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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】ステータ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/0414 20250101AFI20250527BHJP
【FI】
H02K15/0414
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022111150
(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公開番号】P2024009543
(43)【公開日】2024-01-23
【審査請求日】2024-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅志
(72)【発明者】
【氏名】白井 謙
(72)【発明者】
【氏名】川村 葉月
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 航平
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-049171(JP,A)
【文献】特開2020-102980(JP,A)
【文献】特開2002-005982(JP,A)
【文献】特開2002-174654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04ー15/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨークから径方向に突出する複数のティースの間に形成される複数のスロットに、前記ヨークの軸方向に沿って、絶縁被膜で被覆されたリード側セグメントコイルと絶縁被膜で被覆された反リード側セグメントコイルとを挿入し、連結部材を用いて前記リード側セグメントコイルの端部と、前記反リード側セグメントコイルの端部とを電気的に連結する挿入工程、
を備え、
前記挿入工程において、前記スロットに、複数の前記リード側セグメントコイルと複数の前記反リード側セグメントコイルとを一括して挿入し、
前記スロットに挿入された前記リード側セグメントコイルのコイルエンドと、前記反リード側セグメントコイルのコイルエンドとに、前記絶縁被膜を貫通する穴を形成し、導体露出部を形成する露出工程をさらに備え
前記露出工程において、抵抗計測用のプローブを前記絶縁被膜に刺すことにより、前記絶縁被膜に前記穴を形成し、
前記露出工程において、隣り合う前記コイルエンドの一方の前記コイルエンドに形成される前記穴の位置と、他方の前記コイルエンドに形成される前記穴の位置とは、前記コイルエンドが延在する方向に沿って異なっており、
前記露出工程において、複数の前記リード側セグメントコイルの前記コイルエンド及び複数の前記反リード側セグメントコイルの前記コイルエンドに形成される、複数の前記穴において、隣り合う前記穴同士の距離は、複数の前記リード側セグメントコイル同士の絶縁及び複数の前記反リード側セグメントコイル同士の絶縁が可能な距離である、
ステータ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中空の連結部材を用いて、リード側セグメントコイルと反リード側セグメントコイルとを電気的に接続するステータ製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法では、ステータコアのスロットに1対ずつリード側セグメントコイルと反リード側セグメントコイルとを挿入し、両セグメントコイルを連結部材で接続する。次いで、両セグメントコイルの、スロット内に位置する導体露出部にプローブを接触させ、抵抗計測を行って、両セグメントコイルの電気的接続を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-102980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、セグメントコイルの導体露出部がスロット内に位置するため、ステータコアの外周側から内周側へ向かって、スロットに1対ずつセグメントコイルを挿入する度に、抵抗計測による検査を行う必要がある。換言すれば、スロットに1対ずつセグメントコイルを挿入し、抵抗計測による検査を行うという工程を繰り返し行う必要がある。