(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】移動体の制御装置、移動体の制御方法、および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250527BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20250527BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/06
(21)【出願番号】P 2024195250
(22)【出願日】2024-11-07
(62)【分割の表示】P 2023511041の分割
【原出願日】2022-03-23
【審査請求日】2024-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021056992
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松永 英樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】藤元 岳洋
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100490(JP,A)
【文献】特開2009-89758(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体の制御装置であって、
前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識する道路タイプ認識部と、
前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御する制御部であって、前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度以下に制限し、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度以下に制限する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記移動体が前記所定領域を移動していると認識された場合、
前記移動体の周辺における物体との関係に基づいて前記第2速度よりも低い第1目標速度を決定し、
決定された前記第1目標速度に対するユーザの速度指示に基づく補正を行うことで、第2目標速度を決定する、
移動体の制御装置。
【請求項2】
前記道路タイプ認識部は、前記移動体が前記所定領域を移動していることを認識した場合、外部報知装置に、前記所定領域を移動中であることを前記移動体の外部に報知させる、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記道路タイプ認識部は、前記移動体の外部の状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が前記所定領域を移動しているか否かを認識する、
請求項1または2記載の制御装置。
【請求項4】
前記道路タイプ認識部は、スイッチに対するユーザの操作に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識する、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、少なくとも前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記速度指示を参照して自動的に制御し、前記速度指示に関わらず、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第2速度以下に制限する、
請求項1から4のうちいずれか1項記載の制御装置。
【請求項6】
前記速度指示は、回転角によって速度の増減が指示されるダイヤルスイッチを介して受け付けられる、
請求項1から5のうちいずれか一項記載の制御装置。
【請求項7】
前記移動体には、加減速指示を受け付けるための第1操作子と、操舵指示を受け付けるための第2操作子とが設けられており、
前記制御部は、前記第1操作子と前記第2操作子とのいずれか一方に対する操作に基づいて前記移動体の加減速および操舵を制御するモードAと、前記第1操作子と前記第2操作子との双方に対する操作に基づいて前記移動体の加減速および操舵を制御するモードBと、前記第1操作子と前記第2操作子とのいずれに対する操作にも基づかずに前記移動体の加減速および操舵を制御するモードCとを切り換えて実行する、
請求項1から6のうちいずれか1項記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2目標速度が前記第2速度を超える場合、前記第2目標速度を前記第2速度に制限し、
前記移動体を、前記第2目標速度で移動させる、
請求項1から7のうちいずれか1項記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、予め設定されたデフォルト目標速度に対して、前記移動体が移動する場面に応じた補正を行うことで、前記第1目標速度を決定する、
請求項1から8のうちいずれか1項記載の制御装置。
【請求項10】
車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータが、
前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識し、
前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御し、
前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度以下に制限し、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度以下に制限する、
