(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20250527BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20250527BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20250527BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20250527BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B60C11/00 Z
B60C11/03 100B
B60C11/12 D
B60C11/13 B
B60C11/03 B
B60C5/00 H
(21)【出願番号】P 2024203440
(22)【出願日】2024-11-21
【審査請求日】2024-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】澤上 勲
(72)【発明者】
【氏名】倉富(小嶋) 燿太
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000578(JP,A)
【文献】特開2019-014312(JP,A)
【文献】特開平09-193615(JP,A)
【文献】特開2006-213205(JP,A)
【文献】特表2015-500166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/03
B60C 11/12
B60C 11/13
B60C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝で区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部のそれぞれには、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数の溝状部が形成されており、
前記複数の溝状部のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側の第1端と、タイヤ周方向の他方側の第2端とを有し、
前記複数の溝状部は、タイヤ周方向の1周に亘って、予め定められた配列規則に基づいて配置されており、
前記配列規則では、前記複数の溝状部のうち、タイヤ周方向で隣接する溝状部の全てのペアのそれぞれについて、前記ペアの一方の溝状部の前記第1端と、前記ペアの他方の溝状部の前記第2端とが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、
前記ペアを構成する溝状部は、同一の陸部、又は、互いに異なる陸部に形成されており、
前記タイヤを正規リムに正規内圧でリム組みし、かつ、正規荷重の70%を負荷してキャンバー角を0度として平面に接地させた70%荷重負荷状態において、前記複数の陸部のうち少なくとも1つの陸部のタイヤ周方向両側の接地端縁は、タイヤ軸方向に対して角度θaを備えており、
前記角度θaと、前記少なくとも1つの陸部に形成された溝状部のタイヤ軸方向に対する角度θbとの差の絶対値が、5度以上である、
タイヤ。
【請求項2】
前記ペアを構成する溝状部は、互いに異なる陸部に形成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数の陸部は、センター陸部と、一対のミドル陸部とからなり、これらの陸部の全てにおいて、前記絶対値が5度以上である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記70%荷重負荷状態での前記トレッド部の接地面は、タイヤ周方向の最大接地長Lと、タイヤ赤道を中心としかつタイヤ軸方向の最大接地幅Wの60%以下の範囲内でのタイヤ周方向の接地長Lmとの比L/Lmが、下記の式(1)を満たす、請求項1に記載のタイヤ。
1.00<L/Lm<1.10 …(1)
【請求項5】
全ての前記溝状部のタイヤ軸方向に対する平均角度が10~50度である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部は、模様構成単位を構成する1ピッチ領域がタイヤ周方向に並べられたトレッドパターンを有し、
前記複数の陸部のそれぞれにおいて、前記1ピッチ領域に形成されている前記溝状部のタイヤ軸方向の長さの合計は、前記陸部のタイヤ軸方向の幅の60%~120%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されており、
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されるセンター陸部と、車両装着時において前記センター陸部に対して車両外側に配される外側ミドル陸部と、を含み、
前記センター陸部及び前記外側ミドル陸部のそれぞれにおいて、前記複数の溝状部の少なくとも1つは、前記第1端及び前記第2端の少なくとも一方が陸部内で終端している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記複数の陸部は、車両装着時において前記センター陸部に対して車両内側に配される内側ミドル陸部をさらに含み、
前記内側ミドル陸部において、前記複数の溝状部の少なくとも1つは、前記第1端及び前記第2端の双方が前記周方向溝のいずれかに連通している、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記センター陸部、前記外側ミドル陸部及び前記内側ミドル陸部のそれぞれのタイヤ軸方向の幅の合計は、前記70%荷重負荷状態の接地面のタイヤ軸方向の最大接地幅の35%~60%である、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記複数の溝状部は、幅が2mm以下のサイプ本体部を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記複数の溝状部の少なくとも1つは、面取り部を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記複数の周方向溝は、タイヤ赤道側に配置された少なくとも1つのセンター周方向溝を含み、
前記センター周方向溝の溝底部には、タイヤ半径方向に突出する少なくとも1つの突起部が形成される、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されており、
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されるセンター陸部と、車両装着時において前記センター陸部に対して車両外側に配される外側ミドル陸部と、車両装着時において前記センター陸部に対して車両内側に配される内側ミドル陸部と、を含み、
前記内側ミドル陸部の前記角度θaと前記内側ミドル陸部に形成された溝状部の前記角度θbとの差の絶対値は、前記外側ミドル陸部の前記角度θaと前記外側ミドル陸部に形成された溝状部の前記角度θbとの差の絶対値以上である、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、周方向溝で区分された複数の陸部とを含むトレッド部を有するタイヤが記載されている。複数の陸部には、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した複数の横溝状要素が形成されている。
【0003】
横溝状要素のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側の第1端と、タイヤ周方向の第2の側の第2端とを有している。複数の横溝状要素は、タイヤ周方向の1周に亘って第1の配列にしたがって配置されている。この第1の配列では、タイヤ周方向で隣接する横溝状要素の全てのペアのそれぞれについて、ペアの一方の横溝状要素の第1端が、ペアの他方の横溝状要素の第2端と、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のタイヤでは、タイヤ走行時において、横溝状要素を絶え間なく連続的に接地させることで、ピッチノイズの低減が図られているものの、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ピッチノイズを低減することが可能なタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝で区分された複数の陸部とを含み、前記複数の陸部のそれぞれには、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数の溝状部が形成されており、前記複数の溝状部のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側の第1端と、タイヤ周方向の他方側の第2端とを有し、前記複数の溝状部は、タイヤ周方向の1周に亘って、予め定められた配列規則に基づいて配置されており、前記配列規則では、前記複数の溝状部のうち、タイヤ周方向で隣接する溝状部の全てのペアのそれぞれについて、前記ペアの一方の溝状部の前記第1端と、前記ペアの他方の溝状部の前記第2端とが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、前記ペアを構成する溝状部は、同一の陸部、又は、互いに異なる陸部に形成されており、前記タイヤを正規リムに正規内圧でリム組みし、かつ、正規荷重の70%を負荷してキャンバー角を0度として平面に接地させた70%荷重負荷状態において、前記複数の陸部のうち少なくとも1つの陸部のタイヤ周方向両側の接地端縁は、タイヤ軸方向に対して角度θaを備えており、前記角度θaと、前記少なくとも1つの陸部に形成された溝状部のタイヤ軸方向に対する角度θbとの差の絶対値が、5度以上である、タイヤである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことにより、ピッチノイズを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】タイヤのトレッド部の一例を示す展開図である。
