(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】多機能性緩効性固形化学肥料
(51)【国際特許分類】
C05F 11/00 20060101AFI20250527BHJP
C05F 11/08 20060101ALI20250527BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
C05F11/00
C05F11/08
A01G7/00 605Z
(21)【出願番号】P 2022103292
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】511161085
【氏名又は名称】有限会社最上蘭園
(73)【特許権者】
【識別番号】519328903
【氏名又は名称】宇井 拓男
(73)【特許権者】
【識別番号】520512409
【氏名又は名称】宇井 喜代美
(73)【特許権者】
【識別番号】519327803
【氏名又は名称】藤原 澄久
(73)【特許権者】
【識別番号】523011691
【氏名又は名称】合同会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇井 清太
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-038386(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167415(JP,U)
【文献】特開2014-096996(JP,A)
【文献】特公昭50-017380(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第113748773(CN,A)
【文献】特表2021-522792(JP,A)
【文献】特開2007-046351(JP,A)
【文献】特開2012-052129(JP,A)
【文献】特開2022-172763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F 11/00
C05F 11/08
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピルビン酸、インドール 3 酢酸、ピネン
を産生する、針葉樹共生菌根菌であるマツタケ菌Tricholoma matsutake菌
の培養懸濁液及び広葉樹共生菌根菌であるトリュフTuber菌の培養懸濁液
、又はマツタケ菌Tricholoma matsutake菌及びトリュフTuber菌の混合菌の培養懸濁液を含有する肥料。
【請求項2】
ピルビン酸、インドール 3酢酸、ピネン
を産生する菌根菌及び当該菌の培養懸濁液を、石膏に添加担持させた請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
さらに、緩固化剤としてグリセリンを含有する請求項2記載の肥料。
【請求項4】
肥料成分として有機肥料を含有する請求項3記載の肥料。
【請求項5】
有機肥料が、産業廃棄物である請求項4記載の肥料。
【請求項6】
産業廃棄物が、生分解プラスチック(PLA)である請求項5記載の肥料。
【請求項7】
石膏が、担子菌、子嚢菌菌糸体、子実体由来のキチンファイバー、キチンナノファイバー、植物セルロースファイバー、植物ナノファイバーのいずれか一つ又は二つ以上を混合して固化したものである請求項2記載の肥料。
【請求項8】
石膏が、担子菌、子嚢菌菌糸体、子実体由来のキチンファイバー、キチンナノファイバー、植物セルロースファイバー、植物ナノファイバーのいずれか一つ又は二つ以上を混合して固化したものである請求項3~7のいずれかに記載の肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広葉樹共生、菌根菌及び針葉樹共生、菌根菌及び当該菌菌糸体、産生生理活性物質及び多様な産廃物質を利用した多機能性肥料及び多機能性植物活性剤の製造法、並びに当該肥料、植物活性剤を用いた植物、作物栽培技術に関する。
【背景技術】
【0002】
世界社会は18世紀に興った産業革命によって有限資源である地球の地下化石燃料をエネルギー源にして大量生産、大量消費の経済社会を構築して、人類は約200年間経済ファーストで有史以来最も豊かな生活を謳歌してきた。2019年の世界炭酸ガス排出量は335億トン、日本の炭酸ガス排出量は12.1億トンという膨大な炭酸ガスを排出し、地球環境変動を引き起こすまでになり、温暖化による気候変動、生物生態系の破壊、海洋汚染、農業圃場の農薬、硝酸塩による汚染、気候変動による農業圃場の荒廃砂漠化、全世界を襲う天災など憂慮すべき問題が、これまでの大量生産大量消費のツケとして21世紀に一挙に浮上した。
【0003】
ようやく世界社会は2050年を目標に、全産業が炭酸ガス排出ゼロ目標へ舵を切りつつあるが、革新的な炭酸ガス固定技術の開発が進行しない経済構造の改変を嘲笑うように、突如コロナウイルスが現れ、有史以来人類が築いてきた文明、文化、更に産業革命で作り上げた経済社会の構造までことごとく破壊した。一つのウイルスに産業革命が敗北したといっても過言ではない。
【0004】
日本政府は、2050年目標に炭酸ガス排出実質ゼロを世界に公表した。この中に農業関連から約25%もの炭酸ガス排出が行われていることから、日本政府は2050年までに「化学肥料40%削減」「農薬50%削減」「有機栽培100万ha 実施」を公表した。この農薬50%削減は現在の農薬依存農業からの脱却を意味しているが、現在の農業技術ではほとんど不可能視されている高いハードルである。しかしアフターコロナ時代は、ウイルスと「免疫」と炭酸ガスと食糧危機の克服という人類存亡の課題を背負う時代でもある。2020年から2050年の30年の間に、18世紀の産業革命を凌駕する新しい産業革命を構築しなければ、地下資源の枯渇、食糧不足、気候変動の天災激発、地球温暖化、海洋汚染、食糧の残留農薬汚染などの問題を解決できない。
【0005】
2050年の未来社会を予測すれば、炭酸ガス排出ゼロ、水素生産技術に、例え革命的な新発明が行われたとしても、バラ色の時代が来るものではない。2050年社会は、90億人に増加した人口を賄う十分な食糧生産がない飢餓社会になる。それを抑止するために気候変動の環境のなかで、このまま進行すれば農薬、化学肥料をさらに多く使用して食糧確保農業になる。多量に含有する残留農薬食糧によって免疫力は弱体化し、ウイルスなどの新規な感染症により、超高齢社会は病気多発社会となる。さらに、現在より天災が頻繁に起こる地球になる。これらの問題は、化学で唯単に炭酸ガス固定、水素生産を可能にしても解決できないものである。農薬、化学肥料に依存しない新規なに農法、新規な肥料を解決しなければ2050年目標を達成することはできない。
【0006】
現在の先進国の繁栄、飽食は化学肥料、化学農薬がもたらしたものである。このことは、逆に言えば、2050年の目標を例えば世界中で実施すれば、食糧不足が起こり人口の約20%15億人が餓死するといわれる。
日本政府の2050年目標は、産業革命以来今日までの約150年の化学肥料、化学農薬を使用した近代農業技術による多収穫、増産農法を捨てるということであるが、減肥料でも多収穫できる、耐病性、耐虫性、耐暑性を具備した作物の育種などが想定されるが、短期間で達成できる課題ではない。これから爆発的に増加する世界人口時代に化学肥料、化学農薬依存農業を行わないで、多収穫、増産して現在以上の食糧生産を行うという、常識では考えられない、無謀な栽培法を発明することが喫緊の課題である。
【0007】
この様な状況から本発明者は、新規な子嚢菌 Pezizales sp.及び当該子嚢菌 Pezizales sp.と根粒菌 Rhizobium sp.の共生を利用した世界的規模の環境改善方法を開発し、具体的には、これ等の菌を土壌や作物に散布することにより、作物の病原菌などを不活性化して減肥料栽培及び減農薬及び無農薬栽培を実現する技術(特許文献1)、また、これら子嚢菌 Pezizales sp.と根粒菌 Rhizobium sp.が共生して外来菌(植物に害を与える病害性外来菌)を休眠または不活性化させることができることを見いだし、農薬を用いることなく植物を外来の病害菌から守る技術(特許文献2)、さらに、これら子嚢菌 Pezizales sp.と根粒菌 Rhizobium sp.が共生して、土壌中に生息する放線菌のエサであるキチンを圃場で生産することができることに着目し、生分解プラスチック(PLA)を自然環境下で穏やかに、且つ確実に生分解させる技術(特許文献3)を開発した。
【0008】
本発明者は、引き続き子嚢菌の研究を重ね、白色木材腐朽菌には、子嚢菌と担子菌があるが、子嚢菌には担子菌のような植物を枯らす菌がなく、生育中の作物の残留農薬を分解するためには植物に無害な菌であること、白トリュフTuber 菌が「子嚢菌白色木材腐朽菌」でありながら、植物の生育助ける菌根菌に進化し土壌の中に子実体(いわゆるトリュフ)を形成すること、人畜、生物に対して絶対に安全な菌であるということ、強い抗菌力を持ち、全世界の寒帯から熱帯エリアの多様な土壌で生息できる菌であることに着目し、農薬を使用しても、その後解毒剤処理を行うことで、食糧、加工食品、飲料、環境から残留農薬を分解、解毒、清浄化を図り、農薬を使用しながら人体の免疫、環境破壊を防止する技術(特許文献4)を開発、さらに、子嚢菌白色木材腐朽菌である白トリュフTuber 菌が醗酵菌であることを見出し、これまでにない新規なピルビン酸含有及び塩化コリン、3-ヒドロキシ酪酸含有の多様な食糧、加工食品、飲料、茶、生薬、家畜飼料などを製造する技術を開発し、特許出願した(特許文献5)。
【0009】
本発明者は、さらに、日本政府が2050年を目標にした農業における「農薬50%削減」「化学肥料40%削減」「100万haの有機農業実施」による農業関連からの炭酸ガス排出削減目標を、先行知見、文献にない新規な革新的な炭酸ガス「固定」「削減」「カーボン ニュートラル」技術を開発し特許出願した(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2021-040525号公報
【文献】特開2021-040521号公報
【文献】特開2022-038386号公報
【文献】特願2020-216308号
【文献】特願2021-078944号
【文献】特願2021-206722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、2050年目標を達成するには、上記の先行知見技術を更に進化させた「革新的なイノベーション資材、農業技術」が必要であることを痛感した。
そこで、本発明者は、単なる多収穫、増産のための肥料ではなく、農業に課せられている多岐に渡る問題を解決できる新規で革命的な「多機能性」を具備した「肥料」とそれに適合した栽培法を開発すれば、2050年目標を達成出来ると考えるに至った。作物、植物栽培に関わる多くの問題、課題を単純化することが出来る多機能性肥料であれば、今後進化する機械化、ドローン、空飛ぶ自動車の農業利用によって大幅な労力、コスト削減で安定した生育、生産が可能になる。このような肥料は、これまでの肥料の延長線上にあるものではなく、肥料という一つのツールを用いて持続可能な地球環境ファーストを念頭に置いた安心安全な食糧生産、確保を可能にする多機能性を具備した複合、総合肥料、更に、多機能性肥料の中に海洋プラスチックで問題になっているポリオレフィン系樹脂によるコーティング緩効性肥料に代わる固化材による緩効性肥料を開発することで海洋プラによる海洋汚染問題も同時に解決、更に地球温暖化の原因である水田から排出される「メタンガス」、農地から排出される「亜酸化窒素ガス」も抑止できる「多機能肥料」を製造することが新たな「グリーン産業」を育成できることに着目した。肥料を超越した多機能肥料が2050年の世界各国が目標とする地球環境保全に、農業が適合しながら食糧生産できる唯一のものであると確信するに至った。
【0012】
図2(1)は、ポリオレフィン系樹脂によるコーティング緩効性肥料を示し、現在大量に製造され水田に使用されている人為的に肥料成分溶出を制御可能な緩効性化学肥料である。一般的には土壌に施肥されてから20~30月かけて内部の肥料成分が徐々に溶出し(
図2(2))、最後は土壌に内にコーティング皮膜だけが残る(
図2(3))。しかし、この皮膜は、自然界で分解できないポリオレフィン系樹脂を使用していることから、細片化して水田から河川、海へ流出し、さらに海流により拡散されるので、ほとんどの海洋でこの砕片が発見されに至り、海洋環境破壊源の一つとして問題化している。
【0013】
本発明の主要な目的は、これまでの肥料と同じ機能を有しながら、日本政府が掲げる2050年目標である「農薬50%削減」「化学肥料40%削減」「有機農業100万ha実施」を可能にすると同時に新規な「グリーン産業」を育成できる革新的な「多機能性肥料」を開発することであり、さらに、産業廃棄物である石膏、産廃植物セルロース、生分解プラスチックであるPLA、下水道残渣、畜産排泄物、食品加工残渣処理、まで可能にした機能を肥料に具備させることで、肥料でありながら、炭酸ガス、メタンガス、亜酸化窒素ガスの排出削減、抑止を可能する、更に、病害虫、連作障害、光合成補完など、地球温暖化による食糧生産の不安定など、農業関連の諸問題を解決できる「多機能性肥料」、およびその製造方法を提供することである。また、本発明の「多機能性肥料」は、発展途上国なども含む全世界で実施できる大量生産可能でなければならず、その製造方法の開発も本発明の目的である。
【0014】
本発明の「多機能性肥料」とは、次のような機能を具備した肥料をいう。
〔1〕広葉樹共生菌根菌、針葉樹共生菌根菌が生産するフミン酸、腐植酸により「炭酸ガス固定」が出来る。
〔2〕空中窒素固定できる広葉樹共生菌根菌、針葉樹共生菌根菌が生息し、空中窒素固定を行い、また、菌糸体のオートファジーによるアミノ酸の土壌滞留による減肥料栽培が出来る。
〔3〕土壌病害菌、葉圏病害菌、空中浮遊病害菌を不活性化が出来、減農薬、無農薬栽培、有機栽培が出来る。
〔4〕α-ピネンを含有、担持し、土壌内生息害虫、汁吸う害虫、蝶目害虫忌避、及びその繁殖が防止出来、減農薬、無農薬栽培、有機栽培が出来る。
〔5〕真核生物のエネルギー源であるピルビン酸を含有し、光合成不足を補完することが出来る。
