(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20250527BHJP
C08K 5/25 20060101ALI20250527BHJP
C08K 5/30 20060101ALI20250527BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K5/25
C08K5/30
C08K5/3445
(21)【出願番号】P 2025513247
(86)(22)【出願日】2024-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2024043986
【審査請求日】2025-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2023221112
(32)【優先日】2023-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】大島 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】須長 大輔
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-015084(JP,A)
【文献】国際公開第2023/190466(WO,A1)
【文献】特開2005-171158(JP,A)
【文献】特開2005-263921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291136(US,A1)
【文献】特開2024-018932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、
(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンを0.005~0.3質量部と、
(C)式(N)で表される尿素化合物を0.02~0.3質量部とを含み、
前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含む、
樹脂組成物。
【化1】
(式(N)中、Rは炭素数1~5の炭化水素基であり、nは0~4の整数である。nが2以上の場合、それぞれのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンと、前記(C)尿素化合物の質量比率である(B)/(C)が1.0以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)尿素化合物がエチレン尿素を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0.002~0.007質量%となる割合で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンが、脂肪族カルボン酸ヒドラジドを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンが、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、および、ドデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンと、前記(C)尿素化合物の質量比率である(B)/(C)が1.0以下であり、
前記(C)尿素化合物がエチレン尿素を含み、
前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0.002~0.007質量%となる割合で含み、
前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンが、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、および、ドデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1、2または7に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項9】
請求項1、2または7に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項10】
請求項8に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリアセタール樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックスであるポリアセタール樹脂は、優れた機械的性質、摺動特性、摩擦・磨耗特性、耐熱性、成形加工性などを有している。このため、ポリアセタール樹脂を主成分として含む樹脂組成物は、自動車、OA機器などの各種機械部品や電気部品等に広く用いられている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂は、その主原料にホルムアルデヒドを使用するため、加工成形時等における熱履歴によって僅かながら熱分解反応を起こし、極めて微量ながらもホルムアルデヒドを発生させる。ここで、ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群等を引き起こす可能性があるとされているため、ホルムアルデヒドの発生が十分に抑制された樹脂組成物が求められている。このようなホルムアルデヒドの発生を抑制することが検討された例として、特許文献1~4があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/115386号
【文献】特開2007-070574号公報
【文献】特開2005-171158号公報
【文献】特開2022-015084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、ポリアセタール樹脂の熱履歴によるホルムアルデヒドの発生については従前から検討されているが、滞留後のポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒドの発生の抑制については、十分に検討されているとは言えない。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ホルムアルデヒドの発生が効果的に抑止された優れた樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ホルムアルデヒド捕捉剤として、脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンと尿素化合物を併用することとし、さらに、尿素化合物中のケイ素含有化合物の量を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、
(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンを0.005~0.3質量部と、
(C)式(N)で表される尿素化合物を0.02~0.3質量部とを含み、
前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含む、
樹脂組成物。
【化1】
(式(N)中、Rは炭素数1~5の炭化水素基であり、nは0~4の整数である。nが2以上の場合、それぞれのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
<2>前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンと、前記(C)尿素化合物の質量比率である(B)/(C)が1.0以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記(C)尿素化合物がエチレン尿素を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0.002~0.007質量%となる割合で含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンが、脂肪族カルボン酸ヒドラジドを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンが、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、および、ドデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンと、前記(C)尿素化合物の質量比率である(B)/(C)が1.0以下であり、
前記(C)尿素化合物がエチレン尿素を含み、
