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特許7687775リチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20250527BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250527BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250527BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250527BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20250527BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20250527BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
H01M4/1391
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023515359
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 KR2022005564
(87)【国際公開番号】W WO2022255636
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072238
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041454
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ソプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】テ・グ・ユ
【審査官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107706351(CN,A)
【文献】特表2018-523281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、
前記正極集電体上に位置し、正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含む正極合材層と、を具備し、
前記第1導電材は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有し、
面抵抗が2.6Ω/sq.以下であり、
前記正極添加剤の表面で前記第1導電材が電気的ネットワークを形成する、リチウム二次電池用正極:
[化学式1]
LiCo(1-q)
前記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項2】
正極合材層は、第2導電材をさらに含み、
前記第2導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックおよびサーマルブラックのうち1種以上を含有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項3】
正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、
正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.5~1.2の比率R12/R1を有するか、または
正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.1~0.8の比率R12/R2を有する、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項4】
正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、
正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.7~1.0の比率R12/R1を有するか、または
正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.2~0.6の比率R12/R2を有する、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項5】
正極添加剤は、空間群がP4/nmcである正方晶系構造を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項6】
正極添加剤の含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項7】
第1導電材の含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項8】
第1導電材および第2導電材の総含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部である、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項9】
第2導電材は、第1導電材100重量部に対して20~60重量部含まれる、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項10】
正極活物質は、下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極:
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
前記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【請求項11】
下記化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合してプレ分散液を製造する段階と、
製造されたプレ分散液、正極活物質およびバインダーを混合して、正極スラリーを製造する段階と、
正極集電体上に前記正極スラリーを塗布して、正極合材層を製造する段階と、を含み、
前記第1導電材は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有し、
製造された正極の面抵抗が3.0Ω/sq.以下である、リチウム二次電池用正極の製造方法:
[化学式1]
LiCo(1-q)
前記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項12】
前記プレ分散液を製造する段階は、10%以下の相対湿度の条件で行われる、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項13】