〔6〕植物ホルモン インドール 3 酢酸を含有し減肥料栽培でも作物の生長促進多収穫出来る。
〔7〕菌根菌によるピルビン酸の根への供給により気候温暖化による気温上昇に耐える耐暑性を具備した作物に出来る。
〔8〕腐生型菌根菌により有機物を分解、大自然の生態系を圃場土壌に再現し持続可能な圃場にすることが出来る。
〔9〕腐生型菌根菌により大自然の炭素循環を圃場に構築することで「連作障害」を防止することが出来る。
〔10〕腐生型菌根菌により大自然の炭素循環を圃場に構築することで持続可能な新規な有機栽培が出来る。
〔11〕腐生型菌根菌により「土壌残留農薬、土壌滞留亜窒素酸化物」を分解し、亜酸化窒素ガスの排出量を削減できる
〔12〕メタンガスの発生を抑止できる。
〔13〕本発明の多機能性肥料の固化材として産廃石膏を使用することで、産廃石膏の排出量を削減できるとともに、従来、緩効性肥料の被覆材として使用されていたポリオレフィン系樹脂が使用されなくなれば、海洋プラスチックによる海洋汚染を削減できる。
〔14〕衣料、繊維、紙、パルプなどの難分解性産廃セルロースを処理できる。
〔15〕産廃「生分解プラスチック(PLA)」を確実に処理できる。
〔16〕産廃グリセリンを処理できる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記16項目に及ぶ多様な問題、課題を肥料という一つのツールで解決するという新規な肥料であるため、従来の肥料概念を根底から払拭、覆す製造原料、技術が必要である。
【0016】
本発明者の先行知見である白トリュフTuber菌の関する膨大な試験によって,白トリュフTuber菌が他の微生物にない多様な特性を具備しており、この特性が多機能性緩効性肥料、多機能性液体肥料製造、多機能性植物活性剤に適合して、日本政府が掲げる2050年目標の「化学農薬50%削減」「化学肥料40%削減」「有機栽培100万ha 実施」する場合に必要な多様な条件をカバーできるものである。
図3は、本発明で使用するトリュフTuber菌の菌糸体が産生するピルビン酸、インドール 3酢酸の葉面散布により植物の光合成が補完される機構を説明した模式図である。
ピルビン酸含有肥料、植物活性剤の投与によって、作物の光合成不足を補完して、安定した生育を図ることが出来る。ピルビン酸は浸透性が優れているので、葉面散布後短時間に細胞に浸透し、細胞のミトコンドリアのクエン酸回路で速やかにエネルギー変換され、光合成不足条件下でも、作物の生育が支障なく行われ、減肥料栽培でも多収穫を図ることが可能になる。
【0017】
しかし、白トリュフTuber菌の特性のみでは、害虫の問題は解決できない。そこで、本発明者は、害虫に適合する新規な菌を探索した。本発明者は大自然の針葉樹森林における芳香成分が、多様な害虫に対して大きな影響力を持ち、その中でもマツタケ菌 Tricholoma matsutake が産生するα-ピネンが、マツタケ菌の「シロ」(
図58)に病害虫が侵入するのを強固に阻止していることに着目し、中国、カナダ、日本各地のマツタケ子実体を入手し、浜田培地(グルコース2%、酵母エキス0.2%、キノコ粗抽出物1%)で菌糸体の再生の膨大な培養を実施した。その中からα-ピネンの産生の多いマツタケ菌 Tricholoma matsutake を選抜培養して、本発明に供するマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌糸体懸濁液を製造した。マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の培養は、菌糸体の成長が早い個体を選抜し、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の菌糸体の大量培養(
図4)も可能になったことで、本発明の多機能性肥料の開発に成功したものである。
マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は、中国、カナダ、日本各地産の菌の全てが固定している菌ではなく、同一産地の菌であっても、一つ一つに微妙な個体変異があり、形状以外にも、培養温度、培地、環境における生育速度、バイオフィルム形状産生する生理活性成分濃度などに大きな変化がある。
本発明は、いずれのマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌を使用しても、実施は可能であるが、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は担子菌の中でも、最も菌糸体の生育、繁殖速度が遅い菌であり、上記の短期間(培養約7日)で培養飽和まで生育繁殖し、所定のα-ピネンを産生する菌種(マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌 2020sagae と命名)を使用すれば、本発明の多機能肥料、多機能性植物活性剤の大量生産が可能となる。
【0018】
図5は、本発明で使用した菌糸生育菌の個体培地において生育した菌糸体を示す画像で、この菌糸体からキチンファイバー、α-ピネン得ることが出来る。
図6は、液体培養におけるマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体バイオフィルムと懸濁糖液の画像であり、液体培養では、キチンファイバーとともに、本発明の多機能性肥料の原液である菌糸体が産生する多様な生理活性物質を含有した懸濁液を得ることが出来る。
【0019】
図1(1)は、本発明で使用した広葉樹菌根菌白トリュフTuber 菌を採集したイタリア、アルバ産の白トリュフ子実体の画像であり、
図1(2)は、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌を採集した山形県寒河江市産のマツタケ子実体体の画像である。
本発明のマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の特性を表1にまとめた。
【0020】
【0021】
このように、本発明の多機能を具備した肥料製造には、広葉樹菌根菌として白トリュフTuber菌、針葉樹菌根菌としてマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌を使用する。しかし、この二つの菌に限定するものではなく、白トリュフTuber菌の属するチャワンダケ目の菌には、多くの未同定の菌根菌が発見されておりトリュフTuber菌属だけでも世界各地で180種発見されていることから、白トリュフTuber菌に限ることなく、今後、同じような特性具備した菌がチャワンダケ目の菌から発見されることが考えられ、それらの菌の中から人畜無害な菌を使用することも可能である。また、針葉樹菌根菌としてマツタケ菌 Tricholoma matsutake を使用しているが、針葉樹には多様な菌根菌が共生していることから、それらの菌の中にマツタケ菌 Tricholoma matsutake菌と同じように、特にピネン、α-ピネンを産生する特性を持つ菌があれば、それらの菌を使用することも可能である。
本発明で利用する「ピネン(pinene)」とは、化学式がC
10H
16で表される有機化合物で、モノテルペンの1種。名称は松に由来し、その名の通り松脂や松精油の主成分であるほか、多くの針葉樹に含まれ「特有の香り」を持つ。
ピネンは、六員環と四員環からなる炭化水素で、二重結合の位置が異なるα-ピネンとβ-ピネンの2つの構造異性体が存在する。
本発明のマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌シロ(
図58)、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養バイオフィルム(
図57)におけるα-ピネンの官能試験では、このα-ピネン「特有の香り」による官能試験である。このシロにおけるα-ピネンの特有の香りは、他の雑菌、キノコ、白色木材腐朽菌にはない香りで、容易に判別出来るものである。マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の菌糸体で多く産するためシロでは特有の香りのする土壌になる。
図58でも、この特有の香りを官能試験で確認されたことから、この人工シロはマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌であることが確認された。
しかし、子実体である「マツタケ」では、α-ピネンを産生しないで、マツタケ特有の香りであるマツタケオールと呼ばれる不飽和アルコールと桂皮酸メチルル(メチルシンナメート)による。もしもマツタケにα-ピネンがあれば、マツタケは食べられないキノコになっている。本発明でα-ピネンの有無を官能で判別できるのは、α-ピネンは特有の香りで容易に判別出来るからである。
【0022】
担子菌、白色腐朽菌の例としては、カワラタケ、白:カイガラタケ、赤:ヒイロタケ、シイタケ、ナメコ、エノキタケ、ヒラタケ、スギヒラタケ、マイタケ、タモギタケ、スエヒロタケ、カワラタケ、シュタケ、ホシゲタケ、ヒイロタケなど食用キノコのほとんど。
褐色腐朽菌の例としては、オオウズラタケ、サルノコシカケ、ナミダタケ、マツオウジ、チョークアナタケ、キカイガラタケ、イチョウタケ、イドタケなど。
子嚢菌(セイヨウショウロ目)の例としては、セイヨウショウロ(トリュフ)のほか、日本から発見されているクルミタケなど。
子嚢菌(チャワンタケ目)の例としては、食タケとして特に外国で広く利用されているアミガサタケ、トガリアミガサタケのほかオオチャワンタケ、キンチャワンタケ、ヒイロチャワンタケシャグマアミガサタケ、ノボリリュウなどがこの仲間など。
子嚢菌(ニクザキン目)の例としては、冬虫夏草がこの仲間で、セミタケ、サナギタケ、ハチタケ、カメムシタケ、アワフキムシタケ、ハナヤスリタケのほか薬用菌として知られるバッカク菌もこの仲間など。
子嚢菌(ツチダンゴ目)の例としては、これもモグラ生活で一生を土の中で過ごす地下生菌、アミメツチダンゴ、クロツチダンゴ、ツツブツチダンゴ、ツチダンゴ、キツチダンゴ、コクロツチダンゴ、ニッコウツチダンゴ、チチブツチダンゴなど。
子嚢菌(ビョウタケ目)の例としては、食利用と結びつくものはない。ハナヤスリ(シダ類)の果穂に似た形のテングノメシガイ、カバイロテングノメシガイ、マツバノシャモジ、テングノシャモジ、ヘラタケ、ホテイタケなど小型のものが多い。
子嚢菌(マメザヤタケ目)の例としては、全体が硬い炭質からなるキノコで、朽木上にいずれも発生する。マメザヤタケ、ホソツクシタケ、ハマキタケ、フデタケ、チャコブタケ、ホウズキタケなど。
【0023】
本発明で使用することが望ましい菌は、人畜無害、植物への病害性がないこと。さらに植物と共生する「菌根菌」の特性を具備し、液体培養、個体培養(菌床培養)で多量な菌糸体を形成する菌である。さらに望ましくは「多機能性緩効性肥料」製造の発明目的に適合した「空中窒素固定」「強い抗菌性」を具備し、培地の糖を解糖し生理活性物質である「ピルビン酸」「植物ホルモン インドール 3 酢酸」「α―ピネン」を産生する菌であること。この条件を満たす菌であれば使用可能である。
本発明では担子菌として「マツタケ菌Tricholoma matsutake」と、子嚢菌として「白トリュフTuber flavidosporum菌」、チャワンダケPezizales sp(未同定菌)を用いた。
【0024】
本発明者は、広葉樹共生菌根菌白トリュフTuber菌が新規な「発酵菌」であることを発見し(特許文献5)、糖を添加した培地で醗酵させることで、培地内に多量な「ピルビン酸」「植物ホルモン インドール 3 酢酸」を産生することを確認している。さらに、本発明者は針葉樹共生菌根菌であるマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の大量培養の研究を行い、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体の大量培養に成功した。
また、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は生理活性物質α-ピネン産生を行うことが知られており、菌糸体大量培養成功によって多量のα-ピネン含有マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体体培養懸濁液の大量生産も可能となった(
図4、
図6)。α-ピネンは強い抗菌性と害虫の殺虫、忌避を持つ芳香成分であり森林の保護育成に関わるものである。本発明は、白トリュフTuber菌菌糸体懸濁液とマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体の培養懸濁液の大量生産を可能にしたことで、本発明の「多機能性肥料」、「多機能性植物活性剤」の大規模な製造が可能になった。
本発明における「α-ピネン」とは、精製したα-ピネンではなく、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌が産生する芳香成分約60種類が混在したマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌培養α-ピネン含有懸濁液のことをいう。
【0025】
これまでの有機質肥料製造では、嫌気性細菌、酵母、麹菌、乳酸菌、メタン菌などを用いてきたが、これらの微生物では「ピルビン酸」、「植物ホルモン インドール 3 酢酸」、「α-ピネン」を産生できないため、本発明の目的である「多機能性肥料」は製造できない。
【0026】
さらに、2050年目標である化学肥料40%削減による炭酸ガス排出削減では、減肥料栽培を行いながら食糧確保するという非常に難しい農業技術を新規に開発しなければならないが、この問題は、本発明の白トリュフTuber菌の空中窒素固定を利用し、土壌に白トリュフTuber菌菌糸体を繁殖させることで、菌糸体老化後は菌糸体のオートファジーにより菌糸体が溶解し多量のアミノ酸由来の窒素が土壌に滞留することで減肥料栽培が可能となる。しかし、現在の嫌気性細菌を用いた有機肥料による有機栽培では、細菌の細胞膜はセルロースであることから、細菌のオートファジーでは窒素の土壌滞留はないので減肥料栽培は不可能である。
