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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20250527BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022123476
(22)【出願日】2022-08-02
(65)【公開番号】P2024020918
(43)【公開日】2024-02-15
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー・テックチャン
(72)【発明者】
【氏名】種村 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
【審査官】三木 景介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/053128(WO,A1)
【文献】特開2021-153382(JP,A)
【文献】国際公開第2022/009818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を備えるU相スイッチングアームと、
直列に接続された第3スイッチング素子および第4スイッチング素子を備えるV相スイッチングアームと、
直列に接続された第5スイッチング素子および第6スイッチング素子を備えるW相スイッチングアームと、
a相セカンダリ巻線に結合するUV相プライマリ巻線であって、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点と、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点との間に設けられたUV相プライマリ巻線と、
b相セカンダリ巻線に結合するVW相プライマリ巻線であって、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点と、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子の接続点との間に設けられたVW相プライマリ巻線と、
c相セカンダリ巻線に結合するWU相プライマリ巻線であって、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子の接続点と、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点との間に設けられたWU相プライマリ巻線と、
直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、
前記UV相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたa相リアクトルと、
前記VW相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたb相リアクトルと、
前記WU相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたc相リアクトルと、を備え、
前記U相スイッチングアーム、前記V相スイッチングアーム、W相スイッチングアームおよび前記コンデンサアームが並列接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を備えるU相スイッチングアームと、
直列に接続された第3スイッチング素子および第4スイッチング素子を備えるV相スイッチングアームと、
直列に接続された第5スイッチング素子および第6スイッチング素子を備えるW相スイッチングアームと、
a相セカンダリ巻線に結合するU相プライマリ巻線であって、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点に一端が接続されたU相プライマリ巻線と、
b相セカンダリ巻線に結合するV相プライマリ巻線であって、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点に一端が接続されたV相プライマリ巻線と、
c相セカンダリ巻線に結合するW相プライマリ巻線であって、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子の接続点に一端が接続されたW相プライマリ巻線と、
直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、
前記U相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたa相リアクトルと、
前記V相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたb相リアクトルと、
前記W相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたc相リアクトルと、を備え、
前記U相プライマリ巻線、前記V相プライマリ巻線および前記W相プライマリ巻線のそれぞれの他端が共通に接続されており、
前記U相スイッチングアーム、前記V相スイッチングアーム、W相スイッチングアームおよび前記コンデンサアームが並列接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の電力変換装置において、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子は交互にオンオフし、
前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子は交互にオンオフし、
前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子は交互にオンオフし、
前記a相セカンダリ巻線に印加される電圧が、1周期で正、正、0、負、負、0の順で変化し、
前記b相セカンダリ巻線に印加される電圧が、1周期で負、0、正、正、0、負の順で変化し、
前記c相セカンダリ巻線に印加される電圧が、1周期で0、負、負、0、正、正の順で変化することに応じて、前記第1スイッチング素子のオンオフ状態、前記第3スイッチング素子のオンオフ状態、および前記第5スイッチング素子のオンオフ状態は、(オン、オフ、オン)、(オン、オフ、オフ)、(オン、オン、オフ)、(オフ、オン、オフ)、(オフ、オン、オン)、(オフ、オフ、オン)の順で変化することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、スイッチングによって電力伝送を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両が広く用いられている。近年では、電動車両に搭載されたバッテリから商用電源システム等の電力系統に電力を供給し、電力系統からバッテリに電力を供給するV2G(Vehicle to Grid)と呼ばれる技術につき研究が行われている。V2Gでは、バッテリから出力された電力を調整して電力系統に供給し、あるいは、電力系統から供給された電力を調整してバッテリに出力する電力変換装置が用いられる。また、電動車両に搭載されたバッテリから一般家庭、オフィス等で用いられる電気機器に電力を供給するV2H(Vehicle to Home)と呼ばれる技術についても研究が行われている。V2Hにおいても、バッテリと電気機器との間の電力経路に電力変換装置が用いられる。電力変換装置には、交流電力を直流電力に変換し、あるいは直流電力を交流電力に変換するAC/DC電力変換装置や、直流電圧のレベルを変換するDC/DC電力変換装置がある。
【0003】
電力変換装置として、特許文献1には、絶縁型の電力変換回路システムが記載されている。このシステムでは、スイッチングトランジスタを含む2つの変換回路(スイッチング回路)がトランスによって結合されており、トランスが昇圧または降圧用のリアクトルとして用いられている。すなわち、トランスの巻線に現れるインダクタンスが昇圧や降圧に用いられている。
【0004】
特許文献1に記載の変換回路には、2つのアーム、すなわち、並列に接続された右アームおよび左アームが用いられている。ここで、アームとは直列接続された2つのスイッチング素子を含む回路単位をいう。2つのアームのうちの一方における2つのスイッチング素子の接続点と、他方における2つのスイッチング素子の接続点との間にトランスの巻線が接続されている。
【0005】
特許文献1に記載されているような電力変換回路システム(電力変換装置)では、伝送電力を大きくした場合、各スイッチング素子に流れる電流や、各スイッチング素子に印加される電圧が大きくなる。そのため、各スイッチング素子の耐電圧や許容電流を大きくする必要が生じ、製造コストが大きくなってしまうことがある。また、各スイッチング素子で発生する損失が大きくなってしまうことがある。
【0006】
