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特許7687263位置固定用部材の接着固定構造及び位置固定用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】位置固定用部材の接着固定構造及び位置固定用部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 11/00 20060101AFI20250527BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20250527BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20250527BHJP
   F16B 5/08 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
F16B11/00 A
B60R13/02 Z
B60R13/04 Z
F16B5/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022069220
(22)【出願日】2022-04-20
(65)【公開番号】P2023159515
(43)【公開日】2023-11-01
【審査請求日】2024-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】村山 篤史
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043745(JP,A)
【文献】特開平09-183346(JP,A)
【文献】特開2013-130224(JP,A)
【文献】特開2012-238821(JP,A)
【文献】特開2004-240140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 11/00
B60R 13/02
B60R 13/04
F16B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材に固定されるとともに被取付部材に取り付けられることで、前記被取付部材に対して前記取付部材を位置固定するための位置固定用部材が前記取付部材に接着固定された位置固定用部材の接着固定構造であって、
被接着面を有する前記取付部材と、
前記被接着面との対向面が固定面とされた板状の固定部を有する前記位置固定用部材と、
前記取付部材及び前記位置固定用部材に接着する湿気硬化型の接着剤よりなる接着層とを備え、
前記位置固定用部材は、前記固定部の板厚方向に貫通しつつ、前記固定部の外縁から内側に向かって所定長さで延びる切り欠き部を有し、
前記接着層は、前記被接着面と前記固定面との間に介在して前記被接着面と前記固定面とに接着された本体部と、前記本体部と一体に形成され、前記切り欠き部内に存在して前記被接着面と前記切り欠き部の側面とに接着されたはみ出し部とを有していることを特徴とする位置固定用部材の接着固定構造。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記外縁の対向する位置に対となって設けられ、
前記はみ出し部は前記各切り欠き部内にそれぞれ設けられている請求項1記載の位置固定用部材の接着固定構造。
【請求項3】
前記位置固定用部材は、クリップ座又は基準ピン座である請求項1又は2記載の位置固定用部材の接着固定構造。
【請求項4】
前記取付部材は、車両用の内外装部材である請求項1又は2記載の位置固定用部材の接着固定構造。
【請求項5】
前記取付部材は、車両用の内外装部材である請求項3記載の位置固定用部材の接着固定構造。
【請求項6】
請求項1又は2記載の位置固定用部材の接着固定構造に用いられる位置固定用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置固定用部材の接着固定構造及び位置固定用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、従来の位置固定用部材の接着固定構造が開示されている。この位置固定用部材の接着固定構造は、取付部材と、接着層と、位置固定用部材とを備えている。位置固定用部材は、取付部材に接着層により接着固定されている。取付部材に接着固定された位置固定用部材を被取付部材に取り付けることで、被取付部材に対して取付部材が位置固定される。なお、取付部材の周縁部には複数個の位置固定用部材が接着固定されている。
【0003】
取付部材は被接着面を有する。被接着面に設けられる接着層は、位置固定用部材を被接着面に接着させるホットメルト型の接着剤よりなる。位置固定用部材は矩形板状の固定部を有する。固定部における被接着面との対向面が固定面とされる。