図8は、本発明の多機能緩効性複合肥料の土壌投与後の白トリュフTuber菌土壌生息繁殖状況を示す画像で、
図8(1)は、土壌の作物植穴に1g粒子の多機能緩効性複合肥料を施した画像、その後、湿度保持のために土壌表面をアルミシートで被覆した。
図8(2)は、施肥後15日目の画像で白トリュフTuber菌の菌糸体が繁殖しているのが観察された。白トリュフTuber菌が、残留農薬や硝酸態窒素の浄化作用、土壌病害菌抗菌作用も有することは特許文献4に記載されているとおりである。
【0027】
本発明は、海洋プラによる海を汚染しないことも発明の目的である。現在のコーティング緩効性肥料は生分解できない「ポリオレフィン樹脂」を使用しているが、これに代わるものとして本発明では地球に広く分布している鉱物であり、植物必須元素のカルシュウムである石膏を原料とした。
図9(1)は産廃石膏紛、
図9(2)は廃棄された石膏胸像であり、これらをか焼し「焼き石膏」にして、本発明の肥料の原料とする。
本発明の多機能性緩効固形肥料は、次世代の肥料として全世界で生産使用される得るものであるから、その製造に当たっては大量の石膏が必要になり、産廃石膏のみでは賄いきれない可能性もある。この場合原油精製時に派生する硫酸カルシュウム(石膏)なども使用することができる。
これらの石膏を固化材に使用した場合、固化までの時間が非常に短いため造粒法が限定される。本発明では多様な造粒法を可能にする目的で、練るための溶液(水、白トリュフTuber菌懸濁液、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌懸濁液)にグリセリンを1から10%添加して緩固化させている。
図10は、植物油、バージン油から派生したグリセリンであるが、食用油産廃から派生したグリセリンや、近い将来、航空機の燃料に使用するように定められた、植物油から作ったバイオ燃料の生産する過程で副生されるグリセリンなどが有利に利用できる。この方法によれば固化までの時間を任意に遅延させることができる。
図11は、グリセリンを添加して固化させた石膏粒子の水中崩壊試験の結果で、写真のように10日後においても崩壊しなかった。さらに本発明では、石膏に、キチンファイバーや植物セルロースを混合して強化し、緩効性を持続させているが、粒子の大きさによって30日型、60日型、100日型、120日型などを想定することができる。さらに、白トリュフTuber菌液体培養菌糸体由来キチンファイバー、キチンナノファイバーを利用すれば、白トリュフTuber菌が産生する「ピルビン酸」、「植物ホルモン インドール 3 酢酸」を含有する多機能性緩効性肥料とすることができる。
また、このグリセリンは、圃場投与後、白トリュフTuber菌のエサとなり繁殖のエネルギー源となる。さらに石膏は強アルカリであり、そのままでは作物の生育害を及ぼすが、白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液を混合して、水中に浸漬したところ7日後のpHは6.5から7.0であった。したがって、本発明の肥料を圃場投与した場合にも、pH6.5から7.0となり作物の生育には良好なpH値になる。また、スムースな緩効性を満足させるために石膏に添加した植物セルロースは、圃場に投与した場合、土壌水分がこのセルロースを伝って石膏内部に供給されることで、石膏内部の肥料成分がこのセルロースに浸透し外部に溶出して根に供給され、スムースな肥料吸収が可能になる。
【0028】
本発明の多機能性肥料とは、上記16項目の目的を達成できる機能を備えた肥料のことをいう。上述したように、本発明の多機能肥料の基本は、多様な機能を持つ「白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液」及び「マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌糸体培養懸濁液」の使用である。その他の原材料としては、固化材として「石膏」、石膏緩固化材として「グリセリン」、固化崩壊抑止剤として「菌糸体キチンファイバー」、「セルロースファイバー」、粒子増量材として「産廃生分解PLA粉、細粒子」、多機能有機緩効性有機質肥料の基材として「菜種粕、大豆粕、綿実粕、その他の植物素材」を用いて製造する。
なお、白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液には、ピルビン酸、インドール 3 酢酸など、白トリュフTuber菌が産生する多様な成分が含有しているので、肥料成分を添加しない場合は、植物活性剤として利用できる。菌糸体懸濁液は、そのままでも利用可能であるが、不織布などで濾過すれば、散布などがし易くなる。
【0029】
具体的には、石膏、好ましくは産廃石膏(
図9)に白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液(
図7)、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液(
図6)の希釈液を石膏に添加して混錬し、この菌糸体が産生する生理活性物質であるピルビン酸、インドール 3 酢酸、α-ピネン、更に菌糸体キチンファイバーを担持させたものに、産廃由来の植物セルロース、産廃生分解プラスチック PLAの粉、粒、緩固化剤として産廃グリセリンを混和固化させることで、発明の目的である多機能性緩効性石膏固形化学肥料を、産廃石膏、廃グリセリン、産廃植物セルロース、産廃生分解プラスチックPLAのリサイクル処理をしながら、製造することができる。
【0030】
図12は、硬化した石膏の電子顕微鏡であり、本発明は、針状の結晶と結晶との間にある隙間にキチンファイバー、キチンナノファイバーが挿入されることで、針状の結晶と結晶がキチンファイバーで架橋され、堅固な難崩壊性の硬化粒子となる。
【0031】
図13は、キノコ廃菌床から白色木材腐朽菌菌糸体、キチンファイバーの採集例を示す。本発明者は、最木材腐朽菌の菌糸体がキチンファイバーからできていることから、担子菌、子嚢菌のキノコ、菌糸体からキチンファイバーを大量生産することで、本発明の「多機能性緩効性肥料」製造に成功した。石膏による固化を石膏と菌糸体キチンファイバー、キチンナノファイバーで架橋することで、より堅牢な固化を得ることができる。キノコ生産において、この廃菌床は、新たな廃棄物源であるが、本発明の「多機能性緩効性肥料」の原料として有効活用することができる。
図13(1)は、加熱殺菌し破砕した廃菌床、
図13(2)は、水を添加しミキサーなどでドロドロにし、有機物とキチンファイバーを添加して混合溶液とした状態、
図13(3)は、この混合溶液に石膏を添加した状態、
図13(4)は、練った状態、さらに肥料を添加すれば「多機能性緩効性肥料」となる(
図13(5))。
【0032】
また、
図14は、植物組織(雑草)利用した白トリュフTuber菌菌糸体キチンファイバー生産の可能性を示すもので、
図14(1)は、雑草100gに糖5g、水100を添加して、白トリュフTuber菌培養懸濁液10ccを添加し、常温室(最低温度10℃、最高温度25℃)で静置培養した状態を示す。
図14(2)は、15日後の状態で、白トリュフTuber菌が、雑草をエサにして大繁殖した。
【0033】
また、菜種粕(
図15)、綿実粕、豆粕、魚粉(
図16)、肉粉、下水処理場残渣、メタン醗酵残渣、食品加工残渣、畜産残渣(
図17)などに、白トリュフTuber菌担持、又は醗酵させることで、多機能性緩効性石膏固化化学肥料、多機能性緩効性有機質肥料、多機能性液体化学肥料、多機能性有機質液体肥料、多機能性植物活性剤など多様な機能性肥料を作ることができる。化学肥料40%削減、農薬50%削減、有機栽培100万haを達成するため、解決手段として肥料を基幹ツールにすることは、作物栽培における作業、労力の面からも望ましいものである。
【0034】
「白トリュフTuber菌」及び「マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌」の二つの菌根菌の「液体培地」、「固形培地」(
図4,
図7)による菌糸体の大量培養によって、生理活性物質である ピルビン酸、α-ピネン、インドール 3 酢酸の大量生産が可能となり、更に、菌糸体由来のキチンファイバー、キチンナノファイバー(
図4,
図12,
図17)の大量生産が可能となり、石膏の強固な固化によって、水中でも難崩壊性を具備し、水田でも使用可能となった。
【0035】
以下、本発明の態様を示す。
〔1〕 ピルビン酸、インドール 3 酢酸、ピネン、を含有する肥料。
〔2〕 ピルビン酸、インドール 3 酢酸、ピネン産生する菌根菌及び当該菌の培養懸濁液を含有する肥料。
〔3〕 菌根菌が、針葉樹共生菌根菌、又は広葉樹共生菌根菌、又はこれらの混合菌である、〔2〕の肥料。
〔4〕 針葉樹共生菌根菌はマツタケ菌Tricholoma matsutake 菌であり、広葉樹共生菌根菌はトリュフTuber菌である、〔3〕の肥料。
〔5〕 ピルビン酸、インドール 3 酢酸、ピネン、産生する菌根菌及び当該菌の培養懸濁液を、石膏に添加担持させた〔2〕~〔4〕のいずれかにの肥料。
〔6〕 さらに、緩固化剤としてグリセリンを含有する〔5〕の肥料。
〔7〕 肥料成分として有機肥料を含有する〔6〕の肥料。
〔8〕 有機肥料が、産業廃棄物である〔7〕の肥料。
〔9〕 産業廃棄物が、生分解プラスチック(PLA)である〔8〕の肥料。
〔10〕 石膏が、担子菌、子嚢菌菌糸体、子実体由来のキチンファイバー、キチンナノファイバー、植物セルロースファイバー、植物ナノファイバーのいずれか一つ又は二つ以上を混合して固化したものである〔5〕の肥料。
〔11〕 石膏が、担子菌、子嚢菌菌糸体、子実体由来のキチンファイバー、キチンナノファイバー、植物セルロースファイバー、植物ナノファイバーのいずれか一つ又は二つ以上を混合して固化したものである〔6〕~〔10〕のいずれかの肥料。
【0036】
本発明の「多機能性肥料」の形態は、固化材を使用した固形肥料でも、懸濁液のような液体肥料でもよく、また、化学肥料、有機肥料、あるいはこれらの混合肥料でもよく、さらに、植物の活性剤として使用してもよい。
【0037】
固定肥料の場合、粒径が3~10mmの粒状やペレット状とするのが好ましく、3mm粒子で緩効性期間は1~30日、5mm粒子で30~100日、8~10mm粒子で100~150日である。
また、肥料粒子の構造としては、肥料成分を粒子内に均等に分散させて(練り込み法)もよいし、化成肥料などの粒子の周りを石膏層で被覆させて(被覆法)もよい。
【0038】
図21は、本発明の「多機能性肥料」の形態を模式的に示す。
図21(1)は、被覆法で製造するもので、有機肥料及び化成肥料からなる複合肥料を白トリュフTuber菌キチンファイバー、ピルビン酸、インドール 3 酢酸、α-ピネンを担持した石膏で被覆し、更に水溶解を遅延させるためにケイ酸化合物を粒表面に噴霧コーティングして緩効性の性能を向上させたものであり、
図21(2)は、練り込み法で製造されたもので、石膏に1:1の等量化成肥料を混合し、これに白トリュフTuber菌培養溶液、マツタケ菌培養溶液を適宜加え練り、造粒機で適宜な大きさの粒に造粒、ペレット化したものである。培養溶液にはキチンファイバー、ピルビン酸、インドール 3 酢酸、α-ピネンが含有されている。なお、配合する成分は、目的に応じて適宜選択すればよい。
図22は、本発明の多様な多機能性肥料形状を例示した画像であり、(1)はペレット状、(2)は破砕粒状、(3)は球粒状、(4)は細粒ペレット粒状、(5)は破砕細粒状である。
【0039】
本発明の多機能性緩効石膏固化化学肥料に含まれる白トリュフTuber菌は生息している(
図23(1))。
しかし、常温で長期間(180日以上)の元では、場合によって白トリュフTuber菌が死滅することがある。白トリュフTuber菌が生息している多機能性緩効石膏固化化学肥料を必要とする場合は、多機能性緩効石膏固化化学肥料表面に白トリュフTuber菌が生息している「多機能緩効性有機質肥料」を担持させればよい(
図23(2))。
【0040】
図24は、石膏のミックス割合による多機能緩効性肥料の水中溶解実験を示す。本発明は石膏を固化剤とした緩効性肥料に関するものであるが、石膏と多様な肥料の混合割合が緩効性能に大きな差異が生じる。特に水田に使用された場合、その溶解、崩壊への経過時間が重要であることから本実験を実施した。
図24(1)は、本発明の多機能緩効性肥料の1g粒子であるが、肥料原料1に対し、石膏1.0、0.8、0.5の混合割合の粒子を用意した。
図24(2)は、これらの肥料粒子を水に浸漬し、10日後の状態を示す。図の中央の粒子が肥料原料1に対し、石膏1.0の混合割合の粒子で、崩壊は見られなかったが、左側の肥料原料1に対し、石膏0.8の混合割合の粒子、右側の肥料原料1に対し、石膏0.5の混合割合の粒子は、崩壊が始まっていた。このように、肥料原料1に対して石膏1以上の混合比率とすれば、水中でも崩壊しないことが確認され、本肥料が水田でも使用できること示唆された。
【0041】
本発明で使用される化学肥料としては、硫酸アンモニア(アンモニア窒素:21%)、硝酸アンモニア(硝酸態窒素:16%以上、アンモニア態窒素:16%以上)、第一リン酸カリウム(水溶性リン酸:51.0%、水溶性カリウム:34.0%)、硝酸カリウム(窒素:13%、カリウム:44%)、塩化カリウム(硫酸カリウム)(カリウム:60%、56%))、過リン酸石灰(リン酸17.5%(水溶性14.5%))、尿素(窒素:46%)があり、これらの成分を適宜配合して使用する。
【0042】
本発明の固化材として用いる石膏は、硫酸カルシウム(CaSO4)を主成分とする鉱物であるが、石膏の中でも細かい粒状の雪花石膏(アラバスター、alabaster)を用い、特に排煙脱硫施設や原油精製設備で副生される硫酸カルシウムや、産廃石膏ボードなどの廃石膏を使用することが望ましい。
本発明で石膏に着目した理由は、石膏は常温で水と容易に混錬することができ、添加する水を加減することで粘度を変化させ、硬化時間を長くすることで発熱温度を抑えることができ、固化過程における「発熱」のために、本発明の白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌を担持した場合でも、菌に悪影響が及ばないようにすることができるからである。さらに、白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は強アルカリ条件下でも生存、繁殖できる菌であることから石膏内部、表面で長期間生存可能である。
