(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250527BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20250527BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/12
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2022025934
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤城 遼
【審査官】小林 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-344033(JP,A)
【文献】特開2019-49774(JP,A)
【文献】特開2019-53574(JP,A)
【文献】特開2020-67969(JP,A)
【文献】特開2015ー103115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の情報を取得する周囲情報取得装置と、前記周囲情報取得装置により取得された自車両の周囲の情報に基づいて、自車両の後側方に設定された隣接車線の判定領域内に自車両と同一の方向へ走行する他車両が存在すると判定したときには、前記隣接車線の側のウインカが作動されていても、前記隣接車線への車線変更に対する警報の発出及び前記隣接車線への車線変更に抗する自動操舵の少なくとも一方を実行するよう構成された制御装置と、を含む運転支援装置において、
前記制御装置は、自車両の前方に分岐路があり且つ前記分岐路の側のウインカが作動されており且つ予め設定された判定基準に基づいて前記分岐路の側にある隣接車線が混雑していると判定したときには、前記判定領域の車線方向の長さを低減するよう構成された、運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線変更時の安全性を向上させる制御を実行する運転支援装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の運転支援装置の一つとして、車線変更時の安全性を向上させる制御を実行する運転支援装置が知られている。例えば、下記の特許文献1には、自車両と同一の方向に隣接車線を走行する他車両が自車両の後側方に位置する場合には、ウインカが作動されているか否かに関係なく、車線逸脱防止の警報の発出若しくは自動操舵を行うよう構成された運転支援装置が記載されている。
【0003】
この種の運転支援装置よれば、警報の発出若しくは自動操舵により、隣接車線へ車線変更しようとするときの安全性を向上させることができる。即ち、自車両が隣接車線へ車線変更することが危険であることを運転者に認識させ、或いは自車両が隣接車線へ車線変更することを抑制し、これにより自車両が隣接車線を走行する他車両と衝突する虞を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
自車両が他車線の道路を走行している状況において、自車両の前方に分岐路があり、自車両が分岐路へ移動しようとすると、まず隣接車線へ移動しなければならない場合がある。このような場合には、隣接車線が混雑し、隣接車線を走行する他車両が自車両の後側方に位置していても、自車両は隣接車線へ車線変更しなければならない。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された運転支援装置のような従来の運転支援装置においては、車線逸脱防止の警報の発出若しくは自動操舵が行われるため、運転者は警報に煩わしさを感じたり、自動操舵により車線変更が阻害されたりすることが避けられない。
【0007】
本発明の主要な課題は、車線変更時の安全性を向上させる制御を実行する運転支援装置であって、自車両が分岐路へ移動するための車線変更を従来に比して円滑に行うことができるよう改良された運転支援装置を提供することである。
【0008】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、自車両(102)の周囲の情報を取得する周囲情報取得装置(16)と、周囲情報取得装置により取得された自車両の周囲の情報に基づいて、自車両の後側方に設定された隣接車線(114)の判定領域(112)内に自車両と同一の方向へ走行する他車両(116)が存在すると判定したときには(S50)、隣接車線の側のウインカが作動されていても(S10、S20)、隣接車線への車線変更に対する警報の発出(S60)及び隣接車線への車線変更に抗する自動操舵(S70、S80)の少なくとも一方を実行するよう構成された制御装置(運転支援ECU10)と、を含む運転支援装置(100)が提供される。
【0009】
制御装置(運転支援ECU10)は、自車両の前方に分岐路があり(S110)且つ分岐路の側のウインカが作動されており(S130)且つ予め設定された判定基準に基づいて分岐路の側にある隣接車線が混雑していると判定したときには(S120、S150)、判定領域(112)の車線方向の長さ(Ld)を低減する(S170、S40)よう構成される。
【0010】