そのため、ステータコアへセグメントコイルを組み立てる工程の工数が多いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ステータコアへのセグメントコイルの組み立て工程がより簡便化されたステータ製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るステータ製造方法は、環状のヨークから径方向に突出する複数のティースの間に形成される複数のスロットに、前記ヨークの軸方向に沿って、絶縁被膜で被覆されたリード側セグメントコイルと絶縁被膜で被覆された反リード側セグメントコイルとを挿入し、連結部材を用いて前記リード側セグメントコイルの端部と、前記反リード側セグメントコイルの端部とを電気的に連結する挿入工程、を備え、前記挿入工程において、前記スロットに、複数の前記リード側セグメントコイルと複数の前記反リード側セグメントコイルとを一括して挿入し、前記スロットに挿入された前記リード側セグメントコイルのコイルエンドと、前記反リード側セグメントコイルのコイルエンドとに、前記絶縁被膜を貫通する穴を形成し、導体露出部を形成する露出工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様に係るステータ製造方法によれば、露出工程において、セグメントコイルのコイルエンドに導体露出部を形成して、当該導体露出部にプローブを接触させて、抵抗計測を行って検査を行うことができる。そのため、スロットに複数のセグメントコイルを一括して挿入することが可能となる。また、スロットに複数のセグメントコイルを挿入した後、複数のセグメントコイルについて、まとめて、抵抗計測による検査を行うことができる。よって、ステータコアへのセグメントコイルの組み立て工程がより簡便化されたステータ製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係るステータの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るステータコアの一例を示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態1におけるステータ製造方法を説明する断面図である。
図4】本発明の実施の形態1におけるステータ製造方法を説明する断面図である。
図5】本発明の実施の形態1においてコイルエンドに形成される導体露出用の穴について説明する図である。
図6】比較例におけるステータ製造方法を説明する断面図である。
図7】比較例におけるステータのリード側セグメントコイルと反リード側セグメントコイルとの接続部分を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態1に限定されるものではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
図1は、本実施の形態1に係るステータ1の一例を示す斜視図である。また、図2は、ステータコア10の一例を示す断面図である。図2は、ステータ1の軸方向(Z軸方向)に垂直な面でステータコア10を切断した断面を示す。また、図3及び図4は、本実施の形態1に係るステータ製造方法を説明する断面図である。なお、図3及び図4は、ステータ1の軸方向(Z軸方向)に平行な面でステータ1を切断した断面を示す。
【0011】
ステータ1は回転電機に用いられる固定子である。ステータ1が用いられる回転電機は、図1に示すステータ1と、ステータ1の内周側に所定の間隔を隔てて配置されるロータ(不図示)とで構成される。なお、ステータ1が用いられる回転電機は、ステータ1の外周側に所定の間隔を隔てて配置されるロータ(不図示)とで構成されてもよい。図1及び図2に示すように、ステータ1は、ステータコア10、複数のセグメントコイル20等を備える。
【0012】
ステータコア10は、環状の磁性体薄板がステータ1の軸方向(図1におけるZ軸方向)に積層されたものであり、全体として略円筒形状を有している。図2において、径方向と周方向が示されている。軸方向は、ステータコア10の中心穴の中心軸に沿った方向である。径方向は、軸方向に垂直な面内で中心軸を通る放射状の方向であり、周方向は、中心軸を中心として円周方向に沿った方向である。
【0013】
ステータコア10は、ヨーク11、ティース12、スロット13を備える。円環状のヨーク11の内周面の複数の位置からは、所定の間隔を空けて、径方向に突出する複数のティース12が形成される。隣り合うティース12,12の間の空間にスロット13が形成される。
【0014】
スロット13は、ステータコア10の径方向を長手方向として延びる開口形状を有している。また、スロット13は、ステータコア10の内周面に向けて開口している。ここでは、スロット13の周方向の幅が、径方向にわたって一定に形成されている例が示されている。なお、スロット13の幅が、径方向外側へいくに従って広がるように形成されてもよいし、逆に、径方向外側へいくに従って狭まるように形成されてもよい。