移動体の制御方法であって、
前記移動体が前記所定領域を移動していると認識された場合、前記コンピュータが、
前記移動体の周辺における物体との関係に基づいて前記第2速度よりも低い第1目標速度を決定し、
決定された前記第1目標速度に対するユーザの速度指示に基づく補正を行うことで、第2目標速度を決定する、
移動体の制御方法。
【請求項11】
車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータに、
前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識させ、
前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御させ、
前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度以下に制限させ、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度以下に制限させる、
プログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記移動体が前記所定領域を移動していると認識された場合、前記プログラムは、前記コンピュータに、
前記移動体の周辺における物体との関係に基づいて前記第2速度よりも低い第1目標速度を決定させ、
決定された前記第1目標速度に対するユーザの速度指示に基づく補正を行うことで、第2目標速度を決定させる、
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御装置、移動体の制御方法、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩道を移動可能な一人乗り用の電動車両の発明が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を想定したものでは無い。このため、車道と、車道と異なる所定領域との双方において適切な制御を行うことができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、車道と、車道と異なる所定領域と双方において適切な制御を行うことが可能な移動体の制御装置、移動体の制御方法、および記憶媒体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体の制御装置、移動体の制御方法、および記憶媒体は、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る移動体の制御装置は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体の制御装置であって、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識する道路タイプ認識部と、前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御する制御部であって、前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度以下に制限し、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度以下に制限する制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動体が前記所定領域を移動していると認識された場合、前記移動体の周辺における物体との関係に基づいて前記第2速度よりも低い第1目標速度を決定し、決定された前記第1目標速度に対するユーザの速度指示に基づく補正を行うことで、第2目標速度を決定するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記道路タイプ認識部は、前記移動体が前記所定領域を移動していることを認識した場合、外部報知装置に、前記所定領域を移動中であることを前記移動体の外部に報知させるものである。
【0008】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記道路タイプ認識部は、前記移動体の外部の状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が前記所定領域を移動しているか否かを認識するものである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記道路タイプ認識部は、スイッチに対するユーザの操作に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識するものである。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記制御部は、少なくとも前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記速度指示を参照して自動的に制御し、前記速度指示に関わらず、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第2速度以下に制限するものである。
【0011】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記速度指示は、回転角によって速度の増減が指示されるダイヤルスイッチを介して受け付けられるものである。