上記構成によれば、判定領域内に自車両と同一の方向へ走行する他車両が存在すると判定されると、隣接車線の側のウインカが作動されていても、隣接車線への車線変更に対する警報の発出及び隣接車線への車線変更に抗する自動操舵の少なくとも一方が実行される。よって、自車両が隣接車線へ車線変更することが危険であることを運転者に認識させ、或いは自車両が隣接車線へ車線変更することを抑制し、これにより自車両が隣接車線を走行する他車両と衝突する虞を低減することができる。従って、自車両の前方に分岐路があり、自車両が分岐路へ移動しようとすると、隣接車線へ移動しなければならない状況において、自車両が隣接車線へ車線変更しようとするときの安全性を向上させることができる。
【0011】
また、自車両の前方に分岐路があり且つ分岐路の側のウインカが作動されており且つ予め設定された判定基準に基づいて分岐路の側にある隣接車線が混雑していると判定されたときには、判定領域の車線方向の長さが低減される。よって、判定領域内に自車両と同一の方向へ走行する他車両が存在すると判定され難くなるので、警報の発出若しくは隣接車線への車線変更に抗する自動操舵が実行され難くなる。従って、運転者が警報に煩わしさを感じたり、自動操舵により車線変更が阻害されたりする虞が低減されるので、自車両が分岐路へ移動するための車線変更を従来に比して円滑に行うことができる。
【0012】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態にかかる運転支援装置を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態における車線変更時の安全性向上制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態における修正係数の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図4】自車両の左側のウインカランプが点滅している状況における判定領域を示す図である。
【
図5】2車線の自動車専用道路を走行する自車両の左側前方に分岐路がある状況を示す図ある。
【
図6】2車線の自動車専用道路を走行する自車両の右側前方に分岐路がある状況を示す図である。
【
図7】自車両が走行する車線の左側の隣接車線を走行する他車両であって、自車両よりLf前方の位置から自車両よりLr後方の位置までの範囲に4台の他車両がある状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる運転支援装置について詳細に説明する。
【0015】
<構成>
図1に示されているように、本発明の実施形態にかかる運転支援装置100は、車両102に適用され、運転支援ECU10を含んでいる。車両102は、電動パワーステアリングECU20、メータECU30及びステアリングECU40を備えている。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。なお、以下の説明においては、車両102は、他車両と区別するために、必要に応じて自車両102と呼称され、電動パワーステアリングはEPSと呼称される。
【0016】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)104を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0017】
運転支援ECU10は、車線逸脱防止制御、追従車間距離制御などの運転支援制御を行う中枢の制御装置である。実施形態においては、運転支援ECU10は、後に詳細に説明するように、他のECUと共働して車線逸脱防止制御の一部として車線変更時の安全性向上制御を実行する。
【0018】
運転支援ECU10には、カメラセンサ12及びレーダセンサ14が接続されている。カメラセンサ12は、前方、後方、右側方及び左側方を撮影する4個のカメラセンサを含んでいるが、4個に限定されるものではない。レーダセンサ14は、前方の領域、右前方の領域、左前方の領域、右後方の領域及び左後方の領域に存在する立体物の物標情報を取得する5個のレーダセンサを含んでいるが、5個に限定されるものではない。カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、自車両102の周囲の情報を取得する周囲情報取得装置16として機能する。
【0019】
カメラセンサ12の各カメラセンサは、図には示されていないが、車両102の周囲を撮影するカメラ部と、カメラ部によって撮影して得られた画像データを解析して道路の白線、他車両などの物標を認識する認識部とを備えている。認識部は、認識した物標に関する情報を所定時間の経過毎に運転支援ECU10に供給する。なお、カメラセンサ12に代えて、LiDAR(Light Detection And Ranging)が使用されてもよい。
【0020】
レーダセンサ14の各レーダセンサは、レーダ送受信部及び信号処理部(図示せず)を備えており、レーダ送受信部が、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する)を放射し、放射範囲内に存在する立体物(例えば、他車両、自転車、ガードレールなど)によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。信号処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間などに基づいて、自車両と立体物との距離、自車両と立体物との相対速度、自車両に対する立体物の相対位置(方向)などを表す情報を所定時間の経過毎に取得して運転支援ECU10に供給する。
【0021】
