(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】訪問順決定システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20250527BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2021158841
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂井 孝光
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-540329(JP,A)
【文献】特開2021-111237(JP,A)
【文献】特開2020-154476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地点における複数の地点間それぞれの移動コストを取得する移動コスト取得部と、
複数の前記地点間のうち、対応する前記移動コストが示す移動にかかる負担が既定の水準以上である前記地点間における移動の際の休憩期間に基づいて、前記負担が前記水準以上である前記地点間の前記移動コストを修正する移動コスト修正部と、
複数の前記地点間それぞれの前記移動コストに基づいて、複数の前記地点の訪問順を決定する訪問順決定部と、
を備え
、
前記移動コスト修正部により修正された前記移動コストは、休憩場所を経由して前記地点間を移動する際の前記移動コストが、前記休憩期間に基づいて修正された前記移動コストである訪問順決定システム。
【請求項2】
前記休憩場所は、対応する前記地点間の移動に用いられる経路からの距離が既定の閾値以下であり、かつ、対応する前記地点間における移動の出発地点からの移動期間が既定の閾値以上である請求項
1に記載の訪問順決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、訪問順決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の配送先に荷物を配送する場合のように、複数の地点を順番に訪問することが行われている。このような複数の地点への訪問を支援する技術がある。特許文献1には、複数の地点を訪問する車両の運行計画として、2地点間の、渋滞のような時間帯毎の交通状況に応じた車両の走行時間の統計値又は予測値に基づく運行計画を作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
訪問先の地点間の移動に時間がかかるほど、移動にかかる負担は大きくなる。そこで、一度の移動で一定の水準以上の負担がかかる場合、移動の途中で休憩をとることが推奨される場合がある。従来技術では、地点間の移動の際の休憩期間を考慮せずに、複数の地点の訪問順が決定される。そのため、地点間の移動の際に休憩をとる場合、必ずしも、効率のよい訪問順になっていない可能性があった。例えば、決定された訪問順と異なる訪問順で各地点を訪問した方がより短時間で各地点を訪問できる可能性がある。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、より効率的に複数の地点を訪問できる訪問順を、決定できる可能性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、訪問順決定システムは、複数の地点における複数の地点間それぞれの移動コストを取得する移動コスト取得部と、複数の前記地点間のうち、対応する前記移動コストが示す移動にかかる負担が既定の水準以上である前記地点間における移動の際の休憩期間に基づいて、前記負担が前記水準以上である前記地点間の前記移動コストを修正する移動コスト修正部と、複数の前記地点間それぞれの前記移動コストに基づいて、複数の前記地点の訪問順を決定する訪問順決定部と、を備える。
【0006】
訪問順決定システムは、移動にかかる負担が既定の水準以上である地点間の移動コストを、移動の際の休憩期間に基づいて修正する。これにより、実際の移動の際の休憩期間を加味して修正された移動コストは、実際の移動の際の負担をより反映した値となる。このように修正された移動コストを用いることで、訪問順決定システムは、各地点の訪問順を決定する際に、より効率的な訪問順が決定される可能性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】訪問順決定システムの構成の一例を示す図である。