【0012】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記移動体には、加減速指示を受け付けるための第1操作子と、操舵指示を受け付けるための第2操作子とが設けられており、前記制御部は、前記第1操作子と前記第2操作子とのいずれか一方に対する操作に基づいて前記移動体の加減速および操舵を制御するモードAと、前記第1操作子と前記第2操作子との双方に対する操作に基づいて前記移動体の加減速および操舵を制御するモードBと、前記第1操作子と前記第2操作子とのいずれに対する操作にも基づかずに前記移動体の加減速および操舵を制御するモードCとを切り換えて実行するものである。
【0013】
(8):上記(1)から(7)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記第2目標速度が前記第2速度を超える場合、前記第2目標速度を前記第2速度に制限し、前記移動体を、前記第2目標速度で移動させるものである。
【0014】
(9):上記(1)から(8)のいずれかの態様において、前記制御部は、予め設定されたデフォルト目標速度に対して、前記移動体が移動する場面に応じた補正を行うことで、前記第1目標速度を決定するものである。
【0015】
(10):本発明の他の態様に係る移動体の制御方法は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータが、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識し、前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御し、前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度以下に制限し、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度以下に制限する、移動体の制御方法であって、前記移動体が前記所定領域を移動していると認識された場合、前記コンピュータが、前記移動体の周辺における物体との関係に基づいて前記第2速度よりも低い第1目標速度を決定し、決定された前記第1目標速度に対するユーザの速度指示に基づく補正を行うことで、第2目標速度を決定するものである。
(11):本発明の他の態様に係る記憶媒体は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータに、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識させ、前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御させ、前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度以下に制限させ、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度以下に制限させる、プログラムを記憶した記憶媒体であって、前記移動体が前記所定領域を移動していると認識された場合、前記プログラムは、前記コンピュータに、前記移動体の周辺における物体との関係に基づいて前記第2速度よりも低い第1目標速度を決定させ、決定された前記第1目標速度に対するユーザの速度指示に基づく補正を行うことで、第2目標速度を決定させるものである。
【発明の効果】
【0016】
(1)~(11)の態様によれば、車道と、車道と異なる所定領域との双方において適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る移動体および制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】ダイヤルスイッチの外観構成の一例を示す図である。
【
図4】特定速度制御が行われる場面の一例を示す図である。
【
図5】実施形態の制御装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。移動体は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動するものである。移動体は乗員が搭乗可能な乗物であってもよいし、無人での自律走行が可能な自律移動体であってもよい。後者の自律移動体は、例えば、荷物等を運搬する用途に用いられる。以下の説明では、移動体には一以上の乗員が搭乗するものとする。所定領域とは、例えば歩道である。また、所定領域とは、路側帯や自転車レーン、公開空地などのうち一部または全部であってもよいし、歩道、路側帯、自転車レーン、公開空地などを全て含んでもよい。以下の説明では、所定領域は歩道であるものとする。以下の説明において「歩道」と記載されている部分は、適宜、「所定領域」と読み替えることができる。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係る移動体1および制御装置100の構成の一例を示す図である。移動体1には、例えば、外界検知デバイス10と、移動体センサ12と、操作子14と、内部カメラ16と、測位装置18と、対話装置20と、モード切替スイッチ22と、ダイヤルスイッチ24と、移動機構30と、駆動装置40と、外部報知装置50と、記憶装置70と、制御装置100とが搭載される。なお、これらの構成のうち本発明の機能を実現するのに必須でない一部の構成が省略されてもよい。
【0020】
外界検知デバイス10は、移動体1の進行方向を検知範囲とする各種デバイスである。外界検知デバイス10は、外部カメラ、レーダー装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、センサフュージョン装置などを含む。外界検知デバイス10は、検知結果を示す情報(画像、物体の位置等)を制御装置100に出力する。
【0021】
