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特許7688007運動マネージャ、ブレーキ装置の制御装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】運動マネージャ、ブレーキ装置の制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20250527BHJP
   B60W 30/085 20120101ALI20250527BHJP
【FI】
B60T7/12 C
B60W30/085
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022153826
(22)【出願日】2022-09-27
(65)【公開番号】P2024048007
(43)【公開日】2024-04-08
【審査請求日】2024-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】末竹 祐介
(72)【発明者】
【氏名】口ノ町 敦史
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083087(JP,A)
【文献】特開2010-179873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12-8/1769
B60W30/085
B60W30/08
B60W10/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される運動マネージャであって、
アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて、ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、
前記ブレーキ制御部が制御対象とする前記ブレーキ装置の種別情報を予め記憶している記憶部と、を備え、
前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、前記記憶部の記憶している前記ブレーキ装置の種別情報に基づいて、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
運動マネージャ。
【請求項2】
前記種別情報は、前記ブレーキ装置の制約事項を含み、
前記制約事項は、前記ブレーキ装置が出力できる制動力の上限値の情報を含み、
前記生成部は、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けた場合には、前記ブレーキ装置の制動力が前記上限値以下となるように前記指示値を生成する
請求項1に記載の運動マネージャ。
【請求項3】
前記生成部は、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けた場合には、前記種別情報に基づいて、前記ブレーキ装置の制動力が前記車両の車輪の回転がロックされる制動力として予め定められた制動力となるように、前記指示値を生成する
請求項1又は請求項2に記載の運動マネージャ。
【請求項4】
前記生成部は、前記車両が停止していないときには、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求に応じた前記指示値を生成しない
請求項1に記載の運動マネージャ。
【請求項5】
車両に搭載される運動マネージャであって、
アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた複数の前記運動要求を調停する調停部と、
前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて、ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、を備え、
前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記調停部は、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたとき、他の前記運動要求の有無に拘わらず、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を選択することにより調停し、
前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
運動マネージャ。
【請求項6】
車両のブレーキ装置を制御する制御装置であって、
アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて前記ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、前記ブレーキ制御部が制御対象とする前記ブレーキ装置の種別情報を予め記憶している記憶部と、を備える運動マネージャを有しており、
前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、前記記憶部の記憶している前記ブレーキ装置の種別情報に基づいて、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
ブレーキ装置の制御装置。
【請求項7】
車両のブレーキ装置を制御する制御装置であって、
アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた複数の前記運動要求を調停する調停部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて前記ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、を備える運動マネージャを有しており、