正極スラリーを製造する段階は、第2導電材を追加混合する、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の正極と、負極と、前記正極と負極の間に位置する分離膜と、を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。本出願は、2021年6月3日付の韓国特許出願第10-2021-0072238号および2022年4月4日付の韓国特許出願第10-2022-0041454号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0002】
最近になって、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0003】
リチウム二次電池の負極材料としては、黒鉛が主に用いられているが、黒鉛は、単位質量当たりの容量が372mAh/gと小さいので、リチウム二次電池の高容量化が難しい。これによって、リチウム二次電池の高容量化のために、黒鉛よりも高いエネルギー密度を有する非炭素系負極材料として、シリコン、スズおよびこれらの酸化物などのように、リチウムと金属間化合物を形成する負極材料が開発、使用されている。しかしながら、このような非炭素系負極材料の場合、容量は大きいが、初期効率が低いため、初期充放電中のリチウム消耗量が大きく、非可逆容量損失が大きいという問題がある。
【0004】
これと関連して、正極材料にリチウムイオン供給源または貯蔵所を提供することができ、電池全体の性能を低下させないように、最初サイクル後に電気化学的に活性を示す材料を使用して、負極の非可逆容量損失を克服しようとする方法が提案された。具体的に、犠牲正極材または非可逆添加剤(または過放電防止剤)として、例えば、LiCoOのように過量のリチウムを含む酸化物を正極に適用する方法が知られている。
【0005】
一方、上記LiCoOのような従来の非可逆添加剤は、一般的にコバルト酸化物などを、過量のリチウム酸化物と反応させて製造される。このように製造された非可逆添加剤は、構造的に不安定で、充電が進行されるにつれて、下記のように多量の酸素ガス(O)を発生させるが、二次電池の初期充電、すなわち電池の活性化時に非可逆添加剤が全部反応せずに残留する場合、以後に行われる充放電過程で反応を起こして、電池の内部に副反応や多量の酸素ガスを発生させることができる。このように発生した酸素気体は、電極組立体の体積膨張などを誘発して、電池性能の低下を招く主な要因の一つとして作用することができる。
【0006】
【化1】
【0007】
また、従来、通常使用されている非可逆添加剤は、2D浸透ネットワーク(2D percolating network)によってほぼ不導体に近い~10-11S/cmの非常に低い粉体電気伝導度を示す。このような低い粉体電気伝導度は、正極の電気抵抗を高めるが、この場合、低いCレート(C-rate)では200mAh/g以上の大きい容量を示すが、Cレート(C-rate)が増加すると、大きい抵抗によって充放電が進行されるにつれて性能が急速に減少するので、電池の充放電容量が減少し、高速充放電が難しい限界がある。
【0008】
したがって、リチウム二次電池の電気的性能に優れていると共に、電池の安全性が改善されたリチウム二次電池に対する開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0064423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明の目的は、リチウム二次電池の電気的物性を有効に向上させ、かつ、安全性が改善されたリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
上記正極集電体上に位置し、正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含む正極合材層と、を具備し、
上記第1導電材は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有し、
面抵抗が3.0Ω/sq.以下である、リチウム二次電池用正極を提供する:
【0012】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0013】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0014】
このとき、上記正極合材層は、第2導電材をさらに含んでもよく、上記第2導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックおよびサーマルブラックのうち1種以上を含有してもよい。
【0015】
また、上記正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.5~1.2の比率R12/R1を有するか、または、正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.1~0.8の比率R12/R2を有していてもよい。
【0016】
具体的に、上記正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.7~1.0の比率R12/R1を有するか、または、正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.2~0.6の比率R12/R2を有していてもよい。
【0017】
また、上記正極添加剤は、空間群がP4/nmcである正方晶系構造(tetragonal structure)を有していてもよい。
【0018】
また、上記正極添加剤の含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部であってもよい。
【0019】
これと共に、上記第1導電材の含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部であってもよい。
【0020】
また、第1導電材および第2導電材を共に含む場合、第1導電材および第2導電材の総含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部であってもよく、この場合、上記第2導電材は、第1導電材100重量部に対して20~60重量部含まれ得る。
【0021】
一方、上記正極活物質は、下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物であってもよい:
【0022】
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
【0023】
上記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0024】
また、本発明は、一実施形態において、
