(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】サーバ、プログラムおよびソフトウェア更新方法
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20250527BHJP
【FI】
G06F8/65
(21)【出願番号】P 2022136857
(22)【出願日】2022-08-30
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智康
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/177224(WO,A1)
【文献】特開2020-176974(JP,A)
【文献】特開2002-181582(JP,A)
【文献】特開2001-099666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/00-17/02
G06F 3/01
3/048-3/04895
8/00-8/38
8/60-8/77
9/44-9/445
9/451
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためのデータを送信するサーバであって、
プログラムが格納されたメモリと、
前記プログラムを実行するプロセッサと備え、
前記プロセッサは、前記ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、前記ソフトウェアの更新に関して前記ユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定し、
前記第1データの情報粒度は、前記第2データの情報粒度よりも高
く、
前記第1データは、前記ソフトウェアの使用許諾情報の全体であり、
前記第2データは、前記第1データのうちの一部である、サーバ。
【請求項2】
前記第1データに含まれる文字情報の情報量は、前記第2データに含まれる文字情報の情報量よりも多い、請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
前記第1データは、動画情報を含み、
前記第2データは、前記動画情報を含まない、請求項1に記載のサーバ。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ユーザが前記車載ディスプレイを用いて前記第1データを途中まで閲覧した後に前記ユーザ端末を用いて前記第2データをさらに閲覧する場合、前記ユーザ端末に表示される前記第2データを、前記車載ディスプレイを用いて途中まで閲覧した前記第1データの続きに設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記ユーザが前記ユーザ端末を用いて前記第2データを途中まで閲覧した後に前記車載ディスプレイを用いて前記第1データをさらに閲覧する場合、前記車載ディスプレイに表示される前記第1データを、前記ユーザ端末を用いて途中まで閲覧した前記第2データの続きに設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記ユーザが前記ユーザ端末を用いて前記第2データを途中まで閲覧した後に前記車載ディスプレイを用いて前記第1データをさらに閲覧する場合には、前記第2データのうち前記ユーザが前記ユーザ端末を用いて既に閲覧した部分についても、前記車載ディスプレイに表示される前記第1データに設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項7】
車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためにコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータにより実行された場合に前記コンピュータに、
前記ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、前記ソフトウェアの更新に関して前記ユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定するステップと、
前記車載ディスプレイおよび前記ユーザ端末のうちの少なくとも一方に前記第1データおよび前記第2データのうちの対応するデータを表示するステップとを実行させ、
前記第1データの情報粒度は、前記第2データの情報粒度よりも高
く、
前記第1データは、前記ソフトウェアの使用許諾情報の全体であり、
前記第2データは、前記第1データのうちの一部である、プログラム。
【請求項8】
車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するソフトウェア更新方法であって、
前記ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、前記ソフトウェアの更新に関して前記ユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定するステップと、
前記車載ディスプレイおよび前記ユーザ端末のうちの少なくとも一方に前記第1データおよび前記第2データのうちの対応するデータを表示するステップとを含み、