【0004】
固定部の周縁部には、固定部の板厚方向に貫通する複数個の抜き穴が設けられている。接着層は、本体部と、本体部と一体に形成され、本体部から接着層の厚さ方向にはみ出す複数個のはみ出し部とを有している。本体部は、被接着面と固定面との間に介在して被接着面と固定面とに接着されている。はみ出し部は、抜き穴内のほぼ全体に充填されて抜き穴の側面に接着されている。
【0005】
各抜き穴は、固定部の裏面である固定面から固定部の表面側に向けて穴径が徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。これにより、抜き穴内に充填されて抜き穴の側面に接着されたはみ出し部がアンカー効果を発揮する。このため、取付部材に対する位置固定用部材の接着固定構造が強化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-183346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の位置固定用部材の接着固定構造では、取付部材に位置固定用部材を接着するにあたり、被接着面と固定面との間に介在させたホットメルト型の接着剤を加熱軟化させるとともに、取付部材に対して位置固定用部材を押圧することで軟化した接着剤を抜き穴内に充填させている。
【0008】
このため、取付部材に位置固定用部材を接着させる際に加熱と押圧が必要であり、作業効率がよくない。また、抜き穴内に接着剤を充填させるには、接着剤が硬化する前に取付部材に対して位置固定用部材を押圧する必要があるため、位置固定用部材が位置ずれするおそれもある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付部材に位置固定用部材を接着固定させる際の作業効率がよく、しかも位置固定用部材の位置ずれを抑えることができる位置固定用部材の接着固定構造及び位置固定用部材を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の位置固定部材の接着固定構造は、取付部材に固定されるとともに被取付部材に取り付けられることで、前記被取付部材に対して前記取付部材を位置固定するための位置固定用部材が前記取付部材に接着固定された位置固定用部材の接着固定構造であって、
被接着面を有する前記取付部材と、
前記被接着面との対向面が固定面とされた板状の固定部を有する前記位置固定用部材と、
前記取付部材及び前記位置固定用部材に接着する湿気硬化型の接着剤よりなる接着層とを備え、
前記位置固定用部材は、前記固定部の板厚方向に貫通しつつ、前記固定部の外縁から内側に向かって所定長さで延びる切り欠き部を有し、
前記接着層は、前記被接着面と前記固定面との間に介在して前記被接着面と前記固定面とに接着された本体部と、前記本体部と一体に形成され、前記切り欠き部内に存在して前記被接着面と前記切り欠き部の側面とに接着されたはみ出し部とを有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の位置固定用部材の接着固定構造では、接着層に湿気硬化型の接着剤を用いる。湿気硬化型の接着剤は、大気中の水分と反応して硬化する。このため、接着剤を加熱する必要がない。また、接着剤を適正範囲に塗布することで切り欠き部内に接着剤を容易に存在させることができる。このため、接着剤を加熱軟化させるとともに取付部材に対して位置固定用部材を押圧して加熱軟化した接着剤を穴内に充填させる従来技術と比較して、作業効率がよい。
【0012】
さらに、接着剤が未硬化状態のときに取付部材に対して位置固定用部材を押圧することが必須ではないため、位置固定用部材の位置ずれを抑えることができる。しかも、切り欠き部内に存在するはみ出し部は、被接着面と切り欠き部の側面とに接着された面以外の外表面が切り欠き部内で外気に晒されている。このため、湿気硬化型の接着剤よりなる接着層のはみ出し部は、切り欠き部内で外気に晒された外表面が早期に硬化する。よって、取付部材に対する位置固定用部材の位置ずれを効果的に抑えることができる。
【0013】
したがって、本発明の位置固定用部材の接着固定構造は、取付部材に位置固定用部材を接着固定させる際の作業効率がよく、しかも位置固定用部材の位置ずれを抑えることができる。
【0014】
切り欠き部は固定部の外縁の対向する位置に対となって設けられ、はみ出し部は各切り欠き部内にそれぞれ設けられていることが好ましい。この場合、固定部の外縁の対向する両側で、取付部材に対して位置固定用部材を早期に接着固定することができる。
【0015】
位置固定用部材は、クリップ座又は基準ピン座であることが好ましい。
【0016】
