(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】物体検出装置、及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250527BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20250527BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650B
H04N7/18 J
(21)【出願番号】P 2021176846
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2024-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 成俊
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211831(JP,A)
【文献】特開2004-054610(JP,A)
【文献】特開2016-001464(JP,A)
【文献】特表2021-528767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0031015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部を撮像する撮像部から、前記撮像部が撮像した撮像画像を取得し、前記撮像画像内に存在する物体を検出する物体検出部と、
前記車両と前記物体とが衝突する危険性の高さを示す衝突危険度を判定する判定部と、
前記物体の前記衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択し、前記選択したトラッキング手法を使用して前記物体のトラッキング処理を行うトラッキング処理部と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記車両から前記物体までの距離、前記車両の進行方向に対する前記物体の位置、前記物体の進行方向、前記物体の移動速度、前記物体の前記車両に対する相対速度、前記車両の進行方向、前記車両の移動速度、および前記車両が前記物体に衝突するまでの衝突予測時間のうちの少なくともいずれか、または、いくつかの組み合わせに基づいて、前記衝突危険度を判定する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記トラッキング処理部は、
前記物体の前記衝突危険度が所定閾値以上の場合には所定の追従性能以上の前記トラッキング手法を選択して前記物体の前記トラッキング処理を行い、
前記物体の前記衝突危険度が前記所定閾値未満の場合には所定の追従性能未満の前記トラッキング手法を選択して前記物体の前記トラッキング処理を行う、または前記トラッキング処理を行わない、
請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記トラッキング処理部は、
前記物体の前記衝突危険度が所定閾値以上の場合には処理負荷が大きい前記トラッキング手法を選択して前記物体の前記トラッキング処理を行い、
前記物体の前記衝突危険度が前記所定閾値未満の場合には処理負荷が小さい前記トラッキング手法を選択して前記物体の前記トラッキング処理を行う、または前記トラッキング処理を行わない、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
車両の外部を撮像する撮像部から、前記撮像部が撮像した撮像画像を取得し、前記撮像画像内に存在する物体を検出するステップと、
前記車両と前記物体とが衝突する危険性の高さを示す衝突危険度を判定するステップと、
前記物体の前記衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択し、前記選択したトラッキング手法を使用して前記物体のトラッキング処理を行うステップと、
を物体検出装置が実行する物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置、及び物体検出方法に関し、特に、検出した物体に対して適切にトラッキング処理を行うことが可能な物体検出装置、及び物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に備えられたカメラによって撮影した画像から、歩行者のような人物等の物体を検出し、検出枠とともに表示して、車両の運転者に人物等の存在を示す装置が普及している。このような装置においては、歩行者である人物や車両の移動によって撮影画像中の人物などの位置が変化するため、トラッキング処理を行うことで、動きに追従した検出枠の表示を可能としている。
