(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】ラベル原反
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20250528BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250528BHJP
B41M 1/04 20060101ALN20250528BHJP
B41M 1/30 20060101ALN20250528BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
B32B27/00 E
B41M1/04
B41M1/30 Z
(21)【出願番号】P 2020163336
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 まどか
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-044413(JP,A)
【文献】特開2019-001095(JP,A)
【文献】特開2019-179107(JP,A)
【文献】特開2020-078904(JP,A)
【文献】特開2019-064138(JP,A)
【文献】特開2014-186166(JP,A)
【文献】特開2008-012809(JP,A)
【文献】特開2002-311832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0075916(US,A1)
【文献】特開2005-173182(JP,A)
【文献】特開2008-207487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D23/00-25/56
B32B 1/00-43/00
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に直接接する水性インキ層と、を備えるラベル連続体が巻き取られてなるラベル原反であって、
前記ラベル連続体の表面抵抗値が
1×10
12
Ω以上
1×10
13
Ω以下であり、
前記ラベル連続体のMD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下であって、
前記表面抵抗値は、JIS C 2139-3-2:2018「固体電気絶縁材料の誘電特性及び抵抗特性-第3-2部:直流電圧印加による抵抗特性の測定-表面抵抗及び表面抵抗率」に基づいて測定された値であり、
前記圧縮強度は、JIS P 8126「紙及び板紙-圧縮強さ試験方法-リングクラッシュ法」に基づいて測定された値であり、
前記ラベル連続体は、帯電防止剤を含んでいない、ラベル原反。
【請求項2】
前記基材の厚さが12μm以下である、請求項1に記載のラベル原反。
【請求項3】
前記基材のTD方向の長さが60mm以下である、請求項1または請求項2に記載のラベル原反。
【請求項4】
前記ラベル連続体は、前記TD方向において、透明基調領域と、不透明基調領域とを備え、
前記透明基調領域における前記水性インキ層の厚さは、前記不透明基調領域における前記水性インキ層の厚さよりも薄い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のラベル原反。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラベル原反に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばポリエチレンテレフタレート製ボトル(PETボトル)等のプラスチック容器が様々な商品に利用されている。プラスチック容器の胴部には、商品情報等の表示のための印刷層を備えるプラスチックラベルが装着されることも一般的となっている。
【0003】
従来、プラスチックラベルとしては、プラスチックフィルムの表面に油性インキを塗布することによってインキ層を形成することが行われていた。しかしながら、近年の環境意識の高まりおよびVOC(揮発性有機化合物)の発生を抑制する観点から、有機溶媒を使用した油性インキに代えて、水性溶媒を使用した水性インキを用いることが望まれている。
【0004】
たとえば特許文献1には、アルカリで脱離するタイプのインキ(水性インキ)層が基材フィルムの外表面の少なくとも一部分に積層され、基材フィルムのインキ層と反対側の表面の表面固有抵抗値が1×1013(Ω/□)以下、ラベルの85℃における最大収縮方向の温湯収縮率が20%以上であることを特徴とするポリエステル系熱収縮性ラベルが記載されている。
【0005】