下記化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合して、プレ分散液を製造する段階と、
製造されたプレ分散液、正極活物質およびバインダーを混合して、正極スラリーを製造する段階と、
正極集電体上に上記正極スラリーを塗布して、正極合材層を製造する段階と、を含み、
上記第1導電材は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有し、
製造された正極の面抵抗が3.0Ω/sq.以下である、リチウム二次電池用正極の製造方法を提供する:
【0025】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0026】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0027】
このとき、上記プレ分散液を製造する段階は、10%以下の相対湿度の条件で行われ得る。
【0028】
また、上記正極スラリーを製造する段階は、第2導電材を追加混合することができる。
【0029】
しかも、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明による正極と、負極と、上記正極と負極の間に位置する分離膜と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、 正極合材層に非可逆添加剤である化学式1で示す正極添加剤と線状構造の導電材を含有するプレ分散液を利用して製造されて、上記電極面抵抗が特定範囲を満たすように調節することによって、充放電時に発生する酸素ガス量を低減させることができると共に、リチウム二次電池の充放電効率を容易に向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1、実施例2および比較例2で製造された正極の面抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施例を有することができるところ、特定の実施例を詳細な説明に詳細に説明しようとする。
【0033】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0034】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0035】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部のみならず、下部に配置される場合も含むことができる。
【0036】
また、本発明において、「主成分」とは、組成物または特定成分の全体重量に対して50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または97.5重量%以上であることを意味し、場合によっては、組成物または特定成分全体を構成する場合、すなわち100重量%を意味することもできる。
【0037】
また、本発明において、「Ah」は、リチウム二次電池の容量単位であり、「アンペアアワー」と言い、時間当たりの電流量を意味する。例えば、電池容量が「3000mAh」であれば、3000mAの電流で1時間の間放電させることができることを意味する。
【0038】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0039】
<リチウム二次電池用正極>
本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
上記正極集電体上に位置し、正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含む正極合材層と、を具備し、
上記第1導電材は、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有し、
面抵抗が3.0Ω/sq.以下である、リチウム二次電池用正極を提供する:
【0040】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0041】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0042】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極集電体上に正極スラリーを塗布、乾燥およびプレスして製造される正極合材層を含み、上記正極合材層は、正極活物質、正極添加剤、導電材およびバインダーを含有する構成を有する。
【0043】
このとき、上記正極添加剤は、下記化学式1で示すリチウムコバルト酸化物であってもよい:
【0044】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0045】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0046】
上記正極添加剤は、リチウムを過多含有して、初期充電時に負極での非可逆的な化学的物理的反応によって発生したリチウム消耗にリチウムを提供することができ、これによって、電池の充電容量が増加し、非可逆容量が減少して、寿命特性が改善されることができる。
【0047】
その中でも、上記化学式1で示す正極添加剤は、当業界で通常使用されるニッケル含有酸化物と比較してリチウムイオンの含有量が高いため、電池の初期活性化時に非可逆反応で失われたリチウムイオンを補充することができるので、電池の充放電容量を顕著に向上させることができる。また、当業界で通常使用される鉄および/またはマンガン含有酸化物と比較して電池の充放電時に遷移金属の溶出によって発生する副反応がないので、電池の安定性に優れた利点がある。このような化学式1で示すリチウム金属酸化物としては、LiCoO、LiCo0.5Zn0.5、LiCo0.7Zn0.3などを含んでもよい。
【0048】
また、上記化学式1で示す正極添加剤は、正方晶系(tetragonal)結晶構造を有していてもよく、この中でも、コバルト元素と酸素元素とが成す歪んだ四面体構造を有するP4/nmcの空間群に含まれ得る。上記正極添加剤は、コバルト元素と酸素原子とが成す歪んだ四面体構造を有していて、構造的に不安定なので、正極の製造時に正極合材層100重量部に対して5重量部以下で使用される場合、正極スラリーの混合過程で空気中の水分や酸素と副反応を引き起こすことができる。しかしながら、本発明は、上記正極添加剤を正極スラリーの製造時に、正極添加剤をプレ分散した組成物を使用することによって、正極添加剤が空気中の水分や酸素と副反応を起こすのを防止できるという利点がある。
【0049】
