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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250527BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250527BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20250527BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
G08G1/16 E
B60W30/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022126552
(22)【出願日】2022-08-08
(65)【公開番号】P2024023021
(43)【公開日】2024-02-21
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 優
【審査官】小林 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159426(JP,A)
【文献】特開2020-135320(JP,A)
【文献】特開2016-011030(JP,A)
【文献】特開2020-081124(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210581(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0365996(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方を走行している他の車両を追い抜きもしくは追い越すために前記自車両の少なくとも車速を前記他の車両との関係に基づいて制御する追い越し制御を実行可能な運転支援システムであって、
前記自車両は、
前記自車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記自車両が前記他の車両を追い抜きもしくは追い越しを行ったか否かの追い越し情報を取得する追い越し情報取得部と、前記位置情報および前記追い越し情報を前記自車両の外部のサーバに送信する送信部と、前記サーバから所定の情報を受信する受信部と、前記サーバから受信した情報に基づいて前記追い越し制御の実行および不実行に切り替える切替制御部とを備え、
前記位置情報は、前記自車両が走行している車線が走行車線であるか追い越し車線であるかを含み、
前記追い越し情報は、前記自車両が前記走行車線を走行している状態で、前記追い越し車線を走行している他の車両を追い抜いたこと、および前記他の車両を追い抜かないように減速したことを含んでおり、
前記サーバは、
前記自車両を含む走行車両から受信した前記追い越し情報に基づいて、前記自車両が走行している箇所を含む所定の領域における前記追い抜きもしくは追い越しの頻度を求める追い越し頻度判定部と、前記頻度を、前記所定の領域に入った車両に前記追い越し制御の実行および不実行の切替のための情報として送信するサーバ側送信部とを備えている
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援システムであって、
前記自車両は、前方を走行している前方車両との車間距離を所定の距離に維持しつつ前記前方車両に追従するように加減速するアダプティブクルーズ制御を備え、かつ前記アダプティブクルーズ制御の実行中に前記追い越し制御を実行しもしくは不実行とする
ことを特徴とする運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転操作を容易にするための支援を行う装置に関し、特に前方を走行している車両を追い抜き、あるいは追い越すための制御、あるいはその制御を抑制するための制御を行う運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周囲の車両の走行状態などのいわゆる走行環境を検出し、走行環境に適した走行を行うように自車両を制御したり、あるいは運転者に情報を提供したりする、いわゆる運転支援が行われている。そのような運転支援の一例として、前方を走行している車両を追い越す場合の制御を行う装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された装置は、主として、前方の車両を追い越そうとする場合に、周囲の他車両との関係を検出し、その検出の結果に基づいて、追い越しを中止するように構成された装置である。すなわち、特許文献1に記載された装置は、追い越しを開始した場合もしくは追い越しのために車線を変更した場合に、自車両の前後の所定の範囲内に他の車両が存在するか否かを検出する。