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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20250527BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B60C9/20 G
B60C9/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021521443
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035738
(87)【国際公開番号】W WO2021079672
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019194501
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 郭葵
(72)【発明者】
【氏名】山口 栄士
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-156418(JP,A)
【文献】特開2013-122038(JP,A)
【文献】特開2014-095017(JP,A)
【文献】特開2017-178994(JP,A)
【文献】特開2001-080313(JP,A)
【文献】特開昭60-061312(JP,A)
【文献】特開2017-048351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の内部にベルト層が配されたタイヤであって、
前記ベルト層は、少なくとも1枚のベルトプライを含み、
前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線からなるベルトコードと、前記ベルトコードを被覆するトッピングゴムとを含み、
前記トッピングゴムは、70℃における複素弾性率ES*が14.0~20.0MPaであり、かつ、70℃における損失正接tanδが0.04~0.06であり、
前記トッピングゴムの前記損失正接tanδと前記複素弾性率ES*(MPa)との比(tanδ/ES*)が、0.002~0.017であり、
前記トレッド部は、トレッド接地面を形成するトレッドゴムを含み、
前記トレッドゴムの70℃における複素弾性率ET*が4.5~10.0MPaであり、かつ、70℃における損失正接tanδが0.08~0.15である、
タイヤ。
【請求項2】
前記スチール単線は、断面形状における長径LDと短径SDとの比(LD/SD)が1.05~1.35であり、かつ、前記長径LDが0.30~0.50mmである、請求項に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記スチール単線は、断面形状における長径方向及び短径方向の少なくとも一方に波付けされており、
前記スチール単線の波付けピッチPが、3.0~10.0mmであり、
前記スチール単線の波付け高さHが、0.05~0.15mmである、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトコードは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に沿うように前記トッピングゴム内に配されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トッピングゴムは、コバルト元素を含み、
前記コバルト元素の濃度c(ppm)と前記スチール単線の断面形状における外周長L(mm)との比(c/L)は、350~1000ppm/mmである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にベルト層を備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト層に断面偏平形状のスチール単線からなるベルトコードを用いたタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1には、特定の長径と短径とを有するスチール単線からなるベルトコードを、特定の複素弾性率を有するコードトッピングゴムで被覆したベルト層を備えた空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4467107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタイヤは、軽量化による低燃費性能、ノイズ性能及び乗り心地性能をバランスよく改善することを期待している。しかしながら、近年、低燃費性能に対する要求が高くなり、特許文献1のタイヤにおいても、更なる改善が期待されていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、良好なノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能を維持させつつ、低燃費性能を向上させ得るベルト層を備えたタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部の内部にベルト層が配されたタイヤであって、前記ベルト層は、少なくとも1枚のベルトプライを含み、前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線からなるベルトコードと、前記ベルトコードを被覆するトッピングゴムとを含み、前記トッピングゴムは、70℃における複素弾性率ES*が8.0~20.0MPaであり、かつ、70℃における損失正接tanδが0.04~0.16であり、前記トッピングゴムの前記損失正接tanδと前記複素弾性率ES*(MPa)との比(tanδ/ES*)が、0.002~0.017であることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記トッピングゴムは、70℃における損失正接tanδが0.04~0.09であるのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記トッピングゴムの70℃における損失正接tanδが、0.04~0.06であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記トッピングゴムは、70℃における複素弾性率ES*が14.0~20.0MPaであるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記スチール単線は、断面形状における長径LDと短径SDとの比(LD/SD)が1.05~1.35であり、かつ、前記長径LDが0.30~0.50mmであるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記スチール単線は、断面形状における長径方向及び短径方向の少なくとも一方に波付けされており、前記スチール単線の波付けピッチPが、3.0~10.0mmであり、前記スチール単線の波付け高さHが、0.05~0.15mmであるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記ベルトコードは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に沿うように前記トッピングゴム内に配されているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記トッピングゴムは、コバルト元素を含み、前記コバルト元素の濃度c(ppm)と前記スチール単線の断面形状における外周長L(mm)との比(c/L)は、350~1000ppm/mmであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤにおいて、ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線からなるベルトコードと、前記ベルトコードを被覆するトッピングゴムとを含み、前記トッピングゴムは、70℃における複素弾性率ES*が8.0~20.0MPaであり、かつ、70℃における損失正接tanδが0.04~0.16であり、前記トッピングゴムの前記損失正接tanδと前記複素弾性率ES*(MPa)との比(tanδ/ES*)が、0.002~0.017である。
【0015】
