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7687910熱輸送装置およびこれを用いた電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】熱輸送装置およびこれを用いた電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20250527BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20250527BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20250527BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250527BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20250527BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20250527BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250527BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20250527BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20250527BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/04 C
H05K7/20 Q
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/6551
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/6556
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021143673
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037122
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上久保 将大
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061736(JP,A)
【文献】特開2016-009828(JP,A)
【文献】特開2018-028999(JP,A)
【文献】特開2011-183862(JP,A)
【文献】特開昭55-134289(JP,A)
【文献】中国実用新案第210379340(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111106411(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
H05K 7/20
H01M 10/613
H01M 10/6554
H01M 10/6551
H01M 10/625
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01L 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動流体が封入された筐体を備える熱輸送装置であって、
前記筐体は、
平板状に形成され、発熱体から放出された熱を吸収する吸熱部と、
前記吸熱部の端部側において前記吸熱部の延在する方向に対して直交する方向に延在する放熱面が設けられ、前記吸熱部において吸収した熱を前記放熱面から放出する放熱部と、を有し、
前記吸熱部には、平面状に延在し、吸収した熱によって液体の前記作動流体を蒸発させる蒸発空間が形成され、
前記放熱部には、前記放熱面に沿って、前記蒸発空間の延在する方向に対して直交する方向に延在し、熱を放出させて気体の前記作動流体を凝縮させる凝縮空間が形成され、
前記放熱面は、前記放熱部における前記作動流体が吸収した熱を前記筐体の外側に伝える伝熱部材に設けられ、
前記伝熱部材は、前記凝縮空間において前記蒸発空間に向かって張り出す張出部を有し
前記張出部は、前記凝縮空間において前記吸熱部の延在する方向に間隔をおいて配置された複数のフィンであり、
前記凝縮空間において凝縮した前記作動流体を前記蒸発空間側に流通させる複数のウィック部を備え、
複数の前記ウィック部は、それぞれ、前記凝縮空間において複数の前記フィンのそれぞれに沿って前記蒸発空間側に向けて延在する
熱輸送装置。
【請求項2】
内部に作動流体が封入された筐体を備える熱輸送装置であって、
前記筐体は、
平板状に形成され、発熱体から放出された熱を吸収する吸熱部と、
前記吸熱部の端部側において前記吸熱部の延在する方向に対して直交する方向に延在する放熱面が設けられ、前記吸熱部において吸収した熱を前記放熱面から放出する放熱部と、を有し、
前記吸熱部には、平面状に延在し、吸収した熱によって液体の前記作動流体を蒸発させる蒸発空間が形成され、
