(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】コーティング膜及びこれを備えた空気調和機
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20250527BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20250527BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
C08J7/04 Z
(21)【出願番号】P 2023567448
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046588
(87)【国際公開番号】W WO2023112271
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】山本 義則
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-186149(JP,A)
【文献】特開2008-036588(JP,A)
【文献】特開2004-188165(JP,A)
【文献】特開2012-001586(JP,A)
【文献】特開2019-100675(JP,A)
【文献】特開2012-024713(JP,A)
【文献】特開2009-243741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された第一層と、
前記第一層上に形成された第二層とを備え、
前記第一層は球状樹脂粒子と有機樹脂剤と抗ウイルス剤とを含み、
前記第二層は無機粒子とフッ素樹脂粒子と防かび抗菌剤と抗ウイルス剤とを含み、
さらに、前記第一層の水接触角が60度以上110度未満であ
り、
前記フッ素樹脂粒子の表面の一部が前記第二層の表面から露出し、且つ前記第二層の表面に点在するコーティング膜。
【請求項2】
前記第一層に対する前記球状樹脂粒子の含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記第二層に対する前記フッ素樹脂粒子の含有量が0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
前記第二層に対する前記無機粒子の含有量が0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
前記無機粒子と前記フッ素樹脂粒子との合計質量に対して、前記防かび抗菌剤の含有量が0.1質量%以上25.0質量%以下である請求項
1に記載のコーティング膜。
【請求項3】
前記第一層の膜厚が1.0μm以上10.0μm以下であり、
前記第二層の膜厚
が0.1μm以上5.
0μm以下である請求項
1に記載のコーティング膜。
【請求項4】
前記球状樹脂粒子の平均粒径が0.5μm以上15.
0μm以下である請求項
3に記載のコーティング膜。
【請求項5】
前記フッ素樹脂粒子の平均粒径が50nm以上500nm以下である請求項
3に記載のコーティング膜。
【請求項6】
前記無機粒子がシリカ粒子であって、
前記シリカ粒子の平均粒径が5nm以上100nm以下である請求項
3に記載のコーティング膜。
【請求項7】
前記防かび抗菌剤の粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下である請求項
3に記載のコーティング膜。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれかに記載のコーティング膜が形成されている部品を有した空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング膜及びこれを備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の製品表面は、その環境からの様々な汚染物質に曝されることで、汚く見えたり、衛生的に問題を生じたり、腐食等により性能劣化が引き起こされたりする。中でも、空気調和機は、その機能上、環境からの汚染の影響を非常に受けやすいものであり、汚染によって各種の不都合を生じやすい。室内又は室外で使用される各種物品の表面には、粉塵、油煙及び煙草のヤニ等の様々な汚れが付着するため、これを抑制し得るような方法が各種検討されている。例えば、粉塵等の汚れの付着を抑制する場合、各種物品の表面に帯電防止剤をコーティングすることで、粉塵の静電的な付着を抑制し得ることが知られている。また、油煙等のような親油性の汚れの付着を抑制する場合、各種物品の表面に撥油性のフッ素樹脂をコーティングすることで親油性の汚れを除去し易くし得ることが知られている。更に、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性能を付与する技術については、これまでいくつかの方法が開示されている。
【0003】
酸点濃度が0.005mmol/gを超え10mmol/g以下であり、酸点の酸強度(pKa)が3.3以下である無機固体酸であって、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物又は無機酸化物から選択された無機固体酸のいずれか1つ以上であることを特徴とする抗ウイルス剤と抗ウイルス剤を含むことを特徴とする抗ウイルス用コーティング組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、銅粒子及び銅化合物粒子の少なくともいずれか一方を酸化物粒子に担持してなり、前記酸化物粒子100質量部に対して前記銅粒子及び銅化合物粒子の合計担持量は0.1~10質量部であり、平均二次粒子径が80nm~600nmである銅担持酸化物と、平均二次粒子径が1μm~15μmである硫酸バリウムと、前記銅担持酸化物及び硫酸バリウムを分散させる、撥水性の樹脂バインダーと、を有し、前記銅担持酸化物の比重が、前記硫酸バリウムの比重に対して40~90%であり、前記樹脂バインダー100質量部に対して、前記銅担持酸化物が0.1~10質量部であり、前記硫酸バリウムが10~45質量部であり、塗膜厚が前記硫酸バリウムの平均二次粒子径よりも1~2μm厚いことを特徴とする抗ウイルス性塗膜が提案されている(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6721035号公報