位置固定用部材がクリップ座である場合は、クリップ座に一体化されたクリップと被取付部材に設けられた係合孔との係合により、クリップ座を被取付部材に取り付けることができる。このため、取付部材の周縁部等に接着固定された複数個のクリップ座を被取付部材に取り付けることで、被取付部材に対して取付部材を位置固定しつつ取り付けることができる。
【0017】
位置固定用部材が基準ピン座である場合は、基準ピン座に一体化された基準ピンを被取付部材に設けられた基準孔に挿通させることにより、基準ピン座を被取付部材に位置固定して位置決めすることができる。このため、取付部材の所定位置に接着固定された基準ピン座を被取付部材に位置固定して位置決めすることで、被取付部材に対して取付部材を位置決めすることができる。
【0018】
取付部材は、車両用の内外装部材であることが好ましい。この場合、車体のボディ等の所定箇所に取付部材としての内外装部材を位置固定することができる。
【0019】
本発明の位置固定用部材は、本発明の位置固定用部材の接着固定構造に用いられるものである。
【0020】
したがって、本発明の位置固定用部材は、取付部材に位置固定用部材を接着固定させる際の作業効率がよく、しかも位置固定用部材の位置ずれを抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の位置固定用部材の接着固定構造及び位置固定用部材によれば、取付部材に位置固定用部材を接着固定させる際の作業効率がよく、しかも位置固定用部材の位置ずれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1のクリップ座の斜視図である。
図2図2は、実施例1のクリップ座を裏側から見た斜視図である。
図3図3は、実施例1のクリップ座の平面図である。
図4図4は、実施例1のクリップ座の底面図である。
図5図5は、実施例1のクリップ座の底面図において、接着層の形成範囲を説明する図である。
図6図6は、実施例1のクリップ座にクリップを装置した状態を示す斜視図である。
図7図7は、実施例2の基準ピン座の斜視図である。
図8図8は、実施例2の基準ピン座を裏側から見た斜視図である。
図9図9は、実施例2の基準ピン座の平面図である。
図10図10は、実施例2の基準ピン座の底面図である。
図11図11は、実施例2の基準ピン座の底面図において、接着層の形成範囲を説明する図である。
図12図12は、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造を車両に適用する例を模式的に示す斜視図である。
図13図13は、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造に係り、取付部材に位置固定用部材を接着固定した状態を模式的に示す平面図である。
図14図14は、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造に係り、クリップ座の部分を部分的に示す部分平面図である。
図15図15は、図14のA-A線断面図である。
図16図16は、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造に係り、基準ピン座の部分を部分的に示す部分平面図である。
図17図17は、図16のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施例1)
実施例1のクリップ座10は、後述する実施例2の基準ピン座20と共に、後述する実施例3の位置固定用部材の接着固定構造30に用いられる。
【0025】
クリップ座10は、一方の側(裏側)が後述する取付部材32に接着固定されるとともに、他方の側(表側)が後述する被取付部材36に取り付けられることで、被取付部材36に対して取付部材32を位置固定しつつ取り付ける。
【0026】
図1図5に示すように、実施例1のクリップ座10は略長方形の外形状を有する。クリップ座10は樹脂成形品よりなる。クリップ座10は本発明の位置固定用部材の一例である。図1及び図3はクリップ座10の表側を示し、図2図4及び図5はクリップ座10の裏側を示す。
【0027】
クリップ座10は、長手方向の一端側に設けられた板状の第1固定部14と、長手方向の他端側に設けられた板状の第2固定部16と、長手方向の中央で第1固定部14及び第2固定部16よりもクリップ座10の表側に一段高くなった板状の台座部15とを有している。台座部15には、後述するクリップ18を装着可能なクリップ装着孔12が形成されている。クリップ装着孔12は、台座部15を板厚方向に貫通している。
【0028】
第1固定部14の外縁における三辺それぞれに切り欠きが一つずつ形成されている。すなわち、第1固定部14の外縁において、クリップ座10の短辺に切り欠き部14aが設けられ、クリップ座10の一方の長辺に切り欠き部14bが設けられ、クリップ座10の他方の長辺に切り欠き部14cが設けられている。各切り欠き部14a、14b、14cは、それぞれ第1固定部14の外縁から内側に向かって所定長さで延びている。各切り欠き部14a、14b、14cは、クリップ座10の外縁から後述する形成範囲ARの中心に向かって、すなわち求心方向に延びている。クリップ座10の長辺に設けられた一対の切り欠き部14b及び切り欠き部14cは、クリップ座10の短手方向(幅方向)に対向している。
