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  • 特許-荷重軽減のための滑り継ぎ手 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】荷重軽減のための滑り継ぎ手
(51)【国際特許分類】
   B64C 1/18 20060101AFI20250527BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20250527BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B64C1/18
F16B5/10 K
F16B5/00 F
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078955
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022000366
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】16/871,021
(32)【優先日】2020-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハーター, アンドリュー ジェイ.
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0226288(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106672197(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/18
F16B 5/10
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための滑り継ぎ手であって、
第1の端部と前記第1の端部の反対側の第2の端部とを備えるラグであって、前記第1の端部は、前記座席軌道に取り付けられるようになっており、前記第2の端部は、細長い開孔を有する、ラグ、及び
前記ラグの前記第2の端部に結合される偏円形状のスライダブッシュを備えるクレビスであって、前記クレビスの第1の端部は、前記フライトデッキの床パネルに取り付けられるようになっている、クレビス
を備える、滑り継ぎ手。
【請求項2】
前記ラグの前記細長い開孔は、前記クレビスを前記ラグに摺動可能に固定するよう、前記偏円形状のスライダブッシュを受け入れるようにサイズ決定され、形作られる、請求項1に記載の滑り継ぎ手。
【請求項3】
前記細長い開孔は、丸められた端部を有する、請求項2に記載の滑り継ぎ手。
【請求項4】
前記ラグの前記第1の端部は、前記座席軌道と係合するための係合部分を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
【請求項5】
前記クレビスは、前記クレビスの前記第1の端部にあるプラットフォーム、及び前記プラットフォームから延在する一対のアームを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
【請求項6】
前記偏円形状のスライダブッシュは、前記一対のアームを貫通して延在する、請求項5に記載の滑り継ぎ手。
【請求項7】
前記偏円形状のスライダブッシュは、偏球面形状を有し、それによって、前記偏円形状のスライダブッシュの摩耗面の面積を増加させる、請求項6に記載の滑り継ぎ手。
【請求項8】
前記一対のアームは、前記細長い開孔の延在方向とは異なる方向に延在し、前記クレビスの前記プラットフォームは、前記座席軌道と異なる高さにある前記フライトデッキの床パネルに取り付けられるようになっている、請求項から7のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
【請求項9】
前記細長い開孔は、前記細長い開孔内での前記偏円形状のスライダブッシュの一次元運動を提供するようにサイズ決定され、形作られ、それによって、前記航空機の飛行中の前記座席軌道及び前記フライトデッキの床パネルの熱膨張若しくは収縮又は曲げ撓みを考慮する、請求項1から8のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
【請求項10】
前記一次元の運動は、前記細長い開孔内での前記偏円形状のスライダブッシュの前後平行移動を含む、請求項9に記載の滑り継ぎ手。
【請求項11】
座席軌道、
フライトデッキの床パネル、並びに
滑り継ぎ手を備える、機体構造アセンブリであって、前記滑り継ぎ手は、
第1の端部と前記第1の端部の反対側の第2の端部とを画定するラグであって、前記第1の端部は前記座席軌道に取り付けられており、前記第2の端部は細長い開孔を有する、ラグ、及び
前記ラグの前記第2の端部に結合される偏円形状のスライダブッシュを備えるクレビスであって、前記クレビスの第1の端部は、前記フライトデッキの床パネルに取り付けられている、クレビス
を備える、機体構造アセンブリ。
【請求項12】
