(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】山型ラーメンフレームおよび建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20250527BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/58 504L
(21)【出願番号】P 2022065840
(22)【出願日】2022-04-12
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】仲野 成彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕子
(72)【発明者】
【氏名】井口 智晴
(72)【発明者】
【氏名】市川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 昴
(72)【発明者】
【氏名】土方 和己
(72)【発明者】
【氏名】本間 大誠
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 伸治
(72)【発明者】
【氏名】中川 岳士
(72)【発明者】
【氏名】紀本 亨
【審査官】岡崎 彦哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239382(JP,A)
【文献】特開2021-055465(JP,A)
【文献】特開2009-293342(JP,A)
【文献】実開平05-062603(JP,U)
【文献】特開2020-002646(JP,A)
【文献】特開昭54-096209(JP,A)
【文献】特開2012-184557(JP,A)
【文献】米国特許第04854104(US,A)
【文献】特開平10-102588(JP,A)
【文献】特開2000-213059(JP,A)
【文献】特開2001-336216(JP,A)
【文献】特開2008-285977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/18、1/26、1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の柱と、斜め方向に長尺で一端が前記柱の上端に接合され、山型を形成するように互いの他端が向かい合う二本の勾配梁と、前記柱と前記勾配梁とを接合する挿入鋼板と、を備える山型ラーメンフレームであって、
二本の前記柱と二本の前記勾配梁とは、それぞれ柱勝ちで接合され、 前記挿入鋼板は、前記柱に挿入される柱挿入部と、前記勾配梁に挿入される梁挿入部と、を有し、前記柱挿入部と前記梁挿入部とが、
前記柱と前記勾配梁とが成す角度と同じ角度を成し、形成される一枚の板状の部材であり、 前記挿入鋼板は、山型ラーメンフレームが形成する面であるフレーム面に平行に前記柱と、前記勾配梁と、に挿入され
、 前記挿入鋼板には、前記柱と前記勾配梁とによって形成される角のうち、前記柱の桁方向側面に対応する位置に、当該挿入鋼板の厚み方向に貫通した板第二孔が設けられ、 前記柱の桁方向側面には、前記板第二孔に対応する桁方向に貫通した角第一孔が設けられ、
桁方向に長尺で前記角に接合される第一横架材の端部が固定される第一横架材受金物が、前記板第二孔と、前記角第一孔と、固定具と、を用いて、前記柱の桁方向側面に固定されることを特徴とする山型ラーメンフレーム。
【請求項2】
前記挿入鋼板の前記梁挿入部には、長軸が前記勾配梁の長尺方向と同じ方向でフレーム面に平行な楕円を描くように配置される当該挿入鋼板の厚み方向に貫通した複数の板第一孔が設けられ、 前記勾配梁には、前記板第一孔に対応するフレーム面に対して垂直方向である桁方向に貫通した複数の梁第一孔が設けられ、
前記梁挿入部が前記勾配梁に挿入された状態で、重なった前記板第一孔と、前記梁第一孔と、に固定具が挿入されることを特徴とする請求項1に記載の山型ラーメンフレーム。
【請求項3】
前記山型ラーメンフレームは、鉛直方向の長さが前記勾配梁の他端の小口面の鉛直方向の長さと同じであり、底面が二本の前記勾配梁の下面に面一で上方に陥没して形成される連結材をさらに備え、 前記連結材のフレーム面に垂直な側面には、前記勾配梁の他端が固定される梁受金物が固定され、前記連結材のフレーム面に平行な側面には、桁方向に長尺で当該連結材に接合される第二横架材の端部が固定される第二横架材受金物が固定され、
前記連結材は、二本の前記勾配梁の他端の間で、それぞれの前記勾配梁の他端に接合されることを特徴とする請求項
1又は2に記載の山型ラーメンフレーム。
【請求項4】
前記梁挿入部は、前記勾配梁に挿入された状態で、桁方向に長尺で前記勾配梁の中間に接合される第三横架材のうち、最も水下側の前記第三横架材の接合位置に干渉しない長さで、形成されることを特徴とする請求項
3に記載の山型ラーメンフレーム。
【請求項5】
複数の請求項1乃至請求項
4に記載の山型ラーメンフレームが、間隔を空けてフレーム面が平行な姿勢で一列に並び、各前記山型ラーメンフレームの間に、桁方向に長尺な横架材が架設され、骨組みが形成される建築物であって、