移動体センサ12は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ヨーレート(角速度)センサ、方位センサ、並びに操作子14に取り付けられた操作量検出センサなどを含む。操作子14は、例えば、加減速を指示するための操作子(例えばアクセルペダルやブレーキペダル)と、操舵を指示するための操作子(例えばステアリングホイール)とを含む。この場合、移動体センサ12は、アクセル開度センサやブレーキ踏量センサ、ステアリングトルクセンサ等を含んでよい。移動体1は、操作子14として、上記以外の態様の操作子(例えば、円環状でない回転操作子、ジョイスティック、ボタン等)を備えてもよい。
【0022】
内部カメラ16は、移動体1の乗員の少なくとも頭部を正面から撮像する。内部カメラ16は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を利用したデジタルカメラである。内部カメラ16は、撮像した画像を制御装置100に出力する。
【0023】
測位装置18は、移動体1の位置を測位する装置である。測位装置18は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機であり、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、移動体1の位置を特定し、位置情報として出力する。なお、移動体1の位置情報は、後述する通信装置が接続しているWi-Fi基地局の位置から推定されてもよい。
【0024】
対話装置20は、例えば、スピーカ、マイク、タッチパネル、通信装置などを含む。対話装置20は、マイクによって収音された乗員の音声を適宜加工し、通信装置によってネットワーク経由でサーバ装置に送信し、サーバ装置から返信された情報に基づいてスピーカから音声による情報提供を行う。対話装置20は、エージェント装置、コンシェルジュ装置、アシスタンス装置などと称される場合もある。サーバ装置は、音声認識機能、自然言語処理機能、意味解釈機能、返信内容決定機能等を有する。また、対話装置20は、位置情報をサーバ装置に送信し、サーバ装置は、位置情報と乗員により発せられた案内要求(例えば「この辺でおいしいラーメン屋は?」といったもの)に応じて該当する施設の情報を返信するものであってもよい。この場合、対話装置20によって「この先を左に曲がったところにあります」といった音声案内がなされる。これに限らず、対話装置20は、乗員による自然な発話を受け付けて適切な返信を返す機能を有している。また、対話装置20は、装置側から問いかけを行って返信を受け付ける等、簡易な対話をサーバ装置を介さずに行う機能を有しており、制御装置100からの要求に応じて乗員に問いかけ等を行ってもよい。対話装置20は、インターフェース装置の一例である。
【0025】
モード切替スイッチ22は、乗員により操作されるスイッチである。モード切替スイッチ22は、機械式スイッチであってもよいし、タッチパネル上に設定されるGUI(Graphical User Interface)スイッチであってもよい。モード切替スイッチ22は、例えば、モードA:乗員により操舵操作と加減速制御との一方が行われ、他方は自動的に行われるアシストモードであり、乗員により操舵操作が行われ加減速制御が自動的に行われるモードA-1と、乗員により加減速操作が行われ操舵制御が自動的に行われるモードA-2とがあってよい、モードB:乗員により操舵操作および加減速操作がなされる手動運転モード、モードC:操作制御および加減速制御が自動的に行われる自動運転モードのいずれかに運転モードを切り替える操作を受け付ける。
【0026】
図2は、ダイヤルスイッチ24の外観構成の一例を示す図である。ダイヤルスイッチ24は、移動体1における乗員Pが操作可能な任意の位置に設置され、時計回りと反時計回りに回動可能となっている。例えば、時計回りが加速、反時計回りが減速を指示するものとして設定される。ダイヤルスイッチ24は、一目盛り分操作するごとに例えば5[km/h]ずつ速度を変更することができる。ダイヤルスイッチ24を用いた速度制御の詳細については後述する。
【0027】
移動機構30は、道路において移動体1を移動させるための機構である。移動機構30は、例えば、操舵輪と駆動輪とを含む車輪群である。また、移動機構30は、多足歩行するための脚部であってもよい。
【0028】
駆動装置40は、移動機構30に力を出力して移動体1を移動させる。例えば、駆動装置40は、駆動輪を駆動するモータ、モータに供給する電力を蓄えるバッテリ、操舵輪の操舵角を調整する操舵装置などを含む。駆動装置40は、駆動力出力手段、或いは発電手段として、内燃機関や燃料電池などを備えてもよい。また、駆動装置40は、摩擦力や空気抵抗によるブレーキ装置を更に備えてもよい。
【0029】
外部報知装置50は、例えば移動体1の外板部に設けられ、移動体1の外部に向けて情報を報知するためのランプ、ディスプレイ装置、スピーカなどである。外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している状態と、車道を移動している状態とで異なる動作を行う。例えば、外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している場合にランプを発光させ、移動体1が車道を移動している場合にランプを発光させないように制御される。このランプの発光色は、法規で定められた色であると好適である。外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している場合にランプを緑色で発光させ、移動体1が車道を移動している場合にランプを青色で発光させるというように制御されてもよい。外部報知装置50がディスプレイ装置である場合、外部報知装置50は、移動体1が歩道を走行している場合に「歩道走行中である」旨をテキストやグラフィックで表示する。
【0030】
