(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】電池管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250527BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250527BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250527BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250527BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20250527BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H02J7/00 P
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2021182753
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2021050375の分割
【原出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】繁森 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】飯田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】沼田 達宏
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/189898(WO,A1)
【文献】特開2016-012954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 -13/00
B60L 15/00 -58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の電池(20、21、22)を収容する筐体(50)内に配置され、前記電池の状態を示す電池情報を監視するひとつ以上の監視装置(30)と、
前記監視装置から前記電池情報を取得して、所定の処理を実行する制御装置(40)と、を備え、
前記制御装置および前記監視装置は、一方をマスタ装置、他方をスレーブ装置として、周波数チャネルホッピングを用いて無線通信を行い、
前記マスタ装置は、
前記無線通信を行う前記スレーブ装置との間でデータの送受信に使用可能な周波数チャネル
のそれぞれと、前記筐体に対する前記制御装置および前記監視装置の位置における電界強度
との関係を示す学習データ
を、不揮発性メモリに予め格納しており、
前記学習データに基づいて、前記周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを決定し、
前記周波数チャネルホッピングを実行して使用する所定の周波数チャネルを決定し、
前記所定の周波数チャネルにおける前記スレーブ装置とのデータの送受信結果に基づき、通信品質を評価して通信実績として蓄積する、電池管理システム。
【請求項2】
前記マスタ装置は、
前記所定の周波数チャネルの通信実績において通信品質劣化に相関する値が閾値を超えた場合に、前記所定の周波数チャネルを使用不可チャネルと判定して前記使用対象から除外することで、前記使用対象となる周波数チャネルを決定し、
前記閾値を、前記学習データに基づいて、前記スレーブ装置との間でデータの送受信に使用可能な周波数チャネルに対して個別に設定する、請求項1に記載の電池管理システム。
【請求項3】
前記マスタ装置は、前記スレーブ装置との間でデータの送受信に使用可能な周波数チャネルごとに、その周波数チャネルの電界強度に応じた前記閾値を設定する、請求項2に記載の電池管理システム。
【請求項4】
前記マスタ装置は、
前記使用不可チャネルが復帰条件を満たす場合に、前記通信実績を少なくとも前記使用不可チャネルについてリセットして、前記使用対象に復帰させ、
前記復帰条件を、前記学習データに基づいて、前記使用可能な周波数チャネルに対して個別に設定する、請求項2または請求項3に記載の電池管理システム。
【請求項5】
前記マスタ装置は、起動してから、前記スレーブ装置との間でデータの送受信を開始するまでに、前記使用対象となる周波数チャネルを、前記学習データに基づいて決定する、請求項1に記載の電池管理システム。
【請求項6】
前記マスタ装置は、
前記周波数チャネルホッピングを実行して使用する所定の周波数チャネルを決定し、
前記所定の周波数チャネルにおける前記スレーブ装置とのデータの送受信結果に基づき、通信品質を評価して通信実績として蓄積し、
所定のイベントごとに、蓄積された前記通信実績を用いて前記学習データを更新する、請求項1に記載の電池管理システム。
【請求項7】
前記制御装置のアンテナは、前記筐体内に配置されている、請求項1~6いずれか1項に記載の電池管理システム。
【請求項8】
前記マスタ装置は、
前記通信実績が所定の基準回数を超え、かつ、前記所定の周波数チャネルの通信実績において通信品質劣化に相関する値が閾値を超えた場合に、前記所定の周波数チャネルを使用不可チャネルと判定して前記使用対象から除外することで、前記使用対象となる周波数チャネルを決定し、
前記閾値を、前記学習データに基づいて、前記スレーブ装置との間でデータの送受信に使用可能な周波数チャネルに対して個別に設定する、請求項1に記載の電池管理システム。
【請求項9】
前記制御装置と前記監視装置との並び方向において、前記制御装置の前記監視装置との間に複数の金属部材が配置されている、請求項1または請求項7に記載の電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池管理システムを開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電池管理システムは、マスタ装置とスレーブ装置との間のデータの送受信結果に基づいて通信品質を評価し、受信失敗回数などが閾値を超えると現在使用している周波数チャネルの通信品質が劣化したと判定する。そして、通信品質が良好な周波数チャネルに、周波数ホッピングパターンを変更する。このように、実際の通信品質のみに基づいて周波数チャネルを変更するため、信頼性の低い無線通信が多く発生してしまう。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、電池管理システムにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、信頼性の高い無線通信が可能な電池管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電池管理システムは、
車両(10)の電池(20、21、22)を収容する筐体(50)内に配置され、電池の状態を示す電池情報を監視するひとつ以上の監視装置(30)と、
筐体内に配置され、監視装置から電池情報を取得して、所定の処理を実行する制御装置(40)と、を備え、
制御装置および監視装置は、一方をマスタ装置、他方をスレーブ装置として、周波数チャネルホッピングを用いて無線通信を行い、
マスタ装置は、
無線通信を行うスレーブ装置との間でデータの送受信に使用可能な周波数チャネルのそれぞれと、筐体に対する制御装置および監視装置の位置における電界強度との関係を示す学習データを、不揮発性メモリに予め格納しており、
学習データに基づいて、周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを決定し、
周波数チャネルホッピングを実行して使用する所定の周波数チャネルを決定し、
所定の周波数チャネルにおけるスレーブ装置とのデータの送受信結果に基づき、通信品質を評価して通信実績として蓄積する。
【0007】
開示された電池管理システムによれば、マスタ装置が、予め格納された学習データを有している。学習データは、スレーブ装置とのデータ送受信に使用可能な周波数チャネルについて筐体内の電界強度に相関するデータである。マスタ装置は、予め格納された筐体内の電界強度を踏まえて、周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを決定する。この結果、信頼性の高い無線通信が可能な電池管理システムを提供することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】第1実施形態に係る電池管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】監視装置と制御装置との間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【
図7】学習データを用いた使用対象チャネル決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】使用可能な周波数チャネルの一例を示す図である。
【
図9】周波数チャネルホッピングの一例として、ホッピングパターンを示す図である。
【
図10】各周波数チャネルの通信実績と、学習データに基づいて設定された閾値の一例を示す図である。
【
図11】使用不可を考慮したホッピングパターンを示す図である。
【
図12】共有処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】共有情報を含むデータ通信の一例を示すタイミングチャートである。
【
図14】第2実施形態に係る電池管理システムにおいて、制御装置が実行する使用対象チャネル決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】各グループの通信実績と、学習データに基づいて設定された閾値の一例を示す図である。
【
図16】第3実施形態に係る電池管理システムにおいて、制御装置が実行する復帰処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】第4実施形態に係る電池管理システムにおいて、使用対象チャネル決定処理の実施タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図18】第5実施形態に係る電池管理システムにおいて、通信シーケンスの一例を示す図である。
【
図19】第6実施形態に係る電池管理システムにおいて、制御装置が実行する更新処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】電池管理システムの構成の別例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
