(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】補正装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/06 20060101AFI20250527BHJP
G01C 19/00 20130101ALI20250527BHJP
【FI】
G01C21/06
G01C19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021166910
(22)【出願日】2021-10-11
【審査請求日】2024-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 守
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137455(JP,A)
【文献】特開2009-085628(JP,A)
【文献】特開2008-064716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G01C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャイロセンサからの電圧値を受けつける第1入力部と、
前記第1入力部において受けつけた前記電圧値をオフセット電圧値により補正する第1処理部と、
車両の走行状態が示された走行情報を受けつける第2入力部と、
前記車両の外側を撮像した映像を受けつける第3入力部と、
前記第3入力部において受けつけた映像をもとに、前記車両が回転しているか否かを判定する判定部と、
前記第2入力部において受けつけた前記走行情報が前記車両の停止を示し、かつ前記車両が回転していないことを前記判定部が判定した場合、前記第1入力部において受けつけた前記電圧値をもとに前記オフセット電圧値を更新する第2処理部とを備え、
前記第2処理部は、前記第2入力部において受けつけた前記走行情報が前記車両の停止を示し、かつ前記車両が回転していることを前記判定部が判定した場合、前記オフセット電圧値を更新しない補正装置。
【請求項2】
ジャイロセンサからの電圧値を受けつける第1入力部と、
前記第1入力部において受けつけた前記電圧値をオフセット電圧値により補正する第1処理部と、
車両の走行状態が示された走行情報を受けつける第2入力部と、
前記車両の外側を撮像した映像を受けつける第3入力部と、
前記第3入力部において受けつけた映像に転車台が含まれているか否かを判定する判定部と、
前記第2入力部において受けつけた前記走行情報が前記車両の停止を示し、かつ前記映像に前記転車台が含まれていないことを前記判定部が判定した場合、前記第1入力部において受けつけた前記電圧値をもとに前記オフセット電圧値を更新する第2処理部とを備え、
前記第2処理部は、前記映像に前記転車台が含まれていることを前記判定部が判定した場合、前記オフセット電圧値を更新しない補正装置。
【請求項3】
ジャイロセンサからの電圧値を受けつける第1入力部と、
前記第1入力部において受けつけた前記電圧値をオフセット電圧値により補正する第1処理部と、
車両の走行状態が示された走行情報を受けつける第2入力部と、
前記車両の位置情報を受けつける第3入力部と、
転車台の設置位置が示された地図情報を記憶する記憶部と、
前記第3入力部において受けつけた前記位置情報と、前記記憶部に記憶した前記地図情報とをもとに、前記車両が前記転車台の近傍に存在するか否かを判定する判定部と、
前記第2入力部において受けつけた前記走行情報が前記車両の停止を示し、かつ前記車両が前記転車台の近傍に存在していないことを前記判定部が判定した場合、前記第1入力部において受けつけた前記電圧値をもとに前記オフセット電圧値を更新する第2処理部とを備え、
前記第2処理部は、前記第2入力部において受けつけた前記走行情報が前記車両の停止を示し、かつ前記車両が前記転車台の近傍に存在していることを前記判定部が判定した場合、前記第1入力部において受けつけた前記電圧値のオフセット電圧値を更新しない補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正技術に関し、特にジャイロセンサから出力された電圧値を補正する補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の位置および進行方位の測位は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信して算出されたり、ジャイロセンサのような角速度センサ等の検出出力から算出されたりする。ジャイロセンサは、角速度が発生していないときにも電圧を生じさせ、その電圧に重畳して発生した角速度に対応する電圧値を出力するので、角速度が発生していないときの電圧値をオフセット電圧値として記憶し、ジャイロセンサから出力される電圧値からオフセット電圧値が差し引かれる。オフセット電圧値は、車両の停止時に求められるので、走行時の温度あるいは湿度の変化等により変動すると、進行方位の精度が悪化する。