【0029】
各切り欠き部14a、14b、14cはいずれもクリップ座10の外縁から内側に向かって略矩形状に凹設されている。切り欠き部14aは、互いに対向する一対の第1側面141a及び第2側面142aと、両第1側面141a及び第2側面142aを接続する第3側面143aとを有している。同様に、切り欠き部14bは、互いに対向する一対の第1側面141b及び第2側面142bと、両第1側面141b及び第2側面142bを接続する第3側面143bとを有している。同様に、切り欠き部14cは、互いに対向する一対の第1側面141c及び第2側面142cと、両第1側面141c及び第2側面142cを接続する第3側面143cとを有している。
【0030】
同様に、第2固定部16の外縁における三辺それぞれに切り欠きが一つずつ形成されている。すなわち、第2固定部16の外縁において、クリップ座10の短辺に切り欠き部16aが設けられ、クリップ座10の一方の長辺に切り欠き部16bが設けられ、クリップ座10の他方の長辺に切り欠き部16cが設けられている。各切り欠き部16a、16b、16cは、それぞれ第2固定部16の外縁から内側に向かって所定長さで延びている。各切り欠き部16a、16b、16cは、クリップ座10の外縁から後述する形成範囲ARの中心に向かって、すなわち求心方向に延びている。クリップ座10の長辺に設けられた一対の切り欠き部16b及び切り欠き部16cは、クリップ座10の短手方向(幅方向)に対向している。
【0031】
各切り欠き部16a、16b、16cはいずれもクリップ座10の外縁から内側に向かって略矩形状に凹設されている。切り欠き部16aは、互いに対向する一対の第1側面161a及び第2側面162aと、両第1側面161a及び第2側面162aを接続する第3側面163aとを有している。同様に、切り欠き部16bは、互いに対向する一対の第1側面161b及び第2側面162bと、両第1側面161b及び第2側面162bを接続する第3側面163bとを有している。同様に、切り欠き部16cは、互いに対向する一対の第1側面161c及び第2側面162cと、両第1側面161c及び第2側面162cを接続する第3側面163cとを有している。
【0032】
第1固定部14に設けられた切り欠き部14a~14cと、第2固定部16に設けられた切り欠き部16a~16cとは、クリップ座10の長手方向における中心線CLに対して対称に形成されている。
【0033】
図2図4及び図5に示すように、クリップ座10の裏面の外縁には、切り欠き部14a~14c及び16a~16c以外の部分で連続して延びるとともに裏面側に突出して、内側に接着剤が入り込む空間部を形成する外枠部17が設けられている。クリップ座10の裏面は、後述する被接着面32bに対向する固定面10aとされている。詳しくは、第1固定部14の裏面が第1固定面14eとされ、第2固定部16の裏面が第2固定面16eとされている。
【0034】
図5においてドット模様で示される領域は、後述する接着層40Aの形成範囲ARを示す。第1固定部14における形成範囲ARは、各切り欠き部14a~14cをそれぞれ部分的に含む領域まで及んでいる。各切り欠き部14a~14cは、第1固定部14の外縁から形成範囲ARより内側(1mm~数mm程度内側)まで延びている。すなわち、各切り欠き部14a、14b、14cの側面のうち第1固定部14の中心側(内側)の第3側面143a、143b、143cは、形成範囲AR内に位置している。さらに言えば、第1固定部14における接着層40Aの形成範囲ARは、各切り欠き部14a、14b、14cの第3側面143a、143b、143cよりも外側にはみ出す大きさとされている。同様に、第2固定部16における形成範囲ARは、各切り欠き部16a~16cをそれぞれ部分的に含む領域まで及んでいる。各切り欠き部16a~16cは、第2固定部16の外縁から形成範囲ARより内側(1mm~数mm程度内側)まで延びている。すなわち、各切り欠き部16a、16b、16cの側面のうち第2固定部16の中心側(内側)の第3側面163a、163b、163cは、形成範囲AR内に位置している。さらに言えば、第2固定部16における接着層40Aの形成範囲ARは、各切り欠き部14a、14b、14cの第3側面143a、143b、143cよりも外側にはみ出す大きさとされている。接着層40Aの形成範囲ARは円形又は略円形をなしている。なお、接着層40Aの形成範囲ARは接着剤の塗布範囲とほぼ一致する。
【0035】
図6に示すように、クリップ座10のクリップ装着孔12には、弾性変形可能なクリップ18が嵌合により装着されている。