【0043】
石膏は短時間で固化するので、肥料製造する場合、この急速な固化は望ましいことではなく、造粒機によっては緩やかな固化を必要とする。本発明者は、これまで石膏緩固化に使用されてこなかったグリセリンが有効であることを見出した。今後、炭酸ガス排出ゼロミッションから航空機燃料がバイオ燃料への移行が進めば、多量に産生されるグリセリンが利用できる。
【0044】
図26は、本発明の多機能性緩効性石膏固形化学肥料の施与方法の例を示す画像で、植え穴に適宜投与(1)してもよく、土壌表面に投与しても、鉢表面に追肥(2)してもよく、水田、水耕栽培の液中に投与(3)してもよい。石膏固化緩効性肥料は短時間で崩壊しないので、元肥、追肥での使用が可能である。
白トリュフTuber菌担持多機能性肥料の場合には、白トリュフTuber菌が生息していることから、肥料効果より先に、白トリュフTuber菌効果を最優先に考えて使用することが望ましい。速やかに土壌に白トリュフTuber菌が繁殖し飽和状態まで生長すると、オートファジー(自死)を行い、菌糸の一部を溶解する、この溶解で菌糸体の主成分であるタンパク質が「アミノ酸肥料」となり、「減肥料」栽培が可能になるだけでなく、白トリュフTuber菌の抗菌作用により無農薬栽培も可能となるからである。
【0045】
脱炭素社会への移行で、今後急速に生分解プラスチックの産廃プラ(PLA)などの処理が重要な課題になる。しかし、このPLAは難分解性プラスチックであり、常温での分解は困難である。PLAを分解できる菌は「放線菌」であり、そのエサは「キチン」である。本発明では、石膏に白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の菌糸体由来の「キチンファイバー」を混合担持させて固化すれば、放線菌の「エサ」となり、土壌内に放線菌を繁殖定住させることが出来る。この定住によって、粉、細粒化したPLAはエサとして分解され、本肥料投与の圃場は産廃PLAの処理工場になる(特許文献3)。
この「キチンファイバー」は、白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌培養懸濁液に多量に含有しているが、さらに多量なキチンファイバーが必要となる場合は、キノコ栽培の廃床からキチンファイバーを採集すればよく(
図13)、これを石膏に混合することで石膏の結晶粒子を架橋され、多湿、水田、水中でも崩壊しにくい固形肥料を製造することができる。
菌糸体培養懸濁液に含有するキチンファイバーやキチンナノファイバーが不足する場合は、セルロースファイバーを添加すればよく、特に、再生紙、再生綿繊維、段ボール再生ファイバーなどを用いることが望ましい。
本発明のキイポイントは、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体が産生するα-ピネンを利用することであるが、これによって大自然界の生態系を再現した作物害虫の多くの昆虫の学習能力で作物、圃場への忌避されることが可能となり、これまで不可能とされてきた多種類の作物において完全無農薬、減農薬栽培を可能にした。
【発明の効果】
【0046】
本発明は、地球石炭紀後3億年の植物進化と炭素循環の上で大きな影響を持ってきた針葉樹共生菌根菌及び広葉樹共生菌根菌を肥料に担持させて利用するという、従来の肥料の概念を一挙に変革する発明である。
現在の70億人の人口増加を可能したのは「化学肥料」による作物栽培であり、「空気から肥料を作る」ハーバー・ボッシュアンモニア合成法の発明による飛躍的な食糧増産である。
1900年から現在まで、この120年間に世界人口は40億人増加した。こういう時代背景の中で、今日における「化学肥料」の役割は「多収穫」、「増収」を目的として使用される。
しかし、この化学肥料は、多収穫、増収という功績、メリットがあるが、ハーバー・ボッシュアンモニア合成法、リン鉱石、カリ鉱石による肥料生産における膨大なエネルギー消費、地球環境破壊、膨大な温室効果ガスの排出という問題がデメリットとして浮上し、更に、多収穫、増収をもたらした「化学農薬」も残留農薬による健康被害、免疫力低下が、脱炭素社会、ウイルス共存社会、超高齢化社会への移行の中で大きなデメリットとして顕在化してきた。
本発明は、そのような世界情勢の中、本発明の肥料に針葉樹共生菌根菌、広葉樹共生菌根菌を利用することで多様な「多機能性肥料」及び「多機能性植物活性剤」の開発によって、発明目的である日本政府2050年目標とする炭酸ガス排出ゼロミッションの農業関連における「農薬50%削減」「化学肥料40%削減」「有機栽培100万ha実施」を達成可能にするばかりでなく、更に、その効果は広範囲な課題を解決するという望外な効果をもたらすものである。脱炭素社会、ウイルス共存社会、超高齢化社会における農業を革新する、従来の肥料の概念を超越した肥料といえる。
【0047】
本発明者による多岐にわたる試験で実証されている多様な効果を列記する。
〔1〕 本肥料使用によって「減肥料」「減農薬、無農薬」栽培が可能である。
〔2〕 本肥料使用によって新規な農法である「炭素循環有機栽培」が可能になり、安心安全な食糧生産を安定して行うことが出来る。
〔3〕 本肥料に、空中窒素固定及び菌糸体キチンの土壌滞留を行う、広葉樹菌根菌及び針葉樹菌根菌を担持生息させたことにより、圃場がアンモニア製造工場となって減肥料栽培が可能になり、発展途上国でも安定した作物栽培が出来る。
〔4〕 石膏(産廃石膏)を固化剤に用いて「多機能性緩効石膏固形化学肥料」により、ポリオレフィン樹脂コーティング緩効性化学肥料による海洋プラスチックによる海洋汚染を削減、防止することが出来る。
〔5〕 空中窒素固定を行う広葉樹菌根菌、針葉樹菌根菌を担持生息させたことで炭素循環有機農法が可能になり、有機物を分解し最終産物としてフミン酸、ヒューミン、腐植酸が産生され、これらの物質は完全分解するまでに300から3000年を要し、約50%の炭素(重量比)を含有することから農業圃場を「炭酸ガス固定、削減工場」にすることが出来る(特許文献6)。
〔6〕 肥料に白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌を生息担持させたことにより、本肥料を施肥することで病虫害が軽減され、農薬の使用量を削減することが出来る。
〔7〕 本肥料を水田、牧場などに施肥することで温室効果ガスのメタンガス排出を抑止出来る。
〔8〕 本肥料を畑に施肥することで亜酸化窒素ガスの排出を抑止することが出来る。
〔9〕 本肥料を圃場に施肥することで、菌根菌白トリュフTuber菌が土壌に繁殖し、有機物を分解し真核生物のエネルギー源であるピルビン産生し、菌根菌がこれを作物の根に供給することで、光合成不足を補完し、曇天など気候変動による生育不良を回避できる。
〔10〕 本肥料を圃場に施肥することで土壌内の残留農薬、除草剤を分解し、清浄な土壌にすることが出来る。
〔11〕 本肥料を多年草作物、果樹圃場に施肥することで、炭素循環土壌になり、永年に渡り安定した収穫が出来る
〔12〕 本肥料を一年草作物圃場に施肥することで、連作障害のない圃場となり、多くの作物で連作が可能になる。
〔13〕 本肥料を施肥することでほとんどの作物が「根毛」から「菌根」と改質し、耐寒性、耐暑性、耐乾性、耐湿性を獲得し、気候変動に耐える作物となり、安定した農業経営が出来る。
〔14〕 多機能性植物活性剤を葉面散布することで、白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 濁液に産生される植物ホルモン インドール 3 酢酸で生育促進されることで減肥料栽培でも多収穫出来る。
〔15〕 多機能性肥料、多機能性植物活性剤使用することで、マツタケ菌 Tricholoma matsutake が産するα-ピネンにより、吸汁害虫、アブラムシ、ダニ、カメムシ、アザミウマ、コナジラミなどの害虫の発生を抑止、チョウ目昆虫の飛来を防止出来る。
〔16〕 本肥料を土壌に施与することで土壌病害菌を失活、休眠させることが出来る。
〔17〕 多機能植物活性剤を使用することで、土壌表面、葉圏に生息、空中浮遊病害菌の落下胞子を失活、休眠させることで病気の発生を抑えることが出来る。
〔18〕 多機能性固形化学肥料の固形固化原料として「石膏」(産廃石膏)を使用したことで、産廃石膏のリサイクル処理が出来る。
〔19〕 石膏の緩固化剤としてバイオ燃料製造から今後多量に発生する産廃「グリセリン」を使用することでグリセリンのリサイクル処理が出来る。
〔20〕 石膏に産廃生分解プラスチックPLAの粉、粒子、産廃有機物の粉、粒子、産廃植物セルロース(繊維、衣料、紙、段ボールなど)を混合することで、産廃PLA,産廃有機物の分解、処理が出来る。
〔21〕 石膏粒子の崩壊防止にキノコ栽培の廃床菌糸体由来のキチンファイバーを混合することで、より強固な多機能性緩効石膏固形化学肥料にすると同時に、産廃キノコ培地のリサイクル処理が出来る。
〔22〕 石膏に白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液を使用することで、多くの作物に理想的なpH6.5から7.0となり、土壌を劣化させることなく、安定した生育になる。
〔23〕 多機能性有機質の原料を下水処理場残渣、メタンガス残渣、食品加工醗酵残渣、畜産排泄物を白トリュフTuber菌醗酵させることで製造することが出来るので、多様な残渣をリサイクル処理出来る。
〔24〕 本肥料及び本植物活性剤を使用することで「農薬をほとんど含まない農産物」を生産でき、また土壌残留農薬も分解解毒し浄化できる。
〔25〕 本肥料を使用することで糖度の高い高品質の野菜、果物、穀物を生産できる。
〔26〕 本肥料の主要な原料である白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液を「哺乳類動物の尿」を培地にして製造出来るので、発展途上国でも本肥料を生産し、食糧不足を防ぐことが出来る。
〔27〕 植林のエリアに本肥料を施肥することで、広葉樹菌根菌、針葉樹菌根菌が生息、繁殖し、速やかに大自然を再現した植林が可能となり、炭酸ガス排出削減出来ると同時に治山治水となる。
〔28〕 多機能性緩効石膏固形化学肥料の肥料成分、粒子を変化させることで、多様な作物に使用可能となり、1日から150日以上の長期間安定して肥効にすることが出来る。
〔29〕 本肥料の白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は0℃から50℃でも依存繁殖可能なことから地球の寒帯から熱帯の全ての圃場で減肥料、減農薬、無肥料栽培、新規な炭素循環有機栽培できる。
〔30〕 本肥料に担持した白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は常温、暗所保存で100から150日生存可能であり、ストック出来る。
例え、長期間の保存によって菌が死滅したとしても、菌が添加された有機資料を肥料粒子表面に付着することにより、「創肥料」を製造できる。
〔31〕 炭素循環有機催場で圃場の砂漠化、土壌流亡を防止できる。
〔32〕 全世界のほとんどの作物に使用できる。
〔33〕 粒状、液状で小さな圃場から施肥機械を利用して広大な面積の圃場まで適応できる。
〔34〕 肥料に白トリュフTuber菌を担持させることで、白トリュフTuber菌が肥料成分、グリセリン、植物セルロースをエサにして圃場に繁殖、生息定住して持続可能な圃場にすることが出来できる。
〔35〕 植物の鮮度を長期間保持されるので、遠距離輸送、長期間貯蔵が可能となり、また貯蔵中の病害発生も抑止することが出来る。
〔36〕 気候変動による高温化で大きな影響を受けることが予想される、冷涼な気候を好む植物、作物でも、多機能肥料、多機能性植物活性剤に使用により安定した生育、収穫、品質を持続できる。
〔37〕 農業以外の工場敷地、公園、ゴルフ場、屋上、街路緑化、家庭菜園、趣味の園芸などでも、多機能肥料、多機能性植物活性剤の使用により減肥料、減農薬、無農薬栽培ができる。
〔38〕 畑、水田、陸地、湿地、山などで殆どすべての作物、植物に適合し、寒帯から熱帯目での全てのエリアで発明の目的を達成できる。
〔39〕 本多機能性植物活性剤を作物に散布することで、花粉稔実性、雌蕊稔実性が高くなり、自殖性作物の受精率が高くなり、イチゴなどミツバチによる受粉の必要がなくなるので、ミツバチ購入費のコスト削減化可能になる。さらに多様な自家受粉作物において訪花昆虫(受粉)を必要としないことから、安定した生産が可能になる。
【0048】
本発明の肥料が、上述したような多機能性を具備できた要因の一つに、肥料に大自然の野生植物に共生し生育を助ける多様な機能を具備した広葉樹菌根菌、針葉樹菌根菌(
図6)を担持させ、地球の大自然の植生を圃場に再現することで作物の根を野生植物の根のように「菌根」に改質することに成功した(
図27)ことが挙げられる。
更に、作物害虫の多くの昆虫のα-ピネンに対する学習の力を利用して、栽培作物、圃場にα-ピネンを散布することで作物、圃場に寄り付かいようにし、多様な作物を「完全無農薬栽培」を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明で使用した白トリュフTuber菌子実体及びマツタケ子実体の画像
【
図2】海洋汚染の原因とされているポリオレフィン系樹脂化学緩効性肥料の画像
【
図3】トリュフTuber菌が産生するピルビン酸、インドール 3酢酸により植物の光合成が補完される機構を説明した模式図
【
図4】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体、及びキチンファイバー生産、α-ピネン生産の画像
【
図5】本発明で使用した菌糸生育菌の固体培地において生育した菌糸体を示す画像
【
図6】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液の画像
【
図7】白トリュフTuber菌 菌糸体培養懸濁液の画像
【
図8】本発明の多機能緩効性複合肥料の土壌投与実験の画像
【
図9】多機能性緩効石膏固形化学肥料の固形材の画像
【