また、上記正極添加剤は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部で含まれ得、具体的には、正極合材層100重量部に対して0.1~8重量部;0.1~5重量部;1~10重量部;2~10重量部;5~10重量部;2~8重量部;3~7重量部;または4~5.5重量部で含まれ得る。本発明は、正極添加剤の含有量を上記範囲に調節することによって、正極添加剤の含有量が低くて、非可逆反応によって失われたリチウムイオンを十分に補充せずに充放電容量が低下するのを防止することができ、過量の正極添加剤によって電池の充放電時に酸素ガスが多量発生するのを防止することができる。
【0050】
また、上記リチウム二次電池用正極は、正極合材層に第1導電材を含んでもよく、上記第1導電材は、線状構造を有するグラフェン、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有してもよい。
【0051】
このとき、上記第1導電材の平均サイズは、500nm以下であってもよく、具体的には、10~500nm;10~400nm;10~300nm;10~200nm;10~100nm;50~500nm;100~500nm;200~500nm;250~500nm;300~500nm;400~500nm;100~300nm;200~400nm;または50~250nmであってもよい。ここで、平均サイズとは、第1導電材の平均長さを意味する。
【0052】
本発明は、線状構造を有する第1導電材の平均サイズを上記のような範囲に制御することによって、粉体電気伝導度が低い正極添加剤の表面に導電経路を形成することができ、これを通じて、正極の抵抗をより低減することができる。
【0053】
また、上記正極合材層は、第1導電材とともに、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックおよびサーマルブラックのうち1種以上を含有する第2導電材をさらに含んでもよい。
【0054】
このとき、上記第2導電材の平均サイズは、1~100μmであってもよく、具体的には、1~80μm;1~60μm;1~50μm;1~40μm;1~20μm;1~10μm;1~5μm;10~100μm;50~100μm;10~20μm;25~50μm;2~4μm;1~3μmであってもよい。
【0055】
しかも、上記リチウム二次電池用正極は、化学式1で示す正極添加剤とともに、第1導電材を単独で含むか、第1導電材および第2導電材を含む場合、3.0Ω/sq.以下の面抵抗を示すことができる。具体的に、上記リチウム二次電池用正極は、2.8Ω/sq.以下;2.6Ω/sq.以下;2.4Ω/sq.以下;2.2Ω/sq.以下;2.0Ω/sq.以下;1.0Ω/sq.~3.0Ω/sq.;1.0Ω/sq.~2.6Ω/sq.;1.2Ω/sq.~2.6Ω/sq.;1.5Ω/sq.~2.5Ω/sq.;または1.4Ω/sq.~2.3Ω/sq.の面抵抗を示すことができる。
【0056】
また、リチウム二次電池用正極は、化学式1で示す正極添加剤とともに、第1導電材と第2導電材を共に含有する場合、第1導電材を単独で含有したり、第2導電材を単独で含有する場合と比較して電極の面抵抗がより低下することができる。具体的に、正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.5~1.2の比率R12/R1を有するか、または正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.1~0.8の比率R12/R2を有していてもよい。
【0057】
より具体的に、正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.5~1.1;0.5~1.0;0.5~0.9;0.6~1.1;0.65~1.0;または0.7~0.98の比率R12/R1を有していてもよい。
【0058】
また、正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.1~0.7;0.1~0.6;0.1~0.5;0.1~0.45;0.1~0.4;0.2~0.8;0.2~0.55;または0.2~0.5の比率R12/R2を有していてもよい。
【0059】
一例として、上記正極合材層に第1導電材と第2導電材を含有する正極の電極面抵抗R12は、正極合材層に第1導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R1に対して0.7~1.0の比率を有するか、または正極合材層に第2導電材を単独で含有する正極の電極面抵抗R2に対して0.2~0.6の比率を有していてもよい。
【0060】
本発明は、リチウム二次電池用正極の面抵抗と正極合材層に含有された導電材の種類による面抵抗比率R12/R1およびR12/R2を上記範囲に制御することによって、3.0Ω/sq.を超過する高い面抵抗;1.2を超過する面抵抗比率R12/R1;および0.8を超過する面抵抗比率R12/R2によってリチウム二次電池の充放電容量および容量保持率が低下するのを防止して、電池の電気的性能をより向上させることができる。
【0061】
また、上記第1導電材の含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部で含まれ得、具体的には、0.1~7.5重量部;0.1~5重量部;0.1~3重量部;0.1~1.5重量部;2~5重量部;4~7重量部;5~10重量部;7~9重量部;または0.1~0.9重量部であってもよい。
【0062】
しかも、第1導電材と第2導電材を併用する場合、第1導電材と第2導電材の総含有量は、正極合材層100重量部に対して0.1~10重量部で含まれ得、具体的には、0.1~7.5重量部;0.1~5重量部;0.1~3重量部;0.1~1.5重量部;2~5重量部;4~7重量部;5~10重量部;7~9重量部;または0.1~0.9重量部であってもよい。
【0063】
ここで、上記第2導電材は、第1導電材の100重量部に対して20~60重量部で含まれ得、具体的には、20~50重量部;20~45重量部;30~60重量部;25~50重量部;または30~50重量部で含まれ得る。
【0064】
本発明は、第1導電材の含有量と;第1導電材と第2導電材を併用する場合、第1導電材と第2導電材の総含有量を上記のような範囲に制御することによって、化学式1で示す正極添加剤による電極の面抵抗の増加を効果的に改善することができるのみならず、10重量部を超過する過量の導電材によって正極活物質の活性が低下するのを防止することができる。
【0065】
一方、上記正極活物質は、可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な正極活物質であり、下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物を主成分として含んでもよい:
【0066】
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
【0067】
上記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0068】