【
図4】訪問順の決定処理の一例を説明する図である。
【
図5】訪問順の決定処理の一例を説明する図である。
【
図6】訪問順決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】移動コスト取得処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)訪問順決定システムの構成:
(2)訪問順決定処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)訪問順決定システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる訪問順決定システム10の構成の一例を示す図である。訪問順決定システム10は、複数の地点を訪問する際の訪問順を決定し、各地点間の経路を決定するシステムである。本実施形態では、複数の配送先を訪問し荷物を配送する配送サービスにおいて、複数の訪問対象の地点(配送の開始地点、配送の終了地点、及び、配送先)の訪問順を決定する場合を例に説明する。以下では、配送に用いられる車両を、配送車両とする。本実施形態では、訪問順決定システム10は、配送サービスを提供する事業者の事業所に配置されたサーバであって、管理者端末100から操作されるサーバである。管理者端末100は、例えば、汎用コンピュータや携帯端末等の端末であり、ディスプレイや操作入力部等を備えている。訪問順決定システム10の管理者は、管理者端末100の操作入力部を操作することにより、訪問順決定システム10に複数の地点の訪問順を決定させることができる。
【0010】
訪問順決定システム10は、プロセッサ、RAM、ROM等を備える制御部20と、記録媒体30と、通信部40と、を備える。
制御部20は、記録媒体30等に記録される各種プログラムを実行することで、訪問順決定システム10を制御する。記録媒体30は、訪問順決定プログラム21等の各種プログラム、位置情報30a、地図情報30b、コストテーブル30c等を記録する。通信部40は、管理者端末100等の外部の装置との間での通信に用いられる回路を備える。
【0011】
位置情報30aは、配送の開始地点と、配送の終了地点と、訪問対象となる複数の配送先と、の位置の情報である。以下では、配送の開始地点と、配送の終了地点と、訪問対象となる複数の配送先と、の各地点を、移動地点とする。本実施形態では、移動地点となる複数の地点は予め定められている。
図2に、位置情報30aの一例を示す。本実施形態では、位置情報30aが示す各移動地点の位置情報は、S
*(X*、Y*)等のように、移動地点の識別情報(S
*)と、移動地点の位置((X*、Y*))と、が対応づけられた情報である。ここで、*は、何れの移動地点であるかを示す添字であり、A、B、C・・・の何れかである。
地図情報30bは、全ての移動地点を包含する領域の地図を示す。本実施形態では、地図情報30bは、ノードデータ、形状補間点データ、リンクデータ、道路やその周辺に存在する地物の位置等を示すデータ等を含む。リンクデータにはリンクデータが示す道路区間毎の移動コストを示す情報が対応付けられている。ここで、移動コストとは、対応する区間の移動にかかる負担の程度を示す指標値であり、本実施形態では、既定の移動体による区間の移動にかかる期間である。本実施形態では、この既定の移動体は、配送車両であるとするが、他の例として、自転車、歩行者、電車等の他の移動体でもよい。
【0012】
コストテーブル30cは、移動地点間の移動コストを記録するためのテーブルである。本実施形態では、制御部20は、移動地点の中から2個の地点を選択して得られる組み合わせの全てについて、移動地点間の移動コストを求め、求めた移動コストをコストテーブル30cに記録する。
図3に、コストテーブル30cの一例を示す。
図3の例では、コストテーブル30cには、移動コストの情報として、何れの移動地点間であるかを示す情報(S
*1→S
*2)と、対応する移動地点間の移動コストを示す(C
*1*2)と、の対応情報が記録される。例えば、移動地点S
Aと移動地点S
Bとの地点間については、(S
A→S
B:C
AB)という情報が記録される。
【0013】
制御部20は、記録媒体30に記録された訪問順決定プログラム21を実行することで、移動コスト取得部21a、移動コスト修正部21b、訪問順決定部21cとして機能する。