当該他の車両が検出された場合には、追い越しを中止する。また、追い越し開始前の元の車線にスペースが存在していることが検出された場合には、そのスペースに入るように操舵する。さらに、このような追い越し制御の状態を運転者に告知することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6031066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した追い越し制御は、そのためのシステムが稼働していることにより自動的に行われるが、自車両が走行している道路環境もしくは走行環境によっては追い越し制御を行うことが好ましくない場合がある。そのため、追い越し制御のためのシステムを運転者が任意にオン・オフできるように構成し、あるいは追い越しを抑制する制御を任意にオン・オフできるように構成することがある。オン・オフの切替が自在な追い越し制御システムでは、運転者がその時点の走行状態に応じてオン操作もしくはオフ操作すればよいので、運転者の意図に即した走行が可能になる。
【0005】
しかしながら、自車両が走行している車線の検出もしくは認識、前方車両との距離や相対速度、隣接する車線を走行している他車両の検出、方向指示器の操作の有無などを含む追い越しもしくは追い抜きのための走行制御(以下、これらをまとめて追い越し制御と記すことがある。)は、アダプティブクルーズコントロール(ACC制御)の一環として組み込まれ、実行されることがある。そのような場合、追い越し制御のみをオン・オフに切り替えるとすれば、ACC制御の設定を手動で変更することになるので、追い越し制御のオン・オフの切り替えが運転者にとって煩わしいものとならざるを得ない。そのため、例えば、運転者が切替操作を怠ってしまって、追い越しもしくは追い抜きを行うことが好ましくない走行環境で追い越しもしくは追い抜きを行ってしまったり、また反対に運転者の期待する追い越しあるいは追い抜きをできずに運転者が違和感を抱くなどの可能性がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、走行環境などに応じた追い越しもしくは追い抜きのための制御もしくはその制御の抑制の実行・禁止の切り替えを自動的に行って、運転者にとって煩わしいと思われる操作を解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、自車両の前方を走行している他の車両を追い抜きもしくは追い越すために前記自車両の少なくとも車速を前記他の車両との関係に基づいて制御する追い越し制御を実行可能な運転支援システムであって、前記自車両は、前記自車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記自車両が前記他の車両を追い抜きもしくは追い越しを行ったか否かの追い越し情報を取得する追い越し情報取得部と、前記位置情報および前記追い越し情報を前記自車両の外部のサーバに送信する送信部と、前記サーバから所定の情報を受信する受信部と、前記サーバから受信した情報に基づいて前記追い越し制御の実行および不実行に切り替える切替制御部とを備え、前記位置情報は、前記自車両が走行している車線が走行車線であるか追い越し車線であるかを含み、前記追い越し情報は、前記自車両が前記走行車線を走行している状態で、前記追い越し車線を走行している他の車両を追い抜いたこと、および前記他の車両を追い抜かないように減速したことを含んでおり、前記サーバは、前記自車両を含む走行車両から受信した前記追い越し情報に基づいて、前記自車両が走行している箇所を含む所定の領域における前記追い抜きもしくは追い越しの頻度を求める追い越し頻度判定部と、前記頻度を、前記所定の領域に入った車両に前記追い越し制御の実行および不実行の切替のための情報として送信するサーバ側送信部とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明では、前記自車両は、前方を走行している前方車両との車間距離を所定の距離に維持しつつ前記前方車両に追従するように加減速するアダプティブクルーズ制御を備え、かつ前記アダプティブクルーズ制御の実行中に前記追い越し制御を実行しもしくは不実行とすることとしてよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、自車両が所定の領域を走行している場合、その領域における追い抜きもしくは追い越しの頻度を、追い越し制御の実行あるいは不実行の切替のための情報としてサーバから受信する。自車両はその受信した情報に基づいて追い越し制御を実行し、あるいは不実行とする。したがって、運転者を煩わすことなく、追い越し制御またはその抑制のための制御を自動的に実行でき、あるいは不実行とすることができる。また、上記の頻度は、上記の領域を実際に走行した車両から送信された追い抜きもしくは追い越しに関する情報に基づいているから、サーバから自車両に送信される追い抜きもしくは追い越しに関する情報は、自車両が走行している領域もしくは環境を反映したものとなり、その結果、自車両による追い抜きもしくは追い越しの実行や不実行は、車両の流れに即したものとなり、車両の流れに乗ったスムースな走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態の全体的な構成を説明するための模式図である。