上記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物は、リチウムとニッケルを含む複合金属酸化物であり、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含んでもよい。
【0069】
また、上記正極活物質の含有量は、正極合材層100重量部に対して85~95重量部であってもよく、具体的には、88~95重量部、90~95重量部、86~90重量部または92~95重量部であってもよい。
【0070】
また、上記バインダーは、正極活物質、正極添加剤および導電材が互いに結着されるようにする役割を行い、このような機能を有するものであれば、特に限定されずに使用できる。具体的に、上記バインダーとしては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含んでもよい。一例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含んでもよい。
【0071】
また、上記バインダーは、合材層全体100重量部に対して、1~10重量部で含んでもよく、具体的には、2~8重量部;または1~5重量部で含んでもよい。
【0072】
これと共に、上記合材層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、50μm~300μmであってもよく、より具体的には、100μm~200μm;80μm~150μm;120μm~170μm;150μm~300μm;200μm~300μm;または150μm~190μmであってもよい。
【0073】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0074】
<リチウム二次電池用正極の製造方法>
また、本発明は、一実施形態において、
下記化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合して、プレ分散液を製造する段階と、
製造されたプレ分散液、正極活物質およびバインダーを混合して、正極スラリーを製造する段階と、
正極集電体上に上記正極スラリーを塗布して、正極合材層を製造する段階と、を含み、
上記第1導電材は、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素ナノ繊維、気相成長炭素繊維および活性化炭素繊維のうち1種以上を含有し、
製造された正極の面抵抗が3.0Ω/sq.以下である、リチウム二次電池用正極の製造方法を提供する:
【0075】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0076】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0077】
本発明によるリチウム二次電池用正極の製造方法は、化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーをあらかじめ混合して、プレ分散液を製造し、製造されたプレ分散液と正極活物質およびバインダーを追加混合するして、正極スラリーを製造した後、上記正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させて、正極合材層を製造することによって行われ得る。
【0078】
ここで、上記プレ分散液を製造する段階は、正極添加剤、導電材およびバインダーを混合する段階であり、当業界でスラリーの製造時に使用される通常の方式で行われ得る。例えば、上記プレ分散液を製造する段階は、各成分をホモミキサー(homo mixer)に投入し、30~600分間1,000~5,000rpmで撹拌して行われ得、上記撹拌時溶媒をさらに添加して、粘度を制御することができる。一例として、本発明による正極用プレ分散液は、化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーをホモミキサーに投入し、3,000rpmで60分間混合して、N-メチルピロリドン溶媒を注入して、25±1℃での粘度が7,500±300cpsに調節された形態で製造されることができる。
【0079】
また、上記プレ分散液を製造する段階は、構造的に不安定な正極添加剤が分解および/または損傷するのを防止するために、特定範囲を満たす温度および/または湿度条件下で行われ得る。
【0080】
具体的に、上記プレ分散液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われ得、より具体的には、10℃~40℃;10℃~35℃;10℃~30℃;10℃~25℃;10℃~20℃;15℃~40℃;20℃~40℃;15℃~35℃;または18℃~30℃の温度条件で行われ得る。
【0081】
また、上記プレ分散液を製造する段階は、10%以下の相対湿度(RH)の条件で行われ得、より具体的には、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の相対湿度(RH)の条件で行われ得る。
【0082】
本発明は、プレ分散液の製造時に温度および/または湿度条件を上述したように制御することによって、微粒子形態の正極添加剤が導電材などと混合される過程で空気中の水分および/または酸素と副反応などを起こして、非可逆活性が低下するのを防止することができ、正極合材層の面抵抗を低く具現することができる。
【0083】
しかも、上記正極スラリーを製造する段階は、製造されたプレ分散液に正極活物質とバインダーを追加混合するとき、第2導電材を追加混合するして行われ得る。上記第2導電材は、プレ分散液の製造時に第1導電材とともに混合されることもできるが、本発明は、第2導電材を製造されたプレ分散液を追加混合する方式を通じてプレ分散液に含まれた正極添加剤と第1導電材が均一に分散されるようにすることができ、同時に、正極添加剤の表面で第1導電材が電気的ネットワークをより効果的に形成するようにすることができる。
【0084】
<リチウム二次電池>
しかも、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明による正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在される分離膜と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0085】
本発明によるリチウム二次電池は、前述したような本発明の正極を具備し、充放電時に発生する酸素ガス量が少ないのみならず、優れた充放電性能を示すことができる。
【0086】
このような本発明のリチウム二次電池は、正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在される分離膜と、を含む構造を有する。
【0087】