移動コスト取得部21aは、既定の複数の移動地点における複数の移動地点間それぞれの移動コストを取得する機能である。本実施形態では、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、複数の移動地点から2つの移動地点を選択する。制御部20は、位置情報30aから、選択した2つの移動地点の位置を取得する。
【0014】
そして、制御部20は、取得した位置と地図情報20bとに基づいて、選択した2つの移動地点の間の経路を探索する。制御部20は、既定の経路探索アルゴリズムによって、選択した移動地点の一方から他方までの経路であって、移動コストが最も低くなる経路を探索する。
制御部20は、地図情報30bから、探索した経路に含まれる各区間の移動コストを取得する。そして、制御部20は、取得した移動コストの合計を、この経路の移動コストとして取得する。制御部20は、取得した移動コストが既定の閾値以上か否かを判定する。以下では、この閾値を、コスト閾値とする。コスト閾値は、ある区間の移動にかかる負担が既定の水準である場合におけるその区間の移動コストを示す値である。本実施形態では、コスト閾値は、120分であるが、他の例として、90分等の他の値でもよい。
制御部20は、探索した経路の移動コストがコスト閾値未満であると判定した場合、選択した2つの移動地点の間の移動には、既定の水準未満の負担しかかからず、途中に休憩は不要と判断する。そして、制御部20は、この2つの移動地点の間の探索した経路の移動コストを、選択した2つの移動地点の識別情報と対応付けて、コストテーブル30cに記録する。
【0015】
また、制御部20は、探索した経路の移動コストがコスト閾値以上であると判定した場合、選択した2つの移動地点の間の移動には既定の水準以上の負担がかかるため、移動の途中に休憩を要すると判断する。この場合、制御部20は、選択した2つの移動地点の間における休憩場所を決定する。本実施形態では、制御部20は、以下のようにして、移動コストがコスト閾値以上である移動地点間において1つの休憩場所を決定する。
すなわち、制御部20は、地図情報30bを用いて、以下の2つの条件を満たす既定の施設(例えば、駐車場、サービスエリア、コンビニエンスストア等)を、休憩場所として探索する。第1の条件は、選択した2つの移動地点の間の探索した経路からの距離が既定の閾値(例えば、100m、300m等)以下となることである。以下では、この閾値を、距離閾値とする。また、第2の条件は、この移動地点間における移動の出発地点からの移動期間が既定の閾値(例えば、40分、50分、この移動地点間の移動期間に対する既定の割合(例えば、30%、35%、40%等)の期間等)以上となることである。以下では、この閾値を期間閾値とする。本実施形態では、制御部20は、選択した2つの移動地点のそれぞれをこの移動地点間の移動の出発地点とした場合に、この出発地点からの移動に期間閾値以上の期間がかかる休憩場所を探索する。換言すると、本実施形態では、制御部20は、選択した2つの移動地点の一方を出発地点、他方を到着地点として、出発地点からの移動に期間閾値以上の期間がかかり、かつ、到着地点までの移動に期間閾値以上の期間がかかる休憩場所を探索する。より具体的には、制御部20は、移動地点間の経路の区間の移動期間を累積し、移動地点の何れか一方を出発地点とした場合における出発地点からの移動期間が期間閾値となる地点を特定する。また、制御部20は、移動地点の他方を出発地点とした場合における出発地点からの移動期間が期間閾値となる地点を特定する。そして、制御部20は、特定した両地点に挟まれ、第1の条件に適合する領域から、既定の施設を探索し、探索した施設を休憩場所とする。
【0016】
制御部20は、休憩場所を決定すると、地図情報30bに基づいて、既定の経路探索アルゴリズムによって、選択した移動地点の一方から他方まで休憩場所を経由する経路であって、移動コストが最も低くなる経路を探索する。
【0017】
ここで、移動コスト修正部21bについて説明する。移動コスト修正部21bは、対応する移動コストが示す移動にかかる負担が既定の水準以上である移動地点間における移動の際の休憩期間に基づいて、この移動地点間の移動コストを修正する機能である。
制御部20は、移動コスト修正部21bの機能により、移動コスト取得部21aの機能により探索された休憩場所を経由する経路の移動コストを、既定の休憩期間に基づいて、修正する。本実施形態では、この休憩期間は、10分間とするが、5分間、15分間等の他の期間としてもよい。本実施形態では、制御部20は、休憩場所を経由する経路の移動コストに、既定の休憩期間の値を加えることで、この移動コストを修正する。