【
図2】
図1のセンター陸部、内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部の部分拡大図である。
【
図3】70%荷重負荷状態のトレッド部のフットプリントの一例を示す図である。
【
図4】70%荷重負荷状態のトレッド部のフットプリントにおいて、最大接地長Lと接地長Lmを示す図である。
【
図5】内側ショルダー周方向溝に設けられた突起部の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0011】
[タイヤ]
図1は、タイヤ1のトレッド部2の一例を示す展開図である。
図1では、後述の突起部41(
図5に示す)が省略されている。
【0012】
本実施形態のタイヤ1は、空気入りタイヤである場合が例示される。なお、タイヤ1は、非空気式タイヤ(エアレスタイヤ)であってもよい。また、本実施形態のタイヤとしては、例えば、乗用車用タイヤが好適である。なお、タイヤ1は、自動二輪車用タイヤや、重荷重用タイヤであってもよい。
【0013】
[トレッド部]
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2を有している。本実施形態のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定されているが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、装着の向きが指定されていなくてもよい。なお、車両への装着の向きは、例えば、タイヤ1のサイドウォール部(図示省略)等に、文字やマーク(図示省略)で表示されている。
図1において、右側が車両内側Viに対応し、左側が車両外側Voに対応している。
【0014】
本実施形態のトレッド部2には、一対のトレッド端3と、これらの間の踏面4とが含まれる。踏面4は、タイヤ走行時において、地面(路面)と接触することが意図された部分であって、トレッドゴムによって形成されている。本実施形態のトレッド部2のように、車両への装着の向きが指定されている場合、一対のトレッド端3には、車両内側Viに設けられる内側トレッド端3iと、車両外側Voに設けられる外側トレッド端3oとが含まれる。
【0015】
一対のトレッド端3(本例では、内側トレッド端3i及び外側トレッド端3o)は、タイヤ1が空気入りタイヤの場合、70%荷重負荷状態において最もタイヤ軸方向外側の接地位置で特定される。ここで、「70%荷重負荷状態」とは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重の70%を負荷してキャンバー角を0度として平面に接地させた状態である。
【0016】
正規状態とは、タイヤ1が正規リム(図示省略)に正規内圧でリム組みされた無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値で示される。なお、寸法等は、製造上のやむを得ない通常の寸法誤差(公差)が許容されるものとする。
【0017】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムである。したがって、正規リムは、例えば、JATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0018】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧である。したがって、正規内圧は、例えば、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0019】
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重である。したがって、正規荷重は、例えば、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0020】
本実施形態のトレッド部2は、模様構成単位を構成する1ピッチ領域Pが、タイヤ周方向に並べられたトレッドパターン2Pを有している。1ピッチ領域Pは、共通のパターンを有するものであれば、例えば、タイヤ周方向長さが同じものが複数並べられていてもよく、タイヤ周方向長さが異なる複数の種類のものが、ランダムに並べられていてもよい。1ピッチ領域Pのタイヤ周方向の長さL1は、例えば、19~36mmに設定される。
【0021】
トレッドパターン2Pは、タイヤ周方向の長さL1が異なる複数種類の1ピッチ領域Pが、タイヤ周方向に並べられているのが好ましい。これにより、1ピッチ領域P間の固有振動数が変更され、ノイズ性能が向上する。このような作用を効果的に高めるために、1ピッチ領域Pは、2~10種類とされるのが好ましい。
【0022】
本実施形態のトレッド部2(トレッドパターン2P)には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝5と、複数の周方向溝5で区分された複数の陸部6とが含まれる。
【0023】
[周方向溝]
複数の周方向溝5は、一対のトレッド端3の間(内側トレッド端3iと外側トレッド端3oとの間)の踏面4において、タイヤ周方向に連続して延びている。このような周方向溝5により、ウェット走行時において、トレッド部2と路面(図示省略)との間の水が排出され、ウェット性能が向上する。
【0024】
本実施形態の複数の周方向溝5は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されない。複数の周方向溝5は、例えば、波状やジグザグ状に延びるものでもよい。
【0025】
各周方向溝5の溝幅W1及び溝深さ(図示省略)は、適宜設定されうる。溝幅W1は、例えば、70%荷重負荷状態の接地面のタイヤ軸方向の最大接地幅Wの2.0%~8.0%に設定される。溝深さは、例えば、4.0~10.0mmに設定される。なお、最大接地幅Wは、一対のトレッド端3の間(本例では、内側トレッド端3iと外側トレッド端3oとの間)のタイヤ軸方向の距離として特定される。溝幅は、溝中心線と直交する方向で隣接する2つの溝縁間の距離として特定される。
【0026】
複数の周方向溝5は、タイヤ赤道C側に配置された少なくとも1つのセンター周方向溝7を含んでいる。本実施形態では、一対のセンター周方向溝7と、一対のショルダー周方向溝8とが含まれている。これらのセンター周方向溝7及びショルダー周方向溝8により、トレッド部2のタイヤ軸方向の広範囲に亘って、路面との間の水が排出され、ウェット性能が向上する。なお、周方向溝5は、一対のセンター周方向溝7と、一対のショルダー周方向溝8とを含む態様に限定されるわけではなく、例えば、1つのセンター周方向溝7と、一対のショルダー周方向溝8とで構成されてもよい。
【0027】
一対のセンター周方向溝7は、タイヤ赤道Cに対してタイヤ軸方向の両側に配されている。本実施形態のトレッド部2のように、車両への装着の向きが指定されている場合、一対のセンター周方向溝7には、車両内側Viに配される内側センター周方向溝7iと、車両外側Voに配される外側センター周方向溝7oとが含まれる。これらの一対のセンター周方向溝7の溝中心線(図示省略)は、上記のウェット性能を向上させる観点から、タイヤ赤道Cからタイヤ軸方向外側に、最大接地幅Wの6%~15%の距離を隔てた位置に設けられてもよい。
【0028】
一対のショルダー周方向溝8は、センター周方向溝7と、トレッド端3(本例では、内側トレッド端3i及び外側トレッド端3oの何れか一方)との間に配されている。本実施形態のトレッド部2のように、車両への装着の向きが指定されている場合、一対のショルダー周方向溝8には、車両内側Viに配される内側ショルダー周方向溝8iと、車両外側Voに配される外側ショルダー周方向溝8oとが含まれる。これらの一対のショルダー周方向溝8の溝中心線(図示省略)は、上記のウェット性能を向上させる観点から、タイヤ赤道Cからタイヤ軸方向外側に、最大接地幅Wの25%~35%の距離を隔てた位置に設けられるのが好ましい。また、外側ショルダー周方向溝8oの溝幅W1は、内側ショルダー周方向溝8iの溝幅W1よりも小さく設定されてもよい。これにより、旋回走行時において接地圧が相対的に大きくなる車両外側のトレッド剛性が大きくなり、操縦安定性能が向上する。
