(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】車両の制御方法、車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 60/00 20200101AFI20250527BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250527BHJP
B60R 25/01 20130101ALI20250527BHJP
B60R 25/102 20130101ALI20250527BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B60W60/00
G08G1/00 D
B60R25/01
B60R25/102
G08G1/09 D
(21)【出願番号】P 2021188424
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】余 淑芬
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏充
【審査官】横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-179691(JP,A)
【文献】特開2020-155138(JP,A)
【文献】特開2019-160140(JP,A)
【文献】特開2016-215751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転モードを備えるMaaS車両の制御方法であって、
前記MaaS車両が予め定められた運転条件から外れて運転されている非常状態の発生を検知する処理と、
前記非常状態の発生の検知に応答して、複数のステージで構成される非常状態対応処理を予め定められた順番に従い行う処理と、
前記MaaS車両の乗員の前記MaaS車両への乗車時又は乗車後に、前記乗員の認証を行う処理と、
前記乗員の認証において、正しく認証されたと判定された場合は、前記非常状態対応処理をキャンセルする処理と、
を含
み、
前記非常状態は、前記乗員によるテイクオーバー操作が一定時間を超えて継続している状態、前記MaaS車両が運行設計領域から一定距離以上逸脱している状態、前記MaaS車両の前記運行設計領域からの逸脱が一定時間を超えて継続している状態、及び前記MaaS車両が予め設定された停車場所に停車していない状態、のいずれか一つ以上が発生した状態である
制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記非常状態対応処理の第一ステージとして音声による警告を行い、第二ステージとしてサイネージ表示を行い、第三ステージとして警察への通報と前記MaaS車両の停止を行う
制御方法。
【請求項3】
自動運転モードを備えるMaaS車両に搭載される車両制御装置であって、
前記MaaS車両が予め定められた運転条件から外れて運転されている非常状態の発生を検知することと、
前記非常状態の発生の検知に応答して、複数のステージで構成される非常状態対応処理を予め定められた順番に従い行うことと、
前記MaaS車両の乗員の前記MaaS車両への乗車時又は乗車後に、前記乗員の認証を行うことと、
前記乗員の認証において、正しく認証されたと判定された場合は、前記非常状態対応処理をキャンセルすることと、
を実行するように構成され
、
前記非常状態は、前記乗員によるテイクオーバー操作が一定時間を超えて継続している状態、前記MaaS車両が運行設計領域から一定距離以上逸脱している状態、前記MaaS車両の前記運行設計領域からの逸脱が一定時間を超えて継続している状態、及び前記MaaS車両が予め設定された停車場所に停車していない状態、のいずれか一つ以上が発生した状態である
制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御装置であって、
前記非常状態対応処理の第一ステージとして音声による警告を行い、第二ステージとしてサイネージ表示を行い、第三ステージとして警察への通報と前記MaaS車両の停止を行う
ように構成された制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転モードを備えるMaaS車両を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、手動運転モードと自動運転モードとを備える自動運転車両において、盗難を防止するための技術を開示している。自動運転車両は、盗難状態であることを検知したときは、自動運転モードに切り替えるとともに手動運転モードへの切り替えを無効にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転車両は無人で走行されることがあるため、車両や車両に搭載された機材の盗難が危惧される。しかし、自動運転車両、特に自動運転モードを備えるMaaS車両においては、様々な乗客が出入りするため、乗客が乗車した段階で盗難を判定することはできない。乗車時にID認証を行ったとしても、ID登録されていない乗客が乗り込んだだけで直ちに盗難と断定することはできず、正確に盗難行為を判定することは困難である。