前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記調停部は、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたとき、他の前記運動要求の有無に拘わらず、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を選択することにより調停し、
前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
ブレーキ装置の制御装置。
【請求項8】
車両に搭載されるコンピュータが実行して、前記車両のブレーキ装置を制御する制御方法であって、
アプリケーションから運動要求を受け付けることと、
受け付けた前記運動要求に基づいて、前記ブレーキ装置を制御するための動作要求の指示値を生成することと、
を備え、
前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記追加制動力を要求することを示す前記運動要求を受け付けたときに、前記コンピュータが予め記憶している前記ブレーキ装置の種別情報に基づいて、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
制御方法。
【請求項9】
車両に搭載されるコンピュータが実行して、前記車両のブレーキ装置を制御する制御方法であって、
アプリケーションから運動要求を受け付けることと、
受け付けた複数の前記運動要求を調停することと、
受け付けた前記運動要求に基づいて、前記ブレーキ装置を制御するための動作要求の指示値を生成することと、
を備え、
前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたとき、他の前記運動要求の有無に拘わらず、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を選択することにより調停し、
前記追加制動力を要求することを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動マネージャ、ブレーキ装置の制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運動マネージャが記載されている。運動マネージャは、車両に搭載されている。運動マネージャは、受付部と、生成部と、を備えている。受付部は、アプリケーションから運動要求を受け付ける。生成部は、受付部の受け付けた運動要求に基づいて、例えば、ブレーキ制御部に出力する動作要求の指示値を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-32894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている運動マネージャは、例えば、車両が走行している状態では、アプリケーションから車両に対して要求する加速度を、受け付ける。そして、運動マネージャは、当該加速度を実現できるように、動作要求の指示値を生成する。その一方で、特許文献1に記載の技術は、車両が停止している状態で、且つ当該車両に外部からの力が加わる際に、運動マネージャがどのような処理を行うべきかという点について、何ら着目していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両に搭載される運動マネージャであって、アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて、ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、を備え、前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する運動マネージャである。
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両のブレーキ装置を制御する制御装置であって、アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて前記ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、を備える運動マネージャを有しており、前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成するブレーキ装置の制御装置である。
【0007】
上記各構成によれば、受付部は、車両が停止しているときに、他物体が車両に衝突すると判定したアプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す運動要求を受け付ける。このとき、車両は停止しているため、ブレーキ装置は一定の制動力を発生させている。とはいえ、このときの制動力は、車両を停止させるに足る程度の制動力であればよい。そのため、この時の制動力はそれほど大きな制動力ではない可能性がある。一方、生成部は、受付部が追加制動力を必要とすることを示す運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を車両に発生させる出力信号を生成する。そのため、車両は運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を発生させる。これにより、他物体が車両に衝突した際に、その衝撃で車両が移動してしまうことを防げる。