ここで、上記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて正極と同じ導電材、有機バインダー高分子、添加剤などが選択的にさらに含まれ得る。
【0088】
また、上記負極活物質は、例えば、炭素物質とシリコン物質を含んでもよい。上記炭素物質は、炭素原子を主成分とする炭素物質を意味し、このような炭素物質としては、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(グラフェン構造体(graphene structure);炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブなどを含んでもよく、好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
より好ましくは、上記炭素物質は、天然黒鉛および/または人造黒鉛を含み、上記天然黒鉛および/または人造黒鉛と共にグラフェンおよびカーボンナノチューブのうちいずれか一つ以上を含んでもよい。この場合、上記炭素物質は、炭素物質全体100重量部に対して0.1~10重量部のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含んでもよく、より具体的には、炭素物質全体100重量部に対して0.1~5重量部;または0.1~2重量部のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含んでもよい。
【0089】
また、上記シリコン物質は、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子および酸化ケイ素(SiO、1≦X≦2)粒子のうち1種以上を含んでもよい。一例として、上記シリコン物質は、ケイ素(Si)粒子、一酸化ケイ素(SiO)粒子、二酸化ケイ素(SiO)粒子、またはこれらの粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0090】
また、上記シリコン物質は、結晶質粒子と非結晶質粒子が混合された形態を有していてもよく、上記非結晶質粒子の比率は、シリコン物質全体100重量部に対して50~100重量部、具体的には、50~90重量部;60~80重量部または85~100重量部であってもよい。本発明は、シリコン物質に含まれた非結晶質粒子の比率を上記のような範囲に制御することによって、電極の電気的物性を低下させない範囲で熱的安定性と柔軟性を向上させることができる。
【0091】
また、上記シリコン物質は、炭素物質とシリコン物質を含み、かつ、負極合材層100重量部に対して1~20重量部で含まれ得、具体的には、負極合材層100重量部に対して5~20重量部;3~10重量部;8~15重量部;13~18重量部;または2~7重量部で含まれ得る。
【0092】
本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を低減し、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0093】
一例として、上記負極活物質は、負極合材層100重量部に対して黒鉛95±2重量部と;一酸化ケイ素(SiO)粒子および二酸化ケイ素(SiO)粒子が均一に混合された混合物5±2重量部を含んでもよい。本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らし、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0094】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0095】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0096】
また、上記分離膜は、正極と負極の間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用でき、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコートされた複合分離膜が使用されることもできる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。また、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0097】
一方、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0098】
また、本発明による上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0099】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0100】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合材などが使用できる。
【0101】
上記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0102】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0103】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-Ethylene Carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0104】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0105】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0106】
<実施例1~6および比較例1~2.リチウム二次電池用正極の製造>
ホモミキサー(homo mixer)にN-メチルピロリドンを注入し、正極スラリー固形分100重量部に対して正極添加剤としてLiCo0.7Zn0.3 5重量部;およびバインダーとしてPVdF 1重量部を称量して投入し、第1導電材としてカーボンナノチューブ(平均サイズ:60±10nm)を投入した後、2,000rpmで30分間1次混合して、正極製造用プレ分散液を製造した。このとき、プレ分散液の製造時に使用された第1導電材の含有量と温度および相対湿度(RH)の条件は、下記の表1に示した。
【0107】
次に、製造されたプレ分散液が入っているホモミキサーに正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2;第2導電材としてのデンカブラック(平均サイズ:2±0.5μm);およびバインダーとしてPVdFを称量して投入し、2,500rpmで30分間2次混合を行うことで、リチウム二次電池用正極スラリーを製造した。このとき、PVdFの含有量は、正極スラリー固形分100重量部に対して1重量部であり、正極活物質および第2導電材の含有量は、下記の表1に示されたように、調節された。
