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特許7687273車両制御装置、車両制御方法、車両制御用コンピュータプログラム及び優先度設定装置ならびに車両制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、車両制御用コンピュータプログラム及び優先度設定装置ならびに車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20250527BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20250527BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20250527BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W40/02
G01C21/26 C
G08G1/0969
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022081032
(22)【出願日】2022-05-17
(65)【公開番号】P2023169732
(43)【公開日】2023-11-30
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】橋本 高志良
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017253(WO,A1)
【文献】特開2018-151908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00
B60W 40/02
G01C 21/26
G08G 1/0969
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報に表された個々の道路区間ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを記憶し、前記複数の処理は、車線変更のために前記車両を制御する第1の処理と、前記車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて前記車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、前記車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含む記憶部と、
記車両の位置に応じて、前記車両が位置する道路区間を判定する判定部と、
前記優先度テーブルを参照して、前記車両が位置する道路区間に応じた、前記複数の処理のそれぞれの優先度を決定する優先度決定部と、
前記複数の処理のそれぞれを、当該処理の優先度が高い方から順に当該処理に共有リソースを割り当てて実行する制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
両の位置に応じて、地図情報に表された個々の道路区間のうち、前記車両が位置する道路区間を判定し、
前記地図情報に表された個々の道路区間ごとに、前記車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを参照して、前記車両が位置する道路区間に応じた、前記複数の処理のそれぞれの優先度を決定し、前記複数の処理は、車線変更のために前記車両を制御する第1の処理と、前記車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて前記車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、前記車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含み、
前記複数の処理のそれぞれを、当該処理の優先度が高い方から順に当該処理に共有リソースを割り当てて実行する、
ことを含む車両制御方法。
【請求項3】
両の位置に応じて、地図情報に表された個々の道路区間のうち、前記車両が位置する道路区間を判定し、
前記地図情報に表された個々の道路区間ごとに、前記車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを参照して、前記車両が位置する道路区間に応じた、前記複数の処理のそれぞれの優先度を決定し、前記複数の処理は、車線変更のために前記車両を制御する第1の処理と、前記車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて前記車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、前記車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含み、
前記複数の処理のそれぞれを、当該処理の優先度が高い方から順に当該処理に共有リソースを割り当てて実行する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させるための車両制御用コンピュータプログラム。
【請求項4】
少なくとも一つの車両と、
前記少なくとも一つの車両のそれぞれと通信可能な優先度設定装置と、
を有し、
前記少なくとも一つの車両のそれぞれは、
地図情報に表された個々の道路区間ごとに、当該車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを記憶し、前記複数の処理は、車線変更のために前記車両を制御する第1の処理と、前記車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて前記車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、前記車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含む記憶部と、
該車両の位置に応じて、当該車両が位置する道路区間を判定する判定部と、
前記優先度テーブルを参照して、当該車両が位置する道路区間に応じた、当該複数の処理のそれぞれの優先度を決定する優先度決定部と、
前記複数の処理のそれぞれを、当該処理の優先度が高い方から順に当該処理に共有リソースを割り当てて実行する制御部と、
前記複数の処理のうち、当該処理の実行が実際当該車両の挙動に反映された処理、当該処理の実行時に前記車両が位置する道路区間とを表す実行情報を生成し、生成した前記実行情報を通信部を介して前記優先度設定装置へ送信する実行情報生成部と、
を有し、
前記優先度設定装置は、
記憶部と、
前記少なくとも一つの車両の何れかから前記実行情報を、通信部を介して受信する度に、当該実行情報を前記優先度設定装置の前記記憶部に保存する受信処理部と、
前記地図情報に表された個々の道路区間のうち、前記優先度設定装置の前記記憶部に記憶された前記実行情報の数が所定数に達した道路区間について、当該所定数の前記実行情報に基づいて、前記複数の処理のうちの実行され、かつ、実際の前記車両の挙動に反映された回数が多い処理ほど前記優先度が高くなるように、前記複数の処理のそれぞれの前記優先度を設定することで前記優先度テーブルを更新する優先度設定部と、
