(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 64/18 20060101AFI20250527BHJP
C08G 64/16 20060101ALI20250527BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
C08G64/18
C08G64/16
C08G64/02
(21)【出願番号】P 2021548724
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033013
(87)【国際公開番号】W WO2021059884
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019173685
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】辻村 智哉
(72)【発明者】
【氏名】下川 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】磯部 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 英文
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187876(WO,A1)
【文献】特開昭54-127455(JP,A)
【文献】特開平04-008724(JP,A)
【文献】特開平07-149888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 - 64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位(A)
(ただし、該構成単位(A)を構成するモノマーはビスフェノールAではない)、及び下記一般式(4)で表される構成単位(B)を含む、ポリカーボネート樹脂であって、
前記構成単位(B)を構成するモノマーが、ポリ-n-プロピレングリコールまたはポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、
前記ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、5,000~40,000である、前記ポリカーボネート樹脂。
【化1】
[一般式(1)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数1~7のアルコキシ基、及び炭素数7~17のアラルキル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、及び前記アラルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CO-、炭素数6~12のシクロアルキレン基、又は下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)で示される二価の基を表し、前記シクロアルキレン基は1~12個の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよく、
【化2】
(一般式(2)中、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、
R
9およびR
10における前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
9及びR
10は互いに結合して、炭素数3~20の炭素環又は炭素数1~20の複素環を形成してもよく、前記炭素環、及び前記複素環はそれぞれ置換基を有していてもよく、
nは0~20の整数を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
11及びR
12は互いに結合して、炭素数3~20の炭素環、又は炭素数1~20の複素環を形成してもよく、前記炭素環及び前記複素環は、それぞれ置換基を有していてもよい。)]
【化4】
(一般式(4)中、R
z及びR
xは
、水素原
子を示し、iは、3または4の整数を示し、pは5~600の整数を示す。)
【請求項2】
前記構成単位(A)と構成単位(B)との質量比(A/B)が、1/99~50/50である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
下記一般式(4)で表される構成単位(B)のみを含む、ポリカーボネート樹脂であって、
前記構成単位(B)を構成するモノマーが、ポリ-n-プロピレングリコールまたはポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、
前記ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、5,000~40,000である、前記ポリカーボネート樹脂。
【化5】
(一般式(4)中、R
z及びR
xは
、水素原
子を示し、iは、3または4の整数を示し、pは5~600の整数を示す。)
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が、1ppm~3000ppmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-100~140℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリカーボネート樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレングリコール又はポリ(2-メチル)エチレングリコール等をポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂に配合することが知られており、特許文献1にはこれを含有する耐γ線照射性のポリカーボネート樹脂が、特許文献2ではPMMA等に配合した帯電防止性と表面外観に優れた熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献3では、直鎖アルキル基で構成されるポリアルキレングリコールを配合することにより、透過率や色相を改良する提案がなされている。ポリテトラメチレンエーテルグリコールを配合することで透過率や黄変度(イエローインデックス:YI)に改善が見られる。
さらに、特許文献4では、ポリアルキレングリコールをジエステル化したジオールを原料(コモノマー)として用いたポリカーボネート共重合体の製造方法が記載されているが、このポリカーボネート共重合体はポリアルキレングリコールのジエステルジオールが不安定であり、耐衝撃性は不十分であり、色相や耐熱変色性も悪くなる。
【0003】
