(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】光合分波装置、光伝送システム及び光合分波方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/293 20130101AFI20250527BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
H04B10/293
H04J14/02 101
(21)【出願番号】P 2023543603
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031476
(87)【国際公開番号】W WO2023026463
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮太
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-102666(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123921(WO,A1)
【文献】特開2001-111496(JP,A)
【文献】特開2012-182725(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1の波長多重信号光を第1の波長帯の第1の信号光と第2の波長帯の第2の信号光とに分波してそれぞれを出力する第1の分波手段と、
前記第1の分波手段から入力された前記第2の信号光を増幅する第1の増幅手段と、
入力された前記第2の信号光、及び、入力された前記第2の波長帯の第3の信号光に基づいて第4の信号光を出力する光処理手段と、
前記第4の信号光と、前記第1の分波手段から出力された前記第1の信号光とを合波する第1の合波手段と、
入力された第2の波長多重信号光を前記第1の波長帯の第5の信号光と前記第3の信号光とに分波する第2の分波手段と、
前記第2の分波手段から入力された前記第3の信号光を増幅する第2の増幅手段と、
前記光処理手段から出力された第6の信号光と、前記第2の分波手段から出力された前記第5の信号光とを合波する第2の合波手段と、
を備え、
前記光処理手段は、入力された前記第2の信号光と入力された前記第3の信号光とに基づいて前記第6の信号光を出力し、
前記第1の増幅手段の利得は、
前記第1の合波手段から出力される前記第1の信号光の光パワーと、
前記第1の合波手段から出力される前記第4の信号光の光パワーと、
の差が所定の値以下となるように設定され
、
前記第2の増幅手段の利得は、
前記第2の合波手段から出力される前記第5の信号光の光パワーと、
前記第2の合波手段から出力される前記第6の信号光の光パワーと、の差が前記所定の値以下となるように設定される、
光合分波装置。
【請求項2】
前記第1の波長帯はL帯であり、前記第2の波長帯はC帯である、請求項1に記載された光合分波装置。
【請求項3】
前記光処理手段は波長選択スイッチである、請求項1又は2に記載された光合分波装置。
【請求項4】
前記第1の分波手段から出力された前記第1の信号光の光パワーを減衰させる第1の光減衰器を備
える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載された光合分波装置。
【請求項5】
前記第2の分波手段から出力された前記第5の信号光の光パワーを減衰させる第2の光減衰器を備
える、請求項
4に記載された光合分波装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された光合分波装置と、
前記第1の波長多重信号光を前記光合分波装置に送信する第1の端局と、
前記第2の合波手段から出力される前記第5の信号光及び前記第6の信号光を受信する第2の端局と、
前記第1の合波手段から出力される前記第1の信号光及び前記第4の信号光を受信し、前記第2の波長多重信号光を前記光合分波装置へ出力する第3の端局と、
が通信可能に接続された光伝送システム。
【請求項7】
前記第1乃至第3の端局と前記光合分波装置との間の光伝送路の少なくとも1つに、光増幅器を備える中継局が配置された、請求項
6に記載された光伝送システム。
【請求項8】
入力された第1の波長多重信号光を第1の波長帯の第1の信号光と第2の波長帯の第2の信号光とに
第1の分波手段によって分波し、
入力された第2の波長多重信号光を前記第1の波長帯の第5の信号光と前記第2の波長帯の第3の信号光とに第2の分波手段によって分波し、
前記第2の信号光
及び前記第3の信号光を増幅し、
増幅された前記第2の信号光、及び、
増幅された前記第3の信号光に基づいて第4の信号光
及び第6の信号光を出力し、
前記第4の信号光と、前記
第1の分波手段から出力された前記第1の信号光とを
第1の合波手段によって合波し、
前記第6の信号光と、前記第2の分波手段から出力された前記第5の信号光とを第2の合波手段によって合波し、
前記第2の信号光の増幅の利得
を、
前記
第1の合波手段から出力される前記第1の信号光の光パワーと、
前記
第1の合波手段から出力される前記第4の信号光の光パワーと、の差が所定の値以下となるように設定
し、
前記第3の信号光の増幅の利得を、
