(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】異常診断方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250527BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20250527BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20250527BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20250527BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250527BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20250527BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20250527BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J50/12
H02J50/80
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/40
B60L3/00 L
B60L53/12
B60M7/00 X
B60L5/00 B
(21)【出願番号】P 2022175469
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2024-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 眞
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】竹村 優一
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/157835(WO,A1)
【文献】特開2020-178471(JP,A)
【文献】特開2022-121069(JP,A)
【文献】特開2022-156340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 50/12
H02J 50/80
H02J 50/40
B60L 3/00
B60L 53/12
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両へ非接触で電力を送電する地上給電装置の異常を診断する異常診断方法であって、
前記車両が前記地上給電装置の送電コイル上に位置するときに複数の異なる給電条件において給電操作を行うことと、
複数の異なる給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて前記地上給電装置の異常を診断することと、を含
み、
前記複数の異なる給電条件における給電操作は、前記車両の走行中であって前記車両が前記送電コイル上を通過するときに行われる、異常診断方法。
【請求項2】
前記複数の異なる給電条件のうちの少なくとも一つは、給電に異常が生じる給電条件である、請求項
1に記載の異常診断方法。
【請求項3】
前記車両は、異なる給電条件にて受電することができる複数の受電コイルを備え、これら受電コイルは前記車両の進行方向において互いに離間するように前記車両に配置され、
前記車両が前記送電コイル上を通過するときに前記受電コイルが前記送電コイル上に順次位置することによって、各受電コイル毎に異なる給電条件において給電操作が行われる、請求項1又は2に記載の異常診断方法。
【請求項4】
前記車両は、給電条件が変わるように前記車両に対して移動することができる受電コイルを備え、
前記車両が前記送電コイル上に位置するときに前記受電コイルが移動することによって、異なる給電条件において給電操作が行われる、請求項1又は2に記載の異常診断方法。
【請求項5】
前記複数の異なる給電条件は、前記車両の受電コイルの位置が前記車両の進行方向に対して横方向に互いにずれた複数の給電条件を含む、請求項1又は2に記載の異常診断方法。
【請求項6】
前記複数の異なる給電条件は、前記車両の受電コイルの位置が前記車両が走行する地面に対して垂直な方向に互いにずれた複数の給電条件を含む、請求項1又は2に記載の異常診断方法。
【請求項7】
前記複数の異なる給電条件は、前記車両から前記地上給電装置に対して、給電に関する互いに異なる指令値が送信された複数の給電条件を含む、請求項1又は2に記載の異常診断方法。
【請求項8】
前記複数の異なる給電条件は、前記車両と前記地上給電装置との間に異物が配置された給電条件と、前記車両と前記地上給電装置との間に異物が配置されていない給電条件と、を含む、請求項1又は2に記載の異常診断方法。
【請求項9】
車両へ非接触で電力を送電する地上給電装置の異常を診断する異常診断装置であって、
前記車両が前記地上給電装置の送電コイル上に位置するときに複数の異なる給電条件において給電操作が行われるように構成された受電装置と、
複数の異なる給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて前記地上給電装置の異常を診断する診断部と、を有
し、
前記複数の異なる給電条件における給電操作は、前記車両の走行中であって前記車両が前記送電コイル上を通過するときに行われる、異常診断装置。
【請求項10】
車両へ非接触で電力を送電する地上給電装置の異常を診断する異常診断装置であって、
前記車両が前記地上給電装置の送電コイル上に位置するときに複数の異なる給電条件において給電操作が行われるように前記地上給電装置に信号を送信し、
複数の異なる給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて前記地上給電装置の異常を診断する、ように構成され
、
前記複数の異なる給電条件における給電操作は、前記車両の走行中であって前記車両が前記送電コイル上を通過するときに行われる、異常診断装置。
【請求項11】
請求項
9又は10に記載された異常診断装置を有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地上給電装置の異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で車両へ送電するための送電コイルが車線に沿って複数配置されて、走行中の車両へ電力を送電する地上給電装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上給電装置には異常が生じることがあるため、地上給電装置の異常を診断する必要がある。しかしながら、一つの給電条件において給電した場合の各種パラメータの値の検出結果のみに基づいて異常診断を行うと、必ずしも正確に異常を診断することができない可能性がある。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、地上給電装置の異常をより正確に診断することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)車両へ非接触で電力を送電する地上給電装置の異常を診断する異常診断方法であって、
前記車両が前記地上給電装置の送電コイル上に位置するときに複数の異なる給電条件において給電操作を行うことと、
複数の異なる給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて前記地上給電装置の異常を診断することと、を含む、異常診断方法。
(2)前記複数の異なる給電条件における給電操作は、前記車両の走行中であって前記車両が前記送電コイル上を通過するときに行われる、上記(1)に記載の異常診断方法。
(3)前記複数の異なる給電条件のうちの少なくとも一つは、給電に異常が生じる給電条件である、上記(1)又は(2)に記載の異常診断方法。
(4)前記複数の異なる給電条件のうちの少なくとも一つは、給電が正常に行われる給電条件である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(5)前記車両は、異なる給電条件にて受電することができる複数の受電コイルを備え、これら受電コイルは前記車両の進行方向において互いに離間するように前記車両に配置され、
前記車両が前記送電コイル上を通過するときに前記受電コイルが前記送電コイル上に順次位置することによって、各受電コイル毎に異なる給電条件において給電操作が行われる、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(6)前記車両は、給電条件が変わるように前記車両に対して移動することができる受電コイルを備え、
前記車両が前記送電コイル上に位置するときに前記受電コイルが移動することによって、異なる給電条件において給電操作が行われる、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(7)前記地上給電装置の異常の診断では、前記検出された給電に関するパラメータの値が各給電条件に対応する正常範囲内の値であるときには前記地上給電装置は正常であると判定され、前記検出された給電に関するパラメータの値が、各給電条件に対応する前記正常範囲外の値であるときには前記地上給電装置には異常が生じている判定される、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(8)前記複数の異なる給電条件は、前記車両の受電コイルの位置が前記車両の進行方向に対して横方向に互いにずれた複数の給電条件を含む、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(9)前記複数の異なる給電条件は、前記車両の受電コイルの位置が前記車両が走行する地面に対して垂直な方向に互いにずれた複数の給電条件を含む、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(10)前記複数の異なる給電条件は、前記車両から前記地上給電装置に対して、給電に関する互いに異なる指令値が送信された複数の給電条件を含む、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(11)前記複数の異なる給電条件は、前記車両と前記地上給電装置との間に異物が配置された給電条件と、前記車両と前記地上給電装置との間に異物が配置されていない給電条件と、を含む、上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の異常診断方法。