【0018】
移動コスト取得部21aの説明に戻る。
制御部20は、移動コスト修正部21bの機能により移動コストが修正された場合、修正された移動コストを、選択した2つの移動地点の識別情報と対応付けて、コストテーブル30cに記録する。
そして、制御部20は、複数の移動地点から改めて、2つの移動地点の組み合わせを選択し、以上の処理を繰り返す。このようにして、制御部20は、複数の移動地点から2つの移動地点の組み合わせを全て選択し、選択した全ての組み合わせについて、移動地点間の移動コストを取得する。これにより、コストテーブル30cには、2つの移動地点の全ての組み合わせについて、移動地点間の移動コストが記録される。
【0019】
訪問順決定部21cは、移動コスト取得部21aにより取得される複数の移動地点間それぞれの移動コストに基づいて、複数の移動地点の訪問順を決定する機能である。本実施形態では、制御部20は、訪問順決定部21cの機能により、コストテーブル30cに基づいて、複数の移動地点の訪問順を決定する。より具体的には、制御部20は、以下のようにする。本実施形態では、配送車両の台数と、配送において複数の移動地点を訪問する際の移動にかかる移動コストと、に関する目的関数が設定されている。本実施形態では、この目的関数は、配送における各配送車両の移動コストの合計が大きくなるほど値が大きくなる関数である。制御部20は、既定の配送計画問題の公知のアルゴリズムを用いて、コストテーブル30cに記録される各移動地点間の移動コストと、この目的関数と、に基づいて、配送に用いられる配送車両の台数、及び、各配送車両について各配送車両が巡る移動地点の訪問順を決定する。より具体的には、制御部20は、この目的関数を最小化するように、配送に用いられる配送車両の台数、及び、各配送車両について各配送車両が巡る移動地点の訪問順を決定する。
また、制御部20は、各配送車両について、移動地点の訪問順を決定したら、地図情報30bに基づいて、移動地点間の経路を探索し、各移動地点間の経路を決定する。
【0020】
制御部20は、各配送車両についての移動地点の訪問順、各移動地点間の経路の情報を、既定の方法で出力してもよい。例えば、制御部20は、これらの情報を表示部に表示することで出力してもよいし、通信部40を介して管理者端末100等の外部の装置に送信することで出力してもよいし、記録媒体30等に記録することで出力してもよいし、紙等の印刷媒体に印刷することで出力してもよい。
【0021】
以上、本実施形態の構成により、訪問順決定システム10は、複数の移動地点における移動地点間の移動コストを取得し、コスト閾値以上の移動コストについては、休憩期間に基づいて修正する。そして、訪問順決定システム10は、修正された移動コストを用いて、複数の移動地点の訪問順を決定する。これにより、訪問順決定システム10は、休憩期間を考慮しない場合に比べて、より効率的に複数の地点を訪問できる訪問順を、決定できる可能性を向上できる。
また、本実施形態では、訪問順決定システム10は、コスト閾値以上の移動コストに対応する移動地点間については、改めて、休憩場所を経由する経路を探索し、改めて探索した経路の移動コストを休憩期間に基づいて修正する。すなわち、修正された移動コストは、休憩場所を経由して対応する移動地点間を移動する際の移動コストが、休憩期間に基づいて修正された値となる。これにより、訪問順決定システム10は、修正後の移動コストを、より実際の移動の際の移動コストに近づけることができる。結果として、訪問順決定システム10は、より効率的に複数の地点を訪問できる訪問順を、決定できる可能性をより向上できる。
また、本実施形態では、訪問順決定システム10は、コスト閾値以上の移動コストに対応する移動地点間について、第2の条件を満たす休憩場所として、移動地点間の出発地点からの移動期間が期間閾値以上であり、且つ、移動地点間の到着地点までの移動期間が期間閾値以上である休憩場所を決定する。そのため、休憩場所は、対応する移動地点それぞれを出発地点として、出発地点から期間閾値以上の期間の移動を要する場所に決定される。これにより、対応する移動地点間を移動する場合、期間閾値以上の期間の移動を行った疲労が蓄積した後に休憩を行うことが可能となる。また、休憩場所は、対応する移動地点間の到着地点まで期間閾値以上の期間の移動を要する場所に決定される。これにより、到着地点の付近で休憩をとる事態の発生が抑制される。このように、訪問順決定システム10により、要望されるタイミングにより近いタイミングでの休憩が可能となる。
