(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】路面標示劣化分析装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20250527BHJP
E01F 9/50 20160101ALI20250527BHJP
【FI】
E01C23/01
E01F9/50
(21)【出願番号】P 2024504039
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008588
(87)【国際公開番号】W WO2023166555
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】久喜 正規
(72)【発明者】
【氏名】知久 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】福士 直子
(72)【発明者】
【氏名】山田 修栄
(72)【発明者】
【氏名】水口 修平
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-170314(JP,A)
【文献】特開2017-020303(JP,A)
【文献】特開2019-023794(JP,A)
【文献】特開2014-013454(JP,A)
【文献】特開2019-028939(JP,A)
【文献】中国実用新案第211848793(CN,U)
【文献】特表2015-513014(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
E01F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知する路面標示検出手段と、
前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出する途切れ検出手段と、
前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、
前記道路の清掃情報、及び前記道路において前記路面標示がいつ整備されたかを示す情報を含む整備情報の少なくとも1つを用いて、前記路面標示が途切れている要因を判定する要因判定手段とを備える路面標示劣化分析装置。
【請求項2】
前記要因判定手段は、前記路面標示が途切れている要因が、前記路面標示の劣化であるか、又は前記路面標示の汚れであるかを判定する、請求項1に記載の路面標示劣化分析装置。
【請求項3】
前記要因判定手段は、前記センサ情報に基づいて前記要因を判定する、請求項1又は2に記載の路面標示劣化分析装置。
【請求項4】
前記要因判定手段は、前記道路の清掃情報を用いて前記要因を判定し、
前記要因判定手段は、前記センサ情報が取得された日付と、前記道路が清掃された日付とを比較し、該比較の結果に基づいて前記要因を判定する、請求項
1から3の何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【請求項5】
前記要因判定手段は、前記路面標示の整備情報を用いて前記要因を判定し、
前記要因判定手段は、前記センサ情報が取得された日付と、前記路面標示が整備された日付とを比較し、該比較の結果に基づいて前記要因を判定する、請求項
1から4の何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【請求項6】
前記要因判定手段は、前記道路の路面状態を示す路面状態情報を用いて前記要因を判定する、請求項1から
5何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【請求項7】
前記要因判定手段は、ごみ収集日に関する情報、及び季節の少なくとも1つを用いて前記要因を判定する、請求項1から
6の何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【請求項8】
道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知し、
前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出し、
前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、
前記道路の清掃情報、及び前記道路において前記路面標示がいつ整備されたかを示す情報を含む整備情報の少なくとも1つを用いて、前記路面標示が途切れている要因を判定することを有する路面標示劣化分析方法。
【請求項9】
道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知し、
前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出し、
前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、