【0003】
特許文献1には、車両の周辺に存在する対象物の追跡、つまり、トラッキング技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラッキング処理には、いくつかの手法が提案されている。一般的には、追従性能の高いトラッキング処理は、演算処理などの処理負荷が比較的に大きく、追従性能の低いトラッキング処理は、処理負荷が比較的小さい。このため、検出した物体の全てのトラッキングに対して追従性能の高いトラッキング処理を適用することは、検出した物体の数が多い場合など、処理負荷が増大してしまい、全ての物体に対するトラッキング処理が行えない場合や、他の処理に影響を与えてしまう場合がある。また、検出した物体の全てのトラッキングに対して追従性能の低いトラッキング処理を適用することは、トラッキングの途切れによって、物体の把握が困難になるなど、車両の走行の安全性に支障が生じる場合もある。
【0006】
本発明は、撮像画像から検出した物体のトラッキング処理を適切に行うことができる物体検出装置、及び物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物体検出装置は、車両の外部を撮像する撮像部から、前記撮像部が撮像した撮像画像を取得し、前記撮像画像内に存在する物体を検出する物体検出部と、前記車両と前記物体とが衝突する危険性の高さを示す衝突危険度を判定する判定部と、前記物体の前記衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択し、前記選択したトラッキング手法を使用して前記物体のトラッキング処理を行うトラッキング処理部と、を備える。
【0008】
本発明に係る物体検出方法は、車両の外部を撮像する撮像部から、前記撮像部が撮像した撮像画像を取得し、前記撮像画像内に存在する物体を検出するステップと、前記車両と前記物体とが衝突する危険性の高さを示す衝突危険度を判定するステップと、前記物体の前記衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択し、前記選択したトラッキング手法を使用して前記物体のトラッキング処理を行うステップと、を物体検出装置が実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像画像から検出した物体のトラッキング処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る物体検出装置を含む物体検出システムの構成を例示するブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る表示部の表示画面を例示する模式図である。
【
図3】実施の形態に係る物体検出装置の動作を例示するフローチャートである。
【
図4】実施の形態の比較例に係る表示画面を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
<構成>
図1は、実施の形態に係る物体検出装置を含む物体検出システムの構成を例示するブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施の形態に係る物体検出システム10は、物体検出装置11と撮像部12と表示部13とを備える。
【0013】
物体検出装置11は、物体検出システム10の制御を行う制御装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。物体検出装置11に含まれる制御装置は、記憶されているプログラムを、図示しない内部メモリにロードして実行する。物体検出装置11は、その構成およびプログラムによって実現される機能として、物体検出部111、判定部112、トラッキング処理部113および表示制御部114を備える。
【0014】
撮像部12は、車両に備えられているカメラであり、車両の前方を向いて配置されている。撮像部12は、遠赤外線カメラまたは可視光カメラである。撮像部12は、図示しないが、レンズ、撮像素子、A-D(Analog to Digital)変換素子等が含まれる。撮像部12、撮像した撮像画像を構成するデータを、物体検出部111および表示制御部114に出力する。
【0015】
表示部13は、表示制御部114の制御により各種情報を表示する表示装置、所謂モニタである。表示部13は、例えば液晶パネルや有機EL(Organic Electro-Luminescence)パネルなどの表示パネルを備える。表示部13は、車両の運転者が目視しやすい位置に配置されている。表示部13は、物体検出システム10専用の表示装置であってもよく、車両の他の装置、例えばナビゲーション装置やインフォテインメントシステムと共用の表示装置であってもよい。