更新された前記優先度テーブルを、前記通信部を介して前記少なくとも一つの車両のそれぞれへ通知する通知処理部と、
を有する車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、車両制御用コンピュータプログラム及び優先度設定装置ならびに車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転制御または運転支援では、車両の位置によって適用すべき処理が異なることがある。そこで、車両の現在位置に応じた自動運転制御を可能とする技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された自動運転装置は、道路の予め定められた区間ごとに対応付けられた、自動運転制御の自動化レベルを示す運転自動化レベルを含む地図データを参照する。そしてこの自動運転装置は、その地図データと自車の現在位置とに基づいて、自車の現在位置及びその前方における運転自動化レベルに応じた自動運転制御に関する情報を誘導情報として生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/051478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の自動運転または運転支援のために複数の処理が行われることがある。このような場合、自動運転または運転支援に支障を生じないようにするためには、車両が位置する道路区間または車両周囲の状況に応じて、それら複数の処理を適切に実行することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、車両が位置する道路区間または車両周囲の状況において優先度が高い処理を遅滞なく実行することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、地図情報に表された個々の道路区間ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを記憶し、複数の処理は、車線変更のために車両を制御する第1の処理と、車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含む記憶部と、車両の位置に応じて、車両が位置する道路区間を判定する判定部と、優先度テーブルを参照して、車両が位置する道路区間に応じた、複数の処理のそれぞれの優先度を決定する優先度決定部と、複数の処理のそれぞれを、その処理の優先度が高い方から順にその処理に共有リソースを割り当てて実行する制御部とを有する。
【0008】
本発明の他の形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両の位置に応じて、地図情報に表された個々の道路区間のうち、車両が位置する道路区間を判定し、地図情報に表された個々の道路区間ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを参照して、車両が位置する道路区間に応じた、複数の処理のそれぞれの優先度を決定し、複数の処理は、車線変更のために車両を制御する第1の処理と、車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含み、複数の処理のそれぞれを、その処理の優先度が高い方から順にその処理に共有リソースを割り当てて実行する、ことを含む。
【0009】
本発明のさらに他の形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、車両の位置に応じて、地図情報に表された個々の道路区間のうち、車両が位置する道路区間を判定し、地図情報に表された個々の道路区間ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを参照して、車両が位置する道路区間に応じた、複数の処理のそれぞれの優先度を決定し、複数の処理は、車線変更のために車両を制御する第1の処理と、車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含み、複数の処理のそれぞれを、その処理の優先度が高い方から順にその処理に共有リソースを割り当てて順次実行する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【0010】
本発明のさらに他の形態によれば、優先度設定装置が提供される。この優先度設定装置は、記憶部と、少なくとも一つの車両から、その車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のうちの何れかが実行されたときにその車両が走行していた道路区間またはその車両の周囲の状況を表すとともに、実行された処理を表す実行情報を、通信部を介して受信する度に、受信した実行情報を記憶部に保存する受信処理部と、記憶部に記憶された複数の実行情報に基づいて、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに、複数の処理のうちの実行された回数が多い処理ほど優先度が高くなるように、複数の処理のそれぞれの優先度を設定する優先度設定部と、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとにおける、複数の処理のそれぞれの優先度を表す優先度テーブルを、通信部を介して車両へ通知する通知処理部とを有する。
【0011】
本発明のさらに他の形態によれば、少なくとも一つの車両とその少なくとも一つの車両のそれぞれと通信可能な優先度設定装置とを有する車両制御システムが提供される。この車両制御システムにおいて、少なくとも一つの車両のそれぞれは、地図情報に表された個々の道路区間ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの実行順序についての優先度を表す優先度テーブルを記憶し、複数の処理は、車線変更のために車両を制御する第1の処理と、車両に搭載されたカメラにより得られた画像に基づいて車両の周囲の所定の地物についての情報を収集する第2の処理と、車両のドライバの状態を判定する第3の処理のうちの少なくとも二つを含む記憶部と、車両の位置に応じて、車両が位置する道路区間を判定する判定部と、優先度テーブルを参照して、車両が位置する道路区間に応じた、複数の処理のそれぞれの優先度を決定する優先度決定部と、複数の処理のそれぞれを、その処理の優先度が高い方から順にその処理に共有リソースを割り当てて実行する制御部と、複数の処理のうち、その処理の実行が実際車両の挙動に反映された処理その処理の実行時に車両が位置する道路区間とを表す実行情報を生成し、生成した実行情報通信部介して優先度設定装置へ送信する実行情報生成部とを有する。また、優先度設定装置は、記憶部と、少なくとも一つの車両の何れかから通信部を介して実行情報を受信する度に、実行情報を優先度設定装置の記憶部に保存する受信処理部と、地図情報に表された個々の道路区間のうち、優先度設定装置の記憶部に記憶された実行情報の数が所定数に達した道路区間について、その所定数の実行情報に基づいて、複数の処理のうちの実行され、かつ、実際の車両の挙動に反映された回数が多い処理ほど優先度が高くなるように、複数の処理のそれぞれの優先度を設定することで優先度テーブルを更新する優先度設定部と、更新された優先度テーブルを、通信部を介して少なくとも一つの車両のそれぞれへ通知する通知処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両制御装置は、車両が位置する道路区間または車両周囲の状況において優先度が高い処理を遅滞なく実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両制御装置及び優先度設定装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車両の概略構成図である。