そのため、ジャイロセンサの出力と方位検出手段の出力それぞれから所定時間内の移動体方位の角度変化量を算出し、両者の角度変化量が等しくなるようにジャイロセンサのオフセット電圧値が更新される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジャイロセンサは、車速パルスの有無を確認し、車速パルスがない場合に車両が停止していると判定してオフセット電圧値を更新する。しかしながら、車両が転車台により回転している場合、車両が停止しているにもかかわらずジャイロセンサの電圧が発生するので、その電圧値によりオフセット電圧値を更新してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、転車台による回転の影響を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の補正装置は、ジャイロセンサからの電圧値を受けつける第1入力部と、第1入力部において受けつけた電圧値をオフセット電圧値により補正する第1処理部と、車両の走行状態が示された走行情報を受けつける第2入力部と、車両の外側を撮像した映像を受けつける第3入力部と、第3入力部において受けつけた映像をもとに、車両が回転しているか否かを判定する判定部と、第2入力部において受けつけた走行情報が車両の停止を示し、かつ車両が回転していないことを判定部が判定した場合、第1入力部において受けつけた電圧値をもとにオフセット電圧値を更新する第2処理部とを備える。第2処理部は、第2入力部において受けつけた走行情報が車両の停止を示し、かつ車両が回転していることを判定部が判定した場合、オフセット電圧値を更新しない。
【0007】
本発明の別の態様もまた、補正装置である。この装置は、ジャイロセンサからの電圧値を受けつける第1入力部と、第1入力部において受けつけた電圧値をオフセット電圧値により補正する第1処理部と、車両の走行状態が示された走行情報を受けつける第2入力部と、車両の外側を撮像した映像を受けつける第3入力部と、第3入力部において受けつけた映像に転車台が含まれているか否かを判定する判定部と、第2入力部において受けつけた走行情報が車両の停止を示し、かつ映像に転車台が含まれていないことを判定部が判定した場合、第1入力部において受けつけた電圧値をもとにオフセット電圧値を更新する第2処理部とを備える。第2処理部は、映像に転車台が含まれていることを判定部が判定した場合、オフセット電圧値を更新しない。
【0008】
本発明のさらに別の態様もまた、補正装置である。この装置は、ジャイロセンサからの電圧値を受けつける第1入力部と、第1入力部において受けつけた電圧値をオフセット電圧値により補正する第1処理部と、車両の走行状態が示された走行情報を受けつける第2入力部と、車両の位置情報を受けつける第3入力部と、転車台の設置位置が示された地図情報を記憶する記憶部と、第3入力部において受けつけた位置情報と、記憶部に記憶した地図情報とをもとに、車両が転車台の近傍に存在するか否かを判定する判定部と、第2入力部において受けつけた走行情報が車両の停止を示し、かつ車両が転車台の近傍に存在していないことを判定部が判定した場合、第1入力部において受けつけた電圧値をもとにオフセット電圧値を更新する第2処理部とを備える。第2処理部は、第2入力部において受けつけた走行情報が車両の停止を示し、かつ車両が転車台の近傍に存在していることを判定部が判定した場合、第1入力部において受けつけた電圧値のオフセット電圧値を更新しない。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転車台による回転の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る補正装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の第2処理部に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図3】
図1の補正装置による更新手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施例2に係る第2処理部に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図5】実施例2に係る補正装置による更新手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施例3に係る補正装置の構成を示す図である。
【
図7】
図6の第2処理部に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図8】
図6の補正装置による更新手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本実施例は、車両等に搭載されたジャイロセンサから出力される電圧値をオフセット電圧値により補正する補正装置に関する。転車台による回転の影響を低減するために、補正装置は、車速パルスにより車両が停止していると判定した場合、撮像装置により撮像した映像を解析して車両が転車台に乗って回転していれば、オフセット電圧値を更新しない。一方、補正装置は、車速パルスにより車両が停止していると判定した場合、撮像装置により撮像した映像を解析して車両が転車台に乗って回転していなければ、オフセット電圧値を更新する。