前記建築物は、フレーム面に対して垂直に広がる耐力壁を備え、当該建築物の内部空間が桁方向に開口されることを特徴とする建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と、柱の上端から斜め上方に伸びる勾配梁と、柱と勾配梁とを接合する挿入鋼板と、を備え、トラス構造やブレース等による補強を行うことがない山型ラーメンフレーム、および、複数の山型ラーメンフレームによって骨組みが形成される建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱と梁との接合において、特許文献1に記載されるように、正面L字状の鋼鈑のプレート金具を、柱および梁に対してそれぞれプレカットした角部スリットに挿入し、ドリフトピンを打ち込むことで、柱と梁を接合する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、L字型のプレートを、二本の柱と、鉛直斜め方向に長尺な姿勢で一端が柱の上端に接合され山型を形成するように互いの他端が向かい合う二本の勾配梁と、を備え、柱のみで勾配梁と、勾配梁に設けられる屋根と、の荷重を支える山型ラーメン構造の柱と勾配梁との接合に用いると、L字型のプレートは、鉛直方向と水平方向とに直角に折れ曲がる姿勢になる。その状態では、L字型のプレートの水平方向に伸びる部分に鉛直下向きの力が掛かると、L字型のプレートは、変形又は破損する恐れがあり、ブレースや頬杖等の補強が必要となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、二本の柱と、斜め方向に長尺で一端が柱の上端に接合され山型を形成するように互いの他端が向かい合う二本の勾配梁と、柱と勾配梁とを接合する挿入鋼板と、を備え、ブレースや頬杖等の補強を行う必要のない山型ラーメンフレーム、および、内部空間の意匠性が高く、間取りの自由度が高い建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に掛かる山型ラーメンフレームは、二本の柱と、斜め方向に長尺で一端が前記柱の上端に接合され、山型を形成するように互いの他端が向かい合う二本の勾配梁と、前記柱と前記勾配梁とを接合する挿入鋼板と、を備える山型ラーメンフレームであって、二本の前記柱と二本の前記勾配梁とは、それぞれ柱勝ちで接合され、前記挿入鋼板は、前記柱に挿入される柱挿入部と、前記勾配梁に挿入される梁挿入部と、を有し、前記柱挿入部と前記梁挿入部とが、前記柱と前記勾配梁とが成す角度と同じ角度を成し、形成される一枚の板状の部材であり、前記挿入鋼板は、山型ラーメンフレームが形成する面であるフレーム面に平行に前記柱と、前記勾配梁と、に挿入され、前記挿入鋼板には、前記柱と前記勾配梁とによって形成される角のうち、前記柱の桁方向側面に対応する位置に、当該挿入鋼板の厚み方向に貫通した板第二孔が設けられ、前記柱の桁方向側面には、前記板第二孔に対応する桁方向に貫通した角第一孔が設けられ、桁方向に長尺で前記角に接合される第一横架材の端部が固定される第一横架材受金物が、前記板第二孔と、前記角第一孔と、固定具と、を用いて、前記柱の桁方向側面に固定されることを特徴とする。
【0007】
さらに、前記挿入鋼板の前記梁挿入部には、長軸が前記勾配梁の長尺方向と同じ方向でフレーム面に平行な楕円を描くように配置される当該挿入鋼板の厚み方向に貫通した複数の板第一孔が設けられ、前記勾配梁には、前記板第一孔に対応する桁方向に貫通した複数の梁第一孔が設けられ、前記梁挿入部が前記勾配梁に挿入された状態で、重なった前記板第一孔と、前記梁第一孔と、に固定具が挿入されることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記山型ラーメンフレームは、鉛直方向の長さが前記勾配梁の他端の小口面の鉛直方向の長さと同じであり、底面が二本の前記勾配梁の下面に面一で上方に陥没して形成される連結材をさらに備え、前記連結材のフレーム面に垂直な側面には、前記勾配梁の他端が固定される梁受金物が固定され、前記連結材のフレーム面に平行な側面には、桁方向に長尺で当該連結材に接合される第三横架材の端部が固定される第三横架材受金物が固定され、前記連結材は、二本の前記勾配梁の他端の間で、それぞれの前記勾配梁の他端に接合されることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記梁挿入部は、前記勾配梁に挿入された状態で、フレーム面に対して垂直方向である桁方向に長尺で前記勾配梁の中間に接合される第一横架材のうち、最も水下側の前記第一横架材の接合位置に干渉しない長さで、形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に掛かる建築物は、複数の請求項1乃至請求項4に記載の山型ラーメンフレームが、間隔を空けてフレーム面が平行な姿勢で一列に並び、各前記山型ラーメンフレームの間に、桁方向に長尺な横架材が架設され、骨組みが形成される建築物であって、前記建築物は、フレーム面に対して垂直に広がる耐力壁を備え、当該建築物の内部空間が桁方向に開口されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る山型ラーメンフレームによると、挿入鋼板は、柱と勾配梁とに挿入された状態であるとき、柱挿入部が鉛直方向に伸び、梁挿入部が勾配梁の勾配と同じ勾配で斜めに伸びる姿勢になる。この状態であるとき、挿入鋼板の梁挿入部に鉛直下向きの力が掛かっても、当該梁挿入部には、当該梁挿入部の長尺方向の反発力が発生するため、ブレースや頬杖等の補強を必要としない。
【0013】