【0108】
製造された正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、正極を製造した。このとき、正極合材層の総厚さは、130μmであり、製造された正極の総厚さは、約200μmであった。
【0109】
【表1】
【0110】
<比較例3.リチウム二次電池用正極の製造>
ホモミキサー(homo mixer)にN-メチルピロリドンを注入し、正極スラリー固形分100重量部に対して正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2 92.3重量部;正極添加剤としてLiCo0.7Zn0.3 5重量部;第1導電材としてカーボンナノチューブ(平均サイズ:60±10nm)0.7重量部;第2導電材としてのデンカブラック(平均サイズ:2±0.5μm)0.2重量部;バインダーとしてPVdF 2重量部を称量して投入し、2,000rpmで60分間混合して、リチウム二次電池用正極スラリーを製造した。このとき、温度および相対湿度(RH)は、それぞれ20~25℃および3%に調節された。
【0111】
製造された正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、正極を製造した。このとき、正極合材層の総厚さは、130μmであり、製造された正極の総厚さは、約200μmであった。
【0112】
<比較例4.リチウム二次電池用正極の製造>
プレ分散液の製造時に、第1導電材としてのカーボンナノチューブ(平均サイズ:60±10 nm)の代わりに、デンカブラック(平均サイズ:2±0.5μm)を使用し、正極スラリーの製造時に、第2導電材としてのデンカブラック(平均サイズ:2±0.5μm)の代わりに、カーボンナノチューブ(平均サイズ:60±10nm)を使用することを除いて、実施例1と同じ方法で行うことで、正極を製造した。
【0113】
<実施例7~12および比較例5~8.リチウム二次電池の製造>
負極活物質としての天然黒鉛およびケイ素(SiOx、ただし、1≦x≦2)粒子と;バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を準備し、正極スラリーを製造する方式と同じ方式で負極スラリーを準備した。このとき、負極合材層の製造時に使用される黒鉛は、天然黒鉛(平均粒度:0.01~0.5μm)であり、ケイ素(SiOx)粒子は、0.9~1.1μmの平均粒度を有するものを使用した。準備した負極スラリーを銅集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、負極を製造した。このとき、負極合材層の総厚さは、150μmであり、製造された負極の総厚さは、約250μmであった。
【0114】
上記負極と上記実施例1~6および比較例1~4で製造された正極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)が介在されるように積層し、電解液としてE2DVCを注入して、フルセル(full cell)形態のセルを製作した。
【0115】
ここで、「E2DVC」とは、カーボネート系電解液の一種であり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1(体積比)の混合物に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF、1.0M)およびビニルカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を意味する。
【0116】
【表2】
【0117】
<実験例>
本発明によるリチウム二次電池用正極の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0118】
イ)電極面抵抗の評価
実施例1~6と比較例1~4で製造された正極を対象に、4ポイントプローブ(4-point probe)方式で電極の面抵抗を測定し、その結果は、下記表3および図1に示した。
【0119】
ロ)充放電時に脱気された酸素ガス量の評価
実施例7~12と比較例5~8で製造されたリチウム二次電池を対象に、55℃で3.5Vおよび1.0Cの条件で初期充電(formation)を行い、上記初期充電を行うことで、正極で発生するガスを脱気して、初期充電時に発生する酸素ガスの含有量を分析した。次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で50回充放電を繰り返し行うことで、各充放電時に酸素ガスの含有量を追加分析し、分析された結果は、下記の表3に示した。
【0120】
ハ)充放電容量および保持率の評価
実施例7~12と比較例5~8で製造されたリチウム二次電池を対象に、25℃の温度で0.1Cの充電電流で充電終止電圧4.2~4.25Vまで充電し、終止電圧で電流密度が0.01Cとなるまで充電を行うことで活性化させた。以後、0.1Cの放電電流で終止電圧2Vまで放電させ、単位質量当たりの初期充放電容量を測定した。
【0121】
次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で50回充放電を繰り返し行うことで、充放電時に容量を測定し、50回充放電を行った後、充放電容量保持率を算出した。その結果は、下記の表3に示した。
【0122】
【表3】
【0123】
上記表3および図1を参照すると、本発明によって製造された実施例のリチウム二次電池用正極は、正極合材層に線状構造の第1導電材を含有していて、粉体電気伝導度が低い化学式1で示す正極添加剤を含有するにもかかわらず、2.5Ω/sq.以下の低い面抵抗を有することが示され、第1導電材または線状構造を有さない第2導電材を単独で含有する場合と比較して低い面抵抗を示すことが分かる。また、これを含む実施例のリチウム二次電池は、初期充放電容量が102Ah以上と高いのみならず、91%以上の高い容量保持率を示した。しかも、上記リチウム二次電池は、初期充放電後に発生する酸素ガスの量が顕著に低減されて、安全性が高いことが確認された。
【0124】
このような結果から、本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極合材層に非可逆添加剤である化学式1で示す正極添加剤と線状構造の導電材を含有するプレ分散液を利用して製造され、電極面抵抗が特定範囲を満たすように調節することによって、充放電時に発生する酸素ガス量を低減させることができ、リチウム二次電池の充放電効率を容易に向上させることができることが分かる。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0126】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
図1