(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】車高調整システム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20250527BHJP
B60G 17/056 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B60G17/015 B
B60G17/056
(21)【出願番号】P 2022061787
(22)【出願日】2022-04-01
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉悟
(72)【発明者】
【氏名】神田 亮
(72)【発明者】
【氏名】神田 征司
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337531(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045097(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019205779(DE,A1)
【文献】特開2007-083998(JP,A)
【文献】国際公開第2020/214666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/015
B60G 17/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に対する車体の高さ位置を調整する車高調整システムであって、
前輪保持部材と前記車体との間に設けられ、
作動油によって伸縮する前輪側アクチュエータと、
前記前輪側アクチュエータに対して
作動油を給排する前輪側流体給排装置と、
前記前輪側アクチュエータと前記前輪側流体給排装置との間に設けられ、前輪側車高調整弁を備えた前輪側油圧回路と、
後輪保持部材と前記車体との間に設けられ、
作動油によって伸縮する後輪側アクチュエータと、
前記前輪側流体給排装置とは別個に設けられ、前記後輪側アクチュエータに対して
作動油を給排する後輪側流体給排装置と、
前記後輪側アクチュエータと前記後輪側流体給排装置との間に設けられ、後輪側車高調整弁を備えた後輪側油圧回路とを備え、
前記前輪側流体給排装置は、
作動油が貯留された前輪側リザーバタンクと、
該前輪側リザーバタンクの作動油を汲み上げて前記前輪側油圧回路に供給する前輪側オイルポンプと、
該前輪側オイルポンプから前記前輪側油圧回路に向かう作動油の流れを許容する一方、前記前輪側油圧回路から前記前輪側オイルポンプに向かう作動油の流れを阻止する前輪側チェックバルブと、
前記前輪側オイルポンプの吐出口側において前記前輪側チェックバルブと並列に配置され、前記前輪側オイルポンプの吐出口側と前記前輪側油圧回路とを遮断して前記前輪側油圧回路を前記前輪側リザーバタンク側と連通させる前輪側第1状態と、前記前輪側リザーバタンク側と前記前輪側油圧回路とを遮断して前記前輪側油圧回路を前記前輪側オイルポンプの吐出口側と連通させる前輪側第2状態との間で切り替え可能な前輪側リターンバルブとを備え、
前記後輪側流体給排装置は、
作動油が貯留された後輪側リザーバタンクと、
該後輪側リザーバタンクの作動油を汲み上げて前記後輪側油圧回路に供給する後輪側オイルポンプと、
該後輪側オイルポンプから前記後輪側油圧回路に向かう作動油の流れを許容する一方、前記後輪側油圧回路から前記後輪側オイルポンプに向かう作動油の流れを阻止する後輪側チェックバルブと、
前記後輪側オイルポンプの吐出口側において前記後輪側チェックバルブと並列に配置され、前記後輪側オイルポンプの吐出口側と前記後輪側油圧回路とを遮断して前記後輪側油圧回路を前記後輪側リザーバタンク側と連通させる後輪側第1状態と、前記後輪側リザーバタンク側と前記後輪側油圧回路とを遮断して前記後輪側油圧回路を前記後輪側オイルポンプの吐出口側と連通させる後輪側第2状態との間で切り替え可能な後輪側リターンバルブとを備え、
前記前輪側油圧回路における前記前輪側車高調整弁と前記前輪側リターンバルブとの間の油圧を検出する前輪側油圧センサが設けられており、
前記後輪側油圧回路における前記後輪側車高調整弁と前記後輪側リターンバルブとの間の油圧を検出する後輪側油圧センサが設けられており、
前記前輪側リターンバルブは、前記前輪側オイルポンプが停止している場合に前記前輪側第1状態となると共に、前記前輪側オイルポンプが作動している場合に前記前輪側第2状態となるように構成されており、