【0036】
(実施例2)
実施例2の基準ピン座20は、一方の側(裏側)が後述する取付部材32に接着固定されるとともに、他方の側(表側)が後述する被取付部材36に取り付けられることで、被取付部材36に対して取付部材32を位置固定する。
【0037】
図7図11に示すように、実施例2の基準ピン座20は略正方形の外形状を有する。基準ピン座20は樹脂成形品よりなる。基準ピン座20は本発明の位置固定用部材の一例である。図7及び図9は基準ピン座20の表側を示し、図8図10及び図11は基準ピン座20の裏側を示す。
【0038】
基準ピン座20は、板状の固定部22と、固定部22の表側中央に立設された基準ピン24とから構成されている。固定部22と基準ピン24とは一体成形されている。
【0039】
固定部22の外縁における四辺それぞれに切り欠きが一つずつ形成されている。すなわち、固定部22の外縁において、第1の辺に切り欠き部22aが設けられ、第2の辺に切り欠き部22bが設けられ、第3の辺に切り欠き部22cが設けられ、第4の辺に切り欠き部22dが設けられている。各切り欠き部22a、22b、22c、22dは、それぞれ固定部22の外縁から内側に向かって所定長さで延びている。各切り欠き部22a、22b、22c、22dは、基準ピン座20の外縁から後述する形成範囲ARの中心に向かって、すなわち求心方向に延びている。対向する二辺である第1の辺及び第3の辺に設けられた一対の切り欠き部22a及び切り欠き部22cが基準ピン24を挟んで対向し、対向する他の二辺である第2の辺及び第4の辺に設けられた一対の切り欠き部22b及び切り欠き部22dが基準ピン24を挟んで対向している。
【0040】
各切り欠き部22a、22b、22c、22dはいずれも基準ピン座20の外縁から内側に向かって略矩形状に凹設されている。切り欠き部22aは、互いに対向する一対の第1側面221a及び第2側面222aと、両第1側面221a及び第2側面222aを接続する第3側面223aとを有している。同様に、切り欠き部22bは、互いに対向する一対の第1側面221b及び第2側面222bと、両第1側面221b及び第2側面222bを接続する第3側面223bとを有している。同様に、切り欠き部22cは、互いに対向する一対の第1側面221c及び第2側面222cと、両第1側面221c及び第2側面222cを接続する第3側面223cとを有している。同様に、切り欠き部22dは、互いに対向する一対の第1側面221d及び第2側面222dと、両第1側面221d及び第2側面222dを接続する第3側面223dとを有している。
【0041】
図8図10及び図11に示すように、基準ピン座20の裏面の外縁には、切り欠き部22a~22d以外の部分で連続して延びるとともに裏面側に突出して、内側に接着剤が入り込む空間部を形成する外枠部27が設けられている。基準ピン座20の裏面は、後述する被接着面32bに対向する固定面20aとされている。
【0042】
図11においてドット模様で示される領域は、後述する接着層40Bの形成範囲ARを示す。固定部22における形成範囲ARは、各切り欠き部22a~22dをそれぞれ部分的に含む領域まで及んでいる。各切り欠き部22a~22dは、固定部22の外縁から形成範囲ARより内側(1mm~数mm程度内側)まで延びている。すなわち、各切り欠き部22a、22b、22c、22dの側面のうち固定部22の中心側(内側)の第3側面223a、223b、223c、223dは、形成範囲AR内に位置している。さらに言えば、固定部22における接着層40Bの形成範囲ARは、各切り欠き部22a、22b、22c、22dの第3側面223a、223b、223c、223dよりも外側にはみ出す大きさとされている。接着層40Bの形成範囲ARは円形又は略円形をなしている。なお、接着層40Bの形成範囲ARは接着剤の塗布範囲とほぼ一致する。
【0043】
(実施例3)
図12図17に示すように、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造30は、取付部材32と、実施例1のクリップ座10と、実施例2の基準ピン座20と、接着層40A、40Bとを備えている。
【0044】
取付部材32は、長方形の外形状を有する車両用外装部材である。取付部材32は樹脂成形品よりなる。図12に示すように、取付部材32は、バス等の車両34のフロントに設けられた被取付部材36に取り付けられる。図示はしないが、被取付部材36には、クリップ18が係合可能な係合孔と、基準ピン24が挿通可能な基準孔とがそれぞれ所定位置に設けられている。取付部材32の表側の表示面32aには、例えば所定情報が表示される。
【0045】
図13に示すように、取付部材32の裏面は被接着面32bとされる。被接着面32bの四隅には、実施例1のクリップ座10がそれぞれ接着固定されている。被接着面32bの長手方向における中央の上端部には、実施例2の基準ピン座20が接着固定されている。