さらに、勾配梁と、挿入鋼板と、を固定する複数の固定具が、楕円形を描くように挿入されることで、固定具は、勾配梁の長尺方向及び短手方向に無駄なく広がり、勾配梁と、挿入鋼板と、を固定することになる。その結果、勾配梁と、挿入鋼板と、の固定が強固になり、山型ラーメンフレームのフレーム面の面内方向に対する強度を高めることができる。
【0014】
さらに、第一横架材が接合される山型ラーメンフレームの角において、当該角に柱と勾配梁とを接合するための挿入鋼板が挿入されていても、第一横架材受金物を取付けることで、挿入鋼板の形状と、柱又は勾配梁のスリットの形状と、を複雑にすることなく、容易に山型ラーメンフレームの角に第一横架材を接合することができる。
【0015】
さらに、二本の勾配梁の他端の間に連結材を配置することで、山型ラーメンフレームに第二横架材を接合する際、連結材の第二横架材受金物に第二横架材の端部を固定するだけでよく、第二横架材の接合手段が複雑になることがない。また、第二横架材が短くなるため、第二横架材の接合作業の施工性が良くなる。さらに、連結材の鉛直方向の長さは、勾配梁の他端の小口面の鉛直方向の長さと同じであるため、連結材によって意匠性を損ねることがなく、利用できる内部空間が狭くなることもない。さらに、連結材の底面が、勾配梁の下面と面一になり連続するように山型を形成していることで、意匠性を高めることができる。
【0016】
さらに、挿入鋼板の梁挿入部の長さが、第三横架材の接合位置に干渉しないように長く形成することで、固定具が広がって勾配梁と、挿入鋼板と、に挿入されることになる。その結果、勾配梁と、挿入鋼板と、の固定が強固になり、山型ラーメンフレームのフレーム面の面内方向に対する強度を高めることができる。
【0017】
本発明に係る建築物によると、当該建築物の内部空間が桁方向に開口されていることで、間取りの自由度が高くなり、内部空間の意匠性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る山型ラーメンフレームを示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る基礎と柱との接合の様子を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る柱と勾配梁と挿入鋼板を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る柱と勾配梁との接合の様子を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る柱に第一横架材受金物を固定する様子を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る連結材を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る勾配梁と連結材との接合の様子を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る連結材と第二横架材との接合の様子を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る山型ラーメンフレームの角と第一横架材との接合の様子を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る勾配梁と第三横架材との接合の様子を示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る山型ラーメンフレームを示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る建築物の骨組みを示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る建築物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る山型ラーメンフレーム101および建築物104について、以下、図面を参照しつつ説明する。ただし、以下はあくまで本発明の一実施形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0020】
山型ラーメンフレームとは、少なくとも二本の柱及び二本の梁によって構成されるラーメン構造の枠組みにおいて、二本の柱のそれぞれの上端に一端が固定される二本の梁が、一端から他端に向かって斜め上方に伸びる姿勢で互いの他端同士が連結されることで頂を形成する枠組みであり、
図1に示すように、一実施形態の山型ラーメンフレーム101は、各基礎1の上に立設する二本の木材である柱2と、斜め方向に長尺で一端31がそれぞれの柱2の上端21に接合され互いの他端32が山型を形成するように向かい合う二本の木材である勾配梁3と、柱2の上端21と勾配梁3の一端31とを接合する挿入鋼板7と、二本の勾配梁3の他端32の間に配置される木材である連結材4と、によって構成される木造のフレームである。
また、以下説明において、山型ラーメンフレーム101が形成する面をフレーム面と呼び、フレーム面に垂直な方向を桁方向と呼ぶ。
【0021】
初めに、基礎1に立設する柱2について説明する。
図2に示すように、柱2の下端22は、柱脚金物6によって基礎1に接合される。