【0015】
ステータコア10の各スロット13には、3相(U相、V相、W相)のコイルが巻装される。ステータコア10に形成されるスロット13の数は、ロータの磁極数に対応して形成される。スロット13の長手方向には、複数のセグメントコイル20が並べて配置される。
【0016】
セグメントコイル20は、略U字状の複数の導体セグメントを用いて形成される。導体セグメントは、例えば、断面矩形の平角導体を略U字状に形成したものである。また、セグメントコイル20は、絶縁被膜によって被覆されている。具体的には、セグメントコイル20は、図3及び図4に示すように、セグメントコイル20は、互いに平行な2本の脚部21、22と、これらを連結する渡り線部23とを有する。また、2本の脚部21、22のいずれか一方は他方よりも長くなっている。図3図4に示す例では、脚部21が脚部22よりも長くなっている。また、2本の脚部21、22の端部には、後述する連結部材25に嵌入可能な挿入部24が設けられている。また、脚部22の挿入部24は、中空の銅管等の金属性の管である連結部材25に予め挿入されている。そして、セグメントコイル20は、当該2本の脚部21、22から、ステータコア10の軸方向に沿って、スロット13に挿入される。そして、2本の脚部21、22を連結する渡り線部23は、ステータコア10の軸方向の端面の外側に突出する。
【0017】
また、ステータコア10のリード側(図3図4の上側)からスロット13に挿入されるセグメントコイル20をリード側セグメントコイル20Aと称し、ステータコア10の反リード側(図3図4の下側)からスロット13に挿入されるセグメントコイル20を反リード側セグメントコイル20Bと称する。なお、リード側セグメントコイル20Aと、反リード側セグメントコイル20Bとを特に区別する必要がない場合、単に、セグメントコイル20と称する。そして、リード側セグメントコイル20Aの脚部21の挿入部24が、当該リード側セグメントコイル20Aと対向する反リード側セグメントコイル20Bの脚部22の挿入部24が予め挿入されている連結部材25に挿入される。これにより、リード側セグメントコイル20Aと反リード側セグメントコイル20Bとが、電気的に連結される。なお、連結部材25に挿入される挿入部24及び当該連結部材25は、絶縁被膜によって覆われていない。
【0018】
なお、図3図4は簡略化されているが、実際には、セグメントコイル20は、複数個がステータコア10の径方向に並んだ状態で、周方向に離れた2つのスロット13に挿入される。セグメントコイル20のステータコア10の軸方向の一端面より突出した部分は、ステータコア10の軸方向に対して傾斜するように曲げ加工される。
【0019】
次に、図3図4を参照しながら、本発明の実施の形態1におけるステータ製造方法について説明する。以下では、ステータ製造方法の工程のうち、ステータコア10にセグメントコイル20を組み付ける組み付け工程について説明する。具体的には、組み付け工程は、挿入工程と、露出工程とを備える。
【0020】
挿入工程では、ステータコア10の複数のスロット13に、リード側セグメントコイル20Aと反リード側セグメントコイル20Bとを挿入し、連結部材25によって、リード側セグメントコイル20Aの端部と、反リード側セグメントコイル20Bの端部とを電気的に連結する。具体的には、本実施の形態1に係るステータ製造方法では、当該挿入工程において、スロット13に、複数のリード側セグメントコイル20Aと複数の反リード側セグメントコイル20Bとを一括して挿入する。なお、スロット13への複数のセグメントコイル20の挿入は、例えば、セグメントコイル20のコイルエンド(渡り線部23)に対向する面が平坦形状である治具(不図示)で押圧することにより行う。
【0021】
露出工程では、スロット13に挿入されたリード側セグメントコイル20Aのコイルエンドと、反リード側セグメントコイル20Bのコイルエンドとに、絶縁被膜を貫通する穴26(後述)を形成し、導体露出部を形成する。なお、露出工程において、抵抗計測用のプローブを絶縁被膜に刺すことにより、当該絶縁被膜に穴26を形成してもよい。
【0022】
そして、図4に示すように、絶縁被膜に穴26を形成することによって形成された導体露出部にプローブを接触させることにより、抵抗計測を行い、リード側セグメントコイル20Aと反リード側セグメントコイル20Bとの電気的な接続が正常に行われたかを検査する。
【0023】
図5に、コイルエンドに形成される導体露出用の穴26について説明する図を示す。図5の上側は、ステータコア10の軸方向に平行な面でステータ1を切断したセグメントコイル20の断面を拡大して示す。図5の下側は、隣り合う複数のセグメントコイル20に形成された穴26を示す上面図である。
