(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】等化装置、光伝送システム、及び等化方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/516 20130101AFI20250527BHJP
H04J 14/00 20060101ALI20250527BHJP
H04B 10/25 20130101ALI20250527BHJP
【FI】
H04B10/516
H04J14/00
H04B10/25
(21)【出願番号】P 2023577443
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022600
(87)【国際公開番号】W WO2022264241
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】ウー ミンチー
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一志
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113902(JP,A)
【文献】特開2018-113566(JP,A)
【文献】米国特許第11032119(US,B2)
【文献】特開2004-72759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/516
H04J 14/00
H04B 10/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係数を有する伝達関数を使用して、複数のチャネルの各々を通って伝播する信号に対応付けられるプロセスを実行する処理手段と、
前記複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて前記係数を生成する係数生成手段と、
を備え
、
前記係数生成手段により生成される前記係数は、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与える係数であり、
前記処理手段は、伝送処理手段を含み、
前記伝送処理手段は、前記複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信し、前記伝達関数として第1の伝達行列を使用して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように前記データを前記信号に変換する、等化装置。
【請求項2】
前記処理手段は、受信処理手段を含み、
前記受信処理手段は、前記複数のチャネルを通って伝播した後の前記信号の入力を受信し、前記伝達関数として第2の伝達行列を使用して、前記伝播
した後の前記信号を前記データに復元し、
前記第2の伝達行列は、前記第1の伝達行列の逆行列である、
請求項
1に記載の等化装置。
【請求項3】
前記伝達関数は、前記複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含み、
前記正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される、
請求項1
又は2に記載の等化装置。
【請求項4】
前記係数生成手段は、前記係数行列の行列成分を決定する、
請求項
3に記載の等化装置。
【請求項5】
前記チャネル品質情報は、前記複数のチャネルの各々に関して、雑音電力レベル、信号対雑音比、及びビット誤り率のうちの1つを含む、
請求項1、2、3、
及び4のいずれか1項に記載の等化装置。
【請求項6】
前記複数のチャネルは、前記信号が伝播するマルチコアファイバのうちの異なるコアである、
請求項1、2、3、4、
及び5のいずれか1項に記載の等化装置。
【請求項7】
前記複数のチャネルは、前記信号が伝播する波長分割多重における異なる波長である、
請求項1、2、3、4、
及び5のいずれか1項に記載の等化装置。
【請求項8】
複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信し、
より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与える係数を有する第1の伝達行列を使用して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように前記データを信号に変換する伝送処理手段と、
前記複数のチャネルを通って伝播した後の前記信号の入力を受信して、前記第1の伝達行列の逆行列である第2の伝達行列を使用して、前記伝播
した後の前記信号を前記データに復元する受信処理手段と、
前記複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて前記係数を生成する係数生成手段と、を備える、光伝送システム。
【請求項9】
係数を有する伝達関数を使用して、複数のチャネルの各々を通って伝播する信号に対応付けられるプロセスを実行し、
前記複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて前記係数を生成する、
等化方法であって、
前記係数は、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与える係数であり、
前記複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信し、前記係数を有する前記伝達関数を使用して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように前記データを前記信号に変換する、