光学部品の成形には、高温のバレル温度、且つ高速射出が求められている。これに伴い、成形時に発生するガスが増加し、金型汚染が進行しやすいという問題が生じている。そのため、光学部品の成形に用いられる樹脂には優れた光学特性のみならず、高温での射出成形時のガス発生による金型汚染が少ないこと、耐衝撃性にも優れることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-22959号公報
【文献】特開平9-227785号公報
【文献】特許第5699188号公報
【文献】特開2006-016497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、ガス発生が少ないポリカーボネート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリカーボネート樹脂により、成形時のガス発生を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のポリカーボネート樹脂に関する。
<1> 下記一般式(1)で表される構成単位(A)、及び下記一般式(4)で表される構成単位(B)を含む、ポリカーボネート樹脂である。
【化1】
[一般式(1)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数1~7のアルコキシ基、及び炭素数7~17のアラルキル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、及び前記アラルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CO-、炭素数6~12のシクロアルキレン基、又は下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)で示される二価の基を表し、前記シクロアルキレン基は1~12個の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよく、
【化2】
(一般式(2)中、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、
R
9およびR
10における前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
9及びR
10は互いに結合して、炭素数3~20の炭素環又は炭素数1~20の複素環を形成してもよく、前記炭素環、及び前記複素環はそれぞれ置換基を有していてもよく、
nは0~20の整数を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
11及びR
12は互いに結合して、炭素数3~20の炭素環、又は炭素数1~20の複素環を形成してもよく、前記炭素環及び前記複素環は、それぞれ置換基を有していてもよい。)]
【化4】
(一般式(4)中、R
z及びR
xは、各々独立に、水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示し、iは、3~10の整数を示し、pは5~600の整数を示す。)
<2> 前記構成単位(A)と構成単位(B)との質量比(A/B)が、1/99~50/50である、上記<1>に記載のポリカーボネート樹脂である。
<3> 下記一般式(4)で表される構成単位(B)のみを含む、ポリカーボネート樹脂である。
【化5】
(一般式(4)中、R
z及びR
xは、各々独立に、水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示し、iは、3~10の整数を示し、pは5~600の整数を示す。)
<4> 前記ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が、1ppm~3000ppmである、上記<1>~<3>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂である。
<5> 前記一般式(4)中のiが、3又は4の整数である、上記<1>~<4>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂である。
<6> 前記ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、1,000~60,000である、上記<1>~<5>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂である。
<7> 前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-100~140℃である、上記<1>~<6>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ガス発生が少なく、各種用途に応じ樹脂設計の幅が広がるという効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の第1の実施形態は、下記一般式(1)で表される構成単位(A)、及び下記一般式(4)で表される構成単位(B)を含む、ポリカーボネート樹脂である。
【化6】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~10)のアリール基、炭素数2~7(好ましくは炭素数2~5)のアルケニル基、炭素数1~7(好ましくは炭素数1~4)のアルコキシ基、及び炭素数7~17(好ましくは炭素数7~11)のアラルキル基からなる群より選択され、好ましくは、水素原子、フェニル基、及びメチル基からなる群より選択される。より好ましくは、R
1~R
8のすべてが水素原子を表すか、あるいは、R
1又はR
3と、R
6又はR
8とがフェニル基を表し、その他が水素原子を表す。
なお、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、及び前記アラルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、当該置換基としては、フェニル基が好ましく挙げられる。
【0010】
一般式(1)中、Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CO-、炭素数6~12のシクロアルキレン基、又は下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)で示される二価の基を表し、前記シクロアルキレン基は1~12個の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよい。好ましくは、Xは、下記一般式(2)で示される二価の基、または下記一般式(3)で示される二価の基を表す。