また、特許文献1には、基材フィルムのインキ層と反対側の表面の表面固有抵抗値を1×1013(Ω/□)以下とするために、基材フィルムの当該表面に帯電防止剤を塗布することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表面に帯電防止剤を塗布した基材フィルムを一旦巻き取った後、その基材フィルムを繰り出し、基材フィルムの裏面に水性インキを印刷することによってラベル連続体を製造することが行なわれている。
【0008】
しかしながら、帯電防止剤を塗布した基材フィルムが巻き取られて基材フィルム同士が重ね合わされたときに基材フィルムの表面の帯電防止剤がその上に位置する基材フィルムの裏面に転移することがあった。この場合には、基材フィルムの裏面に転移した帯電防止剤の存在により水性インキが適性に印刷されず、ラベル連続体に色ムラが生じることがあった。
【0009】
また、ラベル連続体をスリットする場合、またはラベル連続体から個々のラベルを容器に装着する場合等のプロセスにおいて、ラベル原反からラベル連続体を繰り出してラベル連続体を走行させる必要がある。
【0010】
しかしながら、基材フィルムの表面に帯電防止剤が塗布され、基材フィルムの裏面に水性インキが印刷されたラベル連続体は帯電性を有しないため、ラベル原反からラベル連続体を繰り出す際にラベル連続体が滑りやすい。これにより、ラベル原反から繰り出されたラベル連続体が幅方向(TD方向)にブレてしまい長さ方向(MD方向)に安定して走行しないことがあった。特に、ラベル連続体にコシがない場合に、この傾向が顕著に大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで開示された実施形態によれば、基材と、基材に直接接する水性インキ層と、を備えるラベル連続体が巻き取られてなるラベル原反であって、ラベル連続体の表面抵抗値が12Ω・cm以上13Ω・cm以下であり、ラベル連続体のMD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下であるラベル原反を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
ここで開示された実施形態によれば、帯電防止剤の転移に起因するラベル連続体における水性インキ層の色ムラの発生を低減することが可能であるとともに、コシのないラベル連続体を繰り出した場合でもラベル連続体を安定して走行させることが可能なラベル原反を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態のラベル原反の一例の模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に示されるラベル連続体の一例の模式的な平面図である。
【
図3】
図2に示されるラベル連続体のIII-IIIに沿った一例の模式的な断面図である。
【
図4】
図2に示されるラベル連続体のIII-IIIに沿った他の一例の模式的な断面図である。
【
図5】実施形態のラベル原反の製造方法の一例について図解する模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0015】
<ラベル原反>
図1に、実施形態のラベル原反の一例の模式的な斜視図を示す。
図1に示すように、実施形態のラベル原反100は、ラベル連続体101が巻き取られてなる。ラベル連続体101はTD方向に所定の幅を有し、MD方向に延在して巻き取られている。
【0016】
<ラベル連続体>
図2に、
図1に示されるラベル連続体101の一例の模式的な平面図を示す。
図3に、
図2に示されるラベル連続体101のIII-IIIに沿った一例の模式的な断面図を示す。
図3に示すように、実施形態のラベル原反100のラベル連続体101において、基材1と水性インキ層2とが直接(他の層を介することなく)接している。したがって、実施形態のラベル原反100のラベル連続体101においては、基材1の水性インキ層2が設けられていない側の表面および基材1と水性インキ層2との間に帯電防止剤が存在していない。そのため、実施形態のラベル原反100においては、帯電防止剤の転移に起因するラベル連続体101の水性インキ層2の色ムラの発生を解消することができる。
【0017】
<基材>
基材1は、少なくとも水性インキ層2を支持することが可能な樹脂を含む基材である。基材1は、透明(無色透明または有色透明)で、適度な強度及び柔軟性を有するものであれば特に限定されず、従来公知の熱可塑性樹脂フィルムを使用できる。基材1に含まれる樹脂としては、たとえば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはポリエチレン等を用いることができる。基材1の裏面側に水性インキ層2が設けられている本実施形態においては、基材1は、無色透明であることが好ましい。
【0018】