図2(a)に示すように、柱脚金物6は、鋼材の部品であって、板状であり水平に広がる姿勢で基礎1の上面に面し、鉛直方向に貫通した図示しない孔である複数の柱脚第二孔が設けられる下部61と、下部61の上面から上方に立ち上がる板状の立上部62と、板状であり水平に広がる姿勢で立上部62の上端に下方から支持される第一底部63と、第一底部63の両端から上方に立ち上がる板状で、その厚み方向に貫通した孔である複数の柱脚第一孔67が設けられる柱下挿入部65と、柱脚第二孔の上方が鉛直方向に開口するように立上部62の側面から水平方向に突出する板状の第二底部64と、第二底部64の下面、立上部62の側面および下部61の上面に縁が溶接される板状のスチフナー66と、によって構成される。そして、柱脚第二孔に上方からアンカーボルト204を挿入し、そのアンカーボルト204を基礎1に打ち込むことで、柱脚金物6は基礎1に固定される。このとき、柱脚第二孔の上方が鉛直方向に開口するように、第二底部64が形成されることで、長尺なアンカーボルト204を柱脚第二孔に上方から挿入することができ、且つ、アンカーボルト204を打ち込むための工具を使用することができる。
【0022】
図2(a)に示すように、柱脚金物6に固定される柱2の下端22は、柱脚金物6の二枚の柱下挿入部65が挿入される下方及び水平方向に開口したスリットである二つの柱第二スリット24と、柱脚第一孔67に対応した位置に、当該柱脚第一孔67と同じ方向に貫通した孔である複数の柱第三孔27と、が設けられる。そして、
図2(b)に示すように、柱2の柱第二スリット24に柱脚金物6の柱下挿入部65を挿入させ、重なった柱脚第一孔67と、柱第三孔27と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで、柱2と柱脚金物6とが固定される。よって、柱脚金物6を介して柱2の下端22は基礎1の上面に固定され立設する。なお、柱2の二つの柱第二スリット24の間の底面である第一底面28は、柱2の柱第二スリット24に柱脚金物6の柱下挿入部65が挿入された状態であるときに、柱脚金物6の第一底部63の上面に当接するように形成され、柱2の二つの柱第二スリット24の間ではない底面である第二底面29は、柱2の柱第二スリット24に柱脚金物6の柱下挿入部65が挿入された状態であるときに、柱脚金物6の第二底部64の上面に当接するように形成されるため、柱脚金物6は、柱2から受ける荷重を広い面で受けることができ、柱脚金物6と柱2との固定の強度が増す。
図2(b)では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった柱脚第一孔67と、柱第三孔27と、にドリフトピン201が挿入される。
【0023】
次に、柱2と、勾配梁3と、の接合について説明する。
図1に示すように、柱2と、勾配梁3と、は板状の鋼材である一枚の挿入鋼板7を介して接合される。挿入鋼板7は、
図3に示すように、柱2に挿入される柱挿入部71と、勾配梁3に挿入される梁挿入部72と、から構成され、
図1に示すように、柱挿入部71と、梁挿入部72と、が成す角度402は、柱2と、勾配梁3と、が成す角度401と同じ角度になるように形成される。そして、
図3に示すように、挿入鋼板7の柱挿入部71と、梁挿入部72と、には、当該挿入鋼板7の厚み方向に貫通した孔である複数の板第一孔73が設けられる。
【0024】
図3に示すように、柱2の上端21には、フレーム面に平行で上方及び水平方向に開口したスリットである柱第一スリット23が設けられ、さらに、柱第一スリット23に挿入鋼板7の柱挿入部71が挿入された状態であるときに、挿入鋼板7の柱挿入部71に設けられた板第一孔73に対応した位置に、桁方向に貫通した孔である複数の柱第一孔25が設けられる。そして、
図4に示すように、柱2の柱第一スリット23に挿入鋼板7の柱挿入部71を挿入させ、柱挿入部71の中央に位置する板第一孔73と、当該板第一孔73に重なる柱第一孔25と、に固定具であるボルト202を挿入し、ボルト202の先端側からナット203によって締め付け、その他の重なった板第一孔73と、柱第一孔25と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで、柱2と、挿入鋼板7と、は固定される。
図4では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった板第一孔73と、柱第一孔25と、に固定具が挿入される。
【0025】
図3に示すように、勾配梁3の一端31には、フレーム面に平行で柱2の柱第一スリット23のように三方向に開口したスリットである梁第一スリット34が設けられ、さらに、梁第一スリット34に挿入鋼板7の梁挿入部72が挿入された状態であるときに、挿入鋼板7の梁挿入部72に設けられた板第一孔73に対応した位置に、桁方向に貫通した孔である複数の梁第一孔36が設けられる。そして、
図4に示すように、勾配梁3の梁第一スリット34に挿入鋼板7の梁挿入部72を挿入させ、重なった板第一孔73と、梁第一孔36と、のうち、1組の板第一孔73と、梁第一孔36と、に固定具であるボルト202を挿入し、ボルト202の先端側からナット203によって締め付け、その他の重なった板第一孔73と、梁第一孔36と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで、勾配梁3と、挿入鋼板7と、は固定される。
図4では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった板第一孔73と、梁第一孔36と、に固定具が挿入される。
【0026】