前記第2の合波手段から出力される前記第5の信号光の光パワーと、
前記第2の合波手段から出力される前記第6の信号光の光パワーと、の差が前記所定の値以下となるように設定する、
光合分波方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光合分波装置及び光合分波方法に関し、特に、合波された波長多重信号光の光パワーの調整機能を備える光合分波装置及び光合分波方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海底に設置された光分岐装置や光合分波装置等の装置(海底装置)を含む光伝送システムにおいては、C帯(C-band)からL帯(L-band)に渡る広帯域の波長多重信号光が伝送される。このような広帯域の波長多重信号光を長距離伝送するためには、C帯及びL帯の両方の波長帯の波長多重信号光を増幅できる光増幅器が必要となる。本明細書では、C帯は波長が1530nm以上1565nm未満の波長帯をいい、L帯は波長が1565nm以上1625nm未満の波長帯をいう。また、以下では、波長多重信号光を「WDM信号光」と記載する。WDMは、Wavelength Division Multiplexedの略である。さらに、波長帯域がC帯であるWDM信号光を「C帯WDM信号光」と記載し、波長帯域がL帯であるWDM信号光を「L帯WDM信号光」と記載する。上述の光伝送システムの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された一般的な光増幅器900の構成を示すブロック図である。
図8には、各部のWDM信号光のスペクトルを、縦軸(高さ)を光パワー、横軸を波長として併せて示す。光増幅器900に入力されたWDM信号光は、分波器901においてC帯WDM信号光及びL帯WDM信号光に分波される。分波されたC帯WDM信号光及びL帯WDM信号光は、それぞれC帯EDFA902及びL帯EDFA903において増幅される。増幅されたこれらのWDM信号光は、合波器904において波長多重され、光増幅器900から出力される。なお、EDFAは(Erbium-Doped Optical Fiber Amplifier、エルビウム添加光ファイバ増幅器)を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
C帯及びL帯の信号光を含むWDM信号光を伝送する一般的な光海底伝送システムでは、WDM信号光の減衰を補償するために、C帯EDFA902及びL帯EDFA903の両方を海底装置に搭載する必要がある。さらに、これらの光増幅器を励起するために、励起光源が2台必要であるとともに、励起光とWDM信号光とを合波する合波器も2台ずつ必要となる。その結果、例えばC帯WDM信号光のみを伝送する場合と比較して、C帯及びL帯の信号光を含むWDM信号光を伝送する場合には、光増幅器を構成する光部品の数が2倍に増加する。
【0006】
一方、海底装置の内部の部品の収容スペースは限られている上に、近年では複数の光ファイバが接続された部品(例えば、WSS(Wavelength Selective Switch、波長選択スイッチ)など)が海底装置に搭載される場合も増加している。このため、光増幅器の部品の収容スペースがいっそう制限される場合もある。また、海底装置に収容される光部品を減らすために、例えばC帯WDM信号光の経路にのみWSSなどの受動部品を配置した場合、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とで海底装置内の損失に大きな差が生じる。その結果、海底装置から出力されるC帯WDM信号光とL帯WDM信号光の光パワーとの間に差異が生じる。このような波長帯間の光パワーの差は伝送品質に影響を与える恐れがある。
(発明の目的)
本発明は、光海底伝送システムで用いられる光合分波装置において、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光合分波装置は、入力された第1の波長多重信号光を第1の波長帯の第1の信号光と第2の波長帯の第2の信号光とに分波してそれぞれを出力する第1の分波手段と、前記第1の分波手段から入力された前記第2の信号光を増幅する第1の増幅手段と、入力された前記第2の信号光、及び、入力された前記第2の波長帯の第3の信号光に基づいて第4の信号光を出力する光処理手段と、前記第4の信号光と、前記第1の分波手段から出力された前記第1の信号光とを合波する第1の合波手段と、を備え、前記第1の増幅手段の利得は、前記第1の合波手段から出力される前記第1の信号光の光パワーと、前記第1の合波手段から出力される前記第4の信号光の光パワーと、の差が所定の値以下となるように設定される。
【0008】