前記放熱部には、前記放熱面に沿って、前記蒸発空間の延在する方向に対して直交する方向に延在し、熱を放出させて気体の前記作動流体を凝縮させる凝縮空間が形成され、
前記放熱面は、前記放熱部における前記作動流体が吸収した熱を前記筐体の外側に伝える伝熱部材に設けられ、
前記伝熱部材は、前記凝縮空間において前記蒸発空間に向かって張り出す張出部を有し、
前記凝縮空間は、前記蒸発空間の延在する方向に対して直交する方向の大きさが、前記蒸発空間に向かって徐々に小さくなる
熱輸送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱輸送装置と、
前記熱輸送装置の前記吸熱部に積層されるバッテリセルと、
前記熱輸送装置の前記放熱部に設けられた前記放熱面から放出される熱が伝わる冷却ジャケットと、を備える
電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送装置およびこれを用いた電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱輸送装置としては、発熱体から放出される熱を吸収して作動流体を蒸発させる蒸発空間と、前記蒸発空間の延在する方向の端部側に設けられ、前記蒸発空間において前記作動流体が吸収した熱を放出させて前記作動流体を凝縮する凝縮空間と、を有するベーパーチャンバが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の熱輸送装置は、蒸発空間における作動流体の流通方向の横断面積を、凝縮空間において拡大することによって、熱を放出する放熱面を大きくし、放熱量を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-506163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の熱輸送装置は、蒸発空間と凝縮空間との間に段差が形成されており、凝縮空間において液化した作動流体が凝縮空間に溜まった状態となりやすく、蒸発空間に向かって作動流体を流通させにくくなって、熱を輸送する能力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、熱を輸送する能力の向上を図ることができる熱輸送装置およびこれを用いた電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱輸送装置は、内部に作動流体が封入された筐体を備える熱輸送装置であって、前記筐体は、平板状に形成され、発熱体から放出された熱を吸収する吸熱部と、前記吸熱部の端部側において前記吸熱部の延在する方向に対して直交する方向に延在する放熱面が設けられ、前記吸熱部において吸収した熱を前記放熱面から放出する放熱部と、を有し、前記吸熱部には、平面状に延在し、吸収した熱によって液体の前記作動流体を蒸発させる蒸発空間が形成され、前記放熱部には、前記放熱面に沿って、前記蒸発空間の延在する方向に対して直交する方向に延在し、熱を放出させて気体の前記作動流体を凝縮させる凝縮空間が形成され、前記放熱面は、前記放熱部における前記作動流体が吸収した熱を前記筐体の外側に伝える伝熱部材に設けられ、前記伝熱部材は、前記凝縮空間において前記蒸発空間に向かって張り出す張出部を有している。
【0008】
また、本発明に係る熱輸送装置は、前記張出部は、前記凝縮空間において前記吸熱部の延在する方向に間隔をおいて配置された複数のフィンである。
【0009】
また、本発明に係る熱輸送装置は、前記凝縮空間において凝縮した前記作動流体を前記蒸発空間側に流通させる複数のウィック部を備え、複数の前記ウィック部は、それぞれ、前記凝縮空間において複数の前記フィンのそれぞれに沿って前記蒸発空間側に向けて延在する。
【0010】
また、本発明に係る熱輸送装置は、前記凝縮空間が、前記蒸発空間の延在する方向に対して直交する方向の大きさが、前記蒸発空間に向かって徐々に小さくなる。
【0011】
また、本発明に係る電池モジュールは、前記熱輸送装置と、前記熱輸送装置の前記吸熱部に積層されるバッテリセルと、前記熱輸送装置の前記放熱部に設けられた前記放熱面から放出される熱が伝わる冷却ジャケットと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放熱部の凝縮空間において、作動流体が熱交換する面積を増大させて、気体の作動流体の凝縮を促進することが可能となるとともに、凝縮空間の液体の作動流体を、短い移動距離で蒸発空間に流入させて、液体の作動流体を効率的に凝縮空間から蒸発空間に流入させることが可能となるので、熱を輸送する能力の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る熱輸送装置の要部断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る熱輸送装置の要部分解斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る伝熱部材の平面図である。
図5】本発明の他の実施形態を示す熱輸送装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図4は、本発明の一実施形態を示すものである。図1は電池モジュールの斜視図であり、図2は熱輸送装置の要部断面図であり、図3は熱輸送装置の要部分解斜視図であり、図4は伝熱部材の平面図である。本実施形態では、図1におけるX方向を右方、Y方向を前方、Z方向を上方として説明する。