前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0.002~0.007質量%となる割合で含み、
前記(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンが、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、および、ドデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8><1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物ペレット。
<9><1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<10><8>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ホルムアルデヒドの発生が効果的に抑止された樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本明細書における数値の上限値と下限値は、前記上限値と下限値のいずれの組み合わせについても、本実施形態の一例として挙げられる。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。本明細書で示す規格で説明される測定方法等が2023年1月1日時点で廃番となっている場合、廃番時点の規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾン(本明細書において、「(B)成分」ということがある)を0.005~0.3質量部と、(C)式(N)で表される尿素化合物を0.02~0.3質量部とを含み、前記(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含むことを特徴とする。
【化2】
(式(N)中、Rは炭素数1~5の炭化水素基であり、nは0~4の整数である。nが2以上の場合、それぞれのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
このような構成とすることにより、ホルムアルデヒドの発生が効果的に抑制される。特に、初期のホルムアルデヒドの発生と滞留後の樹脂からのホルムアルデヒドの発生の両方を効果的に抑制できる。
具体的には、(B)成分は、反応速度が速いため、初期のホルムアルデヒドの抑制に効果的である。一方、(C)尿素化合物は、反応速度がゆっくりであるため、滞留中のポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒドの抑制に効果的である。しかしながら、(C)尿素化合物の含有量が多いと、金型汚染に影響してしまう。本実施形態では、(C)尿素化合物の含有量の上限を定めることにより、かかる問題を解決している。
さらに、本実施形態においては、尿素化合物中に、ケイ素含有化合物をケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含む尿素化合物を用いることとした。このような構成とすることにより、工業的なり便利性を維持しつつ、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制する。すなわち、尿素化合物は、合成時に触媒としてケイ素含有化合物が用いられ、最終製品にも微量ながら、ケイ素含有化合物が含まれるものがある。このようなケイ素含有化合物を含む尿素化合物は、工業的には有利である。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、尿素化合物がケイ素含有化合物を含むことにより、ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒドの発生を促進してしまうことが分かった。これは、尿素化合物中のケイ素含有化合物は、活性基(反応点)を持っていて、ポリアセタール樹脂の末端から分解してホルムアルデヒドを発生しまうことによると推測された。本実施形態においては、(C)尿素化合物中のケイ素含有化合物の量を精密に調整することにより、ケイ素含有化合物を含有する尿素化合物を用いても、十分にホルムアルデヒドの発生を抑制しうることを見出したものである。
【0009】
<(A)ポリアセタール樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は(A)ポリアセタール樹脂を含む。
(A)ポリアセタール樹脂は、その種類等、特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と炭素数が2以上の2価のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
炭素数が2以上のオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、および、オキシブチレン基などが挙げられる。
【0010】
(A)ポリアセタール樹脂においては、オキシメチレン基および炭素数2以上のオキシアルキレン基の総モル数に占める炭素数2以上のオキシアルキレン基の割合は特に限定されるものではなく、例えば、0.5~10モル%であればよい。オキシアルキレン基中の炭素数は2以上であればよいが、好ましくは6以下であり、より好ましくは4以下である。
【0011】
(A)ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中に炭素数2~6のオキシアルキレン基を導入するには、例えば環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキセパン、1,3-ジオキソカン、1,3,5-トリオキセパンおよび1,3,6-トリオキソカン等が挙げられる。環状エーテルの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等が挙げられる。ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3-ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレン基を導入するには、1,3-ジオキサンを用いればよく、オキシブチレン基を導入するには、1,3-ジオキセパンを導入すればよい。
【0012】
なお、(A)ポリアセタール樹脂においては、ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、熱や酸、塩基に対して不安定な末端基量が少ない方がよい。ここで、ヘミホルマール末端基とは、-OCH2OHで表されるものであり、ホルミル末端基とは-CHOで表されるものである。
【0013】
上記(A)ポリアセタール樹脂のMI(メルトインデックス)値は、特に制限されるものではないが、通常0.01~150g/10分であり、中でも0.1~100g/10分であることが好ましく、1~70g/10分であることがより好ましい。この場合、ポリアセタール樹脂のMI値が上記範囲を外れる場合に比べて、射出成形機で成形する場合の樹脂組成物の成形性がより良好となる。なお、(A)ポリアセタール樹脂のMI値は、ASTM-D1238に基づいて、190℃、荷重2.16kgの条件下にて測定されたMI値をいう。
【0014】
本実施形態で用いる(A)ポリアセタール樹脂は、ポリアセタール樹脂のリサイクル品(回収品、マテリアルリサイクル品、ケミカルリサイクル品等を含む)、不合格品、樹脂組成物から成形品を成形する際に生じた端材であってもよい。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物における(A)ポリアセタール樹脂の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、98質量%以上であることがより一層好ましい。また、(A)ポリアセタール樹脂の含有量の上限は、(B)成分および(C)尿素化合物以外の成分がすべて(A)ポリアセタール樹脂となる量である。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
<(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾン>
本実施形態の樹脂組成物は、(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンを含む。(B)成分を含むことにより、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制できる。