図10】多機能緩効性石膏固形化学肥料に混合する植物油産生、植物油産廃、グリセリンの画像
【
図11】グリセリン添加による石膏緩固化 水中崩壊実験
【
図12】白トリュフTuber菌菌糸体キチンナノファイバーの画像
【
図13】キノコ廃菌床から回収された白色木材腐朽菌菌糸体の画像
【
図14】植物組織(雑草)利用した白トリュフTuber菌菌糸体キチンファイバー生産実験の画像
【
図15】多機能性緩効有機質肥料原料、及び作物残渣、菜種油生産の菜種作物残渣の画像
【
図16】魚肉をトリュフTuber菌により醗酵させた有機肥料原料の画像
【
図17】哺乳類動物尿を利用した白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液の大量生産実験
【
図18】菜種粕を白トリュフTuber菌により醗酵させて生産された有機質肥料の画像
【
図19】白トリュフTuber 菌担持下水処理場残渣の有機質肥料によるチンゲンサイの栽培実験
【
図20】多機能性緩効石膏固形化学肥料の粒子の大きさによる水中浸漬実験
【
図23】白トリュフTuber菌生息多機能緩効性石膏固形化学肥料の創肥料
【
図24】石膏のミックス割合による多機能緩効性肥料の水中溶解実験
【
図25】白トリュフTuber菌担持多機能性複合緩効性肥料の菌生存実験
【
図26】多機能性緩効性石膏固形化学肥料の施与方法の例を示す画像
【
図27】白トリュフTuber菌多機能緩効性石膏固形化学肥料栽培によるイチゴ菌根形成試験結果を示す画像
【
図28】白トリュフTuber菌 多機能植物活性剤散布によるイチゴ無農薬育苗実験
【
図29】浄水場残渣を利用した白トリュフTuber菌醗酵多機能性有機肥料によるチンゲンサイ栽培実験
【
図30】生分解プラスチック 産廃PLA細粒の多機能性緩効性固化肥料へのミックス製造並びに水中崩壊実験の画像
【
図31】多機能性植物活性溶液の有効保存期間の検証実験
【
図34】白トリュフTuber菌生息「多機能複合緩効性肥料」を用いたイチゴ栽培実験
【
図35】白トリュフTuber菌菌根菌生息「多機能緩効性石膏固形化学肥料」と「多機能植物活性剤」によるハウス内「本わさび」栽培実験
【
図36】白トリュフTuber菌生息「多機能性植物活性剤」散布によるクローバー牧草生育効果実験
【
図37】白トリュフTuber菌生息「多機能性植物活性剤」及び多機能性緩効石膏固形化学肥料による稲栽培実験
【
図38】本発明の多機能性緩効性石膏固形化学肥料を用いた白菜栽実験
【
図39】白トリュフTuber 菌生息多機能性液体肥料(活性剤)によるイチゴ炭疽病、害虫抑止実験
【
図40】白トリュフTuber 菌担持多機能性緩効石膏固形化学肥料を用いたレタス 栽培実験
【
図41】白トリュフTuber 菌担持多機能緩効性石膏肥料による光合成不足補完実験
【
図42】特別仕様白トリュフTuber菌多機能有機質肥料による白菜、イチゴ栽培実験
【
図43】白トリュフTuber菌多機能性複合植物活性剤によるナデシコ生育促進実験
【
図44】白トリュフTuber菌「多機能緩効性石膏固形化学肥料」及び「多機能性植物活性剤」併用による高温障害防止、光合成補完イチゴ栽培実験
【
図45】トリュフTuber菌「多機能複合緩効性肥料」及び白トリュフTuber菌「多機能植物活性剤」による稲育苗実験
【
図46】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養産生α-ピネン含有懸濁液担持石膏粒子投与による害虫忌避効実験
【
図47】白トリュフTuber菌生息「多機能性緩効石膏固形肥料」によるトマトの「亜硝酸吸収障害」防止実験
【
図48】多機能性緩効性固化化学肥料10mm粒子によるセロリ栽培実験
【
図49】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体懸濁液に含まれるα-ピネンによるバラ切り花鮮度保持延命実験
【
図50】マツタケ菌産生 α-ピネン溶液による植物内生菌の抗菌実験
【
図51】白トリュフTuber菌生息多機能緩効性石膏固形化学肥料の水田施与によるメタン菌繁殖抑止実験
【
図52】多機能性化学液体肥料土壌潅注による播種、発芽への影響実験
【
図53】多機能肥料、多機能性植物活性剤による農業圃場以外エリアにおける緑化、芝草栽培実験
【
図54】多機能性緩効石膏固化化学肥料と機能性植物活性剤併用によるイチゴ完全無農薬栽培実験
【
図55】多機能性植物活性剤の葉面散布によるイチゴ自殖稔実率アップ実験
【
図56】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の菌種による液体培養での菌糸体生育速度の測定実験
【
図57】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌培養液α-ピネン含有検定実験
【
図58】
図57のα-ピネン含有検定実験の補完実験で利用したマツタケ菌人工シロの写真
【
図59】マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌2020sagae株液体培養懸濁液産生α-ピネン溶液と松脂精製テレピン油(α-ピネン、β―ピネン主成分)のアブラムシ予防実験
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実験1<マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体固形培地大量生産実験>
中国、カナダ、日本各地のマツタケ子実体を入手し、同一の菌床を用いて培養した。マツタケ菌には地域変異があり、産地、「シロ」によってその特性は変化し、菌糸生長速度、α-ピネン産生能力に差異がある。
図4(1)は、生育速度が最も速かった山形産のマツタケ菌の菌糸体の画像である。マツタケ菌はマツと共生する「菌根菌」であるが、一般の食キノコである担子菌白色木材腐朽菌の菌床培養での菌糸体形成とは大きな違いがあり、マツタケ菌の場合は培養瓶菌床から菌糸体が巨大な塊となって形成される。菌糸体の2段階形成である。これから子実体である「マツタケ」が発生するようである。
図4(2)は、真上から画像である。
図4(3)は、この菌糸体の電子顕微鏡写真、
図4(4)は、この菌糸体をジューサーで破砕しろ過した後のマツタケ菌培養懸濁液。培養10日以降の培養液中に本発明が望む「α-ピネン」が大量に含有しており(
図57)、この溶液を肥料に担持させることで本発明の「多機能肥料」を製造する。
【0052】
実験2<白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液の分析実験>
白トリュフTuber菌を、培地として、水1000cc、ハイポネックス3g、砂糖30g、キノコ子実体抽出溶液30cc,pH5.5、オートクレーブしたものを使用し、300cc三角フラスコ内で、常温室内、静置、明所培養し、白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁液を得た(
図6)。
その成分を分析した結果は以下の通りであった。試料の分析は、Shanghai WEIPU Technology Group Co.,Ltd (上海、中国)が行った。
ピルビン酸 0.6%
塩化コリン 0.01~0.02%
キチン 0.003~0.007%
糖 0.3~0.8%
蛋白 0.5~1.5%
3-ヒドロキシ酪酸 0.001~0.005%
インドール 3 酢酸 0.00005~0.00015%
【0053】
実験3<マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌糸体培養懸濁液中のα-ピネンの嗅覚測定法による検定実験>
マツタケ菌を、PGY培地、水 1000cc、グルコース 20g、ペプトン 2g、酵母エキス 2g、MgSO
47H
2O 0.5g、KH
2PO
40.5g、pH4.5を用い、300cc三角フラスコ内で、常温室内、静置、明所培養しマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌糸体培養懸濁液を得た(
図7)。この液に含有されるα-ピネンの嗅覚測定による検定実験を実施した。
匂いの検定は微妙で臭気の測定方法には大きく分けて2つあり、一つは、ガスクロマトグラフ等の分析機器により、においの物質、濃度を測定し表示する成分濃度表示法、二つ目は、ヒトの嗅覚を用い検定する方法である。
本発明は害虫の嗅覚による忌避効果であることから昆虫の嗅覚を利用した検定が理想であるが、そういう技術が開発されていないことから、上記のマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌培養液のα-ピネン産生の有無をヒトの嗅覚を用いてα-ピネンの有無検定を培養期間中7日から10日間、毎日午前10時にα-ピネンの匂いの有無検定を行った。匂いのない場合は、α-ピネンが産生されていないとした。(害虫の嗅覚は人間の何100万倍もの能力があるといわれており、ヒトが感知できれば、当然、害虫も感知することになる)
図56(1)は、培養5日目、雑菌が侵入していないマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の培養フラスコ。匂いは全然感じられなかった。
図56(2)は、培養10日目、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌繁殖飽和状態で、強烈な匂いがあった。これは、飽和状態がストレスとなりマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌が、α-ピネンを大量に産生したものと推測される。
図56(3)は、培養5日目、雑菌が侵入したフラスコ。α-ピネンの匂いが感じられた。
図56(4)、培養10日目、α-ピネンと雑菌の匂いが混合した強い混合臭が感じられた。
本発明者が匂いを感じるということは、害虫の嗅覚能力からみれば、強烈な匂いが放散していると考えことが出来る。
雑菌侵入がストレスとなり、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は、生存防衛のために抗菌作用を持つα-ピネンを産生したと考えることが出来る。自然界では無菌という環境は存在しない。
本発明に用いるマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌培養懸濁液は、上記の検定結果から培養10日後のα-ピネン産生したものを使用する。
【0054】
実験4<白色木材腐朽菌である白トリュフTuber菌が、動物性原料を醗酵できることを確認する実験>
白トリュフTuber菌の多様な酵素群には自然界の「タンパク質」を分解する酵素も含まれていることから、動物肉にわずかな糖を添加することで白トリュフTuber菌醗酵することが本試験によって確認された。
本実験は、試料として鰹節(
図16(1))を使用し、鰹節10g、砂糖1g、水分90%に、白トリュフTuber菌培養液5cc添加し、最低15℃、最高30℃、湿度約90%の条件で培養した(
図16(2))。発酵4日後には、
図16(3)に示すように、白トリュフTuber菌によって鰹節のタンパク質が分解され、ドロドロになって原型を留めない状態となった。
【0055】
実験5<哺乳類尿培地での白トリュフTuber菌菌糸体キチンファイバー製造実験>
図17は、哺乳類の尿培地にして白トリュフTuber菌菌糸体キチンファイバーを製造する実験を示す。尿は排泄時には無菌である。やがて細菌が繁殖して尿素がアンモニアになるが、白トリュフTuber菌は細菌を休眠させて繁殖できることを利用したものである。
哺乳類の尿は、約98%が水であり、タンパク質の代謝で生じた尿素を約2%含む。その他、微量の塩素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン酸などのイオン、クレアチニン、尿酸、アンモニア、ホルモンを含む。
白トリュフTuber菌培養に用いる場合、尿には窒素源、ミネラル源があるが、糖が足りない。このため「尿」100当り糖3g添加して、白トリュフTuber菌培地とし、これに白トリュフTuber菌培養懸濁液5ccを添加した(
図17(1))。300cc三角フラスコを使用し、最低温度15℃ 最高温度30℃の条件下で培養した。
図17(2)は、培養3日後の白トリュフTuber菌繁殖状態、
図17(3)は、培養7日後の白トリュフTuber菌繁殖状態を示し、菌糸体が液面に増殖しており、濾過すれば菌糸体キチンファイバーを採集できる。また、溶液中には生理活性物質であるピルビン酸、インドール 3 酢酸が溶存しているので、植物活力剤として利用可能である。
【0056】
実験6<白トリュフTuber菌、菜種粕を利用した菌糸体(キチンファイバー、キチンナノファイバー)生産実験>
図18は、白トリュフTuber菌 菜種粕(
図15)を利用した菌糸体 キチンファイバー、キチンナノファイバー生産及び 白トリュフTuber菌醗酵有機質肥料生産実験を示す。
菜種粕100gに白砂糖5g加え、白トリュフTuber菌培養懸濁液5cc添加して、湿度90%、最低温度15℃、最高温度35℃の条件下で発酵させた。
図18(1)は、培養4日目の白トリュフTuber菌醗酵状態を示し、
図18(2)は、培養7日目の白トリュフTuber菌醗酵状態を示し、
図18(3)は、培養10日目の白トリュフTuber菌醗酵状態を示し、多量の菌糸体が形成され、多量な「キチンファイバー」の形成が確認された。
白トリュフTuber菌醗酵有機質肥料を製造する場合、植物油残渣である「菜種粕」「豆粕」「綿実粕」などを用い、これを白トリュフTuber菌醗酵させて有機肥料を製造すると同時に、本発明の多機能性肥料複合緩効性肥料の原料としても使用する。同時に白トリュフTuber菌醗酵時に菌糸体の大量生産が可能であり、この菌糸体由来の「キチンファイバイー」「キチンナノファイバー」を用いて堅固な石膏硬化を行うことができた。
【0057】
実験7<浄水場残渣を利用した白トリュフTuber菌醗酵多機能性有機肥料によるチンゲンサイ栽培実験>
図19 は、浄水場残渣に糖、白トリュフTuber菌を添加することで、白トリュフTuber菌醗酵多機能性有機肥料に改質し、この肥料を用いてチンゲンサイ栽培を行った。
