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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20250527BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20250527BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20250527BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/2475
H01M8/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022089472
(22)【出願日】2022-06-01
(65)【公開番号】P2023176901
(43)【公開日】2023-12-13
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 奨太
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-161836(JP,A)
【文献】特開2007-242334(JP,A)
【文献】特開2007-179876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0280261(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って積層された複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、
前記セルスタックを収容するとともに、前記第1方向に垂直な第2方向に開口を有するスタックケースと、
各々が前記燃料電池セルと電気的に接続される電圧検出用の一対の接点を有し、前記スタックケース内で前記第1方向に沿って配列されているとともに、前記セルスタックに対して前記第2方向から取り付けられた複数のセルモニタと、
前記開口を通じて前記スタックケースに着脱可能に取り付けられ、前記複数のセルモニタを前記スタックケースに対して一括して固定する固定部材と、
を備え、
前記スタックケースは、前記開口に対向するとともに、前記第1方向に沿って延びる取付面を有し、
前記固定部材は、前記取付面に対して着脱可能に構成されているとともに、前記取付面と対向しながら前記第1方向に延びる形状を有し、
前記複数のセルモニタの各々は、前記取付面と前記固定部材との間に挟持される挟持部を有する、
燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記複数のセルモニタの各々は、前記一対の接点を保持する本体部をさらに有し、
前記挟持部は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向に向けて、前記本体部から突出している、請求項に記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記本体部と前記挟持部の一部とは、樹脂材料で一体に構成されており、
前記挟持部の他の一部は、金属材料で構成されているとともに、前記取付面と前記固定部材との両者に接している、請求項に記載の燃料電池ユニット。
【請求項4】
前記樹脂材料で構成された前記挟持部の前記一部は、前記取付面と前記固定部材との間で広がる板状の形状を有し、
前記金属材料で構成された前記挟持部の前記他の一部は、前記板状の形状を有する前記挟持部の前記一部を貫通する柱状の形状を有する、請求項に記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、燃料電池ユニットが記載されている。この燃料電池ユニットは、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタックと、セルスタックに取り付けられた複数のセルモニタとを有する。各々のセルモニタは、燃料電池セルと電気的に接続される電圧検出用の一対の接点を有し、対応する一つの燃料電池セルと電気的に接続される。各々のセルモニタには、燃料電池セルに係止する突起部と、その突起部を操作するためのレバー操作部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-077616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、燃料電池セル毎に、セルモニタのレバー操作部を操作して、セルモニタを燃料電池セルに取り付ける必要がある。本明細書は、複数の燃料電池セルに複数のセルモニタを容易に取り付けるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、燃料電池ユニットに具現化される。その第1の態様では、燃料電池ユニットは、第1方向に沿って積層された複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、前記セルスタックを収容するとともに、前記第1方向に垂直な第2方向に開口を有するスタックケースと、各々が前記燃料電池セルと電気的に接続される電圧検出用の一対の接点を有し、前記スタックケース内で前記第1方向に沿って配列されているとともに、前記セルスタックに対して前記第2方向から取り付けられた複数のセルモニタと、前記開口を通じて前記スタックケースに着脱可能に取り付けられ、前記複数のセルモニタを前記スタックケースに対して一括して固定する固定部材と、を備える。
【0006】
上記した構成では、複数のセルモニタが、燃料電池セルの積層方向である第1方向に沿って配列され、固定部材によってスタックケースに一括して固定されている。このような構成によると、複数のセルモニタを組み付ける作業を容易に行うことができる。また、各々のセルモニタがスタックケースに固定されていることで、セルモニタ、燃料電池セル及びスタックケースの三者における相対変位を効果的に抑制することができる。