前記第1データの情報粒度は、前記第2データの情報粒度よりも高
く、
前記第1データは、前記ソフトウェアの使用許諾情報の全体であり、
前記第2データは、前記第1データのうちの一部である、ソフトウェア更新方法。
【請求項9】
車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためのデータを送信するサーバであって、
プログラムが格納されたメモリと、
前記プログラムを実行するプロセッサと備え、
前記プロセッサは、前記ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、前記ソフトウェアの更新に関して前記ユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定し、
前記第1データの情報粒度は、前記第2データの情報粒度よりも高く、
前記プロセッサは、前記ユーザが前記車載ディスプレイを用いて前記第1データを途中まで閲覧した後に前記ユーザ端末を用いて前記第2データをさらに閲覧する場合、前記ユーザ端末に表示される前記第2データを、前記車載ディスプレイを用いて途中まで閲覧した前記第1データの続きに設定する、サーバ。
【請求項10】
車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためのデータを送信するサーバであって、
プログラムが格納されたメモリと、
前記プログラムを実行するプロセッサと備え、
前記プロセッサは、前記ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、前記ソフトウェアの更新に関して前記ユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定し、
前記第1データの情報粒度は、前記第2データの情報粒度よりも高く、
前記プロセッサは、前記ユーザが前記ユーザ端末を用いて前記第2データを途中まで閲覧した後に前記車載ディスプレイを用いて前記第1データをさらに閲覧する場合、前記車載ディスプレイに表示される前記第1データを、前記ユーザ端末を用いて途中まで閲覧した前記第2データの続きに設定する、サーバ。
【請求項11】
車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためのデータを送信するサーバであって、
プログラムが格納されたメモリと、
前記プログラムを実行するプロセッサと備え、
前記プロセッサは、前記ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、前記ソフトウェアの更新に関して前記ユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定し、
前記第1データの情報粒度は、前記第2データの情報粒度よりも高く、
前記プロセッサは、前記ユーザが前記ユーザ端末を用いて前記第2データを途中まで閲覧した後に前記車載ディスプレイを用いて前記第1データをさらに閲覧する場合には、前記第2データのうち前記ユーザが前記ユーザ端末を用いて既に閲覧した部分についても、前記車載ディスプレイに表示される前記第1データに設定する、サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ、プログラムおよびソフトウェア更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両制御装置(ECU:Electronic Control Unit)に格納されたソフトウェア(車両の制御プログラム)を無線通信により更新するOTA(Over The Air)技術の研究開発が進められている。たとえば特開2017-149323号公報(特許文献1)は、ユーザの利便性を損なうことなく安全にソフトウェアを更新できる車両制御システムを開示する。携帯機は、車両の電子キーの所在位置が車内であると判定された場合に、更新用ソフトウェアのダウンロードを要求する信号をサーバに送信する。ECUは、サーバから送信された更新用ソフトウェアを携帯機を経由してダウンロードしてソフトウェアを更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パーソナルコンピュータ、スマートホン等の電気機器のソフトウェアを更新する場合、ユーザの許諾を条件とすることが一般的である。ECUのソフトウェアの更新においても同様に事前にユーザの許諾を得ることが考えられる。
【0005】
電気機器のソフトウェアの更新は主にユーザの自宅で行われる。これに対し、ECUのソフトウェアの更新は、ユーザの自宅で行われることもあるし、ユーザの外出先で行われることもある。ソフトウェアの更新の際にユーザがどのような状況であっても、ユーザにとっての利便性を損なうことなく、ユーザの許諾を得るためのデータをユーザに適切に提供することが望ましい。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、ECUのソフトウェア更新においてユーザの利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一態様に係るサーバは、車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためのデータを送信する。サーバは、プログラムが格納されたメモリと、プログラムを実行するプロセッサと備える。プロセッサは、ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定する。第1データの情報粒度は、第2データの情報粒度よりも高い。