基材1は、たとえば、上述した樹脂の1種類以上を含む単一層から構成されていてもよく、当該単一層が複数積層された複数層から構成されていてもよい。基材1の厚さT1はたとえば12μm以下とすることができる。基材1の厚さT1が12μm以下である場合には、ラベル連続体のMD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下となって、ラベル連続体101にコシがなくなる傾向にある。このような場合でも、実施形態のラベル原反100から繰り出されたラベル連続体101を安定して走行させることが可能になる。基材1のTD方向の長さは、たとえば、60mm以下とすることができる。上記厚みに加えて、基材1のTD方向の長さが60mm以下である場合には、通常は、ラベル連続体101が巻きズレしやすい傾向にある。しかしながら、実施形態のラベル原反100においては、このような場合でも、実施形態のラベル原反100から繰り出されたラベル連続体101を安定して走行させることが可能になる。
【0019】
<水性インキ層>
水性インキ層2は、基材1上に水性インキを塗布した後に硬化した層である。水性インキは、たとえば、水、樹脂、添加剤および顔料等を含んでいてもよい。
【0020】
水性インキに含まれる樹脂としては、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(たとえば、ポリエチレン系樹脂、若しくはポリブタジエン系樹脂等)、イソシアネート系樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)、またはイミン系樹脂等を用いることができる。
【0021】
水性インキに含まれる添加剤としては、たとえば、可塑剤、沈降防止剤、分散剤、安定剤、消泡剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色別れ防止剤、香料、消臭剤またはリップ剤等を用いることができる。
【0022】
水性インキに含まれる顔料としては、たとえば、白色、赤色または青色等の所望の色彩の着色顔料を用いることができる。
【0023】
水性インキ層2をカラー印刷層として用いる場合には、たとえば、水の含有量を水性インキの50重量%以上60重量%以下とすることができ、水以外の樹脂、添加剤および顔料等の含有量を水性インキの40重量%以上50重量%以下とすることができる。
【0024】
水性インキ層2を白ベタ印刷層として用いる場合には、たとえば、水の含有量を水性インキの25重量%以上35重量%以下とすることができ、水以外の樹脂、添加剤および顔料等の含有量を水性インキの65重量%以上75重量%以下とすることができる。
【0025】
水性インキ層2をメジウムとして用いる場合には、たとえば、水の含有量を水性インキの50重量%以上60重量%以下とすることができ、水以外の樹脂、添加剤および顔料等の含有量を水性インキの40重量%以上50重量%以下とすることができる。
【0026】
水性インキ層2は、たとえば、デザイン印刷層とすることができる。デザイン印刷層はたとえば視認可能な絵柄または文字等を表示する層である。水性インキ層2は、また、たとえば
図2に示すように、基材1上において複数のデザイン印刷層を構成していてもよい。
【0027】
デザイン印刷層は、たとえば、1つのラベルを構成する纏まりのあるデザインとすることができる。
図2に示す例においては、このようなデザイン印刷層が、MD方向およびTD方向のそれぞれの方向に複数繰り返して配置されている。1つのデザイン印刷層を含むようにラベル連続体101を切り取ることによって1つのラベルを得ることができる。したがって、ラベル連続体101は、複数のラベルが連続的に繋がることにより構成されていると言うこともできる。
【0028】
図4に、
図2に示されるラベル連続体101のIII-IIIに沿った他の一例の模式的な断面図を示す。
図4に示される例のラベル連続体101は、TD方向において、透明基調領域Aと、不透明基調領域Bとを備えている。ここで、透明基調領域Aは、ラベル連続体101の裏面から1cm離れた箇所に、白地の紙に黒色インキで任意の数字(大きさ12ポイント)を印刷したものを配置し、透明基調領域Aを透かしてその数字をラベル連続体101の表面側から識別できる(数字の存在とともに何の数字かまで認識することができる)程度の透明性を有する領域のことをいう。不透明領域Bは、ラベル連続体101の裏面から1cm離れた箇所に、白地の紙に黒色インキで任意の数字(大きさ12ポイント)を印刷したものを配置し、透明基調領域Aを透かしてその数字をラベル連続体101の表面側から視認できない(数字の存在すら認識できない)程度の不透明性を有する領域のことをいう。透明の指標としては、全光線透過率などを用いて表すことができ、たとえば、透明基調領域Aの全光線透過率は70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。ただし、全光線透過率は、透明である測定対象(透明なフィルムである場合にはそのフィルムが測定対象、透明基調または不透明基調の印刷層である場合には、前記透明なフィルムに各種印刷層を設けたものが測定対象)を、JIS K 7361(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した測定法によって測定された値のことをいう。