【文献】特開2015-205998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物又は無機酸化物から選択された無機固体酸のいずれか1つ以上の抗ウイルス剤を含むため、初期において一定の抗ウイルス性能を示すものの、粉塵付着抑制の効果がなく、空気調和機などに適用するには困難であった。特許文献2では、バインダー樹脂に抗ウイルス性成分が分散されていることから、抗ウイルス性能に長期的耐久性の一定の効果はあるものの空気調和機などの環境下に十分ではなく、また粉塵付着抑制の効果が乏しい。
【0007】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、長期にわたって粉塵付着抑制性能と防かび性能と抗ウイルス性能とを有するコーティング膜及びこれを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るコーティング膜は、基材上に形成された第一層と、第一層上に形成された第二層とを備え、第一層は球状樹脂粒子と有機樹脂剤と抗ウイルス剤とを含み、第二層は無機粒子とフッ素樹脂粒子と防かび抗菌剤と抗ウイルス剤とを含み、さらに、第一層の水接触角が60度以上110度未満であり、フッ素樹脂粒子の表面の一部が第二層の表面から露出し、且つ第二層の表面に点在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、長期にわたって粉塵付着抑制性能と防かび性能と抗ウイルス性能とを有するコーティング膜及びこれを備えた空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るコーティング膜の模式図である。
【
図2】実施の形態3に係る空気調和機の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、抗ウイルス性能を有するコーティング膜、及びコーティング膜の製造方法について図面等を参照しながら説明する。なお、
図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置あるいは部品の配置及び向きを限定するものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るコーティング膜の模式図である。
実施の形態1に係るコーティング膜1は、基材2の表面上の第一層3と、第一層3上に形成された第二層4からなる。第一層3は、球状樹脂粒子10と有機樹脂剤5と抗ウイルス剤6と、を備える。また、第二層4は、無機粒子7とフッ素樹脂粒子8と防かび抗菌剤9と、抗ウイルス剤6とを備える。
【0013】
第一層3は、球状樹脂粒子10と有機樹脂剤5と抗ウイルス剤6を含む液体のコーティング組成物を基材2に塗布し、乾燥することで形成される。球状樹脂粒子10は、液体中では凝集せずに分散するため、乾燥後の第一層3中でも分散して存在し、第一層3の表面には球状樹脂粒子10の表面の一部が点在して露出する。また、第二層4は、無機粒子7とフッ素樹脂粒子8と防かび抗菌剤9と抗ウイルス剤6とを含む液体のコーティング組成物を第一層3上に塗布し、乾燥することで形成される。第一層3上に第二層4を形成する際、第一層3の表面に露出した球状樹脂粒子10とフッ素樹脂粒子8が隣接した構造をとる。球状樹脂粒子10とフッ素樹脂粒子8とが隣接した構造を形成するため、フッ素樹脂粒子8は、第二層4中で凝集することなく分散して存在し、且つ第二層4の表面にフッ素樹脂粒子8の表面の一部が露出した状態を形成する。また、第一層3は、第二層4との密着性を高める効果がある。したがって、空気調和機など、長期にわたり粉塵付着抑制が要求される部品への適用が好適である。
【0014】
第二層4では、フッ素樹脂粒子8が分散して最表面に点在する構成を実現することで、空気中の汚染粒子の付着に関連する微小な領域で見れば親水性部分と疎水性部分が共存した表面とすることができる。無機粒子7は、疎水性の粉塵の付着抑制効果がある。フッ素樹脂粒子8は、親水性の粉塵の付着抑制効果がある。空気中の汚染粒子の付着に関連する微小な領域で見れば親水性部分と疎水性部分が共存した構成の表面は、吸湿時や乾燥時の表面の水分の移動が容易であり、表面に付着した親水性の粒子や疎水性の粒子を浮き上がらせて遊離させたり、固着しにくくしたりする効果もある。また、結露時には、空気中の汚染粒子の付着に関連する微小な領域で見たときに親水性部分また疎水性部分のどちらかのみで構成された表面に比べると、水が流れやすく浸透しやすいことから、付着した物質が非常に除去されやすいという効果もある。
【0015】
基材2は、特に制限されないが、金属素材及びプラスチック素材の部品が挙げられる。特に、油性及び水性の汚れが混在し汚れがつき易く且つ頻繁に清掃できない部材、例えば、空気調和機の熱交換器、ファン及びフラップ等の部材が好適である。また、本実施の形態によるコーティング組成物は、アクリル-スチレン-グラスファイバー(以下、ASGと略記する)樹脂等の表面に微小な溝及び微小な凹凸を有する基材に対して、粉塵の付着抑制効果を付与することができる。
【0016】
[第一層]