先ず、
図1に基づき、本実施形態に係る電池管理システムが搭載される車両、特に、電池管理システムを備える電池パック周辺の構成について説明する。
図1は、車両の概略構成を示す図である。車両は、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電動車両である。
【0012】
<車両>
図1に示すように、車両10は、電池パック(BAT)11と、PCU12と、MG13と、ECU14を備えている。PCUは、Power Control Unitの略称である。MGは、Motor Generatorの略称である。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0013】
電池パック11は、後述する組電池20を備えており、充放電可能な直流電圧源を提供する。電池パック11は、車両10の電気負荷に電力を供給する。電池パック11は、PCU12を通じてMG13へ電力を供給する。電池パック11は、PCU12を通じて充電される。電池パック11は、主機バッテリと称されることがある。
【0014】
電池パック11は、たとえば
図1に示すように、車両10のフロントコンパートメントに配置される。電池パック11は、リアコンパートメント、座席下、または床下などに配置されてもよい。たとえばハイブリッド自動車の場合、エンジンが配置されるコンパートメントは、エンジンコンパートメント、エンジンルームと称されることがある。
【0015】
PCU12は、ECU14からの制御信号にしたがい、電池パック11とMG13との間で双方向の電力変換を実行する。PCU12は、電力変換器と称されることがある。PCU12は、たとえばインバータを含んでいる。インバータは、直流電圧を交流電圧、たとえば三相交流電圧に変換してMG13へ出力する。インバータは、MG13の発電電力を直流電圧に変換してコンバータへ出力する。PCU12は、コンバータを含んでもよい。コンバータは、電池パック11とインバータとの間の通電経路に配置される。コンバータは、直流電圧を昇降圧する機能を有する。
【0016】
MG13は、交流回転電機、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG13は、車両10の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。MG13は、PCU12により駆動されて回転駆動力を発生する。MG13が発生した駆動力は、駆動輪に伝達される。MG13は、車両10の制動時に発電機として機能し、回生発電を行う。MG13の発電電力は、PCU12を通じて電池パック11に供給され、電池パック11内の組電池20に蓄えられる。
【0017】
ECU14は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを含む構成である。プロセッサは、演算処理のためのハードウェアである。プロセッサは、たとえばコアとしてCPUを含んでいる。CPUは、Central Processing Unitの略称である。メモリは、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータ等を非一時的に格納または格納する非遷移的実体的格納媒体である。メモリは、プロセッサによって実行される種々のプログラムを格納している。
【0018】
ECU14は、たとえば電池パック11から組電池20に関する情報を取得し、PCU12を制御することにより、MG13の駆動および電池パック11の充放電を制御する。ECU14は、電池パック11から、組電池20の電圧、温度、電流、SOC、SOHなどの情報を取得してもよい。ECU14は、組電池20の電圧、温度、電流などの電池情報を取得して、SOCやSOHを算出してもよい。SOCは、State Of Chargeの略称である。SOHは、State Of Healthの略称である。
【0019】
ECU14のプロセッサは、たとえばメモリに格納されたPCU制御プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより、ECU14は、PCU12を制御するための機能部を複数構築する。ECU14では、メモリに格納されたプログラムが複数の命令をプロセッサに実行させることで、複数の機能部が構築される。ECU14は、EVECUと称されることがある。
【0020】
<電池パック>
次に、
図2および
図3に基づき、電池パック11の構成の一例について説明する。
図2は、電池パック11の内部を模式的に示す斜視図である。
図2では、筐体を二点鎖線で示している。
図3は、各電池スタックの上面を示す平面図である。
【0021】
図2に示すように、電池パック11は、組電池20と、複数の監視装置30と、制御装置40と、筐体50を備えている。筐体50は、電池パック11を構成する他の要素、つまり組電池20、監視装置30、および制御装置40を収容している。筐体50は、たとえば金属製である。筐体50は、樹脂製でもよいし、金属部分と樹脂部分を含んでもよい。
【0022】
以下では、
図2に示すように、略直方体である筐体50の各面のうち、車両10への搭載面において、長手方向をX方向と示し、短手方向をY方向と示す。
図2において、下面が搭載面である。そして、搭載面に対して垂直となる上下方向をZ方向と示す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する位置関係にある。本実施形態では、車両10の左右方向がX方向に相当し、前後方向がY方向に相当し、上下方向がZ方向に相当する。
図2および
図3の配置は一例にすぎず、車両10に対して電池パック11をどのように配置してもよい。
【0023】
組電池20は、X方向に並んで配置された複数の電池スタック21を有している。電池スタック21は、電池ブロック、電池モジュールと称されることがある。組電池20は、複数の電池スタック21が直列に接続されて構成されている。各電池スタック21は、複数の電池セル22を有している。電池スタック21は、直列に接続された複数の電池セル22を有している。本実施形態の電池スタック21は、Y方向に並んで配置された複数の電池セル22が直列に接続されて構成されている。組電池20は、上記した直流電圧源を提供する。組電池20、電池スタック21、および電池セル22が、電池に相当する。
【0024】
電池セル22は、化学反応によって起電圧を生成する二次電池である。二次電池として、たとえばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池を採用することができる。リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池である。電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池の他、固体の電解質を用いたいわゆる全固体電池も含み得る。
【0025】
各電池スタック21の上面において、X方向の両端には、直線状のバスバーユニット23が配置されている。つまり各電池スタック21には、一対のバスバーユニット23が配置されている。バスバーユニット23は、複数の電池セル22を電気的に接続している。
図3に示すように、各電池セル22は、扁平形状に形成されており、Y方向において側面同士が重なるように積層されている。電池セル22は、X方向の両端に、Z方向、より詳しくは上方を示すZ+方向に突出する正極端子25および負極端子26を有している。電池セル22は、Y方向において、正極端子25および負極端子26が交互に配置されるように積層されている。
【0026】
各バスバーユニット23は、正極端子25および負極端子26を電気的に接続する複数のバスバー24と、複数のバスバー24を覆うバスバーカバー27を有している。バスバー24は、銅などの導電性が良好な金属を材料とする板材である。バスバー24は、Y方向において隣り合う電池セル22の正極端子25と負極端子26とを電気的に接続している。これにより、各電池スタック21において、複数の電池セル22が電気的に直列に接続されている。なお、各電池スタック21において、Y方向の一端側に配置される電池セル22の正極端子25は、所定の正極配線に接続され、他端側に配置される電池セル22の負極端子26は、所定の負極配線に接続されている。
【0027】
バスバーカバー27は、樹脂などの電気絶縁材料を用いて形成されている。バスバーカバー27は、複数のバスバー24を覆うようにY方向に沿って電池スタック21の端から端まで直線状に設けられている。
【0028】
監視装置30は、複数の電池スタック21に対して個別に設けられている。監視装置30は、
図2に示すように、各電池スタック21において一対のバスバーユニット23の間に配置されている。監視装置30は、バスバーユニット23にネジ等で固定されている。監視装置30は、後述するように、制御装置40との間で無線通信可能に構成されている。監視装置30が備える後述のアンテナ37は、Z方向において、バスバーユニット23と重ならないように、つまりZ方向においてバスバーユニット23よりも突出するように配置されている。
【0029】
制御装置40は、X方向の一端に配置されている電池スタック21の外側側面に取り付けられている。制御装置40は、各監視装置30と無線通信可能に構成されている。制御装置40が備える後述のアンテナ42は、Z方向において、監視装置30のアンテナ37と同程度の高さに配置されている。つまり制御装置40のアンテナ42は、Z方向において、バスバーユニット23よりも突出するように設けられている。
【0030】
電池パック11において、監視装置30および制御装置40が、後述する電池管理システム60を提供する。つまり電池パック11は、電池管理システム60を備えている。
【0031】
<電池管理システム>
次に、
図4に基づいて、電池管理システムの概略構成について説明する。
図4は、電池管理システムの構成を示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、電池管理システム60は、複数の管理装置(SBM)30と、制御装置(ECU)40を備えている。制御装置40は、電池ECU、BMUと称されることがある。BMUは、Battery Management Unitの略称である。電池管理システム60は、無線通信を利用して電池を管理するシステムである。本実施形態の電池管理システム60では、ひとつの制御装置40と複数の監視装置30との間で、無線通信が実行される。この無線通信では、近距離通信で使用される周波数帯、たとえば2.4GHz帯や5GHz帯を用いる。
【0033】
<監視装置>