本発明の光合分波方法は、入力された第1の波長多重信号光を第1の波長帯の第1の信号光と第2の波長帯の第2の信号光とに分波手段によって分波し、前記第2の信号光を増幅し、増幅された前記第2の信号光、及び、入力された前記第2の波長帯の第3の信号光に基づいて第4の信号光を出力し、前記第4の信号光と、前記分波手段から出力された前記第1の信号光とを合波手段によって合波する、手順を含み、前記第2の信号光の増幅の利得は、前記合波手段から出力される前記第1の信号光の光パワーと、前記合波手段から出力される前記第4の信号光の光パワーと、の差が所定の値以下となるように設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、光合分波装置において、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】海底伝送システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図2】光合分波装置201の構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における光合分波装置201の動作例を説明する図である。
【
図4】光合分波装置201の第1の変形例を示す図である。
【
図5】光合分波装置201の第2の変形例を示す図である。
【
図6】第2の実施形態における光合分波装置201の動作例を説明する図である。
【
図7】第3の実施形態における光合分波装置201の動作例を説明する図である。
【
図8】一般的な光増幅器900の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。図中に示された矢印の方向は例示であり、信号光の方向の限定を意図しない。各実施形態及び図面では既出の要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における海底伝送システム1の構成例を示すブロック図である。海底伝送システム1は、端局101-103、光中継器111-113、光分岐装置121、及び光合分波装置201を備える。端局101-103は陸上に設置され、陸上伝送システム(図示せず)と海底伝送システム1とのインタフェース機能を備える。光中継器111-113、光分岐装置121及び光合分波装置201は海底に設置される。海底ケーブル51-55及び61-65は、これらの機器の間を接続する、光ファイバ伝送路を含む海底ケーブルである。
【0013】
端局101は光送信器を備え、C帯WDM信号光及びL帯WDM信号光が波長多重されたWDM信号光301を光中継器111へ送信する。端局102は光受信器を備え、光中継器112からWDM信号光304を受信する。端局103は光送信器及び光受信器を備え、光中継器113からWDM信号光302を受信するとともに光中継器113へC帯WDM信号光とL帯WDM信号光とが波長多重されたWDM信号光303を送信する。
【0014】
光分岐装置121は、海底ケーブル52、53、63及び64の間の接続を制御する。本実施形態では、光分岐装置121は、海底ケーブル52と海底ケーブル53とを接続するとともに、海底ケーブル63と海底ケーブル64とを接続する。このような接続により、端局101が送信したWDM信号光301は、光中継器111を介して光合分波装置201へ伝送される。また、光合分波装置201が送信したWDM信号光304は、光中継器112を介して端局102へ伝送される。光分岐装置121の機能は、光分岐装置121が備える光スイッチによって実現されてもよい。光スイッチは、端局101-103のいずれかから光合分波装置201へ送信される制御信号によって制御されてもよい。
【0015】
光中継器111及び112は、C帯及びL帯のWDM信号光を増幅するための光増幅器をそれぞれ1組備える。本実施形態の光中継器111及び112は、C帯及びL帯の信号光を増幅するために、
図8で説明した一般的な光増幅器900を備えてもよい。例えば、光中継器111は、端局101から受信したWDM信号光301を、C帯EDFA及びL帯EDFAを用いて増幅する。光中継器112は、光分岐装置121から受信したWDM信号光304を、C帯EDFA及びL帯EDFAを用いて増幅する。
【0016】
光中継器113は、
図8で説明した光増幅器900を2組備えてもよい。光中継器113は、光合分波装置201から受信したWDM信号光302を増幅して端局103へ送信する。また、光中継器113は、端局103から受信したWDM信号光303を増幅して光合分波装置201へ送信する。
【0017】
光合分波装置201は、光分岐装置121からWDM信号光301を受信し、光中継器113からWDM信号光303を受信する。光合分波装置201は、WDM信号光301及び303を処理し、WDM信号光301及び303に基づいてWDM信号光302及び304を生成する。そして、光合分波装置201は、WDM信号光302を光中継器113へ送信し、WDM信号光304を光分岐装置121へ送信する。光合分波装置201の詳細は、
図2を用いて説明する。
【0018】
図2は、光合分波装置201の構成例を示すブロック図である。光合分波装置201は、分波器211及び212、合波器221及び222、C帯EDFA231及び232、WSS241を備える。
【0019】
分波器211は、海底ケーブル53を経由して光分岐装置121から受信したWDM信号光301を、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分離する。分波器212は、海底ケーブル62を経由して端局103から受信したWDM信号光303を、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分離する。
【0020】