【0029】
透明基調領域Aにおける水性インキ層2aの厚さT2aは、不透明基調領域Bにおける水性インキ層2bの厚さT2bよりも薄くなっている。このような構成のラベル連続体101を巻き取った場合には、ラベル原反100の水性インキ層2bに相当する箇所が水性インキ層2aに相当する箇所よりも厚くなる。このような場合には、ラベル連続体101のMD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下といったラベル連続体101にコシがないときに、ラベル原反100におけるラベル連続体101の巻きズレが生じやすい。しかしながら、実施形態においては、ラベル連続体101にこのようなコシがない場合でも、ラベル原反100におけるラベル連続体101の巻きズレの発生を抑制することができ、ラベル原反100から繰り出されたラベル連続体101を安定して走行させることが可能になる。
【0030】
<表面抵抗値>
ラベル連続体101の表面抵抗値は、12Ω・cm以上13Ω・cm以下である。ラベル連続体101の表面抵抗値は、ラベル連続体101の表面の帯電量の指標となる。すなわち、ラベル連続体101の表面抵抗値が大きいほど、ラベル連続体101の表面の帯電量も大きくなる。
【0031】
ラベル連続体101の表面抵抗値は、JIS C 2139-3-2:2018「固体電気絶縁材料の誘電特性及び抵抗特性-第3-2部:直流電圧印加による抵抗特性の測定-表面抵抗及び表面抵抗率」に基づいて測定された表面抵抗の値である。
【0032】
ラベル連続体101の表面抵抗値は、基材1の水性インキ層2が設けられていない側の表面、または基材1上の水性インキ層2の表面のいずれか一方の表面抵抗値の測定において12Ω・cm以上13Ω・cm以下であればよい。好ましくは、ラベル連続体101の表面抵抗値は、基材1の水性インキ層2が設けられていない側の表面、および基材1上の水性インキ層2の表面の両方の表面抵抗値の測定において12Ω・cm以上13Ω・cm以下である。
【0033】
ラベル連続体101が12Ω・cm以上13Ω・cm以下の表面抵抗値を有することによって、ラベル連続体101の表面が適度な帯電量を有する。そのため、MD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下といったコシのないラベル連続体101をラベル原反100から繰り出した場合でもラベル連続体101が安定して走行する。
【0034】
すなわち、ラベル連続体101の表面抵抗値が12Ω・cm未満である場合には、ラベル連続体101の表面の帯電量が小さすぎてラベル原反100において巻き取られたラベル連続体101同士が滑りやすくなる。そのため、MD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下といったコシのないラベル連続体101をラベル原反100から繰り出した場合には、ラベル連続体101が安定して走行しない。
【0035】
また、ラベル連続体101の表面抵抗値が13Ω・cmを超える場合には、ラベル連続体101の表面の帯電量が大きすぎて、ラベル原反100において巻き取られたラベル連続体101同士が密着し過ぎる。そのため、MD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下といったコシのないラベル連続体101をラベル原反100から繰り出した場合には、ラベル連続体101が安定して走行しない。
【0036】
<MD方向またはTD方向における圧縮強度>
ラベル連続体101のMD方向またはTD方向における圧縮強度は1N以下である。ラベル連続体101のMD方向またはTD方向における圧縮強度は、ラベル連続体101自体のコシの指標となる。すなわち、ラベル連続体101のMD方向またはTD方向における圧縮強度が小さいほど、コシのないラベル連続体101を意味する。
【0037】
ラベル連続体101のMD方向またはTD方向における圧縮強度の値は、JIS P 8126「紙及び板紙-圧縮強さ試験方法-リングクラッシュ法」に基づいて測定された値である。
【0038】