前記道路の清掃情報、及び前記道路において前記路面標示がいつ整備されたかを示す情報を含む整備情報の少なくとも1つを用いて、前記路面標示が途切れている要因を判定することを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路面標示劣化分析装置、方法、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、特許文献1は、道路標示体劣化検出装置を開示する。道路標示体劣化検出装置は、カメラから、横断歩道が斜め上方から撮影されたカメラ画像を取得する。道路標示体劣化検出装置は、取得したカメラ画像から、横断歩道の領域をトリミングする。道路標示体劣化検出装置は、トリミングされた横断歩道の領域の画像を、ホモグラフィ変換を用いて俯瞰図状に補正する。道路標示体劣化検出装置は、補正された俯瞰図状の補正画像から横断歩道における白線の剥離率を計算し、横断歩道において白線領域が劣化しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、白線の領域における「白」と「黒」との割合に応じて白線の剥離率が計算され、剥離率が高い場合に、白線が劣化していると判定される。しかしながら、特許文献1では、実際には白線が劣化していない場合も、画像において「黒」の割合が多い場は白線が劣化していると判定される。この場合、道路管理者などのユーザは、特許文献1に記載の道路標示体劣化検出装置から、誤った判定結果を受け取る可能性があり、誤った判定結果に基づいて、道路の保守計画や管理計画を立案する場合がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑み、道路管理者などのユーザに、道路の保守や管理に有用な情報を提供できる路面標示劣化分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、第1の態様として、路面標示劣化分析装置を提供する。路面標示劣化分析装置は、道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知する路面標示検出手段と、前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出する途切れ検出手段と、前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、前記路面標示が途切れている要因を判定する要因判定手段とを含む。
【0007】
本開示は、第2の態様として、路面標示劣化分析方法を提供する。路面標示劣化分析方法は、道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知し、前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出し、前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、前記路面標示が途切れている要因を判定することを含む。
【0008】
本開示は、第3の態様として、コンピュータ可読媒体を提供する。コンピュータ可読媒体は、道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知し、前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出し、前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、前記路面標示が途切れている要因を判定することを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る路面標示劣化分析装置、方法、及びコンピュータ可読媒体は、道路管理者などのユーザに、道路の保守や管理に有用な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る路面標示劣化分析装置の概略的な構成を示すブロック図。
【
図2】本開示の一実施形態に係る路面標示劣化分析装置を含む路面標示劣化分析システムを示すブロック図。
【
図3】路面標示劣化分析装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】区画線がかすれて劣化している場合のカメラ画像の例を示す模式図。
【
図5】区画線が落ち葉で覆われている場合のカメラ画像の例を示す模式図。
【
図6】路面標示劣化分析装置における動作手順を示すフローチャート。
【
図7】コンピュータ装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態の説明に先立って、本開示の概要を説明する。
図1は、本開示に係る路面標示劣化分析装置の概略的な構成を示す。路面標示劣化分析装置10は、路面標示検出手段11、途切れ検出手段12、及び要因判定手段13を有する。
【0012】
路面標示検出手段11は、道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知する。途切れ検出手段12は、路面標示の検出結果に基づいて、路面標示が途切れている箇所を検出する。ここで、路面標示が途切れているとは、例えば、本来であれば路面標示(そのペイントなど)が施されているべき箇所において、路面標示の存在がセンサ情報において確認できない箇所を指す。要因判定手段13は、路面標示が途切れていることが検出された箇所について、路面標示が途切れている要因を判定する。
【0013】
本開示において、路面標示劣化分析装置は、単に路面標示が途切れている箇所を路面標示が劣化している箇所として検出するのではなく、その要因を判定する。道路管理者などのユーザは、路面標示が途切れている要因を参照し、要因に応じて、道路の保守や管理の計画を立案することができる。このように、本開示に係る路面標示劣化分析装置は、道路管理者などのユーザに、道路の保守及び管理に有用な情報を提供できる。
【0014】