そこで、非特許文献1に記載されているように、並列接続されたアームを3つとしたものがある。各アームにおける2つのスイッチング素子の接続点は3相の交流端子を構成し、3相のトランス巻線が3相の交流端子に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-60285号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Design Methodology of a Three-Phase Dual Active Bridge Coverter for Low Voltage Direct Current Applications IEEE Transactions on Power Electronics PP(99):1-1 June 2019 DOI:10.1109/TPEL2019.2922299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や非特許文献1に示されている電力変換装置では、トランスの1次巻線に接続されているスイッチング回路のスイッチングと、2次巻線に接続されているスイッチング回路のスイッチングとの間に位相差を持たせることで1次側と2次側との双方向で電力伝送が行われる。このような電力変換装置では、伝送電力を増加させたときにトランスに流れる電流が増加し、トランスで発生する損失が増加して伝送効率が低下することがある。また、トランスで発生する損失を抑制する設計をした場合には、トランスが大型化してしまうことがある。
【0010】
本発明の目的は、電力変換装置を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の関連技術は、複数のセカンダリ巻線に対応して設けられた複数のプライマリ巻線であって、対応する前記セカンダリ巻線にそれぞれが結合する複数のプライマリ巻線と、各前記プライマリ巻線の両端のうち少なくとも一方が接続されると共に、負荷/電源回路が一対の端子に接続されるスイッチング回路であって、各前記セカンダリ巻線に印加される電圧に応じてスイッチングを行い、各前記プライマリ巻線に現れる交流電圧を直流電圧に変換し、前記負荷/電源回路に出力するスイッチング回路と、前記一対の端子に両端が接続されたコンデンサアームであって、直列接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、複数の前記プライマリ巻線に対応して設けられた複数のリアクトルであって、各前記リアクトルが、対応する前記プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に接続された複数のリアクトルと、を備え、各前記プライマリ巻線、前記スイッチング回路、前記第1コンデンサおよび各前記リアクトルを経て、各前記プライマリ巻線のタップに至る複数の電流経路に、前記スイッチングによって電流が流れ、前記第1コンデンサが充放電され、各前記プライマリ巻線のタップから、各前記プライマリ巻線に対応する前記リアクトル、前記第2コンデンサおよび前記スイッチング回路を経て、各前記プライマリ巻線に至る複数の電流経路に、前記スイッチングによって電流が流れ、前記第2コンデンサが充放電され、前記コンデンサアームの端子間の電圧、および前記負荷/電源回路に流れる電流が、前記スイッチングによって制御されることを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記スイッチング回路は、複数の前記プライマリ巻線に対応する複数のスイッチングアームであって、直列に接続された2つのスイッチング素子を各前記スイッチングアームが備える、複数のスイッチングアームを備え、複数の前記スイッチングアームのそれぞれにおける前記2つのスイッチング素子の接続点は、複数相の交流電圧に対するデルタ結線ポートを構成し、複数の前記プライマリ巻線は、前記デルタ結線ポートに接続されている。
【0013】
望ましくは、前記スイッチング回路は、複数の前記プライマリ巻線に対応する複数のスイッチングアームであって、直列に接続された2つのスイッチング素子を各前記スイッチングアームが備える、複数のスイッチングアームを備え、各前記スイッチングアームにおける前記2つのスイッチング素子の接続点には、各前記スイッチングアームに対応する前記プライマリ巻線の一端が接続され、各前記プライマリ巻線の他端が共通に接続されている。
【0014】
また、本発明は、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を備えるU相スイッチングアームと、直列に接続された第3スイッチング素子および第4スイッチング素子を備えるV相スイッチングアームと、直列に接続された第5スイッチング素子および第6スイッチング素子を備えるW相スイッチングアームと、a相セカンダリ巻線に結合するUV相プライマリ巻線であって、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点と、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点との間に設けられたUV相プライマリ巻線と、b相セカンダリ巻線に結合するVW相プライマリ巻線であって、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点と、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子の接続点との間に設けられたVW相プライマリ巻線と、c相セカンダリ巻線に結合するWU相プライマリ巻線であって、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子の接続点と、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点との間に設けられたWU相プライマリ巻線と、直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、前記UV相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたa相リアクトルと、前記VW相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたb相リアクトルと、前記WU相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたc相リアクトルと、を備え、
前記U相スイッチングアーム、前記V相スイッチングアーム、W相スイッチングアームよび前記コンデンサアームが並列接続されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を備えるU相スイッチングアームと、直列に接続された第3スイッチング素子および第4スイッチング素子を備えるV相スイッチングアームと、直列に接続された第5スイッチング素子および第6スイッチング素子を備えるW相スイッチングアームと、a相セカンダリ巻線に結合するU相プライマリ巻線であって、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点に一端が接続されたU相プライマリ巻線と、b相セカンダリ巻線に結合するV相プライマリ巻線であって、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点に一端が接続されたV相プライマリ巻線と、c相セカンダリ巻線に結合するW相プライマリ巻線であって、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子の接続点に一端が接続されたW相プライマリ巻線と、直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、前記U相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたa相リアクトルと、前記V相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたb相リアクトルと、前記W相プライマリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたc相リアクトルと、を備え、前記U相プライマリ巻線、前記V相プライマリ巻線および前記W相プライマリ巻線のそれぞれの他端が共通に接続されており、前記U相スイッチングアーム、前記V相スイッチングアーム、W相スイッチングアームおよび前記コンデンサアームが並列接続されていることを特徴とする。
【0016】
望ましくは、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子は交互にオンオフし、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子は交互にオンオフし、前記第5スイッチング素子および前記第6スイッチング素子は交互にオンオフし、前記a相セカンダリ巻線に印加される電圧が、1周期で正、正、0、負、負、0の順で変化し、前記b相セカンダリ巻線に印加される電圧が、1周期で負、0、正、正、0、負の順で変化し、前記c相セカンダリ巻線に印加される電圧が、1周期で0、負、負、0、正、正の順で変化することに応じて、前記第1スイッチング素子のオンオフ状態、前記第3スイッチング素子のオンオフ状態、および前記第5スイッチング素子のオンオフ状態は、(オン、オフ、オン)、(オン、オフ、オフ)、(オン、オン、オフ)、(オフ、オン、オフ)、(オフ、オン、オン)、(オフ、オフ、オン)の順で変化する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力変換装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る電力変換システムの構成を示す図である。