まず、監視装置30について説明する。各監視装置30の構成は互いに共通である。監視装置30は、電源回路(PSC)31と、マルチプレクサ(MUX)32と、監視IC(MIC)33と、マイコン(MC)34と、無線IC(WIC)35と、フロントエンド回路(FE)36と、アンテナ(ANT)37を備えている。監視装置30内の各要素間の通信については、有線で行われる。
【0034】
電源回路31は、電池スタック21から供給される電圧を用いて、監視装置30が備える他の回路要素の動作電源を生成する。本実施形態では、電源回路31が、電源回路311、312、313を含んでいる。電源回路311は、電池スタック21から供給される電圧を用いて所定の電圧を生成し、監視IC33に供給する。電源回路312は、電源回路311にて生成された電圧を用いて所定の電圧を生成し、マイコン34に供給する。電源回路313は、電源回路311にて生成された電圧を用いて所定の電圧を生成し、無線IC35に供給する。
【0035】
マルチプレクサ32は、電池パック11が備える複数のセンサ70の検出信号を入力し、ひとつの信号として出力する選択回路である。マルチプレクサ32は、監視IC33からの選択信号にしたがい、入力を選択(切り替え)してひとつの信号として出力する。センサ70は、電池セル22それぞれの物理量を検出するセンサ、および、いずれの電池セル22であるかを判別するためのセンサなどを含んでいる。物理量検出センサは、たとえば電圧センサ、温度センサ、電流センサなどを含んでいる。
【0036】
監視IC33は、マルチプレクサ32を通じて、セル電圧、セル温度、セル判別などの電池情報をセンシング(取得)し、マイコン34に送信する。監視IC33は、セル監視回路(CSC)と称されることがある。CSCは、Cell Supervising Circuitの略称である。監視IC33は、自己を含む監視装置30の回路部分の故障診断を実行し、監視データとして電池情報とともに診断結果を送信する機能を有してもよい。監視IC33は、マイコン34から送信された電池情報の取得を要求するデータを受信すると、マルチプレクサ32を通じて電池情報をセンシングし、電池情報を少なくとも含む監視データをマイコン34に送信する。監視IC33が、監視部に相当する。
【0037】
マイコン34は、プロセッサであるCPU、メモリであるROMおよびRAM、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータである。CPUが、RAMの一時格納機能を利用しつつ、ROMに格納された種々のプログラムを実行することで、複数の機能部を構築する。ROMは、Read Only Memoryの略称である。RAMは、Random Access Memoryの略称である。
【0038】
マイコン34は、監視IC33によるセンシングや自己診断のスケジュールを制御する。マイコン34は、監視IC33から送信された監視データを受信し、無線IC35に送信する。マイコン34は、監視IC33に電池情報の取得を要求するデータを送信する。一例として、本実施形態のマイコン34は、無線IC35から送信された電池情報の取得を要求するデータを受信すると、監視IC33に電池情報の取得を要求するデータを送信する。
【0039】
無線IC35は、データを無線で送受信するために、図示しないRF回路およびマイコンを含んでいる。無線IC35は、送信データを変調し、RF信号の周波数で発振する送信機能を有している。無線IC35は、受信データを復調する受信機能を有している。RFは、radio frequencyの略称である。
【0040】
無線IC35は、マイコン34から送信された電池情報を含むデータを変調し、フロントエンド回路36およびアンテナ37を介して制御装置40に送信する。無線IC35は、電池情報を含む送信データに、通信制御情報などの無線通信に必要なデータなどを付与して送信する。無線通信に必要なデータは、たとえば識別子(ID)や誤り検出符号などを含む。無線IC35は、SBM30と制御装置40との間の通信のデータサイズ、通信形式、スケジュール、エラー検知などを制御する。
【0041】
無線IC35は、制御装置40から送信されたデータをアンテナ37およびフロントエンド回路36を介して受信し、復調する。無線IC35は、たとえば電池情報の取得および送信要求を含むデータを受信すると、要求に対する応答として、監視IC33を通じて電池情報を含む監視データを取得して制御装置40に送信する。
【0042】
フロントエンド回路36は、無線IC35とアンテナ37とのインピーダンス整合のための整合回路、および、不要な周波数成分を除去するフィルタ回路を有している。
【0043】
アンテナ37は、電気信号であるRF信号を電波に変換して空間に放射する。アンテナ37は、空間を伝搬する電波を受信して、電気信号に変換する。
【0044】
<制御装置>
次に、
図4に基づいて、制御装置40について説明する。制御装置40は、電源回路(PSC)41と、アンテナ(ANT)42と、フロントエンド回路(FE)43と、無線IC(WIC)44と、メインマイコン(MMC)45と、サブマイコン(SMC)46を備えている。制御装置40内の各要素間の通信については、有線で行われる。
【0045】
電源回路41は、バッテリ(BAT)15から供給される電圧を用いて、制御装置40が備える他の回路要素の動作電源を生成する。バッテリ15は、車両10に搭載された、電池パック11とは別の直流電圧源である。バッテリ15は、車両10の補機に電力を供給するため、補機バッテリと称されることがある。本実施形態では、電源回路41が、電源回路411、412を含んでいる。電源回路411は、バッテリ15から供給される電圧を用いて所定の電圧を生成し、メインマイコン45やサブマイコン46に供給する。図の簡略化のため、電源回路411とサブマイコン46との電気的な接続を省略している。電源回路412は、電源回路411にて生成された電圧を用いて所定の電圧を生成し、無線IC44に供給する。
【0046】
アンテナ42は、電気信号であるRF信号を電波に変換して空間に放射する。アンテナ42は、空間を伝搬する電波を受信して、電気信号に変換する。
【0047】
フロントエンド回路43は、無線IC44とアンテナ42とのインピーダンス整合のための整合回路、および、不要な周波数成分を除去するフィルタ回路を有している。
【0048】
無線IC44は、データを無線で送受信するために、RF回路(RF)440およびマイコン(MC)441を有している。無線IC44は、無線IC35同様、送信機能および受信機能を有している。無線IC44は、監視装置30から送信されたデータをアンテナ42およびフロントエンド回路43を介して受信し、復調する。そして、電池情報を含む監視データを、メインマイコン45に送信する。無線IC44は、メインマイコン45から送信されたデータを受信して変調し、フロントエンド回路43およびアンテナ42を介して監視装置30に送信する。無線IC44は、送信データに、通信制御情報などの無線通信に必要なデータなどを付与して送信する。無線通信に必要なデータは、たとえば識別子(ID)や誤り検出符号などを含む。無線IC44は、監視装置30と制御装置40との間の通信のデータサイズ、通信形式、スケジュール、エラー検知などを制御する。
【0049】
無線IC44は、学習データ格納部(DS)442を有している。学習データ格納部442は、たとえばマイコン441の不揮発性メモリ内に構築される。学習データ格納部442は、マイコン441が備えるメモリとは別に制御装置40に設けられた不揮発性の記憶媒体に構築されてもよい。学習データ格納部442は、学習データを格納している。学習データは、監視装置30とのデータの送受信に使用可能な周波数チャネルについての筐体50内の電界強度に相関するデータである。学習データ格納部442は、ECU40と無線通信する監視装置30のそれぞれについて、学習データを格納している。無線IC44は、学習データに基づいて、周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを決定する。学習データ、学習データを用いた周波数チャネルの決定については、後述する。
【0050】
メインマイコン45は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータである。ROMは、CPUによって実行される種々のプログラムを格納している。メインマイコン45は、監視装置30に対して電池情報を含む監視データの処理を要求するコマンドを生成し、該コマンドを含む送信データを、無線IC44に送信する。本実施形態のメインマイコン45は、電池情報を含む監視データの取得および送信を要求するコマンドを生成する。この明細書に記載の要求は、指示と称されることがある。
【0051】
メインマイコン45は、無線IC44から送信された電池情報を含む監視データを受信し、監視データに基づいて所定の処理を実行する。たとえばメインマイコン45は、取得した電池情報を、ECU14に送信する処理を実行する。メインマイコン45は、電池情報に基づいてSOCおよび/またはSOHを算出し、算出したSOC、SOHを含む電池情報をECU14に送信してもよい。メインマイコン45は、電池情報に基づいて、各電池セル22の電圧を均等化させる均等化処理を実行してもよい。メインマイコン45は、車両10のIG信号を取得し、車両10の駆動状態に応じて上記した処理を実行してもよい。メインマイコン45は、電池情報に基づいて、電池セル22の異常を検出する処理を実行してもよいし、異常検出情報をECU14に送信してもよい。
【0052】
サブマイコン46は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータである。ROMは、CPUによって実行される種々のプログラムを格納している。サブマイコン46は、制御装置40内の監視処理を実行する。たとえばサブマイコン46は、無線IC44とメインマイコン45との間のデータを監視してもよい。サブマイコン46は、メインマイコン45の状態を監視してもよい。サブマイコン46は、無線IC44の状態を監視してもよい。
【0053】
<無線通信>
次に、
図5に基づき、監視装置30と制御装置40との間の無線通信について説明する。
図5は、監視装置30と制御装置40との間の通信シーケンスの一例を示す図である。
図5では、ひとつの監視装置30と制御装置40との間の無線通信について説明する。
図5では、監視IC33をMIC33、無線IC35をWIC35、制御装置40をECU40と示している。
【0054】
図5に示すように、まず監視装置30の無線IC35および制御装置40は、接続確立などの起動時処理を実行する(ステップS10)。起動時とは、たとえば動作電源の供給時である。電池スタック21やバッテリ15から常時電源が供給される構成では、車両10の製造工程や修理工場での部品交換後において起動となる。起動時は、IG信号など、起動信号の供給時でもよい。たとえば、ユーザの操作によってIG信号がオフからオンに切り替わると、起動となる。