【0022】
ここで、
図4、5を用いて、訪問順決定システム10が、配送車両1台で移動地点A~Dを訪問する際の訪問順を決定する場合について説明する。移動地点Aは、配送の開始地点、且つ、終了地点である。移動地点B~Dは、それぞれ配送先である。
図4に示すように、移動地点Aと移動地点Bとの間の移動コスト(移動期間)は、65分である。また、移動地点Aと移動地点Cとの間の移動コストは、140分である。また、移動地点Aと移動地点Dとの間の移動コストは、55分である。また、移動地点Bと移動地点Cとの間の移動コストは、105分である。また、移動地点Bと移動地点Dとの間の移動コストは、15分である。また、移動地点Cと移動地点Dとの間の移動コストは、95分である。
仮に移動コストがコスト閾値以上の移動地点間について、移動コストの修正を行わないとする。この場合、最も移動コストが小さくなる訪問順は、移動地点A→移動地点D→移動地点B→移動地点C→移動地点Aの順番である。そして、この順番で移動地点A~Dを訪問する場合の移動コストは、55+15+105+140=315である。すなわち、これらの移動地点を巡るのに315分かかることとなる。対して、移動地点A→移動地点B→移動地点C→移動地点D→移動地点Aの順番で、移動地点A~Dを訪問する場合の移動コストは、65+105+95+55=320である。この順番でこれらの移動地点を巡るのに320分かかることとなる。そのため、移動地点A→移動地点D→移動地点B→移動地点C→移動地点Aの順番で訪問する方が、効率がよいように見える。そこで、移動地点A→移動地点D→移動地点B→移動地点C→移動地点Aの訪問順を、最も効率のよい訪問順として決定することが考えられる。しかし、移動地点Aと移動地点Cとの間は、移動コストがコスト閾値(120分)以上である。そのため、この順番で訪問する場合、実際には、315分+休憩期間(10分)=325分かかり、移動地点A→移動地点B→移動地点C→移動地点D→移動地点Aの順番で訪問する場合よりも移動期間が大きくなる。このように、休憩期間を考慮しない移動コストを用いて、各移動地点の訪問順を決定すると、実際にはより時間がかる訪問順を決定してしまう可能性がある。
【0023】
対して、本実施形態では、制御部20は、各移動地点の訪問順の決定の前に、移動コスト修正部21bの機能により、移動地点Aと移動地点Cとの間の移動コストを、休憩期間に基づいて修正する。ここで修正後の移動地点Aと移動地点Cとの間の移動コストを、150とする。そうすると、移動地点A→移動地点D→移動地点B→移動地点C→移動地点Aの順番で訪問する場合の移動コストは、55+15+105+150=325となる。また、移動地点A→移動地点B→移動地点C→移動地点D→移動地点Aの順番で訪問する場合の移動コストは、65+105+95+55=320となる。よって、制御部20は、移動コストが最小となる訪問順として、移動地点A→移動地点B→移動地点C→移動地点D→移動地点Aの順番を決定できる。
【0024】
(2)訪問順決定処理:
図6、7を用いて、訪問順決定システム10が実行する訪問順決定処理の詳細を説明する。制御部20は、処理の開始を指示されたタイミングで、
図6の訪問順決定処理を開始する。
ステップS100において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、配送の出発地点、配送の終了地点、及び、配送対象の複数の配送先として定められている既定の複数の移動地点における移動地点間の移動コストを取得する移動コスト取得処理を実行する。ここで、
図7を用いて、ステップS100の移動コスト取得処理の詳細を説明する。
【0025】
ステップS200において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、既定の複数の移動地点から2つの移動地点を選択する。以下では、最新のステップS200で選択された2つの移動地点を選択地点とする。制御部20は、ステップS200の処理の完了後に、処理をステップS205に進める。
ステップS205において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、位置情報30aから、2つの選択地点の位置を取得する。制御部20は、取得した位置と地図情報20bとに基づいて、2つの選択地点間の経路を探索する。制御部20は、ステップS205の処理の完了後に、処理をステップS210に進める。