図2】各スイッチング素子の状態と、各セカンダリ巻線の両端に現れる電圧との関係を示す図である。
図3A】a相セカンダリ巻線およびUV相プライマリ巻線に流れる電流を示す図である。
図3B】a相セカンダリ巻線およびUV相プライマリ巻線に流れる電流を示す図である。
図3C】a相セカンダリ巻線およびUV相プライマリ巻線に流れる電流を示す図である。
図3D】a相セカンダリ巻線およびUV相プライマリ巻線に流れる電流を示す図である。
図4A】負荷電流、第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流を示す図である。
図4B】負荷電流、第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流を示す図である。
図5A】負荷電流、第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流を示す図である。
図5B】負荷電流、第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流を示す図である。
図6】コンデンサの充放電に着目した動作を示す図である。
図7】UV相プライマリ巻線18uvの両端の電圧Vuv、a相リアクトルLaに流れる電流ILa、第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2の各時間波形を示す図である。
図8】各期間における各スイッチング素子の状態と、各相リアクトルに現れる電圧が正、0および負のいずれであるかを示す図である。
図9】電力変換システムのシミュレーション結果を示す図である。
図10】各期間における上コンデンサCu、下コンデンサCd、電流Icc、電流ILa、電流ILb、および電流ILcの状態を示す図である。
図11】コンデンサ分割型電力変換装置の各プライマリ巻線が各スイッチングアームにY結線された電力変換システムの構成を示す図である。
図12】第2実施形態に係る1ポート/2ポート電力変換システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。本明細書における上下左右等の方向を示す用語は、図面における方向を示す。方向を示すこれらの用語は各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。また、各素子の両端の電圧は、特に断らない限り、回路図における下側の端子を0電位とした電圧である。本明細書におけるプライマリ巻線およびセカンダリ巻線の用語は、説明の便宜上のものであり、プライマリ巻線に接続された回路と、セカンダリ巻線に接続された回路との間で伝送される電力の伝送方向を限定するものではない。
【0020】
図1には本発明の第1実施形態に係る電力変換システム100の構成が示されている。電力変換システム100は、コンデンサ分割型電力変換装置10および電力変換装置40を備えている。コンデンサ分割型電力変換装置10は、U相スイッチングアーム12U、V相スイッチングアーム12V、W相スイッチングアーム12W、コンデンサアーム14C、UV相プライマリ巻線18uv、VW相プライマリ巻線18vw、WU相プライマリ巻線18wu、a相リアクトルLa、b相リアクトルLb、c相リアクトルLc、正極端子16pおよび負極端子16nを備えている。
【0021】
U相スイッチングアーム12Uは、直列に接続されたスイッチング素子S1およびS2(第1スイッチング素子および第2スイッチング素子)を備えている。V相スイッチングアーム12Vは、直列に接続されたスイッチング素子S3およびS4(第3スイッチング素子および第4スイッチング素子)を備えている。W相スイッチングアーム12Wは、直列に接続されたスイッチング素子S5およびS6(第5スイッチング素子および第6スイッチング素子)を備えている。
【0022】
コンデンサアーム14Cは、直列に接続された上コンデンサCuおよび下コンデンサCd(第1コンデンサおよび第2コンデンサ)を備えている。U相スイッチングアーム12U、V相スイッチングアーム12V、W相スイッチングアーム12Wおよびコンデンサアーム14Cは並列接続されている。
【0023】
すなわち、スイッチング素子S1のスイッチング素子S2とは反対側の端子(上側の端子)と、スイッチング素子S3のスイッチング素子S4とは反対側の端子(上側の端子)と、スイッチング素子S5のスイッチング素子S6とは反対側の端子(上側の端子)が接続されている。また、スイッチング素子S2のスイッチング素子S1とは反対側の端子(下側の端子)と、スイッチング素子S4のスイッチング素子S3とは反対側の端子(下側の端子)と、スイッチング素子S6のスイッチング素子S5とは反対側の端子(下側の端子)が接続されている。U相スイッチングアーム12U、V相スイッチングアーム12V、W相スイッチングアーム12Wおよびコンデンサアーム14Cの上側の並列接続点および下側の並列接続点は、それぞれ、正極端子16pおよび負極端子16nに接続されている。
【0024】
各スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられてよい。スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、2つのIGBTが直列接続されるとは、一方のIGBTのエミッタ端子に他方のIGBTのコレクタ端子が接続されることをいう。スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、2つのMOSFETが直列接続されるとは、一方のMOSFETのソース端子に他方のMOSFETのドレイン端子が接続されることをいう。また、各スイッチング素子にはダイオードが含まれている。スイッチング素子にIGBTが用いられる場合、エミッタ端子にアノード端子が接続され、コレクタ端子にカソード端子が接続されている。スイッチング素子にMOSFETが用いられる場合、ソース端子にアノード端子が接続され、ドレイン端子にカソード端子が接続されている。
【0025】
各スイッチング素子にIGBT、MOSFET等が用いられる点、各スイッチング素子がダイオードを含む点、スイッチング素子の直列接続の定義およびスイッチングアームの並列接続の定義については、以下に説明する他のスイッチング素子についても同様である。
【0026】
スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点との間には、UV相プライマリ巻線18uvが接続されている。UV相プライマリ巻線18uvを構成する導線の中途の点にあるタップと、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの接続点との間には、a相リアクトルLaが接続されている。このタップは、UV相プライマリ巻線18uvを構成する導線の中点にあるセンタータップであってよい。
【0027】
スイッチング素子S3およびS4の接続点と、スイッチング素子S5およびS6の接続点との間には、VW相プライマリ巻線18vwが接続されている。VW相プライマリ巻線18vwを構成する導線の中途の点にあるタップと、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの接続点との間には、b相リアクトルLbが接続されている。このタップは、VW相プライマリ巻線18vwを構成する導線の中点にあるセンタータップであってよい。
【0028】
スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S1およびS2の接続点との間には、WU相プライマリ巻線18wuが接続されている。WU相プライマリ巻線18wuを構成する導線の中途の点にあるタップと、上コンデンサCUおよび下コンデンサCLの接続点との間には、c相リアクトルLcが接続されている。このタップは、WU相プライマリ巻線18wuを構成する導線の中点にあるセンタータップであってよい。
【0029】
電力変換装置10は、α相スイッチングアーム22α、β相スイッチングアーム22β、γ相スイッチングアーム22γ、コンデンサC0、a相セカンダリ巻線20a、b相セカンダリ巻線20b、c相セカンダリ巻線20c、正極端子30pおよび負極端子30nを備えている。
【0030】
α相スイッチングアーム22αは、直列に接続されたスイッチング素子S7およびS8を備えている。β相スイッチングアーム22βは、直列に接続されたスイッチング素子S9およびS10を備え、γ相スイッチングアーム22γは、直列に接続されたスイッチング素子S11およびS12を備えている。
【0031】
以下の説明では、U相スイッチングアーム12U、V相スイッチングアーム12VおよびW相スイッチングアーム12Wをそれぞれ、スイッチングアーム12U、12Vおよび12Wということがある。同様に、α相スイッチングアーム22α、β相スイッチングアーム22βおよびγ相スイッチングアーム22γを、それぞれ、スイッチングアーム22α、22βおよび22γということがある。