等化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等化装置、光伝送システム、及び等化方法に関し、特に、波長分割多重システムにおいて使用される等化装置、光伝送システム、及び等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より高い通信能力の要求を光ファイバ伝送において満たすために、技術開発は、波長分割多重(WDM)及び空間分割多重(SDM)などの多数の観点のリソースに関する多重化技術の開発に至っている。
【0003】
多重化技術が適用される場合、信号は、マルチチャネル、例えば、SDMでのマルチコアファイバ(MCF)内のマルチコアにおいて同時に伝送される。特に、非結合型MCFについて、チャネル間のQ値(Q factor)の差は、各コア及び他のマルチチャネル構成要素における個々の損失及び利得に応じて生じる。更に、Q値の差は、海底伝送などの長距離伝送システムにおけるエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)の雑音指数及び利得制御が原因でより一層増加する。前述のQ値の差は、伝送能力全体のボトルネックとなっている。したがって、多重伝送においてチャネル間のQ値の差を等化することが求められている。
【0004】
特許文献1(PTL1)は、SDMにおいてチャネル間のQ値の差をなくすことができる送信機を記載している。2つのチャネルのデータは、送信機側で2×2行列によって等しく分離及び混合される。次いで、受信信号は、2×2行列の逆行列によって復元される。したがって、各々の復元信号は、平均のチャネル雑音を受ける。その結果、2つのチャネル間のQ値の差は等化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される関連の送信機は、2つのチャネルの差による伝送信号品質の差を特定のレベルで低減し得るが、当該関連の送信機は、本来は雑音があまりないチャネルに対してペナルティをもたらす。これは、関連の送信機において使用される伝達行列が、チャネル状態に関わらず2つのチャネルの信号を等しく混合するように設計されているためである。したがって、本来は雑音があまりないチャネルに対してペナルティがもたらされ、その結果、この等化手順の間に多重伝送システム全体の性能を余計に低下させる。
【0007】
本発明の例示的な目的は、チャネル間の伝送信号品質の差を低減するときに、雑音があまりないチャネルに対してペナルティがもたらされるという前述の問題を解決する、等化装置、光伝送システム、及び等化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な態様による等化装置は、係数を有する伝達関数を使用して、複数のチャネルの各々を通って伝播する信号に対応付けられるプロセスを実行する処理手段と、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて係数を生成する係数生成手段と、を含む。
【0009】
本発明の例示的な態様による光伝送システムは、複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように係数を有する第1の伝達行列を使用してデータを信号に変換する伝送処理手段と、複数のチャネルを通って伝播した後の信号の入力を受信して、第1の伝達行列の逆行列である第2の伝達行列を使用して、伝播後の信号をデータに復元する受信処理手段と、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて係数を生成する係数生成手段と、を含む。
【0010】
本発明の例示的な態様による等化方法は、係数を有する伝達関数を使用して、複数のチャネルの各々を通って伝播する信号に対応付けられるプロセスを実行することと、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて係数を生成することと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明による例示的な利点は、最小のペナルティでチャネル間の伝送信号品質の差を等化できることである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による等化装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による等化装置の別の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態による光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態による光伝送システムの別の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態による光伝送システムの更に別の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態による光伝送システムの動作方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に記載する。図面内の矢印方向は、方向の例を示すものであり、ブロック間の信号の方向を限定するものではない。
[第1の実施形態]
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態による等化装置の構成を示すブロック図である。等化装置100は、処理部(処理手段)110と、係数生成部(係数生成手段)120と、を含む。