第一層3の球状樹脂粒子10は、特に限定されるものではなく、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、またはウレタン系樹脂粒子等を用いることができる。球状樹脂粒子10は、アクリル系樹脂粒子あるいはシリコーン系樹脂粒子を用いることが好ましく、さらに好ましくシリコーン系樹脂粒子が好ましい。また、球状樹脂粒子10は、有機系球状粒子として住友化学株式会社製真球状ポリアミド微粒子、群栄化学工業社製真球状フェノール樹脂、積水化学社製ミクロパール、またはモメンティブ社製トスパールなどが挙げられる。
【0017】
第一層3の水接触角は、60度以上110度未満であることが好ましい。第一層3の水接触角が60度未満であると、第二層4を形成するフッ素樹脂粒子8が良好に分散されないため好ましくない。水接触角が110度以上であると、第二層4を形成する際のコーティング剤の塗布性が悪化し、膜に欠陥が発生しやすくなるため好ましくない。球状樹脂粒子10の平均粒径は、0.5μm以上15.0μm以下であることが好ましく、優れた粉塵付着抑制を得ることができる。球状樹脂粒子10の平均粒径が、0.5μm未満であると、第二層4を形成するフッ素樹脂が良好に分散されないため好ましくない。一方で、球状樹脂粒子10の平均粒径が、15.0μmを超えると、第二層4の凹凸が大きくなり、粉塵が引っかかりやすくなるため好ましくない。
【0018】
本開示に係る球状樹脂粒子10の含有量は、第一層3の全体に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、フッ素樹脂粒子8が良好に分散されないため好ましくない。10.0質量%を超えると、第二層4の凹凸が大きくなり、粉塵が引っかかりやすくなるため好ましくない。
【0019】
また、球状樹脂粒子10は、最短径Sと最長径Lの比S/Lが、0.7以上が好ましく、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。0.7未満であると、第二層4を形成するフッ素樹脂粒子8が良好に分散されないため好ましくない。
【0020】
有機樹脂剤5はエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、スチレン系樹脂、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、またはアクリル系樹脂などがあげられる。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等に由来する構造単位を有する重合体である。アクリル系樹脂は架橋構造を含んでいてもよく、架橋構造は架橋性の官能基を有する単量体に由来して形成される。架橋性の官能基としては、例えば、イソシアネート基、オキサゾリン基、メチレン基、カルボジイミド基、またはアジリジン基などが挙げられる。また、架橋構造はメラミン等に由来して形成されていてもよい。アクリル系樹脂を含む樹脂組成物としては、付着性を有する樹脂層を形成可能な市販品から適宜選択すればよく、例えば、DIC社製のボンコートシリーズ、または日本パーカライジング社製のTOPシリーズ等を挙げることができる。エポキシ系樹脂は、分子内にエポキシ基を有する単量体に由来する構造単位を含んで構成される重合体である。エポキシ系樹脂は、架橋構造を含んでいてもよく、上述した架橋構造は架橋性の官能基を有する単量体に由来して形成される。エポキシ系樹脂を含む樹脂組成物としては、付着性を有する樹脂層を形成可能な市販品から適宜選択すればよく、例えば、DIC社製のEPICRON等を挙げることができる。また、エポキシ系樹脂を含む樹脂組成物としては、1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0021】
抗ウイルス剤6は、無機系または有機系の材料が用いることができる。無機系の抗ウイルス剤6としては、銀、銅、亜鉛、チタン、タングステン等から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子を用いることもできる。例えば、酸化銅(I) 、酸化銅(II) 、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子の少なくとも一方が担持された酸化アルミニウム(III)、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子の少なくとも一方が担持された二酸化ケイ素、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子の少なくとも一方が担持された酸化チタン、または酸化タングステン、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウム等が挙げられる。シナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)、または太平化学産業株式会社の銀系無機添加剤(EX20706B)などが挙げられる。銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライトは、さらに亜鉛イオン等の他の金属イオンで交換されていてもよい。更に、ランタンモリブデン酸化物系無機フィラーLa2Mo2O9(LMO)などが挙げられる。尚、ここでいう銀ナノ粒子は、直径が1~100nm程度の銀粒子を含む銀ナノ粒子を指し、銅ナノ粒子は、直径が1~100nm程度の銅粒子を含む銅ナノ粒子を指す。
【0022】