【0032】
スイッチングアーム22α、22βおよび22γは並列に接続されている。スイッチングアーム22α、22βおよび22γには、コンデンサC0が並列に接続されている。すなわち、スイッチングアーム22α、22βおよび22γの2つの並列接続点の間には、コンデンサC0が接続されている。スイッチングアーム22α、22β、22γおよびコンデンサC0の上側の並列接続点は正極端子30pに接続され、スイッチングアーム22α、22β、22γおよびコンデンサC0の下側の並列接続点は負極端子30nに接続されている。
【0033】
スイッチング素子S7およびS8の接続点と、スイッチング素子S9およびS10の接続点との間には、a相セカンダリ巻線22aが接続されている。スイッチング素子S9およびS10の接続点と、スイッチング素子S11およびS12の接続点との間には、b相セカンダリ巻線22bが接続されている。スイッチング素子S11およびS12の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間には、c相セカンダリ巻線22cが接続されている。
【0034】
a相セカンダリ巻線20aは、UV相プライマリ巻線18uvに結合し、UV相プライマリ巻線18と共にトランスTaを構成する。b相セカンダリ巻線20bは、VW相プライマリ巻線18vwに結合し、VW相プライマリ巻線18vwと共にトランスTbを構成する。c相セカンダリ巻線20cは、WU相プライマリ巻線18wuに結合し、WU相プライマリ巻線18wuと共にトランスTcを構成する。
【0035】
スイッチングアーム12U、12V、12W、22α、22βおよび22γのそれぞれが備える2つのスイッチング素子は、交互にオンオフする。例えば、スイッチングアーム12Uが備えるスイッチング素子S1がオンからオフに切り替わったときは、スイッチング素子S2は、オフからオンに切り替わる。そして、スイッチング素子S1がオフからオンに切り替わったときは、スイッチング素子S2は、オンからオフに切り替わる。他のスイッチングアーム12V、12W、22α、22βおよび22γについても同様である。すなわち、図1において1つのスイッチングアームの上側に描かれているスイッチング素子および下側に描かれているスイッチング素子は交互にオンオフする。
【0036】
電力変換システム100では、トランスTa、TbおよびTcによって、コンデンサ分割型電力変換装置10と電力変換装置40とが電気的に絶縁されている。これによって、コンデンサ分割型電力変換装置10および電力変換装置40のうち一方を、ユーザが操作する機器に搭載する場合には、その機器の絶縁設計が容易となる。
【0037】
図2には、各スイッチング素子の状態と、各セカンダリ巻線の両端に現れる電圧との関係が示されている。図2におけるt1、t2、・・・・t6と記載された列よりも右側の6列には、期間t1~t6について、コンデンサ分割型電力変換装置10が備える上側のスイッチング素子S1、S3およびS5と、電力変換装置40が備える上側のスイッチング素子S7、S9およびS11の各スイッチング状態が、オンまたはオフのいずれとなるかが示されている。図2に示された符号「1」は、スイッチング素子がオンになることを意味し、符号「0」は、スイッチング素子がオフになることを意味している。電力変換システム100では、期間t1~t6を1周期としたスイッチング状態が繰り返される。期間t1、t3およびt5の長さは同一であってよい。また、期間t2、t4およびt6の長さは同一であってよい。
【0038】
スイッチング素子S1は期間t1~t6において、順に、オン、オン、オン、オフ、オフ、オフとなる。スイッチング素子S3は期間t1~t6において、順に、オフ、オフ、オン、オン、オン、オフとなる。スイッチング素子S5は期間t1~t6において、順に、オン、オフ、オフ、オフ、オン、オンとなる。このように、スイッチング素子S3のスイッチング位相は、スイッチング素子S1に対して3分の1周期だけ遅れている。スイッチング素子S5のスイッチング位相は、スイッチング素子S3に対して3分の1周期だけ遅れ、スイッチング素子S1のスイッチング位相は、スイッチング素子S5に対して3分の1周期だけ遅れている。スイッチング素子S7、S9およびS11は、それぞれ、スイッチング素子S1、S3およびS5と同期したスイッチングをし、同一のスイッチング状態となる。
【0039】
図2の右側3列には、期間t1~t6について、a相セカンダリ巻線20aの両端に現れる電圧vta、b相セカンダリ巻線20bの両端に現れる電圧vtb、およびc相セカンダリ巻線20cの両端に現れる電圧vtcが、正、0および負のいずれになるかが示されている。符号「0」は、電圧が0となることを示す。符号「+」および「-」は、それぞれ、電圧が正になること、および負になることを示す。電圧vtbは、電圧vtaに対して3分の1周期だけ遅れている。電圧vtcは、電圧vtbに対して3分の1周期だけ遅れ、電圧vtaは、電圧vtcに対して3分の1周期だけ遅れている。
【0040】
電圧vtaは、期間t1~t6において、順に、正、正、0、負、負、0となる。電圧vtbは、期間t1~t6において、順に、負、0、正、正、0、負、となる。電圧vtcは、期間t1~t6において、順に、0、負、負、0、正、正となる。
【0041】
このように、a相セカンダリ巻線20aに印加される電圧が、正、正、0、負、負、0の順で変化し、b相セカンダリ巻線20bに印加される電圧が、負、0、正、正、0、負の順で変化し、c相セカンダリ巻線20cに印加される電圧が、0、負、負、0、正、正の順で変化することに応じて、各スイッチング素子のスイッチング状態は次のように変化する。スイッチング素子S1のオンオフ状態、スイッチング素子S3のオンオフ状態、およびスイッチング素子S5のオンオフ状態は、(101)、(100)、(110)、(010)、(011)、(001)の順で変化する。すなわち、スイッチング素子S1のオンオフ状態、スイッチング素子S3のオンオフ状態、およびスイッチング素子S5のオンオフ状態は、(オン、オフ、オン)、(オン、オフ、オフ)、(オン、オン、オフ)、(オフ、オン、オフ)、(オフ、オン、オン)、(オフ、オフ、オン)の順で変化する。
【0042】
図3A図3Dには、各期間においてa相セカンダリ巻線20aおよびUV相プライマリ巻線18uvに流れる電流が示されている。各図においてスイッチング素子を囲む丸印は、そのスイッチング素子がオンであることを示す。電力変換装置40の正極端子30pおよび負極端子30nには電源回路34が接続されている。コンデンサ分割型電力変換装置10の正極端子16pおよび16nには負荷回路32が接続されている。
【0043】
図3Aには、期間t1およびt2において、a相セカンダリ巻線20aに流れるa相入力電流Iaと、UV相プライマリ巻線18uvに流れるUV相出力電流Iuvが示されている。a相入力電流Iaは正極端子30pから流入し、スイッチング素子S7、a相セカンダリ巻線20aおよびスイッチング素子S10を順に通って負極端子30nから流出する。UV相出力電流Iuvは負極端子16nから流入し、スイッチング素子S4、UV相プライマリ巻線18uvおよびスイッチング素子S1を順に通って正極端子16pから流出する。これによって、正極端子30pおよび負極端子30nから入力された直流電力が、正極端子16pおよび負極端子16nから出力される。
【0044】
図3Bには、期間t3におけるa相ゼロ期間電流Ia0およびUV相ゼロ期間電流Iuv0が示されている。a相ゼロ期間電流Ia0は、a相セカンダリ巻線20aからスイッチング素子S9に流入し、スイッチング素子S9からスイッチング素子S7を通ってa相セカンダリ巻線20aに戻るループを流れる。UV相ゼロ期間電流Iuv0は、UV相プライマリ巻線18uvからスイッチング素子S1に流入し、スイッチング素子S1からスイッチング素子S3を流れてUV相プライマリ巻線18uvに戻るループを流れる。
【0045】
図3Cには、期間t4およびt5におけるa相入力電流IaおよびUV相出力電流Iuvが示されている。a相入力電流Iaは正極端子30pから流入し、スイッチング素子S9、a相セカンダリ巻線20aおよびスイッチング素子S8を順に通って負極端子30nから流出する。UV相出力電流Iuvは負極端子16nから流入し、スイッチング素子S2、UV相プライマリ巻線18uvおよびスイッチング素子S3を順に通って正極端子16pから流出する。これによって、正極端子30pおよび負極端子30nから入力された直流電力が、正極端子16pおよび負極端子16nから出力される。
【0046】
図3Dには、期間t6におけるa相ゼロ期間電流Ia0およびUV相ゼロ期間電流Iuv0が示されている。a相ゼロ期間電流Ia0は、a相セカンダリ巻線20aからスイッチング素子S8に流入し、スイッチング素子S8からスイッチング素子S10を通ってa相セカンダリ巻線20aに戻るループを流れる。UV相ゼロ期間電流Iuv0は、UV相プライマリ巻線18uvからスイッチング素子S4に流入し、スイッチング素子S4からスイッチング素子S2を流れてUV相プライマリ巻線18uvに戻るループを流れる。
【0047】