【0005】
本開示の目的は、自動運転モードを備えるMaaS車両において、車両の盗難行為が疑われる状況において、状況に応じた対応をとることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、自動運転モードを備えるMaaS車両の制御方法に関連する。
MaaS車両の制御方法は、
MaaS車両が予め定められた運転条件から外れて運転されている非常状態の発生を検知する処理と、
非常状態の発生の検知に応答して、複数のステージで構成される非常状態対応処理を予め定められた順番に従い行う処理と、
を含む
ことを特徴とする。
【0007】
第2の観点は、車両制御装置に関連する。
車両制御装置は、自動運転モードを備えるMaaS車両に搭載される。
車両制御装置は、
MaaS車両が予め定められた運転条件から外れて運転されている非常状態の発生を検知することと、
非常状態の発生の検知に応答して、複数のステージで構成される非常状態対応処理を予め定められた順番に従い行うことと、
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、自動運転モードを備えるMaaS車両において、盗難行為が疑われる非常状態が発生した場合に、複数のステージからなる対応処理を実行することによって、状況に応じた対応をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る制御方法の概要を説明するための概念図である。
【
図2】本実施の形態に係る制御方法を一般化した例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施の形態に係る制御方法を実現する構成例を示すブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る制御方法の具体化例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係る制御方法の具体化例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
1.概要
本実施の形態に係る制御方法は、MaaS(Mobility as a Service)車両の制御方法である。MaaS(Mobility as a Service)車両は、自動運転バスなどの定期運行車両や、オンデマンドで運行する車両などのMaaSのシステムとしての車両である。MaaS車両の乗員としては、MaaS車両の利用者である乗客の他に、車両の管理者、整備員、車両の走行の監視や運転を行うドライバーなどが想定される。MaaS車両に対し、個人が所有する車両をPOV(Personally owned vehicle)という。本実施の形態に係る制御方法は、MaaS車両の中でも特に自動運転モードを備えたMaaS車両の制御方法である。以下、特に断りのない限り、MaaS車両とは自動運転モードを備えたMaaS車両を指すものとする。また、MaaS車両を単に車両と言う場合もある。
【0011】
車両が自動運転モードにより走行する場合は、ドライバーは乗車しないことがある。そのため、走行中に車両や車両に搭載された機材が盗難の被害にあう恐れがある。また、自動運転車両には高価な機材が多く搭載されることから、盗難の恐れは更に高くなる。しかし、MaaS車両においては、POVと異なり、様々な乗員が出入りするため、乗員の乗車時に盗難を判定することは困難である。ID登録などによる利用者の認証を行ったとしても、登録されていない乗客が乗車した時点ですぐに盗難と断定することはできない。また、MaaS車両には様々な乗客が同時に乗車することがあるため、強制的な目的地の変更などの車両制御を行うと、多数の乗客に影響を与える可能性がある。たとえ不審な乗客が乗車したとしても、大きな問題が起こっていない時点ですぐに盗難と断定して車両の制御を行うのは、周囲への影響が大きく、好ましくない。そのため、どのタイミングで車両や機材の盗難が発生したとみなし、どのタイミングで車両の制御などの盗難に対処するための対応を行うかが重要となる。
【0012】
MaaS車両が自動運転モードにより運用される場合は、運転条件が予め定められ、車両は運転条件に従って運行を行う。運転条件の例としては、車両が走行するエリア、車両の走行経路、停車するバス停が挙げられる。例えば、
図1の(a)に示すように、車両が停車する所定のバス停301,302が予め設定され、乗客201は設定されたバス停301でMaaS車両100に乗り込む。乗客201を乗せたMaaS車両100は、設定された走行経路400に従って走行し、次のバス停302へと向かう。このような運転条件は、利用者の要求に基づいて、車両を管理する管理サーバが設定しても良い。
【0013】