【0055】
起動時には、制御装置40と、該制御装置40との無線通信の接続対象であるすべての監視装置30との間で、起動時処理がそれぞれ実行される。起動時処理は、たとえば無線通信の接続確立を行う接続確立処理と、暗号化通信のために固有情報の交換を行うペアリング処理を含む。起動時処理は、周波数チャネルホッピングに関する初期情報の共有処理を含む。初期情報は、たとえばホッピングパターンまたはホッピングのための関数などを含む。
【0056】
ステップS10の処理が終了すると、監視装置30および制御装置40は、周期的にデータ通信を実行する。
図5に示すように、制御装置40は、監視装置30に対して、電池情報を含む監視データの取得要求および送信要求を含む送信データ、つまり要求データを送信する(ステップS20)。
【0057】
監視装置30の無線IC35は、要求データを受信すると、電池情報を含む監視データの取得要求を、監視IC33に対して送信する(ステップS21)。本実施形態では、無線IC35は、取得要求を、マイコン34を介して監視IC33に送信する。
【0058】
監視IC33は、取得要求を受信すると、センシングを実行する(ステップS22)。監視IC33は、センシングを実行し、マルチプレクサ32を通じて各電池セル22の電池情報を取得する。また、監視IC33は、回路の故障診断を実行する。
【0059】
次いで、監視IC33は、電池情報を含む監視データを無線IC35に送信する(ステップS23)。本実施形態では、電池情報とともに故障診断結果を含む監視データを送信する。監視IC33は、マイコン34を介して無線IC35に送信する。
【0060】
無線IC35は、監視IC33が取得した監視データを受信すると、監視データを含む送信データ、つまり応答データを制御装置40に対して送信する(ステップS24)。
【0061】
制御装置40は、応答データを受信すると、監視データに基づいて所定の処理(ステップS25)を実行する。本実施形態において、要求処理を実行する制御装置40がマスタ装置に相当し、応答処理を実行する監視装置30がスレーブ装置に相当する。
【0062】
上記したステップS20~S25の処理は、制御装置40と各監視装置30との間で実行される。電池管理システム60は、ステップS20~S25の処理を周期的に実行する。
【0063】
制御装置40は、データの送受信周期ごとに周波数チャネルホッピングを行って使用する周波数チャネルを決定し、決定した周波数チャネル(周波数)で要求データの送信や応答データの受信を行う。制御装置40は、後述する使用不可チャネルが決定するまでは、初期情報にしたがって周波数チャネルホッピングを行う。制御装置40は、使用不可チャネルが決定すると、使用不可チャネルを考慮して周波数チャネルホッピングを行う。
【0064】
同様に、監視装置30も、送受信周期ごとに周波数チャネルホッピングを行って使用する周波数チャネルを決定し、決定した周波数チャネル(周波数)で要求データの受信や応答データの送信を行う。監視装置30は、制御装置40と共有した情報にしたがって周波数チャネルホッピングを行う。このため、監視装置30と制御装置40は、同じ周波数チャネルを用いてデータの送受信が可能である。制御装置40および監視装置30は、周波数チャネルホッピングにより、送受信周期ごとに使用する周波数チャネルを切り替える。
【0065】
<学習データ>
次に、
図6に基づき、学習データについて説明する。
図6は、電池パック11の筐体50内における電界強度分布を示す図である。
図6は、所定周波数における所定タイミングの電磁界シミュレーション結果を示している。
図6では、一例として、制御装置40(波源)を、金属製の筐体50の略中心に設けている。
【0066】
制御装置40から所定周波数の電波を放射すると、送信波と反射波との干渉により、
図6に示すように、筐体50内に電界強度の高い部分と低い部分が生じる。筐体50が金属製の場合、より顕著となるが樹脂製においても同様である。反射波は、電池パック11を構成する金属要素による送信波の反射、たとえば筐体50による反射、図示しないハーネスによる反射などによって生じる。また、樹脂製の場合には、車両10において電池パック11の周辺に存在する金属体による送信波の反射、たとえば金属製の車両フレームによる反射などによって生じる。
【0067】
また、筐体50のように閉じた空間では、位相変化しても、概ね電界強度の高い部分と、概ね電界強度の低い部分が存在する。特に、筐体50が金属製の場合、筐体50のシールド機能により、明確となる。各監視装置30および制御装置40の位置は、筐体50内、ひいては車両10において、定まっている。つまり、固定位置である。同じ種類の車両10において、監視装置30および制御装置40の位置は互いに共通(同一)である。
【0068】
本実施形態では、制御装置40が、予め取得した筐体50内の電界強度に相関するデータを、学習データとして有している。学習データは、たとえば車両10が出荷される前、具体的には電池パック11の製造時において、無線IC44の学習データ格納部442に書き込まれる。学習データは、たとえば、試作段階において車両10での測定により得たものでもよいし、電磁界シミュレーションによって得たものでもよい。上記したように、位相により電界強度が変化するため、所定時間における電界強度の平均値に相関するデータ、または、所定時間における電界強度の最大値に相関するデータを用いるとよい。
【0069】
学習データは、少なくとも、制御装置40の位置における電界強度に相関するデータ、および、監視装置30それぞれの位置における電界強度に相関するデータを含む。監視装置30および制御装置40の位置とは、好ましくはアンテナ37、42の位置であるが、アンテナ37、42から少しずれた位置でもよい。学習データは、筐体50に対して細かくメッシュを切り、各座標での電界強度に相関するデータでもよい。この場合、監視装置30および制御装置40の位置と座標とを紐づけておけばよい。電界強度に相関するデータとは、電界強度そのもの、つまり、上記した電界強度の平均値や電界強度の最大値でもよい。また、電界強度そのものではない相関値でもよい。たとえば、電界強度をレベルで層別したデータでもよい。
【0070】
学習データは、たとえば制御装置40と監視装置30とのデータ通信に使用する周波数チャネルのそれぞれについて、電界強度に相関するデータを含む。学習データは、使用可能な周波数チャネルの一部についてデータを含んでもよい。学習データは、制御装置40と無線通信を行うすべての監視装置30に対して、電界強度に相関するデータを含んでいる。学習データは、周波数チャネル(周波数)と、制御装置40および監視装置30における電界強度との関係を示す。以下では、制御装置40および監視装置30における電界強度の高低を、単に電界強度の高低と示すことがある。
【0071】
<使用対象チャネルの決定処理>
次に、
図7~
図11に基づき、学習データを用いた使用対象チャネルの決定処理について説明する。この処理は、マスタ装置である制御装置40の無線IC44が実行する。制御装置40は、周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを決定する。以下では、周波数チャネルを、chと示すことがある。
【0072】
図7は、使用可能な周波数チャネルの一例を示している。使用可能なチャネルは、複数の周波数チャネルのうち、データ通信用に割り振られた周波数チャネルである。
図7に示すように、ひとつの監視装置30と制御装置40との間において、データの送受信(データ通信)に使用可能な周波数チャネルは、予め決まっている。
【0073】
一例として、本実施形態では、ch1~ch10までの計10チャネルが使用可能である。周波数チャネルは、所定の周波数幅を有し、たがいに周波数が異なる。
図7に示すように、ch1の周波数がもっとも低く、ch10の周波数がもっとも高い。データの送受信に使用可能な周波数チャネルの数は、10チャネルより多くてもよいし、少なくてもよい。監視装置30および制御装置40は、たとえば初期情報として使用可能な周波数チャネルの情報を共有してもよいし、互いに共通する使用可能な周波数チャネルの情報を予め有していてもよい。
【0074】
図8は、制御装置40の無線IC44が実行する使用対象チャネル決定処理の一例を示している。まず制御装置40の無線IC44は、ひとつの監視装置30との間でデータ通信を実行するために、周波数チャネルホッピングを実行し、今回の送受信周期で使用する周波数チャネルを決定する(ステップS100)。上記したように、制御装置40は、データの送受信周期ごとに、周波数チャネルホッピングを行う。
【0075】
周波数チャネルホッピングの方法は、特に限定されるものではない。本実施形態の制御装置40は、一例として、周波数チャネルホッピングパターンにしたがって、使用する周波数チャネルを決定する。以下では、周波数チャネルホッピングパターンを、ホッピングパターンと示すことがある。それ以外にも、所定の関数を用いて、使用する周波数チャネルを決定してもよい。ホッピングパターンや関数は、たとえば上記した初期情報に含まれる。
【0076】
図9は、ホッピングパターンの一例を示している。
図9に示すホッピングパターンは、初期情報として共有されるパターンである。つまり、使用不可チャネルを考慮する前のホッピングパターンである。本実施形態では、ch1→ch4→ch7→ch10→ch3→ch6→ch9→ch2→ch5→ch8→ch1の順に、使用する周波数チャネルを切り替える。このように、所定数ずつ、周波数チャネルをずらす処理は、関数でも可能である。たとえば、起動時処理の実行後、初回のデータ通信の際には、ch1を使用する。ここでは、一例として、使用する周波数チャネルとして、ch4を決定するものとする。
【0077】
ステップS100の実行後、制御装置40は、決定した周波数チャネルで送受信処理を実行する(ステップS110)。周波数チャネルホッピングおよび送受信処理が、
図5に示した要求データの送信および応答データの受信に相当する。監視装置30も、送受信処理の実行前に、制御装置40と共通のホッピングパターンにしたがって、使用する周波数チャネルを決定する。たとえば制御装置40がch4を決定する送受信周期では、監視装置もch4を決定する。
【0078】
ステップS110の実行後、制御装置40は、通信品質を評価し(ステップS120)、通信実績として蓄積する(ステップS130)。制御装置40は、ステップS110の送受信結果に基づいて今回行った通信の品質を評価する。制御装置40は、通信品質が正常なのか、劣化しているのかを評価する。制御装置40は、通信評価結果を、通信実績として周波数チャネルに対して個別に蓄積する。