【0046】
図14に示すように、クリップ座10における接着層40Aは、クリップ座10の第1固定部14及び第2固定部16にそれぞれ設けられている。すなわち、第1固定部14における形成範囲ARに接着層40Aが設けられ、第2固定部16における形成範囲ARに接着層40Aが設けられている。
【0047】
図14及び図15に示すように、第1固定部14に設けられた接着層40Aは、本体部42Aと、本体部42Aと一体に形成された3個のはみ出し部44Aとを有している。第1固定部14に設けられた本体部42Aは、取付部材32の被接着面32bとクリップ座10の第1固定面14eとの間に介在して、被接着面32bと第1固定面14eとに接着されている。第1固定部14に設けられた各はみだし部44Aは、それぞれ切り欠き部14a、14b、14c内に存在して、被接着面32bと各切り欠き部14a、14b、14cそれぞれの三方の側面とに接着されている。
【0048】
詳しくは、切り欠き部14a内に存在するはみ出し部44Aは、切り欠き部14a内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面141a、第2側面142a及び第3側面143aに接着されている。同様に、切り欠き部14b内に存在するはみ出し部44Aは、切り欠き部14b内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面141b、第2側面142b及び第3側面143bに接着されている。同様に、切り欠き部14c内に存在するはみ出し部44Aは、切り欠き部14c内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面141c、第2側面142c及び第3側面143cに接着されている。
【0049】
同様に、第2固定部16に設けられた接着層40Aは、本体部42Aと、本体部42Aと一体に形成された3個のはみ出し部44Aとを有している。第2固定部16に設けられた本体部42Aは、取付部材32の被接着面32bとクリップ座10の第2固定面16eとの間に介在して、被接着面32bと第2固定面16eとに接着されている。第2固定部16に設けられた各はみだし部44Aは、それぞれ切り欠き部16a、16b、16c内に存在して、被接着面32bと各切り欠き部16a、16b、16cそれぞれの三方の側面とに接着されている。
【0050】
詳しくは、切り欠き部16a内に存在するはみ出し部44Aは、切り欠き部16a内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面161a、第2側面162a及び第3側面163aに接着されている。同様に、切り欠き部16b内に存在するはみ出し部44Aは、切り欠き部16b内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面161b、第2側面162b及び第3側面163bに接着されている。同様に、切り欠き部16c内に存在するはみ出し部44Aは、切り欠き部16c内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面161c、第2側面162c及び第3側面163cに接着されている。
【0051】
図16及び図17に示すように、基準ピン座20に設けられた接着層40Bは、本体部42Bと、本体部42Bと一体に形成された4個のはみ出し部44Bとを有している。本体部42Bは、取付部材32の被接着面32bと基準ピン座20の固定面20aとの間に介在して、被接着面32bと固定面20aとに接着されている。各はみだし部44Bは、それぞれ切り欠き部22a、22b、22c、22d内に存在して、被接着面32bと各切り欠き部22a、22b、22c、22dそれぞれの三方の側面とに接着されている。
【0052】
詳しくは、切り欠き部22a内に存在するはみ出し部44Bは、切り欠き部22a内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面221a、第2側面222a及び第3側面223aに接着されている。同様に、切り欠き部22b内に存在するはみ出し部44Bは、切り欠き部22b内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面221b、第2側面222b及び第3側面223bに接着されている。同様に、切り欠き部22c内に存在するはみ出し部44Bは、切り欠き部22c内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面221c、第2側面222c及び第3側面223cに接着されている。同様に、切り欠き部22d内に存在するはみ出し部44Bは、切り欠き部22d内において、被接着面32bに接着されるとともに、第1側面221d、第2側面222d及び第3側面223dに接着されている。