以下、本開示の実施の形態を詳細に説明する。
図2は、本開示の一実施形態に係る路面標示劣化分析装置を含む路面標示劣化分析システムを示す。路面標示劣化分析システム100は、路面標示劣化分析装置110、及び1以上の移動体200を含む。路面標示劣化分析装置110は、ネットワーク150を介して、1以上の移動体200と接続される。ネットワーク150は、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの通信回線規格を用いた無線通信網を含む。ネットワーク150は、WiFi(登録商標)又は第5世代移動通信システムなどの無線通信網を含んでいてもよい。
【0015】
移動体200は、例えば自動車、バス、タクシー、又はトラックなどの道路を走行する陸上車両として構成される。移動体200は、公用車、ごみ収集車、又は警察車両などの車両であってもよい。移動体200は、移動体の周辺状況を監視するための周辺監視センサを含む。周辺監視センサは、例えばカメラ、及びLiDAR(Light Detection and Ranging)などのセンサを含む。移動体200は、移動体に搭載されるセンサの情報に基づいて自動運転(自律運転)が可能に構成されていてもよい。
【0016】
移動体200には通信装置が搭載されており、通信装置は、周辺監視センサのセンサデータ(センサ情報)を路面標示劣化分析装置110に送信する。例えば、移動体200は、カメラが撮影したカメラ画像、LiDARが取得した3次元点群データ、又はそれら双方を、センサデータとして路面標示劣化分析装置110に送信する。以下では、主に、移動体200がカメラを有し、カメラ画像を路面標示劣化分析装置110に送信する例を説明する。各移動体200は、車両の前方、後方、右側方、及び左側方を撮影する複数のカメラを含んでいてもよい。
【0017】
路面標示劣化分析装置110は、移動体200から送信されるセンサデータを用いて、道路における路面標示の劣化を分析する。
図3は、路面標示劣化分析装置110の構成例を示す。路面標示劣化分析装置110は、データ取得部111、路面標示検出部112、途切れ検出部113、及び要因判定部114を有する。路面標示劣化分析装置110は、例えば1以上のメモリと1以上のプロセッサとを有するコンピュータ装置として構成される。路面標示劣化分析装置110内の各部の機能の少なくとも一部は、プロセッサが、メモリから読み出したプログラムに従って動作することで実現され得る。路面標示劣化分析装置110は、
図1に示される路面標示劣化分析装置10に対応する。
【0018】
データ取得部111は、カメラ210からカメラ画像を取得する。カメラ210は、移動体200(
図2を参照)に搭載される。本実施形態において、カメラ210は、道路を撮影したカメラ画像を路面標示劣化分析装置110に送信すればよく、必ずしも移動体200に搭載される必要はない。カメラ210は、信号機、又は路側機に設置されていてもよい。データ取得部111は、カメラ画像に代えて、又は加えて、LiDARなどの3Dスキャナから、道路の領域のデータを含む3次元点群データ(LiDAR画像)を取得してもよい。
【0019】
路面標示検出部112は、カメラ210のカメラ画像から、道路上の路面標示(その領域)を検出する。路面標示検出部112は、例えば道路上の区画線を検出する。区画線は、カメラ画像において、例えば所定の色(例えば白色)のペイントが施された領域を探すことで検出できる。路面標示検出部112は、
図1に示される路面標示検出手段11に対応する。
【0020】
途切れ検出部113は、カメラ画像に基づいて、路面標示検出部112が検出した区画線において、区画線が途切れている箇所を検出する。別の言い方をすると、途切れ検出部113は、区画線において、見かけ上、劣化が生じている箇所を検出する。途切れ検出部113は、例えば、カメラ画像において区画線が途切れている箇所、すなわち本来区画線があるべき位置に区画線がない箇所を、劣化が生じている箇所として検出する。途切れ検出部113は、過去のデータと比較することによって、区画線が途切れている箇所を判断してもよい。ここで、過去のデータとは、カメラ画像が取得された時点よりも前に得られていたデータを意味する。過去データは、例えば、道路における工事の施工記録、道路の点検データ、及び過去における路面標示の検出結果の少なくとも1つを含む。途切れ検出部113は、例えば、路面標示検出部112が検出した区画線と、工事の施工台帳(施工記録)や過去の点検データとを照合し、区画線が途切れている箇所を判断する。工事の施工台帳や過去の点検データは、例えば道路管理者が有するデータベースから取得されてもよい。途切れ検出部113は、路面標示検出部112における区画線の検出結果と、路面標示検出部112が過去に検出した区画線の検出結果とを照合することで、区画線が途切れている箇所を判断してもよい。途切れ検出部113が検出した劣化が生じている箇所は、実際に路面標示に劣化が生じている箇所、及びカメラ画像においては劣化が生じているように見えるが、実際には劣化は生じていない箇所を含み得る。途切れ検出部113は、
図1に示される途切れ検出手段12に対応する。
【0021】
要因判定部114は、途切れ検出部113が検出した路面標示が途切れている箇所について、その要因を判定する。要因判定部114は、例えば、路面標示が途切れている要因が、路面標示の劣化であるか、又は路面標示の汚れであるかを判定する。例えば、要因判定部114は、例えばカメラ画像において区画線が見えていない場合に、区画線が見えない要因を判定する。具体的には、要因判定部114は、区画線がカメラ画像において見えていないだけであるのか、或いは区画線がかすれて見えなくなっているのかを判定する。要因判定部114は、例えばカメラ画像に基づいて、路面標示が途切れている要因を判定してもよい。