【0008】
(2)第1データに含まれる文字情報の情報量は、第2データに含まれる文字情報の情報量よりも多い。
【0009】
(3)第1データは、動画情報を含む。第2データは、動画情報を含まない。
(4)プロセッサは、ユーザが車載ディスプレイを用いて第1データを途中まで閲覧した後にユーザ端末を用いて第2データをさらに閲覧する場合、ユーザ端末に表示される第2データを、車載ディスプレイを用いて途中まで閲覧した第1データの続きに設定する。
【0010】
(5)プロセッサは、ユーザがユーザ端末を用いて第2データを途中まで閲覧した後に車載ディスプレイを用いて第1データをさらに閲覧する場合、車載ディスプレイに表示される第1データを、ユーザ端末を用いて途中まで閲覧した第2データの続きに設定する。
【0011】
(6)プロセッサは、ユーザがユーザ端末を用いて第2データを途中まで閲覧した後に車載ディスプレイを用いて第1データをさらに閲覧する場合には、第2データのうちユーザがユーザ端末を用いて既に閲覧した部分についても、車載ディスプレイに表示される第1データに設定する。
【0012】
(7)本開示の他の一態様に係るプログラムは、車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新するためにコンピュータに実行させる。プログラムは、コンピュータにより実行された場合にコンピュータに、ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定するステップと、車載ディスプレイおよびユーザ端末のうちの少なくとも一方に第1データおよび第2データのうちの対応するデータを表示するステップとを実行させる。第1データの情報粒度は、第2データの情報粒度よりも高い。
【0013】
(8)本開示のさらに他の一態様に係るソフトウェア更新方法は、車両制御装置のソフトウェアを無線通信により更新する。ソフトウェア更新方法は、ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るために車載ディスプレイに表示される第1データと、ソフトウェアの更新に関してユーザの許諾を得るためにユーザ端末に表示される第2データとを設定するステップと、車載ディスプレイおよびユーザ端末のうちの少なくとも一方に第1データおよび第2データのうちの対応するデータを表示するステップとを含む。第1データの情報粒度は、第2データの情報粒度よりも高い。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ECUのソフトウェア更新においてユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】OTAセンタの典型的な構成例を示すブロック図である。
【
図3】車両の典型的な構成例を示すブロック図である。
【
図4】ユーザ端末の典型的な構成例を示すブロック図である。
【
図5】本実施の形態における使用許諾情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態における使用許諾情報のデータ構造の他の一例を示す図である。
【
図7】ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第1例を示すフローチャートである。
【
図8】ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第2例を示すフローチャートである。
【
図9】ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第3例を示すフローチャートである。
【
図10】ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第4例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態]
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。情報処理システム100は、OTAセンタ1と、車両2と、ユーザ端末3とを備える。OTAセンタ1は、有線または無線のネットワークNWを介して車両2およびユーザ端末3と互いに通信可能に接続されている。
【0017】
OTAセンタ1は、車両2に搭載されたECU(
図3参照)のソフトウエアを提供するサーバである。OTAセンタ1は、たとえば、車両本体(VP:Vehicle Platform)を製造する車両メーカにより管理される。OTAセンタ1の構成については
図2にて説明する。
【0018】
車両2は、ユーザにより管理される。ユーザは、典型的には個人であるが、たとえば車両2を用いた事業を行う法人(交通事業者など)であってもよい。本実施の形態では、車両2は自動運転車両である。この場合、OTAセンタ1は、車両メーカに代えてまたは加えて、VPに搭載される自動運転システム(ADS:Autonomous Driving System)(