【0079】
制御装置40は、たとえば応答データ(応答信号)の受信状態に関する情報に基づいて、通信品質を評価する。制御装置40は、たとえば応答データを受信できなかった場合に、通信品質劣化と評価してもよい。制御装置40は、受信できたものの、受信時に実行する検査、たとえば誤り検出符号を用いた検査により通信エラーを検出した場合に、通信品質劣化と評価してもよい。制御装置40は、たとえば再送処理が必要な場合に、通信品質劣化と評価してもよい。つまり、通信不成立時には、通信品質劣化と評価してもよい。制御装置40は、たとえば受信信号強度(RSSI)が所定値よりも低い場合に、通信品質劣化と評価してもよい。RSSIは、Received Signal Strength Indicatorの略称である。制御装置40は、評価基準をクリアしている場合に、通信品質正常と評価する。
【0080】
制御装置40は、要求データ(要求信号)の受信状態に関する情報を、通信データの一部として監視装置30から取得し、通信品質を評価してもよい。マスタ装置である制御装置40は、要求データの受信状態に関する情報、および/または、応答データの受信状態に関する情報に基づいて、通信品質を評価し、通信実績として蓄積する。
【0081】
図10は、各周波数チャネルの通信実績を示している。
図10では、明確化のために、通信実績のうち、通信品質劣化の実績にハッチングを施している。このように、制御装置40は、ステップS130の処理ごとに、通信実績として、通信品質正常の評価実績または通信品質劣化の評価実績を積む。これにより、使用した周波数チャネルについて、通信実績が一回分増加する。
【0082】
ステップS130の実行後、制御装置40は、今回使用した周波数チャネルの通信実績が基準回数STを超えたか否かを判定する(ステップS140)。上記したように信号の位相は変化する。よって、位相360°分の通信実績が蓄積、好ましくは複数回蓄積された状態で、ステップS160の使用不可判定を行うのが好ましい。この点を考慮し、本実施形態では、基準回数STが、1000回~数万回の範囲内で設定されている。本実施形態の基準回数STは、所定値(固定値)である。基準回数STは、たとえばマイコン441のメモリに予め格納されている。
【0083】
ステップS140において通信実績が基準回数ST以下と判定すると、制御装置40は、一連の処理を終了する。制御装置40は、現在、周波数チャネルホッピングの使用対象として設定されている周波数チャネルを維持する。
【0084】
ステップS140において通信実績が基準回数STを超えたと判定すると、制御装置40は、学習データに基づいて、閾値THを設定する(ステップS150)。制御装置40は、ステップS110の送受信処理で用いた周波数チャネルについて、閾値THを設定する。
図10に破線で示すように、閾値THは、学習データに基づき、周波数チャネルに対して個別に設定される。本実施形態では、ch4を用いた場合の制御装置40およびひとつの監視装置30における電界強度が、他のch1~3、5~10を用いた場合よりも低い。このため、制御装置40は、ch4の閾値THを、他のch1~3、5~10の閾値THよりも低い値とする。つまり、ch4が使用不可判定されやすいように、ch4の閾値を設定する。
【0085】
ステップS150の実行後、制御装置40は、今回使用した周波数チャネルの使用不可判定を実行する(ステップS160)。制御装置40は、使用した周波数チャネルの通信実績において通信品質劣化に相関する値と閾値THとを比較することで、次回以降使用不可か否かを判定する。通信実績において通信品質に相関する値とは、たとえば通信実績中の通信品質劣化実績の割合である。割合に代えて、通信品質劣化実績の回数を用いてもよい。
【0086】
ステップS160において通信品質劣化の相関値が閾値TH以下の場合、制御装置40は、今回使用した周波数チャネルについて次回以降の使用に問題なしと判定し、一連の処理を終了する。つまり、制御装置40は、現在、周波数チャネルホッピングの使用対象として設定されている周波数チャネルを維持する。
【0087】
ステップS160において通信品質劣化の相関値が閾値THを超えた場合、制御装置40は、今回使用した周波数チャネルについて次回以降の使用が不可であると判定し、使用不可チャネルを設定する。たとえば
図10では、ch4の通信品質劣化の割合が、閾値THを超えている。この場合、制御装置40は、ch4を使用不可と判定し、使用不可チャネルに設定する。
【0088】
使用不可と判定した場合、制御装置40は、使用対象の周波数チャネルを決定し(ステップS170)、一連の処理を終了する。制御装置40は、使用不可チャネルを周波数チャネルホッピングの使用対象から除外することで、使用対象となる周波数チャネルを決定する。
【0089】
図11は、使用不可チャネルを考慮したホッピングパターンの一例を示している。制御装置40は、たとえば使用不可チャネルであるch4を、ホッピングパターンから除外する。ch1を使用した送受信周期の次の周期で周波数チャネルホッピングを行うと、使用する周波数チャネルはch7に切り替わる。ホッピングパターンから除外せず、使用不可チャネルが選択された際に再度周波数チャネルホッピングを行うことで、使用不可チャネルを使用しないようにしてもよい。
【0090】
制御装置40は、上記した起動時処理の終了後、ステップS100~S170の処理を繰り返し実行する。制御装置40は、監視装置30それぞれとのデータの送受信において、上記した使用対象チャネルの決定処理を実行する。
【0091】
<共有処理>
次に、
図12および
図13に基づき、スレーブ装置である監視装置30との情報の共有について説明する。
図12は、制御装置40が実行する共有処理の一例を示すフローチャートである。
図13は、チャネル情報を含むデータ通信の一例を示すタイミングチャートである。
【0092】
制御装置40は、上記したステップS170の処理をトリガとして、
図12に示す処理を実行する。
図12に示すように、制御装置40の無線IC44は、チャネル情報を含むデータを監視装置30に送信する(ステップS200)。チャネル情報は、たとえば使用不可チャネルと判定された周波数チャネルの情報である。チャネル情報は、たとえば使用不可チャネルを除外した後の使用対象の周波数チャネルの情報でもよい。
【0093】
ステップS200の実行後、制御装置40は、ステップS200の送信処理を実行してから所定時間以内に、ステップS200の送信信号に対する応答信号を受信したか否かを判定する(ステップS210)。応答信号を受信した場合、一連の処理を終了する。応答信号を受信しない場合、ステップS200の処理を再度実行する。
【0094】
図13は、制御装置40が、3つの監視装置30、具体的にはSBM1、SBM2、SBM3それぞれとの間でデータの送受信を行う例を示している。
図13では、SBM2との間で周波数チャネルのひとつが使用不可と判定された例を示している。Txはデータの送信、Rxはデータの受信を示している。SBM1(D)、SBM2(D)、SBM3(D)は、監視データの要求および応答の送受信を示している。SBM2(CI)は、チャネル情報(CI)を含むデータの送受信を示している。
【0095】
制御装置40は、SBM2とのデータの送受信を実行後、引き続きSBM2とチャネル情報を含むデータの送受信を行う。制御装置40は、SBM3との通信を実行する前に、SBM2とチャネル情報の共有を行う。チャネル情報の送受信は、使用不可と判定した周波数チャネルがSBM2において再び使用されるまでに実行すればよい。たとえば
図9に示したホッピングパターンにおいて、使用不可であるch4の情報の送信を、ch9を用いたデータの送受信後に行ってもよい。この場合、ch9を用いて、SBM2とチャネル情報を共有することができる。チャネル情報は、後発的に共有する、初期情報とは別の周波数チャネルホッピングに関する情報である。
【0096】
<第1実施形態のまとめ>
上記したように、監視装置30および制御装置40の位置は、筐体50内、ひいては車両10において、定まっている。マスタ装置である制御装置40から所定周波数(所定チャネル)の電波を放射すると、送信波と反射波との干渉により、筐体50内に電界強度の高い部分と低い部分が生じる。筐体50のように閉じた空間では、位相変化しても、概ね電界強度の高い部分と、概ね電界強度の低い部分が存在する。監視装置30および制御装置40における電界強度が低いと、電界強度が高い場合よりも、通信不成立や受信信号の低下など、通信品質の劣化が生じやすい。つまり、監視装置30と制御装置40との位置関係において、通信品質が劣化しやすい周波数チャネル(周波数)と通信品質が劣化し難い周波数チャネルが存在する。
【0097】
本実施形態の制御装置40は、筐体50内の電界強度に相関するデータを、予め学習データとして有している。学習データは、スレーブ装置である監視装置30とのデータ送受信に使用可能な周波数チャネルについての筐体50内の電界強度に相関するデータである。制御装置40は、電界強度に相関するデータに基づき、周波数チャネルホッピングの使用対象から、通信品質が劣化しやすい周波数チャネルを除外する。つまり、周波数チャネルホッピングの使用対象として、通信品質が劣化し難い周波数チャネルを決定する。この結果、信頼性の高い無線通信が可能な電池管理システム60を提供することができる。これにより、通信不成立が生じるのを抑制することができる。つまり、電池情報などの監視データの欠落を抑制することができる。
【0098】
無線通信の場合、有線通信に対して通信速度が遅く、通信頻度が少ない場合が多い。このため、電圧などの物理量の少なくともひとつに異常が生じた場合、または、故障診断情報により異常が検出された場合、監視データの欠落が生じると、値が急激に変更される可能性がある。値が急激に変更されると、制御が急激に変更されることとなり、安全性に問題はないものの、操作性に影響が生じる虞がある。これに対し、本実施形態によれば、異常を示す監視データの欠落を抑制することができる。これにより、操作性への影響を抑制することができる。
【0099】
また、監視データの欠落を抑制することで、監視データの累積で推定する要素、たとえば電池ダメージの累積などを精度よく推定することが可能となる。また、異常の検出を、閾値を超えた回数によって行う場合がある。この場合も、監視データの欠落を抑制することで、異常の検出タイミングを早めることが可能となる。
【0100】