【0016】
物体検出部111は、車両の外部を撮像する撮像部12から、撮像部12が撮像した撮像画像を取得し、撮像画像内に存在する物体を検出する。物体検出部111が検出する物体には、人物、自転車に乗車している人物であるサイクリスト、及び動物のうち少なくともいずれかが含まれる。物体検出部111は、撮像画像に対して物体認識辞書を用いたパターンマッチングを行って、物体の検出処理を行う。物体認識辞書は、例えば、人物を認識するための人物認識辞書、サイクリストを認識するためのサイクリスト認識辞書、動物を認識するための動物認識辞書などが含まれる。
【0017】
物体検出部111が参照する物体認識辞書は、撮像部12が遠赤外線カメラである場合は、検出する対象が撮影された遠赤外画像、所謂熱画像を機械学習させた辞書である。例えば、人物認識辞書の場合は、車両から撮影された人物の熱画像を機械学習させた辞書である。
【0018】
判定部112は、車両と物体のそれぞれの移動に関する情報に基づいて車両と物体とが衝突する危険性の高さを示す衝突危険度を判定する。車両と物体は、それぞれに自由に移動する。例えば、車両と物体がそれぞれ別の方向に、且つ、別の速度で移動する場合もある。また、車両と物体が同一方向に、且つ、同一速度で移動する場合もある。また、車両と物体が同一方向に、且つ、別の速度で移動する場合もある。また、車両と物体が別の方向に、且つ、同一速度で移動する場合もある。なお、衝突危険度を衝突可能性、接触可能性、衝突可能性の影響度、または、接触可能性の影響度と称することもある。
【0019】
移動に関する情報は、車両から物体までの距離、車両の進行方向に対する物体の位置、物体の進行方向、物体の移動速度、物体の車両に対する相対速度、車両の進行方向、車両の移動速度、および車両が物体に衝突するまでの衝突予測時間のうちの少なくともいずれか、または、いくつかの組み合わせを含む情報である。
【0020】
判定部112は、検出した物体を示す範囲の最下方の位置、つまり接地位置の撮像画像における縦方向の位置関係に基づき、車両から物体までの距離を算出する。判定部112は、車両の進行方向および車両の移動速度を、車両に備えられたCAN(Controller Area Network)を介して取得する。判定部112は、車両の進行方向および車両の移動速度を、図示しないGNSS(Global Navigation Satellite System)受信部が受信した測位情報に基づいて取得してもよい。
【0021】
判定部112は、車両の進行方向に対する物体の位置、物体の進行方向、物体の移動速度、物体の車両に対する相対速度を、車両の進行方向および車両の移動速度に加え、撮像画像における物体の位置の推移から取得する。
【0022】
判定部112は、車両と物体のそれぞれの移動に関する情報に基づき、車両と物体が衝突する可能性を示すレベルとして表される、衝突危険度を判定(算出)する。判定部112が判定する衝突危険度は、実際に車両と物体との衝突可能性が無くとも、車両から見て注意を要する必要性が高い状態であれば、衝突危険度が高いと判断してもよい。従って、衝突危険度とは、車両に対する影響度、要注意度などと置き換えることも可能である。車両に対する影響度が高い状態とは、車両の物体の位置関係によって、車両が徐行しなければならない状態などである。要注意度が高い状態とは、検出された人物が移動していない状態であっても、道路を渡る動作を行う可能性のある位置に存在している場合など、車両の運転者が人物に対して注意を要する場合などである。
【0023】
トラッキング処理部113は、検出した物体のトラッキング処理を行う。トラッキング処理部113は、検出した物体の衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択して、トラッキング処理を行う。すなわち、トラッキング処理部113は、複数のトラッキング手法のうちから、判定部112が算出した衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択して、選択したトラッキング手法を用いてトラッキング処理を行う。これにより、物体との衝突危険度が高い場合には追従性能の高いトラッキング手法が選択され、物体との衝突危険度が低い場合には追従性能の低いトラッキング手法が選択される。すなわち、衝突危険度に基づいた適切なトラッキング手法が選択される。トラッキング処理部113は、物体との衝突危険度に基づいて選択したトラッキング手法を使用して物体のトラッキング処理を行う。なお、トラッキング手法をトラッキングアルゴリズムと称することもある。
【0024】