以上のように、柱2と、挿入鋼板7と、が固定され、勾配梁3と、挿入鋼板7と、が固定されることで、山型ラーメンフレーム101を構成する柱2と、勾配梁3と、が挿入鋼板7を介して接合される。挿入鋼板7は、柱2と、勾配梁3と、に挿入された状態であるとき、柱挿入部71が鉛直下方向に伸び、梁挿入部72が勾配梁3の勾配と同じ勾配で斜め方向に伸びる姿勢になっており、挿入鋼板7の梁挿入部72に鉛直下向きの力が掛かっても、当該梁挿入部72には、当該梁挿入部72の長尺方向の反発力が発生するため、二本の柱2と、斜め方向に長尺で一端31が前記柱2の上端21に接合され山型を形成するように互いの他端32が向かい合う二本の前記勾配梁3と、を備え、柱2のみで勾配梁3と、勾配梁3に設けられる屋根と、の荷重を支える山型ラーメンフレーム101において、フレーム面に対するブレースや頬杖等の補強を行う必要がなく、部材数の削減、施工性能向上が図れ、その内部空間を有効に使用することが可能となる。なお、一実施形態では、柱勝ちで柱2と勾配梁3とが接合されるが、梁勝ちの接合であっても良い。
【0027】
さらに、
図1に示すように、挿入鋼板7の梁挿入部72は、勾配梁3の長尺方向に長く形成される。山型ラーメンフレーム101には、
図12に示すように、その勾配梁3の中間の桁方向側面に桁方向に長尺な第三横架材53である母屋が間隔を空けて複数接合されることになる。そのため、
図1に示すように、勾配梁3に挿入される挿入鋼板7の梁挿入部72は、勾配梁3と、第三横架材53と、の接合の妨げになることを避けるように、勾配梁3の第三横架材53の接合位置404に干渉しない範囲で当該勾配梁3の長尺方向に向かって長く形成される。鋼材である挿入鋼板7の梁挿入部72の勾配梁3の長尺方向と同じ方向の長さが、長くなることで、固定具を広い範囲で勾配梁と、挿入鋼板と、に挿入することができる。その結果、勾配梁と、挿入鋼板と、の固定が強固になり、山型ラーメンフレームのフレーム面の面内方向に対する強度を高めることができる。また、挿入鋼板7のフレーム面に平行な面積が大きくなり、挿入鋼板7は、フレーム面に平行な面内方向に対して剛性が高くなり、挿入鋼板7自体が耐力壁として作用するため、挿入鋼板7を介して柱2と、勾配梁3と、が接合される山型ラーメンフレーム101は、フレーム面の面内方向に掛かる山型ラーメンフレーム101自身の荷重や積雪による静的荷重、及び、風雨や地震による動的荷重に対して強度を有することができる。
【0028】
また、
図3に示すように、挿入鋼板7の梁挿入部72に設けられる複数の板第一孔73には、長軸が前記勾配梁3の長尺方向と同じ方向でフレーム面に平行な楕円303を描くように配置される板第一孔73と、その楕円303の中央に配置される板第一孔73と、がある。そして、
図4に示すように、挿入鋼板7の梁挿入部72に設けられる複数の板第一孔73と、当該板第一孔73に重なった梁第一孔36と、のうち、前述した固定具であるボルト202が挿入されるのは、楕円303の中央に配置される板第一孔73と、当該板第一孔73に重なる梁第一孔36と、であり、楕円303を描くように配置される複数の板第一孔73と、梁第一孔36と、には固定具であるドリフトピン201が挿入される。楕円303を描くように固定具が挿入されることで、固定具は、勾配梁3の長尺方向及び短手方向に無駄なく広がり、勾配梁3と、挿入鋼板7と、を固定することになる。結果、必要以上に板第一孔73と、梁第一孔36と、を設ける必要がなく、勾配梁3と、挿入鋼板7と、の固定が強固になり、山型ラーメンフレーム101における挿入鋼板7の耐力壁としての効果がより高くなる。もし、必要以上に板第一孔73と、梁第一孔36と、を設け勾配梁3と、挿入鋼板7と、を固定すると、挿入鋼板7は多数の板第一孔73によって剛性が低くなり、勾配梁3は多数の梁第一孔36によって剛性が低くなり、山型ラーメンフレーム101が脆弱になる可能性がある。
【0029】
また、
図12に示すように、山型ラーメンフレーム101が用いられる建築物104の骨組み103には、山型ラーメンフレーム101の柱2と、勾配梁3と、が成す角102に、桁方向に長尺な第一横架材52である軒桁が接合されることになる。柱2と、勾配梁3と、が柱勝ちで接合される一実施形態では、柱2の上端21の桁方向側面に第一横架材52が接合されることになり、
図1に示す柱2の上端21の第一横架材52の接合位置403には、
図11に示すように、第一横架材52の端部を固定するための後述する第一横架材受金物90が固定される。
図5に示すように、第一横架材受金物90は、柱2に当接される板状の背面部91と、背面部91の両端から直角に折れ曲がり同じ方向に伸び、後述する第一横架材52の第一横架材スリット521に挿入される板状の二枚の第一横架材挿入部93と、によって構成される鋼材の部品である。第一横架材受金物90の背面部91には、当該背面部91の厚み方向に貫通した孔である複数の被固定孔92が縦に一列に設けられ、第一横架材挿入部93には、当該第一横架材挿入部93の厚み方向に貫通した孔である複数の第一横架材固定孔94が縦に一列に設けられる。なお、一列に設けられる第一横架材固定孔94のうち一番上に位置する第一横架材固定孔94は、上方に開放された形状に形成される。
【0030】
図3に示すように、柱2には、当該柱2の第一横架材52の接合位置403に、第一横架材受金物90の被固定孔92に対応して桁方向に貫通する孔である複数の角第一孔26が設けられ、挿入鋼板7には、柱2の角第一孔26に対応して当該挿入鋼板7の厚み方向に貫通する孔である板第二孔74が設けられる。そして、