【0029】
[陸部]
複数の陸部6は、複数の周方向溝5で区分されている。本実施形態の複数の陸部6は、センター陸部11と、一対のミドル陸部12と、一対のショルダー陸部13とを含んで構成される。なお、複数の陸部6は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、タイヤ1に求められる走行性能等に応じて、一対のセンター陸部11と、一対のショルダー陸部13とを含んで構成されていてもよい。
【0030】
センター陸部11は、一対のセンター周方向溝7(内側センター周方向溝7i及び外側センター周方向溝7o)で区分されている。これにより、センター陸部11は、タイヤ赤道C上に配されている。
【0031】
一対のミドル陸部12は、一対のセンター周方向溝7と、一対のショルダー周方向溝8との間に区分されている。本実施形態のトレッド部2のように、車両への装着の向きが指定されている場合、一対のミドル陸部12は、車両内側Viに配される内側ミドル陸部12iと、車両外側Voに配される外側ミドル陸部12oとが含まれる。
【0032】
内側ミドル陸部12iは、内側センター周方向溝7iと、内側ショルダー周方向溝8iとの間に区分されている。一方、外側ミドル陸部12oは、外側センター周方向溝7oと、外側ショルダー周方向溝8oとの間に区分されている。
【0033】
一対のショルダー陸部13は、一対のショルダー周方向溝8のタイヤ軸方向の外側に区分されている。本実施形態のトレッド部2のように、車両への装着の向きが指定されている場合、一対のショルダー陸部13は、車両内側Viに配される内側ショルダー陸部13iと、車両外側Voに配される外側ショルダー陸部13oとが含まれる。
【0034】
内側ショルダー陸部13iは、内側ショルダー周方向溝8iのタイヤ軸方向の外側(車両内側Vi)に区分されており、内側トレッド端3iを含んでいる。一方、外側ショルダー陸部13oは、外側ショルダー周方向溝8oのタイヤ軸方向の外側(車両外側Vo)に区分されており、外側トレッド端3oを含んでいる。
【0035】
上記の陸部6のうち、センター陸部11、内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12oのそれぞれのタイヤ軸方向の幅W2a、W2b及びW2cの合計は、70%荷重負荷状態の接地面のタイヤ軸方向の最大接地幅Wの35%~60%に設定されてもよい。合計が最大接地幅Wの35%以上に設定されることで、各陸部6の横剛性及び接地面積が確保され、操縦安定性が向上する。一方、合計が最大接地幅Wの60%以下に設定されることで、周方向溝5の溝幅W1(溝容積)が確保され、排水性能が向上する。このような観点より、合計は、好ましくは、最大接地幅Wの40%以上であり、また、好ましくは、最大接地幅Wの55%以下である。
【0036】
[複数の溝状部]
本実施形態の複数の陸部6のそれぞれには、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数の溝状部20が形成されている。これらの複数の溝状部20により、ウェット性能が向上する。
図2は、
図1のセンター陸部11、内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12oの部分拡大図である。
【0037】
図2に示されるように、複数の溝状部20のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側S1の第1端20aと、タイヤ周方向の他方側S2の第2端20bとを有している。本実施形態において、第1端20a及び第2端20bは、溝状部20の長手方向に沿った溝中心線20cの端で特定される。なお、本実施形態の溝状部20のように、面取り部29が設けられる場合には、面取り部29を除外して(本例では、サイプ本体部28のみに基づいて)、第1端20a及び第2端20bが特定される。
【0038】
本実施形態の複数の溝状部(本例では、センター陸部11、内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12oに設けられた溝状部)20は、幅(すなわち、その長手方向と直交する幅)が、2mm以下のサイプ本体部28を含んでいる。本実施形態のサイプ本体部28は、スリット状に形成されている。これらの複数の溝状部20(サイプ本体部28)により、トレッド部2にエッジ成分を形成しつつ、路面に接触したときの陸部6の剛性低下を抑えることができ、操縦安定性能の向上が可能となる。
【0039】
溝状部20は、サイプ本体部28を含む態様に限定されるわけではなく、例えば、幅(すなわち、その長手方向と直交する幅)が、2mmよりも大きい溝本体部(図示省略)を含んでもよい。このような溝本体部により、ウェット性能が向上する。また、溝状部20の深さ(図示省略)は、例えば、2~8mmに設定される。
【0040】
図1に示されるように、本実施形態の複数の溝状部20は、複数の第1溝状部21と、複数の第2溝状部22と、複数の第3溝状部23と、複数の第4溝状部24と、複数の第5溝状部25と、複数の第6溝状部26と、複数の第7溝状部27とが含まれる。なお、複数の溝状部20は、これらの第1溝状部21~第7溝状部27の全てが含まれる態様に限定されるわけではなく、例えば、タイヤ1に求められる性能等に応じて、これらの一部が省略されてもよいし、他の溝状部(図示省略)が含まれてもよい。
【0041】
複数の第1溝状部21及び複数の第2溝状部22は、センター陸部11に設けられている。本実施形態において、複数の第1溝状部21は、センター陸部11の車両内側Viに配されている。一方、複数の第2溝状部22は、センター陸部11の車両外側Voに配されている。なお、センター陸部11には、これらの第1溝状部21及び第2溝状部22が設けられる態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、他の溝状部(図示省略)が含まれてもよい。
【0042】
複数の第3溝状部23は、内側ミドル陸部12iに設けられている。なお、内側ミドル陸部12iには、第3溝状部23のみが設けられる態様に限定されるわけではなく、例えば、他の溝状部(図示省略)が含まれてもよい。
【0043】
複数の第4溝状部24及び複数の第5溝状部25は、外側ミドル陸部12oに設けられている。本実施形態において、複数の第4溝状部24は、外側ミドル陸部12oの車両内側Viに配されている。一方、複数の第5溝状部25は、外側ミドル陸部12oの車両外側Voに配されている。なお、外側ミドル陸部12oには、これらの第4溝状部24及び第5溝状部25が設けられる態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、他の溝状部(図示省略)が含まれてもよい。
【0044】
複数の第6溝状部26は、内側ショルダー陸部13iに形成されている。なお、内側ショルダー陸部13iには、第6溝状部26のみが設けられる態様に限定されるわけではなく、例えば、他の溝状部(図示省略)が含まれてもよい。
【0045】
複数の第7溝状部27は、外側ショルダー陸部13oに形成されている。なお、外側ショルダー陸部13oには、第7溝状部27のみが設けられる態様に限定されるわけではなく、例えば、他の溝状部(図示省略)が含まれてもよい。
【0046】
[配列規則]
そして、
図2に示されるように、本実施形態の複数の溝状部20は、タイヤ周方向の1周に亘って、予め定められた配列規則30に基づいて配置されている。本実施形態の配列規則30は、センター陸部11と、一対のミドル陸部12(内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12o)とに配置された複数の溝状部20が対象とされているが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、これらの一部の陸部6のみが配列規則30の対象とされてもよいし、他の陸部6(
図1に示した一対のショルダー陸部13)が配列規則30の対象とされてもよい。
【0047】
配列規則30では、複数の溝状部20のうち、タイヤ周方向で隣接する溝状部20の全てのペア31のそれぞれについて、ペア31の一方の溝状部20の第1端20aと、ペア31の他方の溝状部20の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。また、ペア31を構成する溝状部20は、同一の陸部6、又は、互いに異なる陸部6に形成される。
【0048】