有機系の抗ウイルス剤6としては、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。上記有機系の抗ウイルス剤6が、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、スルホン酸含有ポリマー、及び、ビス型第四級アンモニウム塩、マルチブロックポリマからなる群から選択される少なくとも1種であると、有機系の抗ウイルス剤6はコーティング膜の全体に広がり、高い抗微生物活性を有する抗微生物部材となる。有機系の抗ウイルス剤6は、べンズイミダゾール系として、2―4チアゾリルべンズイミダゾールメチル3ベンズイミダロールカルバーメート、第四級アンモニウム塩として、ポリオキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンクロライド、オクタデシルジメチル(3―トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンセントニウム、または塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどがあげられる。
【0023】
第一層3の膜厚は1.0μm以上10.0μm以下であり、第二層4は0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。第一層の膜厚は2.0μm以上8.0μm以下であることが更に好ましい。第一層の膜厚が2.0μm以上8.0μm以下であることによって、優れた抗ウイルス性と長期耐久性を発揮することができる。第二層4の膜厚は0.2μm以上4.5μm以下であることが更に好ましい。第二層4の膜厚が0.2μm以上4.5μm以下であることによって、優れた抗ウイルス性と粉塵付着抑制性能を発揮することができる。第一層3の膜厚は、成膜に用いる組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、膜厚は、蛍光X線、赤外膜厚計、またはコーティング膜剥離による質量測定などで測定することが可能である。尚、第一層3の膜厚は、有機樹脂剤5によって形成された厚さを指し、第二層4の膜厚は、無機粒子7と抗ウイルス剤6とフッ素樹脂粒子8と防かび抗菌剤9とを含む厚さを指す。
【0024】
[第二層]
第二層4を形成する無機粒子7は、SiO2、Al2O3、Sb2O5、ZrO2、TiO2、Fe2O3、CeO2、AgO、CuO、Cu2O、ZnOおよびこれらの複合酸化物または混合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。本開示の無機粒子7は、親水性のシリカ粒子、チタン粒子が好ましい。無機粒子7が球状粒子であることにより、さらに、この効果を高めることができる。
【0025】
シリカ粒子の平均粒径は、光散乱法により測定した場合、平均粒径が5nm以上100nm程度以下であることが好ましい。特に、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカ粒子では、1つのシリカ粒子について、シリカ粒子重量のおおよそ15~30%の重量に相当する表面部分が半ば水に溶解した状態となっている。平均粒径が5nm未満のシリカ粒子は、半ば水に溶解した状態のシリカ成分の割合が高くなりすぎて、シリカ粒子同士が凝集してしまう。平均粒径が100nm以下のシリカ粒子であれば、コーティング膜により反射する光の散乱が小さくなるため、コーティング膜の透明性が向上し、基材の色調や風合いの変化を抑え、基材の色調や風合いを損なわないようにすることができる。また、無機粒子7として、平均粒径が5nm以上100nm以下のシリカ粒子を使用することで、得られるコーティング膜中のシリカ成分が、緻密ではありながらシリカ粒子間に微細な空隙を有するものとなる。緻密さにより膜厚を小さくできるとともに、空隙により汚染の原因となる粒子との分子間力、つまり粒子との付着力が小さくなるため、固着させにくくする効果がある。
【0026】
本実施の形態で用いるフッ素樹脂粒子8は、水性媒体中に分散するものであれば特に制限されない。フッ素樹脂粒子の具体例としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)、ECTFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、これらの共重合体または混合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。上記フッ素樹脂粒子に他の樹脂粒子を混合してもよい。界面活性剤やポリマー中に含まれる親水基の効果で水性媒体中に安定分散したディスパージョンの形態を有するものを使用することもできる。
【0027】
フッ素樹脂粒子8の平均粒径は、光散乱法により測定した場合、50nm以上500nm以下が好ましく、100nm以上250nm以下がより好ましい。このような平均粒径を有するフッ素樹脂粒子8は、コーティング組成物中に分散しやすく、且つ無機粒子に対して十分大きいため、コーティング膜の表面に露出しやすくなる。平均粒径が500nmを超えると、コーティング膜の表面に露出しているフッ素樹脂粒子の領域が大きくなりすぎて疎水性の汚染物質が付着しやすくなる場合や、コーティング膜の凹凸が大きくなり汚染物質が固着し易くなる場合がある。一方、フッ素樹脂粒子の平均粒径が50nm未満であると、コーティング膜の表面にフッ素樹脂粒子8が露出しにくくなる場合がある。
【0028】