前記後輪側リターンバルブは、前記後輪側オイルポンプが停止している場合に前記後輪側第1状態となると共に、前記後輪側オイルポンプが作動している場合に前記後輪側第2状態となるように構成されている、ことを特徴とする車高調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪に対する車体の高さ位置を調整する車高調整システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の車高調整システムは、4つのアクチュエータと、その4つのアクチュエータに対して流体を給排する流体給排装置とを備えている。4つのアクチュエータは、流体給排装置からの流体によって伸縮可能であり、前後左右の4つの車輪をそれぞれ保持する各保持部材と車体との間に設けられている。この車高調整システムでは、前輪側の2つのアクチュエータに対する制御と、後輪側の2つのアクチュエータに対する制御とが交互に行われることにより、前輪側と後輪側とで交互に車高が調整されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のような車高調整システムにおいて、車高の調整に要する時間の短縮を図ることについて改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、車高の調整に要する時間の短縮を図ることが可能な車高調整システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車高調整システムは、車輪に対する車体の高さ位置を調整するものであり、前輪保持部材と車体との間に設けられ、作動油によって伸縮する前輪側アクチュエータと、前輪側アクチュエータに対して作動油を給排する前輪側流体給排装置と、前輪側アクチュエータと前輪側流体給排装置との間に設けられ、前輪側車高調整弁を備えた前輪側油圧回路と、後輪保持部材と車体との間に設けられ、作動油によって伸縮する後輪側アクチュエータと、前輪側流体給排装置とは別個に設けられ、後輪側アクチュエータに対して作動油を給排する後輪側流体給排装置と、後輪側アクチュエータと後輪側流体給排装置との間に設けられ、後輪側車高調整弁を備えた後輪側油圧回路とを備える。また、前輪側流体給排装置は、作動油が貯留された前輪側リザーバタンクと、該前輪側リザーバタンクの作動油を汲み上げて前輪側油圧回路に供給する前輪側オイルポンプと、該前輪側オイルポンプから前輪側油圧回路に向かう作動油の流れを許容する一方、前輪側油圧回路から前輪側オイルポンプに向かう作動油の流れを阻止する前輪側チェックバルブと、前輪側オイルポンプの吐出口側において前輪側チェックバルブと並列に配置され、前輪側オイルポンプの吐出口側と前輪側油圧回路とを遮断して前輪側油圧回路を前輪側リザーバタンク側と連通させる前輪側第1状態と、前輪側リザーバタンク側と前輪側油圧回路とを遮断して前輪側油圧回路を前輪側オイルポンプの吐出口側と連通させる前輪側第2状態との間で切り替え可能な前輪側リターンバルブとを備えている。また、後輪側流体給排装置は、作動油が貯留された後輪側リザーバタンクと、該後輪側リザーバタンクの作動油を汲み上げて後輪側油圧回路に供給する後輪側オイルポンプと、該後輪側オイルポンプから後輪側油圧回路に向かう作動油の流れを許容する一方、後輪側油圧回路から後輪側オイルポンプに向かう作動油の流れを阻止する後輪側チェックバルブと、後輪側オイルポンプの吐出口側において後輪側チェックバルブと並列に配置され、後輪側オイルポンプの吐出口側と後輪側油圧回路とを遮断して後輪側油圧回路を後輪側リザーバタンク側と連通させる後輪側第1状態と、後輪側リザーバタンク側と後輪側油圧回路とを遮断して後輪側油圧回路を後輪側オイルポンプの吐出口側と連通させる後輪側第2状態との間で切り替え可能な後輪側リターンバルブとを備えている。また、前輪側油圧回路における前輪側車高調整弁と前輪側リターンバルブとの間の油圧を検出する前輪側油圧センサが設けられており、後輪側油圧回路における後輪側車高調整弁と後輪側リターンバルブとの間の油圧を検出する後輪側油圧センサが設けられている。そして、前輪側リターンバルブは、前輪側オイルポンプが停止している場合に前輪側第1状態となると共に、前輪側オイルポンプが作動している場合に前輪側第2状態となるように構成されており、後輪側リターンバルブは、後輪側オイルポンプが停止している場合に後輪側第1状態となると共に、後輪側オイルポンプが作動している場合に後輪側第2状態となるように構成されている。