図3は、移動体1を上方から見た透視図である。図中、FWは操舵輪、RWは駆動輪、SDは操舵装置、MTはモータ、BTはバッテリである。操舵装置SD、モータMT、バッテリBTは駆動装置40に含まれる。また、APはアクセルペダル、BPはブレーキペダル、WHはステアリングホイール、SPはスピーカ、MCはマイクである。図示する移動体1は一人乗りの移動体であり、乗員Pは運転席DSに着座してシートベルトSBを装着している。矢印D1は移動体1の進行方向(速度ベクトル)である。外界検知デバイス10は移動体1の前端部付近に、内部カメラ16は乗員Pの前方から乗員Pの頭部を撮像可能な位置に、モード切替スイッチ22はステアリングホイールWHのボス部にそれぞれ設けられている。また、移動体1の前端部付近に、ディスプレイ装置としての外部報知装置50が設けられている。
【0031】
図1に戻り、記憶装置70は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などの非一過性の記憶装置である。記憶装置70には、地図情報72、制御装置100が実行するプログラム74などが格納される。図では記憶装置70を制御装置100の枠外に記載しているが、記憶装置70は制御装置100に含まれるものであってよい。
【0032】
[制御装置]
制御装置100は、例えば、道路タイプ認識部120と、物体認識部130と、制御部140とを備える。例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)74を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶装置70に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置70にインストールされてもよい。
【0033】
道路タイプ認識部120は、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識する。道路タイプ認識部120は、例えば、外界検知デバイス10の外部カメラが撮像した画像を解析することで、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識する。画像解析の一例として、セマンティックセグメンテーションが挙げられる。道路タイプ認識部120は、画像のフレーム内の各ピクセルをクラス(車道、歩道、境界、物体など)に分類してラベルを付与し、移動体1の正面に相当する領域に車道のラベルが付与されたピクセルが多い場合に移動体1が車道を移動していることを認識し、画像における移動体1の正面に相当する領域に歩道のラベルが付与されたピクセルが多い場合に移動体1が歩道を移動していることを認識する。これに限らず、道路タイプ認識部120は、画像における移動体1の正面に相当する領域に車両が認識されている場合に移動体1が車道を移動していることを認識し、画像における移動体1の正面に相当する領域に歩行者が認識されている場合に移動体1が歩道を移動していることを認識してもよい。また、道路タイプ認識部120は、画像における移動体1の正面に相当する領域にある路面領域の幅が大きい場合に移動体1が車道を移動していることを認識し、画像における移動体1の正面に相当する領域にある路面領域の幅が小さい場合に移動体1が歩道を移動していることを認識してもよい。また、道路タイプ認識部120は、移動体1の位置情報と地図情報72とを照合し、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識してもよい。この場合の地図情報は、位置座標から歩道と車道が区別できる程度の精度を有している必要がある。「所定領域」が歩道だけで無い場合、道路タイプ認識部120は、路側帯や自転車レーン、公開空地などについても同様の処理を行う。
【0034】
物体認識部130は、外界検知デバイス10の出力に基づいて、移動体1の周辺に存在する物体を認識する。物体とは、車両や自転車、歩行者などの移動体、道路区画線、段差、ガードレール、路肩、中央分離帯などの走路境界、道路標識や看板などの路上に設置された構造物、走路上に存在する(落ちている)落下物などの障害物のうち一部または全部を含む。取得部110は、例えば、外界検知デバイス10の外部カメラが撮像した画像が入力されると物体の存在、位置、種別などの情報を出力するように学習された学習済モデルに、外部カメラの撮像した画像を入力することで、他の移動体の存在、位置、種別など情報を取得する。他の移動体の種別は、画像におけるサイズや外界検知デバイス10のレーダー装置が受信する反射波の強度などに基づいて推定することもできる。また、取得部110は、例えば、レーダー装置がドップラーシフトなどを利用して検出した他の移動体の速度を取得する。
【0035】
制御部140は、例えば、設定されている運転モードに応じて駆動装置40を制御する。
【0036】
モードA-1において制御部140は、物体認識部130の出力に基づく走路と物体の情報を参照し、移動体1が車道を移動する場合、移動体1の前方に存在する物体との距離を一定以上に維持し、移動体1の前方に存在する物体との距離が十分に長い場合は第1速度V1(例えば、十[km/h]以上、数十[km/h]未満の速度)で移動体1が移動するように、駆動装置40のモータMTを制御する。制御部140は、移動体1が歩道を移動する場合、移動体1の前方に存在する物体との距離を一定以上に維持し、移動体1の前方に存在する物体との距離が十分に長い場合は第2速度V2(例えば、十[km/h]未満の速度)で移動体1が移動するように、駆動装置40のモータMTを制御する。係る機能は、第1速度V1または第2速度V2を設定速度とした車両のACC(Adaptive Cruise Control)機能と同様のものであり、ACCにおいて用いられている技術を利用することができる。また、モードA-1において制御部140は、ステアリングホイール等の操作子14の操作量に基づいて操舵輪の操舵角を変更するように操舵装置SDを制御する。係る機能は、パワーステアリング装置の機能と同様のものであり、パワーステアリング装置において用いられている技術を利用することができる。なお操舵に関して電子制御を行わず、移動体1は、操作子14と操舵機構が機械的に連結された操舵装置を有してもよい。
