移動したときには、カムプレート連結部15Aが係合溝11i、11jから離脱される。コイルスプリング17は、カムプレート14が前方に移動するのに伴って徐々に圧縮される。これにより、コイルスプリング17の付勢力(ばね力)が増大する。
【0137】
図3、
図4に示すように、ロッド部材15の左右にはリブ15C、15Dが設けられている。リブ15C、15Dは、カムプレート連結部15Aと同様に左右方向に突出している。つまり、リブ15C、15Dは、ロッド部材15からフック部11g、11hに向かって突出しており、ロッド部材15に沿って前後方向に延びている。
【0138】
リブ15C、15Dとフック部11g、11hとの間には車幅方向の隙間sが形成されており、隙間sは、リブ15C、15Dのそれぞれの車幅方向の突出高さよりも小さく形成されている。
【0139】
すなわち、ロッド部材15は、フック部11g、11hとリブ15C、15Dとの間に隙間sが形成されるようにしてカムプレート14とクラッチペダル4に連結されている。このため、ロッド部材15は、通常ではフック部11g、11hと当接しないが、ロッド部材15の位置が左右にずれた場合は、リブ15C、15Dがフック部11g、11hに当接してそれ以上のずれを抑制し、カムプレート連結部15Aがスプリング受部14Bから外れることを防止することができる。
【0140】
図8、
図9に示すように、カムフォロア21に対向する第1の摩擦部材18の第1の摺動面18bは、半円柱状に突出する曲面部が形成されており、第1の摺動面18bは傾斜壁12Dに沿って傾斜壁12Dの前端部12aから後端部12bまで形成されている。断面が半円形状の曲面部はその断面形状の曲面を維持しながら第1の摩擦部材18の延びる方向(傾斜方向)に沿って延びている。
【0141】
すなわち、曲面部は、第1の摩擦部材18の前端部(傾斜方向の下端部)から後端部(傾斜方向の上端部)まで、断面が半円形状に突出するように形成されており、上下方向から見て、カムプレート14または第2の摺動面19bと重なるように直線状に延びている。
【0142】
第1の摩擦部材18の第1の摺動面18bに対向するカムフォロア本体21Aの上面には、断面が半円筒形状に窪んだ曲面からなる溝状の摺動面21dが形成されている。摺動面21dは、第1の摺動面18bに沿って傾斜方向に直線状に延びており、第1の摺動面18bに直線状に突出する曲面部は摺動面21dの溝に入り込んでいる。
【0143】
すなわち、第1の摩擦部材18の第1の摺動面18bとカムフォロア本体21Aの摺動面21dは、曲面部と溝の曲面によって接触しており、カムフォロア本体21Aが第1の摩擦部材18に沿って上下方向に摺動する際に、曲面同士が接触した状態で摺動する。
【0144】
つまり、カムフォロア21は、第1の摺動面18bの曲面部に沿って移動(摺動)する。なお、曲面は断面が半円形状であって、半円柱状に突出する曲面部と半円筒状に窪む溝で曲面は構成されており、これらの半円柱形状と半円筒形状は共通の中心軸を有する。そして、この中心軸を回動中心にして、カムフォロア21は第1の摩擦部材18に対して左右方向に傾くことが可能となっている。
【0145】
車両にはクラッチペダル4の操作量を検出する図示しないセンサが設けられており、センサは、クラッチペダル4の踏み込み量、または、カムプレート14の移動量を検出して、検出信号を図示しないコントローラに送信する。
【0146】
コントローラは、センサの検出情報に基づいてアクチュエータを制御してクラッチ装置を断接する。
【0147】
次に、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5の作用を説明する。
運転者がクラッチペダル4を踏み込んでいない状態では、クラッチ装置が完全に接続されている。この状態では、カムプレート14がクラッチ側の最大位置に位置している。そして、カムプレート14の前端部14f側のカム面14Cにカムフォロア21のローラ21Bが当接している(
図5参照)。
【0148】
この状態から運転者がクラッチ装置を切断するためにクラッチペダル4を踏み込むと、その動きがロッド部材15を介してカムプレート14に伝えられる。この時、カムプレート14は、第2の摩擦部材19に摩擦接触しながら前側に移動し、カムプレート連結部15Aが係合溝11i、11jから離脱して前方に離れるとともに、コイルスプリング17を圧縮させる。
【0149】
カムプレート14が前側に移動すると、カムフォロア21がカム面14Cの凸状カム面14eで押し上げられる。この時、ローラ21Bがカム面14Cの凸状カム面14eに接触しながら回転するので、カムプレート14は滑らかに前側に移動することができる。
【0150】
なお、カム面14Cの凸状カム面14eで押し上げられるカムフォロア21は、傾斜壁12D(第1の摩擦部材18)の存在によって動きの方向が規制され、第1の摺動面18bに沿って後側斜め上方に移動する(
図7参照)。
【0151】