ここで、ペア31の一方の溝状部20の第1端20aと、ペア31の他方の溝状部20の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置にあるか否かは、それらの溝中心線20cを用いて判断される。すなわち、ペア31の一方の溝状部20の第1端20aと、ペア31の他方の溝状部20の第2端20bとは、それぞれ、溝中心線20cの端で特定される。但し、タイヤ1という加硫ゴム製品の特性を鑑み、製造上の公差を許容する観点から、前記「同じ位置」には、第1端20a及び第2端20bがタイヤ周方向に僅かな距離でずれる態様が含まれる。この場合、第1端20aと第2端20bとのタイヤ周方向の距離は、ペア31を構成する2つの溝状部20のタイヤ周方向の長さの合計の5%以下とされ、好ましくは3%以下とされ、より好ましくは1%以下とされる。なお、第1端20a及び第2端20bがタイヤ周方向で位置ズレしていないこと(例えば、0.1%未満)が最も好ましい。
【0049】
本実施形態のペア31には、第1ペア31aと、第2ペア31bと、第3ペア31cと、第4ペア31dと、第5ペア31eとが含まれる。なお、ペア31は、これらの一部が省略されてもよいし、他のペアが含まれてもよい。本実施形態のペア31を構成する溝状部20は、互いに異なる陸部6に形成されている。
【0050】
第1ペア31aは、第4溝状部24と、この第4溝状部24にタイヤ周方向の他方側S2で隣接する第2溝状部22とで構成される。本実施形態では、第4溝状部24が、外側ミドル陸部12oに形成されており、第2溝状部22が、センター陸部11に形成されている。したがって、第1ペア31aを構成する溝状部20は、互いに異なる陸部6に形成される。また、第1ペア31aにおいて、第2溝状部22の第1端20aと、第4溝状部24の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。
【0051】
第2ペア31bは、第2溝状部22と、この第2溝状部22にタイヤ周方向の他方側S2で隣接する第3溝状部23とで構成される。本実施形態では、第2溝状部22が、センター陸部11に形成されており、第3溝状部23が、内側ミドル陸部12iに形成されている。したがって、第2ペア31bを構成する溝状部20は、第1ペア31aと同様に、互いに異なる陸部6に形成される。また、第2ペア31bにおいて、第3溝状部23の第1端20aと、第2溝状部22の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。
【0052】
第3ペア31cは、第3溝状部23と、この第3溝状部23にタイヤ周方向の他方側S2で隣接する第5溝状部25とで構成される。本実施形態では、第3溝状部23が、内側ミドル陸部12iに形成されており、第5溝状部25が、外側ミドル陸部12oに形成されている。したがって、第3ペア31cを構成する溝状部20は、第1ペア31aや第2ペア31bと同様に、互いに異なる陸部6に形成される。また、第3ペア31cにおいて、第5溝状部25の第1端20aと、第3溝状部23の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。
【0053】
第4ペア31dは、第5溝状部25と、この第5溝状部25にタイヤ周方向の他方側S2で隣接する第1溝状部21とで構成される。本実施形態では、第5溝状部25が、外側ミドル陸部12oに形成されており、第1溝状部21が、センター陸部11に形成されている。したがって、第4ペア31dを構成する溝状部20は、第1ペア31a~第3ペア31cと同様に、互いに異なる陸部6に形成される。また、第4ペア31dにおいて、第1溝状部21の第1端20aと、第5溝状部25の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。
【0054】
第5ペア31eは、第1溝状部21と、この第1溝状部21にタイヤ周方向の他方側S2で隣接する第4溝状部24とで構成される。本実施形態では、第1溝状部21が、センター陸部11に形成されており、第4溝状部24が、外側ミドル陸部12oに形成されている。したがって、第5ペア31eを構成する溝状部20は、第1ペア31a~第4ペア31dと同様に、互いに異なる陸部6に形成される。また、第5ペア31eにおいて、第4溝状部24の第1端20aと、第1溝状部21の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。
【0055】
本実施形態では、第1ペア31a~第5ペア31eが、
図1に示した1ピッチ領域Pを構成しており、これらの第1ペア31a~第5ペア31eが順番に繰り返される。これにより、本実施形態の配列規則30は、各ペア31(第1ペア31a~第5ペア31e)を構成する溝状部20が、互いに異なる陸部6に形成される。
【0056】
一般に、タイヤ走行時のノイズとして、ピッチ音が知られている。例えば、第1溝状部21~第5溝状部25で区分される領域32(踏面4)が路面に接触する度に、インパクト力が生じている。このインパクト力は、トレッド部2やサイドウォール部(図示省略)を周期的に振動させることで、ピッチノイズ(ピッチ音)を生じさせる傾向がある。
【0057】
本実施形態では、上記の配列規則30により、タイヤ走行時において、第1溝状部21~第5溝状部25が、タイヤ周方向の一方側S1から他方側S2(又は、他方側S2から一方側S1)にかけて、交互に、かつ、絶え間なく連続的に接地する。これにより、上記インパクト力の変動が小さくなる。したがって、本実施形態のタイヤ1は、陸部6(領域32)から生じるピッチノイズ(ピッチ音)が低減され、ノイズ性能が向上しうる。
【0058】
本実施形態の配列規則30は、各ペア31を構成する溝状部20が、互いに異なる陸部6に形成されている。これにより、本実施形態では、各陸部6のそれぞれにおいて、各ペア31を構成する溝状部20が連続して形成されない。このため、第1端20aと第2端20bとを同じ位置に形成するために、例えば、溝状部20のタイヤ軸方向に対する角度θbを大きくしたり、各陸部6に形成される溝状部20の本数を多くしたりする必要がない。したがって、各陸部6のタイヤ軸方向の剛性が必要以上に低下することが防止され、操縦安定性と、ノイズ性能(静粛性)との両立が可能となる。
【0059】
本実施形態の配列規則30は、各ペア31を構成する溝状部20が、センター陸部11及び一対のミドル陸部12(内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12o)に形成されている。これらのセンター陸部11及び一対のミドル陸部12は、直進走行時において接地圧が相対的に大きくなる傾向があることから、ピッチノイズ(ピッチ音)が効果的に低減されうる。さらに、各ペア31を構成する溝状部20が、互いに異なる3つ以上の陸部6に形成されるため、陸部6のタイヤ軸方向の剛性低下が防止され、操縦安定性がさらに向上する。
【0060】
本実施形態の配列規則30は、各ペア31を構成する溝状部20が、互いに異なる陸部6に形成されたが、このような態様に限定されない。例えば、各ペア31を構成する溝状部20が、同一の陸部6に形成されてもよい。この場合、各陸部6において、ペア31を構成する溝状部20が交互に、かつ、絶え間なく連続的に接地することから、上記インパクト力の変動がさらに小さくなる。また、第1端20aと第2端20bとを同じ位置に形成するために、例えば、溝状部20の本数が多くなると、エッジ成分が増加することから、ウェット性能等が向上する。
【0061】
図3は、70%荷重負荷状態のトレッド部2のフットプリント34の一例を示す図である。
図3のフットプリント34では、タイヤ周方向の一方側S1及び他方側S2を反転させたトレッドパターンが示されている。
【0062】
本実施形態では、70%荷重負荷状態において、複数の陸部6のうち少なくとも1つの陸部6のタイヤ周方向両側の接地端縁33は、タイヤ軸方向に対して角度θaを備えている。そして、本実施形態では、角度θaと、少なくとも1つの陸部6に形成された溝状部20のタイヤ軸方向に対する角度θbとの差の絶対値が、5度以上とされる。なお、絶対値の計算に用いられる角度θbは、角度θaと同様に、70%荷重負荷状態において特定されるものとする。また、角度θa及び角度θbは、公知の手順で取得されたフットプリント34から取得されてもよいし、コンピュータを用いた接地シミュレーションの計算結果から取得されてもよい。
【0063】
角度θaは、各陸部6の接地端縁33において、陸部6の幅方向の両端35、35を通る直線36で特定される。また、本実施形態の角度θaは、
図2に示した配列規則30の対象となる溝状部20が形成される陸部6(本例では、センター陸部11、内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12o)において特定される。このため、角度θaには、センター陸部11のタイヤ周方向の一方側S1の接地端縁33の角度θa1と、センター陸部11のタイヤ周方向の他方側S2の接地端縁33の角度θa2とが含まれる。さらに、角度θaには、内側ミドル陸部12iのタイヤ周方向の一方側S1の接地端縁33の角度θa3と、内側ミドル陸部12iのタイヤ周方向の他方側S2の接地端縁33の角度θa4とが含まれる。さらに、角度θaには、外側ミドル陸部12oのタイヤ周方向の一方側S1の接地端縁33の角度θa5と、外側ミドル陸部12oのタイヤ周方向の他方側S2の接地端縁33の角度θa6とが含まれる。