【化7】
一般式(2)中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~5)のアルキル基、炭素数1~5(好ましくは炭素数1~3)のアルコキシ基、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~8)のアリール基、炭素数7~17(好ましくは炭素数7~10)のアラルキル基、及び炭素数2~15(好ましくは炭素数2~10)のアルケニル基からなる群より選択され、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及びフェニル基からなる群より選択される。より好ましくは、R
9及びR
10の両方ともメチル基を表す。
R
9およびR
10における前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
R
9及びR
10は互いに結合して、炭素数3~20(好ましくは炭素数5~15)の炭素環、又は炭素数1~20(好ましくは炭素数5~10)の複素環を形成してもよく、前記炭素環、及び前記複素環はそれぞれ置換基を有していてもよい。当該置換基としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、シクロドデカン基、及びノルボルナン基が好ましく挙げられる。
一般式(2)中、nは0~20の整数を表し、好ましくは0~5の整数を表し、より好ましくは0~2の整数を表す。
【0011】
【化8】
一般式(3)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基、炭素数1~7(好ましくは炭素数1~3)のアルコキシ基、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~10)のアリール基、炭素数7~17(好ましくは炭素数7~11)のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、好ましくは、水素原子及びフェニル基からなる群より選択される。より好ましくは、R
11及びR
12の両方とも水素原子を表す。
なお、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、当該置換基としては、フェニル基が好ましく挙げられる。
R
11及びR
12は互いに結合して、炭素数3~20(好ましくは炭素数3~10)の炭素環、又は炭素数1~20(好ましくは炭素数1~10)の複素環を形成してもよく、前記炭素環及び前記複素環は、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0012】
一般式(
4)で表される構成単位(
B)を構成するモノマーとしては、ポリ-n-プロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが好ましく挙げられ、より好ましくはポリ-n-プロピレングリコールである。
【化9】
一般式(4)中、R
z及びR
xは、各々独立に、水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、メチル基、またはエチル基を表す。より好ましくは、R
z及びR
xの両方とも水素原子を表す。
一般式(4)中、iは、3~10の整数を示し、好ましくは3~6の整数を示し、より好ましくは3または4を表す。
一般式(4)中、pは5~600の整数を示し、好ましくは5~550の整数を示し、より好ましくは5~500の整数を示す。
【0013】
一般式(1)で表される構成単位(A)を構成するモノマーとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、4,4'-オキシジフェノール、4,4'-ビフェノール、4,4'-チオジフェノールなどが好ましく挙げられ、より好ましくはビスフェノールA及びビスフェノールSである。特に、ビスフェノールAは、YI値が小さく、耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂が得られ、市場流通性の観点から好ましい。ビスフェノールSも、耐熱性の観点から好ましい。
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記構成単位(A)と構成単位(B)との質量比(A/B)が、1/99~50/50であることが好ましく、5/95~50/50であることがより好ましく、5/95~40/60であることがさらに好ましく、5/95~35/65であることがさらにより好ましく、10/90~30/70であることが特に好ましい。
【0015】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAに由来するカーボネート結合と、置換基を有してもよいポリ-n-プロピレングリコールに由来するカーボネート結合とを含むポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0016】
ポリカーボネート樹脂を構成するビスフェノールAとポリ-n-プロピレングリコールとの質量割合は、両者の合計100質量%基準で、ビスフェノールAが5~50質量%、ポリn-プロピレングリコールが50~95質量%であることが好ましく、より好ましくはビスフェノールAが5~40質量%、ポリ-n-プロピレングリコールが60~95質量%であり、さらに好ましくはビスフェノールAが5~35質量%、ポリ-n-プロピレングリコールが65~95質量%である。ポリ-n-プロピレングリコールが50質量%未満であると、ポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、95質量%を超えると白濁しやすい。
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂は、以下の一般式(5)で示されることが好ましく、即ち、ビスフェノールA由来のポリカーボネート単位と、ポリ-n-プロピレングリコール由来のポリカーボネート単位とから構成されるポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【化10】
一般式(5)中、R
a、R
b及びR
cは、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基を表す。mは1~3000の整数を表し、より好ましくは1~2500の整数を表す。nは5~600の整数を表し、より好ましくは5~550の整数を表す。lは1~3000の整数を表し、より好ましくは1~2500の整数を表す。
【0018】