図3】車両制御装置の一実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図4】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図5】優先度設定の概要を説明する図である。
図6】車両制御処理の動作フローチャートである。
図7】優先度設定装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
図8】優先度設定処理に関する、サーバのプロセッサの機能ブロック図である。
図9】優先度設定処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置、車両制御装置において実行される車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム、及び、優先度設定装置ならびに車両制御装置と優先度設定装置を含む車両制御システムについて説明する。この車両制御装置は、車両に搭載され、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理の何れかが実行されると、その実行された処理及びその処理が実行されたときに車両が走行していた道路区間または車両周囲の状況を表す実行情報を生成する。そしてこの車両制御装置は、生成した実行情報を優先度設定装置へ送信する。一方、優先度設定装置は、受信した複数の実行情報に基づいて、道路区間ごと、または、車両の周囲の状況ごとに、実行された回数が多い処理ほど優先度が高くなるように、各処理の優先度を設定する。そして優先度設定装置は、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに設定した各処理の優先度を表す優先度テーブルを、各車両へ配信する。
【0015】
さらに、車両制御装置は、車両を自動運転制御し、あるいはドライバによる運転を支援する際に、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの優先度を表す優先度テーブルを参照する。そして、この車両制御装置は、車両が位置する道路区間または車両の周囲の状況に応じた各処理の優先度を決定し、優先度が高い処理から共有リソースを利用して順次実行する。
【0016】
車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理には、車線変更に関する処理、オートクルーズコントロール(ACC)といった速度制御に関する処理、衝突防止に関する処理が含まれる。また、それら複数の処理には、ドライバの状態判定に関する処理、及び、車両周囲の情報収集に関する処理がさらに含まれてもよい。なお、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理には、上記の処理以外の処理が含まれてもよい。以下では、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理を、単に複数の処理と呼ぶことがある。
【0017】
図1は、車両制御装置及び優先度設定装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。本実施形態では、車両制御システム1は、少なくとも一つの車両2と、優先度設定装置の一例であるサーバ3とを有する。各車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されているが、車両制御システム1は、複数の車両2を有していてもよい。同様に、図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。
【0018】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、カメラ11と、GPS受信機12と、無線通信端末13と、ストレージ装置14と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)15とを有する。カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13及びストレージ装置14は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介してECU15と通信可能に接続される。また、車両2は、車両2の走行予定ルートを探索し、その走行予定ルートに従って車両2が走行するようナビゲートするナビゲーション装置(図示せず)をさらに有してもよい。さらに、車両2は、LiDARあるいはレーダといった、車両2から車両2の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)を有していてもよい。さらにまた、車両2は、ドライバを撮影するように設けられるドライバモニタカメラ(図示せず)を有していてもよい。
【0019】
カメラ11は、車両2の周囲の状況を検知するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ11は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。カメラ11は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ11により得られた画像は、センサ信号の一例であり、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ11が設けられてもよい。
【0020】
カメラ11は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU15へ出力する。
【0021】
GPS受信機12は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。なお、GPS受信機12が車両2の自己位置を測位する所定の周期は、カメラ11による撮影周期と異なっていてもよい。そしてGPS受信機12は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU15へ出力する。なお、車両2はGPS受信機12以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0022】
無線通信端末13は、通信部または通信装置の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末13は、ECU15から受け取った実行情報などを含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末13は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、実行情報などをサーバ3へ送信する。また、無線通信端末13は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの優先度テーブルなどをECU15へわたす。なお、ダウンリンクの無線信号には、交通情報サーバ(図示せず)から配信される交通情報、または、天候情報サーバ(図示せず)から配信される天候情報が含まれてもよい。