(12)車両へ非接触で電力を送電する地上給電装置の異常を診断する異常診断装置であって、
前記車両が前記地上給電装置の送電コイル上に位置するときに複数の異なる給電条件において給電操作が行われるように構成された受電装置と、
複数の異なる給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて前記地上給電装置の異常を診断する診断部と、を有する、異常診断装置。
(13)車両へ非接触で電力を送電する地上給電装置の異常を診断する異常診断装置であって、
前記車両が前記地上給電装置の送電コイル上に位置するときに複数の異なる給電条件において給電操作が行われるように前記地上給電装置に信号を送信し、
複数の異なる給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて前記地上給電装置の異常を診断する、ように構成された、異常診断装置。
(14)前記複数の異なる給電条件における給電操作は、前記車両の走行中であって前記車両が前記送電コイル上を通過するときに行われる、上記(12)又は(13)に記載の異常診断装置。
(15)上記(12)~(14)のいずれか1つに記載された異常診断装置を有する、車両。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、地上給電装置の異常をより正確に診断することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、コントローラ及びコントローラに接続された機器の概略的な構成図である。
【
図3】
図3は、地上側コントローラ及び地上側コントローラに接続された機器の概略的な構成図である。
【
図4】
図4は、道路に設けられる磁界検出機の配列の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、車両側コントローラ及び車両側コントローラに接続された機器の概略的な構成図である。
【
図6】
図6は、非接触給電システムにおける給電操作の流れを概略的に示すシーケンス図である。
【
図7】
図7は、診断車両の底面を概略的に示す底面図である。
【
図8】
図8は、車両側コントローラにおいて行われる異常診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第二実施形態に係る診断車両の構成を概略的に示す図である。
【
図11】
図11は、第四実施形態に係る診断車両の構成を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、第五実施形態に係る診断車両の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0011】
第一実施形態
<非接触給電システムの全体構成>
まず、
図1を参照して、非接触給電システム100の全体的な構成について説明する。
図1は、非接触給電システム100の全体構成を概略的に示す図である。
図1に示されるように、非接触給電システム100は、サーバ1と、道路Rに設けられる地上給電装置2と、道路R上を走行する車両3とを有し、地上給電装置2から車両3へ磁界共振結合(磁界共鳴)による非接触電力伝送を行うことができるように構成される。非接触電力伝送は、車両3の走行中又は駐停車中に行われる。また、サーバ1は、地上給電装置2及び車両3と互いに通信することができるように構成される。
【0012】
なお、走行中という用語は、車両3が走行のために道路上に位置する状態を意味する。したがって、走行中という用語は、車両3が実際にゼロよりも大きい任意の速度で走っている状態のみならず、例えば信号待ちなどによって道路上で停止している状態も含む。
【0013】
<サーバの構成>
図1を参照して、サーバ1の構成について説明する。
図1に示されるように、サーバ1は、外部通信モジュール11と、記憶装置12と、プロセッサ13とを備える。また、サーバ1は、キーボード及びマウスといった入力装置、及び、ディスプレイといった出力装置を有していてもよい。
【0014】
外部通信モジュール11は、サーバ1外の機器(地上給電装置2、車両3など)と通信を行う。外部通信モジュール11は、サーバ1を通信ネットワーク15に接続するためのインターフェース回路を備える。外部通信モジュール11は、通信ネットワーク15及び無線基地局16を介して、複数の地上給電装置2及び複数の車両3のそれぞれと通信可能に構成される。特に、外部通信モジュール11は、地上給電装置2の地上側通信装置26及び車両3の車両側通信装置38と通信可能に構成される。無線基地局16と地上給電装置2及び車両3との間の無線通信としては、例えば、広域無線通信が用いられる。広域無線通信は、狭域無線通信に比べて通信距離が長い通信であり、具体的には例えば通信距離が10メートルから10キロメートルの通信である。広域無線通信としては、通信距離が長い種々の無線通信を用いることができ、例えば、3GPP(登録商標)、IEEEによって策定された4G、LTE、5G、WiMAX等の任意の通信規格に準拠した通信が用いられる。
【0015】
記憶装置12は、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)、不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)又は光記録媒体等の記憶媒体を有する。記憶装置12は、プロセッサ13によって各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ13によって各種処理が実行されるときに使用される各種データを記憶する。
【0016】
プロセッサ13は、一つ又は複数のCPU及びその周辺回路を有する。プロセッサ13は、GPU、又は論理演算ユニット若しくは数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ13は、サーバ1の記憶装置12に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種の演算処理を実行する。
【0017】
<地上給電装置の構成>
次に、
図2を参照して、地上給電装置2の構成について説明する。
図2は、地上給電装置2及び車両3の構成を概略的に示す図である。
図2に示されるように、地上給電装置2は、送電装置4、電源21及び地上側コントローラ22を備える。電源21及び地上側コントローラ22は、道路R内に埋め込まれてもよいし、道路R内とは別の場所(地上を含む)に配置されてもよい。
【0018】
電源21は、送電装置4に電力を供給する。電源21は、例えば、単層交流電力を供給する商用交流電源である。なお、電源21は、三相交流電力を供給する他の交流電源であってもよいし、燃料電池のような直流電源であってもよい。
【0019】
送電装置4は、電源21から供給された電力を非接触で車両3へ送電する。送電装置4は、送電側整流回路41、インバータ回路42及び送電側共振回路43を有する。送電装置4の送電側共振回路43、特に送電側共振回路43の送電コイル44は、
図2に示されるように、車両3が走行する道路R内(地中)に、例えば車両3が走行する車線の中央に、埋め込まれる。なお、送電装置4の送電側整流回路41及びインバータ回路42は、地中に埋め込まれてもよいし、地上に配置されてもよい。
【0020】
送電側整流回路41は、電源21及びインバータ回路42に電気的に接続される。送電側整流回路41は、電源21から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をインバータ回路42に供給する。送電側整流回路41は例えばAC/DCコンバータである。なお、電源21が直流電源である場合には、送電側整流回路41は省略されてもよい。
【0021】
インバータ回路42は送電側整流回路41及び送電側共振回路43に電気的に接続される。インバータ回路42は、送電側整流回路41から供給された直流電力を、電源21の交流電力よりも高い周波数の交流電力(高周波電力)に変換し、高周波電力を送電側共振回路43に供給する。
【0022】
送電側共振回路43は、送電コイル44及び送電側コンデンサ45から構成される共振器を有する。送電コイル44及び送電側コンデンサ45の各種パラメータ(送電コイル44の外径及び内径、送電コイル44の巻数、送電側コンデンサ45の静電容量等)は、送電側共振回路43の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、例えば10kHz~100GHzであり、好ましくは、非接触電力伝送用の周波数帯域としてSAE TIR J2954規格によって定められた85kHzである。
【0023】