図3Aおよび図3Cに示されているように、期間t1およびt2と、期間t4およびt5において、正極端子30pおよび負極端子30nから入力された直流電力は、トランスTaを介して正極端子16pおよび負極端子16nから出力される。図2に示されたスイッチング方法によれば、構造の3相対称性およびスイッチング方法の時間軸上における3相対称性から、期間t3およびt4と、期間t6およびt1において、正極端子30pおよび負極端子30nから入力された直流電力が、トランスTbを介して正極端子16pおよび負極端子16nから出力される。また、期間t5およびt6と、期間t2およびt3において、正極端子30pおよび負極端子30nから入力された直流電力が、トランスTcを介して正極端子16pおよび負極端子16nから出力される。
【0048】
期間t3およびt6にa相セカンダリ巻線20aに流れるa相ゼロ期間電流Ia0と、UV相プライマリ巻線18uvに流れるUV相ゼロ期間電流Iuv0は、正極端子30pおよび負極端子30nから、正極端子16pおよび負極端子16nに伝送される電力に寄与しない。あるいは、a相ゼロ期間電流Ia0とUV相ゼロ期間電流Iuv0が、そのような伝送電力へ与える影響は微小である。
【0049】
同様に、期間t5およびt2には、スイッチング素子S9およびS11が共にオンになること、スイッチング素子S10およびS12が共にオンになることによるb相ゼロ期間電流Ib0が、b相セカンダリ巻線20bに流れる。また、期間t5およびt2には、スイッチング素子S3およびS5が共にオンになること、スイッチング素子S4およびS6になることによるVW相ゼロ期間電流Ivw0が、VW相プライマリ巻線18vwに流れる。
【0050】
同様に、期間t1およびt4には、スイッチング素子S7およびS11が共にオンになること、スイッチング素子S8およびS12が共にオンになることによるc相ゼロ期間電流Ic0が、c相セカンダリ巻線20cに流れる。また、期間t1およびt4には、スイッチング素子S1およびS5が共にオンになること、スイッチング素子S2およびS6になることによるWU相ゼロ期間電流Iwu0が、WU相プライマリ巻線18wuに流れる。
【0051】
各ゼロ期間電流は、正極端子30pおよび負極端子30nから、正極端子16pおよび負極端子16nに伝送される電力に寄与しない。あるいは、各ゼロ期間電流が、そのような伝送電力へ与える影響は微小である。ゼロ期間電流は、各相リアクトルに誘導起電力を発生させる。各相リアクトルに発生した誘導起電力と各相プライマリ巻線に現れる電圧によって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの両端の電圧が維持される。
【0052】
正極端子30pおよび負極端子30nから正極端子16pおよび負極端子16nへと伝送される電力に寄与する電流は、理論的にはa相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcに流れない。そのため、a相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcが、伝送電力に及ぼす影響は小さい。
【0053】
図4Aおよび図4Bには、期間t1およびt2において負荷回路32に流れる負荷電流IL、上コンデンサCuに流れる第1コンデンサ電流Ic1および下コンデンサCdに流れる第2コンデンサ電流Ic2が示されている。ただし、これらの図は、UV相プライマリ巻線18uv、U相スイッチングアーム12UおよびV相スイッチングアーム12Vに流れる第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2に着目したものである。
【0054】
図4Aには、期間t1およびt2における負荷電流IL、第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2が示されている。期間t1およびt2では、UV相プライマリ巻線18uvに正の電圧が現れている。UV相プライマリ巻線18uvのタップよりもU相スイッチングアーム12U側(上側UV相プライマリ巻線)からスイッチング素子S1、上コンデンサCuおよびa相リアクトルLaを順に通り、UV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第1コンデンサ電流Ic1が流れる。また、UV相プライマリ巻線18uvのタップからa相リアクトルLa、下コンデンサCd、およびスイッチング素子S4を順に通って、UV相プライマリ巻線18uvのタップよりもV相スイッチングアーム12V側(下側UV相プライマリ巻線)に戻る第2コンデンサ電流Ic2が流れる。さらに、下コンデンサCd、上コンデンサCuおよび負荷回路32を順に流れる負荷電流ILが流れる。上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの放電によって負荷電流ILが流れ、放電によって失われた電荷量だけ、上コンデンサCuは第1コンデンサ電流Ic1によって充電され、下コンデンサCdは第2コンデンサ電流Ic2によって充電される。これによって、正極端子16pと、負極端子16nとの間の電圧が維持される。
【0055】
図4Bには、期間t4およびt5における負荷電流IL、第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2が示されている。期間t4およびt5では、UV相プライマリ巻線18uvに負の電圧が現れている。下側UV相プライマリ巻線から、スイッチング素子S3、上コンデンサCu、a相リアクトルLaを順に通って、UV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第1コンデンサ電流Ic1が流れる。また、UV相プライマリ巻線18uvのタップから、a相リアクトルLa、下コンデンサCdおよびスイッチング素子S2を通って、上側UV相プライマリ巻線に戻る第2コンデンサ電流Ic2が流れる。期間t1およびt2と同様、期間t4およびt5においても、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの放電によって負荷電流ILが流れ、放電によって失われた電荷量だけ、上コンデンサCuは第1コンデンサ電流Ic1によって充電され、下コンデンサCdは第2コンデンサ電流Ic2によって充電される。
【0056】
a相リアクトルLaに流れる第1コンデンサ電流Ic1と第2コンデンサ電流Ic2は、逆向きの電流である。したがって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの充電または放電に寄与するためにa相リアクトルLaに流れる電流は微小であるか0である。そのため、負荷回路32に流れる電流が大きく、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdのそれぞれの充放電電流が大きい場合であっても、a相リアクトルLaのインダクタンスを必ずしも大きくしなくてもよい。
【0057】
U相スイッチングアーム12U、V相スイッチングアーム12VおよびW相スイッチングアーム12Wの動作の時間軸上における3相対称性から、VW相プライマリ巻線12vw、V相スイッチングアーム12VおよびW相スイッチングアーム12Wには、3分の1周期遅れで図4と同様の第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2が流れる。さらに、WU相プライマリ巻線18wu、W相スイッチングアーム12WおよびU相スイッチングアーム12Uには、3分の2周期遅れで図4と同様の第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2が流れる。
【0058】
上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの充電または放電のために、a相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcのそれぞれに流れる電流は微小であるか0である。したがって、正極端子16pおよび負極端子16nで入出力される電力によらず、a相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcのインダクタンスを小さくしてよい。これによって、a相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcが小型化され、コンデンサ分割型電力変換装置10が小型化される。
【0059】
また、電力変換システム100では、コンデンサ分割型電力変換装置10のスイッチングと、電力変換装置40のスイッチングとの間には位相差がなくてよい。これによって、トランスTa、TbおよびTcで生じる電力損失が低減される。
【0060】
図5A(t1)~(t3)には、それぞれ、期間t1~t3について、負荷電流IL、第1コンデンサ電流(IU,IV)および第2コンデンサ電流(IV,IW)が示されている。図5B(t4)~(t6)には、それぞれ、期間t4~t6について、負荷電流IL、第1コンデンサ電流(IV,IW)および第2コンデンサ電流(IU,IV)が示されている。ただし、これらの図は、第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流のうち、上側UV相プライマリ巻線、上側VW相プライマリ巻線および上側WU相プライマリ巻線に流れる電流に着目したものである。