詳細には、トラッキング処理部113は、物体の衝突危険度が高いことを示すレベルが所定閾値以上の場合には追従性能の高いトラッキング手法を選択し、選択したトラッキング手法を使用して物体のトラッキング処理を行う。トラッキング処理部113は、物体の衝突危険度が高いことを示すレベルが所定閾値未満の場合には追従性能の低いトラッキング手法を選択し、選択したトラッキング手法を使用して物体のトラッキング処理を行うか、またはトラッキング処理を停止する。トラッキングを、追跡または追尾と称することもある。
【0025】
ここで、トラッキング処理部113について、さらに詳細に説明する。トラッキング処理部113は、物体検出部111が検出した物体に対し、判定部112が算出した衝突危険度(影響度)に応じて、追従性能の高いトラッキング手法、および追従性能の低いトラッキング手法のいずれかを適用する。なお、追従性能の高いトラッキング手法は処理負荷が比較的大きく、追従性能の低いトラッキング手法は処理負荷が比較的小さい。
【0026】
トラッキング処理部113による物体のトラッキング処理は、検出対象の物体の背景に存在する他の物体などのエッジが複雑な形状ではない場合や、検出対象の物体が他の物体に重なっていない場合は、検出対象の物体のトラッキングは途切れにくいため、追従性能の低いトラッキング手法でトラッキング処理を行っても問題はない。
【0027】
一方、トラッキング処理部113による物体のトラッキング処理は、検出対象の物体の背景に存在する他の物体などのエッジが複雑な形状である場合や、検出対象の物体が他の物体に重なっている場合は、追従性能の低いトラッキング手法では、検出対象の物体のトラッキングは途切れやすい。従って、このような場合に途切れの無いトラッキングを行うために、トラッキング処理部113は、追従性能の高いトラッキング手法を適用することが好ましい。特に、車両に対して衝突危険度が高い物体は、トラッキングが途切れることは危険である。このため、車両に対して衝突危険度が高い物体に対しては、物体の背景などの状態によらず、追従性能の高いトラッキング処理を行うことで、物体のトラッキングの途切れを防止する。また、トラッキング処理部113は、車両に対して衝突危険度が低い物体に対しては、追従性能の低いトラッキング手法でトラッキング処理を行うことに代えて、トラッキング処理を行わなくともよい。例えば、車両の進行方向とは異なる場所に位置する物体や、車両の進行方向とは異なる遠方の場所に位置する物体に対しては、トラッキング処理を行わなくともよい。
【0028】
次に、トラッキング処理部113で選択的に用いるトラッキング手法の例を以下に示す。
<追従性能の高いトラッキング手法の例>
ブースティング(Boosting)法、MIL(Multiple Instance Learning)法、KCF(Kernelized Correlation Filter)法、TLD(Tracking Learning Detection)法等。
<追従性能の低いトラッキング手法の例>
カルマンフィルタ、オプティカルフロー、ミーンシフト(Mean shift)法等。
【0029】
トラッキング処理部113による処理についてまとめる。トラッキング処理部113は、物体の衝突危険度が高い場合には、追従性能の高いトラッキング手法を使用して物体のトラッキング処理を行う。また、トラッキング処理部113は、物体の衝突危険度が低い場合には、追従性能の低いトラッキング手法を使用して物体のトラッキング処理を行うか、またはトラッキング処理を行わない。
【0030】
図1に戻り、物体検出装置11の表示制御部114は、撮像部12が撮像した撮像画像に加えて、トラッキング処理が行われている、物体検出部111が検出した物体を囲う検出枠を表示部13に表示させる。これにより、車両を運転するドライバーに、検出した物体の存在を伝えることができる。
【0031】
表示制御部114は、物体の衝突危険度が高いことを示すレベルが所定閾値以上の場合、ドライバーに危険を伝えるため、警告メッセージを表示部13に表示してもよい。警告メッセージは、音声として発するようにしてもよい。
【0032】
以上、説明したように、実施の形態によれば、物体の衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を使用して当該物体をトラッキング処理することが可能な物体検出装置、及び方法を提供することができる。
【0033】
<効果>
図2は、実施の形態に係る表示部の表示画面を例示する模式図である。
図2の上段から下段に向かうに連れて時間が経過する。つまり、車両に備えられた物体検出システム10が、人物を検出し、検出した人物に検出枠を描画して表示している経過を示す例である。