送電側共振回路43の送電コイル44は、その中心が車線の中央に位置するように配置される。インバータ回路42から供給された高周波電力が送電側共振回路43に印加されると、送電側共振回路43は、送電するための交番磁界を発生させる。
【0024】
地上側コントローラ22は、例えば汎用コンピュータであり、地上給電装置2の各種制御を行う。例えば、地上側コントローラ22は、送電装置4のインバータ回路42に電気的に接続され、送電装置4による電力送信を制御すべくインバータ回路42を制御する。さらに、地上側コントローラ22は、後述する地上側通信装置26を制御する。
【0025】
図3は、地上側コントローラ22及び地上側コントローラ22に接続された機器の概略的な構成図である。地上側コントローラ22は、通信インターフェース221、メモリ222及びプロセッサ223を備える。通信インターフェース221、メモリ222及びプロセッサ223は信号線を介して互いに接続されている。
【0026】
通信インターフェース221は、地上給電装置2を構成する各種機器(例えば、インバータ回路42、後述する各種センサ23~25、地上側通信装置26など)に地上側コントローラ22を接続するためのインターフェース回路を有する。地上側コントローラ22は、通信インターフェース221を介して他の機器と通信する。
【0027】
メモリ222は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)、不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)等を有する。メモリ222は、プロセッサ223において各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ223によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0028】
プロセッサ223は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ223は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ223は、メモリ222に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0029】
また、
図3に示されるように、地上給電装置2は、地上側回路センサ23、異物センサ24、地上側磁界センサ25及び地上側通信装置26を更に備える。
【0030】
地上側回路センサ23は、地上給電装置2の送電装置4の状態、特に送電装置4に含まれる回路の状態を検出する検出器の一例である。本実施形態では、地上側回路センサ23は、例えば、送電装置4の各種回路(特に、送電側共振回路43、インバータ回路42及び送電側整流回路41)に流れる電流を検出する電流センサ、送電装置4の各種回路に加わる電圧を検出する送電装置電圧センサ、送電装置4の各種機器の温度を検出する温度センサ等を含む。地上側回路センサ23の出力は、地上側コントローラ22に入力される。
【0031】
異物センサ24は、送電装置4の送電コイル44が埋め込まれた道路上、特に各送電コイル44上の異物の有無を検出する検出器の一例である。異物としては、例えば、金属や、生体などが含まれる。異物センサ24の出力は、地上側コントローラ22に入力される。
【0032】
地上側磁界センサ25は、周囲の磁界強度を検出する検出器の一例である。地上側磁界センサ25は、例えば、磁気インピーダンス(MI:Magneto-Impedance)センサ、ホールセンサ、磁気抵抗効果(MR:Magneto Resistive)センサ等である。本実施形態では、地上側磁界センサ25は、車両3の進行方向に垂直な方向(以下、「横方向」という)における送電装置4に対する受電装置5の位置ズレ、特に送電コイル44に対する受電コイル52の位置ズレ(以下、「横ズレ」という)の有無を検出するのに用いられる。
【0033】
図4は、道路Rに設けられた地上側磁界センサ25の配列の一例を示す図である。
図4に示されるように、地上側磁界センサ25は、送電装置4が設けられた道路において、車両3の進行方向において送電装置4の送電側共振回路43よりも手前に配置される。また、車両3の進行方向に対して垂直な方向に複数並んで配置される。さらに、地上側磁界センサ25は地中(路面の下)又は路面の上に配置される。地上側磁界センサ25の周囲の車両3から横ズレ検知用の交番磁界が発せられると、地上側磁界センサ25は位置ズレ検知用の交番磁界を検出する。
【0034】
地上側磁界センサ25は地上側コントローラ22に電気的に接続され、地上側磁界センサ25の出力は地上側コントローラ22に送信される。したがって、本実施形態では、地上側コントローラ22には、地上側磁界センサ25からの出力が入力され、地上側コントローラ22は、この出力に基づいて、受電コイル52と送電コイル44との間の横ズレの有無を検出する。特に、車両3に設けられた交番磁界発生回路61によって発生された交番磁界が地上側磁界センサ25によって検出され、地上側コントローラ22はこのようにして検出された磁界強度に基づいて横ズレを検出する。
【0035】
ここで、受電コイル52と送電コイル44との間の横ズレが小さい場合、すなわち車両3が車線の中央付近を走行している場合には、車線の中央に配置された地上側磁界センサ25によって検出される磁界の強度が最も強くなる。一方、受電コイル52と送電コイル44との間の横ズレが大きい場合、すなわち車両3が車線の中央からずれて走行している場合には、車線の中央から離れて配置された地上側磁界センサ25によって検出される磁界の強度が最も強くなる。したがって、地上側コントローラ22は、複数の地上側磁界センサ25によって検出された磁界強度を比較することによって、受電コイル52と送電コイル44との間の横ズレの有無を検出することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、は、交番磁界発生回路61によって発生された交番磁界を用いて横ズレの有無が検出されている。しかしながら、磁界以外を用いて横ズレが検出されてもよく、例えば、超音波を用いたソナー等によって横ズレが検出されてもよい。また、本実施形態では、横ズレ検出装置は、横ズレの有無を検出しているが、車線の中央からの車両3の横ズレ量を検出してもよい。この場合、横ズレ検出装置によって検出された横ズレ量が所定の基準値以上である場合に、横ズレ検出装置は横ズレが生じていると判断する。
【0037】
地上側通信装置26は、上述したように、サーバ1と広域無線通信を用いて通信できるように構成される。加えて、地上側通信装置26は、車両3と広域無線通信及び狭域無線通信を用いて通信できるように構成されてもよい。狭域無線通信は、広域無線通信に比べて通信距離が短い通信であり、具体的には例えば通信距離が10メートル未満の通信である。狭域無線通信としては、通信距離が短い種々の近距離無線通信を用いることができ、例えば、IEEE、ISO、IEC等によって策定された任意の通信規格(例えば、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標))に準拠した通信が用いられる。また、狭域無線通信を行うための技術としては、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)、DSRC(dedicated Short Range Communication)等が用いられる。
【0038】
<車両の構成>
一方、車両3は、
図2に示されるように、受電装置5、モータ31、バッテリ32、パワーコントロールユニット(PCU)33及び車両側コントローラ34を有する。本実施形態では、車両3は、モータ31が車両3を駆動する電動車両(BEV)である。しかしながら、車両3は、モータ31に加えて内燃機関が車両3を駆動するハイブリッド車両(HEV)であってもよい。
【0039】
モータ31は、例えば交流同期モータであり、電動機及び発電機として機能する。モータ31は、バッテリ32に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ31の出力は減速機及び車軸を介して車輪30に伝達される。
【0040】
バッテリ32は、充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等から構成される。バッテリ32は車両3の走行に必要な電力(例えばモータ31の駆動電力)を蓄える。送電装置4から受電装置5が受電した電力が供給されると、バッテリ32が充電される。バッテリ32が充電されると、バッテリ32の充電率(SOC:State Of Charge)が回復する。なお、バッテリ32は、車両3に設けられた充電ポートを介して地上給電装置2以外の外部電源によっても充電可能であってもよい。
【0041】
PCU33はバッテリ32及びモータ31に電気的に接続される。PCU33は、インバータ、昇圧コンバータ及びDC/DCコンバータを有する。インバータは、バッテリ32から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ31に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がモータ31に供給されるときに、必要に応じてバッテリ32の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がヘッドライト等の電子機器に供給されるときに、バッテリ32の電圧を降圧する。
【0042】
受電装置5は、送電装置4から受電し、受電した電力をバッテリ32に供給する。受電装置5は、受電側共振回路51、受電側整流回路54及び充電回路55を有する。
【0043】