このようなトッピングゴムは、走行時の発熱を抑制し、タイヤのノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能に影響を与えることなく、タイヤの低燃費性能を向上させることができる。このため、本発明のタイヤは、良好なノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能を維持しつつ、低燃費性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2】ベルトプライの断面図である。
図3】スチール単線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1の正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、乗用車等に装着されるゴム製の空気入りタイヤとして好適に用いられる。なお、タイヤ1は、乗用車用のゴム製空気入りタイヤに特定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤや樹脂製の空気入りタイヤ、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに応用され得る。
【0018】
ここで、「正規状態」とは、タイヤ1がゴム製空気入りタイヤの場合、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0019】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、環状に延びるトレッド部2と、トレッド部2の両側に延びる一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3に連なって延びる一対のビード部4とを含んでいる。本実施形態のタイヤ1は、一対のビード部4のビードコア5間に跨って延びるトロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7とを有している。
【0022】
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカスプライ6Aは、例えば、タイヤ周方向に対して75~90°の角度で配されたカーカスコード(図示省略)を含んでいる。カーカスコードとしては、例えば、芳香族ポリアミド、レーヨン等の有機繊維コードが採用され得る。
【0023】
カーカスプライ6Aは、例えば、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aに連なり、かつ、ビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含んでいる。カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間には、例えば、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム8が配されている。
【0024】
ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ7A、7Bを含んでいる。2枚のベルトプライ7A、7Bは、例えば、タイヤ半径方向内側に位置する第1ベルトプライ7Aと、第1ベルトプライ7Aの外側に位置する第2ベルトプライ7Bとを含んでいる。このようなベルト層7は、トレッド部2の剛性を高め、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0025】
図2は、ベルトプライ7Aの拡大断面図である。図2では、ベルトプライ7Aが例示されているが、ベルトプライ7Bも同様の構造を採用することができる。図2に示されるように、本実施形態のベルトプライ7A、7Bの少なくとも1枚は、断面偏平形状のスチール単線9Aからなるベルトコード9と、ベルトコード9を被覆するトッピングゴム10とを含んでいる。
【0026】
トッピングゴム10は、好ましくは、70℃における複素弾性率ES*が8.0~20.0MPaであり、かつ、70℃における損失正接tanδが0.04~0.16である。このようなトッピングゴム10は、走行時の発熱を抑制し、ノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能に影響を与えることなく、タイヤ1の低燃費性能を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、良好なノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能を維持しつつ、低燃費性能を向上することができる。
【0027】
ここで、トッピングゴム10の70℃における複素弾性率ES*及び損失正接tanδは、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、GABO社製動的粘弾性測定装置(イプレクサーシリーズ)を用いて測定された値である。
初期歪:10%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0028】
トッピングゴム10の70℃における複素弾性率ES*は、より好ましくは、14.0~20.0MPaである。このようなトッピングゴム10は、ベルト層7の変形を抑制し、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。一方、トッピングゴム10は、70℃における複素弾性率ES*が8.0~14.0MPaであると、ノイズ性能及び乗り心地性能を向上させることができる。
【0029】
トッピングゴム10の70℃における損失正接tanδは、より好ましくは、0.04~0.14であり、さらに好ましくは、0.04~0.09であり、最も好ましくは、0.04~0.06である。このようなトッピングゴム10は、走行時の発熱をさらに抑制し、ノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能に影響を与えることなく、タイヤ1の低燃費性能をより向上させることができる。
【0030】
トッピングゴム10の損失正接tanδと複素弾性率ES*(MPa)との比(tanδ/ES*)は、0.002~0.017であるのが望ましい。このようなトッピングゴム10は、走行時の発熱を抑制し、ノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能に影響を与えることなく、タイヤ1の低燃費性能を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、良好なノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能を維持しつつ、低燃費性能を向上することができる。
【0031】
トッピングゴム10に用いられるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。トッピングゴム10は、耐久性能の観点から、天然ゴム(NR)又は天然ゴム(NR)とイソプレンゴム(IR)とを併用することが好ましい。
【0032】
トッピングゴム10は、ゴム中にコバルト元素を含むのが望ましい。コバルト元素を含む化合物としては、例えば、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ素三ネオデカン酸コバルト等の有機酸コバルト塩が挙げられる。このようなトッピングゴム10は、加硫成形時にコバルト元素によりベルトコード9との架橋が促進され、ベルトコード9との接着性を向上させることができる。
【0033】
トッピングゴム10は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの含有量は、耐久性能の観点からゴム成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。一方、発熱性の観点から、カーボンブラックの含有量の上限としては、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であるとより好ましい。
【0034】
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイト等を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、例えば、30m/g超、250m/g未満である。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、例えば、50ml/100g超、250ml/100g未満である。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定され、DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。