【0008】
このように構成することによって、前輪側流体給排装置による前輪側アクチュエータに対する制御と、後輪側流体給排装置による後輪側アクチュエータに対する制御とが同時に行われることにより、車高の調整に要する時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車高調整システムによれば、車高の調整に要する時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による車高調整システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態による車高調整システム100について説明する。
【0013】
車高調整システム100は、車両における車輪に対する車体(図示省略)の高さ位置を調整するように構成されている。車輪は、
図1に示すように、左側の前輪50FLと、右側の前輪50FRと、左側の後輪50RLと、右側の後輪50RRとを含んでいる。前輪50FLが前輪保持部材51FLに回転可能に保持され、前輪50FRが前輪保持部材51FRに回転可能に保持され、後輪50RLが後輪保持部材51RLに回転可能に保持され、後輪50RRが後輪保持部材51RRに回転可能に保持されている。
【0014】
車高調整システム100は、油圧シリンダ1FL、1FR、1RLおよび1RRと、作動油給排装置2Fおよび2Rと、油圧回路3Fおよび3Rと、ECU4Fおよび4Rとを備えている。なお、油圧シリンダ1FLおよび1FRは、本発明の「前輪側アクチュエータ」の一例であり、油圧シリンダ1RLおよび1RRは、本発明の「後輪側アクチュエータ」の一例である。作動油給排装置2Fは、本発明の「前輪側流体給排装置」の一例であり、作動油給排装置2Rは、本発明の「後輪側流体給排装置」の一例である。
【0015】
油圧シリンダ1FLおよび1FRは、作動油給排装置2F、油圧回路3FおよびECU4Fによって制御されるように構成されている。油圧シリンダ1RLおよび1RRは、作動油給排装置2R、油圧回路3RおよびECU4Rによって制御されるように構成されている。すなわち、前輪側の油圧シリンダ1FLおよび1FRを制御する制御系統と、後輪側の油圧シリンダ1RLおよび1RRを制御する制御系統とが、分けられており、独立されている。
【0016】
油圧シリンダ1FLは、前輪保持部材51FLと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1FLは、ショックアブソーバとして機能するとともに、伸縮することによって前輪保持部材51FLと車体との間の距離を調整可能に構成されている。なお、前輪保持部材51FLと車体との間には、油圧シリンダ1FLと並列にサスペンションスプリング(図示省略)が設けられている。
【0017】
具体的に、油圧シリンダ1FLは、ハウジング11と、ピストン12と、ピストンロッド13とを含んでいる。ハウジング11が内部空間を有し、その内部空間にピストン12が移動可能に収容され、ピストン12にピストンロッド13が連結されている。ハウジング11が前輪保持部材51FLと連結され、ピストンロッド13が車体と連結されている。ハウジング11の内部空間がピストン12によって仕切られ、油室14および15が形成されている。ピストン12には油室14および15を連通させる連通路16が形成され、連通路16には絞りが設けられている。このため、油圧シリンダ1FLは、ピストン12のハウジング11に対する移動速度に応じた減衰力を発生させるように構成されている。
【0018】
油圧シリンダ1FRは、前輪保持部材51FRと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1RLは、後輪保持部材51RLと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1RRは、後輪保持部材51RRと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1FR、1RLおよび1RRのその他の構成は、上記した油圧シリンダ1FLと同様である。
【0019】
作動油給排装置2Fは、油圧回路3Fを介して油圧シリンダ1FLおよび1FRに作動油を給排するために設けられている。作動油給排装置2Fは、オイルポンプ21Fと、オイルポンプ21Fを作動させるモータ22Fと、作動油が貯留されるリザーバタンク23Fと、オイルポンプ21Fの吐出口側に並列に配置されるチェックバルブ24Fおよびリターンバルブ25Fとを含んでいる。なお、作動油は、本発明の「流体」の一例である。