受電側共振回路51は、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。本実施形態では、受電側共振回路51は、横方向において車両3の中央に配置される。受電側共振回路51は、送電側共振回路43と同様の構成を有し、受電コイル52及び受電側コンデンサ53から構成される共振器を有する。受電コイル52及び受電側コンデンサ53の各種パラメータ(受電コイル52の外径及び内径、受電コイル52の巻数、受電側コンデンサ53の静電容量等)は、受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数と一致するように定められる。なお、受電側共振回路51の共振周波数と送電側共振回路43の共振周波数とのずれ量が小さければ、例えば受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数の±20%の範囲内であれば、受電側共振回路51の共振周波数は送電側共振回路43の共振周波数と必ずしも一致している必要はない。
【0044】
図2に示されるように受電コイル52が送電コイル44と対向しているときに、送電側共振回路43によって交番磁界が生成されると、交番磁界の振動が、送電側共振回路43と同一の共振周波数で共鳴する受電側共振回路51に伝達される。この結果、電磁誘導によって受電側共振回路51に誘導電流が流れ、誘導電流によって受電側共振回路51において誘導起電力が発生する。
【0045】
受電側整流回路54は受電側共振回路51及び充電回路55に電気的に接続される。受電側整流回路54は、受電側共振回路51から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力を充電回路55に供給する。受電側整流回路54は例えばAC/DCコンバータである。
【0046】
充電回路55は受電側整流回路54及びバッテリ32に電気的に接続される。充電回路55は、受電側整流回路54から供給された直流電力をバッテリ32の電圧レベルに変換してバッテリ32に供給する。送電装置4から送電された電力が受電装置5によってバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電される。充電回路55は例えばDC/DCコンバータである。また、充電回路55は、車両側コントローラ34からの指令に従って、受電側整流回路54とバッテリ32との接続のオン、オフを切り替える。
【0047】
車両側コントローラ34は車両3の各種制御を行う。例えば、車両側コントローラ34は、受電装置5の充電回路55に電気的に接続され、送電装置4から送信された電力によるバッテリ32の充電を制御すべく充電回路55を制御する。また、車両側コントローラ34は、PCU33に電気的に接続され、バッテリ32とモータ31との間の電力の授受を制御すべくPCU33を制御する。さらに、車両側コントローラ34は、車両側通信装置38を制御する。
【0048】
図5は、車両側コントローラ34及び車両側コントローラ34に接続された機器の概略的な構成図である。車両側コントローラ34は、通信インターフェース341、メモリ342及びプロセッサ343を有する。通信インターフェース341、メモリ342及びプロセッサ343は信号線を介して互いに接続されている。
【0049】
通信インターフェース341は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークに車両側コントローラ34を接続するためのインターフェース回路を有する。車両側コントローラ34は、通信インターフェース341を介して他の機器と通信する。
【0050】
メモリ342は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えばROM)を有する。メモリ342は、プロセッサ343において各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ343によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0051】
プロセッサ343は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ343は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ343は、メモリ342に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0052】
また、
図1及び
図5に示されるように、車両3は、GNSS受信機35、ストレージ装置36、複数の車両側センサ37、交番磁界発生回路61、交流電力発生回路64及び車両側通信装置38を更に備える。GNSS受信機35、ストレージ装置36、車両側センサ37、交流電力発生回路64及び車両側通信装置38は車内ネットワークを介して車両側コントローラ34に電気的に接続される。
【0053】
GNSS受信機35は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両3の現在位置(例えば車両3の緯度及び経度)を検出する。GNSS受信機35の出力、すなわちGNSS受信機35によって検出された車両3の現在位置は車両側コントローラ34に送信される。GNSS受信機35として、例えば、GPS受信機が用いられる。
【0054】
ストレージ装置36は、データを記憶する。ストレージ装置36は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)又は光記録媒体を備える。本実施形態では、ストレージ装置36は、地図情報を記憶する。地図情報には、道路に関する情報に加えて、地上給電装置2の設置位置情報、地上給電装置2に対応するチェックポイントの位置情報等の情報が含まれる。車両側コントローラ34はストレージ装置36から地図情報を取得する。
【0055】
車両側センサ37は、車両3の状態を検出する。本実施形態では、車両側センサ37は、車両3の状態を検出するセンサとして、車両3の速度を検出する速度センサ、バッテリ32の温度を検出するバッテリ温度センサ、受電装置5の各種機器(特に、受電側共振回路51及び受電側整流回路54)の温度を検出する受電装置温度センサ、バッテリ32の充電電流値及び放電電流値を検出するバッテリ電流センサ、受電装置5の各種機器に流れる電流を検出する受電装置電流センサ、及び受電装置5の各種機器に加わる電圧を検出する受電装置電圧センサを含む。車両側センサ37の出力は、車両側コントローラ34に入力される。
【0056】
交番磁界発生回路61は、送電装置4に対する受電装置5の横ズレを検出するのに用いられる。特に、交番磁界発生回路61は、地上側磁界センサ25によって検出される交番磁界を発生させる。交番磁界発生回路61は、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。本実施形態では、交番磁界発生回路61は、横方向において車両3の中央に配置される。
【0057】
交番磁界発生回路61は、送電側共振回路43と同様の構成を有し、磁界生成コイル62及び磁界生成用コンデンサ63から構成される共振器を有する。磁界生成コイル62及び磁界生成用コンデンサ63の各種パラメータは、交番磁界発生回路61の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、送電側共振回路43の共振周波数とは異なる値に設定される。
【0058】
交流電力発生回路64は、バッテリ32及び交番磁界発生回路61に電気的に接続される。交流電力発生回路64は、交流電力を発生させ、交流電力を交番磁界発生回路61に供給する。交流電力発生回路64は、車両側コントローラ34からの指令に従って、交流電力を交番磁界発生回路61に供給する。
【0059】
車両側通信装置38は、上述したように、サーバ1と広域無線通信を用いて通信できるように構成される。加えて、車両側通信装置38は、地上給電装置2の地上側通信装置26と広域無線通信及び狭域無線通信を用いて通信できるように構成されてもよい。
【0060】
<給電操作の流れ>
次に、
図6を参照して、非接触給電システム100における給電操作の流れについて説明する。
図6は、非接触給電システム100における給電操作の流れを概略的に示すシーケンス図である。
【0061】
車両3の車両側コントローラ34は、送電装置4の送電コイル44が埋め込まれた道路Rの手前の地点に設定されているチェックポイントを車両3が通過したか否か(或いはチェックポイントに車両3が接近したか否か)を判定する(ステップS11)。チェックポイントを通過したか否かは、例えば、チェックポイントにゲートが設置されている場合には、車両側通信装置38がゲートから発生された信号を受信したときに、車両側コントローラ34は車両3がチェックポイントを通過したと判定する。このとき、車両側コントローラ34は、チェックポイントの位置情報などを含むチェックポイントに関する情報をゲートから受信することができる。また、チェックポイントに関する情報がストレージ装置36に含まれている場合には、車両側コントローラ34は、GNSS受信機35の出力に基づいて検出された車両3の現在位置と、ストレージ装置36の位置情報とに基づいて、車両3がチェックポイントを通過したか否かを判定する。なお、チェックポイントを通過したか否かの判定方法は、上記方法に限られず、任意の方法を用いることができる。
【0062】
ステップS11において車両3がチェックポイントを通過したと判定されると、車両側コントローラ34は、非接触給電を行うための仮想的なチケットであるシステム利用チケットの発行要求を、車両3の識別情報及び通過したチェックポイントに関する情報と共に、サーバ1へ送信する(ステップS12)。
【0063】