ラベル連続体101のMD方向またはTD方向における圧縮強度は、ラベル連続体101のMD方向またはTD方向のいずれか一方の方向の圧縮強度の値が1N以下であればよい。好ましくは、ラベル連続体101の圧縮強度は、ラベル連続体101のMD方向およびTD方向の両方において1N以下であり、より好ましくは、ラベル連続体101の圧縮強度は、ラベル連続体101のMD方向およびTD方向の両方において0.9N以下である 。
【0039】
実施形態のラベル原反100は、MD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下といったコシがないラベル連続体101を繰り出した場合でもラベル連続体101を安定して走行させることができる。このような効果は、環境保護等の観点から基材1の厚さT1を薄くすることが求められている本技術分野において特に有用であると考えられる。すなわち、基材1の厚さT1が薄くなるにしたがってラベル連続体101にコシがなくなっていき、ラベル連続体101の安定走行が困難となっていくためである。
【0040】
<ラベル原反の製造方法>
実施形態のラベル原反100は、たとえば以下のように製造することができる。以下、
図5の模式的側面図を参照して、実施形態のラベル原反100の製造方法の一例について説明する。
【0041】
実施形態のラベル原反100の製造方法においては、まず、基材1の表面に直接に水性インキを塗布する工程を行なう。基材1の表面に直接に水性インキを塗布する工程は、たとえば従来から公知のフレキソ印刷またはグラビア印刷等を用いることができる。本実施形態においては、フレキソ印刷によって基材1の表面に直接に水性インキを塗布する工程の例について説明する。
【0042】
本実施形態において、基材1の表面に直接に水性インキを塗布する工程は、以下のように行なうことができる。
【0043】
まず、たとえば
図5に示すように、基材原反1aを準備する。基材原反1aは、たとえば、Tダイ等の押出法、インフレーション法、チューブラ法またはカレンダー法等の方法によってプラスチックフィルムを成形することにより、必要に応じて、プラスチックフィルムに対してさらに延伸処理を施して得られた基材1をロール状に巻き取ることによって作製することができる。ここで、基材1は、ラベル連続体100の表面抵抗値が12Ω・cm以上13Ω・cm以下になるとともに、ラベル連続体100のMD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下となるように調整して作製される。
【0044】
基材1をロール状に巻き取る前、または基材1をロール状に巻き取った後に基材1の表面に対してコロナ処理を行なってもよい。基材1の表面に対してコロナ処理を行なった場合には、基材1の表面に対する水性インキの印刷適性を向上することができる傾向にある。
【0045】
次に、基材1の表面に直接に水性インキを塗布する。基材1の表面に直接に水性インキを塗布する工程は、
図5の模式的側面図に示されるフレキソ印刷機10を用いて行うことができる。水性インキとしては、たとえば、上記の水と樹脂と顔料とを含む水性インキを用いることができる。
【0046】
図5に示される例のフレキソ印刷機10は、基材1を搬送するセンタードラム11と、センタードラム11との間で基材1を挟むようにセンタードラム11の周囲に配置された3つの円筒状版12とを備えている。なお、本実施形態では、フレキソ印刷機10が3つの円筒状版12を有する場合について説明するが、円筒状版12の数は3つに限定されないことは言うまでもない。
【0047】
3つの円筒状版12のそれぞれには、アニロックスロール13とドクターチャンバー14とが具備されている。ドクターチャンバー14からアニロックスロール13に水性インキが付着し、アニロックスロール13から円筒状版12の凸版に水性インキが転移し、円筒状版12の凸版から基材1に水性インキが直接塗布される。基材1の表面に予めコロナ処理がされている場合には、基材1の表面に水性インキをムラなく塗布することができる傾向にある。
【0048】
また、基材1のTD方向において、水性インキの厚さが相対的に厚い領域と水性インキの厚さが相対的に薄い領域とを形成するように、基材1の表面に直接に水性インキを塗布することもできる。この場合には、たとえば
図4に示されるように、TD方向において透明基調領域Aと不透明基調領域Bとを備えるラベル連続体101を形成することができる。
【0049】
次に、水性インキを硬化して基材1に直接接する水性インキ層2を形成することによってラベル連続体101を形成する工程が行われる。このラベル連続体101を形成する工程は、たとえば、基材1に塗布された水性インキを乾燥等することによって水性インキを硬化させて水性インキ層2を形成することにより行なうことができる。これにより、基材1と、基材1に直接接する水性インキ層2とを備えたラベル連続体101が形成される。
【0050】