図3参照)の製造メーカにより管理されてもよい。ただし、車両2は、自動運転に対応していない、手動運転のみが可能な車両であってもよい。車両2の構成については
図3にて説明する。
【0019】
ユーザ端末3は、車両2のユーザにより操作される端末である。ユーザ端末3は、モバイル端末であってもよいし、固定端末であってもよい。モバイル端末は、たとえば、スマートホン、タブレット、ノートブックPC(Personal Computer)、ウェアラブルデバイス(スマートウォッチなど)を含む。固定端末は、たとえばデスクトップPCを含む。ユーザ端末3の構成については
図4にて説明する。
【0020】
なお、
図1には紙面の都合上、1台の車両2のみが図示されているが、車両2の台数は任意である。通常、情報処理システム100は多数の車両2を含む。ユーザ端末3についても同様である。
【0021】
図2は、OTAセンタ1の典型的な構成例を示すブロック図である。OTAセンタ1は、サーバ11と、入力装置12と、ディスプレイ13と、通信装置14とを含む。サーバ11は、プロセッサ111と、メモリ112と、ストレージ113と、ネットワークインターフェイス114とを含む。OTAセンタ1の構成要素は通信バスにより互いに接続されている。
【0022】
ストレージ113は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリである。ストレージ113には、OS(Operating System)を含むシステムプログラム51と、制御演算に必要なコンピュータ読み取り可能なコードを含む制御プログラム52と、車両2の制御プログラムを更新するための更新プログラム53と、更新プログラム53のダウンロード、インストール等に関するユーザの許諾を得るための使用許諾情報54(後述)とが格納されている。プロセッサ111は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)である。プロセッサ111は、システムプログラム51および制御プログラム52を読み出してメモリ112に展開して実行することで様々な処理を実現する。ネットワークインターフェイス114は、サーバ11と他の機器(車両2、ユーザ端末3など)との間の通信装置14を介したデータ通信を制御する。
【0023】
入力装置12は、キーボード、マウスなどであって、サーバ11の操作者の入力を受け付ける。ディスプレイ13は、サーバ11の操作者に対して各種情報を表示する。
【0024】
なお、
図2にはサーバ11が1つのプロセッサ111を含む例を示すが、サーバ11が複数のプロセッサを含んでもよい。すなわち、サーバ11は1以上のプロセッサを含む。メモリ112およびストレージ113についても同様である。
【0025】
本明細書において、「プロセッサ」は、ストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限られず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードワイヤード回路を含み得る。そのため、「プロセッサ」との用語は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。
【0026】
図3は、車両2の典型的な構成例を示すブロック図である。車両2は、セントラルECU21と、複数の個別(discrete)ECU22と、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)23と、ADS24と、センサ群25と、入力装置26と、車載ディスプレイ27と、DCM(Data Communication Module)28とを含む。個別ECU22とは、機能ごとに分割されたECUであって、たとえばブレーキECU、ステアリングECU、モータジェネレータECU、ボディECUなどである。個別ECU22は、ADAS23および/またはADS24の機能を実現するためのソフトウェアが格納されたコントローラであってもよい。車両2の構成要素は、CAN(Controller Area Network)、車載イーサネット(Ethernet)(登録商標)などの有線の車載ネットワークにより互いに接続されている。
【0027】
セントラルECU21および個別ECU22の基本的な構成は、サーバ11の構成と同様である。個別ECU22のストレージ223には、個別ECU22のプロセッサ221により実行されるソフトウエア(システムプログラム71および制御プログラム72)が格納されている。個別ECU22は、センサ群25などからの信号に応じて車両2が所望の状態となるように、個別ECU22に対応するシステムを制御する。ここでのシステムは、いずれも図示しないが、ブレーキシステム、ステアリングシステム、パワートレーンシステム、ボディシステムなどを含み得る。
【0028】
セントラルECU21のプロセッサ211は、個別ECU22のストレージ223に格納されたソフトウェアの更新処理を制御する。セントラルECU21は、OTAセンタ1からDCM28経由でソフトウェアを受信(ダウンロード)し、ダウンロードしたソフトウェアを適切なタイミングで個別ECU22のストレージ223に格納(インストール)する。そして、セントラルECU21は、インストールされたソフトウェアを適切なタイミングで有効化(アクティベート)する。