図19(1)に示す下水場残渣1000ccに糖5g、白トリュフTuber菌培養液5cc添加し、培養温度、最低10℃、最高30℃、湿度90%の条件で10日間発酵させた後の白トリュフTuber菌繁殖状態を
図19(2)に示す。糖添加によって、白トリュフTuber菌醗酵で糖から「ピルビン酸」「植物ホルモン インドール 3酢酸」を産生し、画期的な有機肥料となった。得られた肥料をチンゲンサイ栽培プランターの土壌表面に1株当たり5~10g投与したところ、
図19(3)に示すように健康に生育した。
【0058】
実験8<多機能性緩効石膏固形化学肥料粒子の水中浸漬実験>
図20は、多機能性緩効石膏固形化学肥料の粒子の大きさによる水中浸漬実験の結果を示し、水に浸漬後150日目の画像で、3mm、5mm、8~10mm粒子のいずれも原型をとどめ崩壊は見られなかった。
緩効性肥料は長期間にわたり作物に肥料を供給できる能力を具備していること必須条件である。本試験ではグリセリン、キチンファイバー、植物セルロース、PLA混和多機能性緩効石膏固形化学肥料を使用した。本発明の多機能性緩効石膏固形化学肥料は、粒子の大きさによって肥効期間が3mm粒子で1から30日、5mm粒子で30から80日、8~10mm粒子で80~15日ほどである。この実験から「石膏固化」で水田用の緩効性化学肥料製造が可能であることを示された。
【0059】
実験9<多機能性複合緩効性肥料に担持された白トリュフTuber菌生存実験>
白トリュフTuber菌の他の微生物に類を見ない多様な特性で、「画期的な減肥料、減農薬、無農薬」栽培を可能にするが、肥料に担持された白トリュフTuber菌の生存期間の実験。
製造60日(常温保存)経過後の「白トリュフTuber菌多機能複合緩効性肥料」1g粒子を水の中に投入し、水温度最低15℃、最高20℃で保持した(
図25(1))。
図25(2)は、水中に投入してから7日後の状態で、水面に白トリュフTuber菌のバイオフィルムが形成され、肥料粒子が見えない状態になっている。
本実験で、石膏で硬化した「白トリュフTuber菌多機能複合緩効性肥料」中の白トリュフTuber菌は、少なくとも製造60日経過後も活性を失わないことが実証された。
【0060】
実験10<白トリュフTuber菌による作物の菌根化実験>
本発明の目的の一つに地球温暖化による高温に耐える「菌根」を具備した作物を白トリュフTuber菌多機能肥料で作ることである。
特に冷涼な気候を好むイチゴの育苗は、真夏の猛暑の中で行われるので、今後のさらなる地球温暖化は、ますます育苗を困難なものにする。これを克服するには「根毛イチゴ」でなく、自生地の野生イチゴと同じような「菌根イチゴ」に育苗時から改質することである。白トリュフTuber菌多機能緩効性石膏固形化学肥料を施肥することで、白トリュフTuber菌と共生させ、人為的に菌根イチゴにすることができる。
図27(1)は、育苗鉢に白トリュフTuber菌多機能緩効性石膏固形化学肥料を施肥することで人為的に菌根イチゴにした菌根の画像であり、根毛がない。
図27(2)は、その拡大図である。
「菌根」になると「ケイ酸」を吸収できる根になる。ケイ酸は植物必須元素ではないが植物組織をガラス化し強固にする第17番目の元素と称される。ケイ酸の吸収によって作物の細胞、組織はガラス化リグニン、ガラス化細胞膜となって堅牢な作物となり、病害虫を抑止する。現在の有機栽培の根は「根毛」のために、分子量が150と大きい「ケイ酸」を吸収できない。そのため病害虫の被害が大きく有機栽培が挫折する。本肥料の投与によって人為的に「ケイ酸」を吸収可能な根に改変することが可能になり、強固な組織形成ばかりか、本肥料に含有している「ピルビン酸」「植物ホルモン インドール 3 酢酸」を吸収できることになり光合成不足の補完、生育促進、老化防止が可能になり、猛暑に勝つ作物にすることができる。
図27(3)は、「菌根」による「ケイ酸」吸収によってイチゴの葉がケイ酸細胞となりケイ酸クチクラ層が形成された状態を示す。
図27(4)は、イチゴ葉の拡大 画像で、イチゴ葉が排出した水(溢液現象)が乾燥して結晶化した「ケイ酸」(葉の縁の白い部分)が確認できる。
有機栽培の場合は、「根毛イチゴ」
図27(5)となるが、根毛は乾燥に弱く、約5から7日で生え変わる必要があることから、高温による光合成不足によって生え変わるエネルギーが不足するので、管理を怠ると生育不良、夏負け、減収になりやすい。
【0061】
実験11<白トリュフTuber菌 多機能植物活性剤散布によるイチゴ無農薬育苗実験>
白トリュフTuber菌多機能性植物活性剤(菌糸体懸濁液の濾過液)の30倍希釈液をイチゴ葉面に散布したところ、
図28(1)に示されるようにその10日後には鉢表面に白トリュフTuber菌が生息繁殖し菌糸体を伸ばしていた(矢印の部分)。また、白トリュフTuber菌多機能性緩効石膏固形化学肥料をイチゴの土壌表面に投与したところ、
図28(1)に示されるようにその15日後には鉢表面に白トリュフTuber菌の菌糸体が伸びていた(矢印の部分)。
本実験によって白トリュフTuber菌が土壌に生息定住し、病害菌を失活させ、空中窒素固定を行うことで「減肥料栽培」「減農薬、完全無農薬栽培」、「炭素循環有機栽培」が出来ることが示唆される。
【0062】
実験12<多機能植物活性剤散布による桃鮮度保持実験>
桃は保存期間が非常に短い果実で、輸送に苦労しており、2,3日でも鮮度、保存期間を延長することで遠距離の消費地にも供給できるようになる。そこで、桃(品種:幸茜)に、白トリュフTuber菌多機能性植物活性剤(菌糸体懸濁液の濾過液)の30倍希釈液を噴霧散布し、病害菌繁殖の抑止、ピルビン酸補給による鮮度保持延長の実験を行った
図29(1)は、噴霧散布時の状態であり、
図29(2)は、噴霧5日後の状態を示し、病気の発生が見られず、軟弱果実にならないで良好な状態であった。
【0063】
実験13<産廃ポリ乳酸プラスチックを混合した石膏肥料の水中崩壊実験>
脱炭素社会で増大するPLA産廃プラスチックであるが、分解には時間がかかりPLAが新たな「ゴミ」となる可能性がある。本発明は、このPLAを本発明の肥料と混和することで、白トリュフTuber菌が産生するキチンをエサとする土壌中の放線菌を安定的に繁殖させることにより、産廃PLA問題を解決する(特許文献3)という目的も有するので、本実験では、本発明の石膏固化肥料にPLAを混和した場合の安定性を調べた。
図30(1)は、本発明で使用する産廃PLAの細粒であり、
図30(2)は、石膏に産廃 ポリ乳酸プラスチックを10%混合した石膏粒子を示し、
図30(3)は、水中浸漬10日後の画像で、水中でもPLAを石膏に10%混合しても崩壊しないことが実証された。
【0064】
実験14<多機能性植物活性溶液の有効保存期間の検証実験>
多機能性植物活性溶液の有効保存期間は、液中に生存している白トリュフTuber菌、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の常温保存における生存の有無で決まる。
図22の左は、白トリュフTuber菌 右 マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌を新しい液体培地に二つの菌を植え付けて10日後の状態であり、
図22の右は、2020年12月1日に試験開始後、ハウス内明所で、常温(最低気温5℃、最高温度43℃)で2021年12月24日まで保存したものである(実験開始時は左のような状態であった)。保存1年後でも二つの菌は生存していた。
【0065】
実験15<α―ピネンによる植物影響(薬害)実験>
マツタケ菌産生α-ピネンの植物への影響を調べるため、白菜播種後直ちにマツタケ菌菌糸体懸濁液100倍希釈液を土壌潅注したところ
図32(1)のように発芽に影響はなかった。また発芽したレタスの葉面にマツタケ菌菌糸体懸濁液100倍希釈液を土壌潅注したところ
図32(2)のようにレタスの生育に影響はなかった
【0066】
実験16<α―ピネンによる害虫忌避効果実験>
マツタケ菌産生α-ピネンの害虫忌避効果を確認するため本発明の多機能性植物活性剤(菌糸体懸濁液の濾過液)を作物の葉面に散布して実験を行った。
図33(1)は、キュウリに「多機能性植物活性剤」の30倍希釈液を10日間隔で葉面散布したもので、アブラムシなどの害虫、ベト病などの病害の発生が認められなかった。
図33(2)の左は、キャベツに「多機能性植物活性剤」の30倍希釈液を10日間隔で葉面散布したもので、右の無処理のキャベツは青虫の食害が激しかったのに対し、青虫の被害は全くなかった。
本実験により、本発明の「多機能性植物活性剤」に含有するα-ピネン希釈液が多様な害虫に対して忌避効果があることが確認された。
【0067】
実験17<白トリュフTuber菌生息「多機能複合緩効性肥料」を用いたイチゴ栽培実験>
本発明の石膏を固化剤として使用した「多機能複合緩効性肥料」を用いたイチゴの完全無農薬栽培を試行した。
種子イチゴを赤玉土の中粒を充填した6号鉢植えに播種し、肥料成分(窒素:6、リン:6、カリ:15)、機能成分(ピルビン酸、インドール 3 酢酸 α-ピネン)を含む白トリュフTuber菌生息「多機能複合緩効性肥料」(菌糸体懸濁液の濾過液の30倍希釈液)を以下の区分に分けて用い、15日間隔で葉面散布した。
少肥料区 白トリュフTuber菌生息「多機能複合緩効性肥料」3g
基準肥料区 白トリュフTuber菌生息「多機能複合緩効性肥料」6g
図34(1)の左は少肥料区、右は基準肥料区で、播種10日後の状態で、右基準肥料区のイチゴの生育は左少肥料区に比べ、草丈、葉が大きく、ピルビン酸による光合成不足補完、インドール 3 酢酸による生育促進が顕著である。
図34(2)は、基準肥料区のイチゴの葉の大きさを示すが、肥料成分のみでは、これほど大きな葉にはならない。
イチゴは農作物の中で最も農薬使用回数が多く「あまおう」で約70回、「とちおとめ」で約50回であるが、本実験で、播種から10日間、病害虫ゼロであった。
【0068】
実験18<白トリュフTuber菌菌根菌生息「多機能緩効性石膏固形化学肥料」と「多機能植物活性剤」によるハウス内「本わさび」栽培実験>
本わさび(山わさび)は深山の清水が涌き流れる水辺に自生する冷涼な気候を好む日本固有のアブラナ科植物である。このため栽培地は伊豆、安曇野など一年中水温の変わらない水流のある地域であり、特殊な「わさび田」で栽培されている。平地での栽培は高温下で生育不良となり栽培はほとんど不可能である。この「本わさび」を試験材料に用い「多機能植物活性剤」の耐暑性、光合成不足(高温による)補完試験を実施した。
[実験方法]
本わさび苗を、ペレポスト(商品名(有)最上蘭園製)を培養土にして6号ポリ鉢に植えハウス内栽培した。
肥料は、本発明の「多機能緩効性複合肥料」6gを施肥し、15日間隔で「多機能植物活性剤」30倍希釈液を葉面散布して6月間(11月から5月まで:最低5℃、最高28℃)栽培し、次の3月半(6月から9月中旬:最低18℃から25℃、最高25から43℃)は自然温度管理で栽培した。
図35(1)は、8月15日(最低温度24℃ 最高温度41℃)の状態を示し、(2)は真上からの画像である。
本実験は、「本わさび」の生育適温から大きく高温条件下での栽培であるが、その生育は旺盛で「夏負け」を知らない生育である。エネルギーを供給、補完する「ピルビン酸」や、植物ホルモン インドール 3 酢酸による効果と考えられる。このことは気候変動で耐暑性の弱い作物が、多機能性肥料複合緩効性肥料と多機能性活力剤」の投与で、安定した生産ができることを示唆するものである。
【0069】
実験19<白トリュフTuber菌生息「多機能性植物活性剤」散布によるクローバー・牧草生育効果実験>
気候変動による地球温暖化で、牧畜における牧草・クローバーの生育が大きく阻害されている。乳牛、クローバーも共に冷涼な気候を好むので、エサである牧草の生育が「夏負け」で生産量が減少すれば、搾乳量が減少し乳製品の高騰となる。本発明は、この問題を「多機能性植物活力剤」の散布によって「本わさび」と同じように「耐暑性」と「生育促進」による牧草の増収、安定の可能性実験を実施した。
[実験方法]
クローバーに雪解けと同時に4月上旬から多機能性植物活力剤(白トリュフTuber菌菌糸体懸濁液の濾過液)30倍希釈液を15日間隔で行い7月下旬まで行った。
図36(1)は、クローバーの試験圃場で、〇印 多機能性植物活力剤散布区、□印 無処理区である。
図36(2)は、実験開始から30日後の多機能性植物活力剤散布区の状態を示す。夏負けしないで旺盛な生育を示し、花を咲かせることなく茎葉を伸ばし続けるので多収穫できる。
図36(3)は、実験開始から30日後の無処理区の状態を示す。株が高温で老化し、休眠する前に子孫を残すために花を咲かせている。やがて9月下旬まで「休眠」に入る。この状態では7月から9月まで牧草の収穫はできない。
図36(4)は、実験開始から1月後の多機能性植物活力剤区と無処理区の葉を比較したもの。同じ場所、同じクローバーであるが、多機能性植物活力剤散布区の巨大な茎葉は、猛暑に負けないことを実証した。
【0070】
実験20<白トリュフTuber菌生息「多機能性植物活性剤」及び多機能性緩効石膏固形化学肥料による稲栽培実験>
本発明の白トリュフTuber菌多機能性肥料複合緩効性肥料、多機能性植物活力剤は減肥料稲栽培に使用した時の稲生育への効果や影響を確認する実験を行った。
[実験方法]
試験材料 イネ(ササニシキ)(
図37(1))
5号ポリ鉢を3個用意し。各鉢に肥料含有ゼロの赤玉土小粒を充填しイネを植えた。(
図37(2))
1区 多機能性肥料複合緩効性肥料(窒素:6,リン:6,カリ:10%)5g
多機能性植物活力剤30倍希釈液を実験開始日から15日間隔で葉面散布
2区 肥料ゼロ
多機能性植物活力剤30倍希釈液を実験開始日から15日間隔で葉面散布
3区 無処理
図37(3)は、植え付けから1月半後の状態を示す。
1区の多機能性肥料複合緩効性肥料と多機能性植物活力剤併用は素晴らしい良好な生育を示した。
2区の無肥料、多機能性植物活力剤のみ葉面散布であったが、無肥料でもここまで生育した。多機能性植物活力剤の「ピルビン酸」によるエネルギー補給と「インドール 3 酢酸」の植物ホルモンの効果と考えられる。
3区 完全無肥料区の生育。2区と3区を比較すれば成長が明らかに劣っている結果となった。
【0071】
実験21<本発明の多機能性緩効性石膏固形化学肥料を用いた白菜栽実験>