【0053】
クリップ座10における接着層40A及び基準ピン座20における接着層40Bは、いずれも同じ湿気硬化型の接着剤よりなる。具体的には、湿気硬化型の接着剤として、変性ウレタン樹脂を主成分とする1液型ウレタン系接着剤を用いた。
【0054】
クリップ座10を取付部材32に接着固定するには、まず取付部材32の被接着面32bの所定部位に接着剤を塗布する。詳しくは、被接着面32bの四隅それぞれにおいて、第1固定部14における接着層40Aの形成範囲ARに相当する部位と、第2固定部16における接着層40Aの形成範囲ARに相当する部位とに、接着剤を塗布する。このとき、接着層40Aの形成範囲ARよりも若干大きな範囲の全体に接着剤を塗布しておけば、形成範囲ARの全体に確実に接着層40Aを形成することができる。なお、前述のとおり、形成範囲ARは、各切り欠き部14a~14c、16a~16cの第3側面143a~143c、163a~163cよりもクリップ座10の外縁に向かって外側にはみ出す大きさに形成されている。そして、クリップ座10を取付部材32の被接着面32bの所定部位に配置する。このとき、第1固定部14及び第2固定部16における全ての切り欠き部14a~14c及び16a~16cから接着剤がはみ出して露出するように、被接着面32bの接着剤を塗布した部位に対してクリップ座10を配置する。その後、所定時間放置すれば、接着剤が大気中の水分と反応して硬化する。これにより、クリップ座10が取付部材32の被接着面32bに接着固定される。
【0055】
同様に、基準ピン座20を取付部材32に接着固定するには、まず取付部材32の被接着面32bの所定部位に接着剤を塗布する。詳しくは、被接着面32bの長手方向における中央の上端部において、接着層40Bの形成範囲ARに相当する部位に接着剤を塗布する。このとき、接着層40Bの形成範囲ARよりも若干大きな範囲の全体に接着剤を塗布しておけば、形成範囲ARの全体に確実に接着層40Bを形成することができる。なお、前述のとおり、形成範囲ARは、各切り欠き部22a~22dの第3側面223a~223dよりも基準ピン座20の外縁に向かって外側にはみ出す大きさに形成されている。そして、基準ピン座20を取付部材32の被接着面32bの所定部位に配置する。このとき、固定部22における全ての切り欠き部22a~22dから接着剤がはみ出して露出するように、被接着面32bの接着剤を塗布した部位に対して基準ピン座20を配置する。その後、所定時間放置すれば、接着剤が大気中の水分と反応して硬化する。これにより、基準ピン座20が取付部材32の被接着面32bに接着固定される。
【0056】
クリップ座10及び基準ピン座20が接着固定された取付部材32は、基準ピン座20の基準ピン24を被取付部材36の基準孔に挿通して位置合わせしつつ、各クリップ座10のクリップ18を被取付部材36の係合孔に係合させることにより、被取付部材36に対して位置固定されつつ取り付けられる。
【0057】
上記構成を有する実施例3の位置固定用部材の接着固定構造30では、接着層40A、40Bに、大気中の水分と反応して硬化する湿気硬化型の接着剤を用いている。このため、接着剤を加熱する必要がない。また、被接着面32bの所定部位に所定の大きさに塗布した接着剤に対してクリップ座10及び基準ピン座20を位置合わせしつつ配置することで、各切り欠き部14a~14c、16a~16c、22a~22d内に接着剤を容易に存在させることができる。このため、取付部材32にクリップ座10及び基準ピン座20を接着固定させる際の作業効率がよい。
【0058】
さらに、接着剤が未硬化状態のときに取付部材32に対してクリップ座10及び基準ピン座20を押圧することが必須ではないため、クリップ座10及び基準ピン座20の位置ずれを抑えることができる。しかも、各切り欠き部14a~14c、16a~16c、22a~22d内に存在するはみ出し部44A、44Bにおいては、接着面以外の外表面46(図15及び図17参照)が各切り欠き部14a~14c、16a~16c、22a~22d内で外気に晒されている。図14及び図15を参照して切り欠き部14bを例にして説明すれば、切り欠き部14b内のはみ出し部44Aは、被接着面32bと第1~第3側面141a~143aとに接着された接着面以外の外表面46が外気に晒されている。特に、外表面46のうち、第1固定部14の中心とは反対側の面(別の言い方をすれば、第1固定部14の外縁に向かって開放された切り欠き部14bの開放面に位置する面)である外側面46aが外気に晒されている。これらのことは、他の切り欠き部14a、14c、16a~16c、22a~22dにおいても同様である。このため、湿気硬化型の接着剤よりなる接着層40A、40Bのはみ出し部44A、44Bは、各切り欠き部14a~14c、16a~16c、22a~22d内で外気に晒された外表面46が早期に硬化する。