本発明のポリカーボネート樹脂は、界面重合法や溶融重合法等の慣用の製造方法によって製造することができ、例えば、少なくともビスフェノールA、ポリn-プロピレングリコール、及びホスゲンやジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体を反応させる方法により製造することができる。
【0019】
置換基を有してもよいポリn-プロピレングリコールとしては、各種のポリ-n-プロピレングリコールが使用でき、例えば、下記一般式(6)で表されるメチレン基が置換基を有していてもよいポリn-プロピレングリコールが好ましいものとして挙げられる。
【0020】
【化11】
一般式(6)中、R
a、R
b及びR
cは、各々独立に水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基を表す。nは6~600の整数を示し、より好ましくは6~550の整数を示す。
ポリn-プロピレングリコールとしては、上記一般式(6)中、R
bがメチル基である(2-メチル)-n-プロピレングリコールやエチル基である(2-エチル)-n-プロピレングリコール、R
a、R
b及びR
cのいずれもが水素原子であるn-プロピレングリコールがより好ましく、中でもR
a、R
b及びR
cのいずれもが水素原子であるn-プロピレングリコール(即ち、トリメチレングリコール)がさらに好ましい。
【0021】
上記一般式(6)で表されるポリn-プロピレングリコールは、一種のRa、Rb、Rcからなる単独重合体でも、また異なるRa、Rb、Rcからなる共重合体であってもよい。
【0022】
上記一般式(6)で表されるポリn-プロピレングリコールの市販品としては、上記一般式(6)中、Ra、Rb及びRcのいずれもが水素原子であるポリ-n-プロピレングリコール、即ち、ポリトリメチレングリコールの市販品として、Allessa社製の商品名「VELVETOL」が挙げられる。
【0023】
上記一般式(6)で表されるポリ-n-プロピレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等の直鎖状ポリアルキレングリコールとの共重合体であってもよいが、得られる成形品の透明性が向上することから、好ましくはポリトリメチレングリコールからなる単独重合体が好ましい。
【0024】
ポリ-n-プロピレングリコールは、下記一般式(7)で表されるn-プロピレンエーテル単位(P1)の他に、下記一般式(8-1)~(8-4)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体を含んでもよい。
【0025】
【化12】
一般式(7)中、R
a、R
b及びR
Cは、前記一般式(6)と同義である。
【0026】
【化13】
一般式(8-1)~(8-4)中、R
1~R
10は、各々独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、それぞれの一般式(8-1)~(8-4)において、R
1~R
10の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基を示す。
一般式(8-1)~(8-4)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、一般式(8-1)~(8-4)のいずれかひとつの構造の分岐アルキレンエーテル単位で構成される単独重合体でも、また複数の構造の分岐アルキレンエーテル単位で構成される共重合体であってもよい。
【0027】
上記一般式(7)で示されるn-プロピレンエーテル単位としては、それをグリコールとして記載すると、n-プロピレングリコールであり、n-プロピレングリコールの他に、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどのいずれか1以上を混合してもよいが、n-プロピレングリコールのみであることが好ましく、上述のRa、Rb及びRCのいずれもが水素原子であるn-プロピレングリコール(即ち、トリメチレングリコール)のみであることがより好ましい。
【0028】
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。また、最近ではバイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することも行われている。
【0029】
上記一般式(8-1)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)エチレングリコール、(2-エチル)エチレングリコール、(2,2-ジメチル)エチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよく、好ましくは(2-メチル)エチレングリコール、(2-エチル)エチレングリコールである。
【0030】
上記一般式(8-2)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)トリメチレングリコール、(3-メチル)トリメチレングリコール、(2-エチル)トリメチレングリコール、(3-エチル)トリエチレングリコール、(2,2-ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2-メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2-ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3-ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3-ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよい。
【0031】
上記一般式(8-3)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)テトラメチレングリコール、(4-メチル)テトラメチレングリコール、(3-エチル)テトラメチレングリコール、(4-エチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよく、(3-メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0032】
上記一般式(8-4)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)ペンタメチレングリコール、(4-メチル)ペンタメチレングリコール、(5-メチル)ペンタメチレングリコール、(3-エチル)ペンタメチレングリコール、(4-エチル)ペンタメチレングリコール、(5-エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよい。