【0029】
ADAS23は、たとえば、追従走行(ACC:Adaptive Cruise Control)と、自動速度リミッタ(ASL:Auto Speed Limiter)と、車線維持支援(LKA:Lane Keeping Assist)と、衝突被害軽減ブレーキ(PCS:Pre-Crash Safety)と、車線逸脱警報(LDA:Lane Departure Alert)とを含む。ADS24は、車両2の自動運転を実行可能に構成されている。
【0030】
センサ群25は、車両2の外部状況を検出するように構成されたセンサを含む。センサ群25は、さらに、車両2の走行状態に応じた情報ならびに操舵操作、アクセル操作およびブレーキ操作を検出するように構成されたセンサ(いずれも図示せず)を含む。具体的には、センサ群25は、たとえば、カメラ、レーダ、ライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、ステアリングセンサ(いずれも図示せず)を含み得る。
【0031】
入力装置26は、たとえばマルチインフォメーションディスプレイ(MID:Multi Information Display)に設けられたタッチパネルである。入力装置26は、物理的なスイッチまたはボタンであってもよい。車載ディスプレイ27は、たとえばMIDである。車載ディスプレイ27は、液晶、有機EL(Electro Luminescence)などの表示技術が適用されたインストルメントパネルであってもよい。DCM28は車載通信モジュールである。DCM28は、セントラルECU21とサーバ11との双方向のデータ通信が可能に構成されている。
【0032】
図4は、ユーザ端末3の典型的な構成例を示すブロック図である。ユーザ端末3は、演算処理装置31と、入力装置32と、ディスプレイ33と、通信装置34とを含む。入力装置32とディスプレイ33とは、たとえばタッチパネルディスプレイとして一体的に構成される。しかし、入力装置32が入力専用機器(キーボード、マウスなど)であってもよく、ディスプレイ33が据え置き型モニタであってもよい。ユーザ端末3の他の構成は、サーバ11の構成(
図2参照)と同様である。
【0033】
<ユーザの使用許諾>
個別ECU22のソフトウェアの更新は、ユーザの自宅で行われることもあるし、ユーザの外出先で行われることもある。本実施の形態では、個別ECU22のソフトウェア更新に先立ち、ユーザの許諾を得るための情報がユーザに提示される。以下、この情報を「使用許諾情報」という。使用許諾情報は、ソフトウェアの使用許諾契約に関する情報を含むが、これに限定されない。使用許諾情報は、ソフトウェアの更新内容を説明するための情報を含んでもよいし、ソフトウェア更新後の車両2の使い方を説明するための情報(いわゆるマニュアル)を含んでもよい。使用許諾情報は、本開示に係る「データ」(第1データおよび第2データ)に相当する。
【0034】
ユーザにとっての利便性を損なうことなく、使用許諾情報をユーザに適切に提供することが望ましい。使用許諾情報の表示先としては車載ディスプレイ27とユーザ端末3とが考えられる。一般に、MID、インストルメントパネルなどの車載ディスプレイ27は、スマートホン、ウェアラブルデバイスなどユーザ端末3と比べて、大きな画面を有する。さらに、車載ディスプレイ27はユーザが車室内に座ったままで視認できるように角度調整されており、特に運転席からの車載ディスプレイ27の視認性は非常に高い。言い換えると、車載ディスプレイ27であれば、ノートブックPC、デスクトップPCなどが設置された場所への移動も要さず、かつ、スマートホン、タブレットなどとは異なりハンズフリーでもある。したがって、車載ディスプレイ27は使用許諾情報の表示先として適していると考えられる。
【0035】
本発明者は、車載ディスプレイ27とユーザ端末3とに同じ態様で使用許諾情報が表示される場合、その画一性がユーザの利便性の低下を招く虞がある点に着目した。そこで、本実施の形態においては、車載ディスプレイ27とユーザ端末3とで使用許諾情報の情報粒度(information granularity)を変更する構成が採用される。より具体的には、OTAセンタ1は、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報の情報粒度を、ユーザ端末3に表示される使用許諾情報の情報粒度よりも高くする。情報粒度が高いとは、1つの情報のまとまりの中に様々な情報要素が含まれている状態をいう。
【0036】
図5は、本実施の形態における使用許諾情報54のデータ構造の一例を示す図である。
図6は、本実施の形態における使用許諾情報54のデータ構造の他の一例を示す図である。サーバ11のストレージ113に格納される使用許諾情報54(
図2参照)は、ヘッダ(メタデータ)81と、ボディ(データ本体)82とを含む。ヘッダ81は、データの作成者、作成日、タイトル、タグ、データ型、データ長などを含み得る。ボディ82は使用許諾情報を含む。
【0037】