車両は、正常に運用されている状態であれば、予め定められた運転条件に従って運行する。逆に、車両が予め定められた運転条件から外れて運転されている場合、盗難などが発生している可能性が高い。例えば、
図1の(b)に示すように車両100が運行設計領域から大きく外れた場合は、乗員による、盗難などを目的とした自動運転モードへの介入が行われている可能性が高い。また、
図1の(c)に示すように車両100が予め定められた停車場所(例えば乗客202が待つバス停302)に停車せずに走行を続けている場合も、盗難などの目的を持った乗員による自動運転モードへの介入が行われている可能性が高い。
【0014】
そこで、本実施の形態に係る制御方法では、車両が予め定められた運転条件から外れて運転されている状態を非常状態とし、非常状態の発生を検知する。さらに、非常状態の発生の検知に応答して、盗難などの事態に対応するための処理を行う。非常状態の発生に検知に応答して行う処理を、非常状態対応処理と呼ぶ。
【0015】
盗難などの事態に対応する手段として、例えば、盗難につながる行為をやめさせるような警告を発すること、車両を強制的に停止させて車両や機材が持ち去られるのを防ぐこと、が挙げられる。しかし、対応手段によって、MaaS車両に乗車している周囲の乗客や周囲の車両への影響の大きさや、盗難行為を行っている人物に対する警告の強さは異なる。MaaS車両には様々な乗客が乗車するため、周囲への影響の小さい手段のみによって盗難行為を防ぐことができる場合には、周囲への影響の大きい手段は使用しないことが望ましい。
【0016】
そこで、本実施の形態に係る制御方法においては、非常状態対応処理が複数のステージで構成される。ステージによって、警告の強さ、周囲の乗員や周囲の車両への影響の大きさ、乗員に対する強制力の強さなどで表されるステージの強さは異なる。各ステージは、最初に弱いステージが開始し、次第により強いステージに変わっていくように、予め決められた順番に従って行われる。
【0017】
本実施の形態に係る制御方法は、例えば、
図2に示すフローチャートにより実現される。ステップS101において、乗員が乗車する。乗員が乗車すると、処理は、ステップS102に進む。
【0018】
ステップS102において、車両が非常状態か否かが判定される。非常状態の具体的内容について限定はない。車両が非常状態の場合(ステップS102;Yes)、処理は、ステップS103に進む。車両が非常状態でない場合(ステップS102;No)、処理は、終了する。
【0019】
ステップS103においては、非常状態対応処理の第一ステージが行われる。その後、処理は、ステップS104に進む。ステップS104において、車両が非常状態か否かが再び判定される。非常状態が継続している場合(ステップS104;Yes)、処理は、ステップS105に進む。車両が非常状態でなくなっている場合(ステップS104;No)、処理は、終了する。
【0020】
ステップS105においては、非常状態対応処理の第二ステージが行われる。第二ステージは、第一ステージよりも強いステージである。ステップS104及びステップS105と同様の処理がN-2回繰り返された後、処理は、ステップS106に進む。Nは2以上の整数である。
【0021】
ステップS106において、車両が非常状態か否かが再び判定される。非常状態が継続している場合(ステップS106;Yes)、処理は、ステップS107に進む。車両が非常状態でなくなった場合(ステップS106;No)、処理は、終了する。
【0022】
ステップS107においては、非常状態対応処理の第Nステージが行われる。第Nステージは、最も強いステージである。その後、処理は終了する。
【0023】
このフローチャートでは、非常状態対応処理はN個のステージからなる。例えば、N=4のとき、強制力を伴わない比較的弱い警告を第一ステージとし、第二ステージでは第一ステージよりも強い警告を行い、第三ステージでは第二ステージよりもさらに強い警告を行い、第四ステージでは車両の進路を変更するような強制的な制御を行うことが想定される。次第に強い処理となるように順番が定められたN個のステージからなる非常状態対応処理を行うことにより、状況に応じた適切な対応を行うことができる。
【0024】
図2のフローチャートでは、途中で非常状態が解消した場合はステージの途中で非常状態対応処理を終了する。このように、非常状態対応処理の複数のステージは、非常状態が検知されなくなったときはステージの途中で終了するように構成されても良い。非常状態が検知されなくなった時点で非常状態対応処理が終了するように構成されることで、比較的強いステージは必要な場合にのみ実行され、周囲への影響を最小限に抑えることができる。
【0025】
あるステージから次のステージへの移行は、経過時間によって決められても良いし、車両の走行距離によって決められても良い。例えば、あるステージを開始してからの時間が所定時間を超えた時点で次のステージを開始しても良いし、あるステージを実行中に車両が移動した距離が所定距離を超えた時点で次のステージを開始しても良い。あるいは、例えば、車両が走行経路から逸脱している場合は、走行経路からの逸脱距離に応じて次のステージに移行しても良い。また、あるステージが開始したときに、前のステージを継続して同時に行っても良いし、前のステージを停止しても良い。