(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンは、脂肪族カルボン酸ヒドラジドを含むことが好ましい。
【0017】
脂肪酸ヒドラジドは、式(B-1)で表されることが好ましい。
式(B-1)
【化3】
(式(B-1)中、R
11は、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基、または、これらの組み合わせからなる基を表す;R
12~R
15は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1~6のアルキル基を表す;R
12とR
13、および、R
14とR
15は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0018】
式(B-1)において、R11は炭素数2~18の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基、または、これらの組み合わせからなる基を表し、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数2~18の脂肪族炭化水素基の炭素数は、4以上が好ましく、また、16以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。上記脂肪族炭化水素基は、飽和でも、不飽和でもよく、直鎖状でも、分岐状でもよい。脂肪族炭化水素基の具体例としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基およびノナデシレン基などのアルキレン基などが挙げられる。
【0019】
上記脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。
脂環式炭化水素基としては、炭素数6~10のシクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えばシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0020】
式(B-1)において、R12~R15は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基およびエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0021】
脂肪族ジヒドラジド化合物としては、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド(1,12-ドデカンジカルボヒドラジド)、1,18-オクタデカンジカルボヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジドなどが挙げられ、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、および、ドデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アジピン酸ジヒドラジド、および/または、ドデカン二酸ジヒドラジドがより好ましい。
【0022】
脂肪族ヒドラゾンとしては、式(B-2)で表される化合物および式(B-3)で表される化合物から選ばれる群より選択される少なくとも1種の脂肪族ヒドラゾンが好ましい。
式(B-2)
【化4】
(式(B-2)中、R
1は炭素数4~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基、または、これらの組み合わせからなる基を表す。R
2~R
5はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基を表し、R
2およびR
3のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表し、R
4およびR
5のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表す。)
【0023】
式(B-2)において、炭素数4~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基、または、これらの組み合わせからなる基を表す。
上記脂肪族炭化水素基は、飽和でも、不飽和でもよく、直鎖状でも、分岐状でもよい。
脂肪族炭化水素基の具体例としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基およびイコシレン基などのアルキレン基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基は炭素数6~12の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。この場合、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。また、成形加工時の金型の汚染をより十分に抑制できる。
上記脂環式炭化水素基は、飽和でも、不飽和でもよい。
脂環式炭化水素基としては、炭素数6~10のシクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロへキシレン基などが挙げられる。
【0024】
式(B-2)において、R2~R5はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基を表し、R2およびR3のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表し、R4およびR5のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表す。
ここで、式(B-2)において、R2およびR4がエチル基である場合には、R3およびR5が水素原子であり、R2およびR4がメチル基である場合には、R3およびR5が水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0025】
上記式(B-2)で表される化合物の具体例としては、1,12-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]]-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス(2-エチリデンヒドラジノ)-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス[2-(1-メチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス[2-(1-エチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,12-ドデカンジオン、1,10-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]]-1,10-デカンジオン、1,10-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,10-デカンジオン、1,10-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,10-デカンジオン、1,10-ビス[2-(1-メチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,10-デカンジオン、1,10-ビス[2-(1-エチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,10-デカンジオン、1,6-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス(2-エチリデンヒドラジノ)-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス[2-(1-メチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス[2-(1-エチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,6-ヘキサンジオンなどが挙げられる。
【0026】
式(B-3)
【化5】
(式(B-3)中、R
8は炭素数4~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基、または、これらの組み合わせからなる基を表す。R
6およびR
7はそれぞれ独立に、炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表す。)
【0027】
式(B-3)において、R8は、式(B-2)におけるR1と同様であり、好ましい範囲も同様である。