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両に搭載されるコンピュータが実行して、前記車両のブレーキ装置を制御する制御方法であって、アプリケーションから運動要求を受け付けることと、受け付けた前記運動要求に基づいて、前記ブレーキ装置を制御するための動作要求の指示値を生成することと、を備え、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、前記追加制動力を要求することを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する制御方法である。
【0009】
上記構成によれば、車両が停止しているときに、他物体が車両に衝突すると判定したアプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す運動要求を受け付ける。このとき、車両は停止しているため、ブレーキ装置は一定の制動力を発生させている。とはいえ、このときの制動力は、車両を停止させるに足る程度の制動力であればよい。そのため、この時の制動力はそれほど大きな制動力ではない可能性がある。一方、上記構成によれば、追加制動力を必要とすることを示す運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を車両に発生させる出力信号を生成する。そのため、車両は運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を発生させる。これにより、他物体が車両に衝突した際に、その衝撃で車両が移動してしまうことを防げる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両の概略を示す概略図である。
図2図2は、ブレーキECU及びブレーキ装置を示す概略図である。
図3図3は、ブレーキ装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
以下、運動マネージャ、運動マネージャを有する制御装置、及び制御方法の一実施形態について説明する。以下では、運動マネージャを有する制御装置について、図面を参照して説明する。
【0012】
<車両の概略>
図1に示すように、車両10は、内燃機関20と、操舵装置30と、ブレーキ装置40と、制御装置50と、を備えている。
【0013】
内燃機関20は、車両10の駆動源である。内燃機関20は、図示は省略するが、スロットルバルブ、燃料噴射弁、及び点火装置などの複数のアクチュエータを有している。内燃機関20は、制御装置50によって上記の各アクチュエータが制御されることで、燃料を燃焼して、車両10を駆動させる。
【0014】
操舵装置30は、車両10の操舵輪の舵角を変化させる。操舵装置30は、電動パワーステアリングを有している。電動パワーステアリングは、制御装置50によってアクチュエータが制御されることで、運転者によるステアリング操作をアシストする。また、電動パワーステアリングは、制御装置50によってアクチュエータが制御されることで、運転者によるステアリングの操作量を微調整したり、運転者の操作に依らずに舵角を調整したりする。
【0015】
ブレーキ装置40は、車両10の各車輪に設けられている。ブレーキ装置40は、油圧を用いて制動力を発生させるディスクブレーキである。図2に示すように、ブレーキ装置40は、ディスク41と、ブレーキパッド42と、ブレーキパッド42に油圧を加えるアクチュエータ44と、を有している。すなわち、アクチュエータ44は、油圧を出力するものである。ディスク41は、車両10の車輪と一体回転する回転体である。ブレーキパッド42は、車両10の車体に支持されている摩擦材である。アクチュエータ44からの油圧は、制御装置50によって制御される。ブレーキ装置40は、ディスク41とブレーキパッド42とを接触させることで、車両10に制動力を発生させる。
【0016】
図1に示すように、制御装置50は、先進安全ECU60と、エンジンECU70と、ステアリングECU80と、ブレーキECU90と、を備えている。各ECUは、図示しない内部バスを介して互いに信号をやり取り可能である。
【0017】
先進安全ECU60は、車両10の運転支援に関する機能を実現する。具体的には、先進安全ECU60は、CPU61と、ROM62と、を備えている。ROM62は、複数のアプリケーション63を記憶している。ここで、複数のアプリケーション63のうち、3つのアプリケーション63を、第1アプリケーション63A、第2アプリケーション63B、第3アプリケーション63Cとする。
【0018】
第1アプリケーション63Aは、図示を省略するカメラなどのセンサを用いて、車両10の停止時において車両10へ衝突する例えば他車両などの他物体が車両10に衝突することを、衝突する前に検知するためのアプリケーションである。より具体的には、第1アプリケーション63Aは、カメラが取得する他車両の画像を用いて、車両10に衝突することを検知するアプリケーションである。つまり、第1アプリケーション63Aは、車両10の停止時にのみ実行されるアプリケーションである。
【0019】
第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cは、先進運転支援システムの機能を実現するプログラムである。これら第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cの例は、前走車両との車間距離を一定に保ちながら追従走行するためのACC(Adaptive Cruise Control)アプリケーションである。ACCアプリケーションは、車両10が前走車両との距離を一定に保ちながら走行できるように、車両10に搭載された各アクチュエータに加速と減速を要求する。