前記クレビスは、前記クレビスの前記第1の端部にあるプラットフォーム、及び前記プラットフォームから延在する一対のアームを備え、前記第1の端部は前記フライトデッキの床パネルに取り付けられる、請求項11に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項13】
前記偏円形状のスライダブッシュは、前記一対のアームの間に結合され、前記一対のアームの間で延在し、前記偏円形状のスライダブッシュは、前記ラグの前記細長い開孔内に受け入れられる、請求項12に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項14】
前記細長い開孔は、前記偏円形状のスライダブッシュの前記細長い開孔内での運動を提供するようにサイズ決定され、形作られ、それによって、航空機の飛行中の前記座席軌道及び前記フライトデッキの床パネルの熱膨張若しくは収縮又は曲げ撓みを考慮する、請求項13に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項15】
前記運動は、一次元のみの移動を含む、請求項14に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項16】
前記運動は、前記細長い開孔内での前記偏円形状のスライダブッシュの前後平行移動を含む、請求項15に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項17】
前記一対のアームは、前記細長い開孔の延在方向とは異なる方向に延在し、前記クレビスの前記プラットフォームは、前記座席軌道と異なる高さにある前記フライトデッキの床パネルに取り付けられている、請求項12から16のいずれか一項に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項18】
前記偏円形状のスライダブッシュは、偏球面形状を有する、請求項11から17のいずれか一項に記載の機体構造アセンブリ。
【請求項19】
航空機の乗客座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための方法であって、
ラグの第1の端部を前記乗客座席軌道に取り付けることであって、前記ラグが前記ラグを貫通する細長い開孔を有する第2の端部を更に備える、ラグの第1の端部を前記乗客座席軌道に取り付けること、
クレビスの第1の端部を前記フライトデッキの床パネルに取り付けることであって、前記クレビスの前記第1の端部がプラットフォームを備え、前記プラットフォームから一対のアームが延在する、クレビスの第1の端部を前記フライトデッキの床パネルに取り付けること、
偏円形状のスライダブッシュを前記クレビスの前記一対のアームに結合すること、及び
前記クレビスを前記ラグに固定するために、前記偏円形状のスライダブッシュを前記細長い開孔内に受け入れることを含む、方法。
【請求項20】
前記航空機のサイクル中に、前記偏円形状のスライダブッシュを、前記細長い開孔内で前後方向に平行移動させることを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、航空機の2つの床構成要素の間の荷重伝達を軽減することに関し、特に、航空機のサイクル中に座席軌道(seat track)とフライトデッキ(flight deck)の床パネルとの間で熱負荷及び曲げ撓みを分離するための滑り継ぎ手(sliding joint)を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の民間旅客機では、座席の列を形成するために2以上の座席が支持部(undercarriage)に連結され、今度は、その支持部が1以上の下に横わる長手方向に延在する軌道にしっかりと取り付けられている。そのような座席軌道は、航空機の前方端に向けて位置付けられているフライトデッキの床パネルに連結される。そのフライトデッキは、他の区画の中でとりわけ、洗面所、及びフライトキャビン(flight cabin)を包含する。しばしば、座席軌道を包含する床板とフライトデッキの床パネルとの間の遷移部分において少なくとも数インチの垂直な段差が存在する。
【0003】
航空機のサイクル中に、航空機の運動は、床板構成要素の熱負荷及び本体曲げをもたらす。熱応力及び本体曲げは、蓄積され、座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の継ぎ手を介して伝達され得る。熱負荷及び曲げ荷重は、しばしば、顕著な押し合いへし合い(jostle)が航空機の2つのセクションの間で伝達されることをもたらすのに十分な大きさに到達する。更に、これらの荷重は、継ぎ手が拘束され疲労することをもたらす。
【0004】
乗客の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間などの航空機の床材パネルの間の熱負荷及び本体曲げを分離することができる改善されたシステム及び方法が所望されている。
【発明の概要】
【0005】