防かび抗菌剤9は、有機ヨウ素化合物、イソチアゾリン化合物及びアラニン化合物からなる群から選択される化合物であって、水に容易に溶解するものであればよい。水溶性の防かび剤を配合すると、水性媒体に防かび剤成分が溶解し、コーティング膜を形成した際に防かび剤成分が全面にわたって分散されることになる。有機ヨウ素化合物の具体例としては、3-ヨード-2-プロピニルビチルカーバメイト、ジヨードメチル-p-トルイルスルホン、p-クロロフェニル-3-ヨードプロパルギルフォルマール等が挙げられる。イソチアゾリン化合物の具体例としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、n-ブチル-ベンゾイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。アラニン化合物の具体例としては、N-ラウリル-β-アラニン等が挙げられる。有機ヨウ素化合物、イソチアゾリン化合物及びアラニン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本開示で用いられる水分散性防かび剤粒子は、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ピリチオン化合物、チアゾール化合物及びチオフェン化合物からなる群から選択される化合物であって、水性媒体中に分散できるものであればよい。この水分散性防かび剤粒子は、20℃における水への溶解度が0.5mg/L以下であることが好ましい。溶解度が0.5mg/Lを超えると、水回り部品など水が多く存在する環境下において効果が限定されてしまう。イミダゾール化合物の具体例としては、2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1-(ブチルカルバモイル)-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、チアベンダゾール等が挙げられる。トリアゾール化合物の具体例としては、2-(4-クロロフェニル)-3-シクロプロピル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オール、4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール等が挙げられる。ピリチオン化合物の具体例としては、ジンクピリチオン、ナトリウムピリチオン等が挙げられる。チアゾール化合物の具体例としては、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。チオフェン化合物の具体例としては、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドなど3,3,4-トリクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
防かび抗菌剤9の含有量は、無機粒子と疎水性樹脂粒子との合計質量に対して、0.1質量%以上25.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下である。含有量が0.1質量%未満であると、かびを抑制する効果が十分に得られない。一方、含有量が25.0質量%を超えると、コーティング膜の凹凸が大きくなりすぎて汚れが付着しやすくなり、汚れから菌糸の発芽が起こる。
【0030】
また、防かび抗菌剤9の平均粒径は、0.1μm以上3.0μm以下であることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、コーティング膜表面に付着した胞子から発芽する菌糸の発育を抑制する効果が乏しい。一方、平均粒径が3.0μmを超えると、コーティング膜の凹凸が大きくなりすぎて汚れが付着しやすくなり、汚れからかびの発芽が起こる。なお、本開示で用いられる水分散性防かび剤粒子の平均粒径は、大塚電子株式会社製ELSZ-2により測定された値である。
【0031】
抗ウイルス剤6は、第一層3で述べたものと同様に実施することができる。
【0032】
以上のとおり、本実施の形態1に示す、基材上に形成された第一層と、第一層上に形成された第二層とを備え、第一層は球状樹脂粒子と有機樹脂剤と抗ウイルス剤とを含み、第二層は無機粒子とフッ素樹脂粒子と防かび抗菌剤と抗ウイルス剤とを含み、さらに、前記第一層の水接触角が60度以上110度未満であるコーティング膜は、長期にわたって粉塵付着抑制性能と防かび性能と抗ウイルス性能を発揮するという効果を奏する。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態2は、基材2にコーティング膜1を形成する製造工程に関するものである。本実施の形態2に示す基材2にコーティング膜1を形成する製造工程は、第一層3及び第二層4のそれぞれを形成するコーティング組成物を調合する工程と、基材2に第一層3を形成する第1工程と、第一層3上に第二層4を形成する第2工程とを含む。コーティング組成物は、媒体として水を含む水系組成物である。第1工程の第一層3のコーティング剤の基材2への付与方法としては、例えばバーコーター、ロールコーター、またはフローコーター等の通常用いられる塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、組成物の付与量は目的とする層の厚み等に応じて適宜選択すればよい。
【0034】
第2工程の付与方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、またはフローコーター等の通常用いられる塗布装置を用いる方法が挙げられる。第2工程のコーティング組成物に対する無機粒子7の添加量は、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.02質量%以上、4.0質量%以下がさらに好ましい。0.01質量%未満であると、無機粒子7がまばらになって親水層膜の基体を形成できず十分な粉塵付着抑制が得られない。5.0質量%を超えると、親水層膜の基体が厚くなりすぎて、クラックが生じやすくなるため好ましくない。また、着臭も発生しやすくなるため、好ましくない。
【0035】