【0023】
ストレージ装置14は、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置14は、高精度地図を記憶する。高精度地図には、車両の自動運転制御に利用される情報、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての車線の数、車線区画線または停止線といった道路標示を表す情報及び道路標識を表す情報が含まれる。さらに、高精度地図には、優先度テーブルが関連付けられていてもよい。
【0024】
さらに、ストレージ装置14は、高精度地図の更新処理、及び、ECU15からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置14は、例えば、車両2が所定距離だけ移動する度に、無線通信端末13を介して、地図サーバへ高精度地図の取得要求を車両2の現在位置とともに送信してもよい。また、ストレージ装置14は、地図サーバから無線通信端末13を介して車両2の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置14は、ECU15からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両2の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を切り出して、車内ネットワークを介してECU15へ出力する。
【0025】
図3は、車両制御装置の一実施形態であるECU15のハードウェア構成図である。ECU15は、車両2を自動運転制御し、あるいは、車両2のドライバの運転を支援する。さらに、ECU15は、車両2において実行された処理に基づいて実行情報を生成する。そのために、ECU15は、通信インターフェース21と、メモリ22と、バッファメモリ23と、プロセッサ24とを有する。なお、通信インターフェース21、メモリ22、バッファメモリ23及びプロセッサ24は、互いに異なる回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0026】
通信インターフェース21は、ECU15を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース21は、車内ネットワークを介して、カメラ11と接続される。そして通信インターフェース21は、カメラ11から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ24へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機12から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ24へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ストレージ装置14から読み込んだ高精度地図をプロセッサ24へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、無線通信端末13から受け取った優先度テーブルなどをプロセッサ24へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、プロセッサ24から受け取った実行情報を、無線通信端末13へ出力する。
【0027】
メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU15のプロセッサ24により実行される車両制御処理のアルゴリズム、車両制御処理において使用される各種のデータ及びパラメータを記憶する。例えば、メモリ22は、ストレージ装置14から読み込んだ高精度地図、サーバ3から受け取った優先度テーブル、及び、車両制御処理で利用される識別器を特定するためのパラメータセットを記憶する。さらに、メモリ22は、交通情報及び天候情報を記憶してもよい。さらにまた、メモリ22は、実行情報、及び、検出された物体に関する情報といった、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一定期間記憶する。
【0028】
バッファメモリ23は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリを有する。そしてバッファメモリ23は、カメラ11から受け取った画像、及び、GPS受信機12から受け取った測位情報を一時的に記憶する。バッファメモリ23は、ドライバモニタカメラ(図示せず)から受け取ったドライバモニタ画像を一時的に記憶してもよい。
【0029】
プロセッサ24は、例えば、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ24は、数値演算回路またはグラフィック処理回路(Graphics Processing Unit, GPU)をさらに有していてもよい。さらに、プロセッサ24は、共有メモリ241を有する。共有メモリ241は、共有リソースの一例であり、例えば、プロセッサ24が有するCPU及びGPUといった各演算回路または各処理回路からアクセス可能なメモリ回路として構成される。
【0030】
プロセッサ24は、車両2が走行している間、カメラ11から画像を受信する度に、受信した画像をバッファメモリ23に書き込む。同様に、プロセッサ24は、GPS受信機12から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をバッファメモリ23に書き込む。さらに、プロセッサ24は、ストレージ装置14から読み込んだ高精度地図、無線通信端末13を介して受信した交通情報及び天候情報をメモリ22に保存する。さらに、プロセッサ24は、バッファメモリ23に保存されている画像などに基づいて車両制御処理を実行する。
【0031】
図4は、車両制御処理に関する、ECU15のプロセッサ24の機能ブロック図である。プロセッサ24は、実行情報生成部31と、判定部32と、優先度決定部33と、処理制御部34とを有する。プロセッサ24が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ24上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。また、これらの各部のうち、判定部32、優先度決定部33及び処理制御部34により実行される処理が車両制御処理に関するものである。一方、実行情報生成部31により実行される処理は、サーバ3にて実行される優先度設定処理において利用される情報を生成するものである。
【0032】
実行情報生成部31は、車両2の自動運転または運転支援に関連する複数の処理の何れかが実行されると、その実行された処理に関する実行情報を生成する。例えば、ドライバが車室内に設けられたスイッチ(図示せず)を操作することでACCをオンにすると、実行情報生成部31は、実行された処理としてACCを表す実行情報を生成する。また、車両2の自動運転制御あるいは運転支援の適用中において、処理制御部34から所定の処理が実行されたことを示す通知を受け取ると、実行情報生成部31は、その処理を表す実行情報を生成する。