【0037】
モードA-2において、制御部140は、物体認識部130の出力に基づく走路と物体の情報を参照し、走路内で物体を回避して移動可能な目標軌道を生成し、移動体1が目標軌道に沿って移動するように駆動装置40の操舵装置SDを制御する。加減速に関しては、制御部140は、移動体1の速度とアクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量とに基づいて駆動装置40のモータMTを制御する。制御部140は、移動体1が車道を移動している場合は第1速度V1を上限速度として駆動装置40のモータMTを制御し(モードA-2の場合、上限速度に達した場合は更なる加速指示があっても移動体1を加速させないことを意味する)、移動体1が歩道を移動している場合は第2速度V2を上限速度として駆動装置40を制御する。
【0038】
モードBにおいて制御部140は、移動体1の速度とアクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量とに基づいて駆動装置40のモータMTを制御する。制御部140は、移動体1が車道を移動している場合は第1速度V1を上限速度として駆動装置40のモータMTを制御し(モードBの場合、上限速度に達した場合は更なる加速指示があっても移動体1を加速させないことを意味する)、移動体1が歩道を移動している場合は第2速度V2を上限速度として駆動装置40のモータMTを制御する。操舵に関してはモードA-1と同様である。
【0039】
モードCにおいて制御部140は、物体認識部130の出力に基づく走路と物体の情報を参照し、走路内で物体を回避して移動可能な目標軌道を生成し、移動体1が目標軌道に沿って移動するように駆動装置40を制御する。モードCにおいても、制御部140は、移動体1が車道を移動している場合は第1速度V1を上限速度として駆動装置40を制御し、移動体1が歩道を移動している場合は第2速度V2を上限速度として駆動装置40を制御する。
【0040】
[ダイヤルスイッチの操作に応じた制御]
制御部140は、アクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量に依らずに速度を制御するモード(モードA-1およびモードC)において、ダイヤルスイッチ24に対する操作量に基づいて移動体1の速度を制御する。モードA-1およびモードCにおいて移動体1が車道を移動する場合、制御部140は、場面に応じた目標速度を設定する。例えば、制御装置140は、デフォルトの目標速度Vdefに対して、道路の平均速度や交通参加者の量、移動体1の周辺における物体との距離等に基づく補正を行って、場面に応じた目標速度Vrefを決定する。デフォルトの目標速度Vdefは、例えば、第1速度V1よりも低い速度に予め設定されている。更に、制御装置140は、場面に応じた目標速度Vrefに対して、ダイヤルスイッチ24の操作位置に基づく補正を行って、最終目標速度V#を決定する。ここで、制御部140は、場面に応じた目標速度Vrefに対して、ダイヤルスイッチ24の操作位置に基づく補正を行った値が第1速度V1を超える場合には、最終目標速度V#を第1速度V1とする。このように、制御部140は、移動体1に設けられたダイヤルスイッチ24のような指示受付部(アクセルペダルのような出力トルクに直結する指示を受け付けるものでは無く、現状の速度に対する追加指示を受け付ける性質のもの)を介して、乗員による速度指示を受け付ける。そして、制御部140は、少なくとも移動体1が車道を移動する場合の速度を、追加指示を参照して自動的に制御する。但し、制御部140は、指定された速度指示に関わらず、移動体1が車道を移動する場合の速度を第1速度V1に制限する。これによって、例えば移動体1が移動する国の法規を順守することができる。
【0041】
図4は、ダイヤルスイッチ24に対する操作量に基づく制御内容の変化を例示した図である。本図では、デフォルトの目標速度Vdef=20[km/h]、第1速度V1=30[km/h]であるものとする。図中、(1)に示す場面では、移動体1の進行方向側に車両が存在し、その存在によって制御部140が加速を抑制する判断をしたため、場面に応じた目標速度Vrefはデフォルトの目標速度Vdefと同じに決定される。ダイヤルスイッチ24の操作位置はゼロになっているため、最終目標速度V#もデフォルトの目標速度Vdefと同じになる。
【0042】
続く(2)に示す場面では、道路状況は(1)に示す場面から変化しないため、場面に応じた目標速度Vrefはデフォルトの目標速度Vdefと同じに決定されているが、ダイヤルスイッチ24の操作位置が+5に変更されたため、最終目標速度V#はデフォルトの目標速度Vdefよりも5[km/h]高い値となる。
【0043】
続く(3)に示す場面では、移動体1の前方の車両が車線変更などで移動体1によって認識されなくなったため、制御部140は、場面に応じた目標速度Vrefを第1速度V1まで上昇させる。ダイヤルスイッチ24の操作位置は+5のままであるが、場面に応じた目標速度Vrefに+5補正すると第1速度V1を超えるため、最終目標速度V#は第1速度V1に制限される。
【0044】
続く(4)に示す場面では、移動体1の前方が混雑しており、制御部140は、場面に応じた目標速度Vrefをデフォルトの目標速度Vdefよりも低い値とする。これに対してダイヤルスイッチ24の操作位置は+5あり、場面に応じた目標速度Vrefに+5補正した値が最終目標速度V#に設定される。
【0045】
図5は、実施形態の制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、モードAを前提としている。本フローチャートの処理は、例えば、所定周期で繰り返し実行される。