C帯EDFA231は、分波器211において分離されたC帯WDM信号光を増幅する。C帯EDFA232は、分波器212において分離されたC帯WDM信号光を増幅する。
【0021】
WSS241は、2個の入力ポートP1及びP2、並びに、2個の出力ポートP3及びP4を備える波長選択スイッチである。WSS241は、P1及びP2から入力されたC帯WDM信号光から所定の波長の信号光を含むC帯WDM信号光をP3及びP4から出力可能なデバイスである。WSS241は、P1及びP2から入力された信号光の波長と、P3及びP4から出力される信号光の波長との関係を、WSS241の外部から設定する機能を備える。WSS241のこのような機能は公知である。光合分波装置201は、WSS241を制御するための制御回路を備えてもよい。制御回路は、端局101-103のいずれかからの指示に基づいてWSS241を制御してもよい。
【0022】
C帯EDFA231において増幅されたC帯WDM信号光は、P1からWSS241へ入力される。C帯EDFA232において増幅されたC帯WDM信号光は、P2からWSS241へ入力される。WSS241は、これらのC帯WDM信号光に基づいて、端局102へ伝送されるC帯WDM信号光と、端局103へ送信されるC帯WDM信号光とを生成する。WSS241が生成した、端局102へ伝送されるC帯WDM信号光は、合波器222において、分波器212から入力されたL帯WDM信号光と合波される。合波器222において合波されたWDM信号光は、WDM信号光304として光分岐装置121へ送信される。一方、WSS241が生成した、端局103へ伝送されるC帯WDM信号光は、合波器221において、分波器211から入力されたL帯WDM信号光と合波される。合波器221において合波されたWDM信号光は、WDM信号光302として光中継器113へ送信される。
【0023】
光合分波装置201において、端局101から送信されたWDM信号光301に含まれるL帯WDM信号光は、分波器211及び合波器221を介して端局103へ伝送される。端局103から送信されたWDM信号光303に含まれるL帯WDM信号光は、分波器212及び合波器222を介して端局102へ伝送される。
【0024】
また、端局101から送信されたWDM信号光301に含まれるC帯WDM信号光は、光合分波装置201が備えるWSS241において処理され、端局102及び端局103の一方又は両方へ伝送される。端局103から送信されたWDM信号光303に含まれるC帯WDM信号光は、光合分波装置201が備えるWSS241において処理され、端局102及び端局103の一方又は両方へ伝送される。
【0025】
図3は、第1の実施形態における光合分波装置201の動作例を説明する図である。図中の[1]~[5]は各箇所におけるWDM信号光のスペクトルを、縦軸(高さ)を光パワー、横軸を波長として模式的に示す。光合分波装置201は、WDM信号光301([1])を受信する。分波器211は、WDM信号光301をC帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分波する。C帯EDFA231は、分波されたC帯WDM信号光を増幅し、増幅されたC帯WDM信号光([2])をWSS241のP1へ入力する。
【0026】
図3においては、WSS241は、P1に入力されたC帯WDM信号光を、そのまま合波器221へ出力する。ここで、C帯WDM信号光の光パワーは、WSS241により減衰する([3])。このため、C帯EDFA231の利得は、分波器211からWSS241を介して合波器221へ伝送されるC帯WDM信号光のWSS241における損失を補償可能な値に設定される。合波器221は、分波器211から入力されたL帯WDM信号光([4])とWSS241から入力されたC帯WDM信号光([3])とを合波して、WDM信号光302([5])として出力する。WDM信号光302は、光中継器113で増幅され、端局103へ伝送される。
【0027】
図3に示す光合分波装置201は、C帯WDM信号光がWSS241を通過する際の損失を、C帯EDFA231によって補償できる。その結果、光合分波装置201においてC帯WDM信号光のみがWSS241による損失を受ける場合でも、WDM信号光302に含まれるC帯WDM信号光とL帯WDM信号光との光パワー差の発生を抑制することができる。これにより、例えば、WDM信号光302に含まれる信号光の波長帯ごとの品質のばらつきを抑制できる。いいかえれば、C帯EDFA231の利得は、合波器221から出力されるL帯WDM信号光の光パワーと、合波器221から出力されるC帯WDM信号光の光パワーと、の差を低減するように設定されてもよい。あるいは、C帯EDFA231の利得は、合波器221から出力されるL帯WDM信号光の光パワーと、合波器221から出力されるC帯WDM信号光の光パワーと、の差が所定の値以下となるように設定されてもよい。所定の値は、例えば、同一のWDM信号光に含まれるL帯WDM信号光の光パワーとC帯WDM信号光の光パワーとの差の、WDM信号光の伝送品質の面で許容される最大値である。
【0028】
このような構成を備える光合分波装置201は、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制できる。その理由は、光合分波装置201内でWSS241による処理を受けるC帯WDM信号光についてのみEDFAが用意され、WSS241を経由するC帯WDM信号光の光パワーの低下が補償されるからである。