つまり、カムフォロア21はカムプレート14の凸状カム面14eで押し上げられて上方に移動するだけでなく、カムフォロア本体21Aが第1の摩擦部材18に摩擦接触しながら後側斜め上方に移動するので、カムフォロア21はカムプレート14の移動方向Aでクラッチペダル側(ロッド部材15側)にも移動する。このため、コイルスプリング17はカムプレート14の動きによる圧縮だけでなく、クラッチペダル側に移動するカムフォロア21によっても更に圧縮されることとなる。
【0152】
コイルスプリング17の弾性力と傾斜壁12Dの傾斜によってカムフォロア21はカム面14Cに押し付けられている。このカムフォロア21からの押し付け荷重は、カムプレート14を介して第2の摩擦部材19によって受け止められる。また、ローラ21Bは、ボールベアリング21Cによってローラ軸21aに回転自在に支持されるので、ローラ21Bとカム面14Cとの摺動抵抗が低減される。これらによって、カムプレート14は円滑に摺動することができる。
【0153】
カムプレート14がさらに前側に移動し、
図7に示すように、凸状カム面14eの頂点14tにローラ21Bが位置したときに、傾斜壁12Dに沿って移動するカムフォロア21がカムプレート14の移動方向Aで最も後側(クラッチペダル側)に位置してロッド部材15に最も近づく。
【0154】
これにより、ローラ21Bがカムプレート14の前端部14fのカム面14Cから凸状カム面14eの頂点14tに達するまでの間、カムフォロア21が傾斜壁12Dに沿ってロッド部材15側に移動する分だけコイルスプリング17の圧縮量がさらに増大する。
【0155】
ローラ21Bが凸状カム面14eに沿って移動するとき(前端部14fから頂点14tの間)には、
図10のW1に示すように、クラッチペダル4の踏み込み量に応じて徐々に大きくなるコイルスプリング17の反力が操作反力としてクラッチペダル4に付与される。
【0156】
なお、
図10において、横軸はクラッチペダルストロークであって、運転者によるクラッチペダルの踏込量(踏込長さ)を示し、縦軸は操作反力であって、運転者によるクラッチペダルの踏込力(踏込位置を維持するのに必要な力)を示している。
【0157】
カムプレート14がさらに前側に移動し、ローラ21Bが凸状カム面14eの頂点14tから凹状カム面14gに接触しながら凹状カム面14gの最深部14pに接触するまでの間、カムフォロア21は下方に移動する。
【0158】
カムフォロア21が下方に移動するときには、カムフォロア21はコイルスプリング17の付勢力を受けて傾斜壁12Dに向けて押し付けられているので、カムフォロア21は第1の摩擦部材18に摩擦摺動しながら第1の摺動面18bに沿って前側斜め下方に移動し、カムプレート14の移動方向Aではロッド部材15から離れる側に移動する。これにより、コイルスプリング17の圧縮量が減少する。
【0159】
これにより、カムフォロア21がカム面14Cの頂点14tから最深部14pの間の形状に従って移動するときは、
図10のW2に示すように、クラッチペダル4の踏み込み量が増大してもコイルスプリング17の弾性力から生じるクラッチペダル4に付与される反力(操作反力)が小さくなる。
【0160】
この荷重特性が、機械的に接続されたクラッチを操作した時に運転者が感じる操作感(ダイヤフラムスプリングの変形に伴う荷重特性)に似ているので、運転者が違和感なくクラッチバイワイヤ方式のクラッチペダルを操作することができる。
【0161】
カムプレート14がさらに前側に移動すると、ローラ21Bが凹状カム面14gの最深部14pから凸状カム面14hに接触しながら上方に移動し、カムフォロア21が第1の摩擦部材18に摩擦摺動しながら第1の摺動面18bに沿って後側斜め上方に移動し、カムプレート14の移動方向Aでロッド部材15に近づく側に移動する。これにより、カムフォロア21がカムプレート14の移動方向Aに移動した分だけコイルスプリング17の圧縮量をさらに増大することができる。
【0162】
このとき、
図10のW3に示すように、クラッチペダル4の踏み込み量に応じて徐々に大きくなるコイルスプリング17の反力がクラッチペダル4に付与される。
【0163】
図10に示すように、運転者によるクラッチペダル4の踏み込み力は、クラッチペダル4を踏み込んでいく時(踏込量を増大させていく時)よりも、クラッチ装置が切断制御される状態までクラッチペダル4が踏み込まれた状態からクラッチペダル4の踏み込みを解除していく時の方が小さくなる。
【0164】
クラッチペダル4の踏み込みを解除するとき、ロッド部材15を介してカムプレート14に入力される運転者の操作力よりも、コイルスプリング17により付勢される弾性力(バネ力)が勝ることにより、カムプレート14が後側に移動する。
【0165】
カムプレート14がコイルスプリング17によってクラッチペダル4側に移動していくと、ローラ21Bが凹状カム面14gから凸状カム面14eに順次接触し、凹状カム面14gと凸状カム面14eを含むカム面14Cの高さに応じてカムフォロア21が傾斜壁12Dに沿ってカムプレート14の移動方向Aに移動する。
【0166】
これにより、コイルスプリング17の圧縮量が調整され、コイルスプリング17の圧縮量に応じた反力が操作反力としてクラッチペダル4に付与される。
【0167】