図5に示す例では、使用許諾情報54は、ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための文字情報を含む。車載ディスプレイ27に表示される文字情報の情報量(記載量)は、ユーザ端末3に表示される文字情報の情報量よりも多い。具体例として、車載ディスプレイ27には文字情報の全体(たとえば、項目および各項目の詳細な説明)が表示されるのに対し、ユーザ端末3には文字情報の中から特に重要な部分(たとえば、項目のみ、あるいは、項目および各項目の簡易的な説明)が抽出されて表示される。これは、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報54の情報粒度が高い一例である。
【0038】
図6に示す例では、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報54は、文字情報に加えて動画情報を含む。動画情報とは、ソフトウェアの更新内容を視覚的に説明するアニメーション、ソフトウェアの更新に際して必要とされる手続き(事前準備、注意点など)を説明するアニメーション、ソフトウェア更新後の車両2の使い方に関する動画マニュアルなどである。一方、ユーザ端末3に表示される使用許諾情報54は、文字情報を含むが、動画情報は含まない。これは、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報54の情報粒度が高い他の一例である。
【0039】
このように、本実施の形態では、ユーザ端末3と比較した場合に、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報54の方が情報粒度が高い。言い換えると、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報54の量および/または種類は、ユーザ端末3に表示される使用許諾情報54の量および/または種類よりも多い。したがって、ユーザは、使用許諾情報54の詳細を、使用許諾情報54の表示に適した車載ディスプレイ27で確認した上でソフトウェアの更新を許諾することが可能になる。よって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0040】
<処理フロー>
図7は、ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第1例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、予め定められた条件の成立時(たとえば新たに更新すべきソフトウェアがOTAセンタ1に登録された場合)に実行される。図中、左側に車両2により実行される処理を示し、中央にOTAセンタ1により実行される処理を示し、右側にユーザ端末3により実行される処理を示す。以下、ステップをSと略す。
【0041】
まず、OTAセンタ1は、車載ディスプレイ27に表示するための使用許諾情報を車両2に送信するとともに、ユーザ端末3のディスプレイ33に表示するための使用許諾情報をユーザ端末3に送信する(S111)。OTAセンタ1は、車両2とユーザ端末3とに別々のタイミングで使用許諾情報を送信してもよいし、実質的に同じタイミングで使用許諾情報を送信してもよい。OTAセンタ1は、車両2からの要求に応答して使用許諾情報を車両2に送信し、ユーザ端末3からの要求に応答して使用許諾情報をユーザ端末3に送信してもよい。
図5および
図6にて説明したように、車載ディスプレイ27のディスプレイ33に表示される使用許諾情報の情報粒度は、ユーザ端末3に表示される使用許諾情報の情報粒度よりも高い。
【0042】
この例では、ユーザは、車両2の入力装置26に対して使用許諾情報を閲覧するための操作を行う。そうすると、車両2のECU(セントラルECU21であってもよく個別ECU22であってもよい)は、使用許諾情報を車載ディスプレイ27に表示させる(S211)。
【0043】
ユーザがソフトウェア更新の許諾を与える操作を行う前に、ユーザに急用が発生したなどに理由により使用許諾情報の閲覧が中断する場合がある。その場合、車両2は、使用許諾情報の中断箇所(使用許諾情報をどこまで閲覧したかを示す情報)をOTAセンタ1に送信する(S212)。OTAセンタ1は、使用許諾情報の中断箇所を受信すると、それをストレージ113に記録する(S112)。
【0044】
ユーザは、たとえばユーザの都合がよいタイミングで使用許諾情報の閲覧を再開する。この例では、ユーザが車載ディスプレイ273を用いて使用許諾情報の閲覧を再開する状況を想定する。車両2は、閲覧を再開するためのユーザ操作を受け付けると、閲覧再開の要求をOTAセンタ1に送信する(S213)。OTAセンタ1は、車両2からの要求に応答して、S112にて記録された中断箇所を車両2に送信する(S113)。そうすると、車両2は、車載ディスプレイ273に使用許諾情報を中断箇所から表示させる(S214)。
【0045】
その後、ソフトウェア更新を許諾するユーザ操作を受け付けると、車両2は、ユーザの許諾をOTAセンタ1に送信する(S215)。これに伴い、図示しないが、ソフトウェアを更新するための一連の処理(前述のダウンロード、インストール、アクティベート)が車両2にて実行される。
【0046】
このように、ユーザが使用許諾情報の閲覧を中断し、その後、閲覧を再開する場合、使用許諾情報の中断箇所を引き継ぐことが好ましい。これにより、ユーザが閲覧の中断前に既に閲覧した使用許諾情報を再度閲覧せずに済むため、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。