【0064】
各陸部6の接地端縁33の角度θa1~θa6は、車両内側Viから車両外側Voに向かって、タイヤ周方向の一方側S1から他方側S2に傾斜する角度を正とし、タイヤ周方向の他方側S2から一方側S1に傾斜する角度を負として特定される。この場合、内側ミドル陸部12iにおいて、一方側S1の接地端縁33の角度θa3が負となり、他方側S2の接地端縁33の角度θa4が正となる。また、外側ミドル陸部12oにおいて、一方側S1の接地端縁33の角度θa5が正となり、他方側S2の接地端縁33の角度θa6が負となる。
【0065】
接地端縁33の角度θaや接地面(フットプリント)37の形状は、適宜調整されうる。調整の一例としては、例えば、トレッド部2に配される周知構造のトレッドゴムの厚さの変更や、トレッド部2の内部に配されるカーカスなどの周知構造のタイヤ構成部材の変更等が挙げられる。
【0066】
角度θbは、70%荷重負荷状態において、
図2に示した溝状部20(後述のサイプ本体部28)の長手方向に沿った溝中心線20cと、各陸部6のタイヤ軸方向の両側において、タイヤ周方向に延びるエッジ38とが交差するの位置39(第1端20a又は第2端20b)で特定される。また、本実施形態の角度θbは、
図2に示した配列規則30の対象となる溝状部20で特定される。このため、角度θbには、第1溝状部21の角度θb1と、第2溝状部22の角度θb2と、第3溝状部23の角度θb3と、第4溝状部24の角度θb4と、第5溝状部25の角度θb5とが含まれる。
【0067】
各溝状部20の角度θb1~θb5は、各陸部6の接地端縁33の角度θaと同様に、車両内側Viから車両外側Voに向かって、タイヤ周方向の一方側S1から他方側S2に傾斜する角度が正として特定される。また、各溝状部20の角度θb1~θb5は、タイヤ周方向の他方側S2から一方側S1に傾斜する角度を負として特定される。このため、第1溝状部21の角度θb1、第2溝状部22の角度θb2及び第4溝状部24の角度θb4が負となる。一方、第3溝状部23の角度θb3及び第5溝状部25の角度θb5が正となる。
【0068】
本実施形態では、センター陸部11の一方側S1の接地端縁33の角度θa1と、センター陸部11に形成される第1溝状部21の角度θb1との差(θa1-θb1)の絶対値が、5度以上とされる。さらに、センター陸部11の他方側S2の接地端縁33の角度θa2と、第1溝状部21の角度θb1との差(θa2-θb1)の絶対値が、5度以上とされる。
【0069】
本実施形態では、センター陸部11の一方側S1の接地端縁33の角度θa1と、センター陸部11に形成される第2溝状部22の角度θb2との差(θa1-θb2)の絶対値が、5度以上とされる。さらに、センター陸部11の他方側S2の接地端縁33の角度θa2と、第2溝状部22の角度θb2との差(θa2-θb2)の絶対値が、5度以上とされる。
【0070】
本実施形態では、内側ミドル陸部12iの一方側S1の接地端縁33の角度θa3と、内側ミドル陸部12iに形成される第3溝状部23の角度θb3との差(θa3-θb3)の絶対値が、5度以上とされる。さらに、内側ミドル陸部12iの他方側S2の接地端縁33の角度θa4と、第3溝状部23の角度θb3との差(θa4-θb3)の絶対値が、5度以上とされる。
【0071】
本実施形態では、外側ミドル陸部12oの一方側S1の接地端縁33の角度θa5と、外側ミドル陸部12oに形成される第4溝状部24の角度θb4との差(θa5-θb4)の絶対値が、5度以上とされる。さらに、外側ミドル陸部12oの他方側S2の接地端縁33の角度θa6と、第4溝状部24の角度θb4との差(θa6-θb4)の絶対値が、5度以上とされる。
【0072】
本実施形態では、外側ミドル陸部12oの一方側S1の接地端縁33の角度θa5と、外側ミドル陸部12oに形成される第5溝状部25の角度θb5との差(θa5-θb5)の絶対値が、5度以上とされる。さらに、外側ミドル陸部12oの他方側S2の接地端縁33の角度θa6と、第5溝状部25の角度θb5との差(θa6-θb5)の絶対値が、5度以上とされる。
【0073】
このように、本実施形態では、角度θaと角度θbとの差の絶対値が、5度以上とされることにより、接地端縁33と溝状部20との傾斜の向きが、互いに一致することが抑制される。これにより、タイヤ走行時において、接地端縁33に対して溝状部20を徐々に接地入り又は接地出させることができる。したがって、接地端縁33での接地入りや接地出において、溝状部20の内部の空気が一気に圧縮又は開放するのが防止されるため、ピッチノイズの音量の増幅が抑制されうる。
【0074】
本実施形態のタイヤ1では、
図2に示されるように、ペア31の一方の溝状部20の第1端20aと、ペア31の他方の溝状部20の第2端20bとが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されることで、ピッチノイズが低減されうる。さらに、本実施形態のタイヤ1では、
図3に示されるように、各陸部6において、接地端縁33の角度θaと、溝状部20の角度θbとの差(θa-θb)の絶対値が5度以上とされることで、ピッチノイズの音量の増幅が抑制されうる。したがって、本実施形態のタイヤ1は、ピッチノイズの低減が可能となり、ひいては、ノイズ性能が向上する。
【0075】
本実施形態では、センター陸部11と、一対のミドル陸部(内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12o)の全てにおいて、接地端縁33の角度θaと、溝状部20の角度θbとの差(θa-θb)の絶対値が5度以上とされるのが好ましい。これらの陸部6は、直進走行時及び旋回走行時の双方において主として接地するため、絶対値が5度以上とされることで、ピッチノイズの音量の増幅が効果的に抑制され、ノイズ性能のさらなる向上が可能となる。
【0076】
一方、接地端縁33の角度θaと、溝状部20の角度θbとの差(θa-θb)の絶対値が必要以上に大きくなると、溝状部20の角度θbが大きくなり、トレッド剛性が小さくなることから、操縦安定性が低下するおそれがある。このため、差(θa-θb)の絶対値は、50度以下が好ましい。
【0077】
内側ミドル陸部12iの角度θaと内側ミドル陸部12iに形成された溝状部20の角度θbとの差の絶対値は、外側ミドル陸部12oの角度θaと外側ミドル陸部12oに形成された溝状部20の角度θbとの差の絶対値以上とされてもよい。上述したように、内側ミドル陸部12iの角度の差には、差(θa3-θb3)及び差(θa4-θb3)が含まれる。また、外側ミドル陸部12oの角度の差には、差(θa5-θb4)、差(θa6-θb4)、差(θa5-θb5)及び差(θa6-θb5)が含まれる。
【0078】
内側ミドル陸部12iでの角度の差の絶対値が、外側ミドル陸部12oでの角度の差の絶対値以上とされることにより、外側ミドル陸部12oに比べると旋回走行時の接地圧が相対的に小さい内側ミドル陸部12iにおいて、大きなエッジ成分が形成されうる。これにより、操縦安定性を維持しつつ、ウェット性能が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、内側ミドル陸部12iでの角度の差の絶対値は、外側ミドル陸部12oでの角度の差の絶対値よりも大きいのがより好ましい。
【0079】
また、内側ミドル陸部12iの角度θaと内側ミドル陸部12iに形成された溝状部20の角度θbとの差の絶対値は、センター陸部11の角度θaとセンター陸部11に形成された溝状部20の角度θbとの差の絶対値以上とされてもよい。さらに、センター陸部11の角度θaとセンター陸部11に形成された溝状部20の角度θbとの差の絶対値は、外側ミドル陸部12oの角度θaと外側ミドル陸部12oに形成された溝状部20の角度θbとの差の絶対値以上とされてもよい。上述したように、センター陸部11の角度の差には、差(θa1-θb1)、差(θa2-θb1)、差(θa1-θb2)及び差(θa2-θb2)が含まれる。
【0080】
内側ミドル陸部12iでの角度の差の絶対値が、センター陸部11での角度の差の絶対値以上とされ、かつ、センター陸部11での角度の差の絶対値が、外側ミドル陸部12oでの角度の差の絶対値以上とされることにより、旋回走行時の接地圧が相対的に小さくなる車両内側に向かって、エッジ成分が徐々に大きくなる。これにより、ウェット性能を維持しつつ、旋回走行時の過渡特性(操縦安定性能)が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、内側ミドル陸部12iでの角度の差の絶対値は、センター陸部11での角度の差の絶対値よりも大きいのがより好ましく、同様に、センター陸部11での角度の差の絶対値は、外側ミドル陸部12oでの角度の差の絶対値よりも大きいのがより好ましい。
【0081】