【0007】
第2の態様では、前記第1の態様において、スタックケースは、開口に対向するとともに、第1方向に沿って延びる取付面を有してもよい。この場合、固定部材は、取付面に対して着脱可能に構成されているとともに、取付面と対向しながら第1方向に延びる形状を有してもよい。また、複数のセルモニタの各々は、取付面と固定部材との間に挟持される挟持部を有してもよい。このような構成によると、スタックケースの取付面に各セルモニタの挟持部を配置した後、固定部材をスタックケースに取り付けることで、複数のセルモニタをスタックケースに一括して固定することができる。
【0008】
第3の態様では、前記第2の態様において、複数のセルモニタの各々は、一対の接点を保持する本体部をさらに有してもよい。この場合、挟持部は、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向に向けて、本体部から突出していてもよい。なお、本体部が設けられる方向は、特に限定されない。例えば、本体部は、第2方向に平行な方向に沿って設けられていてもよいし、第2方向と所定の角度(例えば、45度や60度)をなす方向に沿って設けられていてもよい。このような構成によると、本体部が設けられる方向に関わらず、挟持部が取付面に対して平行に取り付けられる限りにおいて、複数のセルモニタを一括して、スタックケースに固定することができる。
【0009】
第4の態様では、前記第3の態様において、本体部と挟持部の一部とは、樹脂材料で一体に構成されていてもよい。この場合、挟持部の他の一部は、金属材料で構成されているとともに、取付面と固定部材との両者に接していてもよい。例えば、挟持部の全体が樹脂材料で構成されていると、固定部材とセルケースの取付面とによって挟持された挟持部には、クリープ変形が生じやすくなる。これに対して、挟持部の一部が金属材料で構成されており、その金属材料の部分が挟持された構成であると、挟持部に生じるクリープ変形が抑制されることで、セルモニタを長期に亘って安定して固定し続けることができる。
【0010】
第5の態様では、前記第4の態様において、樹脂材料で構成された挟持部の一部は、取付面と固定部材との間で広がる板状の形状を有してもよい。この場合、金属材料で構成された挟持部の他の一部は、板状の形状を有する挟持部の一部を貫通する柱状の形状を有してもよい。このような構成によると、セルモニタの挟持部では、金属材料で構成された柱状の部分が、固定部材とスタックケースの取付面との間で挟持される。樹脂材料で形成された板状の部分と、金属材料で構成された柱状の部分との組み合わせにより、クリープ変形が抑制される挟持部を、簡素な構造で実現することができる。但し、挟持部の具体的な構造は特に限定されない。他の実施形態として、例えば挟持部は、樹脂材料で形成された板状の部分が、金属材料で構成されたスリーブ状の部分で覆われた構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の燃料電池ユニット10の構成を模式的に示す。
図2】セルモニタ18の挟持部26が、固定部材28によって、スタックケース16の取付面16dに固定されることを説明するための図。
図3図2のIII-III線における断面図。
図4】変形例の図3に対応する断面図。
図5】変形例のセルモニタ118を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0012】
図面を参照して、実施例の燃料電池ユニット10について説明する。本実施例の燃料電池ユニット10は、燃料電池車両(例えば、自動車、バス、トラック、電車)や定置用燃料電池装置等に搭載される。なお、燃料電池ユニット10は、車両以外の各種移動体(例えば、船舶や飛行機)に搭載されてもよい。
【0013】
図1に示すように、燃料電池ユニット10は、複数の燃料電池セル12を備える。各燃料電池セル12は、その内部で、燃料ガスと酸化ガスとを化学反応させることによって発電する。各燃料電池セル12は、前後方向及び上下方向と平行に配置されており、複数の燃料電池セル12は、左右方向に沿って積層されている。この積層された複数の燃料電池セル12によって、セルスタック14が構成されている。特に限定されないが、本実施例の燃料電池ユニット10では、燃料ガスとして水素ガスを使用し、酸化ガスとして空気を使用する。
【0014】
なお、燃料電池セル12の具体的な構成については、特に限定されない。例えば、燃料電池セル12は、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA:Membrane Electrode and Gas Diffusion Layer Assembly)と、支持フレームと、一対のセパレータとを備えてもよい。この場合、膜電極ガス拡散層接合体は、電解質膜と、アノード触媒層と、カソード触媒層と、アノードガス拡散層と、カソードガス拡散層とを備えてもよい。
【0015】
図1に示すように、燃料電池ユニット10は、スタックケース16をさらに備える。スタックケース16は、セルスタック14を収容する筐体部材である。スタックケース16は、底壁16aと、底壁16aの外周縁から上方に延びる四つの側壁16bとを備える。スタックケース16は、上方に開口16cを有する。スタックケース16は、取付面16dをさらに備える。取付面16dは、四つの側壁16bのうちの一つから、スタックケース16の内側(ここでは、後方)へ向かって突出している。また、取付面16dは、上記した開口16cに対向するとともに、左右方向に沿って延びている。なお、特に限定されないが、四つの側壁16bのうち左右方向において対向する二つの側壁は、エンドプレートであってもよい。
【0016】