【0015】
処理部110は、係数を有する伝達関数を使用して信号に対応付けられるプロセスを実行するように構成されている。信号は、複数のチャネルの各々を通って伝播する。係数生成部120は、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて係数を生成するように構成されている。
【0016】
本実施形態の等化装置100によれば、信号に対応付けられるプロセスが、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて実行されるため、最小のペナルティでチャネル間の伝送信号品質の差を等化することができる。
【0017】
図2に示すとおり、処理部110は、伝送処理部(伝送処理手段)111を含み得る。伝送処理部111は、複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように伝達関数として第1の伝達行列を使用してデータを信号に変換するように構成されている。
【0018】
加えて、処理部110は、受信処理部(受信処理手段)112を含み得る。受信処理部112は、複数のチャネルを通って伝播した後の信号の入力を受信して、伝達関数として第2の伝達行列を使用して、伝播後の信号をデータに復元するように構成されている。第2の伝達行列は、第1の伝達行列の逆行列である。
【0019】
伝達関数は、複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含み得る。正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される。係数生成部120は、係数行列の行列成分を決定するように構成されている。
【0020】
チャネル品質情報は、複数のチャネルの各々に関して、雑音電力レベル、信号対雑音比(SNR)、及びビット誤り率(BER)のうちの1つを含む。
【0021】
複数のチャネルは、信号が伝播するマルチコアファイバ(MCF)のうちの異なるコアである。代替的に、複数のチャネルは、信号が伝播する波長分割多重における異なる波長である。
【0022】
次に、本実施形態による等化方法について記載する。
【0023】
等化方法では、まず、係数を有する伝達関数を使用して信号に対応付けられるプロセスが実行される。信号は、複数のチャネルの各々を通って伝播する。係数は、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて生成される。
【0024】
信号に対応付けられるプロセスの実行は、複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信することと、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように伝達関数として第1の伝達行列を使用してデータを信号に変換することと、を含み得る。
【0025】
信号に対応付けられるプロセスの実行はまた、複数のチャネルを通って伝播した後の信号の入力を受信することと、伝達関数として第2の伝達行列を使用して、伝播後の信号をデータに復元することと、を含み得る。第2の伝達行列は、第1の伝達行列の逆行列である。
【0026】
等化方法では、伝達関数は、複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含み得る。正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される。
【0027】
等化方法では、チャネル品質情報は、複数のチャネルの各々に関して、雑音電力レベル、信号対雑音比(SNR)、及びビット誤り率(BER)のうちの1つを含む。
【0028】
上述のとおり、本実施形態の等化装置100及び等化方法によれば、最小のペナルティでチャネル間の伝送信号品質の差を等化することができる。
[第2の実施形態]
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について記載する。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施形態による光伝送システム1000を示すブロック図である。光伝送システム1000は、伝送処理部(伝送処理手段)1100と、受信処理部(受信処理手段)1200と、係数生成部(係数生成手段)1300と、を含む。
【0031】
伝送処理部1100は、複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように係数を有する第1の伝達行列を使用してデータを信号に変換するように構成されている。受信処理部1200は、複数のチャネルを通って伝播した後の信号の入力を受信して、第1の伝達行列の逆行列である第2の伝達行列を使用して、伝播後の信号をデータに復元するように構成されている。係数生成部1300は、複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて係数を生成するように構成されている。
【0032】
光伝送システム1000は、送信機(伝送手段)1400と、受信機(受信手段)1500と、チャネルモニタ(チャネル監視手段)1600と、を更に含む。
【0033】
送信機1400は、信号に対して電気‐光変調プロセスを実行するように構成されている。受信機1500は、伝播後の信号に対して光‐電気復調プロセスを実行するように構成されている。チャネルモニタ1600は、受信機1500からチャネル品質情報を取得するように構成されている。この場合、係数生成部1300は、チャネルモニタ1600からチャネル品質情報を取得する。