【0026】
2.構成例
図3は、本実施の形態に係る制御方法における構成例を示すブロック図である。制御装置10は、本実施の形態に係る制御方法を実現する装置であり、車両に搭載される。制御装置10は、プロセッサ11、記憶装置12を備える。本実施の形態に係る制御方法における処理は、プロセッサ11が記憶装置12に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0027】
センサ群1、通信装置2、車両制御装置3、音声出力装置4、表示装置5、及び記憶装置6は、制御装置10が搭載される車両が備えている。制御装置10は、センサ群1、通信装置2、車両制御装置3、音声出力装置4、表示装置5、及び記憶装置6と通信可能に構成される。
【0028】
センサ群1は、車両の情報を取得する。車両の情報としては、自動運転モードへの介入が行われているか否かなどの、車両の制御状態についての情報が例示される。通信装置2は、車両の外部と通信可能に構成される。通信装置2は、外部のサーバからGPS情報を取得しても良いし、警察への通報を行うことができるように構成されても良い。管理サーバが運転条件を設定する場合は、通信装置2により管理サーバとの通信が行われる。車両制御装置3は、車両の制御を行う。例えば、非常状態対応処理のステージの一つとして車両の停止を行う場合、車両制御装置3が、アクセルやブレーキを制御することで車両を安全な場所へ停止させる。音声出力装置4は、音声を出力する。例えば、非常状態対応処理のステージの一つとして音声による警告を行う場合、音声出力装置4が警告を発出する。表示装置5は、画像や映像による車内外への表示を行う。例えば、非常状態対応処理のステージの一つとしてサイネージ表示を行う場合、表示装置5が表示を行う。記憶装置6は、種々の情報を記憶する。記憶装置6は、例えば、車両の運転条件についての情報を格納しても良いし、走行経路の地図情報を格納しても良い。
【0029】
3.非常状態の発生の検知方法の具体例
まず、非常状態は、例えば次のような状態として設定することができる。第1の状態は、乗員によるテイクオーバー操作が一定時間を超えて継続している状態である。第2の状態は、車両がODD(Operational Design Domain)から一定距離以上逸脱している状態、或いは車両がODDから逸脱し、逸脱が一定時間を超えて継続している状態である。第3の状態は、車両が予め設定された停車場所に停車していない状態である。これらのいずれか一つ以上が発生している状態を非常状態としても良い。非常状態をこのような状態として設定することで、より精度高く盗難行為を判定することができる。
【0030】
自動運転モードで走行している車両を意図的に手動運転に切り替えることをテイクオーバー操作と呼ぶ。自動運転モードで走行中の車両は、ハンドル、ブレーキ、アクセル、緊急スイッチなどの、手動運転への切り替えや自動運転モードへの介入を可能にする手段を搭載している。これらの手段は、車両の自動運転モードだけでは対応できない想定外の事態が発生し、人為的な操作で想定外の事態を回避する必要がある場面などに備えて搭載される。乗員によるテイクオーバー操作が発生し、一定時間内に終了した場合は、想定外の事態回避などを目的としている可能性が高く、盗難行為が発生したと判断することはできない。しかし、テイクオーバー操作が一定時間を超えて継続した場合は、乗員による盗難行為などが発生している可能性が高く、対応が必要となる。そのため、本実施の形態に係る制御方法においては、乗員によるテイクオーバー操作が一定時間を超えて継続している状態を非常状態としても良い。
【0031】
MaaS車両が走行する領域として定められた領域を運行設計領域、又はODDという。ODDは、例えば、車両が走行する道路やエリアとして定められる。車両が正常に運行している場合は、ODDから外れることがあっても、自動運転モードによって短時間で復帰する。しかし、車両がODDから大きく外れたり、ODDから外れたあと長時間復帰しなかったりした場合は、乗員による、盗難などを目的とした自動運転モードへの介入が行われている可能性が高い。そのため、本実施の形態に係る制御方法においては、車両がODDから一定距離以上逸脱している状態や、車両がODDから逸脱し、逸脱が一定時間を超えて継続している状態を、非常状態としても良い。例えば、車両がODDから1キロメートル以上逸脱している状態や、車両がODDから1時間以上継続して逸脱している状態を非常状態とすることが想定される。
【0032】