図1、2に示すように、燃料電池ユニット10は、複数のセルモニタ18をさらに備える。複数のセルモニタ18の各々は、対応する燃料電池セル12に対して着脱可能に構成されており、セルスタック14に対して上方から取り付けられている。複数のセルモニタ18は、スタックケース16内で左右方向に沿って配列されている。
【0017】
図1、2に示すように、複数のセルモニタ18の各々は、一対の接点20を備える。一対の接点20は、電圧検出用の接点であって、対応する燃料電池セル12の各極と電気的に接続されている。この点に関して、一対の接点20は、対応する燃料電池セル12の各極と直接的に接続されてもよいし、当該燃料電池セル12を挟持する一対のセパレータと電気的に接続されてもよい。これにより、セルモニタ18の一対の接点20には、対応する燃料電池セル12の出力する電圧が印加される。セルモニタ18には、ワイヤハーネス22が接続されており、一対の接点20は、ワイヤハーネス22を介して外部のセル電圧モニタ(不図示)へ電気的に接続されている。セル電圧モニタは、複数のセルモニタ18の各々から入力される電圧に基づいて、複数の燃料電池セル12の各電圧をモニタする。
【0018】
図1-3に示すように、複数のセルモニタ18の各々は、本体部24と、挟持部26とをさらに備える。本体部24は、その内部に一対の接点20を保持している。本体部24は、概して、上下方向に延びる直方体の形状を有する。挟持部26は、前方に向けて、本体部24から突出している。本実施例の燃料電池ユニット10において、各セルモニタ18の挟持部26は、スタックケース16の取付面16dと、後述する固定部材28との間に挟持されている。
【0019】
図2図3に示すように、挟持部26は、樹脂部26aと金属部26bを有する。樹脂部26aは、本体部24と共に、樹脂材料で一体に構成されている。樹脂部26aは、スタックケース16の取付面16dと固定部材28との間で広がる板状の形状を有する。金属部26bは、例えばステンレス鋼といった金属材料で構成されている。金属部26bは、柱状の形状を有しており、板状の樹脂部26aを上下方向に貫通している。これにより、金属部26bは、スタックケース16の取付面16dと固定部材28との両者に接している。即ち、挟持部26は、金属部26bにおいて、スタックケース16の取付面16dと固定部材28とにより挟持されている。
【0020】
図1、2に示すように、燃料電池ユニット10は、固定部材28をさらに備える。固定部材28は、例えばプレートといった、左右方向に延びる形状を有する。固定部材28は、スタックケース16の開口16cを通じて、スタックケース16の取付面16dに対して着脱可能に取り付けられている。本実施例の燃料電池ユニット10では、固定部材28は、複数のセルモニタ18をスタックケース16に対して一括して固定している。このとき、固定部材28は、スタックケース16の取付面16dと対向しており、当該取付面16dと平行になっている。特に限定されないが、本実施例のスタックケース16の取付面16dには、二つの貫通孔が設けられており、これらの貫通孔を貫通するボルト等の締結具30によって、固定部材28の両端部が、スタックケース16の取付面16dに固定されている。なお、固定部材28は、必ずしもプレートである必要はなく、例えばバー等のような左右方向に延びる他の形状を有していてもよい。また、固定部材28をスタックケース16の取付面16dに固定する方法も、特に限定されない。
【0021】
上記した構成では、複数のセルモニタ18が、燃料電池セル12の積層方向である左右方向に沿って配列され、固定部材28によってスタックケース16に一括して固定されている。このような構成によると、複数のセルモニタ18を組み付ける作業を容易に行うことができる。また、各々のセルモニタ18がスタックケース16に固定されていることで、セルモニタ18、燃料電池セル12及びスタックケース16の三者における相対変位を効果的に抑制することができる。
【0022】
なお、本明細書における左右方向(左方又は右方)は、本技術における第1方向の一例であり、本明細書における上方は、本技術における第2方向の一例であり、本明細書における前方は、本技術における第3方向の一例である。
【0023】
なお、セルモニタ18の具体的な形状、特に、挟持部26の具体的な構成は特に限定されない。例えば、図4に示すように、一変形例のセルモニタ18では、挟持部126が板状の樹脂部126aとスリーブ状の金属部126bとを有し、樹脂部126aがスリーブ状の金属部126bによって覆われていてもよい。このような構成においても、金属部126bは、スタックケース16の取付面16dと固定部材28との両者に接する。これにより、挟持部126は、金属部126bにおいて、スタックケース16の取付面16dと固定部材28とにより挟持される。そのため、挟持部126に生じるクリープ変形が抑制されることで、セルモニタ18を長期に亘って安定して固定し続けることができる。
【0024】
上記した実施例では、図1、2に示すように、本体部24は、上下方向に延びる直方体の形状を有する。これに対して、図5に示すように、一変形例のセルモニタ118では、本体部124が、第2方向と所定の角度(例えば、45度や60度)をなす方向に沿って設けられていてもよい。このような構成によっても、挟持部26が取付面16dに対して平行に取り付けられることで、複数のセルモニタ18を一括して、スタックケース16に固定することができる。
【0025】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0026】
10 :燃料電池ユニット
12 :燃料電池セル
14 :セルスタック
16 :スタックケース
16a :底壁
16b :側壁
16c :開口
16d :取付面
18、118 :セルモニタ
20 :接点
22 :ワイヤハーネス
24、124 :本体部
26、126 :挟持部
26a、126a:樹脂部
26b、126b:金属部
28 :固定部材
30 :締結具
図1
図2
図3
図4
図5