図10に示すように、クラッチペダル4の戻り側ではクラッチペダル4の踏み込み側に比べて小さい操作反力がクラッチペダル4に付与される。
【0168】
具体的には、クラッチペダル4が踏み込まれるときには、第1の摩擦部材18とカムフォロア21の間、および、第2の摩擦部材19とカムプレート14の間において、クラッチペダル4の踏込み方向に対して抵抗となる摩擦力が生じ、摩擦力はコイルスプリング17の圧縮量が増大するのに伴って増大する。
【0169】
一方、クラッチペダル4の踏み込みが解除されてクラッチペダル4が戻されるときには、第1の摩擦部材18とカムフォロア21の間、および、第2の摩擦部材19とカムプレート14の間において、クラッチペダル4の踏み込み方向と逆向きの戻り方向に対して抵抗となる摩擦力が生じ、摩擦力はコイルスプリング17の圧縮量が減少するのに伴って減少する。
【0170】
運転者によるクラッチペダル4の踏み込み力は、踏み込み側に対して戻り側が小さくなるので、
図10に示すように、クラッチペダル4の操作反力にヒステリシス荷重が発生する。
【0171】
これにより、クラッチペダル4の踏み込み側ではクラッチ操作反力発生装置5によって大きい操作反力を得ることができ、クラッチペダル4の戻り側ではクラッチ操作反力発生装置5によって踏み込み側よりも小さい操作反力を得ることができる。
【0172】
このように、本実施例の第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19は、ヒステリシス発生部材として機能する。
【0173】
また、第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19は樹脂から構成されるので、第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19にカムフォロア21あるいはカムプレート14が接触したときの摩耗を抑制でき、カムフォロア21とカムプレート14の耐久性を向上できる。
【0174】
このように、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4の操作時に、カムプレート14の移動量とカムフォロア21の移動量に応じてコイルスプリング17の圧縮量を変化させ、コイルスプリング17の圧縮量に応じた操作反力をクラッチペダル4に付与できる。
【0175】
また、カムプレート14のカム面14Cの形状を変更することにより、カムプレート14の移動方向Aに対するカムフォロア21の移動量を調整してコイルスプリング17の反力を設定でき、所望する擬似的な特性の操作反力を発生させることができる。
【0176】
以上の結果、クラッチ操作反力発生装置5は、運転者によるクラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を疑似的に発生でき、運転者に対して違和感のないクラッチペダル4の操作感を与えることができる。
【0177】
また、カムプレート14が前方に移動したときにピン16Bが長穴14dの後端部に当接することにより、カムプレート14の前側に過度に移動することが規制される。
【0178】
これにより、コイルスプリング17が過剰に圧縮されることを防止でき、コイルスプリング17の耐久性が悪化することを防止できる。この結果、クラッチ操作反力発生装置5の耐久性を向上できる。
【0179】
次に、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5の効果を説明する。
本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、カムボディ本体11とカムボディ本体11の前端部11fに設けられた筒状支持部12とを有し、クラッチペダル4と別体に設けられたカムボディ10と、クラッチペダル4と別体であるが連動して動くように設けられ、カム面14Cを有してカムボディ本体11と筒状支持部12に移動自在に設けられたカムプレート14とを備えている。
【0180】
また、クラッチ操作反力発生装置5は、カム面14Cに接触するローラ21Bを有して筒状支持部12に収容され、カムプレート14の移動に応じて移動することにより、クラッチペダル4への操作反力を変化させるカムフォロア21を備えている。
【0181】
さらに、クラッチ操作反力発生装置5は、筒状支持部12の傾斜壁12Dとカムフォロア21との間に設けられ、カムフォロア21に摩擦接触する第1の摩擦部材18と、筒状支持部12の底壁12Aとカムプレート14との間に設けられ、カムプレート14に摩擦接触する第2の摩擦部材19とを備えている。第2の摩擦部材19は、カムボディ本体11にまで延設されて、前側底壁11Bとカムプレート部14Aとの間に入り込んでいる。
【0182】
第1の摩擦部材18は、傾斜壁12Dに形成された嵌合孔12dに嵌合される嵌合突起18aを有し、第2の摩擦部材19は、筒状支持部12の底壁12Aとカムボディ本体11の前側底壁11Bとに形成された嵌合溝11d、12eに嵌合される嵌合突起19aを有する。
【0183】