【0020】
オイルポンプ21Fは、リザーバタンク23Fの作動油を汲み上げて油圧回路3Fの後述する共通通路31Fに供給するために設けられている。チェックバルブ24Fは、オイルポンプ21Fから共通通路31Fに向かう作動油の流れを許容する一方、共通通路31Fからオイルポンプ21Fに向かう作動油の流れを阻止するように構成されている。リターンバルブ25Fは、オイルポンプ21Fからの作動油の共通通路31Fへの供給と、共通通路31Fからリザーバタンク23Fへの作動油の排出とを切り替えるために設けられている。具体的に、リターンバルブ25Fは、オイルポンプ21Fが停止している場合に、オイルポンプ21Fの吐出口側と共通通路31Fとを遮断して、共通通路31Fをリザーバタンク23F側と連通させるとともに、オイルポンプ21Fが作動している場合に、リザーバタンク23F側と共通通路31Fとを遮断して、共通通路31Fをオイルポンプ21Fの吐出口側と連通させるように構成されている。
【0021】
油圧回路3Fは、油圧シリンダ1FLおよび1FRと作動油給排装置2Fとの間に設けられている。油圧回路3Fは、共通通路31Fと、個別通路32FLおよび32FRと、車高調整弁33FLおよび33FRと、アキュムレータ34FLおよび34FRとを含んでいる。
【0022】
共通通路31Fは、作動油給排装置2Fと接続され、油圧センサ41Fが設けられている。個別通路32FLは、車高調整弁33FLを介して共通通路31Fと接続されている。個別通路32FLには、油圧シリンダ1FLおよびアキュムレータ34FLが設けられている。個別通路32FRは、車高調整弁33FRを介して共通通路31Fと接続されている。個別通路32FRには、油圧シリンダ1FRおよびアキュムレータ34FRが設けられている。
【0023】
車高調整弁33FLは、たとえば、常閉の電磁開閉弁であり、個別通路32FLを共通通路31Fと連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33FLは、油圧シリンダ1FLの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。アキュムレータ34FLは、ハウジングの内部空間が仕切り部材で仕切られることによってガス室および油室が形成されており、ガス室にガスが充填され、油室が個別通路32FLと接続されている。アキュムレータ34FLは、個別通路32FLの油圧に応じてガス室および油室の容積が変化するように構成され、油圧シリンダ1FLの伸縮動作に弾性力を発生させるガスばねとして機能する。
【0024】
車高調整弁33FRは、たとえば、常閉の電磁開閉弁であり、個別通路32FRを共通通路31Fと連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33FRは、油圧シリンダ1FRの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。アキュムレータ34FRは、ハウジングの内部空間が仕切り部材で仕切られることによってガス室および油室が形成されており、ガス室にガスが充填され、油室が個別通路32FRと接続されている。アキュムレータ34FRは、個別通路32FRの油圧に応じてガス室および油室の容積が変化するように構成され、油圧シリンダ1FRの伸縮動作に弾性力を発生させるガスばねとして機能する。
【0025】
ECU4Fは、前輪50FLおよび50FR側の車高を調整するように構成されている。ECU4Fには、操作スイッチ(図示省略)、車高センサ(図示省略)、油圧センサ41F、モータ22F、車高調整弁33FLおよび33FRなどが接続されている。操作スイッチは、ユーザからの車高調整指示を受け付けるために設けられている。車高センサは、前輪保持部材51FLと車体との間の距離を検出するとともに、前輪保持部材51FRと車体との間の距離を検出するために設けられている。油圧センサ41Fは、油圧シリンダ1FLおよび1FRの油圧を検出するために設けられている。ECU4Fは、操作スイッチ、車高センサおよび油圧センサ41Fなどからの入力に基づいて、モータ22F、車高調整弁33FLおよび33FRを制御するように構成されている。
【0026】
作動油給排装置2Rは、油圧回路3Rを介して油圧シリンダ1RLおよび1RRに作動油を給排するために設けられている。すなわち、作動油給排装置2Rは、作動油給排装置2Fとは別個に設けられている。作動油給排装置2Rは、オイルポンプ21Rと、オイルポンプ21Rを作動させるモータ22Rと、作動油が貯留されるリザーバタンク23Rと、オイルポンプ21Rの吐出口側に並列に配置されるチェックバルブ24Rおよびリターンバルブ25Rとを含んでいる。