【0015】
本発明の熱輸送装置を適用した電池モジュール1は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両に適用されるものであり、動力源としての電動モータに電力を供給するためのものである。
【0016】
電池モジュール1は、図1に示すように、上下方向(図1のZ方向)に並べて配置される発熱体としての複数のバッテリセル10と、各バッテリセル10に対して積層され、バッテリセル10から放出される熱が伝達される複数の熱輸送装置20と、熱輸送装置20から放出される熱を吸収するための冷却ジャケット30と、を備えている。
【0017】
複数のバッテリセル10は、それぞれ、例えば、リチウムイオン二次電池である。複数のバッテリセル10は、それぞれ、電極および電解質等の材料をラミネートフィルムによって覆うことによって矩形の板状に形成されている。バッテリセル10は、右側端部から電極11が張り出している。バッテリセル10は、厚さ方向の大きさが、例えば、10mm程度に形成されている。
【0018】
複数の熱輸送装置20は、それぞれ、バッテリセル10から放出される熱を吸収して幅方向に輸送し、冷却ジャケット30に放出する、所謂ベーパーチャンバである。
【0019】
熱輸送装置20は、図2に示すように、内部に作動流体が封入された筐体21を備えている。ここで、筐体21に封入される作動流体は、例えば、水、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコール、または、これらの混合物である。
【0020】
筐体21は、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅合金等の熱伝導率の高い部材によって矩形の板状に形成されている。筐体21は、前後方向の大きさがバッテリセル10の前後方向の大きさと略同一に形成され、幅方向の大きさがバッテリセル10の幅法の大きさよりもやや大きく形成されている。
【0021】
筐体21は、図2及び図3に示すように、互いに対向する一対の板状部材22と、一対の板状部材22の互いに対向する面側のそれぞれに設けられ、液体の作動流体を流通させるための一対のウィックシート23と、一対の板状部材22の左端部側に配置され、作動流体の熱を冷却ジャケット30に伝えるための伝熱部材24と、を有している。
【0022】
板状部材22は、例えば、0.3mmの厚さの板状部材である。
【0023】
ウィックシート23は、例えば、金属線を編み込むことによって形成された0.2mmの厚さのシート状の部材からなる。ウィックシート23は、図3に示すように、液体の作動流体を幅方向に流通させるための複数のウィック部23aと、気体の作動流体を幅方向に流通させるための複数の蒸気流通部23bと、が前後方向に交互に配置されている。ウィック部23aは、金属線が編み込まれた帯状に形成され、毛細管現象を利用して液体の作動流体を移動させる。
【0024】
伝熱部材24は、一対の板状部材22の左端部側を前後方向に延びる部材である。伝熱部材24は、図2に示すように、冷却ジャケット30の外面に当接することで、冷却ジャケット30に熱を放出する放熱面24aを有している。放熱面24aは、伝熱部材24の左側面において、例えば上下方向の大きさが10mmに形成されて前後方向に延びるように形成されている。また、伝熱部材24は、図2乃至図4に示すように、右側面から右方向に張り出す張出部24bを有している。張出部24bは、伝熱部材24の右側面から右方向に例えば20mmの大きさで張り出し、前後方向に間隔をおいて配置された複数のフィン24cである。複数のフィン24cは、それぞれ、基端側から先端側に向かって徐々に上下方向の大きさが小さくなるように形成されている。
【0025】
筐体21は、図3に示すように、一対の板状部材22の間に一対のウィックシート23を配置するとともに、一対の板状部材22および一対のウィックシート23の左端部側において、一対の板状部材22および一対のウィックシート23によって伝熱部材24を上下に挟んだ状態で外周部分を閉鎖することにより形成される。このとき、伝熱部材24は、複数のフィン24cによって、一対の板状部材22および一対のウィックシート23を支持している。また、伝熱部材24の複数のフィン24cの上面及び下面には、ウィックシート23のウィック部23aが位置しており、前後方向に隣り合うフィン24cの間にウィックシート23の蒸気流通部23bが位置している。
【0026】
筐体21は、図2に示すように、平板状に形成され、バッテリセル10から放出された熱を吸収する吸熱部21aと、吸熱部21aの端部側において吸熱部21aの延在する水平方向に対して直交する上下方向に延在する放熱面24aが設けられ、吸熱部21aにおいて吸収した熱を放熱面24aから放出する放熱部21bと、を有している。筐体21の吸熱部21aは、例えば、1mmの厚さ方向の大きさに形成されている。
【0027】
吸熱部21aには、平面状に延在し、吸収した熱によって液体の作動流体を蒸発させる蒸発空間21a1が形成されている。
【0028】