サーバ1は、車両3からシステム利用チケットの発行要求を受信すると、識別情報に基づいて車両3を特定し、車両3が任意の給電要件を満たす場合に、第1チケット及び第2チケットを発行する(ステップS13)。第1チケットは、特定された発行要求元の車両3へ送信するためのシステム利用チケットであり、チェックポイントに対応する送電装置4を利用する権限を有する車両3毎に用意されるシステム利用チケットである。一方、第2チケットは、地上給電装置2に送信するためのシステム利用チケットであり、第1チケットに対応するシステム利用チケットである。
【0064】
システム利用チケットが発行されると、サーバ1は、システム利用チケットの発行要求元の車両3に第1チケットを送信し、ステップS11において車両3が通過したと判定されたチェックポイントに対応する送電装置4を有する地上給電装置2に第2チケットを送信する(ステップS14)。
【0065】
車両3の車両側コントローラ34は、第1チケットを受信すると、車両側通信装置38を用いて、狭域無線通信により第1チケットを含む信号を地上給電装置2へ周期的且つ直接的に発信する(ステップS15)。車両側コントローラ34は、このとき、給電に関する情報(例えば、要求給電電力又は要求給電電力量などの指令値、及び受電装置5に関する情報(例えば、受電コイル52の巻数や鉛直方向の高さ位置など))を含む信号も併せて発信する。加えて、車両側コントローラ34は、車両3が送電コイル44の上を走行したとき又は駐停車したときに電力を受電できるように受電装置5、特に充電回路55を制御する(ステップS16)。
【0066】
車両3の車両側通信装置38によって発信された信号が地上側通信装置26において受信されると、地上側コントローラ22は、受信した信号に含まれる第1チケットに対応する第2チケットを既にサーバ1が受け取っているか否かを判定する(ステップS17)。すなわち、地上側コントローラ22は、第1チケットに対応する第2チケットを所持しているか否かを判定する。
【0067】
ステップS17において地上側コントローラ22は第1チケットに対応する第2チケットを所持していると判定された場合には、送電コイル44上を走行又は駐停車する車両3はシステム利用許可を得ている車両3であると判断する。この場合、地上側コントローラ22は、送電許可条件が成立しているか否かを判定する(ステップS18)。具体的には、地上側コントローラ22は、送電コイル44と受電コイル52との間で横ズレが生じていないか否かを、地上側磁界センサ25の出力に基づいて判定する。また、地上側コントローラ22は、送電コイル44が設けられた道路R上に異物が存在していないか否かを、異物センサ24の出力に基づいて判定する。
【0068】
ステップS18において送電許可条件が成立していると判定された場合、例えば、横ズレは生じておらず且つ道路R上に異物は存在しないと判定された場合には、地上側コントローラ22は、送電コイル44からの送電は可能であると判断する。この場合、地上側コントローラ22は、ステップS15において車両3から発信された給電要求情報に基づいて、車両3が送電装置4上を走行又は駐停車したときに車両3に電力を送電することができるように送電装置4を制御する(ステップS19)。この結果、車両3は、送電装置4上を走行又は駐停車すると、送電装置4から電力を受電する(ステップS20)。
【0069】
その後、送電装置4から受電装置5への電力伝送が完了すると、車両3の車両側コントローラ34は、車両側センサ37等の出力に基づいて受電平均電力や、受電電力量を算出し、算出結果をサーバ1に送信する(ステップS21)。一方、地上給電装置2の地上側コントローラ22は、地上側回路センサ23の出力等に基づいて送電平均電力や送電電力量を算出し、算出結果をサーバ1に送信する(ステップS22)。
【0070】
<異常の診断>
このように構成された非接触給電システム100の地上給電装置2には、異常が生じることがある。地上給電装置2に生じる異常としては様々なものが考えられる。具体的には、例えば、短絡等により送電側共振回路43に電力を供給しても適切な磁界が発生しないこと、地上側磁界センサ25の故障により横ズレが適切に検出されないこと、などが考えられる。したがって、このような地上給電装置2に生じる異常を診断する異常診断が必要になる。
【0071】
そこで、本実施形態では、地上給電装置2の異常を診断する異常診断が行われる。特に、本実施形態では、地上給電装置2の異常診断を行う診断車両71が、走行中であって、検査対象となる地上給電装置2の送電装置4上、特に送電コイル44上を通過したときに異常診断が行われる。
【0072】
図7は、診断車両71の底面を概略的に示す底面図である。診断車両71の構成は、基本的に上述した一般の車両3の構成と同様である。以下では、診断車両71の構成の、一般の車両3とは異なる部分を中心に説明する。なお、本実施形態では、診断車両71は主に受電装置5及び車両側コントローラ34により地上給電装置2の異常診断を行う。したがって、受電装置5及び車両側コントローラ34は、地上給電装置2の異常を診断する異常診断装置を構成し、診断車両71は異常診断装置を有する。
【0073】
図7に示されるように、本実施形態に係る診断車両71は、複数の受電コイル52を有する。より詳細には、診断車両71は、それぞれ一つの受電コイル52を有する受電側共振回路51を複数有する。複数の受電コイル52、すなわち複数の受電側共振回路51は、互いに横方向にずれた状態で診断車両71に配置される。また、複数の受電コイル52は、診断車両71の進行方向において互いに離間するように診断車両71に配置される。
【0074】
図7に示される例では、診断車両71は、第1受電コイル52-1、第2受電コイル52-2、第3受電コイル52-3の3つの受電コイル52を有する。第1受電コイル52-1は、診断車両71の前方において横方向中央に配置される。したがって、第1受電コイル52-1は、横方向において、一般の車両3の受電コイル52の位置と同じ、正常な位置に配置される。第2受電コイル52-2は、診断車両71の前後方向中央において、診断車両71の横方向中央よりも一方側(
図7では左側)に配置される。第3受電コイル52-3は、診断車両71の後方において、診断車両71の横方向中央よりも上記一方側とは反対側(
図7では右側)に配置される。したがって、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3は、横方向において、一般の車両3の受電コイル52の位置とは異なる、異常な位置に配置される。
【0075】
診断車両71のそれぞれ一つの受電コイル52を含む複数の受電側共振回路51は、スイッチ73(
図9参照)を介して、一つの受電側整流回路54に接続される。また、車両側センサ37は、各受電側共振回路51を流れる電流及び各受電側共振回路51に加わる電圧を検出することができる。したがって、車両側コントローラ34は、車両側センサ37の出力に基づいて、各受電側共振回路51が受電した電力を検出することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る診断車両71は、複数の交番磁界発生回路61を有する。複数の交番磁界発生回路61の磁界生成コイル62は、互いに横方向にずれた状態で診断車両71に設けられる。
図7に示される例では、第1磁界生成コイル62-1は第1受電コイル52-1の前方に、よって診断車両71の横方向中央に配置される。したがって、第1磁界生成コイル62-1は、一般の車両3の交番磁界発生回路61の位置とは同じ、正常な位置に配置される。第2磁界生成コイル62-2は第2受電コイル52-2の前方に、よって診断車両71の横方向中央よりも一方側(
図7では左側)に配置される。第3磁界生成コイル62-3は第3受電コイル52-3の前方に、よって診断車両71の横方向中央よりも上記一方側とは反対側(
図7では右側)に配置される。したがって、第2磁界生成コイル62-2及び第3磁界生成コイル62-3は、一般の車両3の交番磁界発生回路61の位置とは異なる、異常な位置に配置される。
【0077】
加えて、本実施形態に係る診断車両71は、車両側磁界センサ72を有する。車両側磁界センサ72は、地上側磁界センサ25と同様な、周囲の磁界強度を検出する検出器の一例である。車両側磁界センサ72は、送電装置4から受電装置5への電力伝送が行われているときに、受電コイル52の周りの磁界強度を検出する。本実施形態では、
図7に示されるように、各受電コイル52に隣接して一つずつ車両側磁界センサ72が設けられる。
【0078】
また、診断車両71は、地上給電装置2の異常診断の結果を表示する表示装置(図示せず)を更に有する。表示装置は、車両側コントローラ34に電気的に接続され、車両側コントローラ34からの指令に従って異常診断の結果を表示する。
【0079】
そして、本実施形態では、このように構成された診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44上を通過するときに通過するときに、一般の車両3が通過するときと同様に、
図6に示されるような地上給電装置2による給電操作が行われる。したがって、診断車両71から第1チケット及び給電要求情報が地上給電装置2に送られる(
図6のステップS15)。そして、地上側コントローラ22は、第1チケットに対応する第2チケットを所持していると判定し且つ送電許可条件が成立していると判定した場合には、診断車両71に電力を送電することができるように送電装置4を制御する(
図6のステップS19)。
【0080】