MaaS車両は、乗客の乗り降りのために予め定められた停車場所で停車する。例えば、MaaS車両が定期運行車両の場合、バス停が停車場所として定められる。MaaS車両がオンデマンド車両の場合は、乗客が事前に、あるいは乗車中に、乗車場所や降車場所としてリクエストした場所が停車場所となる。オンデマンド車両の場合であっても、停車場所はバス停であっても良い。車両が予め定められた停車場所に停車せずに走行を続けている場合、盗難などの目的を持った乗員による自動運転モードへの介入が行われている可能性が高い。そのため、本実施の形態に係る制御方法においては、車両が予め設定された停車場所に停車していない状態を非常状態としても良い。
【0033】
4.非常状態対応処理の具体例
次に、非常状態対応処理の例について説明する。非常状態対応処理の第一ステージとしては、例えば音声による警告が好適である。第二ステージとしては、例えばサイネージ表示が好適である。第三ステージとしては、例えば警察への通報と車両の停止が好適である。
【0034】
音声による警告は、乗員への警告として車内に発出される。音声による警告の例としては、自動運転モードへ復帰するためのスイッチを操作するように促す音声や、ハンドルから離れる様に呼びかける音声が想定される。音声による警告は、ブザーなどの音と組み合わせて発出されても良い。
【0035】
サイネージ表示は、映像などの視覚的な表示のことである。サイネージ表示は、車内に向けての表示であっても、車外に向けての表示であっても、両方の組み合わせであっても良い。サイネージ表示の例として、車内の乗員に対する自動運転モードへの介入をやめるように促す表示や、車外に対するSOSを求める表示が想定される。サイネージ表示を行うステージは、音声による警告のステージと比較して強いステージである。
【0036】
警察への通報や車両の停止は、サイネージ表示を行うステージよりもさらに強いステージである。車両の停止は、手動運転モードへの切り替えを無効にし、車両を強制的に自動運転モードに切り替えてアクセルやブレーキを制御することにより行われる。
【0037】
音声による警告を第一ステージとして行い、音声による警告よりも強い、サイネージ表示を第二ステージとして行い、さらに強い警察への通報と車両の停止を第三ステージとして行うことで、非常状態対応処理が次第に強いステージとなるように構成することができる。このとき、それぞれのステージの中で処理の強さを変えても良い。例えば、乗員によるテイクオーバー操作が一定時間を超えて継続し、非常状態対応処理の第一ステージとして音声による警告を行う場合、テイクオーバー操作の継続時間に応じて警告の強さを変えても良い。
【0038】
以上に説明したような非常状態対応処理は、乗員による車両の盗難以外の理由により非常状態が発生した場合にも有効である。盗難以外の理由で非常状態が発生する場合としては、車両の不具合や、乗員による誤操作が例示される。例えば、車両の不具合により、車両がODDから一定距離以上逸脱した場合に、車内に向けてサイネージ表示を出すことで、乗員にODDへ復帰するための操作を行うよう促すことができる。あるいは、例えば、乗員が誤ってハンドルに触れてしまったことによりテイクオーバー操作が一定時間を超えて継続した場合に、音声による警告やサイネージ表示を出すことで、乗員に誤操作をやめるように促すことができる。
【0039】
5.認証処理
非常状態対応処理は一定の条件下でキャンセルさせることができる。例えば、乗員の乗車時、又は乗車後に乗員の認証を行い、正しく認証された場合は非常状態対応処理をキャンセルしても良い。認証を行う方法としては、ID認証や顔認証が例示される。例えば、ID認証や顔認証により、乗員が事前に登録された利用者と一致するか否かの判定を行い、一致する場合は正しく認証されたと判定しても良い。乗客は通常、バス停などで乗車するため、バス停において認証を行っても良い。MaaS車両の乗員は、業務などの目的で、予め定められた運転条件から外れるように車両を操作することがある。例えば、車両メンテナンスの目的で、乗員が車両を手動運転し、ODD外へ持ち出すことがある。認証を行うことにより、このような場面における非常状態の発生の検知をキャンセルすることができる。乗員が正しく認証されなかった場合は、「4.非常状態対応処理の具体例」で説明したとおり、非常状態の発生の検知に応答して、非常状態対応処理が行われる。
【0040】
6.本実施の形態に係る制御方法の具体化例
図4及び
図5は、本実施の形態に係る制御方法の全体的な具体化例を示すフローチャートである。
図4及び
図5に示すAは、
図4と
図5の間で対応しており、
図4及び
図5は1つのフローチャートを示している。
図4におけるT/Oはテイクオーバーを示している。
【0041】
ステップS201において、乗員が乗車する。乗員が乗車すると、処理は、ステップS202に進む。
【0042】
ステップS202において、乗員の認証が行われる。乗員が正しく認証されない場合(ステップS202;No)、処理は、ステップS203に進む。乗員が正しく認証された場合(ステップS202;Yes)、処理は、終了する。ステップS202における認証は、乗員によって判断の厳しさを変えても良い。例えば、乗客は顔認証のみ行い、管理者は顔認証とID認証いずれもクリアした場合にのみ正しく認証されたと判定しても良い。
【0043】