試験材料として、白菜(松島2号)を用いた。
6号ポリ鉢に赤玉中粒(肥料含有なし)を充填し白トリュフTuber 菌担持緩効性化学肥料(成分 N6、P6 K10)を1鉢に6g施肥し、播種後20日目の苗を植栽した。
図38(1)は、植栽後20日目の状態を示し、
図38(2)は、その拡大図であり、順調な生育状況であることが判る。
【0072】
実験22<白トリュフTuber 菌生息多機能性液体肥料(活性剤)によるイチゴ炭疽病、害虫抑止実験>
イチゴ栽培にとって「炭素病」「萎黄病」「うどん粉病」は三大病害でありこれまで根絶は不可能であった。白トリュフTuber菌によりこれらの病害菌が試験管の中での実験では失活することが確認されたこと(特許文献4)、及びマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体産生のα-ピネンが吸汁害虫のアブラムシ、ダニ、スリップス、コナジラミの繁殖を抑止することが期待できることから、イチゴの完全無農薬栽培実験を行った。
[実験方法]
露地栽培イチゴに対し、4月上旬から15日間隔で白トリュフTuber菌多機能植物活性剤30倍希釈液散布した。
図39(1)は、無処理の半年後の状態で、イチゴ株はすべて枯死した。
図39(2)は、本発明の活性剤を散布した株の半年後の状態で、炭疽病を抑え込んで健全に生育していた。
【0073】
実験23<白トリュフTuber 菌担持多機能性緩効石膏固形化学肥料を用いたレタス栽培実験>
レタスは冷涼な気候を好む野菜で、地球温暖化の高温、集中豪雨などによる病害の大発生などにより、夏季に生産が不安定となり価格暴騰がしばしば起こるようになっている。これはレタスの適地が限られていることから、土壌劣化も問題になっている。
これを改善するには、現在の堆肥、化学肥料の投与では土壌病害の発生が更に多くなることから、白トリュフTuber 菌担持緩効性複合肥料のレタス栽培試験を平地の夏季で行った。
本肥料には、暑さに負けないエネルギーを供給する「ピルビン酸」生育を促進する「インドール 3 酢酸」土壌病害菌を失活させる「白トリュフTuber菌」「α―ピネン」を担持含有していることから、レタスの夏期生産問題を解決できると予想した。
[実験方法]
5号ポリ鉢に、赤玉土80 腐葉土 20の混合比培養土を充填し、白トリュフTuber 菌担持緩効性複合肥料(N6、P6、K10)を6g施肥した。
供試材料として、結球性レタスを用い、播種:5月25日、3号鉢栽植6月3日(
図40(1))、その1週間後に、5号ポリ鉢に植栽した。
図40(2)は、5号ポリ鉢に植栽後、10日後の状態であり、画像が示すように真夏でも素晴らしい生育し、本肥料がレタス栽培に大きな効果があることを示唆している。
【0074】
実験24<白トリュフTuber 菌担持多機能緩効性石膏肥料による光合成不足補完実験>
気候変動によって高温障害、曇天、雨天などによる「光合成不足」で生育不良、品質低下、果実の着色不良、適地適産の崩壊などで作物の安定生産が脅かされている。
本発明はこのような問題を白トリュフTuber菌産生「ピルビン酸」「植物ホルモンインドール 3 酢酸を肥料に担持させることでエネルギー補完を行い、インドール 3 酢酸による生育促進、老化防止によって安定した生産を行える「肥料」の開発を発明目的にしている。
そこで、白菜を供試材料にして、充分な光のある条件と、半日日照不足の場所での本発明の肥料投与における生育試験を実施した。
6号ポリ鉢に白トリュフTuber 菌担持多機能緩効性複合肥料6g投与し、白菜を栽培した。
実験は、
図41(1)で示される奥エリアを日光不足区、前エリアを充分な日光区とした。
図41(2)は、30日後の充分な日光区の白菜生育状況、
図41(3)は、60日後の日光不足区の白菜生育状況を示す。その結果光充分区、光不足区に生育の差異が認められない生育をした。
【0075】
実験25<特別仕様白トリュフTuber菌多機能有機質肥料による白菜、イチゴ栽培実験>
本実験では、植物油搾り粕を白トリュフTuber菌醗酵で製造した肥料を用いた。
本肥料には白トリュフTuber菌が醗酵で産生する「ピルビン酸」「インドール 3 酢酸」が含有しており、更に「α-ピネン」を含有している。ただ単に肥料成分窒素N、リンP、カリKを有機質由来にする慣行有機肥料と違い、地球の気候変動に対応し、2050年の100万ha有機栽培に適応する「減肥料」「減農薬」栽培を可能にする肥料である。本肥料によれば、光合成不足補完し、土壌病害菌を失活させることができる。
図42(1)は、3号ポリ鉢のイチゴ育苗に、本発明の白トリュフTuber菌の発酵を利用した多機能有機質肥料1g投与し、8月の生育状況を示している。2020年8月は連日猛暑日が続いてイチゴ育苗は、猛暑との戦いであるが、連日の高温下でも順調な生育を示していることが判る。
図42(2)は、9月下旬イチゴの生育状況で、素晴らしい健康な苗になっていた。
図42(3)は、8月1日に播種した白菜の8月25日の生育状態である。白菜を猛暑の8月1日に播種した場合、慣行肥料では夏負け、軟腐病で全滅することが多いが、本肥料投与では猛暑の中、健康に生育し軟腐病に罹病した株は1鉢も見られなかった。
図42(4)は、白菜8月27日に6号ポリ鉢に鉢上げ栽植し、本発明の白トリュフTuber菌多機能有機質肥料10gを施肥した白菜で、9月25日の生育状況を示す画像である。夏負け、軟腐病の発生株ゼロで、適期栽培ではないにもかかわらず、順調な生育を示した。
【0076】
実験26<白トリュフTuber菌多機能性複合植物活性剤によるナデシコ生育促進実験>
ナデシコを供試材料として多機能性複合植物活性剤の生育に及ぼす影響を確認する実験を行った。
[実験方法]
供試材料として、4号ポリ鉢植えナデシコを使用した。
処理区 本発明の多機能性複合植物活性剤30倍希釈液を10日間隔で葉面散布。
5月1日 試験開始
無処理区 処理なし
図43で、Aは無処理区、Bは処理区である。
図43(1)は、6月20日の画像であり、花の大きさ、花数はB処理区が約20%大きく又多くなった。
図43(2)は、横からの画像であり、B処理区では約20%草丈が高くなった。
【0077】
実験27<白トリュフTuber菌「多機能緩効性石膏固形化学肥料」及び「多機能性植物活性剤」併用による高温障害防止、光合成補完イチゴ栽培実験>
本発明の白トリュフTuber菌「多機能複合緩効性肥料」及び「多機能性植物活性剤」開発の主な目的の一つは、炭酸ガス排出による地球温暖化によって、作物が高温障害になり光合成減少から安定した作物栽培が年々難しくなっている現状を、革新的な新規肥料の開発を行い、光合成不足のエネルギーを補完し、安定した栽培を行えるようにすることである。
本実験は、白トリュフTuber菌の菌醗酵によって産生する「ピルビン酸」「インドール 3 酢酸」と白トリュフTuber菌の「菌根菌」を利用することで、光合成不足を解消できることを確認するために実施した。
[実験方法]
供試材料として、イチゴ(品種:よつぼし)の露地栽培を使用した。
2020年10月上旬に白トリュフTuber菌「多機能複合緩効性肥料」を1株当たり6g元肥として植穴に投与して定植え、2021年4月5日から15日間隔で、多機能性植物活力剤50倍希釈液を葉面散布した。
図44(1)は、翌年の8月15日の状態を示し、
図44(2)は、その拡大画像である。イチゴは冷涼な気候を好む植物であり、慣行肥料栽培では、収穫終了後5月ごろ株を廃棄する。高温期を元気で越せない古株になるからであるが、本試験実施イチゴは、真夏の猛暑にも夏負けすることなく、無病で若さを持続していた。
【0078】
実験28<トリュフTuber菌「多機能複合緩効性肥料」及び白トリュフTuber菌「多機能植物活性剤」による稲育苗実験>
稲育苗時には多様な病害が発生する。有機水銀剤が禁止されてから高温水殺菌が行われているが、死なない病害菌多く育苗で失敗しているケースが多くなっている。特に有機栽培のコメ生産では農薬を使用しないことから、この育苗催芽時の高温多湿条件で多様な病害が発生する。
白トリュフTuber菌は稲の多様な病害菌を休眠、失活させることができることから育苗土に白トリュフTuber菌多機能緩効性複合肥料を投与、発芽後は白トリュフTuber菌多機能植物活性剤の葉面散布することで、完全無農薬育苗を行うことが出来る。より完璧にする場合は育苗箱の下に吸水シートを敷き、これに白トリュフTuber菌多機能植物活性剤を散布し、給水シートに白トリュフTuber菌を予め生息繁させることで達成できる。
図45(1)は、白トリュフTuber菌多機能緩効性複合肥料と、発芽後は白トリュフTuber菌多機能植物活性剤の葉面散布と、苗箱の下に吸水シート(矢印部)に白トリュフTuber菌多機能植物活性剤を散布することで、健全な育苗に成功した例。
図45(2)は、殺菌不良で「馬鹿苗病」(矢印部)が発生した苗。
図45(3)は、苗イモチ病(矢印部)に侵された苗。
【0079】
実験29<マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養産生α-ピネン含有懸濁液担持石膏粒子投与による害虫忌避効実験>
マツタケ菌糸体産生「α―ピネン」が多様な害虫に対して優れた忌避効果を表すことが本発明者の各種試験によって明らかになった。そこでマツタケ菌培養液と石膏を1;1の体積混合比でミックスし水を添加し固化粒状1gを、白菜、キャベツ、チンゲンサイの幼苗鉢に1個鉢表面において忌避効果の実験をした(
図46)。これだけで、白菜、キャベツ、チンゲンサイの幼苗は、害虫に侵されることなく生育した。
【0080】
実験30<白トリュフTuber菌生息「多機能性緩効石膏固形肥料」によるトマトの「亜硝酸吸収障害」防止実験>
世界各地の圃場において永年に渡る多肥料栽培によって「亜硝酸吸収障害」が発生し、多くの作物で生育不良となり安定した生産が不可能となり、圃場放棄面積が増大している。この亜硝酸吸収障害を白トリュフTuber菌生息「多機能肥料」を施すことによって、白トリュフTuber菌が窒素源として亜硝酸を「エサ」とすることで、土壌内に滞留している亜硝酸を減少させることができる。
図47(1)は、赤玉土に硝酸カリの500倍溶液を7日置きに数回潅注して発生した亜硝酸吸収障害のトマトを示す。
図47(2)は、(1)の土壌に、白トリュフTuber菌生息「多機能性植物活力剤」100倍溶液を潅注し、その20日後の障害回復したトマトを示す。
【0081】
実験31<多機能性緩効性固化化学肥料10mm粒子によるセロリ栽培実験>
セロリ苗を、培養土(ペレポスト:夢扉製)を単用で充填し、肥料として本発明の多機能性緩効性石膏固形化学肥料10mm径120日型を10g施肥した7号鉢(21cm)に、定植した。
図48(1)は、定植後50日後の状態を示す。葉菜類の栽培は肥料の安定した供給が求めたれるが、定植後50日経過でもこの期間肥料切れを起こすことなく、すくすくと安定して生育した。
図48(2)は、定植後100日後の状態を示す。100日間安定して肥効効果が継続して、葉の肥料切れは見られなかった。
【0082】
実験32<マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体懸濁液に含まれるα-ピネンによるバラ切り花鮮度保持延命実験>
マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の産生α-ピネンが含有するマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養液の100倍希釈液によるバラ切り花延命効果を試験した。切り花の花保ちを悪くするのは、茎葉組織内の共生細菌繁殖よって、水の汚染、茎などの導管への共生細菌繁殖によって水が揚がらないことによる。α-ピネンは植物組織共生細菌の繁殖を抑え込む特性を持つことから、切り花の延命効果を期待して実験した。
図49(1)は、11月20日に切り花したバラの画像であり、花瓶にマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養液の100倍希釈液を数滴滴下した。
図49(2)は、12月18日の状態を示す画像で、花保ちの悪いバラが、約25日元気。延命効果が期待できる結果になった。
【0083】
実験33<マツタケ菌産生 α-ピネン溶液による植物内生菌の抗菌実験>
[実験方法]
試験材料としてキャベツ茎を用いた。
次亜塩素酸Na区:次亜塩素酸Na5%溶液に5分浸漬
マツタケ菌区:マツタケ菌Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液原液に6時間浸漬
キャベツの茎「生長点近傍組織」を高さ約1cmを採取し、葉を削除した組織を1区では5分浸漬、2区では6時間浸漬後、約5×5mmの大きさの切片にカットしたものを、オートクレーブしたハイポネックス培地で培養した。培養温度20℃、暗所静置培養した。
図50(1)は、培養7日後の次亜塩素酸Na区の画像であり、(2)はその拡大画像。組織表皮に付着した糸状菌、細菌は殺菌したが、組織内の内生共生菌、細菌を殺菌できず、多様な細菌のコロニーが発生した。
図50(3)は、培養7日後のマツタケ菌区の画像であり、(4)はその拡大画像。組織表皮に付着した糸状菌、細菌だけでなく、組織内の内生共生菌、細菌を殺菌して、細菌のコロニーが見られなかった。
図50(5)は、培養10日後のマツタケ菌区の画像であり、(6)はその拡大画像。組織表皮の糸状菌雑菌は死滅することなく多様な糸状菌のコロニーが発生した。
この試験から、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌が産生するα-ピネンは、細菌に強い抗菌性が認められたが、糸状菌雑菌の抗菌作用は認められなかった。
【0084】
実験34<白トリュフTuber菌生息多機能緩効性石膏固形化学肥料の水田施与によるメタン菌繁殖抑止実験>
地球温暖化は炭酸ガスだけでなく、水田から排出されるメタンガスが大きな問題になってきており、水田におけるメタン菌の繁殖抑止技術が必要になってきた。本実験は、本発明の白トリュフTuber菌生息多機能性緩効石膏固化化学肥料、白トリュフTuber菌生息緩効性有機質肥料の水田施肥が、嫌気性細菌であるメタン菌の繁殖抑止に著しい効果があること確認するために実施するものである。
図51(1)は、本実験で使用した、白トリュフTuber菌生息多機能緩効性石膏固形化学肥料