上述したように構成された診断車両71が送電コイル44上を通過すると、診断車両71の複数の受電コイル52が送電コイル44上を順次通過する。そして、診断車両71の受電コイル52は、互いに横方向にズレて配置されている。したがって、診断車両71の各受電コイル52が送電コイル44に位置する毎に、異なる給電条件(送電コイル44と受電コイル52との横方向の相対位置が互いに異なる条件)で給電操作が行われる。したがって、本実施形態では、診断車両71が送電コイル44上を通過するときに、受電コイル52が送電コイル44上に順次位置することによって、互いに異なる給電条件において、給電操作が行われる。換言すると、本実施形態では、複数の受電コイル52は、各受電コイル52毎に、複数の異なる給電条件において受電することができるように構成されている。すなわち、受電装置5は、複数の異なる給電条件おいて給電操作が行われるように構成されている。
【0081】
特に、本実施形態では、第1受電コイル52-1は正常な位置に配置されているため、第1受電コイル52-1では、給電操作が正常に行われる給電条件で給電操作が行われる。一方、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3は異常な位置に配置されているため、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3では、給電に異常が生じる給電条件で給電操作が行われる。
【0082】
本実施形態では、このようにして異なる複数の給電条件において給電操作が行われる間に検出された給電に関するパラメータの値に基づいて、地上給電装置2の異常診断が行われる。特に、本実施形態では、車両側コントローラ34により、斯かる給電に関するパラメータの値に基づいて、地上給電装置2の異常診断が行われる。したがって、車両側コントローラ34は、斯かるパラメータの値に基づいて地上給電装置2の異常を診断する診断部として機能する。
【0083】
図7に示される例では、診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44に向かって進むと、まず、第1磁界生成コイル62-1が地上側磁界センサ25上に到達する。したがって、地上側コントローラ22は、地上側磁界センサ25の出力に基づいて、第1磁界生成コイル62-1によって発生した交番磁界に基づいて横ズレの有無を検出する。そして、地上側コントローラ22によって横ズレが発生しておらず送電許可条件が成立していると判定された場合には、送電コイル44から受電コイル52への電力伝送が行われる。その後、電力伝送が終わると、車両側コントローラ34によって電力伝送中の受電平均電力や受電電力量が算出される。
【0084】
第1磁界生成コイル62-1及び第1受電コイル52-1は正常な位置に配置されているため、これらについては給電操作が正常に行われる給電条件において給電操作が行われる。したがって、地上側磁界センサ25が正常に動作していれば地上給電装置2では横ズレが無いことが検出されて送電コイル44からの送電が行われる。また、送電コイル44を含む送電装置4が正常に動作していれば、電力伝送中の受電平均電力や受電電力量は、この給電条件に対応する予め設定された正常範囲内の値になる。したがって、給電操作が行われた結果、送電コイル44からの送電が行わなかった場合、又は送電コイル44からの送電が行われたものの電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量が正常範囲外の値であった場合には、地上側磁界センサ25又は送電装置4には異常が生じていると判定される。
【0085】
その後、診断車両71が進むと、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3が地上側磁界センサ25上に到達し、第2磁界生成コイル62-2及び第3磁界生成コイル62-3によって生じた交番磁界に基づいて横ズレの有無が検出される。加えて、送電コイル44から第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3への電力伝送が行われた場合には、電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量が算出される。
【0086】
第2磁界生成コイル62-2及び第3磁界生成コイル62-3並びに第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3は正常な位置に配置されていないため、これらについては給電に異常が生じる給電条件において給電操作が行われる。したがって、地上側磁界センサ25が正常に動作していれば地上給電装置2では横ズレが有ることが検出されて送電コイル44からの送電は行われない。また、仮に送電コイル44からの送電が行われた場合には、送電コイル44を含む送電装置4が正常に動作していれば、電力伝送中の受電平均電力や受電電力量は、この給電条件に対応する予め設定された正常範囲(給電操作が正常に行われる給電条件に対応する正常範囲よりも低い範囲)内の値になる。したがって、給電操作が行われた結果、送電コイル44からの送電が行われたときには、地上側磁界センサ25には異常が生じていると判定される。また、給電操作が行われた結果、送電コイル44からの送電が行われると共に、電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量が正常範囲外の値であった場合には、送電装置4には異常が生じていると判定される。
【0087】
そして、第1受電コイル52-1から第3受電コイル52-3までが送電コイル44を通過した結果、地上側磁界センサ25及び送電装置4のいずれにも異常が生じていると判定されなかった場合には、地上側磁界センサ25及び送電装置4はいずれも正常であると判定される。したがって、送電コイル44による送電の有無が給電条件に対応する状態だった場合(例えば、横ズレが生じていないという給電条件の場合には送電コイル44による送電が行われる)、地上側磁界センサ25には異常が生じていないと判定されることになる。また、電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量が給電条件に対応する正常範囲内の値であった場合には、送電装置4には異常が生じていないと判定されることになる。
【0088】
本実施形態によれば、異なる複数の給電条件において給電操作を行う間に検出された給電に関するパラメータの値(具体的には、例えば、送電コイル44による送電の有無、及び電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量)に基づいて地上給電装置2の地上側磁界センサ25及び送電装置4の異常が診断される。したがって、一つの給電条件のみで給電操作を行う間の検出結果に基づいて異常診断を行う場合に比べて、高い精度で異常を検出することができる。
【0089】
図8は、車両側コントローラ34において行われる異常診断処理の流れを示すフローチャートである。図示した異常診断処理は、診断車両71が一つの送電コイル44を通過する毎に実行される。
【0090】
図8に示されるように、まず、車両側コントローラ34は、カウンタnを1にセットする(ステップS31)。次いで、車両側コントローラ34は、n番目の給電条件(本実施形態では、1番目の給電条件は、第1磁界生成コイル62-1及び第1受電コイル52-1が用いられる給電条件)では磁界生成コイル62には横ズレはなくて且つ受電コイル52による受電があったか否かを判定する(ステップS32)。加えて、車両側コントローラ34は、n番目の給電条件では磁界生成コイル62には横ズレがあって且つ受電コイル52による受電は無かったか否かを判定する(ステップS33)。車両側コントローラ34は、ステップS32及びS33において、磁界生成コイル62には横ズレはなくて且つ受電コイル52による受電がないと判定された場合及び磁界生成コイル62に横ズレがあって且つ受電コイル52による受電があると判定された場合には、地上側磁界センサ25には異常があると判定する(ステップS34)。
【0091】
次いで、車両側コントローラ34は、n番目の給電条件では、電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量がn番目の給電条件に対応する正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS35)。車両側コントローラ34は、受電平均電力又は受電電力量がn番目の給電条件に対応する正常範囲内でないと判定された場合には、送電装置4には異常が生じていると判定する(ステップS36)。
【0092】
次いで、車両側コントローラ34は、カウンタnが診断車両71に用意されている給電条件の数N(本実施形態では3)に到達しているか否かを判定する(ステップS37)。カウンタnが給電条件の数Nに到達していないと判定された場合には、nに1を加算したものが新たなnとされて(ステップS38)、ステップS32からS36が繰り返される。一方、ステップS37においてカウンタnが給電条件の数Nに到達していると判定された場合には、車両側コントローラ34は、これまでステップS34の地上側磁界センサ25の異常判定又はステップS36の送電装置4の異常判定が無かったか否かを判定する(ステップS39)。ステップS39においてこれまで異常判定が無かったと判定された場合には、車両側コントローラ34は、地上側磁界センサ25及び送電装置4はいずれも正常であると判定する。
【0093】
<変形例>
上記実施形態では、診断車両71は、複数の受電コイル52及び複数の磁界生成コイル62を有している。しかしながら、診断車両71は、横方向に移動可能な受電コイル52を一つのみ、及び横方向に移動可能な磁界生成コイル62を一つのみ有してもよい。この場合、診断車両71は、各送電コイル44上で停車すると共に、各送電コイル44上に位置するときに受電コイル52及び磁界生成コイル62を停車中に異なる複数の位置に移動させる。この結果、受電コイル52及び磁界生成コイル62が各位置にあるときに、給電操作が行われる。これにより、異なる複数の給電条件において給電操作が行われる。