【0033】
実行情報の生成対象となる何れかの処理が実行されると、実行情報生成部31は、最新の測位情報に表される車両2の現在位置と高精度地図とを参照して、車両2が位置する道路区間を特定する。また、実行情報生成部31は、最新の交通情報と車両2の現在位置とを参照することで、車両2の周囲の状況を表すものとして、例えば、工事の有無、車線規制の有無、あるいは事故の有無を判定する。さらに、実行情報生成部31は、最新の天候情報と車両の現在位置とを参照することで、車両2の周囲の状況を表すものとして、車両2の周囲の天候を特定する。そして実行情報生成部31は、実行された処理の識別番号といった、実行された処理を表す情報と、その処理が実行されたときに車両2が走行していた道路区間を表す情報と、その処理が実行されたときの車両2の周囲の状況を表す情報とを実行情報に含める。これにより、実行情報が生成される。
【0034】
さらに、実行情報生成部31は、カメラ11により得られた画像から、車両2の周囲の状況を特定してもよい。例えば、実行情報生成部31は、カメラ11により得られた時系列の一連の画像のそれぞれから、車両2の周囲を走行する他の車両(以下、便宜上、周辺車両と呼ぶ)を検出し、検出した周辺車両に基づいて、車両2の周囲が渋滞しているか否か判定してもよい。この場合、実行情報生成部31は、一連の画像のそれぞれを、周辺車両を検出するように予め学習された識別器に入力することで、周辺車両を検出する。実行情報生成部31は、そのような識別器として、例えば、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを有するいわゆるディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、そのような識別器として、Self attention network型のアーキテクチャを有するDNN、または、サポートベクトルマシンといったDNN以外の機械学習手法に基づく識別器が用いられてもよい。これらの識別器は、検出対象となる周辺車両が表された多数の教師画像を用いて、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法にしたがって予め学習される。そして実行情報生成部31は、各画像から検出された周辺車両が表された領域に対して、KLT trackingといった所定の追跡手法を適用することで、個々の周辺車両を追跡する。さらに、実行情報生成部31は、直近の所定期間における、追跡中の個々の周辺車両の速度を推定し、個々の周辺車両の平均速度が所定の速度閾値以下である場合、車両2の周囲は渋滞していると判定すればよい。なお、実行情報生成部31は、各画像生成時における車両2の速度と、各画像生成時における車両2と着目する周辺車両間の距離とに基づいて、着目する周辺車両の速度を推定することができる。ここで、画像上での着目する周辺車両が表された領域の下端の位置は、カメラ11から見た、周辺車両が路面に接する位置への方位を表していると推定される。また、カメラ11の設置高さは既知である。そのため、実行情報生成部31は、画像上での着目する周辺車両が表された領域の下端の位置に対応する、カメラ11からの方位と、カメラ11の設置高さとに基づいて、車両2と着目する周辺車両間の距離を推定することができる。また、車両2に距離センサが搭載されている場合、実行情報生成部31は、画像上で着目する周辺車両が表されている領域に相当する方位について距離センサにより測定される距離を、車両2と着目する周辺車両間の距離として推定してもよい。さらに、実行情報生成部31は、車両2に搭載された車速センサ(図示せず)から、各画像生成時における車両2の速度の測定値を取得すればよい。
【0035】
また、実行情報生成部31は、カメラ11により得られた画像を上記のような識別器に入力することで工事が行われていることを表す看板などの構造物を検出できると、車両2の周囲で工事が行われていると判定してもよい。同様に、実行情報生成部31は、カメラ11により得られた画像を上記のような識別器に入力することで車線規制が行われていることを表す構造物を検出できると、車両2の周囲で車線規制が行われていると判定してもよい。
【0036】
このように、実行情報生成部31は、カメラ11により得られた画像に基づいて特定された車両2の周囲の状況を表す情報を、実行情報に含めてもよい。
【0037】
実行情報生成部31は、生成した実行情報を、通信インターフェース21及び無線通信端末13を介してサーバ3へ送信する。
【0038】
判定部32は、所定の周期ごとに、カメラ11により生成された画像または最新の測位情報で表される車両2の現在位置に応じて、車両2が位置する道路区間または車両2の周囲の状況を判定する。
【0039】
例えば、判定部32は、実行情報生成部31と同様に、最新の測位情報で表される車両2の現在位置と高精度地図とを参照することで、車両2が位置する道路区間を判定する。また、判定部32は、最新の交通情報または最新の天候情報と車両2の現在位置とを参照することで、車両2の周囲の状況を表すものとして、工事の有無、車線規制の有無、あるいは事故の有無、あるいは、車両2の周囲の天候を判定すればよい。
【0040】
さらに、判定部32は、カメラ11により得られた画像に基づいて、車両2の周囲の状況を判定してもよい。この場合、判定部32は、カメラ11により得られた画像に対して、実行情報生成部31における車両2の周囲の状況の判定に関する処理と同様の処理を実行することで、車両2の周囲の状況を判定すればよい。
【0041】
判定部32は、車両2が位置する道路区間及び車両2の周囲の状況を優先度決定部33へ通知する。
【0042】
なお、後述するように、優先度決定部33が、車両2が位置する道路区間及び車両2の周囲の状況の何れか一方に基づいて複数の処理のそれぞれの優先度を決定する場合には、判定部32も、その何れか一方についてのみ判定してもよい。この場合には、判定部32は、車両2が位置する道路区間及び車両2の周囲の状況の何れか一方のみを優先度決定部33へ通知すればよい。
【0043】
優先度決定部33は、判定部32から車両2が位置する道路区間及び車両2の周囲の状況が通知される度に、メモリ22から読み込んだ優先度テーブルを参照する。そして優先度決定部33は、車両2が位置する道路区間または車両2の周囲の状況に応じた、複数の処理のそれぞれの優先度を決定する。
【0044】
優先度テーブルは、高精度地図で表される個々の道路区間と車両2の周囲において取り得る状況の組み合わせごとに、複数の処理のそれぞれの優先度を規定する。したがって、優先度決定部33は、判定部32から通知された、車両2が位置する道路区間と車両2の周囲の状況の組み合わせに対応する各処理の優先度を、優先度テーブルを参照することで決定すればよい。
【0045】
なお、優先度決定部33は、車両2が位置する道路区間と車両2の周囲の状況の何れか一方に基づいて各処理の優先度を決定してもよい。この場合、優先度テーブルも、高精度地図で表される個々の道路区間ごとに、あるいは、車両2の周囲において取り得る状況ごとに、複数の処理のそれぞれの優先度を規定するものであればよい。
【0046】