図5に示すように、被固定孔92と、角第一孔26および板第二孔74と、が重なるように、第一横架材受金物90の背面部91を柱2に当接させ、重なった被固定孔92と、角第一孔26と、板第二孔74と、に固定具であるボルト202を挿入し、ボルト202の先端からナット203を締め付けることで、第一横架材受金物90を柱2に固定させる。
図5では、例示的に一組のボルト202とナット203だけを表示しているが、全ての重なった被固定孔92と、角第一孔26および板第二孔74と、にボルト202が挿入されナット203によって固定される。
【0031】
なお、柱2の桁方向側面の両方にそれぞれ第一横架材52が接合される山型ラーメンフレーム101の場合は、それぞれの被固定孔92と、角第一孔26および板第二孔74と、が重なるように二つの第一横架材受金物90で柱2を挟み込み、重なった被固定孔92と、角第一孔26と、板第二孔74と、に固定具であるボルト202を挿入し、ボルト202の先端からナット203を締め付けることで、二つの第一横架材受金物90を柱2に固定させる。また、第一横架材52が勾配梁3に接合される他の実施形態では、柱2ではなく勾配梁3に第一横架材受金物90を固定するための孔が設けられる。以上のように、挿入鋼板7が、柱2および勾配梁3に挿入されている状態でも、山型ラーメンフレーム101の柱2と勾配梁3とが成す角102に第一横架材受金物90を固定することができ、第一横架材52を固定するために複雑な構造や部材を必要とせず、容易に第一横架材52を接合することができる。
【0032】
次に、山型ラーメンフレーム101の頂点部分について説明する。
図1に示すように、二本の勾配梁3の向かい合う他端32の間に連結材4が配置される。連結材4は、
図7(a)に示すように、四角柱状の木材であって、その鉛直方向の長さは勾配梁3の他端32の小口面33の鉛直方向の長さと同じ長さであり、連結材4のフレーム面に垂直な側面である第一側面41に梁受金物80が固定され、フレーム面に平行な側面である第二側面42に後述する第二横架材受金物85が固定される。
【0033】
図6に示すように、梁受金物80は、連結材4の第一側面41に当接される板状の背面部81と、背面部81の両端から直角に折れ曲がり同じ方向に伸び、後述する勾配梁3の梁第二スリット35に挿入される板状の二枚の梁頂挿入部83と、によって構成される鋼材の部品である。そして、背面部81には、当該背面部81の厚み方向に貫通した孔である複数の被固定孔82が縦に一列に設けられ、梁頂挿入部83には、当該梁頂挿入部83の厚み方向に貫通した孔である複数の梁頂固定孔84が縦に一列に設けられる。なお、一列に設けられる梁頂固定孔84のうち一番上に位置する梁頂固定孔84は、上方に開放された形状に形成される。
【0034】
図6に示すように、第二横架材受金物85は、連結材4の第二側面42に当接される板状の背面部86と、背面部86の両端から直角に折れ曲がり同じ方向に伸び、後述する第二横架材51の第二横架材スリット511に挿入される板状の二枚の第二横架材挿入部88と、によって構成される鋼材の部品である。そして、背面部86には、当該背面部86の厚み方向に貫通した孔である複数の被固定孔87が縦に一列に設けられ、第二横架材挿入部88には、当該第二横架材挿入部88の厚み方向に貫通した孔である複数の第二横架材固定孔89が縦に一列に設けられる。なお、一列に設けられる第二横架材固定孔89のうち一番上に位置する第二横架材固定孔89は、上方に開放された形状に形成される。
【0035】
図6に示すように、連結材4には、第一側面41に対して垂直に貫通し、梁受金物80の複数の被固定孔82に対応する孔である複数の連結第一孔44と、第二側面42に対して垂直に貫通し、第二横架材受金物85の複数の被固定孔87に対応する孔である複数の連結第二孔45と、が設けられる。そして、被固定孔82と、連結第一孔44と、が重なるように二つの梁受金物80で連結材4を挟み込み、重なった被固定孔82と、連結第一孔44と、に固定具である図示しないボルトを挿入し、ボルトの先端から図示しないナットを締め付けることで、二つの梁受金物80を連結材4の向かい合う二つの第一側面41に固定させる。
【0036】
さらに、第二横架材受金物85の被固定孔87と、連結第二孔45と、が重なるように、第二横架材受金物85の背面部86を連結材4の第二側面42に当接させ、重なった被固定孔87と、連結第二孔45と、に固定具である図示しないボルトを挿入し、ボルトの先端から図示しないナットを締め付けることで、第二横架材受金物85を連結材4の第二側面42に固定させる。山型ラーメンフレーム101の桁方向側面の両方にそれぞれ第二横架材51が接合される場合は、被固定孔87と、連結第二孔45と、が重なるように二つの第二横架材受金物85で連結材4を挟み込み、重なった被固定孔87と、連結第二孔45と、に固定具である図示しないボルトを挿入し、ボルトの先端から図示しないナットを締め付けることで、二つの第二横架材受金物85を連結材4の向かい合う二つの第二側面42に固定させる。
【0037】
図7(a)に示すように、勾配梁3の他端32には、フレーム面に平行なスリットである梁第二スリット35が設けられ、さらに、梁第二スリット35に梁受金物80の梁頂挿入部83が挿入された状態であるときに、勾配梁3の梁頂固定孔84に対応する位置に、桁方向に貫通した孔である複数の梁第二孔37が設けられる。そして、
