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  • 特許-ワーク精度測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】ワーク精度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20250527BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20250527BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALN20250527BHJP
【FI】
G01B21/00 L
G01B21/20 C
B23Q17/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022046389
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140514
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神山 萌
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-032304(JP,U)
【文献】実開平04-090901(JP,U)
【文献】特開2021-144004(JP,A)
【文献】国際公開第2016/020501(WO,A1)
【文献】特開平07-334226(JP,A)
【文献】特開2006-205256(JP,A)
【文献】特開平11-216520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00 - 21/32
G01B 5/00 - 5/32
G01B 11/00 - 11/30
B23Q 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク精度測定方法であって、
プレス成型によって製造されたワークと精度測定検具との間にシムを配置して、前記ワークを前記精度測定検具に固定する第1固定工程と、
前記第1固定工程の後に、前記ワークにおける予め定められた第1測定箇所の位置と、目標の形状の前記ワークにおける前記第1測定箇所に対応する位置である第1目標位置との距離を測定する第1測定工程と、
前記距離が予め定められた閾値以上の場合に、前記シムを前記シムよりも容易に塑性変形させられる粘塑性体に交換して前記ワークを前記精度測定検具に固定する第2固定工程と、
前記ワークの予め定められた複数の第2測定箇所の位置が、前記第1固定工程における前記ワークの前記複数の第2測定箇所の位置よりも、目標の形状の前記ワークにおける前記複数の第2測定箇所のそれぞれに対応する位置である第2目標箇所に近づくように、前記粘塑性体を変形させる変形工程と、
前記変形工程の後に、測定装置を用いて、前記距離を含む、前記ワークの形状と目標の形状との乖離を測定する第2測定工程と、を含む、ワーク精度測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク精度測定方法であって、
前記変形工程の前に、前記乖離が予め定めた条件を満たす前記粘塑性体の形状を解析する、解析工程を含み、
前記変形工程において、前記解析工程で解析された形状に前記粘塑性体を変形させる、ワーク精度測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のワーク精度測定方法であって、
前記測定装置は、非接触で寸法の測定を行う装置である、ワーク精度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク精度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス成型で製造されるワークの精度測定方法として、例えば、特許文献1に記載されているように、チェッキングフィクスチャー(CF)検具にワークを配置し、CF検具における目標位置からのワークまでの距離を測定する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-334226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CF検具を用いたワークの精度測定において、CF検具の寸法やワークの位置を調節するために、CF検具とワークとの間に、樹脂や金属の板状の部材であるシムプレートを配置する場合がある。この場合、シムプレートを切削して所望の厚みや形状に調整する必要が生じるおそれがある。そのため、煩雑な作業を要しないワークの精度を測定できる技術が望まれていた。また、プレス成型に用いる金型の製造準備において、金型の修理面積を最小限にすることで金型修理のコストを抑えることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、ワーク精度測定方法が提供される。このワーク精度測定方法は、プレス成型によって製造されたワークと精度測定検具との間にシムを配置して、前記ワークを前記精度測定検具に固定する第1固定工程と、前記第1固定工程の後に、前記ワークにおける予め定められた第1測定箇所の位置と、目標の形状の前記ワークにおける前記第1測定箇所に対応する位置である第1目標位置との距離を測定する第1測定工程と、前記距離が予め定められた閾値以上の場合に、前記シムを前記シムよりも容易に塑性変形させられる粘塑性体に交換して前記ワークを前記精度測定検具に固定する第2固定工程と、前記ワークの予め定められた複数の第2測定箇所の位置が、前記第1固定工程における前記ワークの前記複数の第2測定箇所の位置よりも、目標の形状の前記ワークにおける前記複数の第2測定箇所のそれぞれに対応する位置である第2目標箇所に近づくように、前記粘塑性体を変形させる変形工程と、前記変形工程の後に、測定装置を用いて、前記距離を含む、前記ワークの形状と目標の形状との乖離を測定する第2測定工程と、を含む。