図4は、70%荷重負荷状態のトレッド部2のフットプリント34において、最大接地長Lと接地長Lmを示す図である。70%荷重負荷状態でのトレッド部2の接地面37は、タイヤ周方向の最大接地長Lと、タイヤ周方向の接地長Lmとの比L/Lmが、下記の式(1)を満たすのが好ましい。接地長Lmは、タイヤ赤道Cを中心としかつタイヤ軸方向の最大接地幅Wの60%以下の範囲W60内で特定される。
1.00<L/Lm<1.10 …(1)
【0082】
比L/Lmが、上記の式(1)を満たすことにより、接地面37のうち、直進走行時に接地圧が大きくなる領域(すなわち、最大接地幅Wの60%以下の範囲W60)において、各陸部6の接地端縁33が、タイヤ軸方向に沿ったフラットな形状となる。これにより、各陸部6(本例では、センター陸部11、内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12o)の接地端縁33の角度θa(
図3に示す)の絶対値が小さくなる。このため、上記の差(θa-θb)の絶対値が5度以上となり、ピッチノイズの音量の増幅を容易に抑制することが可能となる。さらに、上記の範囲W60(センター陸部11、内側ミドル陸部12i及び外側ミドル陸部12o)において、接地長Lmが大きく維持されるため、操縦安定性が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、比L/Lmは、好ましくは、1.08以下であり、さらに好ましくは、1.06以下である。同様に、
図3に示した接地端縁33の角度θaの絶対値は、0~15度が好ましい。
【0083】
さらに、70%荷重負荷状態でのトレッド部2の接地面37は、タイヤ周方向の最大接地長Lと、タイヤ周方向の接地長Lnとの比L/Lnが、下記の式(2)を満たすのが好ましい。接地長Lnは、タイヤ赤道Cを中心としかつタイヤ軸方向の最大接地幅Wの80%の位置で特定される。
1.15<L/Ln<1.50 …(2)
【0084】
比L/Lnが、上記の式(2)を満たすことにより、タイヤ軸方向両側の接地端が丸くなり、高荷重がかかった際になだらかに接地幅が広がる。これにより、突き上げ時のクッション性が高くなり、乗り心地が向上する。さらに、路面上の水への抵抗が少なくなり、ウェット性能(ハイドロプレーニング性能)が向上する。また、旋回時に横力が大きくなっても接地幅がなだらかに広がるため、接地圧が局所的に高くなるのが抑制される。これにより、操縦安定性能が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、比L/Lnは、1.20以上であるが好ましく、また、比L/Lnは、1.40以下であるのが好ましい。
【0085】
走行中のノイズは、
図1に示した溝状部20だけでなく、周方向溝5においても発生する。周方向溝5では、主として気柱共鳴ノイズが発生する。このような気柱共鳴ノイズを低減するために、周方向溝5の溝底部には、タイヤ半径方向に突出する少なくとも1つの突起部が形成されてもよい。
図5は、内側ショルダー周方向溝8iに設けられた突起部41の一例を示す拡大斜視図である。
【0086】
突起部41は、溝底部40からタイヤ半径方向外側に突出すすることで、タイヤ走行時において、周方向溝5内を通る空気を撹乱することができる。これにより、周方向溝5で生じやすい気柱共鳴ノイズが低減されうる。
【0087】
本実施形態の突起部41は、第1突起部41Aと、第2突起部41Bとを含んで構成される。第1突起部41A及び第2突起部41Bは、周方向溝5において、タイヤ軸方向で隣接している。
【0088】
第1突起部41A及び第2突起部41Bのそれぞれは、第1面43と第2面44とを含んで構成されている。第1面43は、タイヤ半径方向に延びている。第2面44は、第1面43に対してタイヤ周方向の逆側に配されており、タイヤ半径方向に対して第1面43よりも大きな角度で延びている。
【0089】
第1突起部41Aは、第1面43がタイヤ周方向の他方側S2を向いており、第2面44がタイヤ周方向の一方側S1を向いている。一方、第2突起部41Bは、第1面43がタイヤ周方向の一方側S1を向いており、第2面44がタイヤ周方向の他方側S2を向いている。このように、第1突起部41A及び第2突起部41Bは、第1面41a及び第2面41bのタイヤ周方向の向きが互いに異なるため、周方向溝5内の空気を効果的に撹乱させ、気柱共鳴ノイズが低減されうる。このような突起部41は、例えば、特許文献(特開2020-196281号公報)の記載に基づいて形成されうる。
【0090】
気柱共鳴音は、
図1に示した複数の周方向溝5のうち、センター周方向溝7において大きくなりやすい。このため、突起部41は、少なくともセンター周方向溝7に形成されるのが好ましい。本実施形態の突起部41は、センター周方向溝7だけでなく、ショルダー周方向溝8にも形成されている。これにより、気柱共鳴ノイズが効果的に低減されうる。
【0091】
図1に示した複数の陸部6のそれぞれにおいて、1ピッチ領域Pに形成されている溝状部20のタイヤ軸方向の長さL2(
図2に示す)の合計は、陸部6のタイヤ軸方向の幅W2の60%~120%に設定されるのが好ましい。
図2に示されるように、長さL2は、溝状部20(サイプ本体部28)の第1端20a及び第2端20bのタイヤ軸方向の距離として特定される。
【0092】
各陸部6において、溝状部20の長さL2の合計が、陸部6の幅W2の60%以上とされることで、溝状部20の角度θbの絶対値を大きくしなくても、ペア31の一方の溝状部20の第1端20aと他方の溝状部20の第2端20bとを同じ位置に形成しうる。これにより、角度θbの絶対値を増加に伴う陸部6の横剛性の低下が抑制され、操縦安定性が向上する。また、長さL2の合計が、陸部6の幅W2の120%以下とされることで、1ピッチ領域Pに形成される溝状部20が必要以上に多くなるのが抑制され、操縦安定性が維持される。このような観点より、長さL2の合計は、好ましくは、陸部6の幅W2の70%以上であり、また、好ましくは、110%以下である。
【0093】
全ての溝状部20のタイヤ軸方向に対する平均角度(角度θb1~θb5の絶対値の平均角度)が10~50度であるのが好ましい。平均角度が10度以上とされることで、各陸部6の溝状部20の傾斜により、ペア31の一方の溝状部20の第1端20aと他方の溝状部20の第2端20bとを、タイヤ周方向で同じ位置に形成することが可能となる。一方、平均角度が50度以下とされることで、溝状部20の角度θbの増加に伴う陸部6の横剛性の低下が抑制され、操縦安定性が向上する。このような観点より、平均角度は、好ましくは15度以上であり、また、好ましくは45度以下である。
【0094】
センター陸部11及び外側ミドル陸部12oのそれぞれにおいて、複数の溝状部20の少なくとも1つが、第1端20a及び第2端20bの少なくとも一方が陸部6内で終端していてもよい。これにより、旋回走行時において接地圧が相対的に大きくなるセンター陸部11及び外側ミドル陸部12oの剛性低下が最小限に抑えられ、操縦安定性能及び制動性能が向上する。
【0095】
上述したように、センター陸部11には、複数の第1溝状部21と、複数の第2溝状部22とが形成されている。複数の第1溝状部21は、第1端20aが、センター陸部11内で終端しており、かつ、第2端20bが内側センター周方向溝7i(
図1に示す)に連通している。一方、複数の第2溝状部22は、第1端20aが外側センター周方向溝7o(
図1に示す)に連通しており、かつ、第2端20bがセンター陸部11内で終端している。このように、第1溝状部21及び第2溝状部22は、第1端20a及び第2端20bの少なくとも一方が、センター陸部11内で終端することで、旋回走行時及び直進走行時において接地圧が相対的に大きくなるセンター陸部11の剛性低下が最小限に抑えられる。したがって、操縦安定性能及び制動性能が向上する。
【0096】
各第2溝状部22のタイヤ軸方向の長さL2bは、各第1溝状部21のタイヤ軸方向の長さL2aよりも小さい。これにより、センター陸部11において、旋回走行時の接地圧が相対的に大きくなる車両外側Voの部分の剛性が相対的に高くなり、操縦安定性能が向上する。一方、センター陸部11の車両内側Viには、大きなエッジ成分が形成されるため、ウェット性が向上する。このような作用を効果的に発揮するために、第2溝状部22の長さL2bは、第1溝状部21の長さL2aの30%~75%に設定されるのが好ましい。
【0097】
第1溝状部21及び第2溝状部22は、センター陸部11において、タイヤ周方向に交互に配置されていてもよい。これにより、センター陸部11のタイヤ軸方向の両側において、第1溝状部21及び第2溝状部22によるエッジ成分が、タイヤ周方向に満遍なく形成されるため、ウェット性能が向上する。
【0098】
複数の第1溝状部21及び複数の第2溝状部22のそれぞれは、第1端20aから第2端20bにかけて、車両外側Voから車両内側Viに傾斜している。したがって、複数の第1溝状部21及び複数の第2溝状部22は、互いに同一方向に傾斜している。
【0099】