図5は、車両2の自動運転または運転支援に関する複数の処理の優先度決定の概要を説明する図である。この例では、車両2が位置する道路区間に基づいて各処理の優先度が決定されるものとする。またこの例では、複数の処理には、車線変更に関する処理、速度制御に関する処理、及び、車両周囲の情報収集に関する処理が含まれるものとする。
【0047】
図5に示される領域500において、道路区間501では、優先度テーブルにおいて、速度制御に関する処理の優先度が最も高く設定され、車線変更に関する処理の優先度が次に高く設定され、車両周囲の情報収集に関する処理の優先度が最も低く設定されている。したがって、車両2が道路区間501を走行している場合、速度制御に関する処理→車線変更に関する処理→車両周囲の情報収集に関する処理の順序で優先度が決定される。
【0048】
また、道路区間502では、優先度テーブルにおいて、車線変更に関する処理の優先度が最も高く設定され、速度制御に関する処理の優先度が次に高く設定され、車両周囲の情報収集に関する処理の優先度が最も低く設定されている。したがって、車両2が道路区間502を走行している場合、車線変更に関する処理→速度制御に関する処理→車両周囲の情報収集に関する処理の順序で優先度が決定される。
【0049】
さらに、道路区間501及び道路区間502以外の道路区間では、優先度テーブルにおいて、車両周囲の情報収集に関する処理の優先度が最も高く設定される。そして車線変更に関する処理の優先度が次に高く設定され、速度制御に関する処理の優先度が最も低く設定されている。したがって、車両2が道路区間501及び道路区間502以外の道路区間を走行している場合、車両周囲の情報収集に関する処理→車線変更に関する処理→速度制御に関する処理の順序で優先度が決定される。
【0050】
優先度決定部33は、各処理の優先度を決定する度に、決定した各処理の優先度を処理制御部34へ通知する。
【0051】
処理制御部34は、制御部の一例であり、プロセッサ24が有する何れかのCPUにより、複数の処理の実行を管理して、各処理への共有メモリ241の割り当て及び演算回路の割り当てを実行する。そして処理制御部34は、複数の処理のそれぞれを、その処理の優先度が高い方から共有メモリ241を利用して順次実行する。なお、ここでいう処理の実行は、その処理が試行されること、すなわち、その処理に応じて車両2の各部を動作させるべきか否かを判断するための処理が実行されることで足り、必ずしも車両2の各部の挙動に反映されるものでなくてもよい。
【0052】
例えば、処理制御部34は、優先度が高い方から順に、車線変更に関する処理、ドライバの状態判定に関する処理、車両2の周囲の情報収集に関する処理を実行するものとする。
【0053】
この場合、処理制御部34は、最初に車線変更に関する処理を実行するために、バッファメモリ23から、直近の所定期間にカメラ11により得られた時系列の一連の画像を読み込んで共有メモリ241に書き込む。そして処理制御部34は、GPUといったプロセッサ24の特定の演算回路により、一連の画像において車両2が走行中の車線において車両2の前方を走行する他の車両(以下、先行車両と呼ぶ)及び隣接車線を走行する他の車両(以下、並走車両と呼ぶ)を検出する。さらに、処理制御部34は一連の画像にわたって検出された先行車両及び並走車両を追跡することで、先行車両及び並走車両の速度を推定する。さらに、処理制御部34は、推定した速度で並走車両が走行すると仮定して、並走車両の将来位置を予測する。なお、処理制御部34は、実行情報生成部31における周辺車両の追跡に関する処理と同様の処理を実行することで、先行車両及び並走車両を追跡するとともに、先行車両及び並走車両の速度を推定すればよい。さらに、画像に表された他の車両の検出に利用される識別器が、車線区画線も検出するように予め学習されることで、処理制御部34は、一連の画像のそれぞれから車線区画線も検出できる。処理制御部34は、検出した車線区画線に基づいて各画像における自車線が表された領域及び隣接車線が表された領域を特定する。そして処理制御部34は、自車線が表された領域上で検出された他の車両を先行車両とし、隣接車線が表された領域上で検出された他の車両を並走車両とすればよい。処理制御部34は、先行車両の速度が所定の速度閾値よりも低く、かつ、隣接車線に車両2が進入することが可能なスペースが有る場合、車線変更の実施を、ユーザインターフェースを介してドライバに提案する。そしてユーザインターフェースを介して車線変更の実施の承認が得られた場合、処理制御部34は、プロセッサ24の何れかのCPUを用いて、車両2の車線変更を実施するよう、車両2の各部を制御する。所定の速度閾値は、例えば、車両2について設定される速度あるいは車両2が走行中の道路区間の法定速度から所定のオフセット値だけ低い速度に設定される。なお、先行車両の速度が所定の速度閾値以上であるか、隣接車線に車両2が進入するのに十分なスペースが無い場合、処理制御部34は、車両2の車線変更を実施しない。
【0054】
車線変更に関する処理が終了すると、処理制御部34は、ドライバの状態判定に関する処理を実行するために、バッファメモリ23から、直近の所定期間にドライバモニタカメラ(図示せず)により得られた時系列の一連のドライバモニタ画像を読み込む。そして処理制御部34は、その一連のドライバモニタ画像を共有メモリ241に書き込む。
【0055】
処理制御部34は、GPUといったプロセッサ24の特定の演算回路により、一連のドライバモニタ画像に表されたドライバの顔の向きなどを検出することで、ドライバの状態を判定する。例えば、処理制御部34は、一連のドライバモニタ画像のそれぞれを、顔検出用に予め学習された識別器に入力することで、各ドライバモニタ画像からドライバの顔が表された顔領域を検出する。そのような識別器として、例えば、CNN型またはDNN型のアーキテクチャを有するDNN、あるいは、AdaBoost識別器が用いられる。さらに、処理制御部34は、各ドライバモニタ画像の顔領域に対してコーナー検出フィルタを適用し、あるいはテンプレートマッチングを適用することでドライバの顔上の複数の特徴点を検出する。そして処理制御部34は、各ドライバモニタ画像について、顔の3次元モデルの向きを様々に変化させながら、検出された各特徴点をその3次元モデルにフィッティングすることで、各特徴点が最もフィットする3次元モデルの向きを特定する。処理制御部34は、特定した3次元モデルの向きを、ドライバの顔の向きとして検出する。処理制御部34は、各ドライバモニタ画像から検出されたドライバの顔の向きに基づいて、ドライバが車両2の前方以外をよそ見しているか否かを判定する。例えば、処理制御部34は、車両2の前方に相当する顔の向きの許容範囲から検出された顔の向きが外れている期間が一定時間以上継続していると、ドライバはよそ見していると判定する。また、処理制御部34は、俯いていることに相当する顔の向きの範囲に検出された顔の向きが含まれている期間が一定時間以上継続していると、ドライバに何らかの異常が生じたと判定する。さらに、処理制御部34は、各ドライバモニタ画像の顔領域に対してテンプレートマッチングを適用することでドライバの眼が表された領域を検出し、眼が表された領域の縦横比の時間変化をもとめる。そして処理制御部34は、眼が表された領域の縦横比の時間変化に基づいて、ドライバの覚醒度合いを推定してもよい。
【0056】
処理制御部34は、よそ見及び覚醒度合いなどの判定結果に応じて、ユーザインターフェース(図示せず)を介したドライバへの警告、あるいは、車両2の緊急停車制御といった処理を実行する。