一実施例では、航空機の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための滑り継ぎ手が説明される。該滑り継ぎ手は、第1の端部と第1の端部の反対側の第2の端部とを備えるラグを備える。その場合、第1の端部は、座席軌道に取り付けられるようになっており、第2の端部は、細長い開孔を有する。滑り継ぎ手は、ラグに結合される偏円形状(oblate shaped)のスライダブッシュ(slider bushing)を備えるクレビス(clevis)を更に備える。
【0006】
別の一実施例では、機体構造アセンブリが提供される。該機体構造アセンブリは、座席軌道、フライトデッキの床パネル、及び滑り継ぎ手を備える。該滑り継ぎ手は、第1の端部と第1の端部の反対側の第2の端部とを備えるラグであって、第1の端部は、座席軌道に取り付けられるようになっており、第2の端部は、細長い開孔を有する、ラグ、及びラグに結合される偏円形状のスライダブッシュを備えるクレビスを備える。
【0007】
別の一実施例では、航空機の乗客座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための方法が提供される。該方法は、ラグの第1の端部を座席軌道に取り付けることであって、ラグがラグを貫通する細長い開孔を有する第2の端部を備える、ラグの第1の端部を座席軌道に取り付けること、クレビスの第1の端部をフライトデッキの床パネルに取り付けることであって、クレビスの第1の端部がプラットフォームを備え、プラットフォームから一対のアームが延在する、クレビスの第1の端部をフライトデッキの床パネルに取り付けること、偏円形状のスライダブッシュをクレビスの一対のアームに結合すること、並びに、クレビスをラグに固定するために、偏円形状のスライダブッシュを細長い開孔内に受け入れることを含む。
【0008】
前述の特徴、機能、及び利点は、様々な実施例において個別に実現可能であるか、又は、更に別の実施例に組み込まれてよく、かかる更に別の実施例の更なる詳細事項は、以下の説明及び図面を参照することで理解され得る。
【0009】
実施例の特性と考えられる新規の特徴は、付随する特許請求の範囲に明記される。しかし、例示的な実施例、並びに好ましい使用モード、更なる目的、及びそれらの説明は、添付図面を参照して、本開示の例示的な実施例についての以下の詳細な説明を読むことにより、最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例示的な一実施態様による、座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の滑り継ぎ手を備える機体構造アセンブリを示す。
図2a】例示的な一実施態様による、図1の機体構造アセンブリ内で使用される滑り継ぎ手などの滑り継ぎ手の斜視図を示す。
図2b】例示的な一実施態様による、フライトデッキの床パネル及び座席軌道に組付けられた図2aの滑り継ぎ手の側面図を示す。
図2c】例示的な一実施態様による、図2bの滑り継ぎ手のラグ内の偏円形状のスライダブッシュの断面図を示す。
図3】例示的な一実施態様による、航空機内に配置された例示的な一連の滑り継ぎ手を示す。
図4】例示的な一実施態様による、図3の一連の滑り継ぎ手の斜視拡大図を示す。
図5】例示的な一実施態様による、航空機の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための方法を示す。
図6】例示的な一実施態様による、図5で示されている方法と共に使用される別の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書ではこれより、添付図面を参照しつつ開示されている例についてより網羅的に説明するが、添付図面に示しているのは開示されている例の一部であって、全てではない。実際には、幾つかの異なる実施例が提供される場合があり、これらの実施例は、本明細書に明記されている実施例に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施例は、この開示内容が包括的で完全であるように、且つ、本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように説明されている。
【0012】
航空機の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための滑り継ぎ手の実施例、方法、及びシステムが説明される。この目的のために、座席軌道の開チャネル内に配置されたラグが、偏円形状のブッシュを有するクレビスを受け入れ、ラグの細長い開孔内でのブッシュの前後平行移動を可能にする。実施例内で、クレビスは、フライトデッキの床パネルに取り付けられるようになっているプラットフォームを有する。滑り継ぎ手アセンブリの構成要素の平行移動は、航空機のサイクル中の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の熱負荷及び曲げ荷重の蓄積を防止する一方で、2つの表面の間の垂直な段差を有する複雑な幾何学的形状寸法も受け入れる。
【0013】
更に、ブッシュの偏円形状は、平行移動中のラグの細長い開口部内でのブッシュの接触の拡大された表面積を提供する。それは、ブッシュ自体の摩耗を防止し、したがって、継ぎ手の寿命を改善する。