【0029】
(第1の実施形態の光合分波装置の他の表現)
図2で説明した光合分波装置201の効果は、以下の構成によっても得られる。括弧内は、対応する
図3の参照符号を示す。すなわち、光合分波装置(201)は、第1の分波手段(211)と、第1の増幅手段(231)と、光処理手段(241)と、第1の合波手段(221)と、を備える。
【0030】
第1の分波手段(211)は、入力された第1の波長多重信号光(301)を第1の波長帯の第1の信号光と第2の波長帯の第2の信号光とに分波してそれぞれを出力する。第1の増幅手段(231)は、第1の分波手段(211)から入力された第2の信号光を増幅する。光処理手段(241)は、入力された第2の信号光、及び、入力された第2の波長帯の第3の信号光に基づいて、第4の信号光を出力する。第1の合波手段(221)は、第4の信号光と、第1の分波手段(211)から出力された前記第1の信号光とを合波する。
【0031】
そして、第1の増幅手段(231)の利得は、第1の合波手段(221)から出力される第1の信号光の光パワーと、第1の合波手段(221)から出力される第4の信号光の光パワーと、の差が所定の値以下となるように設定される。
【0032】
このような構成を備える光合分波装置も、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制できる。
【0033】
(光合分波装置201の第1の変形例)
図4は、光合分波装置201の第1の変形例を示す図である。
図4に示す光合分波装置201は、さらに、分波器211と合波器221との間に光減衰器251を備えてもよい。光減衰器251は、外部からの制御により減衰量を制御可能な光部品であり、L帯WDM信号光([4])の光パワーを減衰させる。光減衰器251を用いることで、L帯WDM信号光([6])の光パワーのみを独立して調整することができる。光減衰器251の減衰量は、光合分波装置201が備える制御回路によって制御されてもよい。
【0034】
(光合分波装置201の第2の変形例)
図5は、光合分波装置201の第2の変形例を示す図である。
図5では、合波器221の出力に光モニタ261が配置される。光モニタ261は、例えば光カプラ、光フィルタ及びフォトダイオードを含む公知の光部品である。光モニタ261は、合波器221が出力するWDM信号光302の光パワーに対応する振幅の電気信号を、所定の波長帯ごとに制御回路262へ出力する。所定の波長帯は、例えばC帯及びL帯であるが、これらには限定されない。制御回路262は、光モニタ261から出力された電気信号の振幅に基づいて、WDM信号光302に含まれるC帯WDM信号光の光パワーとL帯WDM信号光の光パワーとが同一となるようにC帯EDFA231の利得を制御する。なお、光合分波装置201が、光減衰器251を備える場合は、制御回路262は、光モニタ261から出力された電気信号の振幅に基づいて、C帯EDFA231の利得及び光減衰器251の減衰量を制御してもよい。
【0035】
これらの第1及び第2の変形例においても、光合分波装置201は、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制できる。
【0036】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態における光合分波装置201の動作例を説明する図である。本実施形態の光合分波装置201の構成は、
図2と同様である。
図6のWDM信号光のスペクトル([11]-[16])では、WDM信号光301に含まれるWDM信号光のスペクトルを実線で示し、WDM信号光303に含まれるWDM信号光のスペクトルを破線で示す。光合分波装置201は、光分岐装置121からWDM信号光301([11])を受信し、光中継器113からWDM信号光303([14])を受信する。分波器211は、光分岐装置121から受信したWDM信号光301を、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分波する。C帯EDFA231は、分波器211で分波されたC帯WDM信号光を増幅する。分波器212は、光中継器113から受信したWDM信号光303を、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分波する。C帯EDFA232は、分波器212で分波されたC帯WDM信号光を増幅する。
【0037】
WSS241は、C帯EDFA231からP1に入力されたC帯WDM信号光とC帯EDFA232からP2に入力されたC帯WDM信号光とを波長多重して、P4から合波器222へ出力する。ここで、WSS241において波長多重される2つのC帯WDM信号光のキャリアの波長は重複しないものとする。合波器222は、分波器212から入力されたL帯WDM信号光([12])とWSS241から入力されたC帯WDM信号光とを合波する。合波器222は、合波されたWDM信号光を、WDM信号光304([16])として光分岐装置121へ送信する。WSS241のP3からはWDM信号光は出力されない。合波器221は、WDM信号光301に含まれるL帯WDM信号光([12])のみを、WDM信号光302([13])として端局103へ送信する。