電界強度は、上記した配置、周波数チャネル(周波数)などの初期的に決まる要素(初期要素)以外の影響も受ける。筐体50内の電界強度は、変動要素、たとえば使用環境の温度、湿度、異物、振動などによって変化し得る。たとえば温度が高くなると、温度が低い場合に較べて電界強度が低下する。湿度が高くなると、空気中の水分の影響で電界強度が低下する。ほこりなどの異物によっても電界強度は低下する。また、振動により、ハーネスなどの金属体の位置がずれると、電界強度が変化する。振動により電波の伝搬経路がずれると、電界強度が変化する。
【0101】
本実施形態の制御装置40は、所定の周波数チャネルにおけるデータの送受信結果に基づいて通信品質を評価し、通信実績として蓄積する。そして、通信実績において通信品質劣化に相関する値が閾値THを超えた場合に、所定の周波数チャネルを使用不可と判定して使用対象から除外する。このように、実際の送受信結果に基づく値、具体的には通信実績において通信品質劣化に相関する値を用いて、使用不可か否かを判定する。これにより、温度や振動など、変動要素の影響を考慮(反映)することができる。
【0102】
また、制御装置40は、閾値THを、学習データに基づいて周波数チャネルごとに設定する。つまり、電界強度に基づき、閾値THを周波数チャネルに対して個別に設定する。たとえば電界強度が低い周波数チャネルの閾値THを、電界強度が高い周波数チャネルの閾値THよりも厳しくする。本実施形態では、初期要素の影響、および、変動要素の影響を考慮するため、無線通信の信頼性をさらに高めることができる。
【0103】
使用可能な周波数チャネルにおいて閾値THが互いに共通の場合、一律な閾値THに到達するまで、通信不成立などが無駄に多く発生してしまう。本実施形態によれば、初期要素の影響を考慮して閾値THを周波数チャネルごとに設定するため、電界強度の低い周波数チャネルについては閾値THに早く到達する。これにより、通信不成立を低減し、ひいては電池情報の欠落を抑制することができる。
【0104】
<変形例>
ステップS140の処理で用いる基準回数STを固定値とする例を示したが、これに限定されない。基準回数STについても、学習データに基づいて周波数チャネルごとに設定してもよい。つまり、監視装置30および制御装置40における電界強度が低い周波数チャネルの基準回数STを、電界強度が高い周波数チャネルの基準回数STより小さくしてもよい。
【0105】
特に言及しなかったが、
図12に示す共有処理の送受信結果についても、通信品質を評価し、通信実績として蓄積してもよい。
【0106】
使用不可と判定した周波数チャネルを除外し、ホッピングパターンにおける次の周波数チャネルを使用する例を示したが、これに限定されない。使用不可と判定した周波数チャネルを除外し、ルールに従わない所定の周波数チャネルを使用した後、ホッピングパターンに戻ってもよい。使用不可チャネルに所定数を加算することで、使用不可判定後の周波数チャネルを決定してもよい。たとえばch4を使用不可と判定すると、所定数である6を加算したch10を使用し、ch10の後に、ホッピングパターンに戻ってch7を使用してもよい。所定数を通常のホッピング間隔よりも大きくすると、次に使用する周波数チャネルを、使用不可チャネルから離すことができる。関数を用いる場合も同様である。
【0107】
また、使用不可と判定した後に使用する周波数チャネルを、予め定めておいてもよい。たとえば、使用不可判定後は、ch2を必ず使用し、その後ホッピングパターンや関数によって使用する周波数チャネルを決定してもよい。
【0108】
制御装置40が閾値THを設定するタイミングは、ステップS150に限定されない。制御装置40は、使用不可判定処理(ステップS160)の実行前に閾値THを設定すればよい。制御装置40は、たとえば起動時処理の実行後であってデータ通信の実行前に、すべての周波数チャネルについて閾値THを個別に設定してもよい。これによれば、通信実績が基準回数STを上回るたびに、閾値THを設定しなくてもよい。
【0109】
制御装置40が、一の監視装置30(SBM2)との使用対象チャネル決定処理において、周波数チャネルのひとつを使用不可と判定した場合、SBM2に対してチャネル情報(CI)を送信する例を示したがこれに限定されない。SBM2だけでなく、他の監視装置(SBM1、SBM3)に対して、チャネル情報を送信してもよい。たとえば
図13に示すSBM1(D)に続いてSBM1にチャネル情報を送信し、SBM3(D)に続いてSBM3にチャネル情報を送信してもよい。つまり、使用不可チャネルを、制御装置40と無線通信するすべての監視装置30において共有してもよい。
【0110】
学習データとして、周波数チャネル情報を用いてもよい。周波数チャネル情報は、たとえば電界強度が所定の閾値よりも高い周波数チャネルの情報、および/または、電界強度が所定の閾値よりも低い周波数チャネルの情報である。学習データとして、使用可能な周波数チャネルそれぞれ(すべて)についてのデータを有してもよいし、一部の周波数チャネルについてのデータを有してもよい。たとえば学習データとして、電界強度が所定の閾値よりも低い周波数チャネル情報と、電界強度が閾値よりも高い周波数チャネル情報を含む場合、電界強度が低い周波数チャネルの閾値THを、電界強度が高い周波数チャネルの閾値THよりも低い値にしてもよい。たとえば学習データとして、電界強度が所定の閾値よりも低い周波数チャネル情報のみを含む場合、たとえば学習データに含まれる周波数チャネルの閾値THを、学習データに含まれない周波数チャネルの閾値THよりも低い値にしてもよい。
【0111】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、周波数チャネルごとに通信実績を積んで使用不可を判定した。これに代えて、連続する複数の周波数チャネルを一単位とするグループごとに通信実績を積んで使用不可を判定してもよい。
【0112】
図14は、本実施形態に係る電池管理システム60において、制御装置40が実行する使用対象チャネル決定処理の一例を示している。
図15は、各グループの通信実績と、学習データに基づいて設定された閾値THの一例を示している。
図15では、
図10同様、閾値THを破線で示している。また、明確化のために、通信実績のうち、通信品質劣化の実績にハッチングを施している。
【0113】
図14に示すステップS100~S120の処理は、先行実施形態の
図8に示したステップS100~S120と同様である。制御装置40(無線IC44)は、周波数チャネルホッピングにより使用する周波数チャネルを決定し、ひとつの監視装置30との間でデータの送受信処理を行う。そして、送受信結果に基づいて、通信品質を評価する。
【0114】
ステップS120の実行後、制御装置40は、ステップS120で行った通信品質評価の結果を、グループの通信実績として蓄積する(ステップS130A)。本実施形態の制御装置40は、周波数チャネルに対して個別に通信実績を蓄積するのではない。制御装置40は、互いに連続する複数の周波数チャネルを一単位とするグループを設定し、グループ単位で通信実績を蓄積する。
【0115】
制御装置40は、たとえば
図15に示すように、使用可能な10chを、2chずつ5グループに分ける。
図15では、第1グループ(1G)がch1、ch2を含む。第2グループ(2G)が、ch3、ch4を含む。第3グループ(3G)が、ch5、ch6を含む。第4グループ(4G)が、ch7、ch8を含む。第5グループ(5G)が、ch9、ch10を含む。たとえば制御装置40は、1chの通信品質評価結果と、2chの通信品質評価結果を、第1グループ(1G)の通信実績として蓄積する。
【0116】
ステップS130Aの実行後、制御装置40は、今回使用した周波数チャネルを含むグループの通信実績が基準回数STを超えたか否かを判定する(ステップS140A)。ステップS140Aにおいてグループの通信実績が基準回数ST以下と判定すると、制御装置40は、一連の処理を終了する。制御装置40は、現在、周波数チャネルホッピングの使用対象として設定されている周波数チャネルの維持を決定する。
【0117】
ステップS140Aにおいてグループの通信実績が基準回数STを超えたと判定すると、制御装置40は、学習データに基づいて、グループの閾値THを設定する(ステップS150A)。制御装置40は、ステップS110の送受信処理で用いた周波数チャネルを含むグループについて、閾値THを設定する。
図15に破線で示すように、閾値THは、学習データに基づき、グループに対して個別に設定される。本実施形態では、ch7および/またはch8の電界強度が低いため、ch7およびch8を含む第4グループ(4G)の閾値THが、他のグループ(1G~3G、5G)の閾値THよりも低い値とされる。
【0118】
ステップS150Aの実行後、制御装置40は、今回使用した周波数チャネルを含むグループの使用不可判定を実行する(ステップS160A)。制御装置40は、該当するグループの通信実績において通信品質劣化に相関する値と閾値THとを比較することで、次回以降使用不可か否かを判定する。
【0119】
ステップS160Aにおいて通信品質劣化に相関する値が閾値TH以下の場合、制御装置40は、該当するグループについて次回以降の使用に問題ないと判定し、一連の処理を終了する。つまり、制御装置40は、現在、周波数チャネルホッピングの使用対象として設定されている周波数チャネルの維持を決定する。
【0120】
ステップS160Aにおいて通信品質劣化に相関する値が閾値THを超えた場合、制御装置40は、該当するグループについて次回以降の使用が不可であると判定する。制御装置40は、グループ内のすべての周波数チャネルが使用不可であると判定する。たとえば
図15では、第4グループ(4G)の通信品質劣化の割合が閾値THを超えており、制御装置40は、第4グループ、つまりch7およびch8を使用不可と判定する。
【0121】
使用不可と判定した場合、制御装置40は、
図8同様、ステップS170の処理を実行し、一連の処理を終了する。制御装置40は、使用不可のグループに含まれる周波数チャネルを周波数チャネルホッピングの使用対象から除外することで、使用対象となる周波数チャネルを決定する。たとえば
図9に示すホッピングパターンを使用し、第4グループを使用不可と判定した場合、ch7およびch8を除外して新たなホッピングパターンを決定してもよい。ホッピングパターンから除外せず、使用不可チャネル(ch7またはch8)が選択された際に再度周波数チャネルホッピングを行うことで、使用不可チャネルを使用しないようにしてもよい。
【0122】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、先行実施形態に記載の構成と同様の効果を奏することができる。具体的には、制御装置40は、所定の周波数チャネルにおけるデータの送受信結果に基づいて通信品質を評価し、グループ単位で通信実績を蓄積する。そして、グループの通信実績において通信品質劣化に相関する値が閾値THを超えた場合に、グループ内のすべての周波数チャネルを使用不可と判定して使用対象から除外する。このように、実際のデータの送受信結果に基づく値、具体的には通信実績において通信品質劣化に相関する値を用いて、使用不可か否かを判定する。これにより、温度や振動など、変動要素の影響を考慮(反映)することができる。