【0033】
以上、分岐アルキレンエーテル単位を構成する一般式(8-1)~(8-4)で表される単位を、便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0034】
ポリ-n-プロピレングリコール共重合体として好ましいものを挙げると、n-プロピレンエーテル単位と前記一般式(8-2)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にトリメチレンエーテル単位と3-メチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。
【0035】
ポリ-n-プロピレングリコール共重合体は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0036】
ポリ-n-プロピレングリコール共重合体の前記一般式(7)で表されるn-プロピレンエーテル単位(P1)と前記一般式(8-1)~(8-4)で表される分岐アルキレンエーテル単位(P2)との共重合比率は、(P1)/(P2)のモル比で、好ましくは95/5~5/95であり、より好ましくは93/7~40/60であり、更に好ましくは90/10~65/35であり、n-プロピレンエーテル単位(P1)がリッチであることがより好ましい。
なお、モル分率は、1H-NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
【0037】
上記した中でも、特に好ましいポリ-n-プロピレングリコールは、置換基のないn-プロピレングリコール、即ち、トリメチレングリコールの単独重合体である。
【0038】
上記ポリ-n-プロピレングリコールとしては、構造中に1,4-ブタンジオール、グリセロール、ソルビトール、ベンゼンジオール、ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、スピログリコールなどのポリオール由来の構造が含まれていてもよい。ポリアルキレングリコールの重合時にこれらのポリオールを加えることで、これらの有機基を主鎖中に付与することができる。特に好ましくはグリセロール、ソルビトール、ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0039】
構造中に有機基を含有するポリ-n-プロピレングリコールとしては、例えば、
ポリ-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-エチル)ポリ-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコールソルビチルエーテル、
ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコールソルビチルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコールソルビチルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ-n-プロピレングリコール)エーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコール)エーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコール)エーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-エチル)ポリ-n-プロピレングリコール)エーテル等が好ましいものとして挙げられる。
【0040】
ポリ-n-プロピレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、600~8,000が好ましく、より好ましくは800以上、さらに好ましくは1,000以上であり、より好ましくは6,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは4,000以下である。重量平均分子量が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。重量平均分子量が上記下限を下回るとポリカーボネート樹脂の衝撃性が低下することがある。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、展開溶媒THFで測定されるポリスチレン換算分子量である。
具体的には、GPCとして東ソー社製高速GPC装置「HLC-8320」を用い、カラム:東ソー社製、HZ-M(4.6mm×150mm)×3本直列、溶離液:クロロホルム、ポリスチレン換算分子量(重量平均分子量)として求めた値である。
【0041】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0043】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0044】
本発明のポリカーボネート樹脂としては、以下の一般式(9)で示されるビスフェノールA-ポリ-n-プロピレングリコール共重合ポリカーボネートが特に好ましい。
【化14】
一般式(9)中、m、n及びlは、前記一般式(5)と同義である。
【0045】
本発明の第2の実施形態は、下記一般式(4)で表される構成単位(B)のみを含む、ポリカーボネート樹脂である。
【化15】
一般式(4)中、R
z、R
x、i、及びpは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0046】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中でも溶融エステル交換法、界面重合法が好ましく、より好ましくは溶融エステル交換法である。
【0047】
本発明のポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~60,000であることが好ましく、5,000~40,000であることがより好ましい。下限値は、さらに好ましくは6,000以上、特に好ましくは7,000以上であり、上限値は、さらに好ましくは37,000以下、特に好ましくは35,000以下である。重量平均分子量(Mw)が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。重量平均分子量が上記下限を下回ると成形時にガスが発生する傾向がある。
【0048】