フッ素樹脂粒子8の含有量は、コーティング組成物に対して0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましい。フッ素樹脂粒子8の含有量が所定値以上であることによって、優れた防汚性を発揮することができる。フッ素樹脂粒子8の含有量が所定値を超えると、フッ素樹脂粒子8に基づく疎水性が向上し過ぎてしまい、親水性が低下してしまう。また、凹凸が多くなり、粉塵が引っかかるなどして好ましくない。上記記載の方法により、基材2の表面に粉塵付着抑制を有するコーティング膜1を形成することができる。
【0036】
基材2へのコーティング膜1の形成は、基材2へコーティング組成物を塗布する工程と、乾燥する工程とを経て実施される。コーティング膜1の形成にあたっては、第一層3を形成した後、第二層4を形成する。尚、第一層3及び第二層4の形成方法は、以下に示す塗布方法及び乾燥方法を任意に適用可能である。コーティング組成物をスプレー、ローラー、または浸漬での塗布が可能で、常温の自然乾燥で処理が可能である。温風やオーブン加熱で反応を促進することで、より強固なコーティング膜とすることが出来る。この場合の加熱は、40℃以上、250℃以下が好ましい。40℃未満では、加熱には乾燥促進の効果しかない。250℃を超えるような温度ではコーティング膜1の熱劣化により、クラック等が生じることがあり好ましくない。また、コーティング組成物への浸漬時間やスプレーの吹き付け時間を長くする方法がある。この方法で接触時間を10秒以上、好ましくは30秒以上にすることで十分なコーティング膜1を形成することが出来る。10秒未満では、通常塗布と差は認められない。30秒を超える時間では、時間が延びても効果にはほとんど変化がなく、所要時間が長くなるだけという問題があり好ましくない。他の方法として、コーティング液または被コーティング物の温度を上げる方法もある。この温度を、30℃以上、60℃以下にすることで、十分な反応を進めやすい。30℃未満では加熱の効果が小さすぎる。60℃を超える温度では、コーティング液の蒸発が激しく、乾燥が速くなる分、均質な塗布が難しくなるため好ましくない。
【0037】
実施の形態3.
図2は、実施の形態3に係る空気調和機の室内機100の断面模式図である。室内機100は、空気調和機の枠体である室内機本体110をはじめ、室内機100を構成する部品の一例として、ドレンパン113、ドレンパン114、送風ファン115、風路壁116、熱交換器117、熱交換器118、熱交換器119、上下風向可変ベーン120及び前面パネル121を備えた例を示す。なお、実施の形態1に係るコーティング膜1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
室内機本体110の前面には、前面パネル121が開閉可能に取り付けられる。室内機本体110の上面側には、空気調和機の室内機100が据え付けられる室内から空気を吸い込むための吸込口111が形成されている。室内機本体110の下面側には、室内に空気を吹き出すための吹出口112が形成されている。吹出口112には、上下風向可変ベーン120が回転自在に取り付けられている。上下風向可変ベーン120は、吹出口112から吹き出す気流の上下の向きを調節する。
【0039】
送風ファン115は、室内機本体110の内部に設置される。送風ファン115は、空気を室内機本体110の内部に吸い込むとともに、吸い込んだ空気を室内機本体110の外部に吹き出す。本実施の形態において、送風ファン115は、クロスフローファンである。
【0040】
熱交換器117、熱交換器118及び熱交換器119は、室内機本体110の内部に配置される。熱交換器117は送風ファン115の背面側の上部に配置され、熱交換器118は送風ファン115の前面側の上部に配置され、熱交換器119は送風ファン115の前面側に配置されている。すなわち、熱交換器119は、熱交換器118の下部に位置し、熱交換器117は、熱交換器118の背面に位置する。
【0041】
熱交換器119の下方には、結露水を回収するためのドレンパン113が配置されている。熱交換器117の下方にも、ドレンパン114が配置されている。ドレンパン113及びドレンパン114は、室内機本体110の一部として形成されている。
【0042】
送風ファン115、風路壁116、及びドレンパン113の少なくとも一部の表面には、コーティング膜1が形成されている。ドレンパン113の表面の全てに、コーティング膜1が形成されてもよい。また、ドレンパン114の少なくとも一部の表面には、コーティング膜1が形成されてもよい。ドレンパン114の全てがコーティング膜1によって形成されてもよい。換言すれば、ドレンパン113及びドレンパン114は、ドレンパン113及びドレンパン114の少なくとも一方の表面に、実施の形態1で説明したコーティング膜1を有するものである。なお、コーティング膜1の形成方法は、実施の形態2で説明したのと同様である。
【0043】
形成されるコーティング膜1は、粉塵付着抑制の性能と長期の抗ウイルス性能および防かび性能を有するため、空気調和機の各種部材に使用するのに好適である。特に、送風ファン115、風路壁116、ドレンパン113及びドレンパン114の双方にコーティング膜1が形成されていることが好ましい。従って、コーティング膜1が形成された各種部材を有する実施の形態3に係る空気調和機は、長期にわたって粉塵付着抑制性能と防かび性能と抗ウイルス性能とを有する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により本開示の詳細を説明するが、これらによって本開示の内容が限定されるものではない。
尚、基板としては、いずれも板厚1mmのポリスチレン(PS)樹脂板を用いた。
【0045】
<実施例1>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)1.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0046】