図5に示すように、上記露出工程において、複数のセグメントコイル20のコイルエンド(渡り線部23)に形成される、複数の穴26において、隣り合う穴26同士の距離D1、D2、D3は、複数のセグメントコイル同士の絶縁が可能な距離となるように、穴26が形成される。なお、隣り合う穴26同士の距離D1、D2、D3は、穴26の上端の縁部同士の距離である。また、穴26の径は、複数のセグメントコイル同士の絶縁が可能な程度に小さく、且つ、抵抗計測用のプローブが導体露出部に確実に接触可能な程度に大きい。また、穴26の形状は、図5に示す形状に限定されるものではなく、例えば、深さ方向に沿って、その径がほぼ同じである穴であってもよい。
【0024】
比較例
次に、図6を参照しながら、比較例のステータ製造について説明する。比較例に係るステータ30の構成のうち、実施の形態1に係るステータ1と同様の構成については、同一の符号を付している。比較例では、セグメントコイル31の脚部21、22の端部の絶縁被膜が剥離され、導体露出部32が形成されている。そして、図6に示すように、ステータコア10のスロットに1対ずつリード側セグメントコイル31Aと反リード側セグメントコイル31Bとを挿入し、両セグメントコイル31A、31Bを連結部材25で接続する。次いで、両セグメントコイル31A、31Bの、スロット13内に位置する導体露出部32にプローブを接触させ、抵抗計測を行って、両セグメントコイル31A、31Bの電気的接続を検査する。
【0025】
そのため、比較例では、導体露出部32がスロット13内に位置するため、ステータコア10の外周側から内周側へ向かって、スロット13に1対ずつセグメントコイル31A、31Bを挿入する度に、抵抗計測による検査を行う必要がある。換言すれば、スロット13に1対ずつセグメントコイル31A、31Bを挿入し、抵抗計測による検査を行うという工程を繰り返し行う必要がある。そのため、ステータコア10へセグメントコイル31を組み立てる工程の工数が多いという問題がある。
【0026】
また、比較例では、図7に示すように、スロット13内において隣り合うセグメントコイル31の間の絶縁を確保するため、脚部21の導体露出部32及び連結部材25に対向する部分に切り欠き部33が形成されている。当該切り欠き部33は、脚部21の当該部分に潰し加工を施すことにより形成することができる。しかし、潰し加工により発生する肉(金属)の処理は一般的に難しいため、潰す範囲が広ければ広い程、セグメントコイル31の加工に困難が生じる。
【0027】
これに対し、本実施の形態1に係るステータ製造方法によれば、露出工程において、セグメントコイル20のコイルエンド(渡り線部23)に導体露出部を形成して、当該導体露出部にプローブを接触させて、抵抗計測を行って検査を行うことができる。そのため、スロット13に複数のセグメントコイル20を一括して挿入することが可能となる。また、スロット13に複数のセグメントコイル20を挿入した後、複数のセグメントコイル20について、まとめて、抵抗計測による検査を行うことができる。よって、ステータコア10へのセグメントコイル20の組み立て工程がより簡便化されたステータ製造方法を提供することができる。
【0028】
また、脚部21、22の端部に、導体露出部32を形成する必要がないため、脚部21に切り欠き部33を形成する範囲を狭くすることができる。具体的には、本実施の形態1では、脚部21の連結部材25に対向する部分にのみ切り欠き部33を設ければよい。そのため、脚部21に対して潰し加工を行う範囲を少なくすることができ、セグメントコイル31の加工をより容易に行うことが可能となる。
【0029】
また、露出工程において、抵抗計測用のプローブを絶縁被膜に刺すことにより、絶縁被膜に穴26を形成することにより、導体露出部の形成と導体露出部へのプローブの接触とを同時に行うことができ、さらに、ステータ製造方法を簡便化することが可能となる。
【0030】
また、複数のセグメントコイル20のコイルエンド(渡り線部23)に形成される、複数の穴26において、隣り合う穴26同士の距離D1、D2、D3は、複数のセグメントコイル同士の絶縁が可能な距離となっている。これにより、絶縁被膜に穴26を形成したことによる弊害を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ステータ
10 ステータコア
11 ヨーク
12 ティース
13 スロット
20 セグメントコイル
20A リード側セグメントコイル
20B 反リード側セグメントコイル
21、22 脚部
23 渡り線部
24 挿入部
25 連結部材
26 穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7