【0013】
図1は、補正装置100の構成を示す。補正装置100は、ジャイロセンサ10、第1入力部12、車速センサ14、第2入力部16、撮像装置18、第3入力部20、判定部22、第1処理部24、第2処理部25、記憶部26、出力部28を含む。ジャイロセンサ10、車速センサ14、撮像装置18は、補正装置100とは別に構成されてもよい。
【0014】
ジャイロセンサ10は、車両の進行方向の変化を車両の相対的な角度変化として検出する。つまり、ジャイロセンサ10は、車両の旋回角速度を検出する。検出された角速度は、例えば、0V~5Vのアナログ信号として出力される。その際、時計回りの旋回に対応した正の角速度は5V側への2.5Vからの偏差電圧として出力され、反時計回りの旋回に対応した負の角速度は0V側への2.5Vからの偏差電圧として出力される。また、2.5Vは、オフセット電圧値であり、温度等の影響を受けドリフトする。ジャイロセンサ10の電圧値は、図示しないAD(Analog to Digital)変換装置によって、例えば、サンプリング間隔100msecでAD変換され、その結果のデジタル信号(以下、これもまた「電圧値」という)が第1入力部12に出力される。第1入力部12は、ジャイロセンサ10からの電圧値を受けつける。第1入力部12は、電圧値を第1処理部24に出力する。
【0015】
車速センサ14は、ドライブシャフトの回転に対応して回転するスピードメータケーブルの中間に設置され、ドライブシャフトの回転にともなった車速パルスを第2入力部16に逐次出力する。つまり、車速パルスは車両の移動にともなって一定の移動距離ごとに出力されており、一定の期間に含まれる車速パルスの数は車速が高くなるほど増加する。第2入力部16は、車速パルスを車速センサ14から取得する。車速パルスは、車両の走行状態が示された走行情報に相当する。第2入力部16は、走行情報を判定部22と第2処理部25とに出力する。
【0016】
撮像装置18は、車両の前側に搭載され、車両の外側を撮像可能である。撮像装置18は、例えば、ドライブレコーダである。撮像装置18は、車両の外側を撮像した映像を第3入力部20に出力する。第3入力部20は、車両の外側を撮像した映像を撮像装置18から受けつける。第3入力部20は、映像を判定部22に出力する。
【0017】
判定部22は、走行情報を第2入力部16から受けつけるとともに、映像を第3入力部20から受けつける。判定部22は、走行情報が車両の走行を示す場合、処理を終了する。判定部22は、走行情報が車両の停止を示す場合、映像に対して画像解析を実行することによって、車両が回転しているか否かを判定する。画像解析には公知の技術が使用されればよいが、例えば、同一の内容が周期的に含まれる場合に、車両が回転していると判定される。判定部22は、判定結果を第2処理部25に出力する。判定結果では、車両が回転しているか否かが示される。
【0018】
第2処理部25は、走行情報を第2入力部16から受けつけ、判定結果を判定部22から受けつける。
図2は、第2処理部25に保持されるテーブルのデータ構造を示す。テーブルには、走行情報と判定結果と処理内容との対応関係が示される。走行情報が走行を示す場合、処理内容としてオフセット電圧値を更新しないことが示され、走行情報が停止を示し、かつ判定結果が回転を示す場合も処理内容としてオフセット電圧値を更新しないことが示される。一方、走行情報が停止を示し、かつ判定結果が回転しないことを示す場合に処理内容としてオフセット電圧値を更新することが示される。
図1に戻る。
【0019】
第2処理部25は、受けつけた走行情報、判定結果をもとにテーブルを参照することによって処理内容を決定する。第2処理部25は、走行情報が車両の停止を示し、かつ判定結果が回転していないことを示す場合に、電圧値をもとにオフセット電圧値を更新することを決定する。第2処理部25は、走行情報が車両の停止を示し、かつ判定結果が回転していることを示す場合、あるいは走行情報が車両の走行を示す場合、オフセット電圧値を更新しないことを決定する。第2処理部25は、決定した内容を第1処理部24に通知する。
【0020】
第1処理部24は、電圧値を第1入力部12から受けつけるとともに、第2処理部25からの通知を受けつける。第2処理部25からの通知がオフセット電圧値の更新を示していれば、第1処理部24は、受けつけた電圧値をオフセット電圧値として記憶部26に記憶させる。また、第1処理部24は、所定期間にわたって電圧値の平均値を計算し、平均値をオフセット電圧値として記憶部26に記憶させてもよい。第2処理部25からの通知がオフセット電圧値の更新を示していなければ、第1処理部24は、記憶部26に記憶されたオフセット電圧値をそのまま維持させる。さらに、第1処理部24は、第1入力部12において受けつけた電圧値から、記憶部26に記憶したオフセット電圧値を減算することによって、電圧値を補正する。出力部28は、記憶部26において補正した電圧値を出力する。