その後、ラベル連続体101を巻き取る工程が行なわれる。ラベル連続体101を巻き取る工程は、たとえば
図5に示すように、芯材15にラベル連続体101を巻き取ることにより行なうことができる。以上により、ラベル連続体101が巻き取られたラベル原反100を作製することができる。
【0051】
また、ラベル連続体101を巻き取る工程の後にラベル連続体101をスリットする工程を行なってもよい。ラベル連続体101をスリットする工程は、たとえば上記で作製したラベル原反100からラベル連続体101を再度繰り出し、当該ラベル連続体101をスリットすることにより行なうことができる。
【0052】
ラベル連続体101をスリットする工程は、たとえば、ラベル連続体101をMD方向にスリットすることにより行うことができる。この場合には、上記で作製したラベル連続体101よりも細幅のラベル連続体101が巻き取られたラベル原反100を作製することができる。このようにして作製されたラベル原反100も、基材1と基材1に直接接する水性インキ層2とを備え、表面抵抗値が12Ω・cm以上13Ω・cm以下であり、MD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下であるラベル連続体101が巻き取られてなるラベル原反100に相当し、本発明の範囲に含まれるものである。
【0053】
上記のようにして製造されたラベル原反100においては、ラベル連続体101の基材1の水性インキ層2が設けられていない側の表面および基材1と水性インキ層2との間のいずれにも帯電防止剤が存在していないため、帯電防止剤の転移に起因するラベル連続体101の水性インキ層2の色ムラの発生を解消することができる。
【0054】
また、上記のようにして製造されたラベル原反100においては、ラベル連続体101が帯電防止剤を含んでおらず、12Ω・cm以上13Ω・cm以下といった適度な帯電量の表面抵抗値を有していることから、MD方向またはTD方向における圧縮強度が1N以下といったコシのないラベル連続体101をラベル原反100から繰り出した場合でもラベル連続体101が安定して走行させることができる。
【実施例】
【0055】
<実施例1のラベル原反の作製>
まず、厚さ12μmの二軸延伸のポリエステル系フィルムの裏面にコロナ処理を行なった。次に、コロナ処理を行なったポリエステル系フィルムの裏面に直接に水性インキをフレキソ印刷により塗布した。
【0056】
次に、水性インキを乾燥して硬化することによって、ポリエステル系フィルムと、ポリエステル系フィルムの裏面に直接接する水性インキ層とを備える実施例1のラベル連続体を形成した。その後、実施例1のラベル連続体を巻き取ることによって、実施例1のラベル原反を作製した。
【0057】
<実施例2のラベル原反の作製>
実施例1で用いられたポリエステル系フィルムとは原材料の異なるポリエステル系フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のラベル連続体を形成した。その後、実施例2のラベル連続体を巻き取ることによって、実施例2のラベル原反を作製した。
【0058】
<比較例1のラベル原反の作製>
ポリエステル系フィルムの裏面とは反対側の表面に帯電防止剤を塗布したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のラベル連続体を形成した。その後、比較例1のラベル連続体を巻き取ることによって、比較例1のラベル原反を作製した。
【0059】
<表面抵抗値の測定>
実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル連続体の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。これらのラベル連続体の表面抵抗値は、JIS C 2139-3-2:2018「固体電気絶縁材料の誘電特性及び抵抗特性-第3-2部:直流電圧印加による抵抗特性の測定-表面抵抗及び表面抵抗率」に基づいて、以下の表面抵抗値の測定条件で測定された値である。
【0060】
(表面抵抗値の測定条件)
温度:23℃
湿度:53%
測定機器:アズワン株式会社製の表面抵抗計(YC-103)
【0061】
<圧縮強度の測定>
実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル連続体のMD方向およびTD方向の圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。これらのラベル連続体のMD方向およびTD方向の圧縮強度はJIS P 8126「紙及び板紙-圧縮強さ試験方法-リングクラッシュ法」に基づいて、以下の圧縮強度の測定条件で測定された値である。
【0062】
(圧縮強度の測定条件)
温度:23.5℃
湿度:52%