放熱部21bには、放熱面24aに沿って、蒸発空間21a1の延在する水平方向に対して直交する上下方向に延在し、熱を放出させて気体の作動流体を凝縮させる凝縮空間21b1が形成されている。
【0029】
凝縮空間21b1は、蒸発空間21a1の延在する水平方向に対して直交する上下方向の大きさが、蒸発空間21a1に向かって徐々に小さくなるように形成され、蒸発空間21a1に接続されている。本実施形の凝縮空間21b1は、蒸発空間21a1の上下両側に位置する板状部材22が斜めに直線的に延伸して蒸発空間21a1に接続されている。
【0030】
冷却ジャケット30は、例えば、アルミニウム合金等の金属からなる中空の部材からなる。冷却ジャケット30の内部には、図示しないポンプ等の機器によって圧送された冷却水が流通する。冷却ジャケット30の内部を流通する冷却水は、例えば、ラジエータによって放熱した後の冷却水である。冷却水は、水、または、エチレングリコール等のクーラントである。
【0031】
以上のように構成された電池モジュール1において、バッテリセル10から放出された熱は、上方および下方に隣接する熱輸送装置20の筐体21の吸熱部21aに伝達される。熱輸送装置20の吸熱部21aに伝達された熱は、吸熱部21aの蒸発空間21a1の液体の作動流体を蒸発させる。筐体21の蒸発空間21a1において蒸発した作動流体は、図3に示す、筐体21のウィックシート23の蒸気流通部23bを、放熱部21bの凝縮空間21b1側に向かって流通する。凝縮空間21b1に流入した気体の作動流体は、伝熱部材24を介して冷却ジャケット30内を流通する冷却水と熱交換することによって、放熱して凝縮する。凝縮空間21b1において凝縮した作動流体は、ウィックシート23のウィック部23aを蒸発空間21a1側に向かって流通する。冷却ジャケット30内において熱を吸収した冷却水は、冷却ジャケット30から流出した後、例えば、ラジエータを流通することにより、熱を空気中に放出する。
【0032】
吸熱部21aの蒸発空間21a1において吸熱して蒸発した作動流体は、上下方向の大きさが蒸発空間21a1の上下方向の大きさよりも拡大された放熱部21bの凝縮空間21b1において、伝熱部材24を介して冷却ジャケット30を流通する冷却水と熱交換するため、作動流体と冷却水との熱交換面積が大きくなり、気体の作動流体の凝縮が促進される。また、伝熱部材24は、凝縮空間21b1において蒸発空間21a1側に向かって張り出す張出部24bを有しているため、作動流体と冷却水との熱交換面積がより大きくなり、気体の作動流体の凝縮がより促進される。さらに、伝熱部材24の張出部24bは、凝縮空間21b1において吸熱部21aの延在する方向に間隔をおいて配置された複数のフィン24cであるため、作動流体と冷却水との熱交換面積がさらに大きくなり、気体の作動流体の凝縮がさらに促進される。
【0033】
また、凝縮空間21b1において凝縮した作動流体は、上下方向の大きさが徐々に小さくなる凝縮空間21b1の上部側および下部側に位置するウィックシート23のウィック部23aを流通して吸熱部21aの蒸発空間21a1に流入する。これにより、凝縮空間21b1の液体の作動流体は、短い移動距離で蒸発空間21a1に流入することになるため、凝縮空間21b1の液体の作動流体が円滑に蒸発空間21a1に流入する。
【0034】
このように、本実施形態の熱輸送装置20によれば、内部に作動流体が封入された筐体21を備える熱輸送装置20であって、筐体21は、平板状に形成され、発熱体としてのバッテリセル10から放出された熱を吸収する吸熱部21aと、吸熱部21aの端部側において吸熱部21aの延在する方向に対して直交する方向に延在する放熱面24aが設けられ、吸熱部21aにおいて吸収した熱を放熱面24aから放出する放熱部21bと、を有し、吸熱部21aには、平面状に延在し、吸収した熱によって液体の作動流体を蒸発させる蒸発空間21a1が形成され、放熱部21bには、放熱面24aに沿って、蒸発空間21a1の延在する方向に対して直交する方向に延在し、熱を放出させて気体の作動流体を凝縮させる凝縮空間21b1が形成され、放熱面24aは、放熱部21bにおける作動流体が吸収した熱を筐体21の外側に伝える伝熱部材24に設けられ、伝熱部材24は、凝縮空間21b1において蒸発空間21a1側に向かって張り出す張出部24bを有している。
【0035】
これにより、放熱部21bの凝縮空間21b1において、作動流体と冷却水との熱交換面積を増大させて、気体の作動流体の凝縮を促進することが可能となるので、熱を輸送する能力の向上を図ることが可能となる。
【0036】
また、張出部24bは、凝縮空間21b1において吸熱部21aの延在する方向に間隔を置いて配置された複数のフィン24cである、ことが好ましい。
【0037】
これにより、凝縮空間21b1において、作動流体と冷却水との熱交換面積をより増大させることが可能となるので、気体の作動流体の凝縮をより促進することが可能となる。
【0038】
また、凝縮空間21b1において凝縮した作動流体を蒸発空間21a1側に流通させる複数のウィック部23aを備え、複数のウィック部23aは、それぞれ、凝縮空間21b1において複数のフィン24cのそれぞれに沿って蒸発空間21a1側に向けて延在する、ことが好ましい。
【0039】