【0026】
ステップS210において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、直前のステップS205で探索した経路に含まれる各区間の移動コストの合計を、この経路の移動コストとして取得する。制御部20は、ステップS210の処理の完了後に、処理をステップS215に進める。
ステップS215において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、直前のステップS210で取得した移動コストが既定のコスト閾値以上か否かを判定する。制御部20は、直前のステップS210で取得した移動コストがコスト閾値以上であると判定した場合、処理をステップS225に進める。また、制御部20は、直前のステップS210で取得した移動コストがコスト閾値未満であると判定した場合、処理をステップS220に進める。
【0027】
ステップS220において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、直前のステップS210で取得した移動コストを、2つの選択地点の識別情報と対応付けて、コストテーブル30cに記録する。制御部20は、ステップS220の処理の完了後に、処理をステップS250に進める。
ステップS225において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、地図情報30bを用いて、第1の条件、及び第2の条件を満たす場所を探索し、探索した場所を選択地点間における休憩場所として決定する。制御部20は、ステップS225の処理の完了後に、処理をステップS230に進める。
【0028】
ステップS230において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、地図情報30bに基づいて、既定の経路探索アルゴリズムによって、選択した移動地点の一方から他方までステップS225で決定した休憩場所を経由する経路であって、移動コストが最も低くなるコストを探索する。制御部20は、ステップS230の処理の完了後に、処理をステップS235に進める。
ステップS235において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、直前のステップS230で探索した経路に含まれる各区間の移動コストの合計を、この経路の移動コストとして取得する。制御部20は、ステップS235の処理の完了後に、処理をステップS240に進める。
【0029】
ステップS240において、制御部20は、移動コスト修正部21bの機能により、ステップS235で取得した移動コストに既定の休憩期間を加えることで、この移動コストを修正する。制御部20は、ステップS240の処理の完了後に、処理をステップS245に進める。
【0030】
ステップS245において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、直前のステップS240で修正した移動コストを、2つの選択地点の識別情報と対応付けて、コストテーブル30cに記録する。制御部20は、ステップS245の処理の完了後に、処理をステップS250に進める。
ステップS250において、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により、既定の複数の移動地点のうちの2つの移動地点の組み合わせの全てがステップS200で選択済みか否かを判定する。制御部20は、既定の複数の移動地点のうちの2つの移動地点の組み合わせの全てがステップS200で選択済みであると判定した場合、
図7の処理を終了し、処理をステップS105に進める。また、制御部20は、既定の複数の移動地点のうちの2つの移動地点の組み合わせのうちステップS200で選択されていない組み合わせがあると判定した場合、処理をステップS200に進める。
【0031】
図6の説明に戻る。
ステップS105において、制御部20は、訪問順決定部21cの機能により、既定の配送計画問題の公知のアルゴリズムを用いて、コストテーブル30cに記録される各移動地点間の移動コストと、既定の目的関数と、に基づいて、配送に用いられる配送車両の台数、及び、各配送車両について各配送車両が巡る移動地点の訪問順を決定する。制御部20は、ステップS105の処理の完了後に、処理をステップS110に進める。