本発明のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)の調整は、コモノマージオール原料の1つであるポリアルキレングリコールのMwを選択することや、カーボネート前駆体の比率の調整、停止剤の添加、重合時の温度や圧力を調整すること等により可能である。例えば、溶融エステル交換法においてMwを大にするには、カーボネート前駆体モノマーであるジフェニルカーボネートと、ジオールモノマーの反応比が1に近くなるようにモノマー原料比を調整し、副生フェノールが重合系中から除去しやすいように重合温度を高く保ち、且つ圧力をできる限り低くし、攪拌による界面更新を積極的に行うこと等により可能である。
【0049】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPCにより、展開溶媒クロロホルムで測定されるポリスチレン換算分子量である。
具体的には、GPCとして東ソー社製高速GPC装置「HLC-8320」を用い、カラム:東ソー社製、HZ-M(4.6mm×150mm)×3本直列、溶離液:クロロホルム、測定温度:25℃、ポリスチレン換算分子量(重量平均分子量)として求めた値である。
【0050】
本発明のポリカーボネート樹脂は、末端水酸基濃度が1ppm~3000ppmであることが耐加水分解性維持のため好ましく、1~1000ppmであることがより好ましく、1~500ppmであることが特に好ましい。本発明において、末端水酸基濃度の測定方法としては、以下の実施例において記載された方法を用いることができる。
【0051】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、-100~140℃であることが取り扱い容易のため好ましく、-70~120℃であることがより好ましく、-70~110℃であることが特に好ましい。本発明において、ガラス転移温度の測定方法としては、以下の実施例において記載された方法を用いることができる。
【0052】
[添加剤等]
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は一種又は二種以上を配合してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0054】
<末端水酸基濃度(ppm)の測定方法>
樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で1H-NMRを測定することで求めた。具体的には、水酸基に関連するピークとその他の樹脂骨格に含まれるピークの積分比より、末端水酸基濃度(OH濃度)を算出した。
装置:BRUKER 500MHz核磁気共鳴装置 AVANCE III HD
【0055】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
GPCを用い、クロロホルムを展開溶媒として、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、“PStQuick MP-M”)を用いて検量線を作成した。測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の計算式により、ポリスチレン換算値として求めた。
[計算式]
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
ここで、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Miはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。
[測定条件]
装置;東ソー株式会社製、HLC-8320GPC
カラム;ガードカラム:TSKguardcolumn SuperMPHZ-M×1本
分析カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M×3本
溶媒;HPLCグレードクロロホルム
注入量;10μL
試料濃度;0.2w/v% HPLCグレードクロロホルム溶液
溶媒流速;0.35ml/min
測定温度;40℃
検出器;RI
【0056】
<ガス発生量の測定>
熱重量・示差熱同時測定装置(TG/TDA)(製品名「TGDTA7300」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。
測定サンプルは、5mgのサンプルを、白金パン(Ptオープン型試料容器、直径5.2mm、高さ5.0mmの円柱容器)に精秤して調製した。
測定は、窒素雰囲気下(窒素流量:250ml/min)で行い、参照セルには基準物質として、α-アルミナ5.52mgを用いた。そして、測定サンプルを後述の通り加熱して重量を測定した。減少した重量はすべてガス化したものと仮定し、ガス発生量(%)「120℃→350℃」は、以下の通り算出した。
ガス発生量(%)「120℃→350℃」=(350℃に於ける重量-120℃に於ける重量)/120℃に於ける重量×100
ガス発生量(%)「120℃→320℃」は、以下の通り算出した。
ガス発生量(%)「120℃→320℃」=(320℃に於ける重量-120℃に於ける重量)/120℃に於ける重量×100
ここで、350℃に於ける重量とは、測定サンプルを120℃から10℃/minで昇温し350℃到達時の重量である。120℃に於ける重量とは、測定サンプルを室温から120℃まで10℃/minで昇温し、120℃で2時間保持した後の重量である。320℃に於ける重量とは、測定サンプルを120℃から10℃/minで昇温し320℃到達時の重量である。
【0057】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
示差走査熱量計(DSC)(製品名「DSC-7000」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。
測定サンプルは、7~12mgの試験片を、AIオートサンプラ用試料容器(RDCアルミパン、直径6.8mm、高さ2.5mmの円柱容器)に精秤し、試料容器の上部をAIオートサンプラ用カバーによってシールして調製した。
測定は、窒素雰囲気下(窒素流量:50ml/min)で行い、参照セルには標準物質としてアルミナ10.0mgを用いた。そして、-70℃に調整した測定サンプルを、10℃/minで200℃まで昇温した後、10℃/minで冷却して-70℃まで降温した。その後、再び10℃/minで200℃まで昇温して測定した。
【0058】
<YI値の測定>
日本電色工業株式会社製分光色彩計SE2000を用いて測定した。具体的には、樹脂サンプル12gをジクロロメタン60mLに溶解させ、光路長6cmの石英セルを用いて測定した。ブランクとしてジクロロメタンを使用した。
【0059】
<実施例1>
三つ口フラスコを装備した重合装置に、原料としてALLESSA社製のポリ-n-プロピレングリコール、Velvetol H500(Mw:1700)を85質量%相当量、ビスフェノールA(以下、BPA)を15質量%相当量、ジフェニルカーボネート(以下、DPC)をジオールに対するモル比1.16で加えた。さらに触媒としてCs