【0020】
また、第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cの他の例は、制限車速を認識して、車両10の速度を当該制限車速以下に維持するASL(Auto Speed Limiter)アプリケーションである。さらに、第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cの他の例は、車両10への衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキアプリケーション、いわゆるAEB(Autonomous Emergency Braking)アプリケーションである。また、第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cの他の例は、車両10が走行している車線の維持を行う車線維持支援アプリケーション、いわゆるLKA(Lane Keeping Assist)アプリケーションである。したがって、第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cは、車両10の走行時にのみ実行されるアプリケーションである。
【0021】
CPU61は、車両10に搭載された図示しない複数のセンサから検出値を取得する。CPU61は、センサからの検出値を用いて、ROM62が記憶している各アプリケーション63を実行する。CPU61が、各アプリケーション63を実行すると、当該CPU61は、各アプリケーション63での機能を実現できるように、当該アプリケーション63に対応する運動要求を出力する。なお、CPU61は、複数のアプリケーション63を同時に実行することもある。この場合、CPU61は、実行したアプリケーション63毎に、個別の運動要求を出力する。
【0022】
CPU61は、各運動要求を、各アプリケーション63の機能を実現する上で制御が必要なアクチュエータの制御部を有するECUに出力する。具体的には、CPU61は、エンジンECU70、ステアリングECU80、及びブレーキECU90から選ばれる1つ以上に、運動要求を出力する。
【0023】
ここで、CPU61が第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cを実行することで、CPU61がエンジンECU70に出力する運動要求は、車両10に発生させる要求加速度を示す値である。また、CPU61が第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cを実行することで、CPU61がステアリングECU80に出力する運動要求は、車両10の操舵角を示す値である。さらに、CPU61が第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cを実行することで、CPU61がブレーキECU90に出力する運動要求は、車両10に発生させる要求加速度を示す値である。
【0024】
一方で、CPU61が第1アプリケーション63Aを実行することで、CPU61がブレーキECU90に出力する運動要求は、車両10に追加制動力を必要とすることを示す信号である。車両10に追加制動力を必要とするか否かは、いわゆるフラグにより表現される。オン状態のフラグは、車両10に追加制動力を必要とすることを示す信号である。これに対して、オフ状態のフラグは、車両10に追加制動力を必要としないことを示す信号である。このように、第1アプリケーション63AからブレーキECU90へ出力する運動要求は、追加制動力が必要であるか否かを択一的に示す信号である。
【0025】
上記のように、CPU61が出力する運動要求は、例えば、ブレーキ装置40のアクチュエータ44に出力される指示値をそのまま示すものではない。つまり、運動要求は、例えば、ブレーキ装置40であれば共通のものであり、ブレーキ装置40の種類に応じて変化するものではない。その一方で、運動要求は、内燃機関20、操舵装置30、及びブレーキ装置40といったように機能が別な装置毎に異なり得るものである。
【0026】
エンジンECU70は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。エンジンECU70のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、内燃機関20を制御する。つまり、エンジンECU70は、内燃機関20を制御する制御装置である。特に、エンジンECU70は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、内燃機関20を制御する。
【0027】
ステアリングECU80は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。ステアリングECU80のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、操舵装置30を制御する。つまり、ステアリングECU80は、操舵装置30を制御する制御装置である。特に、ステアリングECU80は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、操舵装置30を制御する。
【0028】
ブレーキECU90は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、ブレーキ装置40を制御する。つまり、ブレーキECU90は、ブレーキ装置40を制御する制御装置である。特に、ブレーキECU90は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、ブレーキ装置40を制御する。以下では、ブレーキECU90での動作について詳述する。