【0038】
本実施形態において、WDM信号光304に含まれるC帯WDM信号は、WDM信号光301に含まれるC帯WDM信号光と、WDM信号光303に含まれるC帯WDM信号光と、の2つのC帯WDM信号光を含む。C帯EDFA231は、WDM信号光301に含まれるC帯WDM信号光を増幅する。C帯EDFA232は、WDM信号光303に含まれるC帯WDM信号光を増幅する。そして、C帯EDFA231及び232のそれぞれの利得は、合波器222から送信されるWDM信号光304において、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光の光パワーの差の発生を抑制するように設定される。
【0039】
このような構成を備える本実施形態の光合分波装置201は、端局101が送信したC帯WDM信号光と、端局103が送信したL帯WDM信号光及びC帯WDM信号光とを、端局102へ伝送することができる。そして、本実施形態の光合分波装置201も、L帯WDM信号光のためのEDFAを備える必要がないため、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制できる。
【0040】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態における光合分波装置201の動作例を説明する図である。
図7のWDM信号光のスペクトル([21]-[26])では、WDM信号光301に含まれるWDM信号光のスペクトルを実線で示し、WDM信号光303に含まれるWDM信号光のスペクトルを破線で示す。
【0041】
図7において、光合分波装置201は、光分岐装置121からWDM信号光301([21])を受信し、光中継器113からWDM信号光303([24])を受信する。分波器211は、光分岐装置121から受信したWDM信号光301を、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分波する。C帯EDFA231は、分波器211で分波されたC帯WDM信号光を増幅する。分波器212は、光中継器113から受信したWDM信号光303を、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光とに分波する。C帯EDFA232は、分波器212で分波されたC帯WDM信号光を増幅する。
【0042】
本実施形態において、WSS241は、C帯EDFA231から入力されたC帯WDM信号光を合波器222へ出力する。また、WSS241は、C帯EDFA232から入力されたC帯WDM信号光を合波器221へ出力する。合波器221は、分波器211から入力されたL帯WDM信号光([22])とWSS241から入力されたC帯WDM信号光とを合波し、WDM信号光302([23])を光中継器113へ送信する。合波器222は、分波器212から入力されたL帯WDM信号光([25])とWSS241から入力されたC帯WDM信号光とを合波し、WDM信号光304([26])を光中継器113へ送信する。
【0043】
ここで、合波器221に入力されるC帯WDM信号光は、端局103が送信したWDM信号光303に含まれていたものである。そして、合波器221は、合波されたWDM信号光を、WDM信号光302として光中継器113へ送信する。光中継器113は、光合分波装置201から受信したWDM信号光302を増幅し、増幅されたWDM信号光302を端局103へ送信する。すなわち、本実施形態の光合分波装置201は、端局103が送信したC帯WDM信号光を、端局103へループバックさせることができる。
【0044】
一方、合波器222は、分波器212から入力されたL帯WDM信号光とWSS241から入力されたC帯WDM信号光とを合波する。ここで、分波器212に入力されるC帯WDM信号光は、端局101が送信したWDM信号光301に含まれていたものである。そして、合波器222は、合波されたWDM信号光を、WDM信号光304として光分岐装置121へ送信する。光分岐装置121は、WDM信号光304を光中継器112へ送信する。光中継器112は、光分岐装置121から受信したWDM信号光304を増幅し、増幅されたWDM信号光304を端局102へ送信する。すなわち、本実施形態においては、端局101が送信したC帯WDM信号光を、端局102へ伝送することができる。
【0045】
本実施形態において、C帯EDFA231の利得は、合波器222から送信されるWDM信号光304において、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光の光パワーの差の発生を抑制するように設定される。また、C帯EDFA232の利得は、合波器221から送信されるWDM信号光302において、C帯WDM信号光とL帯WDM信号光の光パワーの差の発生を抑制するように設定される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の光合分波装置201は、簡単な構成で、波長帯間の光パワーの差の発生を抑制できる。その理由は、光合分波装置201内でWSS241による処理を受けるC帯WDM信号光についてのみEDFAが用意され、WSS241を経由するC帯WDM信号光の光パワーの低下が補償されるからである。