【0022】
要因判定部114は、路面標示が途切れている箇所を示す情報と、その箇所における判定の結果とを出力する。要因判定部114は、例えば表示装置の画面上に、区画線が途切れていることが検出された箇所と、その箇所における途切れの要因とを表示する。要因判定部114は、
図1に示される要因判定手段13に対応する。
【0023】
路面標示が途切れている要因の判定には、各種の情報が使用され得る。要因判定部114は、例えば、道路における清掃情報を取得し、取得した清掃情報を用いて要因を判定してもよい。清掃情報は、例えば、道路の清掃がいつ行われたかを示す情報、すなわち清掃日を示す情報を含む。要因判定部114は、カメラ画像の取得日と、清掃日とを比較し、比較結果に基づいて途切れの要因を判定してもよい。要因判定部114は、例えば、カメラ画像の取得日と清掃日との差分、すなわち直近の清掃日からの経過日数に応じて、路面標示が途切れている要因を判定する。
【0024】
例えば、カメラ画像の取得日が清掃日の直後である場合、区画線に落ち葉や他の付着物が付いている可能性は低いと考えられる。その場合、要因判定部114は、カメラ画像において区画線が途切れ、途切れ検出部113において区画線が途切れていることが検出されたのは、実際に区画線がかすれるなどして劣化しているためであると判定する。逆に直近の清掃日からの経過日数が一定以上の場合、路面が落ち葉やごみなどで汚れ、区画線がカメラ画像において途切れていると考えられる。その場合、要因判定部114は、途切れ検出部113において区画線が途切れていることが検出されたのは、区画線が落ち葉やごみで覆われているためであると判定する。
【0025】
図4は、区画線がかすれて劣化している場合のカメラ画像の例を示す。
図4の例では、道路中央の区画線の一部において、ペイントがかすれている。途切れ検出部113は、カメラ画像において、区画線が途切れている箇所を、劣化箇所として検出する。要因判定部114は、例えば、カメラ画像が清掃日の直後に撮影されたカメラ画像である場合、区画線が実際に劣化していると判定する。
【0026】
図5は、区画線が落ち葉で覆われている場合のカメラ画像の例を示す。
図5の例では、道路中央の区画線の一部において、ペイントが落ち葉で覆われている。この場合、途切れ検出部113は、カメラ画像において、区画線が途切れている箇所を、劣化箇所として検出する。要因判定部114は、例えば、カメラ画像が清掃日から所定日数後に撮影されたカメラ画像である場合、区画線は実際には劣化しておらず、区画線が汚れていると判定する。
【0027】
要因判定部114は、カメラ画像に基づいて道路上の落ち葉やごみなどの有無を判別し、道路上に落ち葉やごみがない場合、区画線が実際に劣化していると判定してもよい。要因判定部114は、道路上に落ち葉やごみがある場合は、区画線が汚れていると判定してもよい。
【0028】
要因判定部114は、道路における路面標示の整備状況を示す整備情報を取得し、取得した整備情報を用いて、路面標示が途切れている要因を判定してもよい。整備情報は、路面標示がいつ整備されたかを示す情報を含む。整備情報は、例えば道路管理者において管理されるデータベースから取得され得る。要因判定部114は、カメラ画像が取得された日と、路面標示が整備された日とを比較し、比較の結果に基づいて要因を判定する。例えば、要因判定部114は、カメラ画像の取得日が、路面標示が最後に整備された日から所定日数以上経過している場合、路面標示が劣化していると判定する。要因判定部114は、カメラ画像の取得日が、路面標示が最後に整備された日から所定日数以上経過していない場合、路面標示が汚れていると判定する。
【0029】
要因判定部114は、道路の路面状態(路面状況)を示す路面状態情報を取得し、取得した路面状態情報を用いて、路面標示が途切れている要因を判定してもよい。路面状態情報は、例えば道路管理者において管理されるデータベースから取得できる。路面状態情報は、例えば路面におけるひび割れの有無、又はポットホールの有無などを示す情報を含む。要因判定部114は、例えばカメラ画像が取得された地点から所定距離範囲内の路面状態に基づいて、道路標示が途切れている要因を判定する。要因判定部114は、例えば、カメラ画像が撮影された地点、及びその地点から所定距離以内の範囲において、路面が劣化している箇所が多いか否かを判断する。要因判定部114は、路面が劣化している箇所が多いと判断した場合、区画線が実際に劣化していると判定してもよい。要因判定部114は、路面が劣化している箇所が少ないと判断した場合、区画線が汚れていると判定してもよい。
【0030】
要因判定部114は、カメラ画像が取得された日付を考慮し、路面標示が途切れている要因を判定してもよい。例えば、要因判定部114は、カメラ画像が取得された日付から、季節を判断する。要因判定部114は、季節が落ち葉が多い季節、例えば秋である場合、区画線が汚れていると判定してもよい。
【0031】