R6およびR7はそれぞれ独立に、炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表す。
炭素数3~12の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
上記式(B-3)で表される化合物の具体例としては、1,12-ビス(2-シクロヘキシリデンヒドラジノ)-1,12-ドデカンジオン、1,10-ビス(2-シクロヘキシリデンヒドラジノ)-1,10-デカンジオン、1,6-ビス(2-シクロヘキシリデンヒドラジノ)-1,6-ヘキサンジオンなどが挙げられる。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.005質量部以上であり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、また、0.3質量部以下であり、0.2質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以下であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、滞留時間が長い場合のホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、金型汚染をより効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
<(C)尿素化合物>
本実施形態の樹脂組成物は、式(N)で表される尿素化合物を含み、(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含む。
【化6】
(式(N)中、Rは炭素数1~5の炭化水素基であり、nは0~4の整数である。nが2以上の場合、それぞれのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0030】
ケイ素含有化合物は、尿素化合物を合成する際に触媒として用いられることがあるが、本実施形態では、このような尿素化合物をであっても、ケイ素原子の含有量を減らすことによって、ホルムアルデヒドの発生量を低下させることができる。
特に、尿素化合物を含むことによりポリアセタール樹脂を成形機に長時間滞留させた場合でもホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制することができる。さらに、金型汚染を抑制することも可能になる。
【0031】
本実施形態において、(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、前記(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含む。前記値は、0.0065質量%以下であることが好ましく、0.0060質量%以下であることがより好ましく、0.0056質量%以下であることがさらに好ましく、0.0050質量%以下であることが一層好ましく、0.0045質量%以下であることがより一層好ましく、また、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.0005質量%以上であることがより好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましく、0.002質量%以上であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ホルムアルデヒドの発生量を効果的に抑えることができる傾向にある。前記下限値以上とすることにより、尿素化合物をより有利に生産することができる。
本実施形態の(C)尿素化合物は、ケイ素含有化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
ケイ素含有化合物中のケイ素原子の含有量は、リガク社製、蛍光X線装置にて測定される。
ケイ素含有化合物の例は、尿素化合物を合成する際の触媒である。
【0032】
式(N)において、Rは、炭素数1~5の炭化水素基であり、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
式(N)において、nは、0~4の整数であり、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましく、0であることが一層好ましい。
【0033】
本実施形態で用いる(C)尿素化合物は、エチレン尿素であることがより好ましい。
【0034】
本実施形態で用いる(C)尿素化合物の分子量は、60以上であることが好ましく、86以上であることがより好ましく、また、上限値は、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、200以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、(C)尿素化合物以外の尿素化合物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。(C)尿素化合物以外の尿素化合物としては、尿素、アラントイン、ビウレアが例示される。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物における(C)尿素化合物の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.02質量部以上であり、0.04質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましく、0.10質量部以上であることが一層好ましく、0.11質量部以上であることがより一層好ましく、また、0.3質量部以下であり、0.18質量部以下であることが好ましく、0.16質量部以下であることがより好ましく、0.14質量部以下であることがさらに好ましく、0.13質量部以下であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ホルムアルデヒドの発生、特に、成形機における滞留時間が長い場合のホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる傾向にある。前記上限値以下とすることにより、金型汚染の抑制効果がより効果的に発揮される。また、(C)尿素化合物の含有量をポリアセタール樹脂100質量部に対し0.18質量部以下とすることにより、モールドデポジットがより効果的に抑制される傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(C)尿素化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分と(C)尿素化合物の質量比率である(B)/(C)が1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5未満であることがさらに好ましく、0.45以下であることが一層好ましく、また、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、滞留時間が長くなった際のホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる傾向にある。また、前記下限値以上とすることにより、ホルムアルデヒド発生量を抑えつつ、金型汚染も抑えられる傾向にある。
【0038】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物には、上記各成分以外の他の成分を含んでいてもよい。具体的には、他の成分として、官能基含有化合物(メラミン化合物等)、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、抗菌剤、着色剤(顔料、染料)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。紫外線吸収剤および安定剤の詳細は、特開2020-132662号公報の段落0038~0056の記載、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、本実施形態における樹脂組成物は、無機充填剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、本実施形態における樹脂組成物の無機充填剤の含有量が1質量%未満であることをいう。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂、(B)成分と、(C)尿素化合物と、必要に応じ配合されるその他の成分の合計が100質量%となるように配合される。また、(A)ポリアセタール樹脂、(B)成分と、(C)尿素化合物の合計量が樹脂組成物の95~100質量%を占めることが好ましく、99~100質量%を占めることがより好ましい。