【0047】
また、本実施形態の光合分波装置201は、端局101が送信したC帯WDM信号光を、端局103が送信したL帯WDM信号光と合波して、端局102へ伝送できる。また、本実施形態の光合分波装置201は、端局103が送信したC帯WDM信号光を、端局101が送信したL帯WDM信号光と合波して、端局103へループバックできる。ループバックされるC帯WDM信号光に監視制御用の信号光を含ませることで、端局103は、端局103と光合分波装置201との間の光伝送路の監視及び制御を行ってもよい。
【0048】
(第3の実施形態の変形例)
また、
図7で説明した光合分波装置201において、WSS241は、P1から入力されたC帯WDM信号光の一部と、P2から入力された、これと波長が重複しないC帯WDM信号光の一部とを合波して、合波器221又は222に出力してもよい。すなわち、WSS241は、端局101が送信したWDM信号光301に含まれるC帯WDM信号光の一部が端局103へ伝送され、残りが端局102に伝送されるように設定されてもよい。また、WSS241は、端局103が送信したWDM信号光303に含まれるC帯WDM信号光の一部が端局102へ伝送され、残りが端局103にループバックされるように設定されてもよい。
【0049】
本変形例において、C帯EDFA231及び232の利得は、合波器221から送信されるWDM信号光302に含まれるL帯WDM信号光とC帯WDM信号光との光パワーの差が低減されるように設定されてもよい。あるいは、C帯EDFA231及び232の利得は、合波器221から送信されるWDM信号光302に含まれるL帯WDM信号光とC帯WDM信号光との光パワーの差が所定の値以下となるように設定されてもよい。
【0050】
また、C帯EDFA231及び232の利得は、合波器222から送信されるWDM信号光304に含まれるL帯WDM信号光とC帯WDM信号光との光パワーの差が低減されるように設定されてもよい。あるいは、C帯EDFA231及び232の利得は、合波器222から送信されるWDM信号光304に含まれるL帯WDM信号光とC帯WDM信号光との光パワーの差が所定の値以下となるように設定されてもよい。
【0051】
なお、第1の実施形態の第1の変形例の光減衰器を備える構成、及び、第1の実施形態の第2の変形例の光モニタ及び制御回路を備える構成は、第2及び第3の実施形態の光合分波装置201において、WDM信号光303及び304の経路にも適用できる。これにより、光合分波装置201は、WDM信号光304に含まれるL帯WDM信号光の光パワーのみを独立して調整することができるとともに、WDM信号光304の波長帯ごとの光パワーに基づいてC帯EDFA231及び232の利得を制御できる。
【0052】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0053】
例えば、各実施形態ではL帯WDM信号光はWSS241において処理されず、C帯WDM信号光がWSS241によって処理される例を説明した。しかし、C帯WDM信号光がWSS241において処理されず、L帯WDM信号光がWSS241によって処理されてもよい。この場合、分波器211及び212、合波器221及び222、C帯EDFA231及び232はL帯WDM信号光がWSS241によって処理されるように変更される。
【0054】
また、端局101-103間で伝送されるWDM信号光に含まれる波長帯はC帯及びL帯に限定されない。各実施形態の構成は、重複しない2つの帯域を含むWDM信号光が端局101-103間で伝送される海底伝送システムにおいて、一方の帯域のWDM信号光のみがWSS241で処理される場合にも適用可能である。
【0055】
なお、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本発明の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【0056】
以上の各実施形態に記載された機能及び手順は、光合分波装置201が備える中央処理装置(central processing unit、CPU)がプログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムは、固定された、一時的でない記録媒体に記録される。記録媒体としては半導体メモリ又は固定磁気ディスク装置が用いられるが、これらには限定されない。CPUは例えば制御回路262に備えられるコンピュータであるが、光合分波装置201の他の個所に備えられてもよい。あるいは、光合分波装置201の動作は、端局101-103のいずれかによって制御されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 海底伝送システム
51-55、61-65 海底ケーブル
101-103 端局
111-113 光中継器
121 光分岐装置
201 光合分波装置
211、212 分波器
221、222 合波器
231、232 C帯EDFA
241 WSS
251 光減衰器
261 光モニタ
262 制御回路
301-304 WDM信号光
900 光増幅器
901 分波器
902 C帯EDFA
903 L帯EDFA
904 合波器