【0057】
ドライバの状態判定に関する処理が終了すると、処理制御部34は、車両2の周囲の情報収集に関する処理を実行するために、バッファメモリ23から、直近の所定期間にカメラ11により得られた時系列の一連の画像を読み込んで共有メモリ241に書き込む。そして処理制御部34は、GPUといったプロセッサ24の特定の演算回路により、一連の画像から、車両2の周囲に存在する所定の地物(例えば、車線区画線あるいは一時停止線といった道路標示、縁石、道路標識といった所定の看板)を検出する。そのために、処理制御部34は、一連の画像のそれぞれを、所定の地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、各画像から所定の地物を検出する。処理制御部34は、そのような識別器として、CNN型またはDNN型のアーキテクチャを有するDNNを用いることができる。さらに、処理制御部34は、Structure from Motion(SFM)の手法にしたがって、検出された個々の地物の位置を推定する。その際、処理制御部34は、測位情報及びオドメトリ情報から推定される、各画像生成時の車両2の位置及び向き、カメラ11の設置高さ、向き、焦点距離、及び、各画像上での検出された個々の地物が表された領域を、個々の地物の位置の推定に利用すればよい。そして処理制御部34は、検出された個々の地物の種類及び位置を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを、無線通信端末13を介して他の機器へ送信する。
【0058】
このように、処理制御部34は、複数の処理を、共有メモリ241を使用して優先度が高い方から順に実行する。なお、複数の処理のうち、共有メモリ241を使用しない処理については、処理制御部34は、その処理の優先度にかかわらず、他の処理と並列に実行してもよい。そして処理制御部34は、実際に車両2の挙動に反映された処理があると、その処理が実行されたことを、実行情報生成部31に通知する。例えば、車線変更に関する処理を実行することで実際に車両2が車線変更した場合、処理制御部34は、車線変更に関する処理が実行されたことを実行情報生成部31に通知する。一方、車線変更に関する処理を実行しても、実際には車両2は車線変更しなかった場合、処理制御部34は、実行情報生成部31に対して車線変更に関する処理の実行に関する通知を行わない。
【0059】
図6は、プロセッサ24により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ24は、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従ってリソース管理処理を実行すればよい。
【0060】
プロセッサ24の判定部32は、カメラ11により生成された画像または最新の測位情報で表される車両2の現在位置に応じて、車両2が位置する道路区間または車両2の周囲の状況を判定する(ステップS101)。次に、プロセッサ24の優先度決定部33は、優先度テーブルを参照して、車両2が位置する道路区間または車両2の周囲の状況に応じた、車両2の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの優先度を決定する(ステップS102)。そしてプロセッサ24の処理制御部34は、複数の処理のそれぞれを、その処理の優先度が高い方から共有メモリ241を利用して順次実行する(ステップS103)。その後、プロセッサ24は、車両制御処理を終了する。
【0061】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの優先度を表す優先度テーブルを参照する。そして、この車両制御装置は、車両が位置する道路区間または車両の周囲の状況に応じた、各処理の優先度を決定し、優先度が高い処理から共有リソースを利用して順次実行する。したがって、この車両制御装置は、車両が位置する道路区間または車両周囲の状況において優先度が高い処理を遅滞なく実行することができる。
【0062】
なお、共有リソースは、共有メモリに限られない。例えば、複数の処理のそれぞれが、プロセッサ24が有する特定の演算回路(例えば、GPU)を用いて実行される場合、その特定の演算回路も共有リソースの一例となる。
【0063】
次に、優先度設定装置の一例であるサーバ3について説明する。
【0064】
図7は、サーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース41と、ストレージ装置42と、メモリ43と、プロセッサ44とを有する。通信インターフェース41、ストレージ装置42及びメモリ43は、プロセッサ44と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0065】
通信インターフェース41は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース41は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース41は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した実行情報をプロセッサ44へわたす。また、通信インターフェース41は、プロセッサ44から受け取った優先度テーブルを、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0066】
ストレージ装置42は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置42は、優先度設定処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置42は、個々の道路区間を識別するために利用される地図情報、及び、車両2から受信した個々の実行情報及び車両2の識別情報を記憶する。さらに、ストレージ装置42は、プロセッサ44上で実行される、優先度設定処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0067】
メモリ43は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ43は、優先度設定処理を実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0068】
プロセッサ44は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ44は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ44は、優先度設定処理を実行する。
【0069】
図8は、優先度設定処理に関連するプロセッサ44の機能ブロック図である。プロセッサ44は、受信処理部51と、優先度設定部52と、通知処理部53とを有する。プロセッサ44が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ44上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ44が有するこれらの各部は、プロセッサ44に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0070】