【0046】
まず、道路タイプ認識部120が、移動体1が車道を移動中であるか否か(歩道を移動中であるか)を判定する(ステップS200)。移動体1が車道を移動中であると判定された場合、制御部140は、前述したように、デフォルトの目標速度Vdefに対して、道路の平均速度や交通参加者の量、移動体1の周辺における物体との距離等に基づく補正を行って、場面に応じた目標速度Vrefを決定し(ステップS202)、場面に応じた目標速度Vrefに対して、ダイヤルスイッチ24の操作位置に基づく補正を行って、最終目標速度V#を決定する(ステップS204)。次に、制御部140は、最終目標速度V#が第1速度V1を超えるか否かを判定する(ステップS206)。最終目標速度V#が第1速度V1を超える場合、制御部140は、最終目標速度V#を第1速度V1で制限する(ステップS208)。そして、制御部140は、最終目標速度V#で移動体1を移動させる(ステップS210)。
【0047】
また、ステップS200において移動体1が歩道を移動していると判定された場合、制御部140は、移動体1が歩道を移動している場合の制御を行う(ステップS212)。
【0048】
上述した「ダイヤルスイッチの操作に応じた制御」は、移動体1が車道を移動中である場合だけでなく、移動体1が歩道を移動中である場合にも行われてよい。その場合、制御部140は、移動体1が歩道を移動中である場合に、場面に応じた目標速度Vrefを決定し、場面に応じた目標速度Vrefに対して、ダイヤルスイッチ24の操作位置に基づく補正を行って、最終目標速度V#を決定し、場面に応じた目標速度Vrefに対して、ダイヤルスイッチ24の操作位置に基づく補正を行った値が第2速度V2を超える場合には、最終目標速度V#を第1速度V2とする。
図5のフローチャートはダイヤルスイッチの操作に応じた制御を車道についてのみ実行することを前提としているが、移動体1が歩道を移動中である場合にもダイヤルスイッチの操作に応じた制御が行われる場合、移動体1が歩道を移動中である場合にもステップS202~S210と同様の処理(但し、V1はV2に置換される)が行われる。
【0049】
以上説明した第1実施形態によれば、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識する道路タイプ認識部120と、移動体1の速度を少なくとも部分的に制御する制御部140であって、移動体1が車道を移動する場合の速度を第1速度V1に制限し、移動体1が歩道を移動する場合の速度を第1速度V1よりも低い第2速度V2に制限する制御部140と、を備えることによち、車道と歩道の双方において適切な制御を行うことができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態の制御装置100は、道路タイプ認識部120の機能が第1実施形態と異なる。第2実施形態の道路タイプ認識部120は、例えば、移動体に設けられた道路タイプ入力スイッチ(不図示)に対してなされた乗員の操作に応じて、移動体1が車道を走行しているのか、歩道を走行しているのかを認識する。道路タイプ入力スイッチは、例えば、ステアリングホイールWHのボス部などに設けられる。道路タイプ入力スイッチは、例えば、上下に操作可能であると共に操作された位置を保持する機構を有し、上側に操作されている場合は車道、下側に操作されている場合は歩道を表すものである。また、道路タイプ入力スイッチは、ボタン或いはGUIスイッチの形態であって、制御装置100が車道走行中と認識している状態で操作された場合は歩道走行中の認識に切り替わり、制御装置100が歩道走行中と認識している状態で操作された場合は車道走行中の認識に切り替わるものであってもよい。係る構成によって、移動体1が車道を走行しているのか、歩道を走行しているのかを自動的に認識する機能を省略することができ、処理負荷やコストを軽減することができる。但し、乗員による誤操作の可能性があるため、第2実施形態においては外部報知装置50による外部への情報報知が行われることが望ましい。
【0051】
<その他>
上記各実施形態において、制御部140は、モードAとモードBのどちらか一方の制御だけ実行するものであってもよい。すなわち、移動体1は、アシストモードは実行するが手動モードは実行しないものであってもよく、手動モードは実行するがアシストモードは実行しないものであってもよい。また、制御部140は、モードAとモードBの双方の制御を実行するが、特定速度制御についてはモードAまたはモードBのいずれか一方が実行されている場合にのみ行うものであってもよい。いずれの場合も、モードCの制御を実行するかどうかは任意に決定されてよい。
【0052】
また、移動体1は、アクセルペダルを備えず、速度指示に関しては専らダイヤルスイッチ24を介して受け付けるものであってもよい。その場合、モードA-2やモードBは実行されず、実質的にモードA-1やモードCのみが実行されることとなる。
【0053】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
移動体が車道を移動しているか、車道と異なる所定領域を移動しているかを認識し、
前記移動体の速度を少なくとも部分的に制御し、
前記移動体が車道を移動する場合の速度を第1速度に制限し、前記移動体が前記所定領域を移動する場合の速度を前記第1速度よりも低い第2速度に制限する、
ように構成されている、移動体の制御装置。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 外界検知デバイス
12 移動体センサ
14 操作子
16 内部カメラ
18 測位装置
20 対話装置
22 モード切替スイッチ
24 ダイヤルスイッチ
30 移動機構
40 駆動装置
50 外部報知装置
70 記憶装置
100 制御装置
120 道路タイプ認識部
130 物体認識部
140 制御部