【0014】
本明細書で使用される際に、座席軌道は、航空機の1以上の座席ユニットを受け入れる任意の乗客座席軌道を含み得る。座席ユニット及び座席軌道は、航空機産業全体を通して使用される標準的な装備を備える。その場合、座席軌道は、座席ユニットが座席軌道に沿った様々な位置に配置されることを可能とするために、複数の長手方向に間隔を空けられた取り付け用差し込み口を含む。座席軌道は、金属(例えばチタンなど)などの剛性材料から形成される。それは、座席ユニット向けの取り付けプラットフォームとして働くその能力を促進する。
【0015】
本明細書で使用される際に、フライトデッキは、航空機の操縦室を含み得る。その操縦室から、パイロット及び乗務員が航空機を操縦する。操縦室内には、様々な装備及び制御装置が位置付けられている。フライトデッキは、洗面所、食品調理ステーション、及び保存庫などの、更なる空間及び区画を更に含み得る。
【0016】
図1を参照すると、一実施例による、座席軌道130、フライトデッキの床パネル140、及び滑り継ぎ手110を備える、機体構造アセンブリ100が示されている。滑り継ぎ手110は、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140との間に配置される。図1では、航空機200内の機体構造アセンブリが示されている。
【0017】
航空機200は、乗客を受け入れ輸送するために使用される民間航空機であってよい。その場合、乗客は、座席軌道130に取り付けられた座席ユニット132に座る。
【0018】
フライトデッキの床パネル140は、座席軌道130とは異なる平面上に配置されるように図1で示されている。図1の実施例では、フライトデッキの床パネル140が、座席軌道130が位置付けられる平面と平行でそれより高い平面上にある。幾つかの実施例では、フライトデッキの床パネル140が、座席軌道130の上方約5~10インチの平面上に位置付けられる。幾つかの実施例では、フライトデッキの床パネル140が、座席軌道130の上方約7インチに位置付けられる。
【0019】
滑り継ぎ手110は、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140との間の主たる構造的連結を提供する。滑り継ぎ手110は、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140との間の段差を形成するために、垂直なパネル又は床梁でカバーされてよい。滑り継ぎ手110は、図2a~図2cで更に詳細に説明され、前後の自由な平行移動を提供する。したがって、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140とのうちの一方又は両方が、飛行中に押し合いへし合い又はさもなければ移動を経験するときに、滑り継ぎ手の特定の構成要素が同様に移動するが、その間に、その移動が他の一方の床パネルに及ばないように分離される。
【0020】
図2aは、例示的な一実施態様による、図1の機体構造アセンブリ100内で使用される滑り継ぎ手110などの滑り継ぎ手の斜視図を示している。
【0021】
滑り継ぎ手110は、図1の座席軌道130などの座席軌道の開チャネル133内に受け入れられるように構成されたラグ112を備える。図1の座席軌道130の一部分が、図2aで示されている。ラグ112の第1の端部113は、座席軌道130に係合するための係合部分114を備えるように図2aで示されている。図2aでは、係合部分114が、係合部分114を座席軌道130内に固定するために、複数の開孔115を通して複数のボルトと係合する複数の開孔115を備える。
【0022】
ラグ112の第2の端部116が、細長い開孔117を有する。実施例内で、細長い開孔117は、(両側に)丸められた端部118を備える。それらの両方は、図2bの断面側面図で示されている。丸められた端部118は、偏円形状のスライダブッシュをの形状を受け入れ、それによって、偏円形状のスライダブッシュが、引っ掛かることなしに細長い開孔117内で端から端まで自由に移動することを可能にする。細長い開孔117は、内部でのブッシュの一次元運動を提供するようにサイズ決定され、形作られる。この単次元運動は、航空機200の飛行中の座席軌道130及びフライトデッキの床パネル140の熱膨張若しくは収縮又は曲げ撓みを考慮する。
【0023】
滑り継ぎ手110は、クレビス120を更に備える。クレビス120は、偏円形状のスライダブッシュ122を備える。ラグ112の細長い開孔117は、偏円形状のスライダブッシュ122を受け入れるようにサイズ決定され、形作られる。偏円形状のスライダブッシュ122は、クレビス120をラグ112に摺動可能に固定する。偏円形状のスライダブッシュ122は、典型的には、すぐには摩耗しないような強い材料、例えば鋼鉄などの金属から作製される。幾つかの実施例では、偏円形状のスライダブッシュ122が、耐食性の鋼鉄から形成される。他の実施例では、偏円形状のスライダブッシュ122が、チタンから形成される。
【0024】