【0034】
図3に示すとおり、伝送処理部1100は、典型的な光ファイバ伝送システムにおいて送信機側に配置されている。受信処理部1200及びチャネルモニタ1600は、受信機側に配置されている。例えば、係数生成部1300も受信機側に配置され得る。フィードバック経路1700は、係数生成部1300を伝送処理部1100及び受信処理部1200に接続するように構成されている。
【0035】
次に、光伝送システム1000の動作について記載する。
【0036】
伝送処理部1100は、所定の動作で入力データA及び入力データBを処理するように構成されている。伝送処理部1100では、伝達行列(第1の伝達行列)は、入力データA及び入力データBを処理するために使用される。次いで、出力処理データは、信号C及び信号Dである。伝送処理部1100の入力データと出力データとの間の関係は、式(1)で表される。データA及びデータBは、QPSK(4位相偏移変調)、16QAM(直交振幅変調)、及び64QAMなどの一般的な変調形式で変調されるシンボルであることに留意されたい。
【数1】
H
TXは、式(2)で表される係数を有する伝達行列を表す。
【数2】
「i」は、虚数部を表し、σ
1及びσ
2は、チャネルモニタ1600から取得されるチャネル品質情報に従って係数生成部1300によって決定される係数を表すことに留意されたい。
【0037】
この伝達行列の本質的な説明を示すために、伝達行列は、複数の入力データA及び入力データBを特定の比で2つの部分に分離し、それらを混合して出力処理データC及びDを形成するような形式で構成される。特定の比は、チャネルモニタ1600からのチャネル品質情報を使用して係数生成部1300によって決定される。
【0038】
式(2)は、係数を有する伝達行列の例を表していることに留意されたい。別の例示的な伝達行列は、式(3)で表される。
【数3】
【0039】
係数行列及び直交行列の成分ごとの積として構成された任意の他の行列が伝達行列として使用され得る。概略形態は、式(4)で表される。
【数4】
Cは、係数行列を表す。Qは、直交行列を表す。ドット「o」は、成分ごとの積を表す。
【0040】
すなわち、第1の伝達行列は、複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含む。正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される。この場合、係数生成部1300は、係数行列の行列成分を決定するように構成されている。
【0041】
伝送処理部1100の出力は、送信機1及び2に接続されている。送信機1及び2は、電気‐光変調及び増幅などの入力信号に対する必要な動作を実行して、当該入力信号を、チャネル1及び2を通じて伝送されるのに好適なものにするように構成されている。送信機1及び2から出力される信号は、チャネル1及び2を通じて伝送される。
【0042】
受信機1及び2は、信号を受信して光信号を電気信号に変換するように構成されている。受信処理部1200は、受信機1及び2の出力を受信する。受信処理部1200では、伝送処理部1100における伝達行列の逆行列は、混合されたデータC及びDを元のデータA及びBに復元するために使用される。受信処理部1200の内部のこの動作の詳細は、式(5)で表される。
【数5】
H
TX
-1は、式(2)、(3)、又は(4)で表される伝達行列の逆行列を表す。
【0043】
チャネルモニタ1600は、受信機1及び2からチャネル品質情報を取得するように構成されている。本実施形態では、チャネル品質情報は、受信機1及び2によって測定され得る雑音電力によって示される。チャネル1において測定される雑音電力は、N1によって表される。チャネル2において測定される雑音電力は、N2によって表される。係数生成部1300は、以下の式(6)及び(7)を使用して伝達行列及び逆伝達行列についての係数を生成する。
【数6】
【数7】
【0044】
本実施形態では、チャネル品質情報はまた、受信機側での信号対雑音比(SNR)によって示され得る。チャネル1において測定されるSNRは、SNR1によって表される。チャネル2において測定されるSNRは、SNR2によって表される。次いで、係数生成部1300は、以下の式(8)及び(9)を使用して伝達行列及び逆伝達行列についての係数を生成する。
【数8】
【数9】
【0045】
チャネルモニタ1600及び係数生成部1300の上述の構成は、本実施形態の例であることに留意されたい。チャネル品質情報は、雑音電力レベル及びSNRに制限されない。チャネル品質情報は、ビット誤り率(BER)又はQ値を含む。Q値は、所与の信号について特定のBERを取得するために必要とされる最小のSNRとして定められる。チャネル間のチャネル品質の差を示す任意の他の情報が、本実施形態のチャネル品質情報に含まれ得る。加えて、チャネル品質情報及びチャネル品質情報を示す任意の他のインジケータを取得する任意の他の方法が、本実施形態に含まれ得る。
【0046】
伝送処理部1100、受信処理部1200、及び係数生成部1300を含む等化装置を使用することによって、より高い雑音電力を有するチャネルに対してより多くの信号電力が割り当てられる。その結果、伝送信号のSNRは、両方のチャネルにおいて等化され得る。
【0047】
受信機側で、伝送混合信号は、元のデータA及びBに復元される。チャネル雑音電力情報がチャネルモニタ1600によって取得されるので、係数生成部1300によって決定される係数を有する式(4)で表される伝達行列は、加えられる雑音を最小にすることが示され得る。その結果、本実施形態の上述の等化装置によれば、最小のペナルティで異なるチャネル間の信号品質の差を低減することができる。