測定機器:株式会社島津製作所製のオートグラフ(AGX 500N)
【0063】
<色ムラの評価>
実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル原反からラベル連続体を繰り出して、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル連続体の水性インキ層の色ムラを評価した。その結果を表1に示す。色ムラの評価は、実施例1、実施例2および比較例1のラベル連続体の水性インキ層の100%ベタ印刷部を目視にて確認し、以下の色ムラの評価基準により評価した。
【0064】
(色ムラの評価基準)
A…色ムラの発生なし
B…色ムラの発生あり
【0065】
<巻きズレの評価>
実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル原反からラベル連続体を繰り出し、MD方向にスリットした後、細幅のラベル連続体を巻き取って、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれの細幅のラベル原反を作製した。なお、スリット前のラベル連続体の幅(TD方向の長さ)は1200mmとし、スリット後の細幅のラベル連続体の幅は45mmとした。また、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれの細幅のラベル連続体を、中心の円筒状空洞の直径が96mmであって肉厚が10mmの紙管に、10000m巻き取ることによって、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれの細幅のラベル原反を作製した。
【0066】
その後、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれの細幅のラベル原反の巻きズレを評価した。その結果を表1に示す。巻きズレの評価は、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれの細幅のラベル原反を目視にて確認し、以下の巻きズレの評価基準により評価した。
【0067】
(巻きズレの評価基準)
A…巻きズレ無し(巻きズレなく巻き取られたときの細幅のラベル連続体のTD方向の幅からのはみ出し長さが1mm以下)
B…巻きズレ有り(巻きズレなく巻き取られたときの細幅のラベル連続体のTD方向の幅からのはみ出し長さが1mmよりも長く2mm以下)
【0068】
【0069】
表1の「表面抵抗値(表面/裏面)[Ω・cm]」の欄の数値は、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル連続体の表面の表面抵抗値/ラベル連続体の裏面(水性インキ層の表面)の表面抵抗値をそれぞれ示している。
【0070】
表1の「圧縮強度(TD方向/MD方向)[N]」の欄の数値は、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのラベル連続体のTD方向における圧縮強度/MD方向における圧縮強度をそれぞれ示している。
【0071】
<評価結果>
表1に示すように、ポリエステル系フィルムの表面および裏面のいずれにも帯電防止剤が塗布されていない実施例1および実施例2のラベル原反のラベル連続体の水性インキ層には色ムラが発生しないことが確認された。一方、ポリエステル系フィルムの表面に帯電防止剤が塗布された比較例1のラベル原反のラベル連続体の水性インキ層には色ムラが発生することが確認された。
【0072】
また、表1に示すように、ラベル連続体のMD方向およびTD方向における圧縮強度が1N以下というコシがないラベル連続体であっても、ラベル連続体の表面抵抗値が12Ω・cm以上13Ω・cm以下である実施例1および実施例2のラベル原反を用いた場合には、スリット後の実施例1および実施例2の細幅のラベル原反に巻きズレが生じないことが確認された。一方、ラベル連続体の表面抵抗値が12Ω・cm未満の比較例1のラベル原反を用いた場合には、スリット後の比較例1の細幅のラベル原反に巻きズレが生じていることが確認された。
【0073】
以上のように実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施形態および実施例の各構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0074】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 基材、1a 基材原反、2,2a,2b 水性インキ層、10 フレキソ印刷機、11 センタードラム、12 円筒状版、13 アニロックスロール、14 ドクターチャンバー、15 芯材、100 ラベル原反、101 ラベル連続体。