【0029】
<ブレーキECU>
以下、先進安全ECU60が記憶する各アプリケーション63が実行されたときのブレーキECU90の動作を説明する。
【0030】
図2に示すように、ブレーキECU90は、運動マネージャ91と、ブレーキ制御部96と、を有している。図示は省略するが、ブレーキECU90は、CPU及びROMを備えている。ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されている運動マネージャ用のプログラム及びブレーキ制御用のプログラムを実行することによって、運動マネージャ91及びブレーキ制御部96の機能を実現している。
【0031】
具体的には、図3に示すように、ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、受付工程S11と、調停工程S12と、生成工程S13と、制御工程S14と、を実行する。したがって、ブレーキECU90のCPUは、運動マネージャ91における受付部92、調停部93、生成部94として機能する。また、ブレーキECU90のCPUは、ブレーキ制御部96として機能する。
【0032】
ブレーキECU90のROMは、ブレーキ制御部96が制御対象とするブレーキ装置40の種別情報TIを予め記憶している。種別情報TIは、車両10に搭載され得る複数種のブレーキ装置40のうちから、実際に車両10に搭載されているブレーキ装置40の種別を特定するための情報である。
【0033】
また、ブレーキECU90のROMは、各運動要求とその運動要求を実現するための動作要求の指示値とを対応付けた複数の指示値マップを記憶している。この指示値は、アクチュエータ44が出力する油圧の大きさを示す信号である。ブレーキECU90のROMは、種別情報TI毎の指示値マップを記憶している。さらに、ブレーキ装置40の種別情報TIは、ブレーキ装置40の種別毎の制約事項REを含んでいる。制約事項REは、ブレーキ装置40が出力できる制動力の上限値の情報を含んでいる。また、制約事項REは、ブレーキ装置40が出力できる制動力の上限値とするためのアクチュエータ44の出力の上限値を含んでいる。
【0034】
図3に示すように、ブレーキECU90は、先進運転支援システムの機能を実現するために、先進安全ECU60から運動要求が入力されると、ブレーキ装置40の制御を開始する。ブレーキ装置40の制御を開始すると、先ず、ブレーキECU90は、受付工程S11を行う。受付工程S11では、受付部92が処理を行う。ここで、第1アプリケーション63Aからの運動要求を第1運動要求とし、第2アプリケーション63Bからの運動要求を第2運動要求とし、第3アプリケーション63Cからの運動要求を第3運動要求とする。
【0035】
<車両が走行している状態>
先ず、車両10が停止していない場合、すなわち車両10が走行している場合の、ブレーキECU90の動作について説明する。車両10が停止していない場合には、上述した第1アプリケーション63Aは実行されない。一方で、第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cは実行される。
【0036】
図2に示すように、受付部92は、先進安全ECU60から、個々のアプリケーション63に対応する運動要求を受け付け可能となっている。また、上述したとおり、先進安全ECU60は、同時に複数のアプリケーション63を実行することもある。この場合、受付部92は、複数の運動要求を受け付けて、調停部93へ複数の運動要求を出力する。具体的には、受付部92は、第2運動要求及び第3運動要求を受け付けて、調停部93へ第2運動要求及び第3運動要求を出力する。一方で、車両10が停止していない場合には、第1アプリケーション63Aは実行されない。そのため、受付部92は、第1運動要求を受け付けない。
【0037】
その後、図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を調停工程S12へ進める。調停工程S12では、調停部93が処理を行う。
図2に示すように、調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求を調停する。調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求が1つのみの場合には、その運動要求を選択する。一方、調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求が複数ある場合には、要求加速度が最も負に大きくなる運動要求を選択することで、複数の運動要求を調停する。具体的には、第2運動要求が示す要求加速度よりも、第3運動要求が示す要求加速度が、負側に大きい場合、調停部93は、第3運動要求を選択して2つの運動要求を調停する。つまり、調停部93は、より大きな制動力となる運動要求を選択することにより調停する。
【0038】
その後、図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を生成工程S13へ進める。生成工程S13では、生成部94が処理を行う。
図2に示すように、生成部94は、調停部93による調停結果に基づいて、車両10に搭載されるブレーキ制御部96に出力する動作要求の指示値を生成する。このとき、生成部94は、記憶部95の記憶しているブレーキ装置40の種別情報TI及びその種別情報TIに対応する指示値マップを用いて、動作要求の指示値を生成する。
【0039】