【0061】
これらの図に示された第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流は、負荷回路32への電力伝送に寄与する電流である。これらの図は、図3A図3Dに示された正極端子16pおよび負極端子16nに流れる電流を、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdを充放電する電流を含めて詳細に表したものである。
【0062】
第1コンデンサ電流について説明する。期間t1およびt2では、上側UV相プライマリ巻線からスイッチング素子S1、上コンデンサCuおよびa相リアクトルLaを順に通って、UV相プライマリ巻線18uvのタップに戻るU相第1コンデンサ電流IUが流れる。期間t3およびt4では、上側VW相プライマリ巻線からスイッチング素子S3、上コンデンサCuおよびb相リアクトルLbを順に通って、VW相プライマリ巻線18vwのタップに戻るV相第1コンデンサ電流IVが流れる。期間t5およびt6では、上側WU相プライマリ巻線からスイッチング素子S5、上コンデンサCuおよびc相リアクトルLcを順に通って、WU相プライマリ巻線18wuのタップに戻るW相第1コンデンサ電流IWが流れる。
【0063】
第2コンデンサ電流について説明する。期間t2およびt3では、WU相プライマリ巻線18wuのタップからc相リアクトルLc、下コンデンサCdおよびスイッチング素子S6を順に流れ、上側WU相プライマリ巻線に戻るW相第2コンデンサ電流IWが流れる。期間t4およびt5では、UV相プライマリ巻線18uvのタップからa相リアクトルLa、下コンデンサCdおよびスイッチング素子S2を順に流れ、上側UV相プライマリ巻線に戻るU相第2コンデンサ電流IUが流れる。期間t6およびt1では、VW相プライマリ巻線18vwのタップからb相リアクトルLb、下コンデンサCdおよびスイッチング素子S4を順に流れ、上側VW相プライマリ巻線に戻るV相第2コンデンサ電流IVが流れる。
【0064】
期間t1~t6では、順に、WU相プライマリ巻線18wu、VW相プライマリ巻線18vw、UV相プライマリ巻線18uv、WU相プライマリ巻線wu、VW相プライマリ巻線vw、UV相プライマリ巻線uvの両端の電圧が0となっている。両端の電圧が0である巻線には第1コンデンサ電流および第2コンデンサ電流は流れない。図5Aおよび図5Bには示されていないが、両端の電圧が0である巻線には、図3Bおよび図3Dに示されたa相ゼロ期間電流Ia0のようなゼロ期間電流が流れる。ゼロ期間電流は、各相リアクトルに誘導起電力を発生させる。各相リアクトルに発生した誘導起電力と各相プライマリ巻線に現れる電圧によって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの両端の電圧が維持される。
【0065】
上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの放電によって負荷電流ILが流れる。放電によって失われた電荷の分だけ、上コンデンサCuは第1コンデンサ電流によって充電され、下コンデンサCdは第2コンデンサ電流によって充電される。すなわち、期間t1では、U相第1コンデンサ電流IUによって上コンデンサCuが充電され、V相第2コンデンサ電流IVによって下コンデンサCdが充電される。期間t2では、U相第1コンデンサ電流IUによって上コンデンサCuが充電され、W相第2コンデンサ電流IWによって下コンデンサCdが充電される。期間t3では、V相第1コンデンサ電流IVによって上コンデンサCuが充電され、W相第2コンデンサ電流IWによって下コンデンサCdが充電される。期間t4では、V相第1コンデンサ電流IVによって上コンデンサCuが充電され、U相第2コンデンサ電流IUによって下コンデンサCdが充電される。期間t5では、W相第1コンデンサ電流IWによって上コンデンサCuが充電され、U相第2コンデンサ電流IUによって下コンデンサCdが充電される。期間t6では、W相第1コンデンサ電流IWによって上コンデンサCuが充電され、V相第2コンデンサ電流IVによって下コンデンサCdが充電される。
【0066】
上記では、正極端子16pおよび負極端子16nに負荷回路32が接続された場合について説明した。正極端子16pおよび負極端子16nには、コンデンサ分割型電力変換装置10に電力を供給する電源回路34が接続されてもよい。正極端子16pおよび負極端子16nに電源回路34が接続された場合には、正極端子30pおよび30nに負荷回路32が接続される。この場合、電源回路34から出力される電力によって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdが充電される。充電された電荷量だけ、上コンデンサCuは第1コンデンサ電流によって放電され、下コンデンサCdは第2コンデンサ電流によって放電され、正極端子16pと負極端子16nとの間の電圧が維持される。
【0067】
このように、コンデンサ分割型電力変換装置10は、複数のセカンダリ巻線20a、20bおよび20cに対応して設けられた複数のプライマリ巻線18uv、18vwおよび18wuを備えている。複数のプライマリ巻線18uv、18vwおよび18wuは、それぞれ、複数のセカンダリ巻線20a、20bおよび20cに結合し、トランスTa、TbおよびTcが構成される。
【0068】
U相スイッチングアーム12U、V相スイッチングアーム12VおよびW相スイッチングアーム12Wが構成するスイッチング回路12には、各プライマリ巻線(18uv、18vw、18wu)の両端のうち少なくとも一方が接続される。また、負荷/電源回路が、スイッチング回路12の一対の端子としての正極端子16pおよび負極端子16nに接続される。ここで、負荷/電源回路は、負荷回路32、電源回路34、または、動作状況に応じて負荷回路32もしくは電源回路34として動作する回路をいう。動作状況に応じて負荷回路32もしくは電源回路34として動作する回路には、例えば、モータジェネレータを含む回路がある。
【0069】
スイッチング回路12は、各セカンダリ巻線(20a、20b、20c)に印加される電圧に応じてスイッチングを行い、各プライマリ巻線に現れる交流電圧を直流電圧に変換し、負荷/電源回路に出力する。コンデンサ分割型電力変換装置10は、正極端子16pおよび負極端子16nに両端が接続されたコンデンサアーム14Cを備えている。コンデンサアーム14Cは、直列接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサとして、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdを備えている。
【0070】
コンデンサ分割型電力変換装置10は、プライマリ巻線18uv、18vwおよび18wuに対応する3つのリアクトルとして、a相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcを備えている。各リアクトル(La、Lb、Lc)は、対応するプライマリ巻線のタップと、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの接続点との間に接続されている。
【0071】
各プライマリ巻線、スイッチング回路12、上コンデンサCuおよび各リアクトルを経て、各プライマリ巻線のタップに至る複数の電流経路に、スイッチング回路12のスイッチングによって電流が流れ、上コンデンサCuが充放電される。また、各プライマリ巻線のタップから、各プライマリ巻線に対応するリアクトル、下コンデンサCdおよびスイッチング回路12を経て、各プライマリ巻線に至る複数の電流経路に、スイッチングによって電流が流れ、下コンデンサCdが充放電される。そして、コンデンサアーム14Cの端子間の電圧、および負荷/電源回路に流れる電流が、スイッチング回路12のスイッチングによって制御される。
【0072】
コンデンサの充放電に着目した動作について図6を参照して説明する。図6(a)には期間t1およびt2における第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2が示されている。期間t1およびt2では、UV相プライマリ巻線18uvのタップから上側UV相プライマリ巻線を通り、スイッチング素子S1、上コンデンサCuおよびa相リアクトルLaを順に通ってUV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第1コンデンサ電流Ic1が流れる。また、UV相プライマリ巻線18uvのタップから下側UV相プライマリ巻線を通り、スイッチング素子S4、下コンデンサCdおよびa相リアクトルLaを順に通ってUV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第2コンデンサ電流Ic2が流れる。期間t1およびt2において上コンデンサCuは充電され、下コンデンサCdは放電する。
【0073】