図7(b)に示すように、勾配梁3の梁第二スリット35に連結材4に固定された梁受金物80の梁頂挿入部83を挿入させ、重なった梁第二孔37と、梁頂固定孔84と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで勾配梁3と、梁受金物80と、が固定される。同様に、山型ラーメンフレーム101のもう一本の勾配梁3と、梁受金物80と、を固定することで、二本の勾配梁3の他端32は連結材4に接合され、二本の勾配梁3と、連結材4と、で山型が形成される。
図7(b)では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった梁第二孔37と、梁頂固定孔84と、にドリフトピン201が挿入される。
【0038】
図12に示すように、山型ラーメンフレーム101が用いられる建築物104は、山型ラーメンフレーム101の頂点部分に、桁方向に長尺な第二横架材51である棟木が接合される。もし、山型ラーメンフレーム101が、連結材4を備えず二本の勾配梁3の他端32同士が接合されるフレームであった場合、第二横架材51の端部が、梁勝ちで勾配梁3の他端32同士が接合されている位置に接合されるため、第二横架材51と、勾配梁3と、の接合手段は複雑になる。また、山型ラーメンフレーム101が、連結材4を備えず、二本の勾配梁3の他端32が、それぞれ一本の第二横架材51の側面に接合される、つまり第二横架材51と、勾配梁3と、が第二横架材勝ちで接合される場合、長尺な第二横架材51が必要となり、その接合作業は大掛かりな作業となる。
【0039】
しかし、本発明のように、二本の勾配梁3の他端32の間に連結材4を備える山型ラーメンフレーム101では、連結材4の第二横架材受金物85に第二横架材51の端部を接合するだけで良いので、第二横架材51の接合手段が複雑になることはなく、また、第二横架材51が短くなるため、第二横架材51の接合作業の施工性が良くなる。特に、連立する複数の山型ラーメンフレーム101によって構成される建築物104においては、隣り合う山型ラーメンフレーム101を立て、それぞれの山型ラーメンフレーム101の連結材4に第二横架材51を接合させて、さらに隣り合う山型ラーメンフレーム101を立て、山型ラーメンフレーム101の連結材4に第二横架材51を接合させて、といったように、第二横架材51によって桁方向の剛性を確保しつつ建築物104を形成する山型ラーメンフレーム101を順に立てることが可能となり、作業の安全性、施工性が格段に良くなる。
【0040】
次に、山型ラーメンフレーム101が連立して骨組み103が形成される建築物104について説明する。
図12に示すように、建築物104の骨組み103は、複数の山型ラーメンフレーム101が、互いにフレーム面が平行になるように一直線上に配置され、夫々の山型ラーメンフレーム101の間に、桁方向に長尺な構造躯体である横架材が架設されることで形成される。一実形態の横架材は、棟木である第二横架材51、軒桁である第一横架材52および母屋である第三横架材53である。
【0041】
図8(a)に示すように、第二横架材51の端部には、第二横架材受金物85の第二横架材挿入部88が挿入される二つの第二横架材スリット511と、当該第二横架材スリット511に第二横架材受金物85の第二横架材挿入部88が挿入された状態であるときに、第二横架材51の第二横架材固定孔89に対応する位置に、第二横架材固定孔89と同じ方向に貫通した孔である複数の第二横架材貫通孔512が設けられる。そして、
図8(b)に示すように、第二横架材51の第二横架材スリット511に連結材4に固定された第二横架材受金物85の第二横架材挿入部88を挿入させ、重なった第二横架材貫通孔512と、第二横架材固定孔89と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで、第二横架材51の端部が山型ラーメンフレーム101に接合される。
図8(b)では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった第二横架材貫通孔512と、第二横架材固定孔89と、に固定具が挿入される。
【0042】
図9(a)に示すように、第一横架材52の端部には、第一横架材受金物90の第一横架材挿入部93が挿入される二つの第一横架材スリット521と、当該第一横架材スリット521に第一横架材受金物90の第一横架材挿入部93が挿入された状態であるときに、第一横架材52の第一横架材固定孔94に対応する位置に、第一横架材固定孔94と同じ方向に貫通した孔である複数の第一横架材貫通孔522が設けられる。そして、
図9(b)に示すように、第一横架材52の第一横架材スリット521に連結材4に固定された第一横架材受金物90の第一横架材挿入部93を挿入させ、重なった第一横架材貫通孔522と、第一横架材固定孔94と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで、第一横架材52の端部が山型ラーメンフレーム101に接合される。
図9(b)では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった第一横架材貫通孔522と、第一横架材固定孔94と、に固定具が挿入される。
【0043】
図1に示す勾配梁3の第三横架材接合位置404には、
図11に示すように、第三横架材受金物95が固定される。