更に、運転支援ECU10には、設定操作器18が接続されており、設定操作器18は、運転者により操作される位置に設けられている。
図1には示されていないが、設定操作器18は、車線逸脱防止制御スイッチを含み、運転支援ECU10は、車線逸脱防止制御スイッチがオンである場合に車線逸脱防止制御を実行する。
【0022】
EPS・ECU20には、EPS装置22が接続されている。EPS・ECU20は、後述の運転操作センサ50及び車両状態センサ60により検出された操舵トルクTs及び車速Vに基づいて、当技術分野において公知の要領にてEPS装置22を制御することにより、操舵アシストトルクを制御し、ドライバーの操舵負担を軽減する。また、EPS・ECU20は、EPS装置22を制御することにより、必要に応じて転舵輪を転舵することができる。よって、EPS・ECU20及びEPS装置22は、必要に応じて転舵輪を自動的に転舵する転舵装置として機能する。
【0023】
メータECU30には、表示器32、ブラインドスポットモニター(BSM)34R、34L、ウインカランプ36R、36L及び警報音を鳴動するブザー38が接続されている。表示器32は、例えばヘッドアップディスプレイ或いはメータ類及び各種の情報が表示されるマルチインフォーメーションディスプレイであってよく、後述のナビゲーション装置70のディスプレイであってもよい。ブラインドスポットモニター34R、34Lは、運転席から見えるよう、それぞれ右側及び左側のドアミラーに設けられている。メータECU30は、後続の車両が急激に接近するときには、対応する側のブラインドスポットモニターに後続の車両が接近している旨の表示をすると共に、ブザー38を作動させて警報を発する。
【0024】
ステアリングECU40には、ステアリングコラム(図示せず)に設けられたウインカレバー42が接続されている。ウインカレバー42は、右折方向及び左折方向に対応する上下方向へ傾動されると、そのことを示す信号がメータECU30へ供給され、これによりそれぞれ右側及び左側のウインカランプ36R及び36Lが点滅される。
【0025】
運転操作センサ50及び車両状態センサ60は、CAN104に接続されている。運転操作センサ50及び車両状態センサ60によって検出された情報(センサ情報と呼ぶ)は、CAN104に送信される。CAN104に送信されたセンサ情報は、各ECUにおいて適宜に利用可能である。なお、センサ情報は、特定のECUに接続されたセンサの情報であって、その特定のECUからCAN104に送信されてもよい。
【0026】
運転操作センサ50は、アクセルペダルの操作量を検出する駆動操作量センサ、マスタシリンダ圧力又はブレーキペダルに対する踏力を検出する制動操作量センサ、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチを含んでいる。更に、運転操作センサ50は、操舵角θを検出する操舵角センサ、操舵トルクTsを検出する操舵トルクセンサ、及び変速機のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサなどを含んでいる。
【0027】
車両状態センサ60は、車両102の車速Vを検出する車速センサ、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ、車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサ、及び車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサなどを含んでいる。
【0028】
ナビゲーション装置70も、CAN104に接続されている。ナビゲーション装置70は、車両102の位置を検出するGPS受信機と、地図情報及び道路情報を記憶する記憶装置と、地図情報及び道路情報の最新情報を外部から取得する通信装置とを備えている。道路情報には、一般道路の分岐点、交差点などの情報が含まれており、高速道路のような自動車専用道路のインターチェンジ、ジャンクション、サービスエリア、パーキングエリアなどの情報が含まれている。ナビゲーション装置80は、地図上における車両の位置及び進行方向などの情報に加えて、道路情報も運転支援ECU10に出力する。
【0029】
運転支援ECU10は、運転者による設定操作器18の操作によって車線逸脱防止スイッチがオンに設定されると、周囲情報取得装置16により検出された車両102の周囲の情報に基づいて車線逸脱防止制御を実行する。特に、実施形態においては、車線逸脱防止制御の一部として、
図2に示されたフローチャートに従って車線変更時の安全性向上制御を実行し、
図3に示されたフローチャートに従って修正係数の制御を実行する。
【0030】
<実施形態における車線変更時の安全性向上制御ルーチン>
次に、
図2に示されたフローチャートを参照して実施形態における車線変更時の安全性向上制御ルーチンについて説明する。
図2に示されたフローチャートによる車線変更時の安全向上制御は、設定操作器18の
図1には示されていない車線逸脱防止スイッチがオンであるときに運転支援ECU10のCPUにより実行される。
【0031】
まず、ステップS10においては、CPUは、車線変更をしようとしてウインカが作動されているか否かの判別、即ちウインカレバー42の傾動によりウインカランプ36R又は36Lが点滅しているか否かの判別を行う。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS20へ進める。
【0032】