図6(b)には、期間t3における第1コンデンサ電流Ic1(ゼロ期間電流)が示されている。期間t3では、図6(a)に示された第1コンデンサ電流Ic1が減少して0になった後に、流れる向きが逆になる。すなわち、UV相プライマリ巻線18uvのタップから、a相リアクトルLa、上コンデンサCu、スイッチング素子S1および上側UV相プライマリ巻線を順に通ってUV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第1コンデンサ電流Ic1が流れる。また、UV相プライマリ巻線18uvのタップから、a相リアクトルLa、上コンデンサCu、スイッチング素子S3および下側UV相プライマリ巻線を順に通ってUV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第1コンデンサ電流Ic1が流れる。期間t3では第2コンデンサ電流Ic2は0となり、上コンデンサCuは充電されている状態から放電する状態となる。a相リアクトルLaに発生した誘導起電力とUV相プライマリ巻線18uvに現れる電圧によって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの両端の電圧が定まる。
【0074】
図6(c)には、期間t4およびt5における第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2が示されている。期間t4およびt5では、UV相プライマリ巻線18uvのタップから、a相リアクトルLa、上コンデンサCu、スイッチング素子S3および下側UV相プライマリ巻線を順に通る第1コンデンサ電流Ic1が流れる。また、UV相プライマリ巻線18uvのタップから、a相リアクトルLa、下コンデンサCd、スイッチング素子S2および上側UV相プライマリ巻線を順に通る第2コンデンサ電流Ic2が流れる。期間t4およびt5では、上コンデンサCuは放電し、下コンデンサCdは充電される。
【0075】
図6(d)には、期間t6における第2コンデンサ電流Ic2(ゼロ期間電流)が示されている。期間t6では、図6(c)の第2コンデンサ電流Ic2が減少して0になった後に、流れる向きが逆になる。すなわち、下側UV相プライマリ巻線から、スイッチング素子S4、下コンデンサCdおよびa相リアクトルLaを順に通ってUV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第2コンデンサ電流Ic2が流れる。また、上側UV相プライマリ巻線から、スイッチング素子S2、下コンデンサCdおよびa相リアクトルLaを順に通ってUV相プライマリ巻線18uvのタップに戻る第2コンデンサ電流Ic2が流れる。期間t6では第1コンデンサ電流Ic1は0となり、下コンデンサCdは充電されている状態から放電する状態となる。a相リアクトルLaに発生した誘導起電力とUV相プライマリ巻線18uvに現れる電圧によって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの両端の電圧が定まる。
【0076】
図7(a)には、UV相プライマリ巻線18uvの両端の電圧Vuvの時間波形が示されている。図7(b)には、a相リアクトルLaに流れる電流ILaの時間波形が示されている。図7(c)には、第1コンデンサ電流Ic1および第2コンデンサ電流Ic2の時間波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流を示している。UV相プライマリ巻線18uvの両端の電圧は、a相セカンダリ巻線20aの両端の電圧vtaと同様、期間t1~t6において、順に、正、正、0、負、負、0となる。a相リアクトルLaに流れる電流ILaは、期間t1およびt2では正であり、期間t3で正から0に減少して、0から負方向に増加する。a相リアクトルLaに流れる電流ILaは、期間t4およびt5では負であり、期間t6で負から0に増加して、0から正方向に増加する。
【0077】
第1コンデンサ電流Ic1は、期間t1およびt2では正の値で増加し、期間t3で正から0に減少して、0から負方向に増加する。第1コンデンサ電流Ic1は、期間t4およびt5で負の値で正方向に増加し、期間t6で0となる。第2コンデンサ電流Ic2は、期間t1およびt2で正の値で減少して0となり、期間t3で0となる。第2コンデンサ電流Ic2は、期間t4およびt5で負の値で負方向に増加し、期間t6で負から0に増加し、0から正方向に増加する。第1コンデンサ電流Ic1が正であるときは、上コンデンサCuが充電され、第1コンデンサ電流Ic1が負であるときは、上コンデンサCuが放電する。第2コンデンサ電流Ic2が正であるときは、下コンデンサCdが充電され、第2コンデンサ電流Ic2が負であるときは、下コンデンサCdが放電する。
【0078】
図8における、t1、t2、・・・・t6と記載された列よりも右側の6列には、期間t1~t6について、コンデンサ分割型電力変換装置10が備える上側のスイッチング素子S1、S3およびS5と、電力変換装置40が備える上側のスイッチング素子S7、S9およびS11の各スイッチング状態が示されている。これら6列で示されるスイッチング状態は、図2と同様である。
【0079】
図8の右側3列には、期間t1~t6について、a相リアクトルLaの両端に現れる電圧vLa、b相リアクトルLbの両端に現れる電圧vLb、およびc相リアクトルLcの両端に現れる電圧vLcが、正、0および負のいずれになるかが示されている。電圧vLa、vLbおよびvLcは、それぞれ、UV相プライマリ巻線18uvのタップ側、VW相プライマリ巻線18vwのタップ側およびWU相プライマリ巻線18wuのタップ側を0電位とした電圧である。電圧vLbは、電圧vLaに対して3分の1周期だけ遅れている。電圧vLcは、電圧vLbに対して3分の1周期だけ遅れ、電圧vLaは、電圧vLcに対して3分の1周期だけ遅れている。
【0080】
電圧vLaは、期間t1~t6において、順に、0、0、負、0、0、正となる。電圧vLbは、期間t1~t6において、順に、0、正、0、0、負、0となる。電圧vLcは、期間t1~t6において、順に、負、0、0、正、0、0となる。
【0081】
図9(a)~(d)には、電力変換システム100のシミュレーション結果が示されている。図9(a)には、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdとの接続点からa相リアクトルLa、b相リアクトルLbおよびc相リアクトルLcに向けて流出する電流Iccの時間波形が示されている。図9(b)には、a相リアクトルLaに流れる電流ILa、b相リアクトルLbに流れる電流ILbおよびc相リアクトルLcに流れる電流ILcの時間波形が示されている。
【0082】
電流ILaの時間波形は、図7(b)に示された時間波形と同様である。電流ILbは電流ILaに対して3分の1周期だけ遅れている。電流ILcは、電流ILbに対して3分の1周期だけ遅れ、電流ILaは、電流ILcに対して3分の1周期だけ遅れている。
【0083】
図9(a)に示された電流Iccは、図9(b)に示された電流ILa、ILbおよびILcを加算合計したものである。期間t1およびt4では、電流ILaおよびILbが減じ合い、電流Iccは電流ILcに等しくなる。期間t2およびt5では、電流iLaおよびILcが減じ合い、電流Iccは電流ILbに等しくなる。期間t3およびt6では、電流iLbおよびILcが減じ合い、電流Iccは電流ILaに等しくなる。
【0084】
図9(c)には、a相リアクトルLaの両端に現れる電圧vLa、b相リアクトルLbの両端に現れる電圧vLb、およびc相リアクトルLcの両端に現れる電圧vLcの時間波形が示されている。電圧vLaは、期間t1~t6において、順に、0、0、負、0、0、正となる。電圧vLbは、電圧vLaに対して3分の1周期だけ遅れている。電圧vLcは、電圧vLbに対して3分の1周期だけ遅れ、電圧vLaは電圧vLcに対して3分の1周期だけ遅れている。
【0085】
図9(d)には、上コンデンサCuの両端の電圧vcuおよび下コンデンサCdの両端の電圧vcdの時間波形が示されている。電圧vcuおよびvcdは、期間t1からt6に至るまでの時間の3分の1の周期で増減を繰り返す。電圧vcuが平均値以上であるときは電圧vcdは平均値以下であり、電圧vcuが平均値未満であるときは電圧vcdは平均値以上である。
【0086】
図9(a)に示されているように、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの接続点から流出する電流Iccの周波数は、各スイッチングアームが備えるスイッチング素子のスイッチング周波数の3倍である。図9(d)に示されているように、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdのそれぞれに流れる充電電流および放電電流の周波数は、各スイッチングアームが備えるスイッチング素子のスイッチング周波数の3倍である。したがって、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdには、容量が小さいコンデンサが用いられてよい。また、上コンデンサCuおよび下Cdを充電するために各相リアクトルに発生させる誘導起電力が小さくてもよく、各相リアクトルのインダクタンスが小さくてもよいため、各相リアクタンスが小型化される。これによって、コンデンサ分割型電力変換装置10が小型化される。