【0027】
オイルポンプ21Rは、リザーバタンク23Rの作動油を汲み上げて油圧回路3Rの後述する共通通路31Rに供給するために設けられている。チェックバルブ24Rは、オイルポンプ21Rから共通通路31Rに向かう作動油の流れを許容する一方、共通通路31Rからオイルポンプ21Rに向かう作動油の流れを阻止するように構成されている。リターンバルブ25Rは、オイルポンプ21Rからの作動油の共通通路31Rへの供給と、共通通路31Rからリザーバタンク23Rへの作動油の排出とを切り替えるために設けられている。具体的に、リターンバルブ25Rは、オイルポンプ21Rが停止している場合に、オイルポンプ21Rの吐出口側と共通通路31Rとを遮断して、共通通路31Rをリザーバタンク23R側と連通させるとともに、オイルポンプ21Rが作動している場合に、リザーバタンク23R側と共通通路31Rとを遮断して、共通通路31Rをオイルポンプ21Rの吐出口側と連通させるように構成されている。
【0028】
油圧回路3Rは、油圧シリンダ1RLおよび1RRと作動油給排装置2Rとの間に設けられている。油圧回路3Rは、共通通路31Rと、個別通路32RLおよび32RRと、車高調整弁33RLおよび33RRと、アキュムレータ34RLおよび34RRとを含んでいる。
【0029】
共通通路31Rは、作動油給排装置2Rと接続され、油圧センサ41Rが設けられている。個別通路32RLは、車高調整弁33RLを介して共通通路31Rと接続されている。個別通路32RLには、油圧シリンダ1RLおよびアキュムレータ34RLが設けられている。個別通路32RRは、車高調整弁33RRを介して共通通路31Rと接続されている。個別通路32RRには、油圧シリンダ1RRおよびアキュムレータ34RRが設けられている。
【0030】
車高調整弁33RLは、たとえば、常閉の電磁開閉弁であり、個別通路32RLを共通通路31Rと連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33RLは、油圧シリンダ1RLの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。アキュムレータ34RLは、ハウジングの内部空間が仕切り部材で仕切られることによってガス室および油室が形成されており、ガス室にガスが充填され、油室が個別通路32RLと接続されている。アキュムレータ34RLは、個別通路32RLの油圧に応じてガス室および油室の容積が変化するように構成され、油圧シリンダ1RLの伸縮動作に弾性力を発生させるガスばねとして機能する。
【0031】
車高調整弁33RRは、たとえば、常閉の電磁開閉弁であり、個別通路32RRを共通通路31Rと連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33RRは、油圧シリンダ1RRの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。アキュムレータ34RRは、ハウジングの内部空間が仕切り部材で仕切られることによってガス室および油室が形成されており、ガス室にガスが充填され、油室が個別通路32RRと接続されている。アキュムレータ34RRは、個別通路32RRの油圧に応じてガス室および油室の容積が変化するように構成され、油圧シリンダ1RRの伸縮動作に弾性力を発生させるガスばねとして機能する。
【0032】
ECU4Rは、後輪50RLおよび50RR側の車高を調整するように構成されている。ECU4Rには、操作スイッチ、車高センサ(図示省略)、油圧センサ41R、モータ22R、車高調整弁33RLおよび33RRなどが接続されている。車高センサは、後輪保持部材51RLと車体との間の距離を検出するとともに、後輪保持部材51RRと車体との間の距離を検出するために設けられている。油圧センサ41Rは、油圧シリンダ1RLおよび1RRの油圧を検出するために設けられている。ECU4Rは、操作スイッチ、車高センサおよび油圧センサ41Rなどからの入力に基づいて、モータ22R、車高調整弁33RLおよび33RRを制御するように構成されている。また、ECU4Rは、ECU4Fと通信可能に構成されている。
【0033】