ステップS110において、制御部20は、訪問順決定部21cの機能により、各配送車両について、訪問する移動地点間の経路を探索し、各移動地点間の経路を決定する。ただし、他の例として、制御部20は、各移動地点間の経路を、S205、又は、S230で探索した経路に決定してもよい。
【0032】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述の実施形態を構成する訪問順決定システム10が、複数の装置で構成される例が挙げられる。この場合、訪問順決定システム10の一部の機能が外部の装置等で実現されてもよい。例えば、移動コスト取得部21aの機能のうち、移動地点間の経路を探索する機能を外部の装置により実現してもよい。
【0033】
また、訪問順決定システム10は、クラウド上、配送サービスを提供する事業者の提供先の事業所、データセンター等のように上述の実施形態と異なる場所に配置されてもよい。また、上述の実施形態の一部の構成が省略される構成や、処理が変動または省略される構成も想定し得る。
【0034】
上述の実施形態では、移動コストは、対応する区間の移動期間である。ただし、移動コストは、他の指標値であってもよい。例えば、移動コストは、対応する区間の移動にかかる期間と異なる指標値であって、対応する区間の移動にかかる負担が大きくなるほど、大きくなる指標値でもよい。例えば、区間の移動に係る期間に既定の倍率(例えば、0.1、2等)を乗じた値でもよい。また、移動コストは、対応する区間の距離であってもよい。また、移動コストは、対応する区間の距離に既定の倍率(例えば、0.1、2等)を乗じた値でもよい。
【0035】
また、移動コストは、対応する区間の移動にかかる負担が大きくなるほど、小さくなる指標値でもよい。例えば、移動コストは、対応する区間の移動にかかる期間の逆数であってもよいし、対応する区間の移動に係る期間に-1を乗じた値等でもよい。また、移動コストは、対応する区間の距離の逆数であってもよいし、対応する区間の距離に-1を乗じた値等でもよい。また、移動コストは、これらの値に、既定の倍率(例えば、0.1、2等)乗じた値でもよい。このように、移動コストが移動にかかる負担が大きくなるほど、小さくなる指標値である場合、制御部20は、移動コストが移動コスト以下である移動地点間の移動コストについて、休憩期間に基づいて修正してもよい。また、制御部20は、移動コストを休憩期間に基づいて修正する場合、移動コストの値が減少するように修正してもよい。この場合、制御部20は、ステップS105で移動コストの合計が最大化するように、訪問順を決定する。
また、移動コストは、交通情報に基づいて補正されてもよい。例えば、移動コストは、対応する経路の混雑の度合いに基づいて補正されてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態では、地図情報30bに各区間の移動コストが対応付けられている。制御部20は、地図情報30bに含まれる移動コストに基づいて、訪問対象の各地点間の移動コストを取得する。ただし、制御部20は、地図情報30bに対応付けられた各区間の移動コストを用いなくてもよい。例えば、制御部20は、地図情報30bから取得した各区間の距離を特定し、特定した距離を既定の速度(例えば、時速40km、時速60km等)で移動する場合の期間を求め、求めた期間を移動コストとして取得してもよい。
【0037】
また、上述の実施形態では、第1の条件は、移動地点間の探索された経路からの距離が既定の距離閾値以下となることである。ただし、第1の条件は、他の条件でもよい。例えば、第1の条件は、この移動地点間の探索された経路からの移動期間が既定の閾値(例えば、1分、3分等)以下となることであってもよい。
【0038】
また、上述の実施形態では、制御部20は、第2の条件を満たす場所を、休憩場所として決定する。ただし、制御部20は、他の方法で、休憩場所を決定してもよい。例えば、制御部20は、第2の条件の代わりに、以下の第3の条件を満たす場所を休憩場所として決定してもよい。ここで、移動地点間の移動期間をTとおき、0.5未満の既定の正の倍率(例えば、0.1、0.15等)をαとおく。第3の条件は、移動地点間の出発地点からの移動期間が、(T/2-αT)以上、かつ、(T/2+αT)以下となることである。すなわち、第3の条件は、対応する移動地点間の何れかの移動地点から休憩場所に移動するのにかかる期間が、移動地点間全体の移動期間の半分(T/2)を中心とした既定の幅(2αT)の範囲内であることを示す。
【0039】