第1溝状部21のタイヤ軸方向に対する角度θb1の絶対値と、第2溝状部22のタイヤ軸方向に対する角度θb2の絶対値とは、10~30°に設定されるのが好ましい。なお、角度θb1、θb2の絶対値が10~30°であるか否かについては、正規状態で特定されるものとする。これらの角度θb1、θb2の絶対値が30°以下に設定されることで、センター陸部11の剛性が維持されて、操縦安定性能及び制動性能が向上する。一方、角度θb1、θb2の絶対値が10°以上に設定されることで、エッジ成分が大きく形成され、ウェット性能が向上する。このような観点より、角度θb1、θb2の絶対値は、好ましくは25°以下であり、また、好ましくは15°以上である。
【0100】
上述したように、外側ミドル陸部12oには、複数の第4溝状部24と、複数の第5溝状部25とが形成されている。複数の第4溝状部24は、第1端20aが外側ミドル陸部12oで終端しており、かつ、第2端20bが外側センター周方向溝7o(
図1に示す)に連通している。一方、複数の第5溝状部25は、第1端20aが外側ミドル陸部12oで終端しており、かつ、第2端20bが外側ショルダー周方向溝8o(
図1に示す)に連通している。このように、第4溝状部24及び第5溝状部25は、第1端20a及び第2端20bの少なくとも一方が、外側ミドル陸部12o内で終端することで、旋回走行時において接地圧が相対的に高くなる外側ミドル陸部12oの剛性低下が最小限に抑えられる。したがって、操縦安定性能が向上する。
【0101】
各第4溝状部24の第1端20aと、各第5溝状部25の第1端20aとは、タイヤ軸方向で離間しているのが好ましい。これにより、旋回走行時において接地圧が相対的に大きくなる外側ミドル陸部12oの剛性低下が抑制されるため、操縦安定性能が向上する。また、各第4溝状部24のタイヤ軸方向の長さL2dと、各第5溝状部25のタイヤ軸方向の長さL2eとが同一とされてもよい。これにより、旋回走行時において接地圧が相対的に大きくなる外側ミドル陸部12oのタイヤ軸方向両側において、第4溝状部24及び第5溝状部25による同一の長さのエッジ成分が、タイヤ周方向に満遍なく形成されるため、ウェット性能が向上する。
【0102】
第4溝状部24及び第5溝状部25は、外側ミドル陸部12oにおいて、タイヤ周方向に交互に配置されていてもよい。これにより、外側ミドル陸部12oのタイヤ軸方向の両側において、エッジ成分をタイヤ周方向に満遍なく形成されるため、ウェット性能が向上する。
【0103】
複数の第4溝状部24のそれぞれは、第1端20aから第2端20bにかけて、車両外側Voから車両内側Viに傾斜している。したがって、複数の第4溝状部24は、複数の第1溝状部21及び複数の第2溝状部22と同一方向に傾斜している。一方、複数の第5溝状部25のそれぞれは、第1端20aから第2端20bにかけて、車両内側Viから車両外側Voに傾斜している。したがって、複数の第4溝状部24及び複数の第5溝状部25は、互いに逆方向に傾斜している。これらの第4溝状部24及び第5溝状部25により、外側ミドル陸部12oのタイヤ軸方向の両側において、異なる方向のエッジ成分が形成されるため、ウェット性能が向上する。
【0104】
第4溝状部24のタイヤ軸方向に対する角度θb4の絶対値は、10~30°に設定されるのが好ましい。なお、角度θb4の絶対値が10~30°であるか否かは、正規状態で特定されるものとする。角度θb4の絶対値が30°以下に設定されることで、直進走行時及び旋回走行時の双方で接地圧が大きくなる外側ミドル陸部12oの剛性が維持され、操縦安定性能が向上する。一方、角度θb4が10°以上に設定されることで、エッジ成分が大きく形成され、ウェット性能が向上する。このような観点より、角度θb4の絶対値は、好ましくは25°以下であり、また、好ましくは15°以上である。
【0105】
第5溝状部25のタイヤ軸方向に対する角度θb5の絶対値は、第4溝状部24の角度θb4の絶対値よりも小さいのが好ましい。なお、角度θb5の絶対値は、正規状態で特定されるものとする。角度θb5の絶対値が、角度θb4の絶対値よりも小さくされることにより、外側ミドル陸部12oにおいて、旋回走行時の接地圧が相対的に大きくなる車両外側Voの部分の剛性が大きくなるため、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性能が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、第5溝状部25の角度θb5の絶対値は、5~25°に設定されるのが好ましい。
【0106】
内側ミドル陸部12iにおいて、複数の溝状部20の少なくとも1つ(本例では、第3溝状部23)は、第1端20a及び第2端20bの双方が、
図1に示した周方向溝5のいずれか(内側センター周方向溝7i及び内側ショルダー周方向溝8i)に連通してもよい。これにより、内側ミドル陸部12iをタイヤ軸方向に横断する連続したエッジ成分が形成されるため、ウェット性能が向上する。さらに、内側ミドル陸部12iは、センター陸部11及び外側ミドル陸部12oに比べて、旋回走行時の接地圧が相対的に小さい傾向がある。このような内側ミドル陸部12iに、周方向溝5に連通する複数の溝状部20が設けられたとしても、操縦安定性能が維持されうる。
【0107】
第3溝状部23は、第1溝状部21と、タイヤ周方向に交互に配置されてもよい。これにより、内側センター周方向溝7i(
図1に示す)を挟んで隣り合う内側ミドル陸部12i及びセンター陸部11において、第3溝状部23及び第1溝状部21によるエッジ成分が、タイヤ周方向に満遍なく形成されるため、ウェット性能が向上する。
【0108】
複数の第3溝状部23は、第1端20aから第2端20bにかけて、車両内側Viから車両外側Voに傾斜している。したがって、複数の第3溝状部23は、複数の第1溝状部21及び複数の第2溝状部22とは逆方向に傾斜している。このような複数の第3溝状部23により、内側ミドル陸部12iでは、センター陸部11とは異なる方向のエッジ成分が形成されるため、ウェット性能が向上する。
【0109】
第3溝状部23のタイヤ軸方向に対する角度θb3の絶対値は、20~40°に設定されるのが好ましい。なお、角度θb3の絶対値は、正規状態で特定されるものとする。角度θb3の絶対値が20°以上に設定されることで、センター陸部11に比べると旋回走行時の接地圧が相対的に小さい内側ミドル陸部12iにおいて、大きなエッジ成分が形成されうる。これにより、操縦安定性を維持しつつ、ウェット性能が向上する。一方、角度θb3が40°以下に設定されることで、内側ミドル陸部12iの剛性が必要以上に小さくなるのが抑制されるため、操縦安定性能が向上する。このような観点より、角度θb3の絶対値は、好ましくは25°以上であり、また、好ましくは35°以下である。
【0110】
また、複数の溝状部20の少なくとも1つは、面取り部29を有していてもよい。
図6は、
図2のA-A断面図である。面取り部29は、踏面(接地面)4と溝状部20の壁面20wとで形成される稜角42(二点鎖線で示す)が、切除された傾斜面として形成される。面取り部29は、例えば、特許文献(特開2023-134124号公報)の記載に基づいて設定されうる。
【0111】
面取り部29は、旋回走行時(横力負荷時)や直進走行時(前後力負荷時)において、陸部6に大きな荷重が作用した際に、溝状部20のエッジに接地圧が集中するのが抑制されうる。これにより、陸部6に作用する接地圧が均一化されて、操縦安定性能及び制動性能が向上する。
【0112】
図2に示されるように、本実施形態の面取り部29は、第2溝状部22に設けられる。このような面取り部29により、旋回走行時において、第2溝状部22のエッジに接地圧が集中するのが抑制され、操縦安定性能が向上する。また、面取り部29は、第2溝状部22の長手方向と直交する幅が、第2溝状部22の第1端20aから第2端20bに向かって漸減していてもよい。このような面取り部29により、センター陸部11の偏摩耗が抑制されうる。
【0113】
本実施形態の面取り部29は、第3溝状部23に設けられる。このような面取り部29により、内側ミドル陸部12iをタイヤ軸方向に完全に横断する第3溝状部23のエッジにおいて、接地圧が集中するのが抑制される。これにより、操縦安定性能及び制動性能が向上する。
【0114】
さらに、面取り部29は、第3溝状部23の長手方向の全範囲に亘って形成されており、第3溝状部23の長手方向(溝中心線20c)と直交する幅が、第3溝状部23の第1端20a及び第2端20bに向かって漸増しているのが好ましい。このような面取り部29により、第1端20a及び第2端20b側において接地圧が集中するのが抑制され、内側ミドル陸部12iの偏摩耗が抑制されうる。
【0115】
本実施形態の面取り部29は、第4溝状部24に設けられる。このような面取り部29により、直進走行時において、第4溝状部24のエッジに接地圧が集中するのが抑制され、制動性能が向上する。また、面取り部29は、第4溝状部24の長手方向と直交する幅が、第4溝状部24の第2端20bから第1端20aに向かって漸減していてもよい。このような面取り部29により、外側ミドル陸部12oの偏摩耗が抑制されうる。
【0116】