【0094】
また、上記実施形態では、給電操作後に、車両側コントローラ34において算出された受電平均電力又は受電電力量に基づいて、送電装置4の異常診断が行われる。しかしながら、給電操作中に車両側磁界センサ72によって検出された磁界強度に基づいて送電装置4の異常診断が行われてもよい。この場合、給電操作中に車両側磁界センサ72によって検出された磁界強度が給電条件に対応する正常範囲内である場合には、送電装置4は正常であると判定される。一方、給電操作中に車両側磁界センサ72によって検出された磁界強度が給電条件に対応する正常範囲外である場合には、送電装置4には異常が生じていると判定される。
【0095】
また、上記実施形態では、第1受電コイル52-1は正常な位置に配置され、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3は異常な位置に配置されている。しかしながら、全ての受電コイル52が正常な位置(正常な位置として許容できる程度に互いに横方向にずらされた位置)に配置されてもよい。同様に、全ての受電コイル52が異常な位置に配置されてもよい。或いは、複数の受電コイル52が正常な位置に配置され、残りの複数の受電コイル52が異常な位置に配置されてもよい。
【0096】
第二実施形態
次に、
図9を参照して、第二実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法について説明する。第二実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法は、基本的に第一実施形態に係る診断手法と同様である。以下では、第一実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0097】
図9は、第二実施形態に係る診断車両71の構成を概略的に示す図である。
図9に示されるように、本実施形態においても、診断車両71は、複数の受電コイル52を有する。より詳細には、診断車両71は、それぞれ一つの受電コイル52を有する受電側共振回路51を複数有する。複数の受電コイル52は、互いに鉛直方向(診断車両71が走行する地面に対して垂直な方向)にずれた状態で診断車両71に配置される。また、複数の受電コイル52は、診断車両71の進行方向において互いに離間するように横方向中央に診断車両71に配置される。
【0098】
図9に示される例では、診断車両71は、第1受電コイル52-1、第2受電コイル52-2、第3受電コイル52-3の3つの受電コイル52を有する。第1受電コイル52-1は、診断車両71の前方において一般の車両3における位置よりも道路Rから離れた位置に配置される。第2受電コイル52-2は、診断車両71の前後方向中央において、一般の車両3における位置と同じ正常な位置に配置される。第3受電コイル52-3は、診断車両71の後方において、一般の車両3における位置よりも道路Rに近い位置に配置される。したがって、第1受電コイル52-1及び第3受電コイル52-3は、鉛直方向において、一般の車両3の受電コイル52の位置とは異なる、異常な位置に配置される。
【0099】
本実施形態では、このように構成された診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44上を通過するときに、一般の車両3が通過するときと同様に、
図6に示されるような地上給電装置2による給電操作が行われる。診断車両71が送電コイル44上を通過すると、診断車両71の複数の受電コイル52が送電コイル44上を順次通過する。そして、診断車両71の受電コイル52は、互いに鉛直方向にズレて配置されている。したがって、診断車両71の各受電コイル52が送電コイル44上に位置する毎に、異なる給電条件(送電コイル44と受電コイル52との鉛直方向の相対位置が互いに異なる条件)で給電操作が行われる。したがって、本実施形態でも、診断車両71が送電コイル44上を通過するときに、受電コイル52が送電コイル44上に順次位置することによって、互いに異なる給電条件において、給電操作が行われる。
【0100】
そして、本実施形態においても、互いに異なる給電条件で給電操作が行われたときに車両側コントローラ34において算出された受電平均電力又は受電電力量が、給電条件に対応する正常範囲内であるか否かに基づいて、地上給電装置2の異常診断が行われる。
【0101】
なお、本実施形態においても、診断車両71は、鉛直方向に移動可能な受電コイル52を一つのみ有してもよい。この場合、診断車両71は、各送電コイル44上で停車すると共に、各送電コイル44上に位置するときに受電コイル52を停車中に異なる複数の位置に移動させる。また、本実施形態と第一実施形態とを組み合わせてもよく、診断車両71は、横方向及び鉛直方向にずれた複数の受電コイル52及び磁界生成コイル62を有してもよい。
【0102】
第三実施形態
次に、
図10を参照して、第三実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法について説明する。第三実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法は、基本的に第一実施形態及び第二実施形態に係る診断手法と同様である。以下では、第一実施形態及び第二実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0103】
図10は、診断車両71の底面を概略的に示す、
図7と同様な底面図である。
図10に示されるように、本実施形態に係る診断車両71は、複数の受電コイル52を有する。より詳細には、診断車両71は、それぞれ一つの受電コイル52を有する受電側共振回路51を複数有する。複数の受電側共振回路51は、互いに異なる共振に関するパラメータを有する。具体的には、本実施形態では、複数の受電コイル52は互いに異なる巻数を有する。また、複数の受電コイル52は、診断車両71の進行方向において互いに離間するように横方向中央に診断車両71に配置される。
【0104】
図10に示される例では、診断車両71は、第1受電コイル52-1、第2受電コイル52-2、第3受電コイル52-3の3つの受電コイル52を有する。第1受電コイル52-1は、診断車両71の前方において配置され、一般の車両3における巻数よりも多い巻数とされる。第2受電コイル52-2は、診断車両71の前後方向中央に配置され、一般の車両3における巻数と同一な正常の巻数とされる。第3受電コイル52-3は、診断車両71の後方において配置され、一般の車両3における巻数よりも少ない巻数とされる。したがって、第1受電コイル52-1及び第3受電コイル52-3は、一般の車両3における巻数とは異なる異常な巻数とされる。
【0105】
本実施形態では、このように構成された診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44上を通過するときに、一般の車両3が通過するときと同様に、
図6に示されるような地上給電装置2による給電操作が行われる。診断車両71が送電コイル44上を通過すると、診断車両71の複数の受電コイル52が送電コイル44上を順次通過する。そして、診断車両71の受電コイル52は、互いに巻数がズレて構成されている。したがって、診断車両71の各受電コイル52が送電コイル44上に位置する毎に、異なる給電条件で給電操作が行われる。したがって、本実施形態でも、診断車両71が送電コイル44上を通過するときに、受電コイル52が送電コイル44上に順次位置することによって、互いに異なる給電条件において、給電操作が行われる。
【0106】
そして、本実施形態においても、互いに異なる給電条件で給電操作が行われたときに車両側コントローラ34において算出された受電平均電力又は受電電力量が、給電条件に対応する正常範囲内であるか否かに基づいて、地上給電装置2の異常診断が行われる。
【0107】
なお、本実施形態では、複数の受電側共振回路51の共振に関するパラメータのうち受電コイル52の巻数が互いに異なっている。しかしながら、複数の受電側共振回路51では、受電コイル52の巻数以外の共振に関するパラメータの値が互いに異なっていてもよい。具体的には、このようなパラメータとしては、送電コイル44の外径及び内径、送電側コンデンサ45の静電容量等が挙げられる。また、本実施形態と第一実施形態及び第二実施形態とを組み合わせてもよく、例えば、診断車両71は、横方向及び鉛直方向にずれた巻数の異なる複数の受電コイル52を有してもよい。
【0108】
第四実施形態
次に、
図11を参照して、第四実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法について説明する。第四実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法は、基本的に第一実施形態~第三実施形態に係る診断手法と同様である。以下では、第一実施形態から第三実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0109】
図11は、第四実施形態に係る診断車両71の構成を概略的に示す図である。
図11に示されるように、本実施形態においても、診断車両71は複数の受電コイル52を有する。また、本実施形態では、複数の受電コイル52は、診断車両71の進行方向において互いに離間するように横方向中央に配置される。また、全ての受電コイル52を有する全ての受電側共振回路51は、診断車両71の進行方向の位置を除いて同一に構成される。
【0110】
加えて、本実施形態に係る診断車両71では、一部の受電コイル52の下方には、道路R上に位置しうる異物を模した異物模擬物体74、75が配置される。