また、上述の実施形態では、制御部20は、第2の条件を満たす休憩場所として、対応する2つの移動地点それぞれを出発地点として、出発地点からの移動期間が期間閾値以上である休憩場所を決定する。ただし、制御部20は、対応する2つの移動地点の何れか1つを出発地点、他方を到着地点として、出発地点から到着地点に向かうルートにおける休憩場所として、この出発地点からの移動期間が期間閾値以上である施設を決定してもよい。その場合、制御部20は、制御部20は、対応する2つの移動地点の一方を出発地点とした場合と、他方を出発地点とした場合と、の双方の場合について、休憩場所を決定してもよい。そして、制御部20は、この2つの移動地点の間の移動コストとして、この2つの移動地点の一方を出発地点とした場合のルートの移動コストと、他方を出発地点とした場合のルートの移動コストと、の双方を取得してもよい。
【0040】
また、上述の実施形態では、制御部20は、移動コストがコスト閾値以上である移動地点間において1つの休憩場所を決定する。ただし、制御部20は、移動コストがコスト閾値以上である移動地点間において複数の休憩場所を決定してもよい。ここで、移動地点間の移動における休憩回数をNとおく。この場合、制御部20は、移動コストがコスト閾値以上である移動地点間において、N個の休憩場所を決定する。制御部20は、第1の条件、及び、第2の条件を満たす休憩場所をN個決定してもよい。また、制御部20は、以下のようにして、N個の休憩場所を決定してもよい。ここで、移動地点間の移動期間をTとおき、既定の正の倍率(例えば、0.1、0.15等)をαとおく。制御部20は、k(1~Nの何れか)個目の休憩場所として、対応する移動地点間の何れかの移動地点から移動するのにかかる期間が、(kT/(N+1)-αT)以上、かつ、(kT/(N+1)+αT)以下となる場所を決定してもよい。これにより、制御部20は、移動地点間において、より均等に、休憩場所を設定できる。
【0041】
また、上述の実施形態では、制御部20は、移動コストがコスト閾値以上である移動地点間について、休憩場所を経由する経路を改めて探索し、探索した休憩場所を経由する経路を休憩期間に基づいて修正する。ただし、制御部20は、移動コストがコスト閾値以上である移動地点間について、休憩場所を経由する経路を改めて探索せずに、休憩場所を経由しない経路の移動コストを修正してもよい。例えば、制御部20は、ステップS225~ステップS235の処理を実行せず、ステップS240で、直前のステップS210で取得した選択地点間の移動コストを、既定の休憩期間に基づいて修正してもよい。また、その場合、制御部20は、ステップS240で、移動コストに休憩期間だけでなく、休憩場所への立ち寄りにかかる期間として規定された期間(例えば、3分、5分等)も加えることで、移動コストを修正してもよい。
【0042】
また、上述の実施形態では、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により取得された移動コストに、既定の休憩期間を加えることで、移動コストを修正する。ただし、制御部20は、既定の休憩期間に基づいて、他の方法で移動コストを修正してもよい。例えば、制御部20は、移動コスト取得部21aの機能により取得された移動コストに、既定の倍率を乗じることで移動コストを修正してもよい。例えば、制御部20は、休憩をとった場合における移動期間と、休憩を取らない場合における移動期間と、の比率((休憩時間+対応する移動地点間の移動にかかる期間)/(対応する移動地点間の移動にかかる期間))を移動コストに乗じることで移動コストを修正してもよい。
【0043】
既定の水準は、移動にかかる負担に関する指標であって、避けるべき過度な負担になるか否かを判定するための指標である。例えば、この水準を超える連続運転を禁止するルールになっている場合、連続運転の最大継続時間や最大継続距離等に対応した移動コストがこの水準を示す。
【0044】
さらに、本発明は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムで実現される方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…訪問順決定システム、20…制御部、21…訪問順決定プログラム、21a…移動コスト取得部、21b…移動コスト修正部、21c…訪問順決定部、30…記録媒体、30a…位置情報、30b…地図情報、30c…コストテーブル、40…通信部、100…管理者端末