図1に示されるように、本実施形態の内側ショルダー陸部13iには、複数の第6溝状部26が形成されている。この第6溝状部26は、第1端20aが内側トレッド端3iに連通しており、第2端20bが内側ショルダー周方向溝8iに連通している。これにより、第6溝状部26は、内側ショルダー陸部13iの広範囲に亘って、連続したエッジ成分が形成され、ウェット性能が向上する。
【0117】
複数の第6溝状部26は、第1端20aから第2端20bにかけて、車両内側Viから車両外側Voに傾斜しており、タイヤ軸方向に対する角度θb6の絶対値が漸増している。これにより、内側ショルダー陸部13iのタイヤ軸方向の剛性変化を緩やかになり、操縦安定性が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、角度θb6の絶対値は、0~15°に設定されるのが好ましい。
【0118】
本実施形態の外側ショルダー陸部13oには、複数の第7溝状部27が形成されている。この第7溝状部27は、第1端20aが外側ショルダー周方向溝8oに連通しており、第2端20bが外側トレッド端3oに連通している。これにより、第7溝状部27は、外側ショルダー陸部13oの広範囲に亘って、連続したエッジ成分が形成され、ウェット性能が向上する。
【0119】
複数の第7溝状部27は、第1端20aから第2端20bにかけて、車両内側Viから車両外側Voに傾斜しており、タイヤ軸方向に対する角度θb7の絶対値が漸増している。これにより、外側ショルダー陸部13oのタイヤ軸方向の剛性変化を緩やかになり、操縦安定性が向上する。このような作用を効果的に発揮させるために、角度θb7の絶対値は、0~15°に設定されるのが好ましい。
【0120】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0121】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0122】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝で区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部のそれぞれには、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数の溝状部が形成されており、
前記複数の溝状部のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側の第1端と、タイヤ周方向の他方側の第2端とを有し、
前記複数の溝状部は、タイヤ周方向の1周に亘って、予め定められた配列規則に基づいて配置されており、
前記配列規則では、前記複数の溝状部のうち、タイヤ周方向で隣接する溝状部の全てのペアのそれぞれについて、前記ペアの一方の溝状部の前記第1端と、前記ペアの他方の溝状部の前記第2端とが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、
前記ペアを構成する溝状部は、同一の陸部、又は、互いに異なる陸部に形成されており、
前記タイヤを正規リムに正規内圧でリム組みし、かつ、正規荷重の70%を負荷してキャンバー角を0度として平面に接地させた70%荷重負荷状態において、前記複数の陸部のうち少なくとも1つの陸部のタイヤ周方向両側の接地端縁は、タイヤ軸方向に対して角度θaを備えており、
前記角度θaと、前記少なくとも1つの陸部に形成された溝状部のタイヤ軸方向に対する角度θbとの差の絶対値が、5度以上である、
タイヤ。
[本発明2]
前記ペアを構成する溝状部は、互いに異なる陸部に形成されている、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記複数の陸部は、センター陸部と、一対のミドル陸部とからなり、これらの陸部の全てにおいて、前記絶対値が5度以上である、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記70%荷重負荷状態での前記トレッド部の接地面は、タイヤ周方向の最大接地長Lと、タイヤ赤道を中心としかつタイヤ軸方向の最大接地幅Wの60%以下の範囲内でのタイヤ周方向の接地長Lmとの比L/Lmが、下記の式(1)を満たす、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
1.00<L/Lm<1.10 …(1)
[本発明5]
全ての前記溝状部のタイヤ軸方向に対する平均角度が10~50度である、本発明1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明6]
前記トレッド部は、模様構成単位を構成する1ピッチ領域がタイヤ周方向に並べられたトレッドパターンを有し、
前記複数の陸部のそれぞれにおいて、前記1ピッチ領域に形成されている前記溝状部のタイヤ軸方向の長さの合計は、前記陸部のタイヤ軸方向の幅の60%~120%である、本発明1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明7]
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されており、
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されるセンター陸部と、車両装着時において前記センター陸部に対して車両外側に配される外側ミドル陸部と、を含み、
前記センター陸部及び前記外側ミドル陸部のそれぞれにおいて、前記複数の溝状部の少なくとも1つは、前記第1端及び前記第2端の少なくとも一方が陸部内で終端している、本発明1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明8]
前記複数の陸部は、車両装着時において前記センター陸部に対して車両内側に配される内側ミドル陸部をさらに含み、
前記内側ミドル陸部において、前記複数の溝状部の少なくとも1つは、前記第1端及び前記第2端の双方が前記周方向溝のいずれかに連通している、本発明7に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記センター陸部、前記外側ミドル陸部及び前記内側ミドル陸部のそれぞれのタイヤ軸方向の幅の合計は、前記70%荷重負荷状態の接地面のタイヤ軸方向の最大接地幅の35%~60%である、本発明8に記載のタイヤ。
[本発明10]
前記複数の溝状部は、幅が2mm以下のサイプ本体部を含む、本発明1ないし9のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明11]
前記複数の溝状部の少なくとも1つは、面取り部を有する、本発明1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明12]
前記複数の周方向溝は、タイヤ赤道側に配置された少なくとも1つのセンター周方向溝を含み、
前記センター周方向溝の溝底部には、タイヤ半径方向に突出する少なくとも1つの突起部が形成される、本発明1ないし11のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明13]
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されており、
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されるセンター陸部と、車両装着時において前記センター陸部に対して車両外側に配される外側ミドル陸部と、車両装着時において前記センター陸部に対して車両内側に配される内側ミドル陸部と、を含み、
前記内側ミドル陸部の前記角度θaと前記内側ミドル陸部に形成された溝状部の前記角度θbとの差の絶対値は、前記外側ミドル陸部の前記角度θaと前記外側ミドル陸部に形成された溝状部の前記角度θbとの差の絶対値以上である、本発明1ないし12のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0123】
1 タイヤ
2 トレッド部
5 周方向溝
6 陸部
20 溝状部
【要約】
【課題】 ピッチノイズを低減することが可能なタイヤを提供する。
【解決手段】 複数の周方向溝5と複数の陸部6とを含むトレッド部2を有するタイヤ1である。複数の陸部6のそれぞれには、複数の溝状部20が形成されており、タイヤ周方向の一方側の第1端と、タイヤ周方向の他方側の第2端とを有する。複数の溝状部20の配列規則では、タイヤ周方向で隣接する溝状部20の全てのペアのそれぞれについて、ペアの一方の溝状部20の第1端と、ペアの他方の溝状部20の第2端とが、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、同一の陸部6、又は、互いに異なる陸部6に形成されている。70%荷重負荷状態の少なくとも1つの陸部6において、タイヤ周方向両側の接地端縁のタイヤ軸方向に対する角度θaと、溝状部20のタイヤ軸方向に対する角度θbとの差の絶対値が、5度以上である。
【選択図】
図1