【0036】
具体的なカーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
トッピングゴム10は、必要に応じて、さらに、シリカを含むことが好ましい。シリカのBET比表面積は、良好な耐久性能が得られる観点から、140m/g超が好ましく、160m/g超がより好ましい。一方、良好な低燃費性を得る観点から、シリカのBET比表面積の上限としては、250m/g未満が好ましく、220m/g未満であることがより好ましい。なお、このBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定されるNSAの値である。
【0038】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、シランカップリング剤と併用しない場合においては、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。一方、シランカップリング剤と併用しない場合のシリカの含有量の上限としては、25質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。また、シランカップリング剤との併用を行う場合には、25質量部以上が好ましい。一方、シランカップリング剤との併用を行う場合のシリカの含有量の上限としては、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0039】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)等が挙げられる。シリカとしては、これらの中でも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0040】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0041】
上述したように、シリカの使用に際しては、シランカップリング剤を併用することも可能である。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Z等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0043】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、3質量部超、15質量部未満である。
【0044】
トッピングゴム10は、カーボンブラック、シリカの他に、タイヤ工業において一般的に用いられている、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤をさらに含有してもよい。これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
【0045】
トッピングゴム10は、変性レゾルシン樹脂、変性フェノール樹脂等の硬化性樹脂成分を含有することが好ましい。これにより、発熱性、破断時伸びを大きく悪化させることなく、スチールコードとの接着性を改善することができる。
【0046】
硬化性樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。一方、硬化性樹脂成分の含有量の上限としては、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0047】
具体的な変性レゾルシン樹脂としては、例えば、田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシン樹脂)等が挙げられ、変性フェノール樹脂としては、例えば、住友ベークライト(株)製のPR12686(カシューオイル変性フェノール樹脂)等が挙げられる。
【0048】
変性レゾルシン樹脂の使用に際しては、硬化剤として、メチレン供与体を併せて含有することが好ましい。メチレン供与体としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)やヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)等が挙げられ、硬化性樹脂成分100質量部に対して、5質量部以上、例えば、15質量部程度含有されることが好ましい。
【0049】
具体的なメチレン供与体としては、例えば、田岡化学工業(株)製のスミカノール507等を使用できる。
【0050】
トッピングゴム10は、加工性(粘着性付与)の観点から、必要に応じて、オイルや樹脂成分等の軟化剤を含有することが好ましい。これらの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部超、10質量部未満が好ましい。
【0051】
オイルとしては、例えば、鉱物油(一般にプロセスオイルと言われる)、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。鉱物油(プロセスオイル)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
具体的なプロセスオイル(鉱物油)としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0053】
樹脂成分は、常温で固体であっても、液体であってもよく、具体的な樹脂成分としては、例えば、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が挙げられ、2種以上を併用してもよい。樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部超で、45質量部未満が好ましく、30質量部未満がより好ましい。
【0054】
ロジン系樹脂は、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とする樹脂である。このロジン系樹脂(ロジン類)は、変性の有無によって分類可能であり、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(ロジン誘導体)に分類できる。無変性ロジンとしては、トールロジン(別名トール油ロジン)、ガムロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等が挙げられる。ロジン変性体は無変性ロジンの変性体であって、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩等が挙げられる。
【0055】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的なスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0056】
他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレン等のジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0057】
クマロン系樹脂の中でも、クマロンインデン樹脂が好ましい。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0058】
クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1.0質
量部超、50.0質量部未満である。
【0059】
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、例えば、15mgKOH/g超、150mgKOH/g未満である。なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0060】
クマロンインデン樹脂の軟化点は、例えば、30℃超、160℃未満である。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0061】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)等に分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール等が挙げられる。
【0062】