【0021】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
以上の構成による補正装置100の動作を説明する。
図3は、補正装置100による更新手順を示すフローチャートである。車両が走行している場合(S10のY)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新しない(S14)。車両が走行していない場合(S10のN)、車両が回転すれば(S12のY)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新しない(S14)。車両が回転しない場合(S12のN)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新する(S16)。
【0023】
本実施例によれば、映像をもとに車両が回転しているか否かを判定してから、車両が停止し、かつ車両が回転していない場合にオフセット電圧値を更新するので、転車台による回転の影響を低減できる。また、映像をもとに車両が回転しているか否かを判定してから、車両が停止し、かつ車両が回転している場合にオフセット電圧値を更新しないので、転車台による回転の影響を低減できる。
【0024】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2も、実施例1と同様に、車両等に搭載されたジャイロセンサから出力される電圧値をオフセット電圧値により補正する補正装置に関する。実施例2に係る補正装置では、車両が転車台に乗って回転しているか否かを判定する処理が実施例1と異なる。実施例2に係る補正装置100は、
図1と同様のタイプである。ここでは実施例1との差異を中心に説明する。
【0025】
図1の判定部22は、走行情報を第2入力部16から受けつけるとともに、映像を第3入力部20から受けつける。判定部22は、走行情報が車両の走行を示す場合、処理を終了する。判定部22は、走行情報が車両の停止を示す場合、映像に対して画像解析を実行することによって、映像に転車台が含まれているか否かを判定する。画像解析には公知の技術が使用されればよいが、例えば、転車台の画像を参照画像として予め記憶しておき、映像と参照画像とのパターンマッチングがなされる。判定部22は、判定結果を第2処理部25に出力する。判定結果では、転車台が含まれるか否かが示される。ここで、転車台が含まれるとは、車両の前後方向に転車台が含まれている場合であってもよい。
【0026】
第2処理部25は、走行情報を第2入力部16から受けつけ、判定結果を判定部22から受けつける。
図4は、第2処理部25に保持されるテーブルのデータ構造を示す。テーブルには、走行情報と判定結果と処理内容との対応関係が示される。走行情報が走行を示す場合、処理内容としてオフセット電圧値を更新しないことが示される。判定結果が転車台を含むことを示す場合、処理内容としてオフセット電圧値を更新しないことが示される。一方、走行情報が停止を示し、かつ転車台を含まないことを示す場合に処理内容としてオフセット電圧値を更新することが示される。
図1に戻る。
【0027】
第2処理部25は、受けつけた走行情報、判定結果をもとにテーブルを参照することによって処理内容を決定する。第2処理部25は、走行情報が車両の停止を示し、かつ判定結果が転車台を含まないことを示す場合に、電圧値をもとにオフセット電圧値を更新することを決定する。第2処理部25は、判定結果が転車台を含むことを示す場合、あるいは走行情報が車両の走行を示す場合、オフセット電圧値を更新しないことを決定する。
【0028】
以上の構成による補正装置100の動作を説明する。
図5は、補正装置100による更新手順を示すフローチャートである。転車台が含まれる場合(S50のY)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新しない(S54)。転車台が含まれない場合(S50のN)、車両が走行している場合(S52のY)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新しない(S54)。車両が走行してない場合(S52のN)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新する(S56)。
【0029】
本実施例によれば、映像に転車台が含まれていない場合に、車両が停止してればオフセット電圧値を更新するので、転車台による回転の影響を低減できる。また、映像をもとに車両が回転しているか否かを判定してから、映像に転車台が含まれている車両が回転している場合にオフセット電圧値を更新しないので、転車台による回転の影響を低減できる。
【0030】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3も、これまでと同様に、車両等に搭載されたジャイロセンサから出力される電圧値をオフセット電圧値により補正する補正装置に関する。実施例3に係る補正装置では、車両が転車台に乗って回転しているか否かを判定する処理がこれまでと異なる。ここではこれまでとの差異を中心に説明する。