偏円形状のスライダブッシュ122と細長い開孔117を画定する表面との間で接触が存在するので、偏円形状のスライダブッシュ122の外面は摩耗面であると見なされ、ブッシュを含む偏球面形状(oblate spheroid shape)はスライダブッシュ122の摩耗面の面積を増加させる。この偏球面形状によって提供される、平行移動中のラグの細長い開口部内のブッシュの接触の拡大された表面積は、ブッシュ自体の摩耗を防止し、したがって、継ぎ手の寿命を改善する。図2cで示されている平坦な上面及び下面121は、拡大された摩耗面を形成する。
【0025】
図2bは、例示的な一実施態様による、図1の座席軌道130及びフライトデッキの床パネル140に連結された図1の滑り継ぎ手110の断面側面図を示している。クレビス120は、クレビス120の第1の端部にあるプラットフォーム124、及びプラットフォーム124から延在する一対のアーム126(図2bでは1つが示されている)を備える。偏円形状のスライダブッシュ122は、一対のアーム126を貫通して延在する。
【0026】
図2bで示されているように、プラットフォーム124は、フライトデッキの床パネル140に取り付けられるようになっている。プラットフォーム124は、フライトデッキの床パネルに直接的に取り付けられてよく、又は図2bで示されている補強材127などの補強材に取り付けられてよい。補強材127は、垂直パネル128を構造的に支持するために、垂直床材パネル128の後ろに追加的に存在し得る金属又は他の剛性構造であってよい。垂直床材パネル128は、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140との間の段差又は遷移ギャップをカバーする。
【0027】
図2cは、例示的な一実施態様による、ラグの細長い開孔内の図2bの滑り継ぎ手の偏円形状のスライダブッシュの断面図を示している。断面は、図2bの線A‐Aに沿って切り取られた。前述したように、スライダブッシュ122の平坦な上面及び下面121は、拡大された摩耗面を形成する。それは、ブッシュの寿命の延びを促進する。円形状又は丸められた側面123は、ブッシュの偏球面形状を維持し、細長い開孔の端部118と端部118との間での滑らかな平行移動を可能にする。
【0028】
飛行のサイクル中の熱負荷及び本体曲げの蓄積は、0.5インチ以上を含み得る。詳細に上述された滑り継ぎ手の110は、継ぎ手の改善された寿命を可能にする。というのも、細長い開孔は、偏円形状のスライダブッシュの細長い開孔内での運動を提供するようにサイズ決定され、形作られ、それによって、航空機の飛行中の乗客座席軌道及びフライトデッキの床パネルの熱膨張若しくは収縮又は曲げ撓みを考慮するからである。その運動は、一次元のみでの移動を含む。したがって、航空機のサイクル中の継ぎ手の疲労又は継ぎ手の拘束に寄与する、継ぎ手に加えられた熱負荷及び本体曲げの蓄積を低減させることによって、継ぎ手の寿命が延び得る。
【0029】
図3は、例示的な一実施態様による、航空機200内に配置された例示的な一連の滑り継ぎ手の110を示している。図3で示されているように、図1図2cを参照しながら説明された滑り継ぎ手110などの複数の滑り継ぎ手が、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140との間の遷移の位置において、図1の航空機200などの航空機の幅170にわたり位置付けられ得る。
【0030】
図4は、例示的な一実施態様による、図3の一連の滑り継ぎ手110の斜視拡大図を示している。図4は、図2bの補強材127及び垂直パネル128、クレビス120、並びにラグ112を示している。
【0031】
図5は、例示的な一実施態様による、航空機の乗客座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための方法500の一実施例のフローチャートを示している。図5で示されている方法500は、例えば、図1で示されている機体構造アセンブリ100と共に使用されてよく、及び/又は、機体構造アセンブリ100によって実行されてよい。方法500は、ブロック502~508のうちの1以上によって示されるような、1以上の動作、機能、又は作業を含む。ブロックは順番に示されているが、これらのブロックはまた、並行して実行してもよく、及び/又は、本明細書に記載の順序とは異なる順序で実行してもよい。また、様々なブロックが、より少ないブロックへと組み合わされたり、更なるブロックに分割されたり、及び/又は所望の実装に基づいて除去されたりしてもよい。
【0032】
本明細書で開示されているこの工程及び方法、並びに他の工程及び方法について、フローチャートにはこれらの実施例の可能な1つの実施態様の機能及び工程が示されていることを理解されたい。本開示の実施例の範囲内には、代替的な実装形態が含まれる。本開示の実施例では、当業者によって理解されるように、関連する機能性に応じて、図示又は記載の順序とは異なる順序(ほぼ同時又は逆順を含む)で、機能が実行されてもよい。
【0033】
ブロック502では、方法500が、ラグの第1の端部を座席軌道に取り付けることを含む。ラグは、ラグを貫通する細長い開孔を有する第2の端部を更に備える。