2CO
3水溶液をジオールの1mol当たり11μmol(Csとして)添加した。
系内を1時間乾燥させた後、窒素で重合装置内を復圧した。復圧した重合装置をオイルバスに浸した時点より重合開始とし、表1に示した昇温・減圧プログラムに従い重合を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表5に示す。実施例1で得られたポリカーボネート樹脂のOH濃度は70ppmであった。
【表1】
【0060】
<実施例2及び3>
原料を表5に示す原料に替える以外は実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表5に示す。実施例2で得られたポリカーボネート樹脂のOH濃度は240ppmであり、実施例3で得られたポリカーボネート樹脂のOH濃度は1100ppmであった。
【0061】
<実施例4>
原料を表5に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表2に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表5に示す。
【表2】
【0062】
<実施例5>
原料を表5に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表3に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表5に示す。実施例5で得られたポリカーボネート樹脂のOH濃度は2200ppmであった。
【表3】
【0063】
<実施例6及び7>
原料を表5に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表4に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表5に示す。
【表4】
【0064】
<比較例>
表5に示す原料に変える以外は実施例4と同様に反応した。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表5に示す。比較例で得られたポリカーボネート樹脂のOH濃度は850ppmであった。
【表5】
【0065】
<実施例8>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表6に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表6】
【0066】
<実施例9>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表7に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表7】
【0067】
<実施例10>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表8に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表8】
【0068】
<実施例11>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表9に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表9】
【0069】
<実施例12>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表10に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表10】
【0070】
<実施例13>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表11に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表11】
【0071】
<実施例14及び15>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表12に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表12】
【0072】
<実施例16>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表13に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表13】
【0073】
<実施例17>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表14に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表14】
【0074】
<実施例18>
原料を表16に示す原料に替え、昇温・減圧プログラムを表15に替える以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表17に示す。
【表15】
【0075】
【0076】
【表17】
BPA:ビスフェノールA
BPS:ビスフェノールS
BPO:4,4'-オキシジフェノール
BF:4,4'-ビフェノール
TDP:4,4'-チオジフェノール
PTMG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
P3MG:ポリ-n-プロピレングリコール
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ガス発生が極めて少ないので、各種の成形品に好適に利用できる。
一般にポリカーボネート樹脂は、Tgが高い為に、溶融成形する際には、180℃以上の高温に加熱溶融する必要があり、成形コストの低減化の為に、より低温での成形が望まれていた。また、種々の工業製品の材料として、低Tgのポリカーボネートが求められていた。例えば、一般的に広く知られるビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂のTgは、およそ150℃であるが、それよりも低いTgの材料が求められていた。中でも、本発明におけるポリテトラメチレングリコールとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートや、特にポリ-n-プロピレングリコールとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートは、低Tgであり、工業製品の材料として幅広く有用に用いることができる。