ステップS20においては、CPUは、ウインカが作動されている側に自車両102と同一の方向に走行するための隣接車線があるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、即ちウインカが作動されている側に隣接車線がない又は隣接車線はウインカが作動されている側とは反対の側にあると判定したときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS30へ進める。
【0033】
ステップS30においては、CPUは、ステップS20において存在が確認された隣接車線について、自車両102の後側方に設定する判定領域の長さLdを演算する。
図4は、車線110を走行する自車両102の左側のウインカランプ36Lが点滅している状況における判定領域112を示している。判定領域112は、自車両102の左側の隣接車線114に設定される。判定領域112の前端112Fは、例えば自車両102の後輪(図示せず)の車軸の位置であり、長さLdは前端112Fから後端112Rまでの隣接車線114に沿う長さである。
【0034】
長さLdは、自車両102と隣接車線114を走行する他車両116との間の車線に垂直な方向の間隔が小さいほど大きくなるよう演算される。また、自車両102に対する他車両116の相対速度をVrとし、自車両102と他車両116との間の車線に沿う方向の間隔をDrとして、相対速度Vrが正でありDr/Vrが小さいほど大きくなるよう演算される。なお、判定領域112幅は、隣接車線114の幅である。
【0035】
ステップS40においては、CPUは、判定領域112の長さLdを、
図3に示されたフローチャートに従って制御される修正係数KaとステップS30において演算された判定領域112の長さLdとの積に修正する。
【0036】
ステップS50においては、CPUは、周囲情報取得装置16により取得された自車両102の周囲の情報に基づいて、判定領域112に自車両に接近する他車両が存在するか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS60へ進める。
【0037】
ステップS60においては、CPUは、メータECU30へ指令信号を出力することにより、表示器32及びブラインドスポットモニター34R又は34Lに、接近する他車両が後側方にあり、車線変更は危険である旨の視覚的警報を表示する。また、CPUは、ブザー38を鳴動させて聴覚警報を発出する。
【0038】
ステップS70においては、CPUは、運転者により隣接車線114の側へ自車両102を移動させようとする操舵操作が行われたか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS80へ進める。
【0039】
ステップS80においては、CPUは、運転者による操舵操作方向とは逆方向への自動操舵が行われるようEPS・ECU20へ指令信号を出力することにより、自車両102の車線変更に抗する自動操舵を実行する。
【0040】
以上の車線変更時の安全性向上制御ルーチンによれば、ウインカが作動されており(S10)、ウインカが作動されている側に隣接車線があり(S20)、判定領域112に自車両に接近する他車両が存在すると判定されると(S20)、警報の発出(S60)及び車線変更に抗する自動操舵(S80)が行われる。
【0041】
よって、自車両102が隣接車線へ車線変更することが危険であることを運転者に認識させ、自車両が隣接車線へ車線変更することを抑制し、これにより自車両が隣接車線を走行する他車両と衝突する虞を低減することができる。従って、後述のように自車両の前方に分岐路があり、自車両が分岐路へ移動しようとすると、隣接車線へ移動しなければならない状況において、自車両が隣接車線へ車線変更しようとするときの安全性を向上させることができる。
【0042】
<実施形態における修正係数の制御ルーチン>
次に、
図3に示されたフローチャートを参照して実施形態における修正係数の制御ルーチンについて説明する。
図3に示されたフローチャートによる修正係数の制御は、設定操作器18の
図1には示されていない車線逸脱防止スイッチがオンであるときに運転支援ECU10のCPUにより実行される。
【0043】
まず、ステップS110においては、CPUは、カメラセンサ12により撮影され認識された道路標識の情報及び/又はナビゲーション装置70からの情報に基づいて、自車両102の前方に分岐路があるか否かを判別する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS160へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS120へ進める。
【0044】
ステップS120においては、CPUは、自車両102が走行する車線に対し分岐路がある側と同一の側に隣接車線があるか否かを判別する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS160へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS130へ進める。
【0045】
図5は、2車線の自動車専用道路を走行する自車両102の左側前方に分岐路120がある状況を示している。特に、(A)は、自車両102が右側の車線122を走行する場合であり、(B)は、自車両102が左側の車線124を走行する場合である。ステップS120の判別は、(A)の場合には肯定判別であるが、(B)の場合には否定判別である。
【0046】