【0048】
本実施形態の光伝送システムの構成は、2つを超える数のチャネルを有する多重伝送システムにスケール変更され得ることにも留意されたい。
図4は、3チャネル構成の例としての光伝送システム1001の構成を示す。本構成において最も異なっている点は、伝送処理部1100及び受信処理部1200の内部における係数を有する伝達行列である。3チャネルのデータを処理するように構成された伝達行列は、式(10)で表される。
【数10】
「i」は、虚数部を表し、「e」は、オイラー数を表し、σ
1及びσ
2は、チャネルモニタ1600から取得されるチャネル品質情報に従って係数生成部1300によって決定される係数を表すことに留意されたい。
【0049】
一般的な場合では、Nが任意の自然数であるNチャネル伝送システムについて、Nチャネルのデータを処理するように構成された伝達行列は、式(11)で表される。
【数11】
C
Nは、N×Nの係数行列を表す。Q
Nは、N×Nの直交行列を表す。直交行列は、所与のサイズN×Nの任意の形式で構成され得ることに留意されたい。
【0050】
例として、複素アダマール行列が式11の直交行列として使用される場合、変換行列は、式(12)で表される。F
Nは、フーリエ行列の形式で複素アダマール行列の例を表す。
【数12】
【0051】
本実施形態の伝達行列に使用される直交行列は、前述の例に限定されないことに留意されたい。離散フーリエ変換(DFT)行列などの任意の他の直交行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積で構成される伝達行列を形成するために使用され得る。
【0052】
係数生成部1300は、受信機側の配置に限定されないことに留意されたい。実用的な配置によれば、
図5に示すとおり、係数生成部1300は、送信機側に配置され得る。チャネルモニタ1600は、受信機側でチャネル情報を取得する。次いで、チャネル情報は、フィードバック経路1を通じて係数生成部1300に与えられる。係数生成部1300は、伝達行列及び逆伝達行列についての最適化係数を生成する。受信機側での逆伝達行列についての係数は、フィードバック経路2を通じて与えられる。
【0053】
次に、本実施形態による光伝送システム1000の動作方法について記載する。
図6は、本実施形態による光伝送システム1000の動作方法を説明するフローチャートを示す。
【0054】
光伝送システム1000の動作方法では、まず、チャネル品質情報が取得される(ステップS10)。チャネル品質情報は、前述のSNR、雑音電力、又はチャネル品質情報を示す任意の他の情報である。チャネル品質情報は、チャネルモニタ1600によって取得される。
【0055】
次に、係数が更新される(ステップS20)。デフォルトの係数は全て1に設定され、これは、開始時に等化が無効にされることを意味することに留意されたい。本プロセスは、チャネル品質情報を正確に監視するために実行される。チャネル品質情報が取得されると、係数生成部1300は、伝達行列及び逆伝達行列についての最適化係数を生成する。
【0056】
伝送処理部1100における伝達行列及び受信処理部1200における逆伝達行列は、フィードバック経路を通じて係数生成部1300から取得される更新された係数を使用して更新される(ステップS30)。伝達行列及び逆伝達行列が更新された後、ステップは、光伝送システム1000が繰り返し等化されるようにS10に進む。チャネル品質の特性が、物理的な形状変形又は温度変化などの他の要因により変化する場合であっても、動作方法は、安定して有利な効果を維持することができる。
【0057】
例として、前述の実施形態に記載された
図3、
図4、
図5に示す複数のチャネルは、信号が伝播するマルチコアファイバ(MCF)のうちの異なるコアである。クロストーク、したがって、各チャネルの雑音は、ファイバの形状に応じて異なっている。このため、等化装置は、最小のペナルティでチャネル性能の差をなくすために、前述の実施形態に記載されるように定められる。
【0058】
代替的な例として、前述の実施形態に記載された
図3、
図4、
図5に示す複数のチャネルは、信号が伝播する波長分割多重(WDM)における異なる波長である。雑音は、異なる波長に応じて変化する波長特性に依存するため、各チャネルの雑音は異なっている。それゆえ、最小のペナルティでチャネル性能の差をなくすために、等化装置が、前述の実施形態に記載されるように定められる。
【0059】
上述のとおり、本実施形態の光伝送システム1000及び光伝送システム1000の動作方法によれば、最小のペナルティでチャネル間の伝送信号品質の差を等化することができる。
【0060】
上記開示の実施形態の全部又は一部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
【0061】
(付記1)係数を有する伝達関数を使用して、複数のチャネルの各々を通って伝播する信号に対応付けられるプロセスを実行する処理手段と、前記複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて前記係数を生成する係数生成手段と、を備える、等化装置。
【0062】
(付記2)前記処理手段は、伝送処理手段を含み、前記伝送処理手段は、前記複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように前記伝達関数として第1の伝達行列を使用して前記データを前記信号に変換するように構成されている、付記1に記載の等化装置。
【0063】