図2】この発明の実施形態におけるシステムを機能的手段で示すブロック図である。
図3】この発明の実施形態で実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態はこの発明を実施した場合の一例に過ぎないのであって、この発明を限定するものではない。
【0013】
この発明の実施形態における車両は、同一車線もしくは隣接車線を走行している他車両を追い抜きあるいは追い越す際に、その追い抜きあるいは追い越しに適するように少なくとも車速を制御する追い越し制御を実行可能な車両である。また、追い越し制御を禁止することに近似する追い越し抑制制御を実行可能な車両である。この種の追い越し制御は、車速を予め設定した車速に維持し、また同一車線上の先行車両との間に予め設定した車間距離を維持して当該先行車両に追従するように加減速を行ういわゆるアダプティブクルーズ制御(ACC制御)の一環として実行される。すなわち、図1に模式的に示すこの発明の実施形態における車両Vaは、アダプティブクルーズコントロールシステム(ACCシステム)1を備えている。ACCシステム1は、従来知られているシステムと同様の構成であって、マイクロコンピュータを主体にして構成され、手動操作によって入力されたデータや各種のセンサから入力された検出データ、予め記憶しているデータなどを使用して演算を行い、その演算の結果を制御指令信号として出力することにより、定車速走行(クルージング)のための種々の機能を果たすように構成されている。その機能的構成を挙げると、手動操作に基づいて目標とする車速を設定する機能、検出された車速と目標とする車速(設定車速)とを比較して実車速が設定車速に一致するように加速もしくは減速の制御指令信号を出力する機能、手動操作に基づいて目標とする車間距離を設定する機能、レーダもしくはライダ(以下、これらをまとめてレーダと記す)2などによって前方車両Vbを検出するとともに車間距離を求める機能、実車間距離が目標とする車間距離に一致するように前方車両Vbの加減速に合わせて加減速する制御指令を出力する機能などを備えている。また、前方車両Vbの車速が設定車速より遅いことにより、その前方車両Vbを追い越すために追い越し車線に車線変更するべく方向指示器が操作された場合に、前方車両Vbに合わせた車速とする制御を終了する機能や、その場合に追い越し車線に存在する他車両Vcを検出するとともにそれらの他車両Vcとの間隔を検出する機能、その検出された間隔に基づいて追い越しの可否を判定する機能などを備えている。
【0014】
車両Vaは、自らの位置を検出するシステムを備えており、その一例は、ナビゲーションシステム(NAVシステム)3である。NAVシステム3は、例えばグローバルポジショニングシステム(GPS)における衛星(GPS衛星)との通信で自車両Vaの座標上の位置を求め、またこれと併せて、ジャイロなどを用いた自律航法により自車両Vaの座標上の位置を求め、その座標上の位置を地図データと照らし合わせることにより、自車両Vaの地図上での位置を検出する。地図データには、各地点の種々の情報が含まれており、例えば、自車両Vaが走行している道路の種別や名称、走行車線と追い越し車線との種別、現在地点が属している地域などが含まれる。なお、車両Vaは、走行している車線を識別するためにカメラ4を備えることができる。カメラ4で得られた画像によれば、自車両Vaがセンターライン寄りの車線を走行しているのか、あるいは路肩寄りの車線を走行しているのかを判別することができる。また現在走行している国もしくは地域が、左側通行の国もしくは地域か否かは事前に知られている。したがって、カメラ4で得られた画像によって現在走行している車線が走行車線か追い越し車線かを判別することができる。
【0015】
なお、カメラ4および前述したレーダ2は、同一車線の前方の状態を取得するように設けるだけでなく、隣接する車線上の他車両Vcの情報を得るように複数台設けたり、あるいは向きを変えるように設けてもよい。すなわち、この発明の実施形態では、自車両Vaの前後左右などの周囲の情報を取得し、その情報をACC制御や追い越し制御などに利用もしくは反映するように構成してもよい。
【0016】
さらに、車両Vaは、車両Vaの外部に設けられているサーバ5との間でデータ通信を行うためのDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)6を備えている。このDCM6は、マイクロコンピュータを主体とした制御装置や通信アンテナなどによって構成され、上記のACCシステム1やNAVシステム3を含む車載ネットワークとサーバ5などの外部ネットワークとの間での通信を仲介する。