図6は、2車線の自動車専用道路を走行する自車両102の右側前方に分岐路120がある状況を示している。特に、(C)は、自車両102が右側の車線122を走行する場合であり、(D)は、自車両102が左側の車線124を走行する場合である。ステップS120の判別は、(C)の場合には否定判別であるが、(D)の場合には肯定判別である。
【0047】
ステップS130においては、CPUは、分岐路がある側と同一の側のウインカが作動しているか否かを判別する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS160へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS140へ進める。
【0048】
ステップS140においては、CPUは、ステップS120において存在すると判定した隣接車線の予め設定された範囲を走行する他車両について、平均車間時間Thwaを演算する。
【0049】
例えば、
図7は、自車両102が走行する車線130の左側の隣接車線132を走行する他車両であって、自車両102よりLf前方の位置から自車両よりLr後方の位置までの範囲に4台の他車両134~140がある状況を示している。他車両134~140の前後に隣接する車両の間の車間時間Thw1~Thw3の平均値Thw13が演算され、更に例えば過去1秒間の平均値Thw13の平均値が平均車間時間Thwaとして演算される。なお、平均車間時間Thwaの演算は、上記の要領に限定されず、当技術分野において公知の任意の要領にて行われてよい。
【0050】
ステップS150においては、CPUは、平均車間時間Thwaが基準値Thwac以下であるか否かの判別により、隣接車線が混雑しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、ステップS160において修正係数Kaを1に設定し、肯定判定をしたときには、ステップS170において修正係数Kaを低減された修正係数Kacに設定する。
【0051】
なお、基準値Thwacは正の定数であってよいが、隣接車線を走行する他車両の平均車速であってもよく、更には自車両102などが走行する道路の制限速度、車線の幅などに応じて可変設定されてもよい。また、低減された修正係数Kacは、0よりも大きく1よりも小さい正の定数、例えば0.5であってよく、平均車間時間Thwaが小さいほど小さくなるよう、平均車間時間Thwaに応じて可変設定されてもよい。
【0052】
以上の修正係数の制御ルーチンによれば、自車両102の前方に分岐路があり(S110)、分岐路がある側と同一の側に隣接車線があり(S120)、分岐路がある側と同一の側のウインカが作動しており(S130)、隣接車線が混雑していると判定されると(S150)、修正係数Kaが低減された修正係数Kacに設定される(S170)。
【0053】
よって、判定領域112の長さLdが低減されることにより(S40)、判定領域内に自車両と同一の方向へ走行する他車両が存在すると判定され難くなるので、警報の発出及び隣接車線への車線変更に抗する自動操舵が実行され難くなる。従って、運転者が警報に煩わしさを感じたり、自動操舵により車線変更が阻害されたりする虞が低減されるので、自車両が分岐路へ移動するための車線変更を従来に比して円滑に行うことができる。
【0054】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0055】
例えば、上述の実施形態においては、ステップS30において、判定領域の長さLdは、自車両102と隣接車線114を走行する他車両116との間の車線に垂直な方向の間隔が小さいほど大きくなるよう演算される。また、自車両102に対する他車両116の相対速度をVrとし、自車両102と他車両116との間の車線に沿う方向の間隔をDrとして、相対速度Vrが正でありDr/Vrが小さいほど大きくなるよう演算される。しかし、前者及び後者の少なくとも一方の可変設定が省略されてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、ステップS170において設定される低減された修正係数Kacは、0よりも大きく1よりも小さい正の定数である。しかし、低減された修正係数Kacは、0であってもよい。その場合には判定領域112の大きさが0になるので、ステップS50における判定が否定判定になる。よって、警報の発出及び隣接車線への車線変更に抗する自動操舵は実行されない。従って、運転者が警報に煩わしさを感じたり、自動操舵により車線変更が阻害されたりすることを防止することができる。
【0057】
また、上述の実施形態においては、ウインカが作動されており(S10)、ウインカが作動されている側に隣接車線があり(S20)、判定領域112に自車両に接近する他車両が存在すると判定されると(S20)、警報の発出(S60)及び車線変更に抗する自動操舵(S80)が行われる。しかし、警報の発出及び車線変更に抗する自動操舵の一方が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…運転支援ECU、12…カメラセンサ、14…レーダセンサ、16…周囲情報取得装置、20…EPS・ECU、22…EPS装置、30…メータECU、32…表示器、34R、34L…ブラインドスポットモニター、36R、36L…ウインカランプ、42…ウインカレバー、50……運転操作センサ、60…車両状態センサ、102…自車両、112…判定領域、114…隣接車線、116…他車両