これにより、クラッチ操作反力発生装置5をクラッチペダル4と別体に構成することができ、クラッチ操作反力発生装置5の構成を簡素化してクラッチ操作反力発生装置5の製造コストの低減を図ることができる。
【0184】
また、筒状支持部12に第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19を容易に取付けることができるので、クラッチ操作反力発生装置5の組み立て作業の作業性を向上でき、クラッチ操作反力発生装置5の生産性を向上できる。
【0185】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4と別体に設けられ、ロッド部材15を介してクラッチペダル4に連結されているので、ロッド部材15のロッド支持部材7をクラッチペダル4に取付けることやクラッチペダル4から取り外すことにより、クラッチ操作反力発生装置5をクラッチペダル4に対して容易に着脱できる。
【0186】
このため、クラッチ操作反力発生装置5のメンテナンス作業の作業性やクラッチ操作反力発生装置5の交換作業の作業性を向上できる。
【0187】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、筒状支持部12に第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19が設けられているので、カムフォロア21と第1の摩擦部材18の摩擦接触と、カムプレート14と第2の摩擦部材19の摩擦接触とにより、クラッチペダル4の踏み込み時と戻り時にクラッチペダル4の操作反力にヒステリシスを発生させることができる。
【0188】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、第2の摩擦部材19および第1の摩擦部材18を樹脂から構成している。樹脂は、表面が滑らかであり、耐摩擦性能が優れ、摩擦係数が安定しているので、カムフォロア21に対する第1の摩擦部材18の摺動面の摩耗とカムプレート14に対する第2の摩擦部材19の摺動面の摩耗とを金属に比べて抑制できる。
【0189】
このため、クラッチペダル4の操作時の操作反力を一定に保つことができ、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を長期にわたって発生させることができる。
【0190】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、カムプレート14の移動に応じて伸縮することにより、クラッチペダル4に操作反力を付与するコイルスプリング17を有する。
【0191】
カムフォロア21は、コイルスプリング17によって付勢されることにより、第1の摩擦部材18を介して傾斜壁12Dに押し付けられ、かつ、カムプレート14および第2の摩擦部材19を介して筒状支持部12の底壁12Aに押し付けられることにより、筒状支持部12に位置決めされている。
【0192】
これにより、カムフォロア21を容易に筒状支持部12に取付けて筒状支持部12に位置決めできる。このため、クラッチ操作反力発生装置5の組み立て作業の作業性をより効果的に向上でき、クラッチ操作反力発生装置5の生産性をより効果的に向上できる。
【0193】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、後端部にクラッチペダル4に連結されるペダル連結部15Bを有し、前端部にカムプレート14のスプリング受部14Bに連結される円筒状のカムプレート連結部15Aを有するロッド部材15を備えている。
【0194】
カムボディ本体11の後端部(後側左側壁11Eと後側右側壁11Fの後端部)にフック部11g、11hが設けられており、フック部11g、11hは、カムプレート連結部15Aに着脱自在に係合する係合溝11i、11jを有し、カムプレート14のクラッチペダル4側への移動を規制している。
【0195】
これに加えて、コイルスプリング17は、カムフォロア21とカムプレート14との間に圧縮された状態で設置されており、コイルスプリング17は、カムプレート連結部15Aを介してカムプレート14を係合溝11i、11jに押し付けているとともに、カムフォロア21を筒状支持部12に押し付けている。
【0196】
これにより、クラッチ操作反力発生装置5の組み立て時に、筒状支持部12に第1の摩擦部材18と第2の摩擦部材19を取付けた状態でカムプレート14をカムボディ10に装着した後、カムフォロア21を筒状支持部12に収容する。
【0197】
次いで、コイルスプリング17をカムフォロア21とカムプレート14のスプリング受部14Bの間に取付けることにより、カムプレート14、カムフォロア21およびコイルスプリング17をカムボディ10に組付けることができる。
【0198】
また、カムプレート14、カムフォロア21およびコイルスプリング17をカムボディ10に組付ける際に、コイルスプリング17の付勢力によってカムプレート14がカムプレート連結部15Aを介して係合溝11i、11jに押し付けられることにより、カムプレート14がカムボディ10に位置決めされる。