ここで、例えば調停部93による調停で、運動要求として第3アプリケーション63Cからの第3運動要求が選択されたとする。同じ第3運動要求であっても、例えばアクチュエータ44の種別が異なれば、第3運動要求を実現するための指示値が異なることがある。例えば、「種別A」のアクチュエータ44で第3運動要求を実現するための指示値が「X値」であっても、「種別B」のアクチュエータ44で第3運動要求を実現するための指示値が「Y値」であることもある。そこで、生成部94は、種別情報TIに対応する指示値マップを特定する。そして、生成部94は、特定した指示値マップで、調停部93で調停された運動要求に対応する値を特定し、それを動作要求の指示値として生成する。
【0040】
なお、上述したように、車両10が停止していない場合、受付部92は第1運動要求を受け付けない。そのため、生成部94は、車両10が停止していないときには、第1運動要求に応じた動作要求の指示値を生成しない。
【0041】
その後、図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を制御工程S14へ進める。制御工程S14では、ブレーキ制御部96が処理を行う。図2に示すように、ブレーキ制御部96は、生成部94が生成した動作要求の指示値を、ブレーキ装置40のアクチュエータ44に出力する。これにより、ブレーキ制御部96は、アクチュエータ44の駆動を通じて、ブレーキ装置40を制御する。その後、ブレーキECU90は、一連の処理を終了する。
【0042】
<車両が停止している状態>
次に、車両10が停止している場合の、ブレーキECU90の動作について説明する。
車両10が停止している状態では、ブレーキ装置40のアクチュエータ44は、一定以上の油圧を出力している状態である。このとき、先進安全ECU60のCPU61は、第1アプリケーション63Aを実行することによって、車両10に他車両が衝突することを検知することがある。この場合、CPU61は、第1アプリケーション63Aから、車両10に追加制動力を必要とすることを示す第1運動要求をブレーキECU90に出力する。
【0043】
図3に示すように、先ず、ブレーキECU90は、受付工程S11を行う。受付工程S11では、受付部92が処理を行う。図2に示すように、受付部92は、先進安全ECU60から、第1アプリケーション63Aから、第1運動要求を受け付ける。
【0044】
その後、図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を調停工程S12へ進める。調停工程S12では、調停部93が処理を行う。
図2に示すように、調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求を調停する。調停部93は、第1運動要求を受け付けたとき、他の運動要求の有無に拘わらず、第1運動要求を選択することにより調停する。
【0045】
その後、図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を生成工程S13へ進める。生成工程S13では、生成部94が処理を行う。
図2に示すように、生成部94は、調停部93による調停結果に基づいて、ブレーキ制御部96に出力する動作要求の指示値を生成する。このとき、生成部94は、第1運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力をブレーキ装置40に発生させるための動作要求の指示値を生成する。具体的には、生成部94は、第1運動要求を実現する場合には、予め定められた指示値の値である特定指示値を生成する。より詳細には、生成部94は、記憶部95が記憶しているブレーキ装置40の制約事項REを参照する。そして、生成部94は、追加制動力が必要とすることを示す第1運動要求を受け付けた場合には、ブレーキ装置40の制動力が上限より小さくなるように、特定指示値を生成する。具体的には、生成部94は、アクチュエータ44の出力の上限値よりも僅かに小さい値を、特定指示値とする。なお、アクチュエータ44への動作要求の指示値を特定指示値としたとき、ブレーキ装置40の制動力は、車両10の車輪の回転がロックされる制動力となる。
【0046】
その後、図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を制御工程S14へ進める。制御工程S14では、ブレーキ制御部96が処理を行う。
図2に示すように、ブレーキ制御部96は、生成部94が生成した特定指示値を、ブレーキ装置40のアクチュエータ44に出力する。これにより、ブレーキ制御部96は、アクチュエータ44の駆動を通じて、ブレーキ装置40を制御する。そして、ブレーキ装置40の制動力は、車両10の車輪の回転がロックされる制動力となる。その後、ブレーキECU90は、今回の一連の処理を終了する。
【0047】
(実施形態の作用)
上記実施形態によれば、車両10が停止している状態で、ブレーキECU90の受付部92は、追加制動力を必要とすることを示す第1運動要求を受け付ける。このとき、生成部94は、車両10に他車両が衝突することに備えて、第1運動要求に基づいて、追加制動力を実現する動作要求の指示値を生成する。
【0048】
(実施形態の効果)
(1)上記実施形態によれば、受付部92は、車両10が停止しているときに、他車両などの他物体が車両10に衝突すると判定した第1アプリケーション63Aから追加制動力を必要とすることを示す第1運動要求を受け付ける。このとき、車両10は停止しているため、ブレーキ装置40は一定の制動力を発生させている。とはいえ、このときの制動力は、車両10を停止させるに足る程度の制動力であればよい。そのため、このときの制動力はそれほど大きな制動力ではない可能性がある。一方、生成部94は、受付部92が追加制動力を必要とすることを示す第1運動要求を受け付けたときに、第1運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を車両10に発生させる動作要求の指示値を生成する。そのため、車両10は第1運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を発生させる。これにより、他物体が車両10に衝突した際に、その衝撃で車両10が移動してしまうことを防げる。