(付記3)前記処理手段は、受信処理手段を含み、前記受信処理手段は、前記複数のチャネルを通って伝播した後の前記信号の入力を受信して、前記伝達関数として第2の伝達行列を使用して、前記伝播後の前記信号を前記データに復元するように構成されており、前記第2の伝達行列は、前記第1の伝達行列の逆行列である、付記2に記載の等化装置。
【0064】
(付記4)前記伝達関数は、前記複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含み、前記正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される、付記1、2、及び3のいずれか1つに記載の等化装置。
【0065】
(付記5)前記係数生成手段は、前記係数行列の行列成分を決定するように構成されている、付記4に記載の等化装置。
【0066】
(付記6)前記チャネル品質情報は、前記複数のチャネルの各々に関して、雑音電力レベル、信号対雑音比、及びビット誤り率のうちの1つを含む、付記1、2、3、4、及び5のいずれか1つに記載の等化装置。
【0067】
(付記7)前記複数のチャネルは、前記信号が伝播するマルチコアファイバのうちの異なるコアである、付記1、2、3、4、5、及び6のいずれか1つに記載の等化装置。
【0068】
(付記8)前記複数のチャネルは、前記信号が伝播する波長分割多重における異なる波長である、付記1、2、3、4、5、及び6のいずれか1つに記載の等化装置。
【0069】
(付記9)複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信して、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように係数を有する第1の伝達行列を使用して前記データを信号に変換する伝送処理手段と、前記複数のチャネルを通って伝播した後の前記信号の入力を受信して、前記第1の伝達行列の逆行列である第2の伝達行列を使用して、前記伝播後の前記信号を前記データに復元する受信処理手段と、前記複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて前記係数を生成する係数生成手段と、を備える、光伝送システム。
【0070】
(付記10)前記信号に対して電気‐光変調プロセスを実行する伝送手段と、前記伝播後の前記信号に対して光‐電気復調プロセスを実行する受信手段と、前記受信手段から前記チャネル品質情報を取得するチャネル監視手段と、を更に備え、前記係数生成手段は、前記チャネル監視手段から前記チャネル品質情報を取得する、付記9に記載の光伝送システム。
【0071】
(付記11)前記第1の伝達行列は、前記複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含み、前記正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される、付記9又は10に記載の光伝送システム。
【0072】
(付記12)前記係数生成手段は、前記係数行列の行列成分を決定するように構成されている、付記11に記載の光伝送システム。
【0073】
(付記13)前記チャネル品質情報は、前記複数のチャネルの各々に関して、雑音電力レベル、信号対雑音比、及びビット誤り率のうちの1つを含む、付記9、10、11、及び12のいずれか1つに記載の光伝送システム。
【0074】
(付記14)前記複数のチャネルは、前記信号が伝播するマルチコアファイバのうちの異なるコアである、付記9、10、11、12、及び13のいずれか1つに記載の光伝送システム。
【0075】
(付記15)前記複数のチャネルは、前記信号が伝播する波長分割多重における異なる波長である、付記9、10、11、12、及び13のいずれか1つに記載の光伝送システム。
【0076】
(付記16)係数を有する伝達関数を使用して信号に対応付けられるプロセスを実行することであって、前記信号は、複数のチャネルの各々を通って伝播する、ということと、前記複数のチャネルの各々に関するチャネル品質情報に基づいて前記係数を生成することと、を含む、等化方法。
【0077】
(付記17)前記信号に対応付けられる前記プロセスの前記実行は、前記複数のチャネルを通って伝送されるデータの入力を受信することと、より低いチャネル品質を有するチャネルに対してより多くの信号電力を与えるように前記伝達関数として第1の伝達行列を使用して前記データを前記信号に変換することと、を含む、付記16に記載の等化方法。
【0078】
(付記18)前記信号に対応付けられる前記プロセスの前記実行は、前記複数のチャネルを通って伝播した後の前記信号の入力を受信することと、前記伝達関数として第2の伝達行列を使用して、前記伝播後の前記信号を前記データに復元することと、を含み、前記第2の伝達行列は、前記第1の伝達行列の逆行列である、付記17に記載の等化方法。
【0079】
(付記19)前記伝達関数は、前記複数のチャネルの数と同じ数の列を有する正方行列を含み、前記正方行列は、係数行列及び直交行列の成分ごとの積として表される、付記16、17、及び18のいずれか1つに記載の等化方法。
【0080】
(付記20)前記チャネル品質情報は、前記複数のチャネルの各々に関して、雑音電力レベル、信号対雑音比、及びビット誤り率のうちの1つを含む、付記16、17、18、及び19のいずれか1つに記載の等化方法。
【0081】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0082】
100 等化装置
110 処理部
111 伝送処理部
112 受信処理部
120 係数生成部
1000 光伝送システム
1100 伝送処理部
1200 受信処理部
1300 係数生成部
1400 送信機
1500 受信機
1600 チャネルモニタ
1700 フィードバック経路