この形態のワーク精度測定方法によれば、粘塑性体を変形させて、寸法精度を測定するため、精度測定検具やシムを加工する作業を省くことができる。そのため、煩雑な作業を抑制できる。また、シムを用いた場合よりもワークを目標の位置に近づけるため、ワークのプレス成型に用いる金型の製造準備において、金型の修理面積を減らすことできる。そのため、金型修理のコストを抑えることができる。
(2)上記形態のワーク精度測定方法において、前記変形工程の前に、前記乖離が予め定めた条件を満たす前記粘塑性体の形状を解析する、解析工程を含み、前記変形工程において、前記解析工程で解析された形状に前記粘塑性体を変形させてもよい。
この形態のワーク精度測定方法によれば、解析した形状に粘塑性体を変形させるため、乖離条件を満たす形状に変形できる。そのため、作業時間を短縮できる。
(3)上記形態のワーク精度測定方法において、前記測定装置は、非接触で寸法の測定を行う装置でもよい。
非接触装置を用いることで、寸法を測定する際に、粘塑性体が変形することを抑制できる。
【0007】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、プレス成型に用いる金型の改修のためのワーク精度測定方法等の態様で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ワーク精度測定方法の一例を示すフローチャートである。
図2】第1固定工程の説明図である。
図3】第2固定工程の説明図である。
図4】変形工程の説明図である。
図5】第2実施形態におけるワーク精度測定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態における、ワーク精度測定方法の一例を示すフローチャートである。図2図4は、ワーク精度測定方法における各工程の説明図である。本実施形態では、プレス成型に用いる金型の改修のためにワークWkの形状精度を測定する。例えば、ワークWkの製造ライン稼働前の金型修理前のワークWkを用いて図1に示す精度測定処理が行われる。なお、ワークWk全体の形状精度を測定してもよく、ワークWkの一部の形状精度を測定してもよい。
【0010】
まず、ステップS100(図1参照)で、プレス成型によって製造されたワークWkと精度測定検具CFとの間にシムSPを配置して、ワークWkを精度測定検具CFに固定する。この工程を「第1固定工程」ともいう。図2に示すように、作業者が、シムSPを介してワークWkを精度測定検具CFに固定する。本実施形態において、ワークWkは、クランプCPを用いて精度測定検具CFに固定される。シムSPは、外力により不可逆的に塑性変形する素材である。本実施形態において、シムSPは、板状の樹脂部材である。
【0011】
図2において破線で示される形状が、本実施形態において、本来プレス成型によって製造しようとしたワークWkの所望の形状である。また、図2において破線で示される形状の位置が所望の形状のワークWkをシムSPを介して精度測定検具CFに固定した場合における、ワークWkの位置を示す。以下では、この図2において破線で示される所望の形状のワークWkの位置を所望配置Tpともいう。
【0012】
ステップS110(図1参照)において、ワークWkにおける予め定められた第1測定箇所Pwの位置と、第1測定箇所Pwの目標の位置、すなわち所望配置Tpにおける第1測定箇所Pwの位置である第1目標位置Ptとの距離Lnを測定する。この工程を「第1測定工程」ともいう。
【0013】
ステップS120において、ステップS110で測定した距離Lnが予め定められた閾値以上か否かを判定する。距離Lnが閾値以上の場合、ステップS130の処理に進む。一方、距離Lnが閾値未満の場合、精度測定処理を終了する。この場合、ステップS110で測定した距離Lnに基づいて、金型の修正量を決定する。
【0014】
ステップS130において、シムSPを粘塑性体VBに交換してワークWkを精度測定検具CFに固定する。この工程を「第2固定工程」ともいう。粘塑性体VBは、シムSPよりも容易に塑性変形させられる素材であり、外力により可逆的に塑性変形する素材である。例えば、粘塑性体VBは、シムSPより弾性率が小さい素材である。本実施形態において、粘塑性体VBとして粘土を採用する。図3に示すように、精度測定検具CF上に配置した粘塑性体VBの上にワークWkを配置する。本実施形態において、図4に示すように、ワークWkを粘塑性体VBを介してクランプCPと精度測定検具CFとで挟み、固定する。
【0015】
ステップS140(図1参照)において、ステップS130で配置した粘塑性体VBをワークWkの形状が、第1固定工程におけるワークWkの形状よりも、所望配置Tpに近づくように変形させる。より具体的には、ワークWkの予め定められた複数の第2測定箇所の位置が、第1固定工程におけるワークWkの複数の第2測定箇所の位置よりも、ワークWkの複数の第2測定箇所のそれぞれの目標の位置である第2目標箇所に近づくように変形させる。この工程を「変形工程」ともいう。複数の第2測定箇所は、第1測定箇所Pwを含んでいてもよい。本実施形態において、図4に示すように、ワークWkにおける下側の第1部分P1に第2測定箇所を定めている場合、第1部分P1が所望配置Tpに近づき、ワークWkにおける上側の第2部分P2は所望配置Tpから離れるように、粘塑性体VBを変形させる。