【0049】
(2)上記実施形態によれば、記憶部95は、ブレーキ装置40の種別情報TIを予め記憶している。そして、生成部94は、運動要求を受け付けた場合には、記憶部95の記憶しているブレーキ装置40の種別情報TIに基づいて、動作要求の指示値を生成する。そのため、アプリケーション63から受け付ける運動要求が、ブレーキ装置40の種類や構造などに合わせた態様でなくても、制動力を車両10に発生させる動作要求の指示値を生成できる。よって、アプリケーション63の開発の際に、統一した規格で開発を行えばよい。すなわち、ブレーキ装置40の種類、構造毎に、アプリケーション63を開発する必要はない。
【0050】
(3)上記実施形態によれば、ブレーキ装置40の種別情報TIは、ブレーキ装置40の制約事項REを含んでいる。また、制約事項REは、ブレーキ装置40が出力できる制動力の上限値の情報を含んでいる。そして、生成部94は、追加制動力を必要とする第1運動要求を受け付けた場合には、ブレーキ装置40の制動力が上限値以下となるように動作要求の指示値を生成する。そのため、追加制動力を必要とすることを示す第1運動要求を受け付けた場合であっても、ブレーキ装置40に対して上限値を超えるような制動力となる動作要求の指示値は生成されない。したがって、ブレーキ装置40の破損を防止できる。
【0051】
(4)上記実施形態によれば、生成部94は、追加制動力を必要とする第1運動要求を受け付ける。この場合には、ブレーキ装置40の種別情報TIに基づいて、ブレーキ装置40の制動力が車両10の車輪の回転がロックされる制動力となるように、指示値を特定指示値として生成する。そのため、ブレーキ装置40は車両10の車輪をロックするように制動力を発生させることができる。車両10の車輪がロックされていると、車両10が他車両の衝突により動かされたときに、車輪は地面と摩擦する。これにより、他車両が車両10に衝突したときに、衝突によるエネルギーを車両10の車輪と地面との摩擦による消費できる。
【0052】
(5)上記実施形態によれば、生成部94は、車両10が停止していないときには、追加制動力を必要とすることを示す第1運動要求に応じた動作要求の指示値を生成しない。そのため、車両10が停止していないときには、第2アプリケーション63B及び第3アプリケーション63Cからの運動要求を実現する処理を妨げない。
【0053】
(6)上記実施形態によれば、調停部93は、第1運動要求を受け付けたとき、他の運動要求の有無に拘わらず、第1運動要求を選択することにより調停する。そのため、追加制動力が加えられないことを防止できる。
【0054】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・車両10は、内燃機関20に加えて、又は代えて、車両10の駆動源となるモータを備えていてもよい。この場合、制御装置50は、モータを制御対象とするモータECUを、エンジンECU70に加えて、又は代えて備えていてもよい。
【0056】
・ブレーキ装置40の種類や構造は、上記実施形態の構造に限られない。ブレーキ装置40のアクチュエータ44の種別情報TIを記憶部95が記憶していれば、運動マネージャ91はブレーキ装置40の種類や構造に併せた動作要求を生成できる。
【0057】
・アクチュエータ44は油圧を出力させるものに限られない。ブレーキ装置40の発生させる制動力などに合わせて、適宜異なるタイプに変更されればよい。この場合であっても、記憶部95がブレーキ装置40の種別情報TIを記憶していれば、生成部94は、適切な動作要求の出力値を生成できる。
【0058】
・運動マネージャ91は、ブレーキ装置40の制御をする場合であっても、ブレーキ装置40に含まれる場合に限られない。例えば、運動マネージャ91は、先進安全ECU60に含まれてもよい。また例えば、制御装置50は、内燃機関20、操舵装置30、及びブレーキ装置40をまとめて管理する管理ECUを備えていてもよく、この場合、運動マネージャ91は、管理ECUに含まれていてもよい。
【0059】
・制御装置50は、運動マネージャ91を有する装置と、ブレーキ制御部96を有する装置と、に分かれていてもよい。つまり、受付工程S11と、調停工程S12と、生成工程S13と、を実行するCPUと、制御工程S14を実行するCPUと、が異なっていてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、先進安全ECU60において、複数のアプリケーション63は、同一のCPU61で実行されるとしたが、これに限られない。個々のアプリケーション63は、異なるCPUによって実行されてもよい。
【0061】
・アプリケーション63は、上記実施形態で例示したアプリケーションに限られない。例えば、アプリケーション63は、車両10の速度が上限速度を超えないように制御するISA(Untelligent Speed Assistance)アプリケーションであってもよい。
【0062】
・第1アプリケーション63Aは、車両10の走行中にも実行されてもよい。この場合、調停部93は、車両10の走行中に、第1アプリケーション63Aからの第1運動要求を選択することにより調停してもよい。さらにこの場合、生成部94は、車両10が停止していないときには、第1運動要求に応じた指示値を生成してもよいし、しなくてもよい。
【0063】