図51(2)は、晩秋の水田の画像で、稲刈り取り終わった水田にはメタン菌のエサになる「藁」が散らばっている。この状態の水田に白トリュフTuber菌生息多機能緩効性有機質肥料を10a当たり10kg施与し、白トリュフTuber菌のエサにすることで、メタン菌繁殖を抑え込むことが出来る。メタン菌の生育適温は水温25℃の夏季である。晩秋の水田土壌は5℃から10℃。白トリュフTuber菌は0℃から40℃で生育繁殖できることから、晩秋から早春の水田表土で白トリュフTuber菌が繁殖優先菌となりメタン菌の繁殖を抑止することで、水田からのメタンガスを抑止できる。
図51(3)は、春の水田の画像で、早春から耕起前の水田は前年の稲の残渣、藁が表面に散らばっている。この状態の水田に、稲の施肥量の白トリュフTuber菌生息多機能性緩効性石膏固化化学肥料を施肥する。その後耕すことで土壌内に稲藁をエサにして白トリュフTuber菌が繁殖優先菌となり、施肥と同時にメタン菌の繁殖を抑止して、メタンガスの発生が抑止できる。
図51(4)は、田植え風景の画像で、田植え機に白トリュフTuber菌生息多機能性石膏化学肥料施肥機をセットし、田植えと同時に本肥料を施肥することで、水中で好気性菌である白トリュフTuber菌が繁殖優先菌となりメタン菌の繁殖を抑止し、その後の高温期におけるメタンガスの排出を抑え込むことが出来る。
図51(5)は、水田の模式図で、メタン菌、白トリュフTuber菌生息エリアを示す。水田におけるメタン菌の生息エリアは酸素の少ない「還元槽」であり、温度が25℃以上になるとこの還元槽エリアで大繁殖し多量のメタンガスを排出する。 白トリュフTuber菌の繁殖エリは酸素の豊富な上層の「酸化層」であり、白トリュフTuber菌生息多機能性石膏化学肥料をこの層に施肥することで、メタン菌の繁殖を抑え込むことが出来る。
図51(6)は、真夏の清澄な水でメタン菌が生育していない水田の画像であり、この状態からメタン菌が深水水田で大繁殖しメタンガスを排出するようになる。日本の稲作ではこの時期に水を抜いて「中干」することで嫌気生菌のメタン菌を不活性してメタンガスの排出を抑止しているが、日本以外のほとんど国の稲作では「中干」の技術がない。このためメタンガス排出が問題になる。本発明の白トリュフTuber菌生息多機能性液体植物活力剤50から100倍希釈液を、10a当たり100Lをドローンなどで散布すれば、水面で白トリュフTuber菌が大繁殖しメタン菌の繁殖を抑えこむことが出来る。
【0085】
実験35<多機能性化学液体肥料土壌潅注による播種、発芽への影響実験>
多機能性液体化学肥料は、肥料成分の他に白トリュフTuber菌菌糸体培養懸濁、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養懸濁液で構成されている。従って、本液体化学肥料には、二つの菌が産生する多様な生理活性物質である、ピルビン酸、インドール 3 酢酸、α-ピネン、アミノ酸、などを含有している。これらの成分が種子、発芽に及ぼす影響を確認するために実験した。
図52(1)は、本実験の供試作物で左から、白菜、キャベツ、チンゲンサイである。
これらの種子を多機能性液体肥料1000倍希釈液に10分浸漬後、赤玉小粒を充填した鉢に播種、その後100倍希釈液で充分潅水した。画像は、播種5日後の状態である。種子浸漬、播種後潅水の影響を認められなかった。
図52(2)は、(1)と同じ条件で試験を行ったメロンで、播種10日後の状態である。(1)のアブラナ科作物と同じようにウリ科のメロンでも種子浸漬、播種後の潅水でも影響が認められなかった。
【0086】
実験36<多機能肥料、多機能性植物活性剤による農業圃場以外エリアにおける緑化、芝草栽培実験>
公園、工場緑地、ゴルフ場など農業圃場以外のエリアでは、芝草、クローバー、樹木などの肥料は「化成肥料」「被覆肥料」などが投与され、ゴルフ場では多量の「農薬」が使用されている。
図53(1)は、ゴルフ場の芝草に多機能性緩効石膏固形化学肥料大粒150日型(肥料成分 N6,P6 K15%)肥料を3月に10aa当たり50kg投与し、本発明の多機能性植物活性剤100倍希釈液を30日間隔で5月から葉面散布した。画像は8月下旬の状態であり、減肥料無農薬ゴルフ場とすることができた。
図53(2)は、工場緑地の芝草、樹木に、多機能性緩効石膏固形化学肥料大粒150日型(肥料成分 N6,P6 K15%)を、樹木1本当たり500g投与し、早春に樹木1本あたり、多機能性植物活性剤100倍希釈液を30日、芝草には多機能性植物活性剤100倍希釈液を30日間隔で5月から葉面散布した。画像は、8月下旬の状態であり、減肥料、無農薬栽培工場緑地となった。
図53(3)は、市中公園の緑化における芝、樹木緑化のため、多機能性緩効石膏固形化学肥料大粒150日型(肥料成分:N6,P6、K15%)を樹木1本あたり500g投与し、早春に樹木1本あたり、多機能性植物活性剤100倍希釈液を30日、芝草には多機能性植物活性剤100倍希釈液を30日間隔で5月から葉面散布した。画像は、8月下旬の状態である。
【0087】
実験37<多機能性緩効石膏固化化学肥料と機能性植物活性剤併用によるイチゴ完全無農薬栽培実験)>
イチゴは作物の中で最も農薬の散布回数が多い。「あまおう」で約70回、「とちおとめ」で50数回である。本発明の多機能性緩効石膏固化化学肥料と多機能性植物活性剤併用によって、育苗から収穫までの全栽培期間の完全無農薬栽培が可能となった。
図54(1)は、完全無農薬栽培のイチゴの2022年1月5日の画像である。
品種は左が「やよいひめ」、右が「とちおとめ」。両種共、40gr、糖度10度であった。
図54(2)は、イチゴ(とちおとめ)の2021年6月5日の育苗であり、3,5号ポリ鉢に培養土(ペレポスト 夢扉製)を充填し、肥料として、本発明の多機能性緩効石膏固形化学肥料(小粒、3mm、1から30日型)を、1鉢当たり2gr施肥し、10日間隔で多機能性植物活性剤50倍希釈葉面散布した。
図54(3)は、(2)の苗を9月上旬に定植し、肥料として、本発明の多機能性緩効石膏固形化学肥料(10mm、150日型、(N6 P6,5 K12)を1株当たり6gr施肥し、10日間隔で多機能性植物活性剤50倍希釈葉面散布して栽培し、2022年1月5日に撮影した画像である。
【0088】
実験38<多機能性植物活性剤の葉面散布によるイチゴ自殖念実率アップ実験>
ミツバチが絶種すれば人類は滅ぶとまで言われるミツバチによる受粉の効果は果樹、果実野菜生産において非常に重要である。この作物の稔実率は光合成エネルギーの多少に左右される。自家受粉可能なイチゴのハウス栽培において、現在の登録品種のほとんどが近親交配のためが花粉稔性率低く、更に光合成不足からツバチなどによる受粉が必須要件であり、このミツバチ導入に費用が必要となる。さらにイチゴ栽培管理とは別に、デリケートなハチであるミツバチの飼育、管理に多くの労力を必要としている。
そこで、真核生物のエネルギー源である「ピルビン酸」を含有する多機能性植物活性剤の定期的な(15日間隔)葉面散布によるエネルギー補給で、花粉稔性、雌蕊稔性を高めてミツバチのいない条件下でのイチゴ結実試験を実施した。
図55(1)は、ミツバチを排除したイチゴハウスの画像であり、(2)は、ハウス内栽培イチゴに11月初旬から15日間隔で、本発明の多機能性植物活性剤を30倍に希釈して15日間隔で4月下旬まで葉面散布した、イチゴ結実状態(4月30日)の画像であり、(3)は、その後、熟して収穫期を迎えたイチゴ(5月15日)の画像である。
画像が示すようにミツバチによる受粉がなくとも、100%近い結実率となり、殆ど「奇形果」も見られない結実性を得ることが出来た。
この実験により、稔実性を高めるには「ピルビン酸」の投与が有効であることが実証され、ピルビン酸を含有する多機能性植物活性剤の多様な作物への葉面散布で、訪花昆虫、ミツバチの激減しているエリア、猛暑による稔実性低下においても、自家受粉、他家受粉の作物で安定した生産が可能になることが示唆された。ピルビン酸のエネルギー補給で暑さに負けない作物にすることで健全な花粉、雌蕊をつくることが可能になる。
【0089】
実験39<マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の種類による液体培養での生育速度の測定実験>
マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌は、世界の多くの国に自生する担子菌菌根菌であるが、一つとして同じ特性の菌はない。共通する特性は、担子菌の中で無菌培養した場合、その生育速度は最も遅い部類の菌として知られている。液体培養の場合、飽和繁殖までの期間は数ヶ月から1年を要し、この遅い繁殖速度では、本発明を大規模に実施することはできない。本発明者により、3種のマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌の中から、超速で生育する菌種を発見したことで、本発明の大規模実施が可能となった。
[培養条件]
温度:最低温度5℃、最高温度15℃(室内常温 明所、静置培養)
培養形態:液体培養(300cc三角フラスコ使用)
培養開始日:2022年3月10日
写真撮影日:2022年3月20日
図57(左) 本発明で使用したマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌、日本産、山形県寒河江市産、低温生長性が抜群で培養約10日で飽和状態まで生育した画像
図57(中) カナダ産マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌、温生長性が低く生育が遅い。大量生産は不可能。
図57(右) 中国産マツタケ菌、低温生長性が低く生育が遅い。大量生産は不可能。
【0090】
実験40<人工マツタケ菌床のおけるα-ピネン官能実験>
実験37のマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌液体培養菌糸体バイオフィルムを利用して、α-ピネンの官能試験の補完実験を行った。
官能検定比較 基準材料:テレピン油
[説明]テレピン油の主成分はα-ピネン、β―ピネンである、テレピン油特有の香りが検体にあれば、検体にα-ピネン、β―ピネンが存在することになる。
図58(1)は、松の根共生を削除した菌床に形成したマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌2020sagae 菌のシロの画像。
このシロのα-ピネン官能実験で、マツタケ自生地シロ(山形県 高畠町マツタケ山のシロ)の香りが、テレピン油と同じであり、前記マツタケ自生地シロに、α-ピネンが含有されていることを確認した
図58(2)は、シロの拡大画像
図58(3)は、人工菌床の鉢にシロを形成したマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌2020sagae 菌。この鉢のシロでも、α-ピネン特有のテレピン油と同じ香りがするることを官能実験で確認した。
このように、α-ピネンの有無の判別は「テレピン油」の香りの有無で判別できる。テレピン油はマツ科の樹木から得られる松脂を蒸留することで得られる松精油であり、油絵具の薄め液、塗料、ワニスの溶剤として使用されている。
【0091】
実験41<テレピン油とマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌2020sagae 株菌の液体培養懸濁液(α-ピネンと液体培地、諸産生成分の混合液)の葉面散布(噴霧)によるアブラムシの予防効果実験>
松脂にもα-ピネンは含有しており松脂を精製して「テレピン油」が製造されている。このテレピン油の主成分はα-ピネン、β―ピネンであることから、テレピン油とマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌2020sagae 株菌の液体培養懸濁液(α-ピネンと液体培地、諸産生成分の混合液)の葉面散布(噴霧)によるアブラムシの予防効果実験を実施した。
供試材料:キャベツの花茎(鉢植えキャベツ)
試験方法:テレピン油は原液、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌培養懸濁液30倍希釈液をキャベツの周囲エリアに噴霧散布。なお、テレピン油散布区とマツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌懸濁液散布区のエリアは芳香成分の互いの影響を考量して約10m離して栽培鉢を設置して試験した。
処理日:5月5日 第1回目、5月15日 第2回目
調査日(写真撮影日)5月15日
図59(1)は、キャベツの花茎散布30日後のアブラムシ発生比較画像で、左がテレピン油散布区で、アブラムシ大発生し、右は、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌懸濁液30倍希釈液散布区 アブラムシ発生なし。
図59(2)は、テレピン油散布区の拡大画像。
図59(3)は、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌懸濁液散布区の拡大画像。
大自然の生態系の奥深い謎が、アブラムシとα-ピネンの間関係にも存在する。
理由は明らかではないが、純粋に精製したα-ピネンのテレピン油ではアブラムシ予防効果が見られないが、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体の芳香成分は約60種確認されているが、α-ピネンと多種類の芳香成分の混合液の懸濁液散布で、アブラムシ(ダニ、スリップス、コナジラミなどの吸汁害虫)の嗅覚学習で、散布エリアに、作物に寄り付かない忌避効果で散布30日後でも発生を確認できなかった。自然界は「複雑系であり、人間の化学が純粋に精製したα-ピネンの香りは自然界には存在しない。虫の嗅覚の進化は複雑な香りに適応して行われてきた。そのために、生物との関りでは純粋精製することは望ましくない場合がある。
本試験によって、本発明の「多機能性肥料」には純粋に精製したα-ピネンに使用は不可であり、マツタケ菌 Tricholoma matsutake 菌菌糸体培養菌糸体由来のα-ピネン懸濁液を使用することが望ましいことが証明された。