【0059】
このように各切り欠き部14a~14c、16a~16c、22a~22d内ではみ出し部44A、44Bの外表面46が早期に硬化すれば、各切り欠き部14a~14c、16a~16c、22a~22dにおいて互いに対向する第1側面及び第2側面が被接着面32bに対して接着固定される。切り欠き部14bを例に説明すれば、互いに対向する第1側面141b及び第2側面142b、すなわち、切り欠き部14bの開放部を挟む面である第1側面141b及び第2側面142bが被接着面32bに対して接着固定される。
【0060】
よって、取付部材32に対するクリップ座10、基準ピン座20の位置ずれを効果的に抑えることができる。
【0061】
したがって、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造30は、取付部材32にクリップ座10、基準ピン座20を接着固定させる際の作業効率がよく、しかもクリップ座10、基準ピン座20の位置ずれを抑えることができる。
【0062】
クリップ座10の第1固定部14においては、切り欠き部14bと切り欠き部14cとが第1固定部14の外縁の対向する位置に対となって設けられ、はみ出し部44Aが各切り欠き部14b、14c内にそれぞれ設けられている。また、クリップ座10の第2固定部16においても、切り欠き部16bと切り欠き部16cとが第2固定部16の外縁の対向する位置に対となって設けられ、はみ出し部44Aが各切り欠き部16b、16c内にそれぞれ設けられている。このため、クリップ座10の長手方向における両側において、クリップ座10の外縁の対向する両側で、取付部材32に対してクリップ座10を早期に接着固定することができる。
【0063】
基準ピン座20においては、切り欠き部22aと切り欠き部22cとが固定部22の外縁の対向する位置に対となって設けられるとともに、切り欠き部22bと切り欠き部22dとが固定部22の外縁の対向する位置に対となって設けられ、はみ出し部44Bが各切り欠き部22a~22d内にそれぞれ設けられている。このため、基準ピン座20の四辺において、取付部材32に対して基準ピン座20を早期に接着固定することができる。
【0064】
特に、この実施例のように、接着剤以外の固定手段や仮止め手段を設けずに、接着剤のみによってクリップ座10、基準ピン座20を取付部材32に接着固定する場合においては、接着剤が早期に硬化することが、クリップ座10、基準ピン座20の位置ずれを抑える上で重要となる。この点、実施例3の位置固定用部材の接着固定構造では、上述のとおり接着剤が早期に硬化するので、接着剤以外の固定手段や仮止め手段を設けることなく、クリップ座10、基準ピン座20の位置ずれを効果的に抑えることができる。
【0065】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0066】
例えば、クリップが装着されるクリップ座に基準ピンが一体形成されていてもよい。また、基準ピン座又はクリップ座に対して別体としての基準ピンが装着されてもよい。さらに、クリップ座又は基準ピン座の形状や、クリップ座又は基準ピン座における固定部の外形状は適宜設定可能であり、固定部の外縁に設ける切り欠き部の位置や数も適宜設定可能である。
【0067】
湿気硬化型の接着剤の種類は、求められる特性に応じて適宜選定可能である。例えば、シリコーンゴム、特殊変成シリコン樹脂、シリル基含有特殊ポリマーやシアノアクリレート系の湿気硬化型接着剤を用いることができる。
【0068】
取付部材としては、車両用の外装部材に限られず、車両用の内装部材であってもよい。また、機械設備や建物等に用いられる部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば車両用の内外装部材を車体等に取り付ける場合に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…クリップ座(位置固定用部材)
20…基準ピン座(位置固定用部材)
30…位置固定用部材の接着固定構造
10a、20a…固定面
14e…第1固定面(固定面)
16e…第2固定面(固定面)
141a~141c、221a~221d…第1側面(側面)
142a~142c、222a~222d…第2側面(側面)
143a~143c、223a~223d…第3側面(側面)
14…第1固定部(固定部)
16…第2固定部(固定部)
22…固定部
14a~14c、16a~16c、22a~22d…切り欠き部
32…取付部材
36…被取付部材
32b…被接着面
40A、40B…接着層
42A、42B…本体部
44A、44B…はみ出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17