・調停部93は、動作要求の出力値の大小に基づいて、運動要求を調停しなくてもよい。例えば、調停部93は、緊急度の高いアプリケーション63からの信号を選択するように調停してもよい。より具体的には、例えば、AEBアプリケーションと、LKAアプリケーションと、から運動要求を受付部92が受け付けたときには、緊急度の高いAEBアプリケーションからの運動要求を選択することで調停してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、生成部94は、記憶部95の記憶している指示値マップを用いて、動作要求の指示値を生成したが、これに限られない。例えば、生成部94は、指示値マップの代わりに、基準値にアクチュエータ44の種別に応じた係数を乗算して、指示値を生成していてもよい。
【0065】
・生成部94が第1運動要求を受け付けた場合に生成する動作要求の指示値によって、ブレーキ装置40の制動力は、車両10の車輪の回転がロックされる制動力とならなくてもよい。少なくとも、生成部94は、第1運動要求を受け付けた場合、第1運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力をブレーキ装置40に発生させるための動作要求の指示値を生成すればよい。
【0066】
・記憶部95は、ブレーキ装置40の制約事項REを記憶していなくてもよい。この場合、生成部94は、第1運動要求を受け付けた場合でも、ブレーキ装置40の制動力が上限値より大きくなるような動作要求の指示値を生成してもよい。
【0067】
・記憶部95は、ブレーキ装置40の種別情報TIを記憶していなくてもよい。例えば、車両10が有するブレーキ装置40の種類や構造に併せて、生成部94が生成する指示値を調整すれば構わない。
【0068】
・ブレーキ制御部96は、上記実施形態の特定指示値を出力した後、車両10に他車両が衝突しなかったとき、特定指示値の出力をやめてもよい。具体的には、ブレーキECU90に第1運動要求が入力された時刻から予め定められた所定時間が経過するまでの間に車両10に他車両が衝突しなかったことを示す信号がブレーキECU90に入力されたとする。この信号を受信することによって、ブレーキ制御部96は、特定指示値の出力をやめればよい。
【0069】
(付記事項)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)
車両に搭載される運動マネージャであって、
アプリケーションから運動要求を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記運動要求に基づいて、ブレーキ装置を制御するブレーキ制御部に対する動作要求の指示値を生成する生成部と、を備え、
前記受付部は、前記車両が停止しているときに、他物体が前記車両に衝突すると判定した前記アプリケーションから追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付け、
前記生成部は、前記受付部が前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたときに、当該運動要求を受け付ける前よりも大きな制動力を前記ブレーキ装置に発生させるための前記指示値を生成する
運動マネージャ。
【0070】
(付記2)
前記ブレーキ制御部が制御対象とする前記ブレーキ装置の種別情報を予め記憶している記憶部をさらに備え、
前記生成部は、前記運動要求を受け付けた場合には、前記記憶部の記憶している前記ブレーキ装置の種別情報に基づいて前記指示値を生成する
(付記1)に記載の運動マネージャ。
【0071】
(付記3)
前記種別情報は、前記ブレーキ装置の制約事項を含み、
前記制約事項は、前記ブレーキ装置が出力できる制動力の上限値の情報を含み、
前記生成部は、追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けた場合には、前記ブレーキ装置の制動力が前記上限値以下となるように前記指示値を生成する
(付記2)に記載の運動マネージャ。
【0072】
(付記4)
前記生成部は、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けた場合には、前記種別情報に基づいて、前記ブレーキ装置の制動力が前記車両の車輪の回転がロックされる制動力として予め定められた制動力となるように、前記指示値を生成する
(付記2)又は(付記3)に記載の運動マネージャ。
【0073】
(付記5)
前記生成部は、前記車両が停止していないときには、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求に応じた前記指示値を生成しない
(付記1)~(付記4)のいずれか1つに記載の運動マネージャ。
【0074】
(付記6)
前記受付部が受け付けた複数の前記運動要求を調停する調停部をさらに備え、
前記調停部は、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を受け付けたとき、他の前記運動要求の有無に拘わらず、前記追加制動力を必要とすることを示す前記運動要求を選択することにより調停する
(付記1)~(付記5)のいずれか1つに記載の運動マネージャ。
【符号の説明】
【0075】
10…車両
20…内燃機関
30…操舵装置
40…ブレーキ装置
50…制御装置
60…先進安全ECU
61…CPU
62…ROM
63…アプリケーション
63A…第1アプリケーション
63B…第2アプリケーション
63C…第3アプリケーション
70…エンジンECU
80…ステアリングECU
90…ブレーキECU
91…運動マネージャ
92…受付部
93…調停部
94…生成部
95…記憶部
96…ブレーキ制御部
S11…受付工程
S12…調停工程
S13…生成工程
図1
図2
図3