また、要因判定部114は、ごみ収集日に関連する情報を取得し、取得したごみ収集日に関する情報を用いて路面標示が途切れている要因を判定してもよい。要因判定部114は、例えばごみ収集の日時を取得する。ごみ収集日に関する情報は、例えば、ごみ収集を行う自治体などから取得され得る。要因判定部114は、カメラ画像が、ごみ収集の前のカメラ画像であるか、或いはごみ収集の後のカメラ画像であるかを判断する。要因判定部114は、カメラ画像が取得された日付がごみ収集日の当日であるか否か、及びカメラ画像が取得された時間がごみ収集の前である、又は後であるかを判断する。カメラ画像がごみ収集日で、かつごみ収集の前に撮影された画像である場合、カラスなどがごみ収集場所を荒らし、道路にごみが散乱している可能性がある。要因判定部114は、カメラ画像が、ごみ収集日で、かつごみ収集の前に撮影された画像である場合、区画線が汚れていると判定してもよい。要因判定部114は、カメラ画像が、ごみ収集日ではない、或いはごみ収集の後に撮影された画像である場合、区画線が劣化していると判定してもよい。
【0032】
要因判定部114は、データ取得部111においてLiDAR画像(3次元点群データ)が取得されている場合、3次元点群データを用いて、路面標示が途切れている要因を判定してもよい。例えば、要因判定部114は、道路路面に対する白線部分の厚みを検出する。要因判定部114は、白線部分の厚みが所定値より薄い場合、路面標示が劣化してかすれていると判定する。要因判定部114は、3次元点群データに基づいて、路面標示に付着している付着物を検知してもよい。要因判定部114は、例えば、路面から付着物の分だけ盛り上がっている箇所を検知する。要因判定部114は、路面標示が途切れている箇所に付着物がある場合は、路面標示が汚れていると判定する。
【0033】
以下、動作手順を説明する。
図6は、路面標示劣化分析装置110における動作手順(路面標示劣化分析方法)を示す。データ取得部111は、カメラ210からセンサ情報(カメラ画像)を取得する(ステップS1)。路面標示検出部112は、カメラ画像から、路面標示を検出する(ステップS2)。路面標示検出部112は、ステップS2では、例えば道路上の区画線を検出する。
【0034】
途切れ検出部113は、路面標示が途切れている箇所を検出する(ステップS3)。要因判定部114は、路面標示が途切れているか否かを判断する(ステップS4)。要因判定部114は、路面標示が途切れていると判断した場合、路面標示が途切れている要因を判定する(ステップS5)。要因判定部114は、ステップS5では、例えば区画線が途切れている箇所について、区画線が劣化しているか、或いは区画線が汚れているかを判定する。要因判定部114は、複数の情報を使用して、区画線が途切れている要因を判定してもよい。要因判定部114は、例えば、カメラ画像、LiDAR画像、道路の清掃情報、路面標示の整備情報、路面状態情報、及びごみ収集日に関する情報のうち、2以上の情報の組み合わせに基づいて、区画線が途切れている要因を判定してもよい。
【0035】
本実施形態では、途切れ検出部113は、カメラ画像から路面標示が途切れている箇所を検出する。要因判定部114は、路面標示が途切れている箇所について、路面標示が途切れている要因を判定する。例えば、路面標示が劣化しているために路面標示が途切れている場合、路面標示を整備し直す必要があると考えられる。一方、路面標示が汚れている場合は、道路を清掃するだけでよく、路面標示を整備し直す必要はない。路面標示がかすれて実際に劣化しているのか、或いは汚れているだけであるのかを判定することは、道路管理において重要であると考えられる。本実施形態では、路面標示の途切れが検出される場合に、路面標示が途切れている要因が判定される。このため、本実施形態に係る路面標示劣化分析装置110は、道路管理に有用な情報を、道路管理者などのユーザに提供することができる。
【0036】
本開示において、路面標示劣化分析装置110は、コンピュータ装置(サーバ装置)として構成され得る。
図7は、路面標示劣化分析装置110として用いられ得るコンピュータ装置の構成例を示す。コンピュータ装置500は、制御部(CPU:Central Processing Unit)510、記憶部520、ROM(Read Only Memory)530、RAM(Random Access Memory)540、通信インタフェース(IF:Interface)550、及びユーザインタフェース560を有する。
【0037】
通信インタフェース550は、有線通信手段又は無線通信手段などを介して、コンピュータ装置500と通信ネットワークとを接続するためのインタフェースである。ユーザインタフェース560は、例えばディスプレイなどの表示部を含む。また、ユーザインタフェース560は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力部を含む。
【0038】
記憶部520は、各種のデータを保持できる補助記憶装置である。記憶部520は、必ずしもコンピュータ装置500の一部である必要はなく、外部記憶装置であってもよいし、ネットワークを介してコンピュータ装置500に接続されたクラウドストレージであってもよい。
【0039】
ROM530は、不揮発性の記憶装置である。ROM530には、例えば比較的容量が少ないフラッシュメモリなどの半導体記憶装置が用いられる。CPU510が実行するプログラムは、記憶部520又はROM530に格納され得る。記憶部520又はROM530は、例えば路面標示劣化分析装置110内の各部の機能を実現するための各種プログラムを記憶する。
【0040】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、Compact Disc (CD)、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0041】