【0017】
車両Vaは、上述したように、ACCシステム1やレーダ2あるいはNAVシステム3さらにはカメラ4などによって、現在位置やその変化、前方車両Vbや周囲の他車両Vcなどとの相対位置やその変化、さらには加減速などを検出でき、それらの検出したデータに基づいて追い抜きや追い越しを行ったか否かを判定する。そして、その判定の結果をサーバ5に送信する。これらの制御は、上述したACCシステム1やNAVシステム3ならびにDCM6などによって実行される。したがって、上述したACCシステム1やNAVシステム3ならびにDCM6などがこの発明の実施形態におけるコントローラを構成している。なお、この発明の実施形態におけるコントローラは、上述したACCシステム1やNAVシステム3ならびにDCM6などに対して制御信号を出力する上位の制御装置として構成されていてもよい。
【0018】
そのコントローラ7を機能的構成によって示せば、図2のとおりである。すなわち、ここに示すコントローラ7は、自車両Vaの位置情報を取得する位置情報取得部7Aを備えている。これは、上述したNAVシステム3による位置の検出機能に相当する。また、自車両Vaが、前方車両Vbや他車両Vcなどの他の車両を追い抜いたか否か、もしくは追い越したか否かの情報を取得する追い越し情報取得部7Bを備えている。この種の情報は、上述したACCシステム1による追い越し制御の実行もしくは不実行(あるいは追い越し抑制制御の不実行もしくは実行)ならびにNAVシステム3による自車両Vaの位置情報から得ることができる。そして、自車両Vaとサーバ5との間のデータの授受は上記のDCM6によって行い、したがってDCM6に相当する送信部7Cおよび受信部7Dが備えられている。さらに、ACCシステム1における追い越し制御は、実行(オン)および不実行(オフ)に切り替えることができ、あるいは追い越し抑制制御を不実行(オフ)および実行(オン)に切り替えることができる。その切替を、後述するように、サーバ5から受信した情報に基づいて行う切替制御部7Eが備えられている。なお、ここで説明している実施形態では、追い越し抑制制御の不実行(オフ)および実行(オン)を、追い越し制御の実行(オン)および不実行(オフ)として説明する。
【0019】
この発明の実施形態では、実際の走行で得られた道路情報もしくは走行情報を走行車両からサーバ5に伝送し、サーバ5ではそれらの情報を加工して車両Vaの走行に役立つ情報を生成し、それを車両Vaに伝送する。したがって、サーバ5は、情報の授受のための通信機器ならびに情報処理のための演算装置を備えている。サーバ5が車両Vaから受信する情報は、主として、位置に関する情報、ならびに追い抜きあるいは追い越しに関する情報である。位置に関する情報はNAVシステム3で取得される情報であり、走行中の車両Vaの座標上の位置あるいは地図上の位置のいずれであってもよい。追い抜きあるいは追い越しに関する情報は、隣接する車線(走行車線もしくは追い越し車線)を走行している他車両Vcを、車線を変更せずに追い抜いたこと、当該他車両Vcに追い付いたものの減速して並進もしくはこれに近い状態を維持したこと、車線を変更して他車両Vcの前に出たことなどである。前述したように車両Vaは、ACC制御によって前方車両Vbを検出あるいは監視しており、また周囲の他車両Vcを検出しつつ追い越しのための制御を行うから、自車両Vaと他車両Vcとの位置や速度などの相対関係は常時、検出もしくは把握されている。
【0020】
サーバ5は、多数の車両から逐次伝送される情報を、それらに含まれる位置情報に基づいて、予め定めた領域ごとに分別し、各領域における追い抜きもしくは追い越しの頻度(以下、仮に追い越し頻度と言う)を求める。ここで、「領域」は、地図上に適宜に定めた地点を中心にした所定の半径の地域であってもよく、あるいは各道路を適宜の距離ごとに区分した距離範囲であってもよい。また、追い越し頻度は、追い抜きあるいは追い越しの回数や、前方車両Vbに追い付いたものの追い抜きもしくは追い越しせずに並進した回数と追い抜きもしくは追い越しした回数との比率などであってもよい。なお、これらの回数は、時間ごとに求めてもよく、あるいは中間と夜間とに分けて求めてもよく、さらには季節ごとに分けて求めてもよい。したがって、追い越し頻度は、当該領域における一般的な車両の走行状態を示していると言い得る。サーバ5は、こうして求められた追い越し頻度をそれぞれの領域内の車両に対して発信する。
【0021】
サーバ5は上述した制御を行うように構成されており、その構成を機能的要素で示せば、図2に併記してあるとおりである。すなわち、サーバ5は、上記の追い越し頻度を求める追い越し頻度判定部5Aと、その追い越し頻度を車両Vaに、追い越し制御の実行および不実行の切替のための情報として送信するサーバ側送信部5Bとを備えている。