図2において、人物の周りを囲うようにして表示されている外枠は、当該人物が検出されている場合に表示される検出枠である。検出枠は、人物が検出されている結果として、検出されている人物を含むように描画される。このため、人物のトラッキングが途切れた場合には、人物のトラッキングが途切れている期間は、検出枠の描画も途切れる。
【0034】
図2に示す人物は、車両の進行方向に存在することから、判定部112によって、人物に対する衝突危険度が高いと判定されている。具体的には、車両の進行方向および走行速度に加えて、人物の位置および移動方向から、人物に対する衝突危険度が所定閾値以上であると判定されている。従って、
図2に示す人物に対しては、追従性能の高いトラッキング手法が適用されている。これにより、人物が他車両などを背景とした位置に存在している場合、つまり、人物とその周囲を含むエッジ形状が複雑な場合であっても、人物(物体)を追従することができる。特に、
図2の最下段において、人物と他車両との重なりが発生した場合でも、人物の検出と当該人物のトラッキング処理を途切れずに行うことができる。
【0035】
また、実施の形態では、物体検出装置11は、常に追従性能の高いトラッキング処理を行うわけではないので、処理負荷を抑えることができる。また、物体検出装置11は、車両との衝突危険度の高い物体に対してのみ追従性能の高いトラッキング処理を行うので、適切にドライバーに警告を出すことができる。
【0036】
また、物体検出装置11は、車両との衝突危険度が低い物体に対して追従性能の低い(処理速度の遅い)トラッキング処理を行う(またはトラッキング処理を行わない)。これにより、物体検出装置11は、追従性能の高いトラッキング処理を行う場合と比べて、処理負荷を低減することができる。
【0037】
<動作>
図3は、実施の形態に係る物体検出装置の動作を例示するフローチャートである。
図3に示す処理は、物体検出システム10が備えられた車両のエンジンがオンまたは電源がオンになること、または、車両のヘッドライトがオンになることなど、遠赤外線カメラまたは可視光カメラによる物体検出を行うことが必要とされる条件によって開始される。
【0038】
図3に示すように、処理の開始に伴い、物体検出部111が車両の外部を撮像する撮像部12から、撮像部12が撮像した撮像画像の取得を開始する(ステップS101)。また、処理の開始に伴い、物体検出部111は、撮像部12が撮像した撮像画像(入力画像)の中から物体(人物/サイクリスト/動物など)の検出を開始する(ステップS101)。物体検出部111は、物体を検出(検知)する方法として、例えば、HOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量や、CNN(YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)、など)を利用し、撮像画像上のどこに物体があるかを検出する。
【0039】
物体検出部111は、物体を検出したか否かを判定する(ステップS102)。ステップS102において、物体が検出されていない場合(ステップS102:No)、ステップS107に推移する。ステップS102において、物体が検出された場合(ステップS102:Yes)、ステップS103に推移する。
【0040】
ステップS102において、物体が検出された場合、判定部112は、車両と物体とが衝突する危険性の高さを示す衝突危険度を判定する(ステップS103)。すなわち、判定部112は、検出した物体が車両と接触する可能性、つまり、衝突危険度を判定する。
【0041】
ステップS103において、判定部112は、車両の挙動を把握するために、車両のCAN(Controller Area Network)を介して、車両の速度及びハンドル舵角などの情報や、加速度センサ等の情報を取得する。また、判定部112は、検出する物体までの距離を物体の接地位置から検出、あるいは距離センサなどを使用して検出する。判定部112は、これらの時系列の情報(データ)から検出物体の移動方向や移動速度を求める。判定部112は、検出物体と車両との衝突可能性の影響度(衝突危険度)を以下に示す条件の1つ、または、複数を組み合わせて判定する。
【0042】
・検出物体が車両の正面に存在、または正面に向かっている。
・検出物体が車両の進行方向に存在、または進行方向に向かっている。
・検出物体の移動速度が一定値以上である。
・車両の移動速度が一定値以上である。
・検出物体と車両との相対速度が一定値以上である。
・検出物体と車両との衝突までの予測時間(Time-to-collision)が一定値以下である。
・検出物体との距離が一定値以下である。
【0043】
判定部112は、上述した条件を検出した物体毎にスコア化し、衝突危険度を算出し、衝突危険度が高いことを示すレベルが閾値以上であるか否かを判定する。また、判定部112は、衝突危険度を数値化しなくとも、車両の進行方向に対する検出物体の位置や移動方向から、衝突危険度の高低を判定してもよい。