RAM540は、揮発性の記憶装置である。RAM540には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)などの各種半導体メモリデバイスが用いられる。RAM540は、データなどを一時的に格納する内部バッファとして用いられ得る。CPU510は、記憶部520又はROM530に格納されたプログラムをRAM540に展開し、実行する。CPU510がプログラムを実行することで、路面標示劣化分析装置110内の各部の機能が実現され得る。CPU510は、データなどを一時的に格納できる内部バッファを有してもよい。
【0042】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【0043】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0044】
[付記1]
道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知する路面標示検出手段と、
前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出する途切れ検出手段と、
前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、前記路面標示が途切れている要因を判定する要因判定手段とを備える路面標示劣化分析装置。
【0045】
[付記2]
前記要因判定手段は、前記路面標示が途切れている要因が、前記路面標示の劣化であるか、又は前記路面標示の汚れであるかを判定する、付記1に記載の路面標示劣化分析装置。
【0046】
[付記3]
前記要因判定手段は、前記センサ情報に基づいて前記要因を判定する、付記1又は2に記載の路面標示劣化分析装置。
【0047】
[付記4]
前記要因判定手段は、前記道路の清掃情報、及び前記道路における前記路面標示の整備情報の少なくとも1つを用いて前記要因を判定する、付記1から3何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【0048】
[付記5]
前記要因判定手段は、前記道路の清掃情報を用いて前記要因を判定し、
前記要因判定手段は、前記センサ情報が取得された日付と、前記道路が清掃された日付とを比較し、該比較の結果に基づいて前記要因を判定する、付記4に記載の路面標示劣化分析装置。
【0049】
[付記6]
前記要因判定手段は、前記路面標示の整備情報を用いて前記要因を判定し、
前記要因判定手段は、前記センサ情報が取得された日付と、前記路面標示が整備された日付とを比較し、該比較の結果に基づいて前記要因を判定する、付記4又は5に記載の路面標示劣化分析装置。
【0050】
[付記7]
前記要因判定手段は、前記道路の路面状態を示す路面状態情報を用いて前記要因を判定する、付記1から6何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【0051】
[付記8]
前記要因判定手段は、前記センサ情報が取得された地点から所定距離範囲内の前記路面状態に基づいて前記要因を判定する、付記7に記載の路面標示劣化分析装置。
【0052】
[付記9]
前記要因判定手段は、ごみ収集日に関する情報、及び季節の少なくとも1つを用いて前記要因を判定する、付記1から8何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【0053】
[付記10]
前記センサ情報は、前記道路を撮影したカメラ画像、及び前記道路の3次元点群データの少なくとも一方を含む、付記1から9何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【0054】
[付記11]
前記途切れ検出手段は、前記路面標示の検出結果と、前記道路における工事の施工記録、前記道路の点検データ、及び過去における前記路面標示の検出結果の少なくとも1つとを比較して前記路面標示が途切れている箇所を検出する、付記1から10何れか1項に記載の路面標示劣化分析装置。
【0055】
[付記12]
道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知し、
前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出し、
前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、前記路面標示が途切れている要因を判定することを有する路面標示劣化分析方法。
【0056】
[付記13]
道路をセンシングしたセンサ情報に基づいて、道路上の路面標示を検知し、
前記路面標示の検出結果に基づいて、前記路面標示が途切れている箇所を検出し、
前記路面標示が途切れていることが検出された箇所について、前記路面標示が途切れている要因を判定することを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0057】
10:路面標示劣化分析装置
11:路面標示検出手段
12:途切れ検出手段
13:要因判定手段
100:路面標示劣化分析システム
110:路面標示劣化分析装置
111:データ取得部
112:路面標示検出部
113:途切れ検出部
114:要因判定部
150:ネットワーク
200:移動体
210:カメラ
500:コンピュータ装置
510:CPU
520:記憶部
530:ROM
540:RAM
550:通信インタフェース
560:ユーザインタフェース