図10(a)に示すように、第三横架材受金物95は、勾配梁3に当接される板状の背面部96と、背面部96の両端から直角に折れ曲がり同じ方向に伸び、後述する第三横架材53の第三横架材スリット531に挿入される板状の二枚の第三横架材挿入部98と、によって構成される鋼材の部品である。そして、背面部96には、当該背面部96の厚み方向に貫通した孔である複数の図示しない被固定孔が縦に一列に設けられ、第三横架材挿入部98には、当該第三横架材挿入部98の厚み方向に貫通した孔である複数の第三横架材固定孔99が縦に一列に設けられる。なお、一列に設けられる第三横架材固定孔99のうち一番上に位置する第三横架材固定孔99は、上方に開放された形状に形成される。そして、勾配梁3には、
図1に示すように、当該勾配梁3の第三横架材接合位置404に、第三横架材受金物95の被固定孔に対応し桁方向に貫通する孔である複数の梁第三孔38が設けられ、梁第三孔38と、第三横架材受金物95の被固定孔と、が重なるように、第三横架材受金物95を勾配梁3に当接させ、重なった梁第三孔38と、第三横架材受金物95の被固定孔と、に固定具である図示しないボルトが挿入され、ボルトの先端から図示しないナットを締め付けることで、勾配梁3に第三横架材受金物95が固定される。
【0044】
図10(a)に示すように、第三横架材53の端部には、第三横架材受金物95の第三横架材挿入部98が挿入される二つの第三横架材スリット531と、当該第三横架材スリット531に第三横架材受金物95の第三横架材挿入部98が挿入された状態であるときに、第三横架材53の第三横架材挿入部98に対応する位置に、第三横架材固定孔99と同じ方向に貫通した孔である複数の第三横架材貫通孔532が設けられる。そして、
図10(b)に示すように、第三横架材53の第三横架材スリット531に連結材4に固定された第三横架材受金物95の第三横架材挿入部98を挿入させ、重なった第三横架材貫通孔532と、第三横架材固定孔99と、に固定具であるドリフトピン201を挿入することで、第三横架材53の端部が山型ラーメンフレーム101に接合される。
図10(b)では、例示的に一つのドリフトピン201だけを表示しているが、全ての重なった第三横架材貫通孔532と、第三横架材固定孔99と、に固定具が挿入される。
【0045】
そして、骨組み103には、
図13に示すように、隣接する山型ラーメンフレーム101の各柱2の間に耐力壁105が設けられ、勾配梁3に天井材101および図示しない屋根が設けられ、最も端に配置される山型ラーメンフレーム101に、フレーム面に平行な大開口窓108が設けられ、床109が設けられることで建築物104は形成される。建築物104は、山型ラーメンフレーム101自体がフレーム面に掛かる静的荷重及び動的荷重に対する強度を有しているため、フレーム面に平行な耐力壁を備える必要がなく、フレーム面に平行な壁を備えないことで、建築物104の内部空間を自由に使用することでき、間取りを自由に設定することで、意匠性を高めることができる。一実施形態のように、内部空間にフレーム面に平行な壁を一切備えず、内部空間が桁方向に開口される建築物104は、大勢の人が収容でき、また、大きな物を内部空間に入れることができるため、展示会、見本市、販売催事、イベント等に最適な建築物104となる。また、内部に複数のテナントを設ける複合施設として活用する場合は、内部空間にフレーム面に平行な壁を設ける間隔の制約がないため、テナントの間取りの制限がなく、様々な間取りで複数のテナントを設けることができる。
【0046】
また、
図1に示すように、山型ラーメンフレーム101の連結材4の底面43は、当該山型ラーメンフレーム101の二本の勾配梁3の下面39に面一に連続するように、山型に形成される。これにより、
図13に示すように、建築物104が、当該建築物104の内部から勾配梁3及び連結材4が見えるように形成される場合に、勾配梁3と連結材4との繋がりの見栄えが良くなり意匠性が向上させられる。さらに、柱2、勾配梁3、第二横架材51、第一横架材52および第三横架材53の固定具が挿入された各孔には、その孔に適合する木材の栓を被せることで、それぞれの孔を隠し、意匠性が向上させられる。さらに、柱2、勾配梁3、第二横架材51、第一横架材52および第三横架材53の各スリットには、スリットの遊びに適合する形状の木材を、各スリットの遊び部分にはめ込むことで、それぞれのスリットを隠し、意匠性が向上させられる。
【0047】
なお、一実施形態では、山型ラーメンフレーム101は基礎上に建てられたが、下階が一般的な骨組みである建築物の上階に建てられても良く、その場合は、柱2は、下階を構成する柱や梁などの構造躯体に立設する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る山型ラーメンフレームおよび建築物は、特に建設業において好意的に採用されるものと見込まれ、建設業の発展に貢献できる。
【符号の説明】
【0049】
101 山型ラーメンフレーム
102 山型ラーメンフレームの角
103 建築物の骨組み
104 建築物
2 柱
21 柱の上端
26 角第二孔
3 勾配梁
31 勾配梁の一端
32 勾配梁の他端
33 勾配梁の他端の小口面
34 梁第一孔
39 勾配梁の下面
4 連結材
41 第一側面(連結材のフレーム面に垂直な側面)
42 第二側面(連結材のフレーム面に平行な側面)
43 連結材の底面
51 第二横架材
52 第一横架材
53 第三横架材
7 挿入鋼板
71 柱挿入部
72 梁挿入部
73 板第一孔
74 板第二孔
85 第二横架材受金物
90 第一横架材受金物
201 ドリフトピン(固定具)
202 ボルト(固定具)
401 柱と勾配梁とが成す角度
402 柱挿入部と梁挿入部とが成す角度
404 第三横架材の接合位置
303 楕円