【0044】
ステップS103で、検出した物体との衝突危険度を判定した後、トラッキング処理部113は、判定された衝突危険度が所定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104の判定は、衝突危険度が高いか否かの判定としてもよい。
【0045】
ステップS104において、衝突危険度が所定閾値以上であると判定された場合(ステップS104:Yes)、トラッキング処理部113は、所定の追従性能以上のトラッキング手法であって追従性能の高い当該トラッキング手法を選択して物体のトラッキング処理を開始する(ステップS105)。
【0046】
トラッキング処理部113は、物体の衝突危険度が所定閾値以上ではない、つまり所定閾値未満であると判定された場合(ステップS104:Nо)、所定の追従性能未満のトラッキング手法であって追従性能の低い当該トラッキング手法を選択して物体のトラッキング処理を開始する、またはトラッキング処理を停止する(ステップS106)。
【0047】
ステップS105またはステップS106で実行されるトラッキング処理は、物体が検出された場合に、撮像画像の次のフレーム以降において、撮像画像上におけるトラッキング対象の物体の位置を検出する。トラッキング処理は、トラッキング対象の物体が検出できなくなるまで継続される。
【0048】
ステップS105およびステップS106の後、物体検出装置11は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS107)。処理の終了とは、物体検出システム10が備えられた車両のエンジンがオフまたは電源がオフになること、または、車両のヘッドライトがオフになることなど、遠赤外線カメラまたは可視光カメラによる物体検出を行うことを終了する条件を満たすことで、処理を終了することが判定される。
【0049】
<特徴>
ここで、実施の形態の特徴を示す。
車載カメラなどの撮像部12で人物/サイクリスト/動物などの物体を検出して衝突危険度が有ると判断した時にドライバーに警告を出す物体検出システム10において、
物体を検出した位置と車両の位置/速度などから衝突危険度の高さを判定し、
衝突危険度の高い物体に対しては、追従性能の高いトラッキング処理を行い、
衝突危険度の低い物体に対しては、追従性能の低いトラッキング処理を行う、またはトラッキング処理を行わない。
【0050】
[比較例]
図4は、実施の形態の比較例に係る表示部の表示画面を例示する模式図である。
図4の上段から下段に向かうに連れて時間が経過する。つまり、車両に備えられた物体検出システムが、人物を検出し、検出した人物に検出枠を描画して表示している経過を示す例である。
図4において、人物の周りを囲うようにして表示されている外枠は、当該人物が検出されている場合に表示される検出枠である。
【0051】
比較例に係る物体検出装置は、物体の衝突危険度に基づいた追従性能を有するトラッキング手法を選択し、選択したトラッキング手法を使用して物体のトラッキング処理を行う機能を有しない。
【0052】
従って、比較例に係る物体検出装置は、
図4に示すように、検出された人物車両の進行方向に存在している場合であっても、追従性能の高いトラッキング手法を選択せず、追従性能の高いトラッキング手法を使用することはない。その結果、比較例に係る物体検出装置では、例えば、人物が他車両などを背景とした位置に存在している場合、つまり、人物とその周囲を含むエッジ形状が複雑な場合に、トラッキング処理が途切れてしまう。つまり、
図4の最上段等において、人物に対してトラッキングが行われているが、
図4の最下段において、人物のトラッキングが途切れていることを意味する。
【0053】
図4に示す比較例の場合、検出された人物は、衝突危険度が高い、または注意を要する人物であるにもかかわらず、トラッキングが途切れることで、検出枠の表示が行われない期間が生じてしまう。例えば、夜間などにおいて、目視で人物の発見が困難な場合などにおいては、トラッキングが途切れることで、車両の運転者が人物の状態を把握できないことにもつながる。本発明は、比較例のような状態で生じる課題を解決する。
【0054】
上記処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0055】
以上、発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10…物体検出システム
11…物体検出装置
111…物体検出部
112…判定部
113…トラッキング処理部
114…表示制御部
12…撮像部
13…表示部