【0123】
また、制御装置40は、閾値THを、学習データに基づいてグループごとに設定する。つまり、電界強度に基づき、閾値THをグループに対して個別に設定する。互いに連続する周波数は、互いに離れた周波数よりも、電界強度の強弱の位置関係が近い。このため、グループ単位で閾値THをまとめても、初期的な要素の影響を考慮して、無線通信の信頼性を高めることができる。
【0124】
本実施形態では、通信実績および閾値THをグループ単位で管理し、グループ単位で使用不可を判定する。これにより、制御装置40(マスタ装置)の処理負荷を軽減することができる。
【0125】
本実施形態に記載の構成は、周波数チャネル単位をグループ単位に置き換えた点を除けば、先行実施形態および変形例に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0126】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。使用不可と判定した周波数チャネルについては、判定以降において、周波数チャネルホッピングの使用対象から除外してもよい。これに代えて、所定の条件を満たす場合に、復帰するようにしてもよい。
【0127】
図16は、本実施形態に係る電池管理システム60において、制御装置40が実行する復帰処理の一例を示している。制御装置40は、使用不可チャネルを設定すると、以下に示す復帰処理を実行する。
【0128】
図16に示すように、まず制御装置40は、学習データに基づいて復帰条件を設定する(ステップS300)。閾値THを周波数チャネルに対して個別に設定する場合、制御装置40は、復帰条件を周波数チャネルに対して個別に設定する。閾値THをグループに対して個別に設定する場合、制御装置40は、復帰条件をグループに対して個別に設定する。
【0129】
復帰条件は、使用不可判定後の送受信回数、たとえば監視データの受信回数でもよい。また、IG信号などの起動信号のオンオフの回数でもよいし、走行距離でもよい。たとえば起動信号のオンオフ回数の場合、制御装置40は、学習データに基づいて電界強度が低い周波数チャネルの復帰に要する回数を電界強度が高い周波数チャネルの復帰に要する回数よりも多く設定する。
【0130】
ステップS300の実行後、制御装置40は、復帰条件を満たすか否かを判定する(ステップS310)。復帰条件を満たさないと判定すると、ステップS310の処理を再び実行する。
【0131】
ステップS310において復帰条件を満たすと判定すると、制御装置40は、通信実績をリセットし(ステップS320)、一連の処理を終了する。復帰条件を周波数チャネルに対して個別に設定する場合、少なくとも復帰条件を満たした周波数チャネルの通信実績をリセットし、使用不可としていた周波数チャネルを使用対象に復帰させる。復帰条件をグループに対して個別に設定する場合、少なくとも復帰条件を満たしたグループの通信実績をリセットし、グループに含まれる周波数チャネルのすべてを使用対象に復帰させる。
【0132】
ひとつの周波数チャネルまたはひとつのグループが復帰条件を満たす場合、制御装置40は、復帰条件を満たした周波数チャネルまたはグループの通信実績のみをリセットしてもよい。制御装置40は、データの送受信に使用可能な周波数チャネルのすべて(たとえば、10チャネル分)について、通信実績をリセットしてもよい。つまり、すべての通信実績を一括リセットしてもよい。
【0133】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、使用不可チャネルを復帰させるための復帰条件に、学習データを用いる。学習データを用いることで、復帰時間に差が生じる。電界強度が低い周波数チャネル、つまり通信品質が劣化しやすい周波数チャネルは、復帰し難くなる。一方、電界強度が高い周波数チャネル、つまり通信品質が劣化し難い周波数チャネルは、復帰しやすくなる。これにより、復帰条件が一律の構成に較べて、通信品質劣化が生じる回数を低減することができる。よって、信頼性をさらに高めることができる。
【0134】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態に記載の構成、第2実施形態の記載の構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0135】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、使用対象チャネル決定処理の実行タイミングと車両10の走行状態との関係について特に言及しなかった。これに代えて、使用対象チャネル決定処理を、車両10の走行状態と紐づけて実施してもよい。
【0136】
図17は、本実施形態に係る電池管理システム60において、ステップS110の処理タイミング、つまりデータの送受信処理のタイミングを示している。
図17(a)に示すように、制御装置40は、走行時のみ、データの送受信処理を含む使用対象チャネル決定処理を実行してもよい。つまり、非走行時には、使用対象チャネル決定処理を実施しないようにしてもよい。
【0137】
図17(b)に示すように、制御装置40は、走行時と非走行時において、データの送受信処理を含む、使用対象チャネル決定処理を実行してもよい。つまり、非走行時において、使用対象チャネル決定処理を実施してもよい。非走行時とは、IG信号などの起動信号がオフの状態、または、起動信号がオン状態のまま、車両10が駐停車状態の期間である。起動信号がオフの状態でも、電池スタック21やバッテリ15から常時電源が供給される構成の場合、制御装置40は、非走行時において使用対象チャネル決定処理を実行することができる。
【0138】
なお、
図12に示した共有処理、
図16に示した復帰処理は、使用対象チャネル決定処理と合わせて実施することができる。つまり、非走行時に、使用対象チャネル決定処理、共有処理、および復帰処理を実行してもよい。
【0139】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、車両の走行状態に紐づけて、使用対象チャネル決定処理を実行することができる。非走行時は、走行時に較べて温度が低い。組電池20の負荷が低い。走行による振動がない。このように、変動要素の影響が小さい。したがって、初期要素、つまり制御装置40および監視装置30における電界強度の高低が、通信品質に大きく影響する。電界強度の学習データを用いることで、使用不可チャネルの判定精度を高めることができる。
【0140】
本実施形態では、走行時のみ、または、走行時および非走行時に、使用対象チャネル決定処理を実行する例を示した。たとえば、走行時は、ステップS100およびステップS110の処理のみ実行し、非走行時は、ステップS100~S170の処理を実行するようにしてもよい。走行時は、ステップS100~S130の処理のみ実行し、非走行時は、ステップS100~S170の処理を実行するようにしてもよい。これにより、走行時における制御装置40の処理負荷、通信負荷を軽減することができる。
【0141】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態に記載の構成、第2実施形態の記載の構成、第3実施形態に記載の構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0142】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、使用不可チャネルを判定するための閾値を、学習データに基づいて設定した。これに代えて、周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを、学習データに基づいて直接的に決定してもよい。
【0143】
図18は、本実施形態に係る電池管理システム60において、監視装置30と制御装置40との間の通信シーケンスの一例を示している。
図18は、使用対象チャネル決定処理の実施タイミングを示している。
図18では、
図5同様、監視IC33をMIC33、無線IC35をWIC35、制御装置40をECU40と示している。
図18は、使用対象チャネル決定処理の実施タイミングを示している。
【0144】
図18に示すように、制御装置40は、ステップS10の処理、つまり起動時処理を実行した後、ステップS20以降のデータ通信処理を実行する前に、使用対象チャネル決定処理を実行する(ステップS15)。
【0145】
制御装置40は、初期情報および上記した学習データに基づいて、周波数チャネルホッピングに使用する周波数チャネルを決定する。制御装置40は、使用可能な複数の周波数チャネルのうち、制御装置40および監視装置30における電界強度が低い周波数チャネルについては使用せず、電界強度が高い周波数チャネルを使用対象として決定する。たとえば所定の閾値よりも電界強度が高い周波数チャネルを使用対象とし、閾値よりも電界強度が低い周波数チャネルを使用不可とする。
【0146】
制御装置40は、使用対象チャネル情報を、監視装置30の無線IC35に送信することで、ステップS15で決定した周波数チャネルの情報を、監視装置30と共有する。起動時処理において、制御装置40および監視装置30は、周波数チャネルホッピングに関する初期情報を共有している。制御装置40は、初期情報にしたがって周波数チャネルホッピングを行い、所定の周波数チャネルで使用対象チャネル情報を送信する。初期情報にしたがって周波数チャネルホッピングを行うため、制御装置40と監視装置30とで互いに共通の周波数チャネルを使用し、使用対象チャネル情報を共有することができる。
【0147】
上記したステップS15の処理は、制御装置40と各監視装置30との間で実行される。ステップS15の実行後、制御装置40は、要求データの送信処理(ステップS20)を実行する。制御装置40は、ステップS15で決定した周波数チャネルを使用対象として周波数チャネルホッピングを行い、使用する周波数チャネルを決定する。制御装置40は、決定した周波数チャネル(周波数)で、要求データの送信を行う。電池管理システム60は、ステップS15の実行後、ステップS20~S25の処理を周期的に実行する。
【0148】
<第5実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、マスタ装置である制御装置40が、起動時処理の実行後に、使用対象チャネル決定処理を実行する。制御装置40は、データの送受信を行う前に、周波数チャネルホッピングで使用する周波数チャネルを、予め格納された学習データに基づいて決定する。制御装置40は、監視装置30とのデータの定期通信中に、チャネル決定処理を実行しなくてもよい。これにより、通信負荷を軽減することができる。