【0022】
したがって、車両Vaは、現在走行している領域の一般的な走行の態様、より具体的には、追い抜きもしくは追い越しが頻繁に行われるか、あるいは隊列を殆ど崩さずに走行を継続するかなどを知ることができる。すなわち、自車両Vaは、追い抜きもしくは追い越しを行っても問題はないか、あるいは追い抜きもしくは追い越しを行った方が車両の流れが円滑になるか、また反対に追い抜きもしくは追い越しはその領域では、車両の流れの円滑化や安全性などの点で避けた方がよいかなどを、受信した追い越し頻度に基づいて判定することが可能になる。
【0023】
そこで、自車両Vaは、受信した追い越し頻度に基づいて、ACC制御の一環として行う追い越し制御の実行・不実行の切替を行う。その機能的構成が前述した切替制御部7Eである。具体的には、受信した追い越し頻度の値が、予め定めたしきい値以下であれば、追い越し制御をオフにして追い越し制御を抑制する。これとは反対に受信した追い越し頻度がしきい値を超えていれば、追い越し制御をオンにして、状況に応じて追い抜きもしくは追い越しを実行する。
【0024】
上述したサーバ5からの情報によって追い越し制御の実行・不実行を切り替える制御の一例を図3を参照して説明する。図3に示す制御例は、自車両VaがACC制御を実行して走行している際に自車両Vaで繰り返し実行される。先ず、ステップS1では、自車両Vaが所定の領域に進入したか否かが判断される。ここで、所定の領域とは、サーバ5において予め定めてある地域あるいは走行路の範囲であり、自車両Vaはサーバ5からその領域を取得している。また、自車両Vaは自らの位置を検出している。したがって、地図上での上記の領域と自車両Vaの位置とを対比することにより、ステップS1の判断が行われる。
【0025】
ステップS1で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなく図3のルーチンを一旦終了する。これとは反対に、自車両Vaが所定の領域に進入したことによりステップS1で肯定的に判断された場合には、当該領域における追い越し頻度をサーバ5から取得する(ステップS2)。ここで、追い越し頻度は、走行車線を走行している車両が追い越し車線を走行している他車両を追い抜いた頻度、走行車線を走行していた車両が追い越し車線に車線変更して、走行車線上の前方車両を追い越した頻度、追い越し車線を走行していた車両が、走行車線に車線変更を行って、走行車線上で、追い越し車線上の前方車両より前に出た頻度などのいずれであってもよい。このような頻度は、所定の領域ごとにサーバ5で算出されており、自車両VaはステップS2でその頻度を受信する。
【0026】
ついで、取得した頻度が予め定めてあるしきい値以下か否かが判断される(ステップS3)。その判断基準となるしきい値は、設計上、適宜に定めておくことができる。このステップS3で肯定的に判断された場合には、追い抜きあるいは追い越しの頻度の低い地域もしくは道路を走行していると推定されるので、ACC制御における追い越し制御を不実行(オフ)にする(ステップS4)。追い越し抑制制御を備えている車両Vaであれば、その追い越し抑制制御をオンにする。その後、リターンする。これとは反対に頻度がしきい値より大きいことによりステップS3で否定的に判断された場合には、追い抜きあるいは追い越しが頻繁に行われる地域もしくは道路を走行していると推定されるので、ACC制御における追い越し制御を実行(オン)にする(ステップS5)。追い越し抑制制御を備えている車両Vaであれば、その追い越し抑制制御をオフにする。その後、リターンする。
【0027】
したがって、上述したこの発明の実施形態によれば、自車両が走行している領域に応じて追い越し制御の実行・不実行(あるいは追い越し抑制制御の不実行・実行)を自動的に切り替えることができるので、運転者が手動操作で切り替える煩わしさを解消することができる。また、追い越し制御の実行・不実行(あるいは追い越し抑制制御の不実行・実行)の切替の指標となる上記の頻度は、多数の車両が実際に走行して得られた情報に基づくものであって、その領域の道路事情や慣習などの実情を反映している。そのため、その指標に基づいて追い抜きもしくは追い越しの制御の実行および不実行の切替を行えば、その領域での実情に即した走行が可能になり、ひいては無理のない、車両の流れに乗ったスムースな走行を行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ACCシステム
2 レーダ
3 NAVシステム
4 カメラ
5 サーバ
5A 追い越し頻度判定部
5B サーバ側送信部
6 DCM
7 コントローラ
7A 位置情報取得部
7B 追い越し情報取得部
7C 送信部
7D 受信部
7E 切替制御部
Va 自車両
Vb 前方車両
Vc 他車両
図1
図2
図3