【0047】
図8は、ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第2例を示すフローチャートである。この例では、車両2(車載ディスプレイ27)での使用許諾情報の閲覧の中断後、ユーザがユーザ端末3により使用許諾情報の閲覧を再開する状況を想定する。S122までの処理は、
図7における対応する処理と同等である。
【0048】
ユーザ端末3は、閲覧を再開するためのユーザ操作を受け付けると、閲覧再開の要求をOTAセンタ1に通知する(S321)。OTAセンタ1は、ユーザ端末3からの要求に応答して、S122にて記録された中断箇所をユーザ端末3に送信する(S123)。ユーザ端末3は、使用許諾情報を中断箇所からディスプレイ33に表示する(S322)。その後、ソフトウェア更新を許諾するユーザ操作を受け付けると、ユーザ端末3は、ユーザの許諾をOTAセンタ1に送信する(S323)。
【0049】
図9は、ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第3例を示すフローチャートである。詳細な説明は繰り返さないが、
図9に示すように、
図8とは逆に、最初にユーザ端末3にて使用許諾情報の閲覧が行われ、その後に使用許諾情報の閲覧が車両2へと引き継がれてもよい。
【0050】
このように、ユーザが使用許諾情報の閲覧を中断し、その後、閲覧を再開する場合、たとえ使用許諾情報の閲覧に用いられる端末が閲覧の中断前後で変更された場合であっても(言い換えると、使用許諾情報の閲覧が車両2で行われるのかユーザ端末3で行われるのかに拘わらず)、使用許諾情報の中断箇所を引き継ぐことが好ましい。これにより、
図7と同様にユーザが閲覧の中断前に既に閲覧した使用許諾情報を再度閲覧せずに済むため、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。
【0051】
図10は、ソフトウェア更新に関するユーザの許諾を得るための処理手順の第4例を示すフローチャートである。
図10においても
図9と同様に、ユーザ端末3にて使用許諾情報の閲覧が中断された場合に、その中断箇所がOTAセンタ1にて記録される(S142)。そして、ユーザが車両2(車載ディスプレイ27)を用いて使用許諾情報の閲覧を再開する。車両2は、閲覧を再開するためのユーザ操作を受け付けると、閲覧再開の要求をOTAセンタ1に送信する(S241)。OTAセンタ1は、車両2からの要求を受ける。
【0052】
この例では、S142にて中断箇所が記録されているものの、OTAセンタ1は、使用許諾情報を最初から閲覧する旨の指令を車両2に送信する(S143)。車両2は、指令に従って車載ディスプレイ27に使用許諾情報を最初から表示させる(S242)。その後、ソフトウェア更新を許諾するユーザ操作を受け付けると、車両2は、ユーザの許諾をOTAセンタ1に送信する(S243)。
【0053】
このように、ユーザがユーザ端末3を用いた使用許諾情報の閲覧を中断し、その後、車両2を用いて閲覧を再開する場合には、OTAセンタ1は、最初から全ての使用許諾情報を車載ディスプレイ27に表示させてもよい。これにより、ユーザは、車室内で視認性にも優れた(より具体的には大画面であり、角度も見やすく、かつハンズフリーである)車載ディスプレイ27を用いて使用許諾情報の全体を閲覧できる。よって、ユーザが丁寧かつ効率的に使用許諾情報を閲覧することが可能になる。
【0054】
以上のように、本実施の形態においては、端末ごとの設置場所および/または視認性に鑑み、端末に適した表示態様で使用許諾情報が表示されるように、使用許諾情報の情報粒度が設定される。具体的には、車載ディスプレイ27に表示される使用許諾情報の情報粒度の方がユーザ端末3に表示される使用許諾情報の情報粒度よりも高く設定される。これにより、ユーザが車載ディスプレイ27を使用する場合、使用許諾情報を詳細に確認した上でソフトウェアの更新を許諾できる。一方、ユーザがユーザ端末3を使用する場合には使用許諾情報を簡潔に確認した上でソフトウェアの更新を許諾できる。よって、本実施の形態によれば、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0055】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 OTAセンタ、11 サーバ、111 プロセッサ、112 メモリ、113 ストレージ、114 ネットワークインターフェイス、12 入力装置、13 ディスプレイ、14 通信装置、2 車両、21 セントラルECU、22 個別ECU、211,221 プロセッサ、212,222 メモリ、213,223 ストレージ、214,224 ネットワークインターフェイス、23 ADAS、24 ADS、25 センサ群、26 入力装置、27 車載ディスプレイ、3 ユーザ端末、31 演算処理装置、311 プロセッサ、312 メモリ、313 ストレージ、314 ネットワークインターフェイス、32 入力装置、33 ディスプレイ、34 通信装置、51,61,71 システムプログラム、52,62,72 制御プログラム、53 更新プログラム、54 使用許諾情報、81 ヘッダ、82 ボディ、100 情報処理システム。