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂等のテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。テルペンフェノールとしては、テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的なテルペンフェノールとしては、テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノール等のフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトール等のナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレン等のスチレン誘導体;クマロン、インデン等が挙げられる。
【0063】
「C5樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0064】
「C9樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、及び芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体又はα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0065】
「C5C9樹脂」とは、C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分及びC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0066】
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、無溶剤型アクリル系樹脂を使用できる。
【0067】
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒等を極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0068】
アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステル等)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体等の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0069】
また、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ビニルを使用してもよい。
【0070】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であってもよい。また、アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてもよい。
【0071】
樹脂成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0072】
トッピングゴム10は、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超、10質量部未満である。
【0073】
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレキシス社等の製品を使用できる。
【0075】
トッピングゴム10は、ステアリン酸を含んでもよい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、10.0質量部未満である。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0076】
トッピングゴム10は、酸化亜鉛を含んでもよい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、15質量部未満である。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0077】
トッピングゴム10は、硫黄等の架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、10.0質量部未満である。
【0078】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレキシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0080】
硫黄以外の架橋剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のデュラリンク HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0081】
トッピングゴム10は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.3質量部超、10.0質量部未満である。
【0082】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
トッピングゴム10に用いられるベルト用ゴム組成物は、これらの成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、脂肪酸金属塩、カルボン酸金属塩、有機過酸化物等をさらに配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
【0084】
上述のコバルト元素の濃度c(ppm)とスチール単線9Aの断面形状における外周長L(mm)との比(c/L)は、好ましくは、350~1000ppm/mmである。比(c/L)が350ppm/mm以上であることで、ベルトコード9との接着性を向上させ、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。比(c/L)が1000ppm/mm以下であることで、ベルトコード9との接着層が脆くなることを抑制し、タイヤ1の回転による繰り返し変形が作用したとしても剥離が抑制され、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、比(c/L)は、より好ましくは、400~740ppm/mmである。
【0085】
本実施形態のベルトコード9は、スチール単線9Aの短径方向がベルトプライ7A、7Bの厚さ方向に沿うようにトッピングゴム10内に配されている。このようなベルトコード9は、ベルトプライ7A、7Bの厚さを小さくしつつ、トレッド部2の剛性を維持させることができ、タイヤ1の軽量化に伴う低燃費性能と耐久性能とを両立させることに役立つ。
【0086】
スチール単線9Aは、好ましくは、断面形状における長径LDと短径SDとの比(LD/SD)が1.05~1.35である。スチール単線9Aの比(LD/SD)が1.05よりも小さいと、ベルト層7の剛性が過度に高くなり、タイヤ1のノイズ性能及び乗り心地性能が改善されないおそれがある。スチール単線9Aの比(LD/SD)が1.35よりも大きいと、スチール単線9Aの強度が低下し、タイヤ1の耐久性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0087】
スチール単線9Aは、好ましくは、断面形状における長径LDが0.30~0.50mmである。スチール単線9Aの長径LDが0.30mmよりも小さいと、スチール単線9Aの強度が低下し、タイヤ1の耐久性能に影響を及ぼすおそれがある。スチール単線9Aの長径LDが0.50mmよりも大きいと、ベルト層7の剛性が過度に高くなり、タイヤ1のノイズ性能及び乗り心地性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0088】
図3は、スチール単線9Aの長径方向から見た模式図である。図3に示されるように、スチール単線9Aは、断面形状における長径方向及び短径方向の少なくとも一方に、本実施形態では両方に、波付けされている。このようなスチール単線9Aは、ベルト層7の剛性を適度に緩和し、タイヤ1のノイズ性能及び乗り心地性能を向上させることができる。
【0089】