【0199】
これに加えて、コイルスプリング17の一端側の付勢力によってカムプレート14がカムプレート連結部15Aを介して係合溝11i、11jに押し付けられ、この反力となるコイルスプリング17の他端側の付勢力を利用してカムプレート14を筒状支持部12に強く押し込めることができる。
【0200】
このため、クラッチ操作反力発生装置5の組み立て作業の作業性をより効果的に向上でき、クラッチ操作反力発生装置5の生産性をより効果的に向上できる。
【0201】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、フック部11g、11hは、ロッド部材15の両側面に対して車幅方向の外側に設けられており、カムプレート14のスプリング受部14Bは、フック部11g、11hの間に設置されている。
【0202】
これに加えて、ロッド部材15はリブ15C、15Dを有し、リブ15C、15Dは、ロッド部材15からフック部11g、11hに向かって突出している。
【0203】
これにより、ロッド部材15が車幅方向に振れた場合に、リブ15C、15Dをフック部11g、11hに当接させてロッド部材15の車幅方向への動きを規制できる。このため、カムプレート連結部15Aが係合溝11i、11jから脱落することを防止できる。
【0204】
このため、クラッチペダル4の操作力を、ロッド部材15を介してカムプレート14に確実に伝達できる。この結果、クラッチペダル4の操作性が低下することを防止できる。
【0205】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、第1の摩擦部材18とカムフォロア21の摺動面である第1の摺動面18bと摺動面21dを曲面から構成している。
【0206】
これにより、例えば、折り曲げ加工等によって筒状支持部12を成形して傾斜壁12Dの内周面あるいは底壁12Aの内周面が左右方向に平行にならない場合でも、カム面14Cに対するカムフォロア21の姿勢が自動的に調整され、カムフォロア本体21Aの摺動面21dを第1の摩擦部材18の第1の摺動面18bに沿って摺動させることにより、カムフォロア21を第1の摩擦部材18に沿って円滑に摺動させることができる。
【0207】
すなわち、曲面からなるカムフォロア本体21Aの摺動面21dと第1の摩擦部材18の第1の摺動面18bとによって、傾斜壁12Dの内周面と底壁12Aの内周面の精度誤差を吸収できる。
【0208】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、カムフォロア21は、カム面14Cに回転自在に接触するローラ21Bを有する。
【0209】
これにより、カムプレート14のカム面14Cが摩耗することを抑制でき、カムプレート14の耐久性を向上できる上に、クラッチペダル4の操作時の操作反力を一定に保つことができる。このため、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を長期にわたって体感できる。
【0210】
なお、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4がロッド部材15を介してカムプレート14に連結されているが、カムプレート14をクラッチペダル4に直接連結してもよい。
【0211】
また、本実施例の変速機はMTから構成されているが、変速機はAMT(Automated Manual Transmission)であってもよい。
【0212】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、筒状支持部12の傾斜壁12Dが上側となり、カムボディ10の前側底壁11Bおよび筒状支持部12の底壁が下側となるように設置されているが、筒状支持部12の傾斜壁12Dが下側となり、カムボディ10の前側底壁11Bおよび筒状支持部12の底壁が上側となるように設置されてもよい。
【0213】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0214】
4...クラッチペダル、5...クラッチ操作反力発生装置、10...カムボディ、11...カムボディ本体、11f...前端部(クラッチペダル側と反対側のカムボディ本体の端部)、11g,11h...フック部(ストッパ部)、11i,11j...係合溝、12...筒状支持部、12A...底壁(第2のガイド壁部)、12D...傾斜壁(第1のガイド壁部)、12d...嵌合孔(第1の被嵌合部)、12e...嵌合溝(第2の被嵌合部)、14...カムプレート、14C...カム面、15...ロッド部材、15A...カムプレート連結部、15B...ペダル連結部、15C,15D...リブ、17...コイルスプリング(付勢部材)、18...第1の摩擦部材(第1のガイド部材)、18a...嵌合突起(第1の嵌合部)、18b...第1の摺動面(曲面)、19...第2の摩擦部材(第2のガイド部材)、19a...嵌合突起(第2の嵌合部)、21...カムフォロア、21B...ローラ(接触部)、21d...摺動面(曲面)