このような車高調整システム100において、車高を高くする車高上昇制御時には、ECU4Fにより、モータ22Fを駆動してオイルポンプ21Fが作動されるとともに、車高調整弁33FLおよび33FRが開弁される。このため、オイルポンプ21Fから吐出された作動油が油圧回路3Fを介して油圧シリンダ1FLおよび1FRに供給される。また、ECU4Rにより、モータ22Rを駆動してオイルポンプ21Rが作動されるとともに、車高調整弁33RLおよび33RRが開弁される。このため、オイルポンプ21Rから吐出された作動油が油圧回路3Rを介して油圧シリンダ1RLおよび1RRに供給される。これにより、油圧シリンダ1FL、1FR、1RLおよび1RRが伸びて車高が高くなる。その後、車高が目標値に到達すると、ECU4Fにより、車高調整弁33FLおよび33FRが閉弁され、オイルポンプ21Fの作動が停止される。また、ECU4Rにより、車高調整弁33RLおよび33RRが閉弁され、オイルポンプ21Rの作動が停止される。
【0034】
また、車高調整システム100において、車高を低くする車高下降制御時には、ECU4Fにより、オイルポンプ21Fを停止させた状態のまま、車高調整弁33FLおよび33FRが開弁される。このため、油圧シリンダ1FLおよび1FRの作動油が油圧回路3Fおよびリターンバルブ25Fを介してリザーバタンク23Fに戻される。また、ECU4Rにより、オイルポンプ21Rを停止させた状態のまま、車高調整弁33RLおよび33RRが開弁される。このため、油圧シリンダ1RLおよび1RRの作動油が油圧回路3Rおよびリターンバルブ25Rを介してリザーバタンク23Rに戻される。これにより、油圧シリンダ1FL、1FR、1RLおよび1RRが縮んで車高が低くなる。その後、車高が目標値に到達すると、ECU4Fにより車高調整弁33FLおよび33FRが閉弁され、ECU4Rにより車高調整弁33RLおよび33RRが閉弁される。
【0035】
-効果-
本実施形態では、上記のように、油圧シリンダ1FLおよび1FRに作動油を給排する作動油給排装置2Fと、油圧シリンダ1RLおよび1RRに作動油を給排する作動油給排装置2Rとが個別に設けられることによって、作動油給排装置2Fによる油圧シリンダ1FLおよび1FRに対する制御と、作動油給排装置2Rによる油圧シリンダ1RLおよび1RRに対する制御とが同時に行われることにより、車高の調整に要する時間の短縮を図ることができる。また、オイルポンプ21Fおよびモータ22Fの負荷が低減されるとともに、オイルポンプ21Rおよびモータ22Rの負荷が低減されることにより、耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0039】
また、上記実施形態では、モータ22F、車高調整弁33FLおよび33FRを制御するECU4Fと、モータ22R、車高調整弁33RLおよび33RRを制御するECU4Rとが個別に設けられる例を示したが、これに限らず、前輪側のモータおよび車高調整弁と、後輪側のモータおよび車高調整弁とが1つのECUによって制御されるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態において、オイルポンプ21Fによって加圧された油圧を蓄圧する蓄圧タンク(図示省略)が共通通路31Fに設けられていてもよいし、オイルポンプ21Rによって加圧された油圧を蓄圧する蓄圧タンク(図示省略)が共通通路31Rに設けられていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、アキュムレータ34FLと並列に接続可能な副アキュムレータ(図示省略)が設けられていてもよいし、アキュムレータ34FRと並列に接続可能な副アキュムレータ(図示省略)が設けられていてもよいし、アキュムレータ34RLと並列に接続可能な副アキュムレータ(図示省略)が設けられていてもよいし、アキュムレータ34RRと並列に接続可能な副アキュムレータ(図示省略)が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車輪に対する車体の高さ位置を調整する車高調整システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1FL 油圧シリンダ(前輪側アクチュエータ)
1FR 油圧シリンダ(前輪側アクチュエータ)
1RL 油圧シリンダ(後輪側アクチュエータ)
1RR 油圧シリンダ(後輪側アクチュエータ)
2F 作動油給排装置(前輪側流体給排装置)
2R 作動油給排装置(後輪側流体給排装置)
51FL 前輪保持部材
51FR 前輪保持部材
51RL 後輪保持部材
51RR 後輪保持部材
100 車高調整システム