ステップS203において、テイクオーバー操作が一定時間を超えて継続しているか否かが判定される。テイクオーバー操作が一定時間を超えて継続している場合(ステップS203;Yes)、処理は、ステップS206に進む。テイクオーバー操作が一定時間を超えて継続していない場合(ステップS203;No)、処理は、ステップS204に進む。ステップS203の判定は、例えば、センサ群1が取得した、車両の制御情報と経過時間についての情報に基づいて、プロセッサ11が判定を行うことにより実現される。
【0044】
ステップS204において、車両がODDから一定の距離以上逸脱しているか否かが判定される。ODDから逸脱していない、又は逸脱が一定の距離以下の場合(ステップS204;No)、処理は、ステップS205に進む。ODDから一定の距離以上逸脱している場合(ステップS204;Yes)、処理は、ステップS206に進む。ステップS204の判定は、例えば、センサ群1が取得した道路情報と、記憶装置6に格納された走行経路情報とに基づきプロセッサ11が判定を行うことにより実現される。あるいは、通信装置2が取得したGPS情報と、記憶装置6に格納された地図情報に基づきプロセッサ11が判定を行うことにより実現されても良い。
【0045】
ステップS205において、車両がバス停に停車したか否かが判定される。車両がバス停に停車していない場合(ステップS205;No)、処理は、ステップS206に進む。車両がバス停に停車した場合(ステップS205;Yes)、処理は、終了する。ステップS205の判定は、例えば、センサ群1が取得した道路情報と、記憶装置6に格納された走行経路情報とに基づきプロセッサ11が判定を行うことにより実現される。ステップS203からステップS205の処理は、非常状態の発生の検知方法を具体化した例を示している。
【0046】
ステップS206において、音声による警告が行われる。その後、処理は、ステップS207に進む。ステップS206の処理は、例えば、プロセッサ11が、音声出力装置4に警告を出させるための処理を行うことにより実現される。
【0047】
ステップS207において、非常状態が発生しているか否かが再び判定される。引き続き、非常状態の発生が検知される場合(ステップS207;Yes)、処理は、ステップS208に進む。非常状態の発生が検知されなくなった場合(ステップS207;No)、処理は、終了する。
【0048】
ステップS208において、サイネージ表示が行われる。その後、処理は、ステップS209に進む。ステップS208の処理は、例えば、プロセッサ11が、表示装置5に映像を表示させるための処理を行うことにより実現される。
【0049】
ステップS209において、非常状態が発生しているか否かが再び判定される。引き続き非常状態の発生が検知される場合(ステップS209;Yes)、処理は、ステップS210に進む。非常状態の発生が検知されなくなった場合(ステップS209;No)、処理は、終了する。ステップS207、ステップS209における、非常状態が継続しているか否かの判定は、ステップS203からステップS205と同様の処理を再び行っても良い。
【0050】
ステップS210において、警察への通報が行われる。その後、処理はステップS211に進む。ステップS211において、車両の停止が行われる。その後、処理は終了する。ステップS210の処理は、例えば、プロセッサ11が、通信装置2に通報をさせるための処理を行うことにより実現される。ステップS211の処理は、例えば、プロセッサ11が、車両制御装置3に車両を制御させるための処理を行うことにより実現される。
【0051】
ステップS206からステップS211は、非常状態対応処理を具体化した例を示している。非常状態対応処理の第一ステージとして音声による警告が行われ、第二ステージとしてサイネージ表示が行われ、第三ステージとして警察への通報と車両の停止が行われる。非常状態対応処理を、音声による警告から開始して次第に強い処理に移行していくことにより、警察への通報や車両の停止などは必要な場合にのみ行い、影響を最小限に抑えることができる。このフローチャートにおいては、警察への通報を行った後に車両の停止を行っているが、同じステージの処理は、いずれの順番で行っても良い。例えば、車両の停止を行った後に警察への通報を行っても良い。
【0052】
7.効果
以上に説明したように、本実施の形態に係る制御方法により、高い精度で盗難行為を判定し、盗難行為が発生したと判定された場合に、複数のステージから成る対応処理を実行し、状況に応じた適切な対応を行うことができる。さらに、盗難行為以外の原因により車両が運転条件から外れた場合においても、状況に応じた適切な対応を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 センサ群
2 通信装置
3 車両制御装置
4 音声出力装置
5 表示装置
6 記憶装置
10 制御装置
11 プロセッサ
12 記憶装置
100 MaaS車両
201,202 乗客
301,302 バス停
400 走行経路