【0039】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、樹脂組成物の調製法として従来から知られた各種の方法により調製することができる。例えば、(1)樹脂組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)樹脂組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィード口から、残余成分をサイドフィード口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法、(4)ポリアセタール樹脂のペレットまたは粉砕物に所定量の配合成分を混合するか、ポリアセタール樹脂のペレットまたは粉砕物の表面に所定量の配合成分をコーティングして所定の樹脂組成物を得る方法などが採用できる。
【0040】
<ペレットおよび成形品>
本実施形態には、本実施形態の樹脂組成物のペレット、本実施形態の樹脂組成物またはペレットから形成された成形品も含まれる。本実施形態における成形品は、(B)成分と、(C)尿素化合物が配合されていることにより、ホルムアルデヒドの発生が大幅に抑制される。特に、成形機内での滞留時間が長い場合においても、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形などの公知の成形方法により成形可能である。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物および成形品は、ホルムアルデヒド発生量の低減が強く求められる用途、例えば自動車部品、電気・電子部品、精密機械部品、建材・配管部品、日用品、化粧品用部品、医療用機器部品などに好適に使用できる。
より具体的には、自動車部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーターやコネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などの機構部品が例示できる。
【0042】
電気・電子部品としては、金属接点が多数存在する機器の構成部品または部材、例えば、カセットテープレコーダ、CD・DVDプレイヤーなどのオーディオ機器、VTR、8mmビデオカメラ、デジタルビデオカメラなどのビデオ機器、コピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA機器などの構成部品または部材が例示できる。これらの構成部品または部材の具体例としては、シャーシ、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。さらに、少なくとも一部が成形品で構成された光および磁気メディア部品、例えば、音楽用メタルテープカセット、デジタルオーディオテープカセット、8mmビデオテープカセット、デジタルビデオカセット、フロッピーディスクカートリッジ、ミニディスクカートリッジ、DVDディスクカートリッジなどの部品にも適用可能である。
【0043】
さらに、本実施形態の成形品は、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、ファスナー類、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医療用関係部品に好適に使用される。
【0044】
特に自動車分野においては、車内が閉じられた環境下に置かれる場合が多く、また、車内が相当の高温に達する場合もあり、ホルムアルデヒド発生量の少ない本実施形態の樹脂組成物はかかる分野の成形品に特に好適に用いられるものである。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0046】
【0047】
実施例1~10、比較例1~3
(A)ポリアセタール樹脂、(B)成分、および(C)尿素化合物を表2~4に示す割合(表2~4における割合は質量部で示している)で、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、2軸押出機(池貝鉄工社製PCM-30、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下で溶融混練したのち、ストランドに押出し、ペレタイザーにてカットすることで樹脂組成物(ペレット)を製造した。
【0048】
(1)ホルムアルデヒド発生の抑制効果
ホルムアルデヒド発生の抑制効果については、ホルムアルデヒド発生量を測定し、そのホルムアルデヒド発生量に基づいて評価した。ホルムアルデヒド発生量については以下に示すようにして求めた。
<平板試験片の作製>
実施例および比較例で得られたペレットを用い、住友重機械工業社製、SE-30を用い、温度215℃に昇温したシリンダー内で、1分間加熱した後、金型温度80℃にて、射出成形し、100mm×40mm×2mmの平板試験片を作製した。
実施例および比較例で得られたペレットを用い、住友重機械工業社製、SE-30を用い、温度215℃に昇温したシリンダー内で、20分間加熱した後、金型温度80℃にて、射出成形し、100mm×40mm×2mmの平板試験片を作製した。
【0049】
実施例および比較例で得られたペレットを用い、住友重機械工業社製、SE-30を用い、温度230℃に昇温したシリンダー内で、1分間加熱した後、金型温度80℃にて、射出成形し、100mm×40mm×2mmの平板試験片を作製した。
【0050】
<ホルムアルデヒド発生量の測定>
上記3種の平板試験片を23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間静置した後に、上記平板試験片につき、ドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品-改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、下記の方法により、ポリアセタール樹脂1g中のホルムアルデヒド発生量(単位:μg/g-POM)を測定した。
(i)ポリエチレン容器中に蒸留水50mLを入れ、上記平板試験片を空中に吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃にて3時間加熱した。
(ii)室温で60分間放置した後、平板試験片を取り出した。
(iii)ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド量を、UVスペクトロメーターにより、アセチルアセトン比色法で測定し、このホルムアルデヒド量を平板試験片中のPOMの質量で除した値をホルムアルデヒド発生量とした。
【0051】
(2)モールドデポジット
上記で得られたペレットを、住友重機械工業製、SE7Mを用いて温度215℃に昇温したシリンダー内で、1分間加熱した後、金型温度40℃にて、しずく型試験片を1000ショット射出成形し、終了後の金型固定側の金属鏡面に発生する白い付着物による汚れの状態を、目視にて評価判定した。評価は5人の専門家が行い多数決とした。
A:ほとんど付着無し
B:わずかに付着
C:付着するが容易に拭き取れる
D:大量に付着するが容易に拭き取れる
E:付着し、除去するにかなり困難、あるいは、除去が困難
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品は、滞留時を含めてホルムアルデヒドの発生が効果的に抑止された(実施例1~10)。
また、(C)尿素化合物の含有量を調整することにより、モールドデポジットを効果的に抑制できた。
これに対し、(C)尿素化合物中のケイ素含有化合物の含有量が多い場合(比較例1)、(B)成分を含まない場合(比較例2)、(C)尿素化合物を含まない場合(比較例3)には、215℃滞留後、または230℃成形後のホルムアルデヒドの発生量が多かった。
【要約】
樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品の提供。(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(B)脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび/または脂肪族ヒドラゾンを0.005~0.3質量部と、(C)式(N)で表される尿素化合物を0.02~0.3質量部とを含み、(C)尿素化合物がケイ素含有化合物を、(C)尿素化合物中に、ケイ素原子が0質量%超0.007質量%以下となる割合で含む、樹脂組成物。