【0149】
制御装置40は、データの送受信にともなって、通信品質を評価し、評価結果を通信実績として蓄積してもよい。つまり、ステップS100~S130(S130A)の処理を周期的に実行してもよい。通信実績を蓄積することで、後述する学習データの更新に活用することが可能となる。
【0150】
使用対象チャネル決定処理を起動時処理の実行後に行う例を示したが、これに限定されない。制御装置40は、起動してから監視装置30との間でデータの送受信を行うまでの間に、使用対象チャネル決定処理を実行すればよい。たとえば使用対象チャネル決定処理を、起動時処理に含めてもよい。
【0151】
学習データが固定値の場合、つまり後述する学習データの更新を実行しない場合、制御装置40および監視装置30が、学習データに基づいて、使用対象チャネル決定処理をそれぞれ実行してもよい。監視装置30にも、制御装置40と同じ内容の学習データが予め格納される。使用対象チャネル決定処理の処理内容は、制御装置40と監視装置30とで共通である。これにより、データ通信を行うことなく、周波数チャネルホッピングに使用する周波数チャネルを共有することができる。
【0152】
先行実施形態に記載のように、学習データとして、たとえば電界強度が所定の閾値よりも高い周波数チャネルの情報を用いてもよいし、電界強度が所定の閾値よりも低い周波数チャネルの情報を用いてもよい。学習データは、使用対象とする周波数チャネルの情報、および/または、使用不可とする周波数チャネルの情報を含んでもよい。
【0153】
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、学習データが固定値であった。これに代えて、学習データを可変値としてもよい。
【0154】
図19は、本実施形態に係る電池管理システム60において、制御装置40が実行する更新処理を示している。制御装置40は、更新処理を所定の周期で実行する。
【0155】
図19に示すように、制御装置40は、所定のイベントが発生したか否かを判定する(ステップS400)。所定イベントは、たとえばIG信号などの起動信号の切り替えタイミングで発生してもよい。所定イベントは、たとえば起動信号がオンからオフに切り替わると発生してもよいし、起動信号がオフからオンに切り替わると発生してもよい。所定イベントは、たとえば所定の走行距離ごとに発生してもよい。所定イベントは、たとえば監視データの受信回数が所定回数に到達するごとに発生してもよい。
【0156】
ステップS400において所定イベントが発生したと判定すると、制御装置40は、蓄積された通信実績に基づいて学習データを更新する(ステップS410)。制御装置40は、初期的な学習データと通信実績とを、予め設定されたルールにしたがって融合することで、学習データを更新してもよい。制御装置40は、たとえば通信実績における通信品質劣化の割合から、通信品質が劣化しやすい周波数チャネルと通信品質が劣化し難い周波数チャネルを決定して新たな学習データとする。そして、制御装置40は、初期的な学習データを新たな学習データに置き換えることで、学習データを更新してもよい。
【0157】
<第6実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、マスタ装置である制御装置40が、所定のイベントごとに、蓄積された通信実績を用いて学習データを更新する。これによれば、実際の使用環境に応じて使用不可チャネルを決定し、ひいては使用対象となる周波数チャネルを決定することができる。たとえば温度や振動などの変動要素の影響が大きい場合において、信頼性の高い無線通信を行うことができる。
【0158】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態~第5実施形態いずれとも組み合わせが可能である。
【0159】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0160】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0161】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0162】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0163】
マイコンやICが手段および/または機能を提供する例を示したが、これに限定されない。各手段および/または機能は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサを含む専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、コンピュータプログラムを実行するプロセッサとひとつ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成されたひとつ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に格納されていてもよい。手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。たとえばプロセッサが備える機能の一部または全部はハードウェアとして実現されてもよい。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつ以上のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサは、CPUの代わりに、MPUやGPU、DFPを用いて実現されていてもよい。プロセッサは、CPUや、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合せて実現されていてもよい。プロセッサは、システムオンチップ(SoC)として実現されていてもよい。さらに、各種処理部は、FPGAや、ASICを用いて実現されていてもよい。各種プログラムは、非遷移的実体的記録媒体に格納されていればよい。プログラムの保存媒体としては、HDDやSSD、フラッシュメモリ、SDカードなど、多様な格納媒体を採用可能であるDFPは、Data Flow Processorの略称である。SoCは、System on Chipの略称である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。HDDは、Hard disk Driveの略称である。SSDは、Solid State Driveの略称である。SDは、Secure Digitalの略称である。
【0164】
たとえば監視装置30がマイコン34を備える例を示したが、これに限定されるものではない。
図20に示すように、監視装置30がマイコン34を備えない構成の電池管理システム60を採用してもよい。
図20は、
図4に対応している。この構成では、無線IC35が、監視IC33との間でデータの送受信を行う。監視IC33によるセンシングや自己診断のスケジュール制御については、無線IC35が実行してもよいし、制御装置40のメインマイコン45が実行してもよい。
【0165】
組電池20を構成する電池スタック21および電池セル22の配置や個数は上記した例に限定されない。電池パック11において、監視装置30および/または制御装置40の配置は、上記した例に限定されない。
【0166】
電池パック11が、ひとつの制御装置40を備える例を示したが、これに限定されない。複数の制御装置40を備えてもよい。電池パック11は、ひとつ以上の監視装置30とひとつ以上の制御装置40を備えればよい。電池管理システム60は、制御装置40とひとつ以上の監視装置30との間に構築される無線通信システムを複数組備えてもよい。
【0167】
監視装置30が、監視IC33をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数の監視IC33を備えてもよい。この場合において、監視IC33ごとに無線IC35を設けてもよいし、複数の監視IC33に対して、ひとつの無線IC35を設けてもよい。
【0168】
電池スタック21ごとに監視装置30を配置する例を示したが、これに限定されない。たとえば複数の電池スタック21に対して、ひとつの監視装置30を配置してもよい。ひとつの電池スタック21に対して、複数の監視装置30を配置してもよい。
【0169】
無線IC44が、マイコン441を備える例を示したが、これに限定されない。マイコン441を備えない構成としてもよい。メインマイコン45が、上記した無線IC44の機能の一部を提供してもよい。たとえば、無線IC35が、マイコンを備えない構成としてもよい。マイコン34が、上記した無線IC35の機能の一部を提供してもよい。
【0170】
制御装置40の無線IC44が、上記した使用対象チャネル決定処理などを実行する例を示したが、これに限定されない。制御装置40の要素が実行すればよい。たとえば、メインマイコン45が一部の処理を実行してもよい。
【0171】
制御装置40をマスタ装置、監視装置30をスレーブ装置とする例を示したが、これに限定されない。上記した各実施形態は、制御装置40および監視装置30の一方をマスタ装置、他方をスレーブ装置として、周波数チャネルホッピングを用いて無線通信を行う構成に適用が可能である。たとえば監視装置30をマスタ装置、制御装置40をスレーブ装置としてもよい。この場合、監視装置30が学習データを予め格納している。マスタ装置は、無線通信を行うスレーブ装置それぞれとの間でデータの送受信に使用可能な周波数チャネルそれぞれについての筐体内の電界強度に相関するデータを、学習データとして予め格納している。マスタ装置は、学習データに基づいて、周波数チャネルホッピングの使用対象となる周波数チャネルを決定する。
【符号の説明】
【0172】
10…車両、11…電池パック、12…PCU、13…MG、14…ECU、15…バッテリ、20…組電池、21…電池スタック、22…電池セル、23…バスバーユニット、24…バスバー、25…正極端子、26…負極端子、27…バスバーカバー、30…監視装置、31、311、312、313…電源回路、32…マルチプレクサ、33…監視IC、34…マイコン、35…無線IC、36…フロントエンド回路、37…アンテナ、40…制御装置、41、411、412…電源回路、42…アンテナ、43…フロントエンド回路、44…無線IC、440…RF回路、441…マイコン、442…学習データ格納部、45…メインマイコン、46…サブマイコン、50…筐体、60…電池管理システム、70…センサ