【0034】
ラグは、ラグ112と同じであるか又は類似してよく、座席軌道は、図1図2bを参照して説明された座席軌道130と類似するか又は同じであってよい。図2a~図2bで示されている実施例では、ラグ112の第1の端部113が、座席軌道130と係合するための係合部分を備える。実施例内で、第1の端部113は、第1の端部113を座席軌道130内のチャネル又は他の開口部の中に挿入することによって、座席軌道130に取り付けられる。ラグ112の第1の端部113は、次いで、非限定的に、ボルトやネジなどの幾つかのファスナのうちのいずれかによって座席軌道130内に固定され得る。座席軌道130が、図1図2bの実施例で示された幾何学的形状寸法とは異なる幾何学的形状寸法を有する場合、ラグ112の第1の端部113は、その幾何学的形状寸法に適合しフィットするように形成され得る。
【0035】
ブロック504では、方法500が、クレビスの第1の端部をフライトデッキの床パネルに取り付けることを含む、クレビスの第1の端部は、プラットフォーム124及びプラットフォーム124から延在する一対のアームを備える。プラットフォーム124は、平坦な表面を有するように図2a~図2bの実施例で示されている。それは、フライトデッキのパネルに直接的に取り付けられてよく、又は、図2bで示されているように、垂直床梁若しくは垂直床梁の後ろに位置付けられた補強材などの部品を介してフライトデッキのパネルに取り付けられてよい。
【0036】
ブロック506では、方法500が、偏円形状のスライダブッシュをクレビスの一対のアームに結合することを含む。偏円形状のスライダブッシュは、図2a~図2cの偏円形状のスライダブッシュ122と同じであるか又は類似してよい。偏円形状のスライダブッシュ122は、平坦な上面及び下面121並びに円形状又は丸められた側面123を有するように示されている。
【0037】
ブロック508では、方法500が、クレビスをラグに固定するために、偏円形状のスライダブッシュを細長い開孔内に受け入れることを含む。ラグ112の第2の端部116にある細長い開孔117は、図2a~図2bで示されている実施例では丸められた端部118を有し、偏円形状のスライダブッシュの形状を受け入れ、それによって、偏円形状のスライダブッシュが細長い開孔117内で端から端へ移動することを可能にする。
【0038】
実施例内で、フライトデッキの床パネル140の移動は、細長い開孔117内で、クレビス120及び関連付けられた偏円形状のスライダブッシュ122を、前後方向に移動させることになる。更なる実施例では、座席軌道130の移動が、ラグを前後方向に移動させることになる。
【0039】
図6は、例示的な一実施態様による、図5で示されている方法500と共に使用される別の方法を示している。図6では、ブロック510で、該方法が、航空機のサイクル中に、偏円形状のスライダブッシュを、細長い開孔内で前後方向に平行移動させることを含む。航空機200が離陸し、次いで、空中の飛行に進んだときに、座席軌道130とフライトデッキのパネル140とのうちの一方又は両方が、移動するか又は押し合いへし合いし得る。そのような移動は、スライダブッシュ122を、細長い開孔117内で前後方向のいずれかに移動させる。
【0040】
実施例内で、滑り継ぎ手アセンブリの構成要素の平行移動は、座席軌道130とフライトデッキの床パネル140との間で複雑な幾何学的形状寸法を受け入れている間中、航空機のサイクル中の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の熱負荷及び曲げ荷重の蓄積を防止する。ブッシュの偏円形状は、平行移動中のラグの細長い開口部内でのブッシュの接触の拡大された表面積を提供する。それは、ブッシュ自体の摩耗を防止し、したがって、継ぎ手の寿命を改善する。
【0041】
種々の有利な構成の説明は、例示及び説明を目的として提示されており、完全であること、又は開示された形態の実施例に限定されることを意図するものではない。当業者には、多くの修正例及び変形例が自明となろう。更に、種々の有利な実施例は、他の有利な実施例と比べて異なる利点を表わし得る。選択された1以上の実施例は、実施例の原理、実際の用途をよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施例の開示内容と、考慮される特定の用途に適した様々な修正例との理解を促すために選択及び記述されている。
【0042】
条項1.
航空機の座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための滑り継ぎ手であって、第1の端部と前記第1の端部の反対側の第2の端部とを備えるラグであって、前記第1の端部は、前記座席軌道に取り付けられるようになっており、前記第2の端部は、細長い開孔を有する、ラグ、及び前記ラグに結合される偏円形状のスライダブッシュを備えるクレビスを備える、滑り継ぎ手。
条項2.
前記ラグの前記細長い開孔は、前記クレビスを前記ラグに摺動可能に固定するよう、前記偏円形状のスライダブッシュを受け入れるようにサイズ決定され、形作られる、条項1に記載の滑り継ぎ手。
条項3.