【0087】
図10には、期間t1~t6のそれぞれにおける、上コンデンサCu、下コンデンサCd、電流Icc、電流ILa、電流ILb、および電流ILcの状態が示されている。期間t1~t6に対応付けられた「Vcc」の列は、下コンデンサCdの両端の電圧vcdの交流成分を示す。「Cu」の列および「Cd」の列には、期間t1~t6のそれぞれにおいて、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdが充電状態から放電状態となるか(充・放)、放電状態から充電状態となるか(放・充)が示されている。「Icc」の列には、期間t1~t6のそれぞれにおいて、電流Iccが電流ILa、電流ILbおよび電流ILcのうちいずれに相当するかが示されている。「iLa」、「iLb」および「iLc」の列には、それぞれ、電流iLa、iLbおよびiLcが、正であるか、減少しているか、負であるか、あるいは、増加しているかが示されている。
【0088】
上記では、UV相プライマリ巻線18uv、VW相プライマリ巻線18vwおよびWU相プライマリ巻線18wuが、スイッチングアーム12U、12Vおよび12Wにデルタ結線された実施形態が示された。すなわち、スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点と、スイッチング素子S5およびS6の接続点が複数相(3相)の交流電圧に対するデルタ結線ポートDPを構成する。このデルタ結線ポートDPにUV相プライマリ巻線18uv、VW相プライマリ巻線18vwおよびWU相プライマリ巻線18wuが接続された実施形態が示された。UV相プライマリ巻線18uv、VW相プライマリ巻線18vwおよびWU相プライマリ巻線18wuは、スイッチングアーム12U、12Vおよび12WにY結線されてもよい。すなわち、スイッチングアーム12U、12Vおよび12Wのそれぞれにおける2つのスイッチング素子の接続点は、デルタ結線ポートを構成してもよいし、Y結線ポートYPを構成してもよい。
【0089】
図11には、コンデンサ分割型電力変換装置11の各プライマリ巻線が各スイッチングアームにY結線された電力変換システム102の構成が示されている。スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点と、スイッチング素子S5およびS6の接続点は、Y結線ポートを構成している。スイッチング素子S1およびS2の接続点には、UV相プライマリ巻線18uvの一端が接続されている。スイッチング素子S3およびS4の接続点には、VW相プライマリ巻線18vwの一端が接続されている。スイッチング素子S5およびS6の接続点には、WU相プライマリ巻線18wuの一端が接続されている。UV相プライマリ巻線18uvの他端、VW相プライマリ巻線18vwの他端およびWU相プライマリ巻線18wuの他端は、中性点Nに共通に接続されている。電力変換システム102の各スイッチング素子の動作は、図1に示された電力変換システム100の各スイッチング素子の動作と同様である。
【0090】
図1および図11には、セカンダリ巻線20a、20bおよび20cが、スイッチングアーム22α、22βおよび22γにデルタ結線された例が示されているが、セカンダリ巻線20a、20bおよび20cは、スイッチングアーム22α、22βおよび22γにY結線されてもよい。すなわち、スイッチングアーム22α、22βおよび22γのそれぞれにおける2つのスイッチング素子の接続点は、デルタ結線ポートを構成してもよいし、Y結線ポートを構成してもよい。
【0091】
図12には、本発明の第2実施形態に係る1ポート/2ポート電力変換システム104の構成が示されている。1ポート/2ポート電力変換システム104は、コンデンサ分割型電力変換装置10と、追加ポート型電力変換装置60とを備えている。
【0092】
追加ポート型電力変換装置60は、スイッチングアーム62A~62C、セカンダリ巻線28a~28c、a相リアクトルLLa、b相リアクトルLLb、c相リアクトルLLc、コンデンサC3,C4、正極端子66p,68p、負極端子66nおよび68nを備えている。スイッチングアーム62Aは、直列接続されたスイッチング素子SapおよびSanを備えている。スイッチングアーム62Bは、直列接続されたスイッチング素子SbpおよびSbnを備えており、スイッチングアーム62Cは、直列接続されたスイッチング素子ScpおよびScnを備えている。
【0093】
スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3は並列接続されている。スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3の上側の並列接続点は、正極端子66pに接続され、スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3の下側の並列接続点は、負極端子66nに接続されている。スイッチング素子SapおよびSanの接続点と、スイッチング素子SbpおよびSbnの接続点との間には、セカンダリ巻線28aが接続されている。スイッチング素子SbpおよびSbnの接続点と、スイッチング素子ScpおよびScnの接続点との間には、セカンダリ巻線28bが接続されている。スイッチング素子ScpおよびScnの接続点と、スイッチング素子SapおよびSanの接続点との間には、セカンダリ巻線28cが接続されている。
【0094】
セカンダリ巻線28aのタップには、a相リアクトルLLaの一端が接続されている。セカンダリ巻線28bのタップ、およびセカンダリ巻線28cのタップには、それぞれ、b相リアクトルLLbの一端、およびc相リアクトルLLcの一端が接続されている。各相リアクトルLLa~LLcの他端は正極端子68pに接続されている。スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3の下側の並列接続点は、負極端子66nの他、負極端子68nにも接続されている。正極端子68pと負極端子68nとの間には、コンデンサC4が接続されている。
【0095】
図12には、セカンダリ巻線28a、28bおよび28cが、スイッチングアーム62A~62Cにデルタ結線された例が示されているが、セカンダリ巻線28a、28bおよび28cは、スイッチングアーム62A~62CにY結線されてもよい。
【0096】
スイッチングアーム62A、62Bおよび62Cは、それぞれ、図1に示されたスイッチングアーム22α、22βおよび22γと同様のスイッチングを行う。すなわち、スイッチング素子SapおよびSanは、それぞれ、スイッチング素子S7およびS8と同様のスイッチングを行う。スイッチング素子SbpおよびSbnは、それぞれ、スイッチング素子S9およびS10と同様のスイッチングを行い、スイッチング素子ScpおよびScnは、それぞれ、スイッチング素子S11およびS12と同様のスイッチングを行う。
【0097】
正極端子16pおよび負極端子16nは第1ポートを構成する。正極端子66pおよび負極端子66nは第2ポートを構成し、正極端子68pおよび負極端子68nは第3ポートを構成する。第1ポート、第2ポートおよび第3ポートの間では、相互に直流電力の伝送が行われる。
【0098】
正極端子66pと負極端子66nとの間の電圧に対する、正極端子68pと負極端子68nとの間の電圧の比率は、期間t4の長さに対する期間t1の長さの比率、期間t2の長さに対する期間t5の長さの比率、および期間t6の長さに対する期間t3の長さの比率によって定まる。
【0099】
上記の電力変換システム100、102および104は、V2G、V2H等における電力伝送設備に用いられてよい。また、電力変換システム100、102および104は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10,11 コンデンサ分割型電力変換装置、12 スイッチング回路、12U U相スイッチングアーム、12V V相スイッチングアーム、12W W相スイッチングアーム、14C コンデンサアーム、16p,30p,66p,68p 正極端子、16n,30n,66n,68n 負極端子、18uv UV相プライマリ巻線、18vw VW相プライマリ巻線、18wu WU相プライマリ巻線、20a a相セカンダリ巻線、20b b相セカンダリ巻線、20c c相セカンダリ巻線、22α α相スイッチングアーム、22β β相スイッチングアーム、22γ γ相スイッチングアーム、28a~28c セカンダリ巻線、32 負荷回路、34 電源回路、40,60 電力変換装置、62A~62C スイッチングアーム、S1~S12,Sap,San,Sbp,Sbn,Scp,Scn スイッチング素子、Cu 上コンデンサ、Cd 下コンデンサ、La,LLa a相リアクトル、Lb,LLb b相リアクトル、Lc,LLc c相リアクトル、Ta,Tb,Tc トランス、C0~C4 コンデンサ、DP デルタ結線ポート、N 中性点。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12