【0031】
図6は、補正装置100の構成を示す。補正装置100は、ジャイロセンサ10、第1入力部12、車速センサ14、第2入力部16、第3入力部20、判定部22、第1処理部24、第2処理部25、記憶部26、出力部28、測位装置30、記憶部32を含む。ジャイロセンサ10、車速センサ14、測位装置30、記憶部32は、補正装置100とは別に構成されてもよい。
【0032】
測位装置30は、図示しないGNSS衛星からの信号を受信して、測位結果として測位データを算出する。そのため、測位データには、位置情報、移動速度であるGNSS速度、車両の方位であるGNSS方位、PDOP(Position Dilution Precision)、捕捉衛星数等が含まれる。ここで、位置情報は緯度と経度で示される。PDOPは、測位データにおけるGNSS衛星位置の誤差が受信点位置にどのように反映されるかの指標であり、測位誤差に相当する。なお、測位データには、これら以外の値が含まれていてもよい。また、測位データの算出は、公知の技術によってなされればよいので、ここでは説明を省略する。測位装置30は、測位データを第3入力部20に出力する。第3入力部20は、測位データを測位装置30から受けつけることによって、車両の位置情報を受けつける。第3入力部20は、判定部22に車両の位置情報等を出力する。記憶部32は、地図情報を記憶する。地図情報には、転車台の設置位置が示される。
【0033】
判定部22は、走行情報を第2入力部16から受けつけるとともに、位置情報を第3入力部20から受けつける。また、判定部22は、記憶部32に記憶された地図情報を参照可能である。判定部22は、走行情報が車両の走行を示す場合、処理を終了する。判定部22は、走行情報が車両の停止を示す場合、車両の位置情報と地図情報とをもとに、車両が転車台の近傍に存在するか否かを判定する。例えば、判定部22は、地図情報において示される転車台の設置位置から半径10m以内の範囲に車両の位置情報が含まれる場合、車両が転車台の近傍に存在すると判定する。判定部22は、判定結果を第2処理部25に出力する。判定結果では、転車台があるか否かが示される。
【0034】
第2処理部25は、走行情報を第2入力部16から受けつけ、判定結果を判定部22から受けつける。
図7は、第2処理部25に保持されるテーブルのデータ構造を示す。テーブルには、走行情報と判定結果と処理内容との対応関係が示される。走行情報が走行を示す場合、処理内容としてオフセット電圧値を更新しないことが示され、走行情報が停止を示し、かつ判定結果が転車台ありを示す場合も処理内容としてオフセット電圧値を更新しないことが示される。一方、走行情報が停止を示し、かつ判定結果が転車台なしを示す場合に処理内容としてオフセット電圧値を更新することが示される。
図1に戻る。
【0035】
第2処理部25は、受けつけた走行情報、判定結果をもとにテーブルを参照することによって処理内容を決定する。第2処理部25は、走行情報が車両の停止を示し、かつ判定結果が転車台なしを示す場合に、電圧値をもとにオフセット電圧値を更新することを決定する。第2処理部25は、走行情報が車両の停止を示し、かつ判定結果が転車台ありを示す場合、あるいは走行情報が車両の走行を示す場合、オフセット電圧値を更新しないことを決定する。
【0036】
以上の構成による補正装置100の動作を説明する。
図8は、補正装置100による更新手順を示すフローチャートである。車両が走行している場合(S100のY)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新しない(S104)。車両が走行していない場合(S100のN)、転車台があれば(S102のY)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新しない(S104)。転車台がない場合(S102のN)、第1処理部24、第2処理部25はオフセット電圧値を更新する(S106)。
【0037】
本実施例によれば、車両が転車台の近傍に存在するか否かを判定してから、車両が停止し、かつ車両が転車台の近傍に存在しない場合にオフセット電圧値を更新するので、転車台による回転の影響を低減できる。また、車両が転車台の近傍に存在するか否かを判定してから、車両が停止し、かつ車両が転車台の近傍に存在している場合にオフセット電圧値を更新しないので、転車台による回転の影響を低減できる。
【0038】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0039】
本実施例1から3の任意の組合せも可能である。本変形例によれば、転車台による回転の影響を低減できる。
【符号の説明】
【0040】
10 ジャイロセンサ、 12 第1入力部、 14 車速センサ、 16 第2入力部、 18 撮像装置、 20 第3入力部、 22 判定部、 24 第1処理部、 25 第2処理部、 26 記憶部、 28 出力部、 100 補正装置。