受信処理部51は、車両2から、通信ネットワーク4及び通信インターフェース41を介して実行情報を受信する度に、受信した実行情報をストレージ装置42に保存する。その際、受信処理部51は、実行情報に表される、実行情報が生成されたときに車両2が位置していた道路区間及び車両2の周囲の状況の組み合わせに対する実行情報の数を表すカウント値を1インクリメントする。なお、優先度テーブルが道路区間ごとに複数の処理の優先度を表すように作成される場合には、受信処理部51は、実行情報が生成されたときに車両2が位置していた道路区間に対する実行情報の数を表すカウント値を1インクリメントすればよい。また、優先度テーブルが車両2の周囲の取り得る状況ごとに複数の処理の優先度を表すように作成される場合には、受信処理部51は、実行情報が生成されたときの車両2の周囲の状況に対する実行情報の数を表すカウント値を1インクリメントすればよい。
【0071】
優先度設定部52は、受信した実行情報の数を表すカウント値が所定数以上となる道路区間及び車両の周囲の状況の組み合わせに対して複数の処理のそれぞれの優先度を設定する。そのために、優先度設定部52は、カウント値が所定数以上となる道路区間及び車両の周囲の状況の組み合わせに対応する各実行情報をストレージ装置42から読み込む。そして優先度設定部52は、読み込んだ個々の実行情報に表される、車両2において実行された処理を参照して、処理ごとに車両2において実行された数をカウントする。優先度設定部52は、車両2において実行された回数が多い処理ほど、優先度が高くなるように、各処理の優先度を設定する。例えば、車線変更に関する処理が実行された回数が100回、速度制御に関する処理が実行された回数が120回、ドライバの状態判定に関する処理が実行された回数が80回であるとする。この場合、優先度設定部52は、速度制御に関する処理の優先度を最も高く設定し、車線変更に関する処理の優先度を2番目に高く設定し、ドライバの状態判定に関する処理の優先度を最も低く設定する。
【0072】
なお、優先度テーブルが道路区間ごとに複数の処理の優先度を表すように作成される場合には、優先度設定部52は、受信した実行情報の数を表すカウント値が所定数以上となる道路区間に対して複数の処理のそれぞれの優先度を設定すればよい。そのために、優先度設定部52は、カウント値が所定数以上となる道路区間に対応する各実行情報をストレージ装置42から読み込み、読み込んだ個々の実行情報に対して上記の処理と同様の処理を実行すればよい。また、優先度テーブルが車両2の周囲の取り得る状況ごとに複数の処理の優先度を表すように作成される場合には、優先度設定部52は、受信した実行情報の数を表すカウント値が所定数以上となる車両2の周囲の状況に対して各処理の優先度を設定すればよい。そのために、優先度設定部52は、カウント値が所定数以上となる車両2の周囲の状況に対応する各実行情報をストレージ装置42から読み込み、読み込んだ個々の実行情報に対して上記の処理と同様の処理を実行すればよい。
【0073】
優先度設定部52は、設定した個々の処理の優先度を反映するように優先度テーブルを更新し、更新した優先度テーブルをストレージ装置42に保存するとともに、通知処理部53へわたす。
【0074】
通知処理部53は、更新された優先度テーブルを受け取ると、受け取った優先度テーブルを含む配信情報を生成する。そして通知処理部53は、車両2の識別情報を参照して、通信インターフェース41及び通信ネットワーク4を介して生成した配信情報を車両2へ送信する。これにより、車両2は、更新された優先度テーブルを利用することができる。
【0075】
図9は、優先度設定処理の動作フローチャートである。
プロセッサ44の受信処理部51は、車両2から実行情報を受信すると、受信した実行情報をストレージ装置42に保存する。さらに、受信処理部51は、その実行情報に対応する道路区間及び車両2の周囲の状況の組み合わせに対する、受信した実行情報の数を表すカウント値を1インクリメントする(ステップS201)。
【0076】
プロセッサ44の優先度設定部52は、道路区間及び車両2の周囲の取り得る状況の組み合わせの何れかについてのカウント値が所定数以上となったか否か判定する(ステップS202)。何れの組み合わせについてもカウント値が所定数未満であれば(ステップS202-No)、プロセッサ44は、優先度設定処理を終了する。一方、何れかの組み合わせについてカウント値が所定数以上であれば(ステップS202-Yes)、優先度設定部52は、その組み合わせに対応する個々の実行情報をストレージ装置42から読み込む。そして優先度設定部52は、読み込んだ個々の実行情報に基づいて、実行された回数が多い処理ほど優先度が高くなるように、複数の処理のそれぞれの優先度を設定することで優先度テーブルを更新する(ステップS203)。その後、プロセッサ44の通知処理部53は、更新された優先度テーブルを、通信インターフェース41及び通信ネットワーク4を介して車両2へ送信する(ステップS204)。そしてプロセッサ44は、優先度設定処理を終了する。
【0077】
以上に説明してきたように、この優先度設定装置は、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに、実行された回数が多い処理ほど優先度が高くなるように、車両の自動運転または運転支援に関連する複数の処理のそれぞれの優先度を設定する。そのため、この優先度設定装置は、道路区間または車両の周囲の取り得る状況ごとに、各処理に対して適切に優先度を設定することができる。
【0078】
なお、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとの各処理の優先度は、予め設定されてもよい。例えば、道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに、車両の安全性またはドライバの利便性の観点に基づいて各処理の優先度が設定されてもよい。特に、車両の安全性にかかわる処理の優先度は、道路区間及び車両の周囲の取り得る状況にかかわらず、他の処理の優先度よりも高くなるように設定されてもよい。そして道路区間ごと、または、車両の周囲の取り得る状況ごとに、設定した各処理の優先度に従って優先度テーブルが作成されればよい。この場合には、優先度テーブルは、例えば、工場出荷時において、車両2のストレージ装置14に高精度地図とともに格納されてもよい。またこの場合には、優先度設定処理は実行されなくてもよいので、サーバ3、及び、車両2のECU15における、実行情報生成部31の処理は省略されてもよい。
【0079】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両制御システム
2 車両
11 カメラ
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 ストレージ装置
15 ECU
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 バッファメモリ
24 プロセッサ
241 共有メモリ
31 実行情報生成部
32 判定部
33 優先度決定部
34 処理制御部
3 サーバ
41 通信インターフェース
42 ストレージ装置
43 メモリ
44 プロセッサ
51 受信処理部
52 優先度設定部
53 通知処理部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9