<実施例2>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR3120)1.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)0.5質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)0.2質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)0.1質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0047】
<実施例3>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)5.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)5.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)5.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0048】
<実施例4>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製XC99―A8808)1.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%を用いと抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0049】
<実施例5>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR3120)1.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0050】
<実施例6>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日産化学社製(登録商標)スノーテックスST―XS)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0051】
<実施例7>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日産化学社製(登録商標)スノーテックスMP1040)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0052】
<実施例8>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日産化学社製(登録商標)スノーテックスST―XS)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(日揮触媒化成株式会社ATOMYBALL―UA )1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0053】
<実施例9>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日産化学社製(登録商標)スノーテックスMP―1040)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%と防かび抗菌剤(シナネンゼオミック社製エッセンガード10)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0054】
<比較例1>
第一層を構成するコーティング組成物として、有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)と1.0質量%、防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0055】
<比較例2>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。第二層は形成しなかった。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層の膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0056】
<比較例3>
第一層は形成せず、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)2.0質量%、フッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%を用い、抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%、防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%にて、表1に示す組成にて塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することでコーティング膜を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0057】
<比較例4>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、フッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)6.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%と防かび抗菌剤(富士ケミカル株式会社製MP―102SVP05)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0058】
<比較例5>
第一層を構成するコーティング組成物として、球状樹脂粒子(モメンティブ社製TOSPEALR130)2.0質量%と有機樹脂剤(第一工業製薬社製ポリウレタン水分散体)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)0.5質量%とを調合した。第一層を構成するコーティング組成物をPS基材に塗布し、60℃恒温槽にて120分乾燥して、第一層を形成した。
続いて、第二層を構成するコーティング組成物として、シリカ粒子(日揮触媒化成社製(登録商標)カタロイドSI―550)2.0質量%とフッ素樹脂粒子(AGC社製(登録商標)フルオンAD911E)2.0質量%と抗ウイルス剤(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製ネオシントールAV―18F)1.0質量%とを調合した。第二層を構成するコーティング組成物を第一層上に塗布し、60℃恒温槽にて20分乾燥することで第二層を形成した。形成したコーティング膜に含まれる各粒子の平均粒径及び第一層と第二層との膜厚の構成は、表1の通りである。膜厚は、断面観測によって測定した。
【0059】
上記の実施例1から9及び比較例1から5で形成したコーティング膜について、球状樹脂粒子の平均粒径と第一層膜厚と第二層膜厚と無機粒子の平均粒径と防かび抗菌粒子の平均粒径との構成の一覧を表1に示す。
<表1>
【0060】
コーティング膜における粉塵の付着抑制性能は粉塵の固着性を評価することにより行った。温度25℃及び湿度50%条件下において、JIS15種をエアーでコーティング膜を有する部材上に吹き付け、初期(10秒後)と5時間経過後に実施した。その後、メンディングテープ(住友3M社製)により採取し、分光光度計(島津製作所社製;UV-3100PC)による吸光度(波長550nm)を測定し、下記の基準に従って評価した。吸光度が小さいほどコーティング膜における粉塵の付着抑制性能が良好であるといえる。
<粉塵付着抑制性能>
1:吸光度が0.1未満のもの。
2:吸光度が0.1以上0.2未満のもの。
3:吸光度が0.2以上0.3未満のもの。
4:吸光度が0.3以上0.4未満のもの。
5:吸光度が0.4以上のもの。
【0061】
防かび性能は、プラスチック製品のかび抵抗性を評価する定性試験として「JIS Z2911,10.プラスチック製品の試験」に規定されている。また、この試験方法は3種に分けられ、今回は方法Bを採用した。試験では次の5種類のかびの胞子を含む混合胞子懸濁液を使用した。5種類のかびの胞子は、Aspergillus niger NBRC 105649、Penicillium pinophilum NBRC 33285、Paecilomyces variotii NBRC 33284、Trichoderma virens NBRC 6355、Chaetomium globosum NBRC 6347である。
<防かび性能>
0:肉眼及び顕微鏡下でかびの発育は認められない。
1:肉眼ではかびの発育が認められないが、顕微鏡下では明らかに確認する。
2:肉眼でかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%未満。
3:肉眼でかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の
25%以上50%未満。
4:菌糸はよく発育し、発育部分の面積は試料の全面積の50%以上。
5:菌糸の発育は激しく、試料全面を覆っている。
【0062】
<抗ウイルス性能>
作用時間は24時間、試験ウイルスはA型インフルウエンザウィルス(H1N1型)、試験方法は抗菌試験方法(ISO21702)に準拠した方法で試験を実施した。試験サンプル(サイズ50mm×50mm)を保湿シャーレに入れ、ウイルス液を0.1~0.2ml滴下し、40mm×40mmサイズのフィルム(PET)を乗せ、試験品とウイルスの接触効率を上げてから24時間後、試験品からウイルスを回収し、抗菌活性値を測定した。また、耐水性試験(区分)の試験後の抗菌活性値も測定した。
【0063】
上記試験の結果に基づく粉塵付着抑制性能及び防かび性能、抗ウイルス性能の抗菌活性値の結果を表2に示す。
<表2>
【0064】
表2に示されているように、実施例1~9のコーティング膜は、粉塵付着抑制性能が良好であると共に、防かび性能、抗ウイルス性能も高い。中でも、実施例1のコーティング膜は、粉塵の付着抑制性能、防かび性能、抗ウイルス性能が最も良好であった。
また、比較例1を有するコーティング膜は、球状樹脂粒子が配合されていないため、100時間経過後の粉塵付着抑制性能が悪化する結果となっている。また、第一層を含有していない比較例2のコーティング膜は、耐水試験後の抗ウイルス性能が悪化する結果となっている。さらに、比較例3のコーティング膜は、初期、100時間とも粉塵付着抑制性能が悪化する結果となっている。比較例4のコーティング膜は、粉塵付着抑制性能が悪化する結果となっている。比較例5のコーティング膜は、防かび性能が悪化する結果となっている。
以上の結果からわかるように、本開示によれば粉塵付着抑制性能と防かび性能と抗ウイルス性能を有し、長期の耐久性が得られるコーティング膜及びこれを備えた空気調和機を提供することができる。
【0065】
上記の各実施の形態1~3は、互いに組み合わせて実施することが可能である。また、以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 コーティング膜
2 基材
3 第一層
4 第二層
5 有機樹脂剤
6 抗ウイルス剤
7 無機粒子
8 フッ素樹脂粒子
9 防かび抗菌剤
10 球状樹脂粒子
100 室内機
110 室内機本体
111 吸込口
112 吹出口
113 ドレンパン
114 ドレンパン
115 送風ファン
116 風路壁
117 熱交換器
118 熱交換器
119 熱交換器
120 上下風向可変ベーン
121 前面パネル