スチール単線9Aの波付けピッチPは、好ましくは、3.0~10.0mmである。ここで、波付けピッチPは、波付けされたスチール単線9Aの長手方向の1ピッチの長さである。スチール単線9Aの波付けピッチPが3.0mmよりも小さいと、タイヤ1のノイズ性能及び乗り心地性能の改善効果が小さくなるおそれがある。スチール単線9Aの波付けピッチPが10.0mmよりも大きいと、スチール単線9Aの強度が低下し、タイヤ1の耐久性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0090】
本実施形態のスチール単線9Aの波付けピッチPは、スチール単線9Aの長手方向に沿って略一定である。スチール単線9Aの波付けピッチPは、例えば、スチール単線9Aの長手方向に沿って長さが変化していてもよい。
【0091】
スチール単線9Aの波付け高さHは、好ましくは、0.05~0.15mmである。スチール単線9Aの波付け高さHが0.05mmよりも小さいと、タイヤ1のノイズ性能及び乗り心地性能の改善効果が小さくなるおそれがある。スチール単線9Aの波付け高さHが0.15mmよりも大きいと、スチール単線9Aの強度が低下し、タイヤ1の耐久性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0092】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、トレッド接地面2aを形成するトレッドゴム2Aを含んでいる。トレッドゴム2Aは、好ましくは、70℃における複素弾性率ET*が4.5~10.0MPaであり、かつ、70℃における損失正接tanδが0.08~0.15である。
【0093】
ここで、トレッドゴム2Aの70℃における複素弾性率ET*及び損失正接tanδは、上述のトッピングゴム10と同様に、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、GABO社製動的粘弾性測定装置(イプレクサーシリーズ)を用いて測定された値である。
初期歪:10%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0094】
このようなトレッドゴム2Aは、走行時の発熱を抑制し、ノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能に影響を与えることなく、タイヤ1の低燃費性能をより向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、良好なノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能を維持させつつ、低燃費性能をより向上させることができる。
【0095】
トレッドゴム2Aの複素弾性率ET*とトッピングゴム10の複素弾性率ES*との比(ET*/ES*)は、1.3以下であるのが好ましい。このようなトレッド部2は、タイヤ1のノイズ性能、乗り心地性能、耐久性能及び低燃費性能をバランスよく向上させることに役立つ。
【0096】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0097】
図1のタイヤ子午線断面を有する175/70R13のサイズのタイヤが、以下の仕様に基づいて試作された。試作されたタイヤを用いて、タイヤ強度、ノイズ性能、乗り心地性能、耐久性能及び低燃費性能が評価された。製造方法及び各試作タイヤのテスト方法は、以下のとおりである。
【0098】
<ベルト用ゴム組成物の製造>
最初に、トッピングゴムに用いられるベルト用ゴム組成物の製造を行った。
【0099】
(1)配合材料
まず、以下に示す各配合材料を準備した。
【0100】
(a)ゴム成分
NR:RSS3
【0101】
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック-1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN326
(NSA:78m/g)
(ロ)カーボンブラック-2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550
(NSA:42m/g)
(ハ)硬化性樹脂成分-1:住友ベークライト(株)製のPR12686
(カシューオイル変性フェノール樹脂)
(ニ)硬化性樹脂成分-2:田岡化学工業(株)製のスミカノール620
(変性レゾルシン樹脂)
(ホ)硬化剤:田岡化学工業(株)製のスミカノール507
(メチレン供与体/樹脂硬化剤)
(ヘ)有機酸コバルト-1:DIC(株)製のCOST
(コバルト含有量:9.5質量%)
(ト)有機酸コバルト-2:DIC(株)製のDICNATE NBC-2
(ネオデカン酸ホウ素コバルト、コバルト含有量22.5質量%)
(チ)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
(リ)老化防止剤-1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
(ヌ)老化防止剤-2:川口化学工業(株)製のアンテージRD
(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
(ル)オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-140
(ヲ)架橋剤、加硫促進剤及び架橋助剤
硫黄:フレキシス(株)製 クリステックスHSOT20
(硫黄80質量%及びオイル分20質量%含む不溶性硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラー DZ
(N,N-ジシクロヘキシル-2-べンゾチアゾリルスルフェンアミド)
架橋助剤:フレキシス社製のデュラリンクHTS
【0102】
(2)ゴム組成物の製造
表1に示す各配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た。なお、各配合量は、質量部である。
【0103】
トッピングゴムの配合が表1に示される。
【表1】
【0104】
次に、得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、ベルト用ゴム組成物を得た。
【0105】
<タイヤの製造>
表2及び表3に示すスチールワイヤーを引き出して配列させ、得られたベルト用ゴム組成物を用いて、その上下に、トータル厚みが0.95mmとなるようにトッピングした後、加硫後にタイヤ周方向に対してスチールコードが24°となるように切り出してベルト部材を得た。
【0106】
その後、他のタイヤ部材と共に、ベルト部材を互いに交差するように2層貼り合わせて
未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、テストタイヤを製造した。
【0107】
<タイヤ強度>
試作タイヤを突出物で突いてタイヤがバーストするまでのエネルギーが測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほどエネルギーが大きく、タイヤ強度が高いことを示す。
【0108】
<ノイズ性能>
試作タイヤが全輪に装着された前輪駆動の小型乗用車のテスト車両にテストドライバー1名が乗車し、ロードノイズ計測路を走行したときのノイズが測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほどノイズが小さく、ノイズ性能に優れていることを示す。
【0109】
<乗り心地性能>
試作タイヤに加振機にて振動を与え、加振から振動が収束するまでの時間が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど振動収束性が良好であり、乗り心地性能に優れていることを示す。
【0110】
<耐久性能>
試作タイヤが台上耐久試験機に装着され、タイヤが破損するまでの走行距離が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど走行距離が長く、耐久性能に優れていることを示す。
【0111】
<低燃費性能>
試作タイヤが転がり抵抗試験機に装着され、荷重負荷状態で走行させたときの転がり抵抗が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れていることを示す。
【0112】
テストの結果が表2及び表3に示される。
【表2】

【表3】
【0113】
テストの結果、実施例のタイヤは、良好なノイズ性能、乗り心地性能及び耐久性能を維持しつつ、低燃費性能を向上し得ることが確認された。
【符号の説明】
【0114】
1 タイヤ
2 トレッド部
7 ベルト層
7A、7B ベルトプライ
9 ベルトコード
9A スチール単線
10 トッピングゴム
図1
図2
図3