これにより、凝縮空間21b1において、蒸気流通部23bが、間隔をおいて配置されるフィン24cとフィン24cとの間に配置され、気体の作動流体を放熱面24aに近い位置まで到達させることが可能となるので、気体の作動流体をより効率的に凝縮することが可能となる。
【0040】
また、凝縮空間21b1は、蒸発空間21a1の延在する方向に対して直交する方向の大きさが、蒸発空間21a1に向かって徐々に小さくなる、ことが好ましい。
【0041】
これにより、凝縮空間21b1の液体の作動流体を、短い移動距離で蒸発空間21a1に流入させて、液体の作動流体を効率的に凝縮空間21b1から蒸発空間21a1に流入させることが可能となるので、熱を輸送する能力のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の電池モジュール1によれば、熱輸送装置20と、熱輸送装置20の吸熱部21aに積層されるバッテリセル10と、熱輸送装置20の放熱部21bの放熱面24aから放出される熱が伝わる冷却ジャケット30と、を備える、ことが好ましい。
【0043】
これにより、バッテリセル10から放出される熱を、熱輸送装置20によって確実に冷却ジャケット30を流通する冷却水に放出することが可能となるので、バッテリセル10の性能を維持することが可能となる。
【0044】
図5は、本発明の他の実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0045】
図5(a)および図5(b)に示す筐体21の凝縮空間21b1は、前記実施形態と同様に、蒸発空間21a1の延在する水平方向に対して直交する上下方向の大きさが、蒸発空間21a1に向かって徐々に小さくなるように形成されている。
【0046】
図5(a)に示す、筐体21の凝縮空間21b1は、蒸発空間21a1の上下両側に位置する板状部材22が曲線状に湾曲しながら延伸して蒸発空間21a1に接続されている。
【0047】
また、図5(b)に示す、筐体21の凝縮空間21b1は、蒸発空間21a1の一方の板状部材22が、直線的に蒸発空間21a1側に延伸し、他方の板状部材22が、斜めに直線的に蒸発空間21a1側に延伸し、蒸発空間21a1に接続されている。
【0048】
このように、本実施形態の熱輸送装置20によれば、前記実施形態と同様に、放熱部21bの凝縮空間21b1において、作動流体と冷却水との熱交換面積を増大させて、気体の作動流体の凝縮を促進することが可能となるので、熱を輸送する能力の向上を図ることが可能となる。
【0049】
また、凝縮空間21b1は、蒸発空間21a1の延在する方向に対して直交する方向の大きさが、蒸発空間21a1に向かって徐々に小さくなる、ことが好ましい。
【0050】
これにより、凝縮空間21b1の液体の作動流体を、短い移動距離で蒸発空間21a1に流入させて、液体の作動流体を効率的に凝縮空間21b1から蒸発空間21a1に流入させることが可能となるので、熱を輸送する能力のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0051】
尚、前記実施形態では、熱輸送装置20の筐体21の吸熱部21aの幅方向の一端部にのみ放熱部21bを設け、放熱部21bの放熱面24aから冷却ジャケット30を流通する冷却水に熱を放出するものを示したが、これに限られるものではない。例えば、熱輸送装置20の筐体21の幅方向中央部に吸熱部を配置し、吸熱部の幅方向両端側に放熱部を配置し、幅方向両側のそれぞれの放熱部の放熱面から熱を放出させるようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、一対の板状部材22の間に一対のウィックシート23を配置したものを示したが、これに限られるものではない。毛細管現象を利用して液体の作動流体を凝縮空間21b1から蒸発空間21a1に流通させるものであれば、例えば、一対の板状部材の間に一枚のウィックシートを配置してもよい。また、例えば、一対の板状部材の間にウィックシートを配置することなく、一対の板状部材の凝縮空間および蒸発空間側の面に金属の粉体を焼結させたり、溝を形成したりすることによりウィック構造を形成してもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、伝熱部材24に張出部24bとしての複数のフィン24cを形成することによって、凝縮空間21b1の気体の作動流体と冷却ジャケット30を流通する冷却水との熱交換面積を増大させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。凝縮空間において伝熱部材から蒸発空間に向かって張り出すものであれば、例えば、それぞれ円錐状に形成された複数の突起を張出部としてもよいし、伝熱部材24における凝縮空間21b1に位置する面に粗化処理を施すことによって形成された複数の突起を張出部としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 電池モジュール
10 バッテリセル
20 熱輸送装置
21 筐体
21a 吸熱部
21a1 蒸発空間
21b 放熱部
21b1 凝縮空間
23a ウィック部
24 伝熱部材
24a 放熱面
24b 張出部
24c フィン
図1
図2
図3
図4
図5