前記細長い開孔は、丸められた端部を有する、条項2に記載の滑り継ぎ手。
条項4.
前記ラグの前記第1の端部は、前記座席軌道と係合するための係合部分を備える、条項1から3のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
条項5.
前記クレビスは、前記クレビスの第1の端部にあるプラットフォーム、及び前記プラットフォームから延在する一対のアームを備える、条項1から4のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
条項6.
前記偏円形状のスライダブッシュは、前記一対のアームを貫通して延在する、条項5に記載の滑り継ぎ手。
条項7.
前記偏円形状のスライダブッシュは、偏球面形状を有し、それによって、前記偏円形状のスライダブッシュの摩耗面の面積を増加させる、条項6に記載の滑り継ぎ手。
条項8.
前記クレビスのプラットフォームは、前記フライトデッキの床パネルに取り付けられるようになっている、条項1から7のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
条項9.
前記細長い開孔は、前記細長い開孔内での前記偏円形状のスライダブッシュの一次元運動を提供するようにサイズ決定され、形作られ、それによって、前記航空機の飛行中の前記座席軌道及び前記フライトデッキの床パネルの熱膨張若しくは収縮又は曲げ撓みを考慮する、条項1から8のいずれか一項に記載の滑り継ぎ手。
条項10.
前記一次元の運動は、前記細長い開孔内での前記偏円形状のスライダブッシュの前後平行移動を含む、条項9に記載の滑り継ぎ手。
条項11.
座席軌道、フライトデッキの床パネル、並びに滑り継ぎ手を備える、機体構造アセンブリであって、前記滑り継ぎ手は、第1の端部と前記第1の端部の反対側の第2の端部とを画定するラグであって、前記第2の端部は細長い開孔を有する、ラグ、及び前記ラグに結合される偏円形状のスライダブッシュを備えるクレビスを備える、機体構造アセンブリ。
条項12.
前記ラグの前記第1の端部は、前記座席軌道に取り付けられる、条項11に記載の機体構造アセンブリ。
条項13.
前記クレビスは、プラットフォームを有する第1の端部、及び前記プラットフォームから延在する一対のアームを備え、前記第1の端部は前記フライトデッキの床パネルに取り付けられる、条項12に記載の機体構造アセンブリ。
条項14.
前記偏円形状のスライダブッシュは、前記一対のアームの間に結合され、前記一対のアームの間で延在し、前記偏円形状のスライダブッシュは、前記ラグの前記細長い開孔内に受け入れられる、条項13に記載の機体構造アセンブリ。
条項15.
前記細長い開孔は、前記偏円形状のスライダブッシュの前記細長い開孔内での運動を提供するようにサイズ決定され、形作られ、それによって、航空機の飛行中の前記座席軌道及び前記フライトデッキの床パネルの熱膨張若しくは収縮又は曲げ撓みを考慮する、条項14に記載の機体構造アセンブリ。
条項16.
前記運動は、一次元のみの移動を含む、条項15に記載の機体構造アセンブリ。
条項17.
前記運動は、前記細長い開孔内での前記偏円形状のスライダブッシュの前後平行移動を含む、条項16に記載の機体構造アセンブリ。
条項18.
前記偏円形状のスライダブッシュは、偏球面形状を有する、条項11から17のいずれか一項に記載の機体構造アセンブリ。
条項19.
航空機の乗客座席軌道とフライトデッキの床パネルとの間の荷重伝達を分離するための方法であって、ラグの第1の端部を前記乗客座席軌道に取り付けることであって、前記ラグが前記ラグを貫通する細長い開孔を有する第2の端部を更に備える、ラグの第1の端部を前記乗客座席軌道に取り付けること、クレビスの第1の端部を前記フライトデッキの床パネルに取り付けることであって、前記クレビスの前記第1の端部がプラットフォームを備え、前記プラットフォームから一対のアームが延在する、クレビスの第1の端部を前記フライトデッキの床パネルに取り付けること、偏円形状のスライダブッシュを前記クレビスの前記一対のアームに結合すること、及び、前記クレビスを前記ラグに固定するために、前記偏円形状のスライダブッシュを前記細長い開孔内に受け入れることを含む、方法。
条項20.
前記航空機のサイクル中に、前記偏円形状のスライダブッシュを、前記細長い開孔内で前後方向に平行移動させることを更に含む、条項19に記載の方法。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6