【0016】
ステップS150(図1参照)において、ワークWkの配置と所望配置Tpの乖離を測定する。この工程を「第2測定工程」ともいう。乖離は、第1測定工程で測定した距離Lnを含む概念である。本実施形態において、非接触で寸法の測定ができる測定装置を用いて、乖離を測定する。
【0017】
ステップS160において、ステップS150で測定した乖離が予め定められた乖離条件を満たすか否かを判定する。乖離条件は、第1固定工程におけるワークWkの形状よりも、所望配置Tpに近づいていることを含む条件である。乖離条件は、例えば、全ての判定距離が、第1固定工程におけるそれぞれ対応する判定距離よりも小さいことを含む。判定距離は、第2測定箇所と第2目標箇所との距離である。乖離条件を満たす場合、精度測定処理を終了する。この場合、ステップS150において測定した乖離に基づいて、金型の修正量を決定する。一方、乖離条件を満たさない場合、ステップS140の処理に戻る。すなわち、乖離条件を満たすまで、ステップS140~S160の処理を繰り返し実行する。つまり、乖離条件を満たすように、粘塑性体VBを変形させる。この場合、直前に行ったステップS150において測定した乖離に基づいて、金型の修正量を決定する。
【0018】
以上で説明した本実施形態のワーク精度測定方法によれば、粘塑性体VBを変形させて、寸法精度を測定するため、精度測定検具CFやシムSPを加工する作業を省くことができる。そのため、煩雑な作業を抑制できる。また、シムSPを用いて固定した場合よりもワークWkを所望配置Tpに近づけるため、ワークWkのプレス成型に用いる金型の製造準備において、金型の修理面積を減らすことができる。そのため、金型修理のコストを抑えることができる。
【0019】
また、接触装置として非接触装置を用いているため、寸法を測定する際に、粘塑性体VBが変形しワークWkが動くことを抑制できる。
【0020】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態におけるワーク精度測定方法の一例を示すフローチャートである。第2実施形態におけるワーク精度測定方法は、ステップS120の後にステップS125の解析工程を備える点が第1実施形態における加工方法と異なり、他の工程は第1実施形態と同じである。解析工程の詳細については後述する。
【0021】
ステップS125において、乖離が予め定めた条件を満たす粘塑性体VBの形状を解析する。例えば、所望配置Tpに最も近づく粘塑性体VBの形状を、コンピュータを用いて解析する。より具体的には、判定距離が最も小さくなる形状を求める。この工程を「解析工程」ともいう。判定距離が最も小さくなる形状は、例えば、全ての判定距離の合計が最も小さくなる形状である。
【0022】
ステップS140において、ステップS125で解析した形状に変形する。この場合、粘塑性体VBは乖離条件を満たす形状に変形されているため、ステップS160の処理を省略してもよい。
【0023】
以上で説明した第2実施形態のワーク精度測定方法によれば、解析した形状に粘塑性体VBを変形させるため、乖離条件を満たす形状に変形できる。そのため、作業時間を短縮できる。
【0024】
C:他の実施形態:
(C1)上述した実施形態において、測定装置は、非接触で寸法の測定を行う装置である。これに限らず、測定装置は、ワークWkに接触して寸法を測定する装置でもよい。
【0025】
(C2)上述した実施形態において、粘塑性体VBは、粘土である。これに限らず、粘塑性体VBは、紫外線照射によって硬化する樹脂や、主剤と硬化剤の二液を混合することで硬化する樹脂でもよい。
【0026】
(C3)上述した実施形態における変形工程おいて、判定距離が、第1固定工程における判定距離よりも小さくなるように粘塑性体VBを変形させている。これに限らず、例えば、所望配置Tpと一致するワークWkの面積が大きくなるように粘塑性体VBを変形させてもよい。
【0027】
(C4)上述した実施形態において、乖離条件は、全ての判定距離が、第1固定工程におけるそれぞれ対応する判定距離よりも小さいことである。これに限らず、乖離条件は、例えば、第1固定工程における判定距離からの減少の合計距離が、予め定められた閾値距離以上であることでもよい。すなわち、乖離条件は、全ての判定距離が第1固定工程におけるそれぞれ対応する判定距離よりも小さくなくてもよいことを含んでもよい。また、乖離条件は、全ての判定距離が、第1固定工程におけるそれぞれ対応する判定距離の予め定められた割合以下であることでもよい。
【0028】
(C5)上述した第2実施形態において、判定距離が最も小さくなる形状は、全ての判定距離の合計が最も小さくなる形状である。これに限らず、例えば、判定距離に各第2測定箇所に設定した、所望配置Tpに近づけたい優先度合いを用いて重み付けを実施して、重み付け後の値が最も小さくなる形状を採用してもよい。
【0029】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
CF…精度測定検具、CP…クランプ、SP…シム、VB…粘塑性体、Wk…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5