図11に示した例では、診断車両71の前方に配置された第1受電コイル52-1の下には異物模擬物体は配置されない。一方、診断車両71の前後方向中央に配置された第2受電コイル52-2の下には生体物を模擬した異物模擬物体74が配置される。加えて、診断車両71の後方に配置された第3受電コイル52-3の下には金属製の異物模擬物体75が配置される。これら異物模擬物体74、75は、診断車両71に取り付けられ、よって診断車両71と共に移動する。
【0111】
このように構成された診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44上を通過するときには、診断車両71の複数の受電コイル52が送電コイル44上を順次通過する。特に、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3が送電コイル44上を通過するときには、受電コイル52と送電コイル44との間に互いに異なる異物模擬物体74、75が位置する状態で給電操作が行われる。一方、第1受電コイル52-1が送電コイル44上を通過するときには、受電コイル52と送電コイル44との間には異物模擬物体は位置しない状態で給電操作が行われる。すなわち、本実施形態では、診断車両71と地上給電装置2との間に異物模擬物体74、75が配置された給電条件と、診断車両71と地上給電装置2との間に異物模擬物体74、75が配置されていない給電条件との、互いに異なる給電条件において給電操作が行われる。
【0112】
特に、本実施形態では、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3の下方には異物模擬物体74、75が配置される。したがって、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3が送電コイル44上を通過するときには、異物センサ24が正常に動作していれば、異物が検出されて、送電コイル44からの送電は行われない。また、仮に送電コイル44からの送電が行われた場合には、送電コイル44を含む送電装置4が正常に動作していれば、電力伝送中の受電平均電力や受電電力量は、この給電条件に対応する予め設定された正常範囲(給電操作が正常に行われる給電条件に対応する正常範囲とは異なる範囲)内の値になる。したがって、給電操作が行われた結果、第2受電コイル52-2及び第3受電コイル52-3に対して送電コイル44からの送電が行われたときには、異物センサ24には異常が生じていると判定される。また、給電操作が行われた結果、送電コイル44からの送電が行われると共に、電力伝送中の受電平均電力又は受電電力量が正常範囲外の値であった場合には、送電装置4には異常が生じていると判定される。
【0113】
なお、診断車両71は、受電コイル52を一つのみ有し、異なる異物模擬物体を受電コイル52の下方に代わる代わる配置することができるように構成されてもよい。また、本実施形態と第一実施形態から第三実施形態とを組み合わせてもよく、例えば、診断車両71は、診断車両71は、横方向及び鉛直方向にずれた巻数の異なる複数の受電コイル52と一部の受電コイル52の下方に配置された異物模擬物体とを有してもよい。
【0114】
第五実施形態
次に、
図12を参照して、第五実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法について説明する。第五実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法は、基本的に第一実施形態から第四実施形態に係る診断手法と同様である。以下では、第一実施形態から第四実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0115】
図12は、第五実施形態に係る診断車両71の構成を概略的に示す図である。
図12に示されるように、本実施形態においても、診断車両71は複数の受電コイル52を有する。また、本実施形態では、複数の受電コイル52は、診断車両71の進行方向において互いに離間するように横方向中央に配置される。また、全ての受電コイル52を有する全ての受電側共振回路51は、診断車両71の進行方向の位置を除いて同一に構成される。
【0116】
加えて、本実施形態では、診断車両71の車両側コントローラ34は、第1チケット及び給電に関する情報を含む信号を地上給電装置2に送信するとき(
図6のステップS15)に、各受電コイル52を有する受電側共振回路51毎に異なる指令値を含む信号を送信する。具体的には、車両側コントローラ34は、例えば、各受電側共振回路51毎に、異なる要求給電電力を含む信号を送信する。
【0117】
このように各受電側共振回路51毎に異なる要求給電電力を含む信号が送信されることにより、診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44上を通過するときに、送電コイル44からは受電コイル52毎に異なる電力が送電される。したがって、診断車両71の各受電コイル52が送電コイル44上に位置する毎に、異なる給電条件で給電操作が行われる。すなわち、本実施形態では、診断車両71から地上給電装置2に対して給電に関する互いに異なる指令値が送信されることにより、診断車両71が送電コイル44上を通過するときに、互いに異なる給電条件において給電操作が行われる。換言すると、本実施形態では、異常診断装置を構成する車両側コントローラ34は、異なる給電条件において給電操作が行われるように地上給電装置2に信号を送信する。
【0118】
そして、本実施形態においても、互いに異なる給電条件で給電操作が行われたときに車両側コントローラ34において算出された受電平均電力又は受電電力量が、給電条件に対応する正常範囲内であるか否かに基づいて、地上給電装置2の異常診断が行われる。
【0119】
なお、上記実施形態では、診断車両71は3つの受電側共振回路51を有し、各受電側共振回路51毎に異なる指令値を含む信号を送信している。しかしながら、診断車両71は一つの受電側共振回路51を有してもよい。この場合には、診断車両71は対象となる送電コイル44上で停車すると共に、給電操作が行われている間に、複数回に亘って指令値を変更する。この場合も、指令値を変更する毎に、異なる給電条件において給電操作が行われることになる。また、本実施形態と第一実施形態から第四実施形態とが組み合わせられてもよく、例えば、診断車両71は、横方向及び鉛直方向にずれた巻数の異なる複数の受電コイル52を有し且つ受電側共振回路51毎に異なる指令値を含む信号を地上給電装置2に送信してもよい。
【0120】
第六実施形態
次に、第六実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法について説明する。第六実施形態に係る地上給電装置2の異常の診断手法は、基本的に第一実施形態から第五実施形態に係る診断手法と同様である。以下では、第一実施形態から第五実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0121】
本実施形態では、診断車両71は、第五実施形態に係る診断車両71と同様な構成を有する。したがって、診断車両71では、複数の受電コイル52が、診断車両71の進行方向において互いに離間するように横方向中央に配置される。
【0122】
加えて、本実施形態では、診断車両71の車両側コントローラ34は、第1チケットを含む信号を地上給電装置2に送信するとき(
図6のステップS15))に、各受電側共振回路51毎に異なる第1チケットを送信する。具体的には、診断車両71の車両側コントローラ34は、例えば、第1受電側共振回路51-1については正常な第1チケットを送信すると共に、第2受電側共振回路51-2及び第3受電側共振回路51-3については異常な第1チケット(例えば、有効期限の切れた第1チケットや、第2チケットに対応していない第1チケットなど)を送信する。
【0123】
このように各受電側共振回路51毎に異なる第1チケットを含む信号が送信されることにより、診断車両71が地上給電装置2の送電コイル44を通過するときに、送電コイル44からは第1チケットに対応して送電が行われる。すなわち、本実施形態では、診断車両71から地上給電装置2に対して互いに異なる第1チケットが送信されることにより、診断車両71が送電コイル44上を通過するときに、互いに異なる給電条件において給電操作が行われる。
【0124】
そして、本実施形態においても、互いに異なる給電条件で給電操作が行われたときに、送信した第1チケットに対応する給電操作が行われているか否かに基づいて、地上給電装置2の異常診断が行われる。例えば、正常な第1チケットに対応する第1受電側共振回路51-1において受電した場合には、地上給電装置2は正常であると判定される。一方、正常な第1チケットに対応する第1受電側共振回路51-1において受電しない場合には、地上給電装置2は異常であると判定される。また、異常な第1チケットに対応する第2受電側共振回路51-2及び第3受電側共振回路51-3において受電した場合には、地上給電装置2は異常であると判定される。一方、異常な第1チケットに対応する第2受電側共振回路51-2及び第3受電側共振回路51-3において受電しない場合には、地上給電装置2は正常であると判定される。
【0125】
なお、本実施形態と第一実施形態から第五実施形態とが組み合わせられてもよい。
【0126】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0127】
1 サーバ
2 地上給電装置
3 車両
43 送電側共振回路
44 送電コイル
51 受電側共振回路
52 受電